特許第6554975号(P6554975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ いすゞ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6554975-車両 図000002
  • 特許6554975-車両 図000003
  • 特許6554975-車両 図000004
  • 特許6554975-車両 図000005
  • 特許6554975-車両 図000006
  • 特許6554975-車両 図000007
  • 特許6554975-車両 図000008
  • 特許6554975-車両 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554975
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 33/07 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
   B62D33/07 R
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-149947(P2015-149947)
(22)【出願日】2015年7月29日
(65)【公開番号】特開2017-30406(P2017-30406A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】三根 康平
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−058589(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 33/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャシと、前記シャシに対しチルト可能なキャブと、前記キャブを前記シャシにロックするためのキャブロック装置とを備えた車両であって、
前記キャブロック装置は、
前記キャブに取り付けられたロックアセンブリと、
前記ロックアセンブリに係合可能なストライカと、
前記ストライカが固定されるマウント部材と、
を備え、
前記シャシは、前記車両の左右方向に延びるクロスメンバを備え、
前記マウント部材は、前記クロスメンバ上に固定され、
前記マウント部材を前記クロスメンバの長手方向に位置決めすべく、前記クロスメンバには凸部が設けられ、前記マウント部材には前記凸部に係合される凹部が設けられ
前記ストライカは、ストライカピンと、前記ストライカピンを前記マウント部材の上方に離間して支持するストライカブラケットとを備え、
前記ストライカブラケットは、前記マウント部材上に固定される底面部を有し、
前記ストライカブラケットの前記底面部の下方に前記凸部および前記凹部が設けられ、
前記クロスメンバの上面部上に前記マウント部材が重ね合わされ、前記マウント部材上に前記ストライカブラケットの前記底面部が重ね合わされ、
前記クロスメンバの上面部に上向きの前記凸部が設けられ、前記マウント部材に前記凹部をなす貫通穴が設けられ、前記ストライカブラケットの前記底面部に前記貫通穴と同軸かつ同径の貫通穴が設けられる
ことを特徴とする車両。
【請求項2】
シャシと、前記シャシに対しチルト可能なキャブと、前記キャブを前記シャシにロックするためのキャブロック装置とを備えた車両であって、
前記キャブロック装置は、
前記キャブに取り付けられたロックアセンブリと、
前記ロックアセンブリに係合可能なストライカと、
前記ストライカが固定されるマウント部材と、
を備え、
前記シャシは、前記車両の左右方向に延びるクロスメンバを備え、
前記マウント部材は、前記クロスメンバ上に固定され、
前記マウント部材を前記クロスメンバの長手方向に位置決めすべく、前記マウント部材および前記クロスメンバの一方には凸部が設けられ、前記マウント部材および前記クロスメンバの他方には前記凸部に係合される凹部が設けられ、
前記キャブは、その後面部かつ下端部に、前記ロックアセンブリを収容するボックス状のキャブマウントを有し、
前記マウント部材は、前記キャブがロックされたときに前記キャブマウントを受けるシャシマウントからなる
ことを特徴とする車両
【請求項3】
前記ストライカは、ストライカピンと、前記ストライカピンを前記マウント部材の上方に離間して支持するストライカブラケットとを備え、
前記ストライカブラケットは、前記マウント部材上に固定される底面部を有し、
前記ストライカブラケットの前記底面部の下方に前記凸部および前記凹部が設けられる
ことを特徴とする請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記クロスメンバの上面部上に前記マウント部材が重ね合わされ、前記マウント部材上に前記ストライカブラケットの前記底面部が重ね合わされ、
前記クロスメンバの上面部に上向きの前記凸部が設けられ、前記マウント部材に前記凹部をなす貫通穴が設けられ、前記ストライカブラケットの前記底面部に前記貫通穴と同軸かつ同径の貫通穴が設けられる
ことを特徴とする請求項3に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チルト可能なキャブをシャシにロックするためのキャブロック装置を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
キャブオーバ型トラック等の車両において、シャシに対しチルト可能なキャブを備えたものが数多く見受けられる。エンジンの点検整備等に際し、キャブは前方にチルトされた状態に保持される。他方、キャブがチルトされてない通常状態であるとき、キャブはシャシに強固に固定される必要があり、このためキャブをシャシにロックするキャブロック装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−20878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャブは、その前端部かつ下端部に旋回軸を有し、その旋回軸回りに、シャシに対し旋回可能、すなわちチルト可能である。キャブロック装置は、キャブの後端部かつ下端部に取り付けられたロックアセンブリと、シャシに取り付けられたストライカとを備える。ロックアセンブリをストライカに係合およびロックさせるとキャブがロックされ、ロックアセンブリをストライカから係合解除するとキャブが旋回可能となる。
【0005】
ところで、シャシに対するストライカの固定位置が基準位置から左右方向にずれると、チルトされたキャブが下降されたとき、ロックアセンブリがストライカに適正に係合せず、キャブロック装置の動作が阻害される虞がある。
【0006】
そこで本発明は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、シャシの左右方向の基準位置にストライカを正確に固定することができる車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様によれば、
シャシと、前記シャシに対しチルト可能なキャブと、前記キャブを前記シャシにロックするためのキャブロック装置とを備えた車両であって、
前記キャブロック装置は、
前記キャブに取り付けられたロックアセンブリと、
前記ロックアセンブリに係合可能なストライカと、
前記ストライカが固定されるマウント部材と、
を備え、
前記シャシは、前記車両の左右方向に延びるクロスメンバを備え、
前記マウント部材は、前記クロスメンバ上に固定され、
前記マウント部材を前記クロスメンバの長手方向に位置決めすべく、前記マウント部材および前記クロスメンバの一方には凸部が設けられ、前記マウント部材および前記クロスメンバの他方には前記凸部に係合される凹部が設けられる
ことを特徴とする車両が提供される。
【0008】
好ましくは、前記ストライカは、ストライカピンと、前記ストライカピンを前記マウント部材の上方に離間して支持するストライカブラケットとを備え、
前記ストライカブラケットは、前記マウント部材上に固定される底面部を有し、
前記ストライカブラケットの前記底面部の下方に前記凸部および前記凹部が設けられる。
【0009】
好ましくは、前記クロスメンバの上面部上に前記マウント部材が重ね合わされ、前記マウント部材上に前記ストライカブラケットの前記底面部が重ね合わされ、
前記クロスメンバの上面部に上向きの前記凸部が設けられ、前記マウント部材に前記凹部をなす貫通穴が設けられ、前記ストライカブラケットの前記底面部に前記貫通穴と同軸かつ同径の貫通穴が設けられる。
【0010】
好ましくは、前記キャブは、その後面部かつ下端部に、前記ロックアセンブリを収容するボックス状のキャブマウントを有し、
前記マウント部材は、前記キャブがロックされたときに前記キャブマウントを受けるシャシマウントからなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シャシの左右方向の基準位置にストライカを正確に固定することができるという、優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るキャブロック装置の後方斜視図である。
図2】キャブロック装置の分解斜視図である。
図3】キャブロック装置のロック位置を示す後面図である。
図4】キャブロック装置のロック解除位置を示す後面図である。
図5】キャブロック装置の係合解除過程を示す後面図である。
図6】シャシマウントの取付構造を示す左断面図である。
図7】シャシマウントの位置決め構造を示す後方断面図である。
図8図7の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0014】
図1に本実施形態に係る車両の一部を示す。車両Vは、キャブオーバ型トラックであり、フレームもしくはシャシ1と、シャシ1に旋回可能に取り付けられ、シャシ1に対しチルト可能なボディもしくはキャブ2とを備える。車両Vの前後方向、左右方向および上下方向をそれぞれ図中に矢印で示す。図はキャブ2の左側の後面下端部付近を示す。図示しないが、キャブ2はその前端部かつ下端部に旋回軸を有し、その旋回軸回りにシャシ1に対し旋回可能、すなわちチルト可能である。
【0015】
図示の如きキャブ2の後面部2Aかつ下端部をシャシ1にロックするため、車両Vにはキャブロック装置3が設けられている。キャブロック装置3は、キャブ2の後面部2Aかつ下端部に取り付けられたロックアセンブリ4と、シャシ1に取り付けられたストライカ5とを備える。ロックアセンブリ4をストライカ5に係合およびロックさせるとキャブ2がロックされ、ロックアセンブリ4をストライカ5から係合解除するとキャブ2が旋回可能もしくはチルト可能となる。
【0016】
本実施形態において、キャブ2は、その後面部2Aかつ下端部に、ロックアセンブリ4を収容するボックス状のキャブマウント6を有する。他方、キャブロック装置3は、キャブ2がロックされたときにキャブマウント6を受けるシャシマウント7を有する。シャシマウント7上にストライカ5が固定される。
【0017】
キャブマウント6はキャブ2に一体的に形成され、後面部が開放されたボックス状に形成される。キャブマウント6は、水平な底面部6Aと、底面部6Aの左右両側に位置する傾斜面部6B,6Bとを有する。これら底面部6Aおよび傾斜面部6B,6Bの形状に符合するよう、シャシマウント7にも底面部7Aおよび傾斜面部7B,7Bが形成される。傾斜面部7B,7Bにはゴム等からなる弾性部材7C,7Cが設けられる。シャシマウント7上にキャブマウント6が載せられたとき、傾斜面部7B,7Bが弾性部材7C,7Cを介して傾斜面部6B,6Bを防振支持する。キャブマウント6の底面部6Aには、ストライカ5が余裕を持って通過できるよう比較的大きめに形成された穴6Cが設けられている。シャシマウント7はシャシ1と別体とされ、シャシ1にボルト72によって取り付けられる。
【0018】
これらキャブロック装置3、キャブマウント6およびシャシマウント7の組み合わせは、図外の車両右側にも設けられる。つまり本実施形態では当該組み合わせが車両の左右両側に一つずつ、計二つ設けられる。なおこの数は任意であり、一つまたは三つ以上とすることもできる。左右両側のロックアセンブリ4は、コネクティングロッド8により互いに連結され、同時に且つ同様の方法で動作するようになっている。
【0019】
ストライカ5は、前後方向に延びるストライカピン11と、ストライカピン11をシャシ1の上方に離間して支持するストライカブラケット12とを備える。ストライカブラケット12は、シャシマウント7上に固定される底面部12Aと、底面部12Aの前端および後端から一体的に上方に延びる前面部12Bおよび後面部12Cとを有する。ストライカピン11は、前面部12Bおよび後面部12Cの上端部同士を連結する。前面部12Bおよび後面部12Cは、上部に至るほど前方に向かうように略クランク状に曲げられている。
【0020】
好ましくは、ストライカブラケット12に、キャブ2の下降時にキャブ2を前後方向に案内するためのストライカガイド部材が設けられる(図示省略)。
【0021】
次に、図2を参照してロックアセンブリ4について説明する。ロックアセンブリ4は、フレーム20と、フック部材40と、作動レバー60とを主に備える。
【0022】
フレーム20は、金属板からなる前プレート21と後プレート22を有する。図1にも示すように、前プレート21と後プレート22は、互いに前後方向に離間して配置され、キャブマウント6もしくはキャブ2に固定されている。前プレート21はキャブマウント6内の前端壁に重ねて取り付けられる。後プレート22はキャブマウント6の後端フランジ6Dに重ねて取り付けられる。フック部材40と作動レバー60は両プレート21,22の間の空間に配置されている。
【0023】
図2に示すように、前プレート21は、鉛直方向に延びる鉛直板23と、鉛直板23の下端部(特に下端縁部)に接続され後方に向かって水平方向に延びる底板24とを有する。本実施形態において、鉛直板23と底板24は、1枚の金属板を折り曲げることにより一体に形成されている。鉛直板23および底板24には、キャブ2の下降時にストライカ5をフック部材40に向けて左右方向に案内するためのガイド穴が設けられている。このガイド穴は、底板24に設けられ前後方向に延びる第1ガイド穴25と、鉛直板23に設けられ、第1ガイド穴25に連続して上方に延びる第2ガイド穴26とから構成される。
【0024】
前プレート21の鉛直板23には、フック部材40を旋回可能に支持する軸27と、作動レバー60を旋回可能に支持する軸28との前端部が取り付けられる。これら軸27,28の後端部は後プレート22の穴29,30に挿通支持される。軸27,28は前後方向に延び、中間部がフック部材40および作動レバー60の円筒ボス41,61に回転可能に挿通されている。なお前プレート21からは軸38も延びており、この軸38は後プレート22の穴39に挿通支持される。
【0025】
後プレート22の前面部には、キャブ2の下降時にキャブ2を前後方向に案内するためのフレームガイド部材31がネジ32により取り付けられている。フレームガイド部材31は、金属製基材31Aの表面に樹脂製カバー31Bを被せて構成されている。後プレート22の後面部には、フック部材40のロック・ロック解除に応じてオン・オフされるスイッチ33が、スタッドボルト34およびナット35により取り付けられる。
【0026】
フック部材40は、比較的厚肉の金属板からなり、二股状に形成された先端部を有し、その先端部にストライカピン11を挿通させるためのフック穴42と、フック穴42を間に挟んで上下に形成された上フック部45および下フック部46とを有する。またフック部材40の上面部にはリンクレバー62を嵌合させるための溝43が形成されている。円筒ボス41の周囲に、フック部材40を図示する回転方向Aに付勢するスプリング(コイルスプリング)44が配置されている。
【0027】
作動レバー60は、比較的薄肉の金属板からなり、フック部材40の前方に重ねて且つ相対移動可能に配置される。作動レバー60の先端部(上端部)には、前述のコネクティングロッド8に連結されるシャフト63が固定されている。また作動レバー60の先端部において、シャフト62の取付位置よりやや下方の位置に、プレート状リンク64の左端部が、ピン65を介して回転可能に取り付けられている。リンク64の右端部に前述のリンクレバー62が固定される。
【0028】
図1に示すように、シャフト63は、後プレート22の上方にて後プレート22よりも後方に突出される。他方、リンクレバー62の後端部は、後プレート22に形成されたレバーガイド穴36に挿通された後、後プレート22よりも後方に突出される。この突出部において、リンクレバー62にリリースロッド13が連結される。リリースロッド13はキャブ2の左側面の位置まで延び、ユーザーにより長手方向に手動操作される。
【0029】
図2に示すように、リンクレバー62の中間部には皿状のワッシャ66が固定して設けられる。ワッシャ66は、リンクレバー62がレバーガイド穴36に沿って移動するとき、レバーガイド穴36に隣接した後プレート22の前面部上をスライドする。
【0030】
また作動レバー60は、その基端部付近の後面部に、フック部材40の旋回を規制するための規制部材67を有する。規制部材67は比較的厚肉の金属板からなり、作動レバー60の後面部に重ねて取り付けられる。円筒ボス61の周囲に、作動レバー60を図示する回転方向Bに付勢するスプリング(コイルスプリング)68が配置されている。作動レバー60は、後方に延出するスイッチ操作プレート69をも有し、スイッチ操作プレート69は、後プレート22の窓37を通過し、作動レバー60の回転位置に応じてスイッチ33をオン・オフする。
【0031】
次に、図3〜5を参照してキャブロック装置3の基本的作動を説明する。図3は、キャブロック装置3の要部を後方から見た図である。シャシ側に関し、11はストライカピンを示し、Zはシャシ1の基準面(基準水平面)を示す。ストライカピン11と基準面Zの相対位置は変化しない。他方、キャブ側に関し、軸27,28とレバーガイド穴36の相対位置は変化しない。
【0032】
図3は、フック部材40がストライカピン11に完全に係合されているロック位置を示す。このとき、キャブ2はシャシ1にロックされ、チルト不可であり、キャブ2は通常状態にある。ストライカピン11は横向きのフック穴42に完全に挿入されている。
【0033】
ロックを解除するには、フック部材40を回転方向Aに回転もしくは旋回させる必要がある。しかしこのロック位置では、規制部材67の頭部がフック部材40に当接もしくは係合され、且つ作動レバー60が回転方向Bに付勢されているため、フック部材40は回転方向Aの回転が規制された状態に保持される。従ってロックが解除されることが確実に防止される。
【0034】
ロックを解除するため、リンクレバー62に連結されたリリースロッド13(図3〜5では省略)がユーザーにより左方に引かれる。すると図4に示すように、リンクレバー62がレバーガイド穴36に沿って左側にスライドし、レバーガイド穴36の左端部の下降部36Aに落ち込むと共に、フック部材40の溝43に嵌合される。このリンクレバー62の移動により、リンク64を介して、作動レバー60が回転方向Bの逆方向に回転もしくは旋回され、規制部材67とフック部材40の係合が解除される。これによりフック部材40は回転方向Aに回転可能となる。リンクレバー62への操作力(左方に引く力)が解除された場合、リンクレバー62は、回転方向Bの付勢力により溝43に押し付けられるが、リンクレバー62と軸27の相対位置の関係、およびフック部材40が依然としてストライカピン11に係合していることなどから、フック部材40が回転方向Aの逆方向に回転されることはない。これによりロックが解除され、リンクレバー62への操作力が解除されてもロック解除状態が保持される。図4はロック解除位置を示す。
【0035】
なお、作動レバー60がロック位置からロック解除位置に移動すると、これに応じてスイッチ操作プレート69がスイッチ33をオフからオンに切り換える。このスイッチ33からの信号を受けて制御ユニット(図示せず)は、例えばキャブ内の警告灯を点灯するなどして、キャブ2がロックされていない事実をユーザーに知らせる。
【0036】
かかるロック解除状態から、キャブ2が上昇されると、図5に示すように、フック部材40がストライカピン11に係合しながら、回転方向Aに回転される。すると、リンクレバー62がレバーガイド穴36に案内されながら、徐々に溝43から外れ、やがてフック部材40の上面部に乗り上げる。これによりフック部材40の回転方向Aの回転を阻害するものは無くなり、フック部材40はキャブ2の上昇に応じて徐々に回転方向Aに回転され、フック穴42は徐々に下向きに向きを変える。そしてやがてフック部材40とストライカピン11の係合が外れる。
【0037】
図示しないが、フック部材40とストライカピン11の係合が外れると、フック部材40は回転方向Aの付勢力により、作動レバー60は回転方向Bの付勢力により、それぞれ回転され、両者が互いに近づくよう回転される。そしてフック部材40が規制部材67の右側面部に当接した状態に維持される。これをキャブロック装置3の初期位置ないし初期状態とする。
【0038】
このように本実施形態では、キャブロック装置3のロックをユーザー操作により一旦解除してしまえば、キャブ2の上昇により、ストライカ5に対するロックアセンブリ4の係合を自動的に解除できる。
【0039】
他方、図示しないが、キャブロック装置3の初期位置からロック位置への作動は、上記と逆の手順で行われる。特に本実施形態の場合、チルトされたキャブ2を下降させるだけで、キャブロック装置3を自動的にロック位置に作動させられるようになっている。すなわち、初期位置に待機するフック部材40に対し相対的に上昇してくるストライカピン11が、フック部材40を押し上げることにより、フック部材40が回転方向Aの逆方向に回転される。これによりフック穴42にストライカピン11が完全に挿入、すなわち係合され、下フック部46がストライカピン11の下側に移動し、キャブロック装置3は自動的に図3に示したようなロック状態とされる。このように本実施形態ではキャブ2を下降させるだけでその自重により自動ロックを達成することができ、非常に実用的である。なおキャブロック装置3がロック状態にあるとき、キャブマウント6はシャシマウント7の弾性部材7C,7Cに密着して安定的に保持される。
【0040】
さて、前述したように、シャシ1に対するストライカ5の固定位置が基準位置から左右方向にずれると、チルトされたキャブ2が下降されたとき、ロックアセンブリ4がストライカ5に適正に係合せず、キャブロック装置3の動作が阻害される虞がある。
【0041】
そこでこの課題を解決すべく、本実施形態では、ストライカ5がシャシマウント7を介してシャシ1に固定されると共に、シャシマウント7をシャシ1の左右方向に位置決めすべく、シャシマウント7およびシャシ1の一方には凸部が設けられ、シャシマウント7およびシャシ1の他方には凸部に係合される凹部が設けられる。以下、この特徴部分を詳細に説明する。
【0042】
図1に示すように、本実施形態のシャシ1はラダーフレームを有し、左右のサイドレール(図示せず)と、これらを連結して左右方向に延びる複数のクロスメンバとを備える。図示される1本のクロスメンバ71上にシャシマウント7が複数のボルト72により固定される。
【0043】
図6に示すように、クロスメンバ71は、角張った逆U字状の断面を有し、前面部71Aと後面部71Bと上面部71Cとを一体的に有する。そしてこのクロスメンバ71上にシャシマウント7が嵌合状態で取り付けられる。シャシマウント7も角張った逆U字状の断面を有する。シャシマウント7の底面部7Aはクロスメンバ71の上面部71C上に重ね合わされる。同様に、シャシマウント7の前面部7Dはクロスメンバ71の前面部71Aに重ね合わされ、シャシマウント7の後面部7Eはクロスメンバ71の後面部71Bに重ね合わされる。前面部7D、71Aおよび後面部7E、71Bにはボルト(スルーボルト)72を挿通させるための貫通穴(図示せず)が設けられる。ボルト72は、後面部7E、71Bの貫通穴に後方から挿入された後、パイプ73を通過し、前面部7D、71Aの貫通穴から前方に突出する。この突出部分にナット74が締め付けられて、シャシマウント7はクロスメンバ71に固定される。パイプ73は、その両端が前面部71Aおよび後面部71Bに当接され、ナット74の締結時にクロスメンバ71およびシャシマウント7の前後方向の潰れ変形を規制する。
【0044】
なお、シャシマウント7はクロスメンバ71に嵌合され、ボルト72により固定されるが、ボルト72と貫通穴の嵌め合いが緩いため、ボルト72による固定ではシャシマウント7がクロスメンバ長手方向に正確に位置決めされない。よって凸部および凹部による位置決め構造が存在する。
【0045】
図7は、シャシマウント7の位置決め構造を示す後方断面図であり、図8はその要部拡大図である。図示するように、ストライカブラケット12はストライカピン11をシャシマウント7の上方に離間して支持する。またストライカブラケット12の底面部12Aは、シャシマウント7の底面部7A上に重ね合わされ、すみ肉溶接で固定される。75は溶接部を示す。ストライカブラケット12の四角形の底面部12A(図1参照)が、その四辺ですみ肉溶接されることにより、ストライカブラケット12はシャシマウント7に固定される。ストライカブラケット12は、シャシマウント7の左右中心位置に固定される。なお弾性部材7C,7Cは、これに一体に設けられたボルト76にナット77が締め付けられることにより、シャシマウント7の傾斜面部7Bに固定される。
【0046】
クロスメンバ71において、複数の補強板78が、前面部71Aと後面部71Bと上面部71Cにすみ肉溶接される(79は溶接部)。この補強板78を避けた位置に、前述のボルト72を挿通させるための貫通穴80が設けられる。
【0047】
ストライカブラケット12の底面部12Aの下方に、シャシマウント7を位置決めするための凸部81および凹部82が設けられる。本実施形態において凸部81は、クロスメンバ71の上面部71Cに上向きかつ一体に設けられる。また凹部82はストライカブラケット12の底面部12Aに設けられる。特に凹部82は、ストライカブラケット12の底面部12Aに設けられた貫通穴からなる。凸部81および凹部82は共に上面視で円形とされ、互いに嵌合されて係合される。これら凸部81と凹部82を係合させることにより、シャシマウント7がクロスメンバ71の長手方向(左右方向)に正確に位置決めされる。なお凸部81と凹部82の係合によりシャシマウント7はクロスメンバ71の幅方向(前後方向)にも正確に位置決めされる。
【0048】
本実施形態では、クロスメンバ71の上面部71Cをプレス加工することにより円柱状の凸部81が形成され、凸部81の裏側(下側)は凹まされている。しかしながら、凸部81の形成方法はこれに限らず、単に凸部81を形成する部品を上面部71Cに溶接等により固定してもよい。凹部82も貫通穴に限定されず、ストライカブラケット12の底面部12の下面をプレス加工等により凹ませて形成してもよい。但し貫通穴とすると後述のメリットが得られる。このように凸部81と凹部82の形状、構造、形成方法等は様々なものが考えられる。
【0049】
また、ストライカブラケット12の底面部12Aには、凹部82をなす貫通穴と同軸かつ同径の貫通穴83が設けられる。
【0050】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
【0051】
上述のように本実施形態では、ストライカ5が予め固定されたシャシマウント7を、凸部81および凹部82により左右方向(および前後方向)に位置決めした上で、クロスメンバ71に取り付けるようにしたので、ストライカ5をクロスメンバ71の長手(左右)方向の基準位置に正確に固定することができる。図1は、実際にこうした基準位置に正確に固定されたストライカ5を示す。従って、ストライカ5の固定位置が左右方向にずれることに起因した、ストライカ5に対するロックアセンブリ4の係合異常、ひいてはキャブロック装置3の動作不良等を未然に防止することができる。
【0052】
しかも、本実施形態のように複数(二つ)のキャブロック装置3がクロスメンバ71の長手方向に設けられ、かつこれらキャブロック装置3を同時に同じように作動させ、自動ロックさせる場合には、個々のストライカ5をクロスメンバ71の長手方向の基準位置に正確に組み付ける必要がある。本実施形態はこうした課題をも解決できるものである。
【0053】
また本実施形態では、ストライカブラケット12の底面部12Aの下方に凸部81および凹部82を設けたので、キャブロック装置3のロック動作時の荷重による凸部81および凹部82の変形を未然に防止できる。すなわち、キャブロック装置3のロック動作時、ストライカブラケット12の底面部12Aには、ストライカブラケット12の略クランク形状に起因する斜め下向きの荷重が加わり、この荷重はシャシマウント7に伝達される。凸部81および凹部82の位置が底面部12Aから外れるほど、凸部81および凹部82は、下向きよりむしろ横向きの荷重を多く受けるようになる。ロック動作の繰り返しにより凸部81および凹部82が変形し、その位置決め機能を損なう虞がある。こうなると、例えばシャシマウント7を再組み付けする際にシャシマウント7ひいてはストライカ5の位置がずれる可能性がある。しかしながら本実施形態では、凸部81および凹部82を底面部12Aの下方に設けたので、凸部81および凹部82に加わる横向き荷重を低減し、その変形を未然に防止できる。なお凸部81および凹部82は、底面部12Aのうち、キャブロック装置3のロック動作時に下向き荷重が最大となる位置の下方に設けるのが好ましい。
【0054】
また本実施形態では、シャシマウント7の凹部82を貫通穴から形成し、この貫通穴と同軸かつ同径の貫通穴83をストライカブラケット12の底面部12Aに設けたので、次の利点を得られる。まず、シャシマウント7の組み付け時に貫通穴83の上方から、凸部81が凹部82にきちんと嵌ったかどうかを目視で確認することができ、クロスメンバ71に対するシャシマウント7の位置精度を向上できる。また、ストライカ5をシャシマウント7上に溶接で固定する際、両者の貫通穴に共通のピン等を差し込むことにより、ストライカ5をシャシマウント7上に正確に位置決めした上で固定できる。これによりシャシマウント7に対するストライカ5の位置精度も向上できる。
【0055】
なお上記の説明から分かるように、本実施形態のシャシマウント7が本発明の「マウント部材」に相当する。
【0056】
以上、本発明の実施形態を詳細に述べたが、本発明の実施形態は他にも様々なものが考えられる。
(1)マウント部材はシャシマウント7以外のものであってもよい。例えばキャブマウント6を受ける機能を有さず、単にストライカ5の位置決め機能のみを有する部材からなってもよい。
(2)凸部と凹部の配置関係は逆であってもよい。すなわちクロスメンバに凹部を設け、マウント部材に凸部を設けてもよい。
【0057】
本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 シャシ
2 キャブ
3 キャブロック装置
4 ロックアセンブリ
5 ストライカ
6 キャブマウント
7 シャシマウント
11 ストライカピン
12 ストライカブラケット
12A 底面部
71 クロスメンバ
71C 上面部
81 凸部
82 凹部
83 貫通穴
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8