(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、人間がロボットに接近する度にロボットを停止させると、ロボットの作業効率が低下することとなる。また、ロボットを停止させる必要のあるエリア内へ人間が入ること自体が、安全面から望ましくない。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、ロボットの周囲に安全柵がない場合であっても、ロボットの動作領域に人間が入ることを未然に抑制することのできるロボットシステムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0007】
第1の手段は、ロボットシステムであって、床面に設置されたロボットと、前記ロボットが所定作業において動作する空間が前記床面を占める領域である動作領域を、前記床面に視認可能に表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、ロボットが床面に設置されている。ロボットが所定作業において動作する空間である動作空間は予め決まっている。そこで、ロボットの動作空間が床面を占める領域である動作領域が、床面に視認可能に表示される。このため、ロボットの動作領域を人間に視認させることができ、動作領域に人間が入る以前に、動作領域に入らないように人間に働きかけることができる。したがって、ロボットの周囲に安全柵がない場合であっても、ロボットの動作領域に誤って人間が入ることを未然に抑制することができる。
【0009】
第2の手段では、前記ロボットシステムの異常時に前記ロボットを強制停止させる強制停止部を備え、前記表示手段は、前記所定作業において前記強制停止部により前記ロボットが強制停止させられるまでに動作する可能性のある空間が前記床面を占める領域である潜在領域を、さらに前記床面に視認可能に表示する。
【0010】
上記構成によれば、強制停止部により、ロボットシステムの異常時にロボットが強制停止される。しかしながら、所定作業において強制停止部によりロボットが強制停止させられるまでに、ロボットが動作空間よりも外側の空間まで動作するおそれがある。
【0011】
ここで、所定作業においてロボットが強制停止させられるまでに動作する可能性のある空間である潜在空間は、予測することができる。ひいては、ロボットの潜在空間が床面を占める領域である潜在領域も、予測することができる。上記構成によれば、ロボットの潜在領域が床面に視認可能に表示される。このため、ロボットの潜在領域を人間に視認させることができ、潜在領域にも入らないように人間に働きかけることができる。
【0012】
第3の手段では、前記表示手段は、前記床面に可視光を照射する照射部と、前記動作領域に可視光が照射されるように前記照射部を制御する制御部とを備える。
【0013】
上記構成によれば、照射部により床面に可視光を照射させることができる。そして、制御部により、ロボットの動作領域に可視光が照射されるように照射部が制御される。このため、ロボットの動作領域を、容易且つ正確に表示することができる。さらに、人間の体のうち動作領域に入った部分が可視光により照らし出されるため、動作領域に入っていることを人間に明確に視認させることができる。
【0014】
第4の手段では、前記表示手段は、前記床面に可視光を照射する照射部と、前記動作領域及び前記潜在領域に可視光が照射されるように前記照射部を制御する制御部とを備える。
【0015】
上記構成によれば、制御部により、ロボットの動作領域及び潜在領域に可視光が照射されるように照射部が制御される。このため、ロボットの動作領域及び潜在領域を、容易且つ正確に表示することができる。さらに、人間の体のうち動作領域や潜在領域に入った部分が可視光により照らし出されるため、動作領域や潜在領域に入っていることを人間に明確に視認させることができる。
【0016】
第5の手段では、前記照射部は、前記床面に可視光の第1光を照射する第1照射部と、前記床面に前記第1光とは異なる可視光の第2光を照射する第2照射部とを備え、前記制御部は、前記動作領域に前記第1照射部により前記第1光を照射させ、前記潜在領域に前記第2照射部により前記第2光を照射させる。
【0017】
上記構成によれば、第1照射部により、床面に可視光の第1光を照射させることができる。また、第2照射部により、床面に第1光とは異なる可視光の第2光を照射させることができる。そして、制御部は、ロボットの動作領域に第1照射部により第1光を照射させ、ロボットの潜在領域に第2照射部により第2光を照射させる。このため、ロボットの動作領域と潜在領域とを区別して、人間に視認させることができる。
【0018】
第6の手段では、前記制御部は、前記ロボットが前記所定作業を実行する実行速度が所定速度よりも高い場合の前記潜在領域を、前記実行速度が前記所定速度よりも低い場合の前記潜在領域よりも広く設定する。
【0019】
ロボットが所定作業を実行する実行速度が高いほど、ロボットシステムの異常時におけるロボットの潜在空間は大きくなる。この点、上記構成によれば、ロボットが所定作業を実行する実行速度が所定速度よりも高い場合の潜在領域が、実行速度が所定速度よりも低い場合の潜在領域よりも広く設定される。したがって、ロボットの実行速度に応じて、潜在領域の広さを適切に設定することができる。さらに、ロボットの実行速度が変化するのに伴って、表示される潜在領域が変化することから、潜在領域が変化しない場合と比較して人間の注意を引くことができる。
【0020】
第7の手段では、前記制御部は、前記ロボットが前記所定作業の実行中において、前記動作領域に対する前記ロボットの現在の動作位置に応じて、前記潜在領域を可変とする。
【0021】
ロボットが所定作業の実行中において、動作領域に対するロボットの現在の動作位置によって、ロボットシステムの異常時におけるロボットの潜在空間は変化する。例えば、現在の動作位置が動作領域の中央付近であれば潜在空間は小さくなり、現在の動作位置が動作領域の端部付近であれば潜在空間は大きくなる。
【0022】
この点、上記構成によれば、ロボットが所定作業の実行中において、動作領域に対するロボットの現在の動作位置に応じて、潜在領域が可変とされる。したがって、動作領域に対するロボットの現在の動作位置に応じて、潜在領域を適切に変化させることができる。さらに、所定作業の実行中において、ロボットの現在の動作位置が変化するのに伴って、表示される潜在領域が変化することから、潜在領域が変化しない場合と比較して人間の注意を引くことができる。
【0023】
第8の手段では、前記制御部は、前記ロボットが前記所定作業の実行中において、前記動作領域に対する前記ロボットの現在の動作方向に応じて、前記潜在領域を可変とする。
【0024】
ロボットが所定作業の実行中において、動作領域に対するロボットの現在の動作方向によって、ロボットシステムの異常時におけるロボットの潜在空間は変化する。例えば、現在の動作方向が動作領域の中央へ向かう方向であれば潜在空間は小さくなり、現在の動作方向が動作領域の端部へ向かう方向であれば潜在空間は大きくなる。
【0025】
この点、上記構成によれば、ロボットが所定作業の実行中において、動作領域に対するロボットの現在の動作方向に応じて、潜在領域が可変とされる。したがって、動作領域に対するロボットの現在の動作方向に応じて、潜在領域を適切に変化させることができる。さらに、所定作業の実行中において、ロボットの現在の動作方向が変化するのに伴って、表示される潜在領域が変化することから、潜在領域が変化しない場合と比較して人間の注意を引くことができる。
【0026】
第9の手段では、前記制御部は、前記ロボットの減速特性に応じて、前記潜在領域を設定する。
【0027】
ロボットの減速特性によって、ロボットシステムの異常時におけるロボットの潜在空間は変化する。例えば、ロボットの減速特性が、減速させやすい特性であれば潜在空間は小さくなり、減速させにくい特性であれば潜在空間は大きくなる。この点、上記構成によれば、ロボットの減速特性に応じて潜在領域が設定されるため、設定される潜在領域の精度を向上させることができる。
【0028】
第10の手段では、前記照射部は、前記床面に可視光を照射する範囲が互いに異なる複数のLEDを備え、前記制御部は、前記複数のLEDのうち前記動作領域に可視光を照射する前記LEDを点灯させる。
【0029】
上記構成によれば、照射部は、床面に可視光を照射する範囲が互いに異なる複数のLEDを備えている。そして、制御部により、複数のLEDのうち動作領域に可視光を照射するLEDが点灯させられる。このため、LEDを選択して点灯させることで、動作領域に可視光を容易に照射することができる。
【0030】
第11の手段では、前記照射部は、前記床面に可視光を照射する範囲が互いに異なる複数のLEDを備え、前記制御部は、前記複数のLEDのうち、前記動作領域に可視光を照射する前記LED、及び前記潜在領域に可視光を照射する前記LEDを点灯させる。
【0031】
上記構成によれば、動作領域に可視光を照射するLED、及び潜在領域に可視光を照射するLEDを選択して点灯させることで、動作領域及び潜在領域に可視光を容易に照射することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(第1実施形態)
以下、垂直多関節型ロボットを備えるロボットシステムに具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態のロボットは、例えば産業用ロボットとして機械組立工場などの組立ラインにて用いられる。
【0034】
はじめに、ロボットシステム10の概略を
図1に基づいて説明する。同図に示すように、ロボットシステム10は、ロボット20、コントローラ30、設置台40等を備えている。
【0035】
設置台40は、円柱状に形成されており、工場内の床50に固定されている。設置台40の中心軸線は、床50に垂直となっている。設置台40は、その上にロボット20及びコントローラ30を設置するための台である。設置台40の上には、ロボット20及びコントローラ30が設置されている。換言すれば、ロボット20及びコントローラ30は、設置台40を介して床50(すなわち床面)に設置されている。
【0036】
ロボット20は、多関節のアームを備える垂直多関節型ロボットである。ロボット20は、各関節を駆動するモータ、各関節を制動するブレーキ、各関節の回転角度を検出する角度センサ等を備えている。ロボット20の動作は、コントローラ30により制御される。
【0037】
コントローラ30(すなわち制御部)は、CPU、ROM、RAM、駆動回路、及び位置検出回路等を備えている。ROMは、ロボット20のシステムプログラムや動作プログラム等を記憶している。RAMは、これらのプログラムを実行する際にパラメータの値等を記憶する。位置検出回路には、各角度センサの検出信号がそれぞれ入力される。位置検出回路は、各角度センサの検出信号に基づいて、各関節(詳しくはモータ)の回転角度を検出する。
【0038】
ロボット20は、アームを動作させることにより種々の作業を行う。例えば、ロボット20が所定作業において動作する空間である動作空間は、同図に示すように動作空間Saとなる。動作空間Saは、ロボット20のアームの長さ、及び所定作業におけるアームの動作軌跡により予め決まっている。そして、動作空間Saが床50を占める領域である動作領域は、動作領域Aaとなる。動作領域Aaは、動作空間Saを床50に投影した領域であり、ロボット20を中心とした扇形に設定されている。
【0039】
コントローラ30(すなわち強制停止部)は、ロボットシステム10の異常時にロボット20を強制停止させる。例えば、ロボット20の動作異常や、コントローラ30の通信異常が検出された場合に、ロボット20のアームを制動して直ちに停止させる。しかしながら、所定作業においてロボット20が強制停止させられるまでに、ロボット20が動作空間Saよりも外側の空間まで動作するおそれがある。
【0040】
ここで、所定作業においてロボット20が強制停止させられるまでに動作する可能性のある空間である潜在空間は、潜在空間Spとしてコントローラ30により予測することができる。潜在空間Spは、動作空間Saよりも外側の空間である。そして、ロボット20の潜在空間Spが床50を占める領域である潜在領域は、潜在領域Apとなる。潜在領域Apは、潜在空間Spを床50に投影した領域であり、ロボット20を中心とした扇形に設定されている。本実施形態では、ロボット20の上記動作領域Aa及び潜在領域Apを、床50に視認可能に表示する。
【0041】
具体的には、上記設置台40には、床50に可視光を照射する照射部41が設けられている。照射部41は、床50に赤色光(すなわち可視光の第1光)を照射する第1照射部と、床50に黄色光(すなわち第1光とは異なる可視光の第2光)を照射する第2照射部とを備えている。
【0042】
第1照射部は、設置台40の周方向に所定間隔(例えば中心角10°毎)で並ぶ複数の赤色LEDを備えている。複数の赤色LEDは、床50に赤色光を照射する範囲が互いに異なっており、設置台40の全周にわたって配置されている。複数の赤色LEDのうち、点灯させる赤色LEDを選択することにより、任意の動作領域Aaに赤色光を照射することができる。第2照射部は、第1照射部の赤色LEDに代えて、同様に配置された黄色LEDを備えている。そして、複数の黄色LEDのうち、点灯させる黄色LEDを選択することにより、任意の潜在領域Apに黄色光を照射することができる。
【0043】
コントローラ30は、複数の赤色LEDのうち、動作領域Aaに赤色光を照射する赤色LEDを点灯させる。すなわち、コントローラ30は、動作領域Aaに赤色光が照射されるように第1照射部を制御する。また、コントローラ30は、複数の黄色LEDのうち、潜在領域Apに黄色光を照射する黄色LEDを点灯させる。すなわち、コントローラ30は、潜在領域Apに黄色光が照射されるように第2照射部を制御する。なお、照射部41及びコントローラ30によって、動作領域Aa及び潜在領域Apを床50に視認可能に表示する表示手段が構成されている。
【0044】
図2は、作業者の作業領域W、ロボット20の動作領域Aa及び潜在領域Apを示す平面図である。
【0045】
工場内の設備領域Fにおいて、ロボット20が設置されている。ロボット20の周囲には、安全柵が設けられていない。上述したように、動作領域Aaに赤色光が照射され、潜在領域Apに黄色光が照射される。このため、作業者(すなわち人間)は、ロボット20の動作領域Aa及び潜在領域Apを視認することができる。したがって、作業者は、設備領域Fにおいて、動作領域Aa及び潜在領域Apに入らないようになり、作業領域Wにおいて作業を行うこととなる。
【0046】
ここで、ロボット20が所定作業を実行する実行速度が高いほど、ロボットシステム10の異常時におけるロボット20の潜在空間Spは大きくなる。実行速度は、ロボット20が所定作業を最短の時間で実行する場合を100%として、その何%の速度に相当するかを示す値である。なお、ロボット20の瞬間的な速度である動作速度も、実行速度に応じて変化する。例えば、実行速度が高いほど、動作速度も高くなる。このため、動作速度に基づく場合は、実行速度にも基づくこととなる。
【0047】
図3(a)は実行速度100%における動作領域Aa及び潜在領域Ap1を示す平面図であり、
図3(b)は実行速度50%における動作領域Aa及び潜在領域Ap2を示す平面図である。
【0048】
同図に示すように、ロボット20の実行速度が100%の場合と50%の場合とで、動作領域Aaは同一である。これは、所定作業におけるロボット20の動作軌跡は、実行速度にかかわらず予め決まっていることによる。しかしながら、実行速度100%の場合の潜在領域Ap1を、実行速度50%の場合の潜在領域Ap2よりも広く設定している。これは、実行速度が高いほど動作速度も高くなるため、コントローラ30がロボット20を停止させようとしてから停止するまでの移動距離が大きくなることによる。したがって、本実施形態では、ロボット20が所定作業を実行する実行速度が所定速度よりも高い場合の潜在領域Ap1を、実行速度が前記所定速度よりも低い場合の潜在領域Ap2よりも広く設定する。
【0049】
図4は、動作領域Aa及び潜在領域Apに可視光を照射する処理の手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、ロボット20が所定作業を開始する前に、コントローラ30によって実行される。
【0050】
まず、所定作業におけるロボット20の動作空間Saを算出する(S11)。詳しくは、所定作業におけるロボット20のアームの動作軌跡、アームの長さ、ロボット20の座標に基づいて、動作空間Saを算出する。
【0051】
続いて、所定作業におけるロボット20の動作領域Aaを算出する(S12)。詳しくは、ロボット20の座標に基づいて、動作空間Saを床50に投影して動作領域Aaを算出する。
【0052】
続いて、所定作業におけるロボット20の潜在空間Spを算出する(S13)。詳しくは、ロボット20が所定作業を実行する実行速度、及びロボット20の減速特性に基づいて、潜在空間Spを算出する。実行速度が高いほど、潜在空間Spを大きく設定する。また、減速特性は、アームが長いほど、アームが重いほど、モータの慣性が大きいほど、搬送するワークが重いほど、減速させにくい特性となる。そして、減速特性が、減速させにくい特性であるほど、潜在空間Spを大きく設定する。
【0053】
続いて、所定作業におけるロボット20の潜在領域Apを算出する(S14)。詳しくは、ロボット20の座標に基づいて、潜在空間Spを床50に投影して潜在領域Apを算出する。
【0054】
続いて、動作領域Aaに赤色光を照射させる(S15)。詳しくは、照射部41の複数の赤色LEDのうち、動作領域Aaに赤色光を照射する赤色LEDを選択して点灯させる。換言すれば、照射部41の複数の赤色LEDのうち、上記選択された赤色LED以外の赤色LEDは点灯させない。
【0055】
続いて、潜在領域Apに黄色光を照射させる(S16)。詳しくは、照射部41の複数の黄色LEDのうち、潜在領域Apに黄色光を照射する黄色LEDを選択して点灯させる。換言すれば、照射部41の複数の黄色LEDのうち、上記選択された黄色LED以外の黄色LEDは点灯させない。その後、この一連の処理を終了する(END)。
【0056】
そして、動作領域Aaに赤色光を照射させ、潜在領域Apに黄色光を照射させた状態で、ロボット20は所定作業を実行する。
【0057】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0058】
・ロボット20が所定作業において動作する空間である動作空間Saは予め決まっている。そこで、ロボット20の動作空間Saが床50を占める領域である動作領域Aaが、床50に視認可能に表示される。このため、ロボット20の動作領域Aaを作業者に視認させることができ、動作領域Aaに作業者が入る以前に、動作領域Aaに入らないように作業者に働きかけることができる。したがって、ロボット20の周囲に安全柵がない場合であっても、ロボット20の動作領域Aaに誤って作業者が入ることを未然に抑制することができる。
【0059】
・所定作業においてロボット20が強制停止させられるまでに動作する可能性のある空間である潜在空間Spは、コントローラ30により予測することができる。ひいては、ロボット20の潜在空間Spが床50を占める領域である潜在領域Apも、コントローラ30により予測することができる。本実施形態によれば、ロボット20の潜在領域Apが床50に視認可能に表示される。このため、ロボット20の潜在領域Apを作業者に視認させることができ、潜在領域Apにも入らないように作業者に働きかけることができる。
【0060】
・コントローラ30により、ロボット20の動作領域Aa及び潜在領域Apに可視光が照射されるように照射部41が制御される。このため、ロボット20の動作領域Aa及び潜在領域Apを、容易且つ正確に表示することができる。さらに、作業者の体のうち動作領域Aaや潜在領域Apに入った部分が可視光により照らし出されるため、動作領域Aaや潜在領域Apに入っていることを作業者に明確に視認させることができる。
【0061】
・コントローラ30は、ロボット20の動作領域Aaに第1照射部により赤色光を照射させ、ロボット20の潜在領域Apに第2照射部により黄色光を照射させる。このため、ロボット20の動作領域Aaと潜在領域Apとを区別して、作業者に視認させることができる。
【0062】
・ロボット20が所定作業を実行する実行速度が所定速度よりも高い場合の潜在領域Apが、実行速度が所定速度よりも低い場合の潜在領域Apよりも広く設定される。したがって、ロボット20の実行速度に応じて、潜在領域Apの広さを適切に設定することができる。
【0063】
・ロボット20の減速特性によって、ロボットシステム10の異常時におけるロボット20の潜在空間Spは変化する。本実施形態によれば、ロボット20の減速特性に応じて潜在領域Apが設定されるため、設定される潜在領域Apの精度を向上させることができる。
【0064】
・照射部41は、床50に可視光を照射する範囲が互いに異なる複数のLEDを備えている。動作領域Aaに可視光を照射するLED、及び潜在領域Apに可視光を照射するLEDを選択して点灯させることで、動作領域Aa及び潜在領域Apに可視光を容易に照射することができる。
【0065】
なお、第1実施形態を以下のように変更して実施することもできる。
【0066】
・実行速度として、ロボット20が所定作業を実行する際の動作速度のピーク値が、ロボット20の定格最高速度の何%に相当するかを示す値を用いてもよい。
【0067】
・第1実施形態では、照射部41は、床50に可視光を照射する範囲が互いに異なる複数のLEDを備えていた。しかしながら、照射部41が、可視光を広角度に照射するランプと、そのランプの光を遮蔽する範囲を調節する遮蔽機構とで構成されていてもよい。そして、コントローラ30は、遮蔽機構を制御することによりランプの光が床50に照射される範囲を調節して、ロボット20の動作領域Aaや潜在領域Apに可視光を照射させてもよい。
【0068】
・ロボット20が所定作業の実行中において、動作領域Aaに対するロボット20の現在の動作位置によって、ロボットシステム10の異常時におけるロボット20の潜在空間Spは変化する。
図5(a)は、中央付近の動作位置P11における動作領域Aa及び潜在領域Ap11を示す平面図である。同図に示すように、現在の動作位置P11が動作領域Aaの中央付近であれば潜在空間Sp、ひいては潜在領域Ap11は小さくなる。一方、
図5(b)は、端部付近の動作位置P12における動作領域Aa及び潜在領域Ap12を示す平面図である。同図に示すように、現在の動作位置P12が動作領域Aaの端部付近であれば潜在空間Sp、ひいては潜在領域Ap12は大きくなる。
【0069】
そこで、コントローラ30は、ロボット20が所定作業の実行中において、動作領域Aaに対するロボット20の現在の動作位置に応じて、潜在領域Apを可変とする。こうした構成によれば、動作領域Aaに対するロボット20の現在の動作位置に応じて、潜在領域Apを適切に変化させることができる。さらに、所定作業の実行中において、ロボット20の現在の動作位置が変化するのに伴って、表示される潜在領域Apが変化することから、潜在領域Apが変化しない場合と比較して人間の注意を引くことができる。
【0070】
・ロボット20が所定作業の実行中において、動作領域Aaに対するロボット20の現在の動作方向によって、ロボットシステム10の異常時におけるロボット20の潜在空間Spは変化する。
図6(a)は、中央へ向かう動作方向D1(動作位置P21)における動作領域Aa及び潜在領域Ap21を示す平面図である。同図に示すように、現在の動作方向D1が動作領域Aaの中央へ向かう方向であれば潜在空間Sp21、ひいては潜在領域Ap21は小さくなる。一方、
図6(b)は、端部へ向かう動作方向D2(動作位置P22)における動作領域Aa及び潜在領域Ap22を示す平面図である。同図に示すように、現在の動作方向D2が動作領域Aaの端部へ向かう方向であれば潜在空間Sp22、ひいては潜在領域Ap22は大きくなる。
【0071】
そこで、コントローラ30は、ロボット20が所定作業の実行中において、動作領域Aaに対するロボット20の現在の動作方向に応じて、潜在領域Apを可変とする。こうした構成によれば、動作領域Aaに対するロボット20の現在の動作方向に応じて、潜在領域Apを適切に変化させることができる。さらに、所定作業の実行中において、ロボット20の現在の動作方向が変化するのに伴って、表示される潜在領域Apが変化することから、潜在領域Apが変化しない場合と比較して人間の注意を引くことができる。
【0072】
・ロボット20が所定作業を実行する実行加速度によって、ロボットシステム10の異常時におけるロボット20の潜在空間Spは変化する。実行加速度は、上述した実行速度と同様にして、ロボット20が所定作業を最短の時間で実行する場合を100%として、その何%の加速度に相当するかを示す値である。なお、ロボット20の瞬間的な加速度である動作加速度も、実行加速度に応じて変化する。例えば、実行加速度が大きいほど、動作加速度も大きくなる。このため、動作加速度に基づく場合は、実行加速度にも基づくこととなる。
【0073】
例えば、
図3の実行速度と同様に、実行加速度が大きければ動作速度が高くなることから、潜在空間Sp(ひいては潜在領域Ap1)は大きくなる。また、実行加速度が小さければ動作速度が低くなることから、潜在空間Sp(ひいては潜在領域Ap2)は小さくなる。そこで、コントローラ30は、ロボット20が所定作業を実行する実行加速度が所定加速度よりも高い場合の潜在領域Ap1を、実行加速度が所定加速度よりも低い場合の潜在領域Ap2よりも広く設定する。詳しくは、実行加速度が高いほど、潜在領域Apを広く設定する。したがって、ロボット20の実行加速度に応じて、潜在領域Apを適切に変化させることができる。
【0074】
・
図7は、動作加速度の絶対値に基づいて動作領域Aaの外縁を設定する態様を示す平面図である。同図の動作位置P31,P32のように、ロボット20の動作位置が動作空間Saの外縁に近付くと、動作速度を徐々に低下させるために動作減速度を含めた動作加速度の絶対値が小さくなる。動作位置P31,P32は、動作加速度の絶対値が極小値となる臨界動作位置である。
図8は、臨界動作位置P32付近における時間と動作加速度の絶対値との関係を示すグラフである。同図に示すように、臨界動作位置P32付近では、動作加速度の絶対値が減少して極小値となった後、再び増加する。時刻tmでの動作位置が臨界動作位置P32である。
【0075】
そこで、コントローラ30は、所定作業におけるロボット20の各動作位置に対して動作加速度の絶対値を算出し、算出された動作加速度の絶対値が極小値となる臨界動作位置に基づいて、動作領域Aaの外縁を設定する。詳しくは、
図7に示すように、臨界動作位置P31の座標に基づいて動作領域Aaの外縁E1を設定し、臨界動作位置P32の座標に基づいて動作領域Aaの外縁E2を設定する。そして、ロボット20を中心とした扇形に動作領域Aaを設定する。このため、動作領域Aaの外縁を容易且つ正確に設定することができる。
【0076】
・臨界動作位置付近でのロボット20の動作速度によって、ロボットシステム10の異常時におけるロボット20の潜在空間Sp、ひいては潜在領域Apは変化する。そして、ロボット20の動作速度は動作加速度に応じて変化する。そこで、
図9に示すように、コントローラ30は、所定作業における臨界動作位置P36よりも手前の所定範囲に含まれる動作位置P33〜P35での動作加速度の絶対値に基づいて、潜在領域Ap32を設定する。
図10は、臨界動作位置P36付近の各動作位置P33〜P35での動作加速度の絶対値を示すグラフである。動作位置P33〜P36は、時刻t11〜t14にそれぞれ対応している。詳しくは、時刻t11〜t13における動作加速度の絶対値が大きいほど、潜在領域Apを広く設定する。こうした構成によれば、コントローラ30の処理負荷を軽減しつつ、設定される潜在領域Apの精度を向上させることができる。
【0077】
・ロボット20が所定作業を実行する実行速度、所定作業の実行中における動作領域Aaに対するロボット20の現在の動作位置、所定作業の実行中における動作領域Aaに対するロボット20の現在の動作方向、及びロボット20が所定作業を実行する実行加速度を組み合わせて、潜在領域Apを設定してもよい。要するに、所定作業を実行する実行速度、動作領域Aaに対するロボット20の現在の動作位置、動作領域Aaに対するロボット20の現在の動作方向、及び所定作業を実行する実行加速度の少なくとも1つに基づいて、潜在領域Apを設定すればよい。
【0078】
・動作領域Aaや潜在領域Apを予め算出して記憶させておき、ロボット20が所定作業を開始する前に、記憶された動作領域Aaや潜在領域Apを読み込んでもよい。
【0079】
・第1実施形態では、コントローラ30は、ロボット20の動作領域Aaに第1照射部により赤色光を照射させ、ロボット20の潜在領域Apに第2照射部により黄色光を照射させた。しかしながら、赤色と黄色とに限らず、その他の色(すなわち波長)の可視光を動作領域Aaと潜在領域Apとに照射させてもよい。また、動作領域Aa及び潜在領域Apに、同一色(すなわち同一波長)の可視光で明度の異なる可視光を照射させてもよい。その場合であっても、人間は動作領域Aaと潜在領域Apとを区別することができる。さらに、動作領域Aa及び潜在領域Apに、同一色で同一明度の可視光を照射させることもできる。その場合であっても、ロボット20の動作領域Aa及び潜在領域Apを人間に視認させることができる。また、動作領域Aaのみに可視光を照射させることもできる。その場合であっても、ロボット20の動作領域Aaを人間に視認させることができ、動作領域Aaに人間が入る以前に、動作領域Aaに入らないように人間に働きかけることはできる。
【0080】
・照射部41を、設置台40に限らず、ロボット20のベース部や、工場の天井等に設けることもできる。要するに、照射部41は、床50の動作領域Aaや潜在領域Apに、可視光を照射することができるものであればよい。また、ロボット20を床50に直接設置してもよい。
【0081】
・ロボット20の設置された設置台40が十分な広さを有しており、設置台40の上面を作業者が移動する場合は、設置台40の上面を可視光が照射される床面とみなすことができる。
【0082】
・動作領域Aaや潜在領域Apを、床50(すなわち床面)に視認可能に表示する態様は、動作領域Aaや潜在領域Apの全体に可視光を照射する態様に限らない。例えば、動作領域Aaや潜在領域Apの外縁にのみ可視光を照射してもよい。また、動作領域Aaや潜在領域Apに可視光を照射する態様に限らず、動作領域Aaや潜在領域Apをペイントやテープにより表示することもできる。
【0083】
・ロボット20として、垂直多関節型ロボットに限らず、水平多関節型ロボット等を採用することもできる。
【0084】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、ロボット20は複数の作業を実行する。その他の構成は、第1実施形態と同様である。そして、コントローラ30は、ロボット20が実行中の作業における動作領域Aa及び潜在領域Apに、第1実施形態と同様に可視光が照射されるように照射部41を制御する。
【0085】
図11は、各作業におけるロボット20の動作領域及び潜在領域を示す平面図である。同図に示すように、ロボット20は作業A〜Cを順に繰り返す。作業は、1つの作業を所定時間実行後に次の作業に切り替えられてもよいし、1つの作業を終了後に次の作業に切り替えられてもよい。
【0086】
動作領域Aaa〜Aacは互いに異なっており、潜在領域Apa〜Apcも互いに異なっている。作業Aでは、コントローラ30は、動作領域Aaaに赤色光を照射させ、潜在領域Apaに黄色光を照射させる。作業Bでは、コントローラ30は、動作領域Aabに赤色光を照射させ、潜在領域Apbに黄色光を照射させる。作業Cでは、コントローラ30は、動作領域Aacに赤色光を照射させ、潜在領域Apcに黄色光を照射させる。
【0087】
ここで、作業Cにおいて、作業者mの位置は、動作領域Aac及び潜在領域Apcよりも外側である。しかしながら、作業Cから作業Aに切り替わると、作業者mの位置は動作領域Aaa若しくは潜在領域Apaに含まれることとなる。その場合に、作業Aが開始されるまでに、作業者mが動作領域Aaa及び潜在領域Apaの外側へ出ないと、作業者mの安全を損ねるおそれがある。
【0088】
そこで、本実施形態では、コントローラ30は、各作業における潜在領域Apa,Apb,Apcを加算した加算潜在領域(Apa+Apb+Apc)のうち、ロボット20が実行中の作業における動作領域(例えば動作領域Aac)に含まれない領域に、第2照射部により黄色光を照射させる。
【0089】
図12は、現作業の動作領域及び加算潜在領域に可視光を照射する処理の手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、ロボット20が作業A〜Cを開始する前に、すなわち作業A〜Cのいずれも開始していない状態で、コントローラ30によって実行される。
【0090】
まず、各作業A〜Cにおけるロボット20の動作空間Saa〜Sacを算出する(S21)。1つの作業における動作空間Saを算出する方法は、
図4のS11の処理と同一である。各作業A〜Cにおけるロボット20の動作領域Aaa〜Aacを算出する(S22)。1つの作業における動作領域Aaを算出する方法は、
図4のS12の処理と同一である。各作業におけるロボット20の潜在空間Spa〜Spcを算出する(S23)。1つの作業における潜在空間Spを算出する方法は、
図4のS13の処理と同一である。各作業A〜Cにおけるロボット20の潜在領域Apa〜Apcを算出する(S24)。1つの作業における潜在領域Apを算出する方法は、
図4のS14の処理と同一である。
【0091】
続いて、各作業A〜Cにおける潜在領域Apa,Apb,Apcを加算した加算潜在領域Aptを算出する(S25)。詳しくは、重複を省いて潜在領域Apa,Apb,Apcを加算して、加算潜在領域Aptを算出する。換言すれば、潜在領域Apa,Apb,Apcのいずれも含む最小の領域を加算潜在領域Aptとして算出する。
【0092】
続いて、現在実行中の作業の動作領域Aaに赤色光を照射させる(S26)。動作領域Aaに赤色光を照射させる方法は、
図4のS15の処理と同一である。
【0093】
続いて、加算潜在領域Aptに黄色光を照射させる(S27)。詳しくは、加算潜在領域Aptに黄色光を照射させる際には、加算潜在領域Aptのうち、ロボット20が現在実行中の作業における動作領域Aaに含まれない領域に、第2照射部により黄色光を照射させる。黄色光を照射させる方法は、
図4のS16の処理と同一である。その後、この一連の処理を終了する(END)。なお、S26,S27の処理は、作業が切り替わる度に実行する。
【0094】
そして、
図13に示すように、現在実行中の作業の動作領域Aaに赤色光を照射させ、加算潜在領域Aptに黄色光を照射させた状態で、ロボット20は作業A〜Cを実行する。
【0095】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。なお、ここでは、第1実施形態と異なる利点のみを述べる。
【0096】
・ロボット20が実行する複数の作業A〜Cのうち、実行中の作業における動作領域Aaに可視光が照射される。このため、作業が切り替えられたとしても、実行中の作業における動作領域Aaを人間に視認させることができる。しかも、照射される動作領域Aaが変化することから、動作領域Aaが変化しない場合と比較して人間の注意を引くことができる。また、人間の体のうち動作領域Aaに入った部分が可視光により照らし出されるため、動作領域Aaに入っていることを人間に明確に視認させることができる。
【0097】
・各作業A〜Cにおける潜在領域Apa〜Apcを加算した加算潜在領域Aptのうち、ロボット20が実行中の作業における動作領域Aaに含まれない領域に可視光が照射される。このため、作業が切り替えられた場合に潜在領域Apとなる領域に人間が入ることを、未然に抑制することができる。さらに、照射される加算潜在領域Aptと動作領域Aaとの割合が変化することから、この割合が変化しない場合と比較して人間の注意を引くことができる。
【0098】
なお、第2実施形態を以下のように変更して実施することもできる。
【0099】
・各作業A〜Cにおいて、動作領域Aaや潜在領域Apを視認可能に表示する態様として、第1実施形態の各変更例を組み合わせ可能な範囲で適用することができる。
【0100】
・加算潜在領域Aptは、ロボット20が実行する全作業の潜在領域Apを加算した領域であってもよいし、複数の作業を含む一部の作業の潜在領域Apを加算した領域であってもよい。また、加算潜在領域Aptに黄色光を照射させる構成に代えて、各作業A〜Cにおいてそれぞれ潜在領域Apa〜Apcに黄色光を照射させる構成を採用することもできる。
【0101】
・コントローラ30は、各作業A〜Cにおける動作領域Aaa〜Aacを加算した加算動作領域Aatに、可視光が照射されるように照射部を制御してもよい。こうした構成によれば、作業が切り替えられた場合に動作領域Aaとなる領域に人間が入ることを、未然に抑制することができる。
【0102】
・加算動作領域Aatは、ロボット20が実行する全作業の動作領域Aaを加算した領域であってもよいし、複数の作業を含む一部の作業の動作領域Aaを加算した領域であってもよい。
【0103】
・コントローラ30は、各作業A〜Cにおける動作領域Aaa〜Aacを加算した加算動作領域Aatに、第1照射部により赤色光を照射させ、各作業A〜Cにおける潜在領域Apa〜Apcを加算した加算潜在領域Aptのうち、加算動作領域Aatに含まれない領域に、第2照射部により黄色光を照射させてもよい。こうした構成によれば、ロボット20の加算動作領域Aatと加算潜在領域Aptとを区別して、人間に視認させることができる。
【0104】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、
図14に示すように、ロボットシステム100は、隣り合うように床50に設置された複数のロボット20A〜20Dと、PLC(Programmable Logic Controller)110とを備えている。PLC110は、CPU、ROM、RAM等を備え、ロボット20A〜20Dの各コントローラ30を制御する上位のコントローラである。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0105】
ロボット20A〜20Dは、第1実施形態のロボット20と同様の構成を備えており、各コントローラ30(図示略)により制御される。そして、ロボット20A〜20Dは、それぞれ所定作業を実行する。ロボット20A〜20Dの各コントローラ30は、第1実施形態と同様に、動作領域Raa〜Radにそれぞれ赤色光を照射させ、潜在領域Rpa〜Rpdにそれぞれ黄色光を照射させる。作業者mは、ロボット20A〜20Dにそれぞれ近付いて作業を実行する。作業者mは、動作領域Raa〜Rad及び潜在領域Rpa〜Rpdを視認することができる。
【0106】
ロボット20A〜20Dは、主照射部である照射部41に加えて、照射部41が照射する可視光とは異なる可視光を照射する副照射部を備えている。詳しくは、主照射部は、赤色光を照射する第1照射部と黄色光を照射する第2照射部とを備え、副照射部は緑色光を照射する。副照射部は、第1照射部や第2照射部と同様の構成を備え、詳しくは複数の緑色LEDを備えている。
【0107】
隣り合うように設置されたロボットのうち、一方のロボットを第1ロボットとし、他方のロボットを第2ロボットとする。そして、第1ロボットの主照射部を第1主照射部とし、第2ロボットの主照射部を第2主照射部とする。また、第1ロボットの副照射部を第1副照射部とし、第2ロボットの副照射部を第2副照射部とする。さらに、第1ロボットの動作領域を第1動作領域とし、第2ロボットの動作領域を第2動作領域とする。また、第1ロボットの強制停止部を第1強制停止部とし、第2ロボットの強制停止部を第2強制停止部とする。第1ロボットの潜在領域を第1潜在領域とし、第2ロボットの潜在領域を第2潜在領域とする。
【0108】
ここで、第2潜在領域が、第1動作領域に第1潜在領域を加えた領域よりも広い場合がある。例えば、
図14において、ロボット20Bの近くに作業者mがいる場合、ロボット20A(第2ロボット)の潜在領域Rpaは、ロボット20B(第1ロボット)の動作領域Rabに潜在領域Rpbを加えた領域よりも広い。この場合に、作業者mが潜在領域Rpaと潜在領域Rpbとが同程度の広さと思い込んでロボット20Aに近付くと、作業者mが潜在領域Rpaに入るおそれがある。
【0109】
そこで、本実施形態では、基準を合わせて第2潜在領域及び第2動作領域を第1動作領域及び第1潜在領域に重ねた場合に、第2潜在領域及び第2動作領域が第1動作領域及び第1潜在領域から外れる領域に基づいて予報領域を設定する。そして、PLC110は、コントローラ30を通じて、副照射部により予報領域に緑色光を照射させる。
【0110】
図15は、動作領域、潜在領域、及び予報領域に可視光を照射する処理の手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、ロボット20A〜20Dが所定作業を開始する前に、すなわちロボット20A〜20Dのいずれも作業を開始していない状態で、PLC110及び各コントローラ30によって実行される。
【0111】
まず、各ロボット20A〜20Dの所定作業における動作空間を算出する(S31)。1つのロボットの所定作業における動作空間を算出する方法は、
図4のS11の処理と同一である。各ロボット20A〜20Dの所定作業における動作領域Raa〜Radを算出する(S32)。1つのロボットの所定作業における動作領域を算出する方法は、
図4のS12の処理と同一である。各ロボット20A〜20Dの所定作業における潜在空間を算出する(S33)。1つのロボットの所定作業における潜在空間を算出する方法は、
図4のS13の処理と同一である。各ロボット20A〜20Dの所定作業における潜在領域Rpa〜Rpdを算出する(S34)。1つロボットの所定作業における潜在領域を算出する方法は、
図4のS14の処理と同一である。
【0112】
続いて、基準を合わせて第2潜在領域及び第2動作領域を第1動作領域及び第1潜在領域に重ねた場合に、第2潜在領域及び第2動作領域が第1動作領域及び第1潜在領域から外れる領域に基づいて予報領域Rfを算出する(S35)。詳しくは、ロボット同士の基準位置(例えば基準座標)を合わせて、第2潜在領域及び第2動作領域を加算した領域から、第1動作領域及び第1潜在領域を加算した領域を減算した領域の所定割合を予報領域として算出する。第1ロボットの両側に第2ロボットが存在する場合は、両側の第2ロボットの第2潜在領域及び第2動作領域を考慮する。
【0113】
続いて、各ロボット20A〜20Dの動作領域Raa〜Radに赤色光を照射させる(S36)。動作領域に赤色光を照射させる方法は、
図4のS15の処理と同一である。
【0114】
続いて、各ロボット20A〜20Dの潜在領域Rpa〜Rpdに黄色光を照射させる(S37)。潜在領域に黄色光を照射させる方法は、
図4のS16の処理と同一である。
【0115】
続いて、予報領域Rfに副照射部により緑色光を照射させる(S38)。その後、この一連の処理を終了する(END)。なお、S35,S38の処理は、作業者mの移動により第1ロボットが切り替わる度に実行する。
【0116】
そして、
図16に示すように、例えばロボット20Bの近くに作業者mがいる場合、ロボット20Bに対応して予報領域Rfbに緑色光を照射させた状態で、ロボット20A〜20Dは所定作業を実行する。なお、例えばロボット20Dの近くに作業者mがいる場合、ロボット20Dに対応して予報領域Rfdに緑色光を照射させた状態で、ロボット20A〜20Dは所定作業を実行する。
【0117】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。なお、ここでは、第1実施形態及び第2実施形態と異なる利点のみを述べる。
【0118】
・基準を合わせて第2潜在領域及び第2動作領域を第1動作領域及び第1潜在領域に重ねた場合に、第2潜在領域及び第2動作領域が第1動作領域及び第1潜在領域から外れる領域に基づいて予報領域Rfが設定される。そして、予報領域Rfに副照射部により緑色光が照射される。このため、第1ロボットの近くにいる人間に、予め第2潜在領域が第1潜在領域よりも広いことを認識させることができる。したがって、第1ロボットの近くにいる作業者mが第2ロボットに近付いた場合に、作業者mが第2潜在領域に入ることを抑制することができる。
【0119】
なお、第3実施形態を以下のように変更して実施することもできる。
・副照射部は、黄色光を照射するものでもよく、赤色光を照射するものでもよい。すなわち、副照射部が主照射部と同一の可視光を照射するものでもよい。その場合であっても、第1ロボットの近くにいる人間に、予め第1潜在領域よりも広い領域を警戒させることができる。
【0120】
・第2ロボットが所定作業を実行する実行速度が高いほど、ロボットシステム100の異常時における第2ロボットの潜在空間(第2潜在空間)は大きくなる。そこで、PLC100及びコントローラ30は、第2ロボットが所定作業を実行する実行速度が所定速度よりも高い場合の第2潜在領域を、実行速度が前記所定速度よりも低い場合の第2潜在領域よりも広く設定してもよい。こうした構成によれば、第2ロボットの実行速度に応じて、第2潜在領域の広さを適切に設定することができる。ひいては、基準を合わせて第2動作領域及び第2潜在領域を第1動作領域及び第1潜在領域に重ねた場合に、第2動作領域及び第2潜在領域が、第1動作領域及び第1潜在領域から外れる領域に基づいて設定される予報領域を、適切に設定することができる。
【0121】
・第2ロボットが所定作業を実行する実行加速度が大きいほど動作速度が高くなることから、ロボットシステム100の異常時における第2潜在空間は大きくなる。そこで、PLC100及びコントローラ30は、第2ロボットが所定作業を実行する実行加速度が所定加速度よりも高い場合の第2潜在領域を、実行加速度が前記所定速度よりも低い場合の第2潜在領域よりも広く設定してもよい。こうした構成によれば、第2ロボットの実行加速度に応じて、第2潜在領域の広さを適切に設定することができる。ひいては、基準を合わせて第2動作領域及び第2潜在領域を第1動作領域及び第1潜在領域に重ねた場合に、第2動作領域及び第2潜在領域が、第1動作領域及び第1潜在領域から外れる領域に基づいて設定される予報領域を、適切に設定することができる。
【0122】
・第2ロボットが所定作業の実行中において、第2動作領域に対する第2ロボットの現在の動作位置によって、ロボットシステム100の異常時における第2潜在空間は変化する。例えば、現在の動作位置が第2動作領域の中央付近であれば第2潜在空間は小さくなり、現在の動作位置が第2動作領域の端部付近であれば第2潜在空間は大きくなる。そこで、PLC100及びコントローラ30は、第2ロボットが所定作業の実行中において、第2動作領域に対する第2ロボットの現在の動作位置に応じて、第2潜在領域を可変としてもよい。こうした構成によれば、第2動作領域に対する第2ロボットの現在の動作位置に応じて、第2潜在領域、ひいては予報領域を適切に変化させることができる。さらに、第2ロボットの現在の動作位置が変化するのに伴って、表示される予報領域が変化することから、予報領域が変化しない場合と比較して人間の注意を引くことができる。
【0123】
・第2ロボットが所定作業の実行中において、第2動作領域に対するロボットの現在の動作方向によって、ロボットシステム100の異常時における第2潜在空間は変化する。例えば、現在の動作方向が第2動作領域の中央へ向かう方向であれば第2潜在空間は小さくなり、現在の動作方向が第2動作領域の端部へ向かう方向であれば第2潜在空間は大きくなる。そこで、PLC100及びコントローラ30は、第2ロボットが所定作業の実行中において、第2動作領域に対する第2ロボットの現在の動作方向に応じて、第2潜在領域を可変としてもよい。こうした構成によれば、第2動作領域に対する第2ロボットの現在の動作方向に応じて、第2潜在領域、ひいては予報領域を適切に変化させることができる。さらに、第2ロボットの現在の動作方向が変化するのに伴って、表示される予報領域が変化することから、予報領域が変化しない場合と比較して人間の注意を引くことができる。
【0124】
・第2ロボットの減速特性によって、ロボットシステム100の異常時における第2潜在空間は変化する。例えば、第2ロボットの減速特性が、減速させやすい特性であれば第2潜在空間は小さくなり、減速させにくい特性であれば第2潜在空間は大きくなる。そこで、PLC100及びコントローラ30は、第2ロボットの減速特性に応じて、第2潜在領域を設定してもよい。こうした構成によれば、第2ロボットの減速特性に応じて第2潜在領域、ひいては予報領域が設定されるため、設定される予報領域の精度を向上させることができる。
【0125】
・ロボット20A〜20D所定作業において、動作領域や潜在領域を視認可能に表示する態様として、第1実施形態の他の各変更例も組み合わせ可能な範囲で適用することができる。
【0126】
・ロボット20A〜20Dが、それぞれ複数の作業を実行してもよい。その場合、各作業において、動作領域や潜在領域を視認可能に表示する態様として、第2実施形態及びその各変更例を組み合わせ可能な範囲で適用することができる。
【0127】
・第2動作領域が第1動作領域よりも広い場合がある。この場合に、作業者mが第2動作領域と第1動作領域とが同程度の広さと思い込んで第2ロボットに近付くと、作業者mが第2動作領域に入るおそれがある。そこで、PLC100及びコントローラ30は、第1動作領域に第1照射部により赤色を照射させ、第2動作領域を、基準を合わせて第1動作領域に重ねた場合に第1動作領域から外れる領域に基づいて予報領域Rfを設定する。そして、予報領域Rfに副照射部により緑色光を照射させることもできる。こうした構成によれば、第1ロボットの近くにいる作業者mに予め第2動作領域が第1動作領域よりも広いことを認識させることができる。したがって、第1ロボットの近くにいる作業者mが第2ロボットに近付いた場合に、作業者mが第2動作領域に入ることを抑制することができる。
【0128】
・第2動作領域が、第1動作領域に第1潜在領域を加えた領域よりも広い場合がある。この場合に、作業者mが、第1動作領域に第1潜在領域を加えた領域と同程度の広さを警戒して第2ロボットに近付くと、人間が第2動作領域に入るおそれがある。そこで、PLC100及びコントローラ30は、基準を合わせて第2動作領域を第1動作領域及び第1潜在領域に重ねた場合に、第2動作領域が第1動作領域及び第1潜在領域から外れる領域に基づいて予報領域を設定することもできる。こうした構成によれば、第1ロボットの近くにいる人間が第2ロボットに近付いた場合に、人間が第2動作領域に入ることを抑制することができる。
【0129】
・ロボット20A〜20Dは、同型のロボットに限らず、異なる型のロボットを含んでいてもよい。
【0130】
・ロボット20A〜20Dは、向きを揃えて設置されている構成に限らず、異なる向きに設置されている構成であってもよい。その場合も、第2動作領域及び第2潜在領域を、基準を合わせて第1動作領域及び第1潜在領域に重ねた場合に第1動作領域及び第1潜在領域から外れる領域に基づいて予報領域を設定すればよい。また、第2動作領域を、基準を合わせて第1動作領域に重ねた場合に第1動作領域から外れる領域に基づいて予報領域を設定してもよい。