特許第6554967号(P6554967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554967
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】サポートアセンブリおよび鍵盤装置
(51)【国際特許分類】
   G10C 3/16 20190101AFI20190729BHJP
   G10B 3/12 20060101ALI20190729BHJP
   G10H 1/34 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   G10C3/16 120
   G10B3/12 130
   G10H1/34
   G10C3/16
   G10C3/16 130
   G10C3/16 110
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-145644(P2015-145644)
(22)【出願日】2015年7月23日
(65)【公開番号】特開2017-26838(P2017-26838A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大庭 聡斗
【審査官】 上田 雄
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭46−30774(JP,Y1)
【文献】 特開2005−292361(JP,A)
【文献】 実開平05−090572(JP,U)
【文献】 特開2017−026842(JP,A)
【文献】 特開2018−022179(JP,A)
【文献】 特開2017−026841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10C 1/00−3/30
G10B 3/12
G10H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームに対して回動可能に配置されるサポートと、
ジャック大およびジャック小の間を回動中心として、前記サポートに対して回動可能に接続されるジャックと、
前記ジャック大から前記ジャック小とは反対側に突出し、前記ジャックと共に回動する突出部と、
前記サポートに配置され、前記突出部と摺接する第1ガイド部と、
を備えることを特徴とするサポートアセンブリ。
【請求項2】
前記第1ガイド部は、前記サポートの本体部から上方に突出していることを特徴とする請求項1に記載のサポートアセンブリ。
【請求項3】
前記突出部および前記第1ガイド部の少なくとも一方は、凸部を備え、
前記突出部と前記第1ガイド部とは、前記凸部を介して摺接することを特徴とする請求項1に記載のサポートアセンブリ。
【請求項4】
前記第1ガイド部は、前記突出部の両側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のサポートアセンブリ。
【請求項5】
前記第1ガイド部は、前記突出部の側面の一方に配置された第1部材、および他方に配置された第2部材を備え、
前記第1部材と前記第2部材とは、前記突出部を側面から見た場合に重畳しないように配置されていることを特徴とする請求項4に記載のサポートアセンブリ。
【請求項6】
前記第1部材は、前記第2部材に近い端部において第1凸部を備え、
前記第2部材は、前記第1部材に近い端部において第2凸部を備え、
前記第1部材は前記第1凸部を介して前記突出部と摺接し、
前記第2部材は前記第2凸部を介して前記突出部と摺接することを特徴とする請求項5に記載のサポートアセンブリ。
【請求項7】
前記サポートは、前記ジャックを回動可能に支持するジャック支持部を備え、
前記ジャック支持部は、前記ジャックの側面と摺接する第2ガイド部を備えることを特徴とする請求項1に記載のサポートアセンブリ。
【請求項8】
前記第2ガイド部は、前記ジャックの側面の一方に配置された第1部材、および他方に配置された第2部材を備え、
前記第1部材と前記第2部材とは、前記ジャックを側面から見た場合に重畳しないように配置されていることを特徴とする請求項7に記載のサポートアセンブリ。
【請求項9】
前記突出部は、前記第1ガイド部の両側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のサポートアセンブリ。
【請求項10】
前記突出部は、前記第1ガイド部の側面の一方に配置された第1部材、および他方に配置された第2部材を備え、
前記第1部材と前記第2部材とは、前記第1ガイド部を側面から見た場合に重畳しないように配置されていることを特徴とする請求項9に記載のサポートアセンブリ。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の複数のサポートアセンブリと、
前記サポートアセンブリの各々に対応して配置され、前記サポートを回動させるための鍵と、
前記鍵の押下に応じて発音する発音機構と、
を備える鍵盤装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵盤装置に用いるサポートアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のグランドピアノやアップライトピアノなどのアコースティックピアノは、多くの部品によって構成されている。また、これらの部品の組み立ては非常に複雑であるため、組み立て作業にかかる時間が長くなってしまう。特に、各鍵に対応して設けられるアクション機構は、多くの部品が必要であり、その組み立て作業も非常に複雑である。
【0003】
例えば、特許文献1に示すアクション機構は、複数の部品が互いに作用して、押鍵および離鍵による鍵の動作がハンマに伝達される。特に、アクション機構の一部を構成するサポートアセンブリは、様々な部品が組み合わされて動作する。サポートアセンブリは押鍵に応じてハンマによる打弦を実現する機構だけでなく、打弦直前に鍵の動作によりハンマへ伝達される力を解放させるためのエスケープメント機構を有している。この機構は、アコースティックピアノの基本的な動作を実現するための重要な機構である。特に、グランドピアノでは、一般的に、レペティションレバーとジャックとを組み合わせたダブルエスケープメント機構が採用されている。
【0004】
アクション機構の動作は、鍵を通して演奏者の指に感覚(以下、タッチ感という)を与える。特に、サポートアセンブリの構成は、タッチ感に重要な影響を与えている。例えば、エスケープメント機構の動作によるタッチ感は、レットオフといわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−292361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サポートアセンブリを構成する各部品の数が多いため、製造期間が長期化し、製造コストが上昇してしまう。そのため、製造コストを低減しようとして、単純に、部品数を減らしたり、構造を簡略化したりすることが望まれている。しかしながら、サポートアセンブリの構成を変更すると、鍵の操作時のタッチ感が大きく変化してしまう。そのため、アコースティックピアノの製造費用を抑えることは困難である。
【0007】
本発明の目的の一つは、アコースティックピアノの鍵盤装置と比較して、鍵の操作時のタッチ感の変化を抑えつつ、サポートアセンブリの製造コストを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、フレームに対して回動可能に配置されるサポートと、ジャック大およびジャック小の間を回動中心として、前記サポートに対して回動可能に接続されるジャックと、前記ジャック大から前記ジャック小とは反対側に突出し、前記ジャックと共に回動する突出部と、前記サポートに配置され、前記突出部と摺接する第1ガイド部と、を備えることを特徴とするサポートアセンブリが提供される。
【0009】
前記第1ガイド部は、前記サポートの本体部から上方に突出していてもよい。
【0010】
前記突出部および前記第1ガイド部の少なくとも一方は、凸部を備え、前記突出部と前記第1ガイド部とは、前記凸部を介して摺接してもよい。
【0011】
前記第1ガイド部は、前記突出部の両側に配置されてもよい。
【0012】
前記第1ガイド部は、前記突出部の側面の一方に配置された第1部材、および他方に配置された第2部材を備え、前記第1部材と前記第2部材とは、前記突出部を側面から見た場合に重畳しないように配置されていてもよい。
【0013】
前記第1部材は、前記第2部材に近い端部において第1凸部を備え、前記第2部材は、前記第1部材に近い端部において第2凸部を備え、前記第1部材は前記第1凸部を介して前記突出部と摺接し、前記第2部材は前記第2凸部を介して前記突出部と摺接してもよい。
【0014】
前記サポートは、前記ジャックを回動可能に支持するジャック支持部を備え、前記ジャック支持部は、前記ジャックの側面と摺接する第2ガイド部を備えてもよい。
【0015】
前記第2ガイド部は、前記ジャックの側面の一方に配置された第1部材、および他方に配置された第2部材を備え、前記第1部材と前記第2部材とは、前記ジャックを側面から見た場合に重畳しないように配置されていてもよい。
【0016】
前記突出部は、前記第1ガイド部の両側に配置されていてもよい。
【0017】
前記突出部は、前記第1ガイド部の側面の一方に配置された第1部材、および他方に配置された第2部材を備え、前記第1部材と前記第2部材とは、前記第1ガイド部を側面から見た場合に重畳しないように配置されていてもよい。
【0018】
また、本発明の一実施形態によると、上記の複数のサポートアセンブリと、前記サポートアセンブリの各々に対応して配置され、前記サポートを回動させるための鍵と、前記鍵の押下に応じて発音する発音機構と、を備える鍵盤装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施形態によれば、アコースティックピアノの鍵盤装置と比較して、鍵の操作時のタッチ感の変化を抑えつつ、サポートアセンブリの製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態における鍵盤装置の構成を示す側面図である。
図2】本発明の第1実施形態におけるサポートアセンブリの構成を示す側面図である。
図3】本発明の第1実施形態におけるサポートアセンブリの構成を示す斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態におけるサポートアセンブリを分解した一部の構成を示す側面図である。
図5】本発明の第1実施形態におけるサポートアセンブリの第1ガイド部の近傍を拡大した図である。
図6】本発明の第1実施形態におけるサポートアセンブリの第2ガイド部の近傍を拡大した図である。
図7】本発明の第1実施形態におけるサポートアセンブリの動きを説明するための側面図である。
図8】本発明の第1実施形態における鍵盤装置の発音機構の構成を示すブロック図である。
図9】本発明の第2実施形態におけるサポートアセンブリの第1ガイド部の近傍を拡大した図である。
図10】本発明の第3実施形態におけるサポートアセンブリの第1ガイド部の近傍を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態におけるサポートアセンブリを含む鍵盤装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、B等を付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率(各構成間の比率、縦横高さ方向の比率等)は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。
【0022】
<第1実施形態>
[鍵盤装置1の構成]
本発明の第1実施形態における鍵盤装置1は、本発明に係るサポートアセンブリの一例を電子ピアノに適用した例である。この電子ピアノは、鍵の操作時にグランドピアノに近いタッチ感を得るために、グランドピアノが備えているサポートアセンブリに近い構成を備えている。図1を用いて、本発明の第1実施形態に係る鍵盤装置1の概要を説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る鍵盤装置の機械構成を示す側面図である。図1に示すように、本発明の一実施形態に係る鍵盤装置1は、複数の鍵110(この例では88鍵)および鍵110の各々に対応したアクション機構を備える。アクション機構は、サポートアセンブリ20、ハンマシャンク310、ハンマ320およびハンマストッパ410を備える。なお、図1では、鍵110が白鍵である場合を示しているが、黒鍵であっても同様である。また、以下の説明において、演奏者手前側、演奏者奥側、上方、下方、側方等の向きを表す用語は、鍵盤装置を演奏者側から見た場合の向きとして定義される。例えば、図1の例では、サポートアセンブリ20は、ハンマ320から見て演奏者手前側に配置され、鍵110から見て上方に配置されている。側方は、鍵110が配列される方向に対応する。
【0024】
鍵110は、バランスレール910によって回動可能に支持されている。鍵110は、図1に示すレスト位置からエンド位置までの範囲で回動する。ここで、「レスト位置」とは押下されていない状態の鍵位置であり、「エンド位置」とは鍵を押下しきった状態の鍵位置をいう。鍵110は、キャプスタンスクリュー120を備えている。サポートアセンブリ20は、サポートフレンジ290に回動可能に接続され、キャプスタンスクリュー120上に載置されている。サポートフレンジ290は、サポートレール920に固定されている。サポートアセンブリ20の詳細の構成は後述する。なお、サポートフレンジ290およびサポートレール920は、サポートアセンブリ20の回動の基準となるフレームの一例である。フレームは、サポートフレンジ290およびサポートレール920のように複数の部材で形成されていてもよいし、一つ部材で形成されていてもよい。フレームは、サポートレール920のように鍵110の配列方向に長手を有するレール状の部材であってもよいし、サポートフレンジ290のように鍵110毎に独立した部材であってもよい。
【0025】
ハンマシャンク310は、シャンクフレンジ390に回動可能に接続されている。ハンマシャンク310は、ハンマローラ315を備えている。ハンマシャンク310は、ハンマローラ315を介して、サポートアセンブリ20上に載置されている。シャンクフレンジ390は、シャンクレール930に固定されている。ハンマ320は、ハンマシャンク310の端部に固定されている。レギュレーティングボタン360は、シャンクレール930に固定されている。ハンマストッパ410は、ハンマストッパレール940に固定されて、ハンマシャンク310の回動を規制する位置に配置されている。
【0026】
センサ510は、ハンマシャンク310の位置および移動速度(特にハンマシャンク310がハンマストッパ410に衝突する直前の速度)を測定するためのセンサである。センサ510は、センサレール950に固定されている。この例では、センサ510はフォトインタラプタである。ハンマシャンク310に固定された遮蔽板520がフォトインタラプタの光軸を遮蔽する量に応じて、センサ510からの出力値が変化する。この出力値に基づいて、ハンマシャンク310の位置および移動速度を測定することができる。なお、センサ510に代えて、またはセンサ510と共に、鍵110の操作状態を測定するためのセンサが設けられてもよい。
【0027】
上述したサポートレール920、シャンクレール930、ハンマストッパレール940およびセンサレール950は、ブラケット900に支持されている。
【0028】
[サポートアセンブリ20の構成]
図2は、本発明の第1実施形態におけるサポートアセンブリの構成を示す側面図である。図3は、本発明の第1実施形態におけるサポートアセンブリの構成を示す斜視図である。図4は、本発明の第1実施形態におけるサポートアセンブリを分解した一部の構成を示す側面図である。各構成要素の特徴がわかりやすくなるように、図4(a)はサポートアセンブリ20からジャック250およびねじりコイルスプリング280を除外した図であり、図4(b)はジャック250のみを示した図である。
【0029】
サポートアセンブリ20は、サポート210、レペティションレバー240、ジャック250、ねじりコイルスプリング280を備える。サポート210とレペティションレバー240とは、可撓部220を介して結合している。可撓部220によって、レペティションレバー240は、サポート210に対して回動可能に支持されている。サポートアセンブリ20のうち、ねじりコイルスプリング280および他の部材と衝突する部分に設けられた緩衝材等(不織布、弾性体等)以外は、射出成形などによって製造された樹脂製の構造体である。この例では、サポート210およびレペティションレバー240は一体形成されている。なお、サポート210およびレペティションレバー240を個別の部品として形成し、それらを接着または接合させてもよい。
【0030】
サポート210は、一端側に貫通孔2109が形成され、他端側にジャック支持部2105が形成されている。サポート210は、貫通孔2109とジャック支持部2105との間において、下方に突出するサポートヒール212および上方に突出するスプリング支持部218を備える。貫通孔2109は、サポートフレンジ290に支持される軸が通される。これによって、サポート210は、サポートフレンジ290およびサポートレール920に対して回動可能に配置される。したがって、貫通孔2109は、サポート210の回動中心となる。
【0031】
サポートヒール212は、その下面において、上述したキャプスタンスクリュー120と接触する。スプリング支持部218は、ねじりコイルスプリング280を支持する。ジャック支持部2105は、ジャック250を回動可能に支持する。そのため、ジャック支持部2105はジャック250の回動中心となる。
【0032】
貫通孔2109(サポート210の回動中心)とジャック支持部2105(ジャック250の回動中心)との間には、サポートヒール212よりジャック支持部2105側において空間SPが形成される。説明の便宜上、サポート210を、貫通孔2109側から第1本体部2101、屈曲部2102、第2本体部2103の各領域に区分する。この場合、第1本体部2101と第2本体部2103とを結合する屈曲部2102によって、第2本体部2103は第1本体部2101よりも鍵110に近い側(下方)に配置される。ジャック支持部2105が第2本体部2103から上方に突出する。この区分によれば、上記の空間SPは、第2本体部2103の上方において、屈曲部2102とジャック支持部2105と挟まれた領域に対応する。また、サポート210の端部(第2本体部2103側の端部)には、ストッパ216が結合している。サポートヒール212は、屈曲部2102の下方に配置されている。このとき、鍵110から第2本体部2103までの距離は、鍵110からサポートヒール212までの距離(即ちキャプスタンスクリュー120の長さ)よりも長いことが望ましい。このようにすると、演奏者側からキャプスタンスクリュー120の調整がしやすくなる。
【0033】
レペティションレバー240には、スプリング接触部242、および延設部244が結合されている。スプリング接触部242および延設部244はレペティションレバー240からサポート210側へ延びている。スプリング接触部242は、ねじりコイルスプリング280の第1アーム2802と接触する。レペティションレバー240および延設部244は、ジャック250の両側面の側から挟み込む2枚の板状の部材を含む。この例では、この2枚の板状の部材によって挟まれた空間の少なくとも一部において、延設部244とジャック250とが摺接している。
【0034】
延設部244は、内側部2441、外側部2442、結合部2443およびストッパ接触部2444を含む。内側部2441は、レペティションレバー240においてジャック大2502よりも演奏者奥側(可撓部220側)に結合されている。内側部2441とレペティションレバー240とが結合されている部分にはリブ246が設けられている。内側部2441は、ジャック大2502を挟み込んで交差し、ジャック大2502よりも演奏者手前側(可撓部220とは反対側)まで延在している。つまり、延設部244はジャック250と交差している、ということもできる。内側部2441は、ジャック大2502を挟み込む部分において、ジャック大2502側に突出する線形状の凸部P1を備える。
【0035】
外側部2442は、レペティションレバー240においてジャック250(ジャック大2502)よりも演奏者手前側(可撓部220とは反対側)に結合されている。内側部2441と外側部2442とは、結合部2443において結合されている。結合部2443は、ジャック小2504を挟み込んでいる。ストッパ接触部2444は、結合部2443に結合し、ストッパ216に対してストッパ216の下方から接触する。これによれば、ストッパ216はレペティションレバー240とサポート210とが拡がる方向(上方)へのレペティションレバー240の回動範囲を規制する。
【0036】
第1ガイド部215は、第2本体部2103から上方に突出する第1部材2152および第2部材2154を備える。第1ガイド部215は、空間SPに配置されている。第2ガイド部211は、ジャック支持部2105から突出する第1部材2112および第2部材2114を備える。第1ガイド部215および第2ガイド部211の詳細の構成については後述する。
【0037】
ジャック250は、ジャック大2502、ジャック小2504および突出部256を備える。ジャック250は、サポート210に対して回動可能に配置されている。ジャック大2502とジャック小2504との間において、ジャック支持部2105に回動可能に支持されるためのサポート接続部2505が形成されている。サポート接続部2505は、ジャック支持部2105の一部を囲む形状であり、ジャック250の回動範囲を規制する。また、サポート接続部2505の形状とその素材の弾性変形により、ジャック250は、ジャック支持部2105の上方から嵌めることができる。突出部256は、ジャック大2502からジャック小2504とは反対側に突出し、ジャック250と共に回動する。突出部256は、その側面にスプリング接触部2562を備える。スプリング接触部2562は、ねじりコイルスプリング280の第2アーム2804と接触する。
【0038】
ジャック大2502は、両側面から突出する線形状の凸部P2を備える。凸部P2は、上述した内側部2441の凸部P1と摺接する。ジャック小2504は、両側面から突出する円形状の凸部P3を備える。凸部P3は、上述した結合部2443の内面と摺接する。ジャック250の側面のうち、サポート接続部2505は、その周囲に円形状の凸部P4、P5を備える。この例では、凸部P4、P5は、両側面のうち第1部材2112側に存在し、第2部材2114側には存在していない。凸部P4、P5は、ジャック支持部2105の周囲に配置された第2ガイド部211の第1部材2112と摺接する。
【0039】
このように凸部P1、P2、P3を介してジャック250と延設部244とが摺接することで、接触面積を減らしている。また、ジャック250の側面に配置された凸部P4、P5を介して、ジャック250と第2ガイド部211(第1部材2112)とが摺接することで、接触面積を減らしている。なお、複数の凸部P2によって溝部を形成することにより、グリス溜りを形成してもよい。また、ジャック大2502の側面形状において、凸部または溝部を有するようにしてもよい。
【0040】
ねじりコイルスプリング280は、スプリング支持部218を支点とし、第1アーム2802がスプリング接触部242と接触し、第2アーム2804がスプリング接触部2562と接触する。第1アーム2802は、レペティションレバー240の演奏者側を上方(サポート210から離れる方向)に移動するように、スプリング接触部242を介してレペティションレバー240に回動力を付与する弾性体として機能する。第2アーム2804は、突出部256が下方(サポート210側)に移動するように、スプリング接触部2562を介してジャック250に回動力を付与する弾性体として機能する。
【0041】
[第1ガイド部215の構成]
図5は、本発明の第1実施形態におけるサポートアセンブリの第1ガイド部の近傍を拡大した図である。図5(a)は、図4(a)に示した第1ガイド部215の近傍を拡大した図である。図5(b)は、図5(a)に示す矢印A1方向に第1ガイド部215を見た場合の図である。図5(c)は、図5(a)に示す矢印A2方向に第1ガイド部215を見た場合の図である。なお、図5(b)、(c)において、ジャック250(突出部256)などの構成は、位置関係を示すために破線によって示されている。
【0042】
第1ガイド部215の第1部材2152および第2部材2154は、サポート210の第2本体部2103から上方に突出し、突出部256の両側に配置されている。突出部256を側面から見た場合(図5(a)に対応)に、第1部材2152と第2部材2154とは、重畳しないように配置されている。この例では、図5(b)に示すギャップGが形成されるように、第1部材2152と第2部材2154とが配置されている。このような配置によれば、射出成形を容易に行うこともできる。
【0043】
第1部材2152は、直線状の第1凸部2156を備える。第1凸部2156は、第1部材2152のうち、第2部材2154に近い端部において、突出部256側に第1部材2152から突出している。これにより第1部材2152と突出部256とは第1凸部2156を介して摺接する。第2部材2154は、直線状の第2凸部2158を備える。第2凸部2158は、第2部材2154のうち、第1部材2152に近い端部において、突出部256側に第2部材2154から突出している。これにより第2部材2154と突出部256とは第2凸部2158を介して摺接する。ジャック支持部2105にジャック250が支持され、さらに突出部256と第1ガイド部215(第1部材2152および第2部材2154)とが摺接することによって、ジャック250のヨーイングを抑制することができる。
【0044】
ここで、突出部256の存在により、ジャック支持部2105から離隔した部分において、ジャック250と第1ガイド部215とが摺接できるため、効率的にジャック250のヨーイングを抑制することができる。
【0045】
さらに、この例では、突出部256の側面に配置されたスプリング接触部2562(第2アーム2804)が、サポート210(第2本体部2103)の幅方向WDの中心に近くなるように、第1ガイド部215の位置は、第2本体部2103の幅方向WDの片側に偏って配置されている。
【0046】
[第2ガイド部211の構成]
図6は、本発明の第1実施形態におけるサポートアセンブリの第2ガイド部の近傍を拡大した図である。図6(a)は、図4(a)に示した第2ガイド部211の近傍を拡大した図である。図6(b)は、図6(a)に示す矢印A3方向に第2ガイド部211を見た場合の図である。なお、図6(b)において、ジャック250(突出部256)などの構成は、位置関係を示すために破線によって示されている。
【0047】
第2ガイド部211の第1部材2112および第2部材2114は、ジャック支持部2105から突出し、ジャック250(サポート接続部2505の周囲)を挟むようにジャック250(サポート接続部2505の周囲)の両側に配置されている。第1部材2112および第2部材2114は、ジャック250の回動中心軸DPを法線とする面に沿って拡がるように、ジャック支持部2105から突出している。この例では、ジャック支持部2105の一端から、第1部材2112が突出している。ジャック支持部2105の他端から、第2部材2114が突出している。
【0048】
ジャック250を側面から見た場合、すなわちジャック250の回動中心軸に沿ってみた場合(図6(a)に対応)、第1部材2112と第2部材2114とは、重畳しないように配置されている。この例では、第2部材2114は、第1部材2112に比べて小さい。その結果、第1部材2112は、その一部に切り欠き2113が形成されることによって、第2部材2114と重畳しないようになっている。このような配置によれば、射出成形を容易に行うこともできる。
【0049】
また、上述したように、ジャック250(サポート接続部2505の周囲)と第1部材2112とは、凸部P4、P5を介して摺接する。一方、ジャック250(サポート接続部2505の周囲)と第2部材2114とは、直接接触して摺接する。第2部材2114が、凸部P4、P5と同等の大きさであるため、凸部を設けなくてもジャック250(サポート接続部2505の周囲)と第2部材2114との接触面積を少なくしておくことができるためである。
【0050】
このような第2ガイド部211によっても、ジャック250のヨーイングを抑制することができる。また、第1ガイド部215と第2ガイド部211との組み合わせによって、さらに効率的にジャック250のヨーイングを抑制することができる。以上が、サポートアセンブリ20の構成についての説明である。
【0051】
[サポートアセンブリ20の動作]
続いて、鍵110がレスト位置にある状態(図1)からエンド位置に押下された場合において、サポートアセンブリ20の動きを説明する。
【0052】
図7は、本発明の第1実施形態におけるサポートアセンブリの動きを説明するための側面図である。鍵110がエンド位置まで押下されると、キャプスタンスクリュー120がサポートヒール212を押し上げて、貫通孔2109の軸を回動中心としてサポート210を回動させる。サポート210が回動して上方に移動すると、ジャック大2502がハンマローラ315を押し上げて、ハンマシャンク310がハンマストッパ410に衝突する。なお、一般的なグランドピアノである場合には、この衝突は、ハンマによる打弦に相当する。
【0053】
この衝突の直前に、レギュレーティングボタン360によってジャック小2504の上方への移動が規制されつつ、さらにサポート210(ジャック支持部2105)が上昇する。そのため、ジャック大2502は、ハンマローラ315から外れるように回動する。このとき、レギュレーティングボタン360によって、結合部2443の上方への移動も規制される。この例では、レギュレーティングボタン360は、一般的なグランドピアノのアクション機構におけるレペティションレギュレーティングスクリューの機能も有している。
【0054】
これにより、レペティションレバー240は、上方への移動が規制されてサポート210に近づくように回動する。これらの動作によって、ダブルエスケープメント機構が実現される。図7は、この状態を示す図である。なお、鍵110をレスト位置に戻していくと、レペティションレバー240によってハンマローラ315が支えられ、ハンマローラ315の下方にジャック大2502が戻る。ジャック大2502がハンマローラ315の下方に戻るための回動力は、突出部256を介して第2アーム2804によって与えられる。
【0055】
このように、一般的なグランドピアノに用いられるサポートアセンブリに比べて容易な構成において、ダブルエスケープメントが実現されるため、タッチ感への影響を抑えつつ製造コストを削減することができる。また、ジャック250のヨーイングが抑制されるため、ジャック250の回動による他の構成への作用を安定化させることもできる。
【0056】
[鍵盤装置1の発音機構]
鍵盤装置1は、上述したように電子ピアノへの適用例であって、鍵110の操作をセンサ510によって測定し、測定結果に応じた音を出力する。
【0057】
図8は、本発明の第1実施形態における鍵盤装置の発音機構の構成を示すブロック図である。鍵盤装置1の発音機構50は、センサ510(88の鍵110に対応したセンサ510−1、510−2、・・・510−88)、信号変換部550、音源部560および出力部570を備える。信号変換部550は、センサ510から出力された電気信号を取得し、各鍵110における操作状態に応じた操作信号を生成して出力する。この例では、操作信号はMIDI形式の信号である。そのため、押鍵操作によってハンマシャンク310がハンマストッパ410に衝突したタイミングに対応して、信号変換部550はノートオンを出力する。このとき、88個の鍵110のいずれが操作されたかを示すキーナンバ、および衝突する直前の速度に対応するベロシティについてもノートオンに対応付けて出力される。一方、離鍵操作がされると、グランドピアノであればダンパによって弦の振動が止められるタイミングに対応して、信号変換部550はキーナンバとノートオフとを対応付けて出力する。信号変換部550には、ペダル等の他の操作に応じた信号が入力され、操作信号に反映されてもよい。音源部560は、信号変換部550から出力された操作信号に基づいて、音信号を生成する。出力部570は、音源部560によって生成された音信号を出力するスピーカまたは端子である。
【0058】
<第2実施形態>
第1実施形態では、突出部256の両側に、第1ガイド部215の第1部材2152と第2部材2154とが配置されていた。第2実施形態では、第1実施形態とこれらの構成の位置関係が逆の関係、すなわち、第1ガイド部の両側に突出部が配置されている例について説明する。
【0059】
図9は、本発明の第2実施形態におけるサポートアセンブリの第1ガイド部の近傍を拡大した図である。図9(a)、図9(b)は、それぞれ、図5(b)、図5(c)に対応している。この例では、第1ガイド部215Aは、第2本体部2103から上方に突出している。突出部256Aの先端は、第1分岐部2562Aと第2分岐部2564Aとに分岐している。第1分岐部2562Aと第2分岐部2564Aとの間に第1ガイド部215Aが挟まれている。突出部256Aを側面から見た場合(図9(a)における矢印A4方向に見た場合)に、第1分岐部2562Aと第2分岐部2564Aとは、重畳しないように配置されている。この例では、図9(a)に示すギャップGが形成されるように、第1分岐部2562Aと第2分岐部2564Aとが配置されている。
【0060】
第1分岐部2562Aは、第1ガイド部215A側に直線状の第1凸部2566Aを備える。第2分岐部2564Aは、第1ガイド部215A側に直線状の第2凸部2568Aを備える。第1ガイド部215Aと突出部256の第1分岐部2562Aとは、第1凸部2566Aを介して摺接する。第1ガイド部215Aと突出部256の第2分岐部2564Aとは、第2凸部2568Aを介して摺接する。ジャック支持部2105にジャック250が支持され、さらに第1ガイド部215Aと突出部256(第1分岐部2562Aおよび第2分岐部2564A)とが摺接することによって、ジャック250のヨーイングを抑制することができる。
【0061】
なお、図9(b)に示すように、第2分岐部2564Aと第2凸部2568Aとによって第2アーム2804を受けることによって、第1実施形態におけるスプリング接触部2562に相当する構成を実現してもよい。
【0062】
<第3実施形態>
第1実施形態は、第1ガイド部215がサポート210の第2本体部2103から上方に突出していた。第3実施形態では、第1ガイド部がサポートの第2本体部内部に配置されている場合について説明する。
【0063】
図10は、本発明の第3実施形態におけるサポートアセンブリの第1ガイド部の近傍を拡大した図である。図10(a)、図10(b)は、それぞれ、図5(a)、図5(b)に対応している。第2本体部2103Bは、開口部2152Bが形成されている。突出部256Bは、開口部2152Bの内部まで延在している。突出部256Bは、両側面に凸部P6、P7が配置されている。突出部256Bは、凸部P6、P7を介して開口部2152Bの内面と摺接する。これによって、ジャック250のヨーイングを抑制することができる。
【0064】
<変形例>
上述した各実施形態において、互いに摺接する構成の一方または双方には、凸部が配置されていた。いずれか一方の構成に配置される場合には、いずれの構成に配置されてもよい。例えば、第1実施形態において、第1凸部2156は、第1部材2152に配置されていたが、第1部材2152の代わりに突出部256に配置されてもよい。この場合であっても、第1部材2152と突出部256とは第1凸部を介して摺接することになる。なお、凸部(第1凸部、第2凸部を含む)を用いずに互いの構成が摺接するようになっていてもよい。
【0065】
上述した第1実施形態において、第1ガイド部215の第1部材2152および第2部材2154は、突出部256の両側に配置されていたが、第1部材2152または第2部材2154が存在しなくてもよい。例えば、第1部材2152が存在していれば、第2部材2154が存在していなくても、一方向(突出部256に対して第1部材2152側)へのヨーイングを抑制することができる。第2実施形態、第3実施形態においても同様に変形可能である。
【0066】
上述した第1実施形態では、第1ガイド部215は、空間SPに配置されていた。一方、サポート210の形状が空間SPを形成しない形状である場合であっても、第1ガイド部はサポート210から突出して形成されてもよい。第2実施形態においても同様に変形可能である。
【0067】
上述した各実施形態では、サポートアセンブリを適用した鍵盤装置の例として電子ピアノを示した。一方、上記実施形態のサポートアセンブリは、グランドピアノ(アコースティックピアノ)に適用することもできる。この場合、発音機構は、ハンマ、弦に対応する。
【符号の説明】
【0068】
1…鍵盤装置、20…サポートアセンブリ、50…発音機構、110…鍵、120…キャプスタンスクリュー、210…サポート、211…第2ガイド部、212…サポートヒール、215…第1ガイド部、215A…第1ガイド部、216…ストッパ、218…スプリング支持部、220…可撓部、240…レペティションレバー、242…スプリング接触部、244…延設部、246…リブ、250…ジャック、256…突出部、256A…突出部、256B…突出部、280…ねじりコイルスプリング、290…サポートフレンジ、310…ハンマシャンク、315…ハンマローラ、320…ハンマ、360…レギュレーティングボタン、390…シャンクフレンジ、410…ハンマストッパ、510…センサ、520…遮蔽板、550…信号変換部、560…音源部、570…出力部、900…ブラケット、910…バランスレール、920…サポートレール、930…シャンクレール、940…ハンマストッパレール、950…センサレール、2101…第1本体部、2102…屈曲部、2103…第2本体部、2103B…第2本体部、2105…ジャック支持部、2109…貫通孔、2112…第1部材、2114…第2部材、2152…第1部材、2152B…開口部、2154…第2部材、2156…第1凸部、2158…第2凸部、2441…内側部、2442…外側部、2443…結合部、2444…ストッパ接触部、2502…ジャック大、2504…ジャック小、2505…サポート接続部、2562…スプリング接触部、2562A…第1分岐部、2564A…第2分岐部、2566A…第1凸部、2568A…第2凸部、2802…第1アーム、2804…第2アーム
図1
図2
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図10