特許第6554985号(P6554985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6554985-加圧循環流動炉の運転方法及び運転装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554985
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】加圧循環流動炉の運転方法及び運転装置
(51)【国際特許分類】
   F23C 10/28 20060101AFI20190729BHJP
   F23C 10/16 20060101ALI20190729BHJP
   F23G 5/30 20060101ALI20190729BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   F23C10/28ZAB
   F23C10/16
   F23G5/30 B
   F23G5/30 J
   F23G5/30 A
   F23G5/50 E
   F23G5/50 M
   F23G5/50 H
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-155039(P2015-155039)
(22)【出願日】2015年8月5日
(65)【公開番号】特開2017-32245(P2017-32245A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165273
【氏名又は名称】月島機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】長沢 英和
(72)【発明者】
【氏名】川端 友寛
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊樹
【審査官】 佐々木 訓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−018542(JP,A)
【文献】 特開昭63−075406(JP,A)
【文献】 特開2006−023060(JP,A)
【文献】 特開2002−286216(JP,A)
【文献】 特開2003−056806(JP,A)
【文献】 特開昭63−131832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 10/00 − 10/32
F23C 15/00
F23G 5/30
F23G 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される被処理物を燃焼するライザーと、前記ライザーからの流動媒体及び燃焼ガスを、連結路を介して受けてこれらを分離するサイクロンとを有し、分離した前記流動媒体は前記ライザー下部に戻す経路を介して戻し、燃焼ガスは排出する構成とした循環流動炉において、
前記サイクロンから排出される燃焼ガスを通す空気予熱器と:
前記空気予熱器を通った後の燃焼ガスの除塵を行う集塵機と
前記集塵機の後段に設けられ、前記集塵機から送出される燃焼ガスを駆動源として回動されるタービンと、タービンの回動に伴って回動され、加圧空気を生成するコンプレッサーとを有する過給機と:
このコンプレッサーによって生成された0.05〜0.3MPaの加圧空気を、前記ライザー内の流動媒体を流動させる一次空気及び、一次空気より上方の位置からライザー内に供給される二次空気として供給する供給路と:
前記戻す経路にシールポットがなく連続して返送される構成であり、前記戻す経路に設けられた、前記流動媒体の移動を促進させるためのパージ用空気供給手段と:
前記ライザーの内部温度を検出する温度検出手段と;前記連結路及びサイクロン出口部の少なくとも一方の内部温度を検出する温度検出手段と;を含む温度検出手段と:
これらの温度検出手段からの温度信号に基づき、前記一次空気量及び二次空気量のうち少なくとも前記一次空気量を調整する空気量制御手段と:を含み、
前記コンプレッサーによって生成された前記加圧空気の一部を、前記空気予熱器に通した後に、前記一次空気及び前記二次空気として使用するとともに、
前記加圧空気の残部は、前記空気予熱器を通さず、前記戻す経路に設けられた前記パージ用空気供給手段に直接供給する
ことを特徴とする加圧循環流動炉の運転方法。
【請求項2】
供給される被処理物を燃焼するライザーと、前記ライザーからの流動媒体及び燃焼ガスを、連結路を介して受けてこれらを分離するサイクロンとを有し、分離した前記流動媒体は前記ライザー下部に戻す経路を介して戻し、燃焼ガスは排出する構成とした循環流動炉において、
前記サイクロンから排出される燃焼ガスを通す空気予熱器と:
前記空気予熱器を通った後の燃焼ガスの除塵を行う集塵機と:
前記集塵機の後段に設けられ、前記集塵機から送出される燃焼ガスを駆動源として回動されるタービンと、タービンの回動に伴って回動され、加圧空気を生成するコンプレッサーとを有する過給機と:
このコンプレッサーによって生成された0.05〜0.3MPaの加圧空気を、前記ライザー内の流動媒体を流動させる一次空気及び、一次空気より上方の位置からライザー内に供給される二次空気として供給する供給路と:
前記戻す経路の途中に設けられた、流動媒体を一時的に貯留するシールポットと:
このシールポットに貯留した流動媒体を流動させる流動化空気供給手段と:
前記ライザーの内部温度を検出する温度検出手段と;前記連結路及びサイクロン出口部の少なくとも一方の内部温度を検出する温度検出手段と;を含む温度検出手段と:
これらの温度検出手段からの温度信号に基づき、前記一次空気量及び二次空気量のうち少なくとも前記一次空気量を調整する空気量制御手段と:を含み、
前記コンプレッサーによって生成された前記加圧空気の一部を、前記空気予熱器に通した後に、前記一次空気及び前記二次空気として使用するとともに、
前記加圧空気の残部は、前記空気予熱器を通さず、前記戻す経路に設けられた流動化空気供給手段に直接供給する
ことを特徴とする加圧循環流動炉の運転方法。
【請求項3】
前記空気量制御手段により、前記一次空気を、一次空気と二次空気の和である全空気量の10%〜100%の範囲で変動させる請求項1又は2に記載の加圧循環流動炉の運転方法。
【請求項4】
前記一次空気量の制御により、前記ライザー内の空塔速度を3.0〜6.0m/秒とする請求項1又は2に記載の加圧循環流動炉の運転方法。
【請求項5】
前記ライザー内に脱硫剤を供給する脱硫剤供給手段を備える請求項1〜のいずれか1項に記載の加圧循環流動炉の運転方法。
【請求項6】
前記脱硫剤をスラリー状態で前記脱硫剤供給手段により前記ライザー内に供給する請求項記載の加圧循環流動炉の運転方法。
【請求項7】
供給される被処理物を燃焼するライザーと、前記ライザーからの流動媒体及び燃焼ガスを、連結路を介して受けてこれらを分離するサイクロンとを有し、分離した前記流動媒体は前記ライザー下部に戻す経路を介して戻し、燃焼ガスは排出する構成とした循環流動炉において、
前記サイクロンから排出される燃焼ガスを通す空気予熱器と:
前記空気予熱器を通った後の燃焼ガスの除塵を行う集塵機と:
前記集塵機の後段に設けられ、前記集塵機から送出される燃焼ガスを駆動源として回動されるタービンと、タービンの回動に伴って回動され、加圧空気を生成するコンプレッサーとを有する過給機と:
このコンプレッサーによって生成された0.05〜0.3MPaの加圧空気を、前記ライザー内の流動媒体を流動させる一次空気及び、一次空気より上方の位置からライザー内に供給される二次空気として供給する供給路と:
前記戻す経路にシールポットがなく連続して返送される構成であり、前記戻す経路に設けられた、前記流動媒体の移動を促進させるためのパージ用空気供給手段と:
前記ライザーの内部温度を検出する温度検出手段と;前記連結路及びサイクロン出口部の少なくとも一方の内部温度を検出する温度検出手段と;を含む温度検出手段と:
これらの温度検出手段からの温度信号に基づき、前記一次空気量及び二次空気量のうち少なくとも前記一次空気量を調整する空気量制御手段と:を含み、
前記コンプレッサーによって生成された前記加圧空気の一部を、前記空気予熱器に通した後に、前記一次空気及び前記二次空気として使用する手段と、
前記加圧空気の残部は、前記空気予熱器を通さず、前記戻す経路に設けられた前記パージ用空気供給手段に直接供給する手段と、を有する、
ことを特徴とする加圧循環流動炉の運転装置
【請求項8】
供給される被処理物を燃焼するライザーと、前記ライザーからの流動媒体及び燃焼ガスを、連結路を介して受けてこれらを分離するサイクロンとを有し、分離した前記流動媒体は前記ライザー下部に戻す経路を介して戻し、燃焼ガスは排出する構成とした循環流動炉において、
前記サイクロンから排出される燃焼ガスを通す空気予熱器と:
前記空気予熱器を通った後の燃焼ガスの除塵を行う集塵機と:
前記集塵機の後段に設けられ、前記集塵機から送出される燃焼ガスを駆動源として回動されるタービンと、タービンの回動に伴って回動され、加圧空気を生成するコンプレッサーとを有する過給機と:
このコンプレッサーによって生成された0.05〜0.3MPaの加圧空気を、前記ライザー内の流動媒体を流動させる一次空気及び、一次空気より上方の位置からライザー内に供給される二次空気として供給する供給路と:
前記戻す経路の途中に設けられた、流動媒体を一時的に貯留するシールポットと:
このシールポットに貯留した流動媒体を流動させる流動化空気供給手段と:
前記ライザーの内部温度を検出する温度検出手段と;前記連結路及びサイクロン出口部の少なくとも一方の内部温度を検出する温度検出手段と;を含む温度検出手段と:
これらの温度検出手段からの温度信号に基づき、前記一次空気量及び二次空気量のうち少なくとも前記一次空気量を調整する空気量制御手段と:を含み、
前記コンプレッサーによって生成された前記加圧空気の一部を、前記空気予熱器に通した後に、前記一次空気及び前記二次空気として使用する手段と、
前記加圧空気の残部は、前記空気予熱器を通さず、前記戻す経路に設けられた流動化空気供給手段に直接供給する手段と、を有する、
ことを特徴とする加圧循環流動炉の運転装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥、バイオマス、都市ゴミ等の被処理物を燃焼する加圧循環流動炉の運転方法及び運転装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥、バイオマス、都市ゴミ等の被処理物を燃焼し、焼却炉から排出される燃焼ガスの持つエネルギーを有効に取り出すことに着目した焼却設備として、加圧流動炉が知られている。加圧流動炉は、被処理物を燃焼させる加圧流動炉と、加圧流動炉から排出される燃焼ガスによって回動されるタービンと、タービンと同軸に固着されたタービンの回動に伴って回動され加圧空気を供給するコンプレッサーを内装する過給機を有することを特徴とするシステムである。
【0003】
加圧流動炉システムでは、被処理物を完全燃焼させた際に生じる燃焼ガスによって過給機のタービンを駆動し、コンプレッサーから排出される加圧空気によって被処理物の燃焼及び流動床流動に必要な燃焼空気を全て賄う自立運転が可能となる。自立運転が可能となることで、従来、必要であった流動ブロワおよび誘引ファンが不要となり、ランニングコストが低減することが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
他方、焼却設備として、循環流動炉を使用する技術も知られている(特許文献2)。循環流動炉は、供給される被処理物を燃焼するライザーと、ライザーからの流動媒体(砂)及び燃焼ガスを分離するホットサイクロン、ダウンカマー、ループシールで構成されている。また、ライザーに充填された流動媒体を流動させるためにライザー底部に一次空気を供給する第1送風機2と、一次空気より高い位置からライザーに2次空気を供給する第2送風機を備えている。循環流動炉を使用する利点は、気泡流動炉との比較で、フリーボード燃焼がない又は少ないので、安定した燃焼が得られる、燃焼効率が高く設備がコンパクト等の点で有利といわれている。しかしながら、流動砂を終末速度以上の空塔速度でライザー内を上昇させる必要があり、そのために二次空気用流動ブロワが必要となる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−28251号公報
【特許文献2】特開2002−286216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の主たる課題は、循環流動炉を加圧流動炉として利用することにより、それらの各炉が持つ利点を生かしながら、さらなる利点をも、もたらすシステムを構築することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
供給される被処理物を燃焼するライザーと、前記ライザーからの流動媒体及び燃焼ガスを、連結路を介して受けてこれらを分離するサイクロンとを有し、分離した前記流動媒体は前記ライザー下部に戻し、燃焼ガスは排出する構成とした循環流動炉において、
前記流動炉から排出される燃焼ガスを駆動源として回動されるタービンと、タービンの回動に伴って回動され、加圧空気を生成するコンプレッサーとを有する過給機と:
このコンプレッサーによって生成された加圧空気を、前記ライザー内の流動媒体を流動させる一次空気及び、一次空気より上方の位置からライザー内に供給される二次空気として供給する供給路と:
前記ライザーの内部温度を検出する温度検出手段と;前記連結路及びサイクロン出口部の少なくとも一方の内部温度を検出する温度検出手段と;を含む温度検出手段と:
これらの温度検出手段からの温度信号に基づき、前記一次空気量及び二次空気量のうち少なくとも前記一次空気量を調整する空気量制御手段と:
を含むことを特徴とする加圧循環流動炉の運転方法。
【0008】
(作用効果)
供給される被処理物を燃焼するライザーと、前記ライザーからの流動媒体及び燃焼ガスを、連結路を介して受けてこれらを分離するサイクロンとを有し、分離した前記流動媒体は前記ライザー下部に戻し、燃焼ガスは排出する構成とした循環流動炉を使用する。
かかる循環流動炉を使用することにより、供給される被処理物を、フリーボード燃焼がない又は少ないので、主にライザーで安定した燃焼を図ることができる。
さらに本発明では、流動炉から排出される燃焼ガスを駆動源として回動されるタービンと、タービンの回動に伴って回動され、加圧空気を生成するコンプレッサーとを有する過給機と、そのコンプレッサーによって生成された加圧空気を、流動炉のライザーの流動媒体を流動させる一次空気及び一次空気より上方の位置からライザー内に供給される二次空気として供給する供給路とを有する構成によって、流動媒体(流動砂)の十分な流動、および燃焼処理を図ることができる。
観点を変えていえば、被処理物を完全燃焼させた際に生じる燃焼ガスによって過給機のタービンを駆動し、コンプレッサーから排出される加圧空気によって被処理物の燃焼及び流動媒体の流動に必要な燃焼空気を全て賄う自立運転が可能となる。自立運転が可能となることで、従来、必要であった流動ブロワおよび誘引ファンが不要となり、ランニングコストが低減する。さらに、生成された加圧空気の圧力は十分に高く、二次空気より高い圧力が必要な一次空気として全量供給することも可能となる。
前記ライザーの内部温度を検出する温度検出手段と、前記連結路及びサイクロン出口部の少なくとも一方の内部温度を検出する温度検出手段とを含む温度検出手段を有する。
さらに、これらの温度検出手段からの温度信号に基づき、前記一次空気量及び二次空気量のうち少なくとも前記一次空気量を調整する空気量制御手段を有する。
その結果、温度検出手段により温度信号に基づき、一次空気量及び二次空気量のうち少なくとも一次空気量を調整することにより燃焼を安定化させることができる。
本発明においては、ライザーでの温度検出(高さ方向1箇所又は複数箇所)のほか、特に、連結路及びサイクロン出口部の少なくとも一方においても、温度検出して一次空気量及び二次空気量のうち少なくとも一次空気量を調整する。
本発明においては、要すれば、循環流動炉と過給機とを組み合せるので流動・誘引ブロワが不要となり、さらに、空気量調整で適切な温度で燃焼する。
【0009】
前記空気量制御手段により、前記一次空気を、一次空気と二次空気の和である全空気量の10%〜100%の範囲で変動させる加圧循環流動炉の運転方法。
【0010】
(作用効果)
一次空気と二次空気の和である全空気量の10%〜100%の範囲で変動させることにより、流動媒体の流動状態及び被処理物の燃焼を適切なものとすることができる。
従来の循環流動炉では、炉内に供給する総燃焼空気流量のうち、一次空気に供給できる空気流量は、流動ブロワの能力によって制限されていた。これは一次空気が循環流動炉の流動層内に供給されるため、二次空気と比較して高い供給圧力が必要とされるからである。一方、本発明によれば、コンプレッサーから排出される加圧空気の圧力が十分に高いため設備建設後でも総燃焼空気流量に占める一次空気の割合を自由に変えることができる。
【0011】
前記一次空気量の制御により、前記ライザー内の空塔速度を3.0〜6.0m/秒とする加圧循環流動炉の運転方法。
【0012】
(作用効果)
ライザー内の空塔速度を遅くすることにより、被処理物の安定した燃焼を図ることができる。
【0013】
前記循環流動炉は、サイクロンで分離した前記流動媒体を前記ライザー下部に戻す戻す経路の途中に、前記流動媒体を一時的に貯留するシールポットを有し、このシールポットには貯留流動媒体を流動させて前記ライザー下部に戻すよう流動化空気供給手段を備えた構成である加圧循環流動炉の運転方法。
【0014】
(作用効果)
サイクロンで分離した流動媒体をライザー下部に戻す戻す経路の途中に、流動媒体を一時的に貯留するシールポットを設けると、ライザー下部からサイクロンへの吹き抜けを防止できる。貯留流動媒体を流動させてライザー下部に戻すために、流動媒体を戻す量を制御できる。
【0015】
前記循環流動炉が、分離した前記流動媒体を、前記ライザー下部に戻す経路にシールポットがなく連続して返送され、戻す経路下方には、流動化空気供給手段を備えた構成である加圧循環流動炉の運転方法。
【0016】
(作用効果)
サイクロンで分離された流動媒体を、ライザー下部に戻す経路にシールポットがなく連続して返送することもできる。この場合、戻す経路の下部にシールポットを設けないとしても、ライザー下部からサイクロンへの吹き抜け防止のためには、戻す経路の下部に流動媒体が必要な密度で存在することが必要となる。流動化空気は、戻す経路での流動媒体の移動を促進する。
【0017】
前記ライザー内に脱硫剤を供給する脱硫剤供給手段を備える加圧循環流動炉の運転方法。
【0018】
(作用効果)
燃焼ガス中に含まれる硫黄分を可能な限り除去することが望ましい。そこで、ライザー内に脱硫剤を供給することで硫黄分の除去が可能である。循環流動炉内に脱硫剤を投入する最大の利点は、脱硫剤も循環するので、未反応の脱硫剤が減少し、脱硫剤の時間当たりの使用量は少なくて足りる。
【0019】
前記脱硫剤をスラリー状態で前記脱硫剤供給手段により前記ライザー内に供給する加圧循環流動炉の運転方法。
【0020】
(作用効果)
脱硫剤(その代表例は石灰石)は、たとえば10〜500μmの粒子で供給してもよいが、未反応の脱硫剤(特に小径の脱硫剤)が循環流動炉外へ排出されてしまう可能性があるとともに、過度に大きいと供給量当たりの総比表面積が大きくならないので、反応効率が悪い問題がある。さらに、粒子形態では、循環流動炉への供給量の調整を厳格に行うことができ難い。しかも、根本的な課題として、本発明ではライザー内を加圧状態とするので、粒子形態の供給に困難を来す。これに対し、脱硫剤をスラリー状態で脱硫剤供給手段によりライザー内に供給することで、前述の問題のすべてを解決できる。
【0021】
前記循環流動炉が、分離した前記流動媒体を、前記ライザー下部に戻す経路にシールポットがなく連続して返送される構成であり、
前記サイクロンから排出される燃焼ガスを空気予熱器に通した後に、集塵機により集塵を行ない、集塵機で除塵された空気を前記過給機のタービンに供給し、コンプレッサーによって生成された加圧空気の一部を前記空気予熱器に通した後に、一次空気及び二次空気として使用するとともに、
加圧空気の残部は、前記空気予熱器を通さず、前記戻す経路に設けた前記流動化空気供給手段に直接供給する加圧循環流動炉の運転方法。
【0022】
(作用効果)
戻す経路に設けた流動化空気吹込み手段に供給する加圧空気としては、高温であるとハンドリングなどに問題が生じるので、空気予熱器を通さず、直接、コンプレッサーによって生成された加圧空気を供給するので望ましい。
【0023】
供給される被処理物を燃焼するライザーと、前記ライザーからの流動媒体及び燃焼ガスを、連結路を介して受けてこれらを分離するサイクロンとを有し、分離した前記流動媒体は前記ライザー下部に戻し、燃焼ガスは排出する構成とした循環流動炉において、
前記流動炉から排出される燃焼ガスを駆動源として回動されるタービンと、タービンの回動に伴って回動され、加圧空気を生成するコンプレッサーとを有する過給機と、
このコンプレッサーによって生成された加圧空気を、前記流動炉のライザーに、一次空気及び二次空気として供給する供給路と、
前記ライザーと、前記連結路及びサイクロン出口部の少なくとも一方とにその内部温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段からの温度信号に基づき、前記一次空気量及び二次空気量を調整する空気量制御手段と、
を含むことを特徴とする加圧循環流動炉の運転装置。
【0024】
【発明の効果】
【0025】
以上の発明によれば、循環流動炉を加圧流動炉として利用することにより、それらの各炉が持つ利点を生かしながら、前掲のさらなる利点を示すものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施の形態の概要説明図である。
図2】本発明の第2の実施の形態の概要説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の本実施形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
【0028】
<第1の実施の形態>
循環流動炉1は、供給される被処理物を燃焼するライザー2と、ライザー2からの流動媒体(砂)及び燃焼ガスを、連結路3を介して受けてこれらを分離する(ホット)サイクロン4とを有し、分離した流動媒体は傾斜した戻す経路5を介してライザー2下部に戻し、燃焼ガスは、サイクロン4の頂部から排出する構成としたものである。
ライザー2の底部には、主に流動媒体を流動させるための一次空気供給口が設けられており、一次空気取り入れ口の上方には二次空気供給口が供えられている。
【0029】
また、流動炉1から排出される燃焼ガスを駆動源として回動されるタービン30aと、タービン30aの回動に伴って回動され、外気Aを取り込んで加圧空気を生成するコンプレッサー30bとを有する過給機30を含む。
【0030】
さらに、コンプレッサー30bによって、吸気された空気をたとえば0.05〜0.3MPaに昇圧した加圧空気を、流動炉1のライザー2に、一次空気及び二次空気として供給する供給路31,32,33,34A,34Bと、前記ライザー2と連結路3及びサイクロン4出口部の少なくとも一方とにその内部温度を検出する温度検出手段60,60・、61、62と、温度検出手段60,60・、61、62からの温度信号に基づき、一次空気量及び二次空気量を調整する空気量制御手段34a,34bとを備える。
【0031】
サイクロン4の頂部から排出される燃焼ガスは、導路6を介して空気予熱器10に導かれ、コンプレッサー30bによって生成された連結路31、32を介して導入された加圧空気を予熱するようになっている。空気予熱器10としては、シェルアンドチューブ式熱交換器などを使用できる。
【0032】
空気予熱器10を通った後の燃焼ガスは、導路7を介して集塵機20に供給され、空空気予熱器10から送出される燃焼ガスに含まれるダスト、細粒化された流動砂等の不純物を除去する。捕捉不純物Dは排出路9を介して系外に排出される。
集塵機20に内装されるフィルタとしては、例えばセラミックフィルタを用いることができ、集塵機20は、下部側の側壁の下部には、燃焼ガスを機器内に供給する供給口が形成され、上部には、不純物等が取除かれた清浄な燃焼ガスを機器外に排出する排出口が形成されている。
【0033】
(過給機)
過給機30は、集塵機20の後段に設けられており、集塵機20から送出される燃焼ガスを、管路8を介して受けて、これによって回動されるタービン30aと、タービン30aの回動を伝達する軸30cと、該タービンと同軸に固着されて軸30cによって回動を伝達されることによって加圧空気を生成するコンプレッサー30bとから構成されている。生成された加圧空気は、燃焼空気として加圧流動炉1へ供給される。
【0034】
管路8を通る燃焼ガスの一部は、流量調整弁9aを介して直接煙突などの排気手段40に導かれ、大気に放出される。なお、排気手段40の上流側には、燃焼ガス中の硫黄分等を除去する排煙処理手段(図示せず)が備えられている。
【0035】
(運転形態例)
下水汚泥、バイオマス、都市ゴミ等の被処理物は、一時貯留装置70から切り出され、ライザー2の中段から内部に供給される。供給された被処理物は、ライザー2内での流動媒体(砂)の上昇に伴って、上昇しながら燃焼が行われ、ライザー2上部から連結路3を介してサイクロン4に移行される。
サイクロン4では、燃焼ガスと流動媒体とに分離され、燃焼ガスは燃焼ガスとして空気予熱器10に導かれる。
サイクロン4で分離された流動媒体は、その下部に移行し、傾斜した戻す経路5を介してライザー2下部に戻される。
【0036】
前述のように、コンプレッサー30bによって生成された加圧空気は、供給路31,32,33,34A,34Bを通り、空気予熱器10を介して流動炉1のライザー2に、一次空気及び二次空気として供給する。
【0037】
ライザー2と、連結路3及びサイクロン4出口部の少なくとも一方(図示の形態では両方)とにその内部温度を検出する温度検出手段60、61、62が設けられ、これら温度検出手段60、61、62の温度信号に基づき、演算処理装置36が、一次空気量及び二次空気量を調整する空気量制御手段34a,34bに流量信号を与えるようになっている。
この場合の信号処理形態に限定はないが、好ましくは二次空気吹込み部位からサイクロン4出口部に到る各温度検出手段60、61、62の検出温度が実質的に同一である(15℃程度以内の温度差)のが望ましい。
一次空気量は、一次空気と二次空気の和である全空気量の10%〜100%の範囲で変動させることができる。
一次空気量の制御により、ライザー2内の空塔速度を3.0〜6.0m/秒とするのが望ましい。
これらは、完全燃焼を図るためにライザー2内での滞留時間を長くし、空塔速度を遅めにする観点から、一次空気、二次空気あるいはこれらの和である全空気量を制御することができる。
【0038】
一次空気及び二次空気のほか、三次空気吹込み路34Cを設けてもよい。一次空気はライザー2の下部から吹込み、その上方に最下段の温度検出手段60を設けるのが望ましい。流動媒体の流動層の上面は、戻す経路5の下部が没するレベルに設定するのが望ましい。
そして、流動層の上面の上方から、二次空気吹込み路34Bを通して二次空気を吹き込むのが望ましい。
【0039】
他方、ライザー2内に脱硫剤X(石灰石、消石灰、ドロマイトなど)を供給する脱硫剤供給手段が設けられている。図1の例では、脱硫剤Xを溶解槽52にて溶解し、スラリーとしてポンプ53によりライザー2内に供給するようになっている。他方、図2に示すように、粒状脱硫剤Xを一時貯留器50から切り出して、フィーダ51により供給するようにしてもよい。
【0040】
脱硫剤Xの添加により、排ガス中に含まれる硫黄分を可能な限り除去する。脱硫剤Xの添加量は、被処理物の硫黄分含有量の測定、並びにたとえば煙突40から大気中に放出する排気ガスの硫黄分濃度を測定し、硫黄分を除去するための脱硫剤X量を設定し、連続的にライザー2内に脱硫剤Xを供給することができる。
【0041】
脱硫剤は、粒状の場合、たとえば10〜500μmとするのが望ましい。過度に小さいと、未反応の脱硫剤が循環流動炉外へ排出されてしまう可能性があるとともに、過度に大きいと供給量当たりの総比表面積が大きくならないので、反応効率が悪い問題がある。
脱硫剤をスラリー状態で脱硫剤供給手段によりライザー2内に供給するようにすると、問題のすべてを解決でき最適な形態である。
【0042】
他の脱硫剤Xの供給方法として、粉状の脱硫剤を空気輸送で炉内に供給する方法や、汚泥と脱硫剤Xとを混合機(図示せず)で混合したのち、炉内に供給することもできる。当該混合機は一時貯留装置70の上流、または下流に設ければよく、さらに一時貯留装置70を混合機として使用しても良い。
【0043】
加圧空気の一部は、図1に示すように、戻す経路5内の流動媒体の移動を促進させるためのパージ用空気35A及び 戻す経路5出口付近の流動を促進させるためのアシスト空気35Bとして使用することができる。
この場合、空気予熱器10で加熱することはハンドリング性の低下となるので、空気予熱器10を避けて、バイパス路35を通して供給することが望ましい。
【0044】
<第2の実施の形態>
図2に示すように、循環流動炉1は、サイクロン4で分離した流動媒体をライザー2下部に戻す戻す経路5の途中に、流動媒体を一時的に貯留するシールポット80を設け、このシールポット80に、貯留した流動媒体を流動させてライザー2下部に戻すよう流動化空気供給手段81を設けることができる。
【0045】
サイクロン4で分離した流動媒体をライザー2下部に戻す戻す経路5の途中に、流動媒体を一時的に貯留するシールポット80を設けると、ライザー2下部からサイクロン4への吹き抜けを防止できる。しかし、一時貯留した流動媒体はライザー2下部に戻すように循環させる必要があるために、流動化空気供給手段81を設けることができる。
この第2の形態において、流動化空気供給手段81から吹き込む空気として、別途ブロワを用意するのではなく、コンプレッサー30bによって生成された加圧空気を使用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 循環流動炉
2 ライザー
3 連結路
4 サイクロン
戻す経路
10 空気予熱器
20 集塵機
30 過給機
30a タービン
30b コンプレッサー
34A 一次空気供給路
34B 二次次空気供給路
34C 三次空気供給路
60 温度検出手段
61 温度検出手段
62 温度検出手段
80 シールポット
X 脱硫剤
図1
図2