(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1.砥石車の構成)
以下、本発明にかかる砥石車の実施形態について図面に基づき説明する。
図1に示すように、砥石車10は、円板状部材13と、円板状部材13の外周面に配置され、工作物Wを研削する砥石層16と、を備える。円板状部材13は、鉄、アルミニウム等の金属又は樹脂等で成形される。
【0010】
円板状部材13は、砥石車10の回転軸線CL(
図1においては、紙面手前から奥行き方向の延びている)回りに回転駆動される。なお、以降において特別な説明なしに回転軸線CLといった場合、砥石車10の回転軸線CLのことをいう。砥石層16は、周方向に等分に分割される複数(本実施形態では16個)の周方向分割砥石チップAによって構成される。即ち、周方向分割砥石チップAも砥石層16であるといえる。なお、16個の周方向分割砥石チップAは、全て同じ形状である。よって、以降の説明においては、特別な事情がない限り、砥石層16の説明のため、一個の周方向分割砥石チップAを取りだし、それを代表として説明する。また、砥石車10は、工作物W(例えば、自動車用クランクシャフトのクランクピン、ジャーナル等)の外周に設けられた凹部を研削対象とする総形の砥石車である。
【0011】
(2.周方向分割砥石チップAの構成)
図2に示すように、砥石車10を構成する周方向分割砥石チップA(砥石層16)の研削面17は、円筒研削面17aと、端部研削面17bと、角部研削面17cと、を備える。円筒研削面17aは、円板状部材13の回転軸線CLと平行に形成され、
図5,
図6に示す工作物Wの凹部50(凹溝)の底面48を研削する。また、端部研削面17bは、回転軸線CLと直交し、回転軸線CL方向において円筒研削面17aの両側に形成される。端部研削面17bは、
図6に示す凹部50の側面46,47を研削する。
【0012】
また、角部研削面17cは、円筒研削面17a、及び端部研削面17bを、一定の曲率半径Rを有する曲線、即ち円弧形状(湾曲状に相当)の曲線で接続することにより形成される。角部研削面17cは、工作物Wの凹部50の側面46,47と、底面48とを接続するR状(湾曲状)の角部49(
図6参照)を研削する。
【0013】
また、周方向分割砥石チップA(砥石層16)は、1個の円筒部砥石層21と、2個の端部砥石層22とを備える。
図2に示すように、円筒部砥石層21は、角部研削面17cの一部、及び円筒研削面17aを備える(範囲P(一重の二点鎖線部)参照)。端部砥石層22は、角部研削面17cのうちの他の部分及び端部研削面17bを備える(範囲Q(二重の二点鎖線部)参照)。以降においては、円筒部砥石層21が備える角部研削面17cの一部及び円筒研削面17a(範囲P)を合わせて第二研削面52と呼称する場合がある。端部砥石層22が備える角部研削面17cのうちの他の部分及び端部研削面17b(範囲Q)を合わせて第一研削面51と呼称する場合がある。また、円筒部砥石層21と端部砥石層22とは、異なる性状を有して形成される(後に詳述する)。
【0014】
図2に示すように、端部砥石層22,22、及び円筒部砥石層21は、
図2における左側から右側に向って、軸線方向に端部砥石層22、円筒部砥石層21、端部砥石層22の順に整列して配置される。端部砥石層22,22、及び円筒部砥石層21は、それぞれ隣り合う砥石層との間に境界面22a,22a及び境界面21a,21aを備える。つまり、端部砥石層22,22は、回転軸線CL方向で隣接する円筒部砥石層21側に境界面22a,22aを備える。また、円筒部砥石層21は、回転軸線CL方向において両側で隣接する端部砥石層22,22側に境界面21a,21aを備える。
【0015】
そして、相互に対向する各境界面22a,21a同士が接合され、周方向分割砥石チップAが形成される。なお、境界面22aと境界面21aとが接合された状態における境界面22aと境界面21aとを合わせて接合面23と称す。後に詳述するが、このとき、接合面23、特に回転軸線CL方向において、角部研削面17cが形成される範囲における接合面23は、回転軸線CLに対し予め設定された傾斜を有して形成される。以降において、接合面23といった場合、この接合面23のことをいう。また、
図2に示すように、接合面23は、角部研削面17cの所定の位置から周方向分割砥石チップA(砥石層16)の内部に向かって形成される。なお、本実施形態では、接合面23は、回転軸線CLに対し予め設定された傾斜を有する部分だけではなく、砥石層16の内部において、回転軸線CLと直交する部分を有して形成されている。これは、砥石層16の作りやすさの観点からこのような形状としただけである。よって、このような態様に限らず、接合面23は、回転軸線CLに対し予め設定された傾斜を有する部分のみを備えて形成されてもよい。
【0016】
角部研削面17cの縦断面形状は、上述したように、所定の曲率半径Rを備える円弧形状(湾曲状)で形成される(
図2、
図3参照)。そして、角部研削面17cにおける接合面23の表面位置は、角部研削面17cの円弧中心Oを通り、回転軸線CLに対し45°の方向に延長する線LEと角部研削面17cとの交差位置Tよりも、端部研削面17b側に位置する。なお、縦断面とは、回転軸線CLを含む面によって切断される砥石車10の径方向断面をいう。つまり、
図1の矢視II−II切断線で示される
図2の断面図も縦断面を示している。また、接合面23の表面位置とは、接合面23が砥石層16の外部に露出される位置をいう。
【0017】
上記において、回転軸線CLに対する接合面23の傾斜角度α°(
図3参照)は、任意に設定可能である。ただし、好ましくは、傾斜角度α°は、端部砥石層22の端部研削面17bに対するツルーイングTL(
図3中、2点鎖線参照)の1回あたりのツルーイング量L1に基づいて設定されることが好ましい。詳細には、端部研削面17bに対する1回当たりのツルーイング量L1と、円筒部砥石層21の円筒研削面17aに対する1回当たりのツルーイング量L2との比に応じて、傾斜角度α°が決定されることが好ましい。つまり、一例として、
図3に示すように、L1:L2が、3:1の比であるとした場合、α°=tan
−1(1/3)とすることが好ましい。これにより、例えば、L1:L2が、
図3の2点鎖線に示すように、3:1の比で、
図3の右から左に向ってツルーイングされ続けた場合、端部研削面17b、円筒研削面17a、及び接合面23の関係は、ほぼ相似の関係を維持できる。本実施形態においては、L1とL2の大きさの関係は、常にL1>L2である。これによって、回転軸線CLに対する接合面23の傾斜角度α°は、常に45°より小さい。
【0018】
なお、ここでいうツルーイングTLとは、所定時間研削作業を工作物Wに対し行なったことにより、表面状態が一定以上荒れた状態となった砥石の研削面(第一研削面51、及び第二研削面52)に対し、表面状態を修正するために研削し、新たに新生面を得るための公知の技術である。よって、詳細な説明は省略する。また、ツルーイング量L1,L2とは、修正前の砥石の表面からの削り取り(切り込み)深さをいう。
【0019】
図4に示すように、端部砥石層22は、例えば、CBN、ダイヤモンド等の超砥粒14を結合材15で結合し形成される。端部砥石層22は、一例として、硬度が高く比較的摩耗しにくい砥石層である。
【0020】
また、
図4に示すように、円筒部砥石層21は、例えば、CBN、ダイヤモンド等の超砥粒19を結合材20で結合し形成されたものである(図略)。円筒部砥石層21は、一例として、砥石の粒径が小さな仕上げ研削用であり、硬度が低く比較的摩耗しやすい砥石層である。結合材15,20として、ビトリファイド結合材、レジノイド結合材等がある。
【0021】
なお、上記では説明しなかったが、本実施形態においては、
図2の拡大図である
図3に示すように、円筒部砥石層21と端部砥石層22との間の接合面23の両側には、混合部24と呼称される砥石層が形成される。混合部24は、円筒部砥石層21と端部砥石層22とを加熱して接合する際、端部砥石層22の結合材15、及び円筒部砥石層21の結合材20の溶融によって形成される層である。混合部24は、円筒部砥石層21が有する、例えば粒度#800のCBN砥粒(超砥粒19)と、端部砥石層22が有する、例えば粒度#80のCBN砥粒(超砥粒14)とが、ほぼ均一に混在した砥石層部分である。
【0022】
混合部24では、結合材15及び結合材20も混在している。よって、混合部24は、端部砥石層22と円筒部砥石層21の両方の特性を有しており、摩耗のし易さは、端部砥石層22と円筒部砥石層21とのほぼ中間である。本実施形態においては、混合部24の幅Mは狭いほどよく、片側の幅(M/2)は、最大でも端部砥石層22及び円筒部砥石層21の各超砥粒14,19が、1〜2個分だけ収容可能な幅に収まることが好ましい。
【0023】
これにより、第一研削面51において、端部砥石層22の組成のみによって研削加工の実施が可能な領域は、第一研削面51から、接合面23より第一研削面51側の混合部24(幅=M/2)を除いた範囲となる。また、第二研削面52においても、第一研削面51と同様に、円筒部砥石層21の組成のみによって研削加工の実施が可能な領域は、第二研削面52から、接合面23より第二研削面52側の混合部24(幅=M/2)を除いた範囲となる。なお、製作上可能であれば、混合部24はなくてもよい。
【0024】
そして、端部砥石層22,22、円筒部砥石層21,及び混合部24によって周方向分割砥石チップAが形成される。また、周方向分割砥石チップAが円板状部材13の外周面に周方向に並べられて砥石層16が形成される。
【0025】
(3.周方向分割砥石チップAの製造方法)
次に、周方向分割砥石チップAの製造方法について簡単に説明する。端部砥石層22を製造するため、まず端部砥石層22用の超砥粒14および結合材15等を混合した粉体が、プレス機によりプレスされて端部砥石層22用の砥石チップが成形される。そして、プレス成形された砥石チップが乾燥され、乾燥後に焼成されて端部砥石層22が完成する。円筒部砥石層21についても、端部砥石層22用の超砥粒14および結合材15が、円筒部砥石層21用の超砥粒19および結合材20に変更されるだけであり、端部砥石層22と同様の方法によって製造される。
【0026】
次に、接合のため、端部砥石層22と円筒部砥石層21との各境界部22a、21aを相互に接触させた状態で焼成する。焼成した端部砥石層22,円筒部砥石層21の各境界部22a、21aの接触部近傍では、結合材15及び結合材20が溶融する。このような状態で、各端部砥石層22,及び円筒部砥石層21の各超砥粒14,19が上述したように混ざり合い、接合面23の両側に混合部24を形成しつつ、周方向分割砥石チップAが形成される。このように形成された16個の周方向分割砥石チップAが、円板状部材13の外周面の周方向全周に接着剤(図略)により連続的に貼付され、砥石車10が形成される。
【0027】
(4.研削盤25の構成)
次に、砥石車10が装着されて工作物Wを研削加工する研削盤25について
図5に基づいて説明する。
図5に示すように、ベッド26上には、テーブル27が摺動可能に載置され、サーボモータ28によりボールネジを介してZ軸方向に移動される。テーブル27上には、主軸台29と心押台30とが対向して取り付けられ、主軸台29と心押台30との間に工作物WがZ軸方向にセンタ支持される。主軸台29には主軸31が回転可能に軸承され、サーボモータ32により回転駆動される。工作物Wは主軸31にケレ回し等により連結されて回転駆動される。
【0028】
ベッド26上には、砥石台34が摺動可能に載置され、サーボモータ35によりボールネジを介してZ軸と直角に交差するX軸方向に移動される。砥石台34には砥石軸36が回転可能に軸承され、ビルトインモータ37により回転駆動される。砥石軸36の先端には砥石車10の円板状部材13に穿設された中心穴38が嵌合されてボルトにより固定されている。
【0029】
CNC装置40は、サーボモータ28,32,35及びビルトインモータ37の駆動回路41−44に接続されている。CNC装置40は、研削加工時に研削加工用NCプログラムを順次実行して砥石車10に工作物Wを研削加工させる。
【0030】
CNC装置40は、砥石車10に工作物Wを研削加工させるときは、研削加工用NCプログラムを実行し、砥石車10を高速回転速度で回転させる回転指令を、ビルトインモータ37の駆動回路44に出力する。また、CNC装置40は、工作物Wを研削加工に適した周速度で回転させる回転指令を、主軸31を回転駆動するサーボモータ32の駆動回路42に出力する。次に、工作物Wが砥石車10と対向する位置にテーブル27をZ軸方向に移動させる送り指令が、サーボモータ28の駆動回路41に出力される。
【0031】
砥石車10が工作物Wの研削箇所と対向すると、砥石台34をX軸方向に粗研削送り速度で前進移動させる指令が、サーボモータ35の駆動回路43に出力される。これにより、砥石車10は、図略のクーラントノズルからクーラントを供給されながら工作物Wを研削加工する。
【0032】
(5.研削時の作用について)
次に、砥石車10による工作物Wの研削の詳細について説明する。前述したとおり、工作物Wはクランクシャフトであり、研削する部位は、クランクシャフトの凹部50である、例えば、
図5に示すクランクジャーナル45の外周面及び
図6に示すクランクジャーナル45の回転軸方向両側面46,47である。以後、クランクジャーナル45の外周面及び回転軸方向両側面46,47を、凹部50とのみ称す場合がある。また、クランクジャーナル45の外周面を凹部50の底面とみなして、底面48と称す場合がある。
【0033】
図6に示すように、砥石車10は、総形の砥石層16を備え、回転軸線CL方向において、砥石層16(周方向分割砥石チップA)が、凹部50内に収容可能な大きさで形成されている。このため、砥石車10は、凹部50の回転軸方向両側面46,47を研削によって除去加工するため、
図6に示す矢印Ar1,矢印Ar2の方向にそれぞれ切り込む。つまり、砥石車10は、摩耗しにくい端部砥石層22を回転軸線CL方向両側に備えた第一研削面51の一部によって、凹部50の両側面46、47を除去加工する。そして、両側面46、47の除去加工が終了すると、砥石車10の円筒研削面17a(外周面)が、凹部50の底面48(クランクジャーナル45の外周面)に到達し、摩耗し易い円筒部砥石層21の円筒研削面17aが回転軸線CL方向にトラバースされることによって凹部50の底面48の仕上げ研削加工が行なわれる。
【0034】
このとき、砥石車10の砥石層16では、摩耗が比較的小さくなる端部砥石層22を備える第一研削面51と、摩耗が比較的大きくなる円筒部砥石層21の第二研削面52と、の境界となる接合面23が、
図2,
図3に示すように形成されている。つまり、接合面23の表面位置が、角部研削面17cの円弧中心Oを通り回転軸線CLに対し45°の方向に延長する線LEと角部研削面17cとの交差位置Tよりも、端部研削面17b側に位置している。また、接合面23は、回転軸線CLとの為す角度が45°よりも小さな傾斜角度α°で砥石層16の内部に向って形成される。
【0035】
このように形成された砥石車10が、凹部50内を研削すると、接合面23を境に、第一研削面51と、第二研削面52とが、工作物Wに生じる研削抵抗によってそれぞれ相応に摩耗する。そして、異なる摩耗量によって、両者の間に段差が発生する。しかし、その段差Diは、角部研削面17c内に生じ、その段差形状は
図7に示すような形状となる(
図7中の斜線部は、段差Diを生じさせた円筒部砥石層21が備える第二研削面52の摩耗部分を示す)。つまり、本発明が適用された砥石車10によって工作物Wを研削した場合においては、砥石層16に生じる段差Diは、回転軸線CLと直交方向に接合面を備えた従来技術の砥石車において砥石層に生じる段差のように目立つ段差ではない。これにより、段差Diが工作物Wに転写されても工作物Wでは良好な面精度が得られる。
【0036】
(6.ツルーイング時の作用について)
次に、研削作業中に、砥石層16に対してツルーイングTLを行なった場合の作用について、
図3に基づき説明する。このときのツルーイングTLの条件としては、前述したように、端部砥石層22の端部研削面17bに対するツルーイングTL1の1回当たりのツルーイング量L1と、円筒部砥石層21の円筒研削面17aに対するツルーイングTL2の1回当たりのツルーイング量L2との比を3:1とする。具体的には、ツルーイングTL1の1回当たりのツルーイング量L1を、例えば、30μmとする。また、ツルーイングTL2の1回当たりのツルーイング量L2を、例えば、10μmとする。これより、回転軸線CLに対する接合面23の傾斜角度α°を、α°=tan
−1(1/3)とする。
【0037】
また、接合面23の表面位置は、前述のとおり、角部研削面17cの円弧中心Oを通り回転軸線CLに対し45°の方向に延長する線LEと角部研削面17cとの交差位置Tよりも、若干、端部研削面17b側よりに位置させる。このような条件において、砥石層16に対し、ツルーイングTL1、及びツルーイングTL2を1回ずつ実施したときの、各ツルーイングTL後の状態が二点鎖線で示されている。なお、複数の二点鎖線は、右から左に向って、1回目、2回目、3回目・・・、における各ツルーイング後の第一研削面51、及び第二研削面52を示している。
【0038】
図3を見て判るように、各ツルーイングTLの度に、角部研削面17cの円弧の大きさは小さくなっているが、端部研削面17b,円筒研削面17a,および接合面23の関係は、ほぼ相似の関係を維持している。これにより、ツルーイングTLを複数回繰り返しても、接合面23で発生する上述の小さな段差Di(
図7参照)は同様の形状を維持できる。また、端部研削面17bにおいて、ツルーイングTLを重ねても、端部研削面17bから接合面23の第一研削面51側に形成された混合部24までの距離Bは、接合面23の傾斜の作用によって、しばらく変化せず維持される。即ち、距離Bが、維持される間、研削する力が大きな端部砥石層22(端部研削面17b)によって側面46,47に対する研削は良好に行なわれる。
【0039】
(7.実施形態による効果)
上記実施形態によれば、砥石車10は、円板状部材13と、円板状部材13の外周面に配置され、工作物Wを研削する砥石層16と、を備える。砥石層16の研削面は、円板状部材13の回転軸線CLと平行に形成される円筒研削面17aと、回転軸線CLと直交し回転軸線CL方向において円筒研削面17aの両側に形成される端部研削面17bと、円筒研削面17a及び端部研削面17bを湾曲状に接続する角部研削面17cと、を備える。砥石層16は、角部研削面17cの一部及び円筒研削面17aを備える円筒部砥石層21と、角部研削面17cのうちの他の部分及び端部研削面17bを備え円筒部砥石層21とは性状が異なる端部砥石層22と、を備える。そして、円筒部砥石層21と端部砥石層22とは、回転軸線CLに対し予め設定された傾斜を有して各境界面21a、22a同士が接合されて接合面23が形成される。接合面23は、角部研削面17c内の所定の位置から砥石層16の内部に向かって形成される。
【0040】
このように、円筒部砥石層21及び端部砥石層22の接合面23が回転軸線CLに対し傾斜を有するとともに、接合面23は、角部研削面17cの所定の位置から砥石層16の内部に向かって形成される。つまり、接合面23が、角部研削面17c内において、回転軸線CLに対して平行な面(円筒研削面17a)に近い部分ではなく、回転軸線CLに対して直交する面(端部研削面17b)に近い部分に設けられる。このため、摩耗が大きな円筒部砥石層21と、摩耗が小さな端部砥石層22との間において段差Diが生じても、接合面が回転軸線と直交する従来技術の段差と比較して、その段差Diは目立ちにくい。また、従来技術と同様に、例えば、端部砥石層22の方が、円筒部砥石層21よりも大きく摩耗する場合であっても、円筒部砥石層21と端部砥石層22との間において生じる段差Diは、従来技術の段差と比較して目立ちにくい。これにより、研削される工作物Wに転写される段差も目立たず、工作物Wでは、精度のよい研削面が得られる。
【0041】
また、接合面23が回転軸線CLに対し傾斜を有しているため、円筒部砥石層21及び端部砥石層22の各研削面をツルーイングTLする場合、従来技術のように、端部砥石層22の研削面(端部研削面17b)から接合面23までの距離が、ツルーイングTLの度に一律に減少していくことはない。このため、従来技術に対して、使用時間限界が延び砥石の寿命が向上する。
【0042】
さらに、工作物Wの凹部50の側面46,47の研削を行なう端部砥石層22の研削面(端部研削面17b)から接合面23までの距離、詳細には接合面23の両側に形成される混合部24までの距離(
図3中、B参照)は、接合面23の傾斜の作用によって、所定の回数のツルーイングTLを行なっても同じ距離を維持することができる。これによって砥石車10の寿命が向上する。
【0043】
また、上記実施形態によれば、砥石層16の角部研削面17cの縦断面は、円弧形状に形成され、角部研削面17c上における接合面23の表面位置は、角部研削面17cの円弧中心Oを通り回転軸線CLに対し45度の方向に延長する線LEと角部研削面17cとの交差位置Tよりも、端部研削面17b側に位置する。つまり、角部研削面17cにおいて、接合面23の表面位置が、回転軸線CLと平行に近い側ではなく、直交に近い側の部分に設けられる。これにより、回転軸線CL方向における接合面23の両側に、回転軸線CLと直交する方向の段差が生じても、段差は目立ちにくい。
【0044】
また、上記実施形態によれば、円筒部砥石層21に対する1回当たりのツルーイング量L2よりも端部砥石層22に対する1回当たりのツルーイング量L1の方が少なく、回転軸線CLと接合面23とが為す傾斜角は、45度よりも小さくなるよう設定した。このように、研削加工する製品に応じた各砥石層21、22の摩耗量に基づき、各砥石層21,22に対するツルーイング量L1,L2を決定し、ツルーイング量L1,L2に応じて傾斜角度α°を設定するので、端部研削面17b、円筒研削面17a、及び接合面23は、常に最適な相似の関係を維持しやすく、砥石寿命の向上が図りやすい。
【0045】
(8.その他)
なお、上記実施形態においては、周方向分割砥石チップAを周方向に16個配置して砥石層16を形成した。しかし、周方向分割砥石チップAの数はいくつでもよい。また、砥石層16は、分割せず、円周方向において、一体的に形成してもよい。
【0046】
また、上記実施形態においては、砥石層16の角部研削面17cの縦断面は、円弧形状に形成され、角部研削面17c上における接合面23の表面位置は、角部研削面17cの円弧中心Oを通り回転軸線CLに対し45度の方向に延長する線と角部研削面との交差位置Tよりも、端部研削面17b側に位置した。しかし、この態様には限らない。接合面23の表面位置は、角部研削面17c上であれば、どの位置にあってもよい。これによっても、相応の効果は得られる。
【0047】
また、上記実施形態においては、回転軸線CLに対する傾斜角度α°は45°よりも小さい角度であるものとした。しかし、この態様には限らない。傾斜角度α°は、45°以上でもよい。これによっても、相応の効果は得られる。