特許第6554934号(P6554934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554934
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】LED点灯装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 37/02 20060101AFI20190729BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20190729BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   H05B37/02 J
   H01L33/00 J
   H02M3/28 L
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-125835(P2015-125835)
(22)【出願日】2015年6月23日
(65)【公開番号】特開2017-10811(P2017-10811A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】大津 定治
(72)【発明者】
【氏名】阿野 康則
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩士
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−087119(JP,A)
【文献】 特開2012−089383(JP,A)
【文献】 特開2013−229384(JP,A)
【文献】 特開2015−056317(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0057173(US,A1)
【文献】 特開2015−076923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 37/02
H01L 33/00
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧が印加される一次巻線と、LEDに電力を供給する二次巻線と、前記二次巻線に印加される電圧に応じた電圧が印加される補助巻線と、を備えるトランスと、
前記一次巻線と直列に接続し、前記一次巻線に流れる電流をオンオフするスイッチング素子と、
前記一次巻線および前記スイッチング素子を通じて流れる電流値を検出するための抵抗と、
前記抵抗により検出した電流検出値が入力される電流センス端子を備え、前記電流検出値が目標値と一致するように前記スイッチング素子のオンオフをフィードバック制御する制御回路と、
前記補助巻線の電圧が予め設定された電圧以上となったときに、前記電流検出値を増加補正する補正回路と、
を備え
前記電流検出値は、前記抵抗により検出した電流検出値に前記補正回路の増加補正がされていない第一電流検出値と、前記抵抗により検出した電流検出値に前記補正回路による増加補正がされた第二電流検出値と、を含み、
前記制御回路は、前記第一電流検出値と前記目標値との差を低減するように前記一次巻線に流れる電流を調整する第一フィードバック制御および前記第二電流検出値と前記目標値との差を低減するように前記第一フィードバック制御よりも大きな変化率で前記一次巻線に流れる電流を調整する第二フィードバック制御を実施するとともに、前記第二電流検出値が予め設定された閾値を越えると前記スイッチング素子のスイッチングを停止するように構築されたLED点灯装置。
【請求項2】
前記補正回路は、カソードに前記補助巻線の電圧が印加されアノードが前記電流センス端子と前記抵抗との接続点に電気的に接続されたツェナーダイオードを含み、
前記ツェナーダイオードの降伏電圧が前記予め設定された電圧であり、
前記補正回路は、前記ツェナーダイオードの逆方向電流を前記接続点に加えることで前記第二電流検出値を生成するように構築された請求項1に記載のLED点灯装置。
【請求項3】
前記補正回路は、
正極入力端子に前記補助巻線の電圧が印加され、負極入力端子に前記予め設定された電圧が印加され、出力端子が前記電流センス端子と前記抵抗との接続点に電気的に接続されたコンパレータを含み、
前記コンパレータは、前記正極入力端子の電圧が前記予め設定された電圧以上になると出力をハイとするように構築され、
前記補正回路は、前記コンパレータのハイ出力を前記接続点に加えることで前記第二電流検出値を生成するように構築された請求項1に記載のLED点灯装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記制御回路の電源となる制御電源電圧が供給される制御電源端子を備え、
前記制御回路は、前記第二電流検出値が前記閾値を越えたことに応答して前記スイッチング素子のスイッチングを停止した後、前記制御電源端子に電圧が印加されている期間、前記スイッチングの停止を継続する請求項1〜3のいずれか1項に記載のLED点灯装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記一次巻線に印加される前記直流電圧を検出する検出端子を備え、
前記検出端子の電圧が高いほど前記目標値を増大させる請求項1〜4のいずれか1項に記載のLED点灯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1および特許文献2に開示されているように、負荷であるLED光源の有無あるいはLED光源の異常状態を検出したときにLED点灯装置を保護する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5237727号公報
【特許文献2】特許5278041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、光源に異常が起きた場合には、点灯装置が保護動作すなわち即時の消灯を行うことが好ましいとされている。しかしながら、消灯は点灯装置における本来の目的から外れる動作なので、光源に異常が発生した時であっても消灯はなるべく避けたい。つまり、点灯装置を適切に保護しつつもなるべく消灯を避けたいという互いに背反する要求があった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、消灯をなるべく避けつつ光源に異常が発生した時の保護動作を行うことができるLED点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるLED点灯装置は、直流電圧が印加される一次巻線と、LEDに電力を供給する二次巻線と、前記二次巻線に印加される電圧に応じた電圧が印加される補助巻線と、を備えるトランスと、前記一次巻線と直列に接続し、前記一次巻線に流れる電流をオンオフするスイッチング素子と、前記一次巻線および前記スイッチング素子を通じて流れる電流値を検出するための抵抗と、前記抵抗により検出した電流検出値が入力される電流センス端子を備え、前記電流検出値が目標値と一致するように前記スイッチング素子のオンオフをフィードバック制御する制御回路と、前記補助巻線の電圧が予め設定された電圧以上となったときに、前記電流検出値を増加補正する補正回路と、を備え、前記電流検出値は、前記抵抗により検出した電流検出値に前記補正回路の増加補正がされていない第一電流検出値と、前記抵抗により検出した電流検出値に前記補正回路による増加補正がされた第二電流検出値と、を含み、前記制御回路は、前記第一電流検出値と前記目標値との差を低減するための第一フィードバック制御と前記第二電流検出値と前記目標値との差を低減するための第二フィードバック制御とを実施するとともに、前記第二電流検出値が予め設定された閾値を越えると前記スイッチング素子のスイッチングを停止するように構築されたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フィードバック制御中にLED電圧が増加した場合には、直ちには消灯せずに、消灯する手前の段階でフィードバック制御によるLED電流低下量を増大させた期間を設けることができる。これにより、消灯をなるべく避けつつ光源に異常が発生したときの保護動作を行いたいという要求を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1にかかるLED点灯装置を示す回路図である。
図2】実施の形態1にかかるLED点灯装置の動作を説明するための模式的なタイミングチャートである。
図3】実施の形態1にかかるLED点灯装置の動作を説明するための模式的なタイミングチャートである。
図4】本発明の実施の形態2にかかるLED点灯装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかるLED点灯装置10を示す回路図である。LED点灯装置10は、直流電源2の電圧を分圧する抵抗R11および抵抗R12からなる直列回路と、一次巻線Tp、二次巻線Tsおよび補助巻線Tdを備えるトランスTR1と、スイッチング素子であるMOSFETQ1と、制御IC12と、制御IC12のVcc端子とGND端子に並列接続したコンデンサC11と、二次巻線Tsに接続するダイオードD31およびコンデンサC31と、補助巻線Tdに接続するダイオードD21と、MOSFETQ1のソースに接続する抵抗R23、R24およびコンデンサC21と、補正回路50と、を備えている。トランスTR1、MOSFETQ1、および制御IC12は、フライバックコンバータを構成している。
【0010】
トランスTR1の一次巻線Tpには、直流電源2から直流電圧が印加される。直流電源2の陽極がトランスTR1の一次巻線Tpの一端に接続されている。直流電源2は、たとえばバッテリであってもよく、商用電源等の交流電源が整流回路で整流されることで提供される直流電源であってもよい。
【0011】
MOSFETQ1のドレイン端子は、一次巻線Tpの他端に接続される。MOSFETQ1のソース端子は、抵抗R24を介して直流電源2の陰極側に接続される。このようにMOSFETQ1は一次巻線Tpと直列に接続されており、MOSFETQ1がオンとされることで一次巻線Tpに電流が流れる。
【0012】
トランスTR1の二次巻線TsからLED4に対して電力が供給される。具体的には、二次巻線Tsの一端がダイオードD31のアノードに接続され、ダイオードD31のカソードがコンデンサC31の正極に接続される。ダイオードD31とコンデンサC31の接続点がLED4に接続される。コンデンサC31はLED4に接続され、コンデンサC31の充電電荷がLED4に放電される。
【0013】
トランスTR1の補助巻線Tdは、ダイオードD21のアノードと接続されている。補助巻線Tdには、二次巻線Tsに印加される電圧と比例した電圧が印加される。
【0014】
制御IC12は、制御電源を取得するVcc端子、基準電位と接続するGND端子、Vref端子、ZCD端子(ゼロクロス検出端子)、ゲート駆動用のDRV端子、Isen端子を備えている。制御IC12は、いわゆる臨界動作モードでフライバックコンバータを制御する。具体的には、制御IC12のZCD端子(ゼロクロス検出端子)がダイオードD21のカソードに接続されている。MOSFETQ1がオフのときにはZCD端子に電圧が印加され、MOSFETQ1がオンのときにはZCD端子に電圧が印加されない。二次巻線Tsの電流値がゼロになりZCD端子で電圧の立ち下がりが検出されると、制御IC12はMOSFETQ1をオンとする。
【0015】
Isen端子は、ダイオードD21、ツェナーダイオードDZ21、抵抗R22を介して、トランスTR1の補助巻線Tdに接続されている。制御IC12のDRV端子はMOSFETQ1のゲート端子に接続されている。抵抗R11と抵抗R12からなる直列回路に並列にコンデンサC11が接続される。コンデンサC11の正極端子が制御IC12のVcc端子と接続される。コンデンサC11の負極端子が制御IC12のGND端子と接続される。
【0016】
Isen端子には、抵抗R23、R24により検出した電圧値が入力される。以下、Isen端子に印加される電圧のことを「Isen端子電圧」とも称す。抵抗R23、R24は、一次巻線TpおよびMOSFETQ1を通じて流れる電流値を検出するためのものである。この点をより具体的に説明すると、先ず、抵抗R24は、MOSFETQ1のソース端子と接続される。抵抗R24の一端とMOSFETQ1のソース端子との接続点には、抵抗R23の一端が接続される。抵抗R23の他端はコンデンサC21の正極と抵抗R22の接続点に接続している。コンデンサC21の負極は抵抗R24の他端に接続されている。MOSFETQ1に電流が流れると、抵抗R23を介してコンデンサC21に電荷が貯まる。コンデンサC21の充電電圧が制御IC12のIsen端子に供給される。このような構成によれば、MOSFETQ1に流れる電流を抵抗R24で電圧変換し、変換された電圧をさらに抵抗R23およびコンデンサC21で平均化した平均電圧値が、Isen端子電圧となる。
【0017】
制御IC12は、LED4に供給される電力が一定となるようにフィードバック制御を行う。以下、単に「定電力フィードバック制御」とも称す。具体的には、制御IC12は、Isen端子電圧が目標電圧V1と一致するように、MOSFETQ1に流れる電流を調整する。つまり、Isen端子電圧の値が、MOSFETQ1のオンオフ制御の内容、具体的にはオン時間幅と周波数の少なくとも一方にフィードバックされる。目標電圧V1は定電力フィードバック制御を行うために予め設定された値である。目標電圧は、制御IC12に予め設定される値であり、いわばIsen端子電圧の下限を決める下限基準電圧でもある。例えばIsen端子電圧が目標電圧V1を上回ったときにはその上回った分の電流を減らすようにMOSFETQ1のオン時間を狭めるなどの調整が行われ、逆にIsen端子電圧が目標電圧V1を下回ったときにはその下回った分の電流を増やすようにMOSFETQ1のオン時間を長くするなどの調整が行われる。定電力フィードバック制御については既に公知技術であるため、その詳細は説明を省略する。
【0018】
制御IC12は、Isen端子電圧が予め設定された保護閾値電圧V2以上になると、MOSFETQ1のスイッチングを停止する。保護閾値電圧V2は、制御IC12に予め設定された基準電圧であり、いわばIsen端子電圧の上限を決める上限基準電圧である。これにより、Isen端子の電圧が高くなりすぎてLED4の消灯が必要と判断されたときに、速やかにLED4を消灯することができる。
【0019】
Vref端子は、一次巻線Tpに印加される直流電圧を検出する。Vref端子には、抵抗R11と抵抗R12からなる直列回路で直流電源2からの入力電圧を分圧した値が印加される。Vref端子電圧の値によってIsen端子電圧と比較されるべき目標電圧(下限基準電圧)が決定されてもよい。例えば、制御IC12は、Vref端子の電圧が高いほど目標電圧V1を増大させてもよい。その結果、直流電源2の電圧が上昇するのに連動させてLED4に供給する電力を高めることができる。
【0020】
制御IC12は、制御IC12の電源となる制御電源電圧が供給されるVcc端子を備える。制御IC12は、Isen端子電圧が保護閾値電圧V2を越えたことに応答してMOSFETQ1のスイッチングを停止した後、この停止後もVcc端子に電圧が印加されている期間はスイッチングを停止したままとする。
【0021】
補正回路50は、ツェナーダイオードDZ21および抵抗R22を含む。ツェナーダイオードDZ21のカソードには補助巻線Tdの電圧が印加される。ツェナーダイオードDZ21のアノードは、抵抗R22を介して、Isen端子と抵抗R23との接続点に電気的に接続されている。
【0022】
トランスTR1の補助巻線Tdには、二次巻線Tsに印加される電圧の巻き数比に比例した電圧が印加されている。LED電圧が高くなると、補助巻線Tdの電圧が上昇し、ツェナーダイオードDZ21のカソード電位が上昇する。このカソード電位がツェナーダイオードDZ21の降伏電圧に達すると、抵抗R22を介して電流が流れるので、Isen端子電圧が上昇する。この場合、「MOSFETQ1に流れる電流が電圧変換された値」と「ツェナーダイオードDZ21の逆方向電流が電圧変換された値」とが重畳された値が、Isen端子電圧となる。つまり、本来のIsen端子電圧に、「ツェナーダイオードDZ21の逆方向電流が電圧変換された値」が増加補正されることになる。制御IC12はIsen端子電圧が目標電圧V1になるように定電力フィードバック制御を行っている。ツェナーダイオードDZ21の逆方向電流により増加補正された分だけ、目標電圧V1に対するIsen端子電圧の差分がより大きくなるので、MOSFETQ1に流れる電流を、その分、より大きく減らすようなフィードバックがかかる。この動作は、Isen端子電圧の増加補正前つまり定電力フィードバック制御の初期状態の動作と比べると、目標となる電力の値が低減されたのと同様であり、「減電力動作」といえる。なお、補正回路50によれば、補助巻線Tdの電圧がツェナーダイオードDZ21の降伏電圧よりも低くなると、逆方向電流が流れなくなるので通常の定電力フィードバック制御が速やかに再開される。
【0023】
以上説明したように、補正回路50は、補助巻線Tdの電圧が降伏電圧VDZ21以上となったときに、Isen端子電圧を増加補正することができる。ツェナーダイオードDZ21の降伏電圧VDZ21は、通常の定電流フィードバック制御と上記の減電力制御とを切り替える基準となる「切替基準電圧」となっている。このようにIsen端子電圧を増加補正することで、制御IC12がLED電流の減少を加速的に行うことができる。
【0024】
切替基準電圧(実施の形態1ではすなわち降伏電圧VDZ21)は、予め定められた値であり、「Isen端子電圧が目標電圧V1と一致するときの補助巻線Tdの電圧Vtd1」よりもある程度大きく、かつ「Isen端子電圧が保護閾値電圧V2と一致するときの補助巻線Tdの電圧値Vtd2」よりもある程度小さな値であることが好ましい。これにより、通常動作中にIsen端子電圧が目標電圧V1付近でフィードバック制御されているときには減電力動作は開始されず、Isen端子電圧が目標電圧V1からある程度高くなった後であり且つIsen端子電圧が保護閾値電圧V2に達するよりもある程度手前の段階で、減電力動作を開始することができる。
【0025】
図2および図3は、実施の形態1にかかるLED点灯装置10の動作を説明するための模式的なタイミングチャートである。以下、図2および図3のタイミングチャートを用いて、LED点灯装置10の動作を具体的に説明する。
【0026】
LED4は、理想的には、一定の電気特性で安定した発光を行うことが好ましい。しかしながら、現実には、LEDの電気的特性の変化、リード断線、あるいは接続不良などにより、LED4に何らかの異常が生じうる。例えばLEDの電気的特性は種々の要因で変化する。LEDの順方向電圧Vfは温度特性を有するので、周囲温度の変化に起因してLED4の電圧が変化することがある。また、長期間の使用による経年劣化などによっても、LEDの順方向電圧Vfが変化することもある。ここでは、そのような何らかの原因によりLED電圧が上昇した場合における、補正回路50の動作を説明する。
【0027】
LED電圧の上昇が「緩慢」な上昇であるか「急激」な上昇であるかによって、LED点灯装置10の動作、すなわち補正回路50の動作は異なる。そこで、以下ではこれらの2つの場合を分けて説明する。
【0028】
(1)LED電圧が緩慢に上昇した場合
図2を用いて、LED電圧が緩慢に上昇した場合におけるLED点灯装置10の動作を説明する。LED電圧が上昇した場合、制御IC12は通常通りの定電力フィードバック制御を行うために、MOSFETQ1のオン時間が調整される。その結果、LED電流値が低減され、明るさが低下する。
【0029】
図2において、時刻T1までは直流電源2のLED電圧が一定である。このため、LED電圧に従いIsen端子電圧が一定になるように、制御IC12はMOSFETQ1を制御する。時刻T1までは、LED4に流れる電流を一定に流すことができている。なお、図2に示すタイミングチャートでは、定電力フィードバック制御の応答速度に対してLED電圧の上昇が十分に遅く、その結果としてIsen端子に極短時間の微小な変動があったとしても実質的には一定であるとみなせる場合を想定している。よって、図2では、Isen端子電圧は、目標電圧V1と重ねられて一定値として図示されている。
【0030】
時刻T1から、時刻T3に至るまでLED電圧が緩慢に高くなったとすると、前述のように制御IC12は、MOSFETQ1の定電力フィードバック制御を行い、Isen端子電圧が一定となるように、通常通りの減光動作(つまりLED電流が低下し、明るさが低下するような動作)を行う。LED電圧の上昇に対して、フィードバック制御で制御が十分間に合っている状態である。つまり、LED電圧上昇があったにもかかわらず、Isen端子電圧が保護閾値電圧V2に達しないようにLED電流に帰還をかけることができている。補助巻線Tdにかかる電圧はツェナーダイオードDZ21の降伏電圧VDZ21よりも小さくなっている。
【0031】
図2では、さらにLED電圧の上昇が継続して、時刻T2の時点で補助巻線Tdにかかる電圧がツェナーダイオードDZ21の降伏電圧VDZ21を上回る。この場合、前述した補正回路50の働きによりIsen端子電圧が増加補正されるので、LED電流の減少が加速的に行われる。つまり減電力動作が行われる。時刻T2以降の電力と時刻T2よりも前の電力とを比べた場合には、時刻T2以降の電力減少率が著しく大きいことがわかる。
【0032】
(2)LED電圧が急激に上昇した場合
図3を用いて、LED電圧が急激に上昇した場合におけるLED点灯装置10の動作を説明する。LED電圧が急激に変化する原因としては、例えばLEDが接続されないようなリード断線などが考えられる。
【0033】
図3のタイミングチャートでは、時刻T1までは直流電源2のLED電圧が一定である。時刻T1までは、このLED電圧に従いIsen端子電圧が一定になるように制御IC12がMOSFETQ1を制御している。図2では、時刻T1まではLED4に流れる電流を一定に流すことができている。
【0034】
時刻T1において、LED電圧が急激に(言い換えるとステップ的に)高くなったとする。これに応じて出力電力が増加し、それに伴いIsen端子電圧も一時的に増加する。Isen端子電圧が目標電圧V1以上であって保護閾値電圧V2未満の場合には、制御IC12は、MOSFETQ1のオン時間を低減することでLED電流を低下させ、Isen端子電圧を目標電圧V1まで戻そうとする。これは、時刻T2〜時刻T3の期間の動作に現れている。ただし、時刻T2から時刻T3までの期間では、急激なLED電圧上昇があったにもかかわらず、Isen端子電圧が保護閾値電圧V2に達しないようにLED電流に帰還をかけることができている。つまり、LED電圧上昇への対策が、制御IC12の通常の定電力フィードバック制御のみで間に合っている。
【0035】
一方、時刻T4においてLED電圧が急激に高くなる。時刻T4の急激な電圧上昇は、時刻T1のときの電圧上昇よりも大きな上昇である。時刻T4の電圧上昇の結果、補助巻線Tdの電圧が降伏電圧VDZ21を超えている。これは時刻T1のときとは異なっている。
【0036】
制御IC12は、時刻T5の時点で減電力動作を行う。しかしながら、図3では、減電力動作のみではLED電圧上昇対策が間に合わずT6の時点でIsen端子電圧が保護閾値電圧(上限基準電圧)以上となる。この場合には、LED4の消灯が必要と判断すべきなので、制御IC12はMOSFETQ1のスイッチング動作を停止し、LED4を速やかに消灯する。その後、MOSFETQ1の発振を停止させた場合は、制御IC12のVcc端子に電圧印加が継続される限り、MOSFETQ1の発振停止を維持する。
【0037】
以上説明したように、実施の形態1にかかるLED点灯装置10によれば、フィードバック制御中にLED電圧が増加した場合には、直ちには消灯せずに、消灯する手前の段階で減電力動作を設けることができる。減電力動作の具体例として、図2の時刻T2〜時刻T3の期間、および図3の時刻T5〜時刻T6の期間における、フィードバック制御によるLED電流低下量を増大させた動作が示されている。減電力動作を行ってもなおIsen端子電圧が保護閾値電圧V2に達した場合には、減電力動作では不十分と判断できるので、最終的に消灯の措置がとられる。これにより、消灯をなるべく避けつつLED4の異常発生時の保護動作を行いたいという要求を満たすことができる。
【0038】
また、実施の形態1によれば、ZCD端子とIsen端子との間を補正回路50で結ぶことによって、上記の動作を実現している。これにより、省部品な回路構成で、消灯する手前の段階での「減電力動作」を高精度に実現することができる。また、補正回路50の動作切替にツェナーダイオードDZ21の降伏電圧VDZ21を利用しているので、通常の定電力フィードバック制御動作と減電力動作とを、単一の部品で可逆的に切り替えることができる。
【0039】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2にかかるLED点灯装置110を示す回路図である。実施の形態2にかかるLED点灯装置110は、補正回路50を補正回路150に置換した点を除き、実施の形態1にかかるLED点灯装置110と同じ回路構成を備えている。したがって、以下の説明では実施の形態1と同一または相当する構成については同一の符号を付して説明を行うとともに、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通事項は説明を簡略化ないしは省略する。
【0040】
補正回路150は、補助巻線Tdの電圧が予め設定された電圧(すなわち切替基準電圧)以上になったときにIsen端子電圧を増加補正する点では、実施の形態1の補正回路50と同様である。予め設定された電圧は、保護閾値電圧V2よりも小さい。
【0041】
補正回路150と補正回路50は、具体的回路構成が異なっている。補正回路150は、コンパレータ152と、抵抗R51、R52、R61、R62と、ダイオードD51を含む。このコンパレータ152の回路接続については、正極入力端子に補助巻線Tdの電圧が印加され、負極入力端子に予め設定された電圧が印加され、出力端子がIsen端子と抵抗R23との接続点に電気的に接続されている。コンパレータ152は、正極入力端子(非反転入力端子)の電圧(補助巻線Tdの電圧に応じた電圧)が予め設定された電圧以上になると出力をハイとする。
【0042】
補助巻線Tdの一端とダイオードD21のアノードが接続され、ダイオードD21のカソードと制御IC12のZCD端子との接続点に抵抗R51および抵抗R52からなる直列回路が接続される。抵抗R61および抵抗R62からなる直列回路が設けられ、抵抗R61の一端にはVccが接続され、抵抗R61の他端にはコンパレータ152の負極入力端子(反転入力端子)が接続される。抵抗R51と抵抗R52との接続点にはコンパレータ152の正極入力端子(非反転入力端子)が接続される。コンパレータ152の出力端子と制御IC12のIsen端子との間にダイオードD51が挿入される。ダイオードD51のアノードにはコンパレータ152の出力端子が接続され、ダイオードD51のカソードにはIsen端子が接続される。
【0043】
ここで、コンパレータ152の負極入力端子電圧をVx1と称し、正極入力端子電圧をVx2と称す。負極入力端子電圧Vx1が正極入力端子電圧Vx2より大きくなると(Vx1>Vx2)、本来はIsen端子からコンパレータ152を介してGNDに流れる方向(矢印X1)に電流が流れようとする。しかしIsen端子とコンパレータ152の間にはダイオードD51が配置され、そのダイオードD51のカソードがIsen端子側に向くように接続されているので、矢印X1の方向に電流は流れない。
【0044】
負極入力端子電圧Vx1が正極入力端子電圧Vx2以下になると、すなわちVx2がVx1以上となると(Vx1≦Vx2)、Vcc電圧がコンパレータ152を介してIsen端子に重畳される。このとき補正回路150の動作はツェナーダイオードDZ21を含む補正回路50と同じような挙動となり、負極入力端子電圧Vx1は「切替基準電圧」としての役割を果たす。Vcc電圧がIsen端子電圧に追加されることで、Isen端子電圧が増加補正される。この増加補正されたIsen端子電圧を目標電圧と一致させるためには、MOSFETQ1を流れる電流をより大きく減少させる必要がある。従って、制御IC12は、増加補正されたIsen端子電圧に基づいて、MOSFETQ1の制御(例えばオン時間幅の縮小)によるLED電流減少を加速的に行うことができる。つまり、実施の形態1と同様の減電力動作が実現される。
【0045】
なお、実施の形態1と同様に、Isen端子電圧が保護閾値電圧V2を上回った場合には、LED4の消灯が必要と判断され、MOSFETQ1のスイッチング動作が停止される。これによりLED4の消灯に至る。また、実施の形態1と同様に、MOSFETQ1の発振を停止させた場合は、Vcc端子に電圧印加が継続される限り、制御IC12はMOSFETQ1の発振を停止したまま維持する。
【符号の説明】
【0046】
2 直流電源、4 LED、10、110 点灯装置、12 制御IC、50、150 補正回路、152 コンパレータ、DZ21 ツェナーダイオード、12 制御IC、TR1 トランス、Tp 一次巻線、Ts 二次巻線、Td 補助巻線、Q1 スイッチング素子、V1 目標電圧、V2 保護閾値電圧、VDZ21 降伏電圧(切替基準電圧)
図1
図2
図3
図4