(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、乗物用シートは、多機能に構成され、収納可能なアームレストやロータリースイッチなど、多くの部品が設けられるようになっている。そのため、乗物用シートは、多機能でありながら、部品点数を削減したり、大型化を抑制したりすることが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、部品点数を削減したり、大型化を抑制したりすることができる乗物用シートを提供することを目的とする。
また、本発明は、切替機構の誤作動を抑制することができる乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するため、本発明の乗物用シートは、シートクッションおよびシートバックと、前記シートバックに対し使用位置と前記シートバックに収納される収納位置との間で回動可能に支持され、前記使用位置にあるときの上面に設けられて通電されることで操作可能となる操作部を有するアームレストと、前記アームレストを前記使用位置から前記収納位置に回動させたときに前記アームレストの一部または前記シートバックの一部が当接することで作動して前記操作部への通電を遮断する切替機構と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、切替機構が、アームレストの一部またはシートバックの一部が当接することで作動するので、切替機構を簡単かつコンパクトな構成とすることができる。これにより、乗物用シートの部品点数を削減したり、大型化を抑制したりすることができる。また、切替機構が、アームレストの一部またはシートバックの一部が当接することで作動するので、切替機構の誤作動を抑制することができる。
【0008】
前記した乗物用シートにおいて、前記シートバックのフレームには、前記アームレストを回動可能に支持する支持部材が設けられ、前記切替機構は、左右方向から見て、前記支持部材の輪郭の内側に配置されている構成とすることができる。
【0009】
これによれば、切替機構をコンパクトに配置できるので、乗物用シートの大型化を抑制することができる。
【0010】
前記した乗物用シートにおいて、前記切替機構は、前記シートバックに設けられ、前記アームレストを前記使用位置から前記収納位置に回動させたときに前記アームレストの一部が当接することで作動する構成とすることができる。
【0011】
これによれば、切替機構をシートバックに対し回動可能なアームレストに設ける場合よりも、切替機構を安定した状態で配置することができる。これにより、切替機構の誤作動を抑制することができる。また、切替機構をアームレストに設ける場合よりも、切替機構に接続されるハーネスにかかる負荷を低減することができる。
【0012】
前記した乗物用シートにおいて、前記シートバックのフレームには、前記アームレストを回動可能に支持する支持部材と、前記切替機構を前記フレームに取り付ける第1ブラケットとが設けられ、前記第1ブラケットは、左右方向から見て、前記支持部材の輪郭の内側に配置されている構成とすることができる。
【0013】
これによれば、第1ブラケットをコンパクトに配置できるので、乗物用シートの大型化を抑制することができる。
【0014】
前記した乗物用シートにおいて、前記切替機構は、前記操作部の通電状態を切り替えるスイッチと、前記スイッチを前記第1ブラケットに取り付ける第2ブラケットとを有し、前記第2ブラケットは、前記第1ブラケットに係合して、前記シートバックに対する前記切替機構の位置を決める位置決め部を有する構成とすることができる。
【0015】
これによれば、切替機構の位置を安定させることができるので、切替機構の誤作動を抑制することができる。また、第1ブラケットに係合する部分が第2ブラケットに設けられていることで、切替機構を第1ブラケットに仮止めすることが可能となるので、組み付け作業性を向上させることが可能となる。
【0016】
前記した乗物用シートにおいて、前記第2ブラケットは、一部材からなる構成とすることができる。
【0017】
これによれば、乗物用シートの部品点数を削減することができる。
【0018】
前記した乗物用シートにおいて、前記第2ブラケットは、板金からなり、前記位置決め部は、前記板金の一部を折り曲げることで形成されている構成とすることができる。
【0019】
これによれば、位置決め部が第2ブラケットに一体に形成されることになるので、乗物用シートの部品点数を削減することができる。
【0020】
前記した乗物用シートにおいて、前記第2ブラケットは、締結部材によって前記第1ブラケットに固定される固定部を有し、前記位置決め部は、前記締結部材の締め付け方向に突出し、前記スイッチよりも前記固定部の近くに設けられている構成とすることができる。
【0021】
これによれば、位置決め部が固定部の近くに設けられているので、締結部材によって第2ブラケットの固定部を第1ブラケットに固定することで、締結部材の締め付け力により位置決め部を第1ブラケットに強固に係合させることができる。これにより、切替機構の位置を安定させることができるので、切替機構の誤作動を抑制することができる。また、位置決め部が第1ブラケットに強固に係合することで、第2ブラケット(切替機構)の取付剛性を向上させることができる。
【0022】
前記した乗物用シートにおいて、前記位置決め部は、複数設けられている構成とすることができる。
【0023】
これによれば、アームレストの当接により切替機構に締結部材を中心に回動させようとする力がかかった場合でも、切替機構の位置を安定させることができるので、切替機構の誤作動を抑制することができる。
【0024】
前記した乗物用シートにおいて、前記第1ブラケットは、前記スイッチに接続されるハーネスが固定されるハーネス固定部を有する構成とすることができる。
【0025】
これによれば、ハーネスを固定する部分を第1ブラケットとは別に設ける構成と比較して、乗物用シートの部品点数を削減することができる。
【0026】
前記した乗物用シートにおいて、前記シートバックは、前記アームレストの回動動作をガイドするガイド穴を有し、前記アームレストは、左右方向に突出し、前記ガイド穴に係合して前記ガイド穴にガイドされる突出部を有し、前記突出部が前記切替機構に当接する構成とすることができる。
【0027】
これによれば、アームレストのガイド穴にガイドされる部分を利用して切替機構を作動させることができるので、乗物用シートの部品点数を削減することができる。
【0028】
前記した乗物用シートにおいて、前記切替機構は、前記アームレストの回動軸よりも下に配置されている構成とすることができる。
【0029】
これによれば、切替機構を乗員の肘から遠いところに配置することができる。これにより、乗員が切替機構に触れてしまうことを抑制できるので、切替機構の誤作動や当たり感を感じることなどを抑制することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、乗物用シートの部品点数を削減したり、大型化を抑制したりすることができる。また、切替機構の誤作動を抑制することができる。
【0031】
また、本発明によれば、切替機構をアームレストを回動可能に支持する支持部材の輪郭の内側に配置することで、乗物用シートの大型化を抑制することができる。
【0032】
また、本発明によれば、切替機構をシートバックに設けることで、切替機構の誤作動を抑制することができる。また、切替機構に接続されるハーネスにかかる負荷を低減することができる。
【0033】
また、本発明によれば、切替機構をシートバックのフレームに取り付ける第1ブラケットを支持部材の輪郭の内側に配置することで、乗物用シートの大型化を抑制することができる。
【0034】
また、本発明によれば、スイッチを第1ブラケットに取り付ける第2ブラケットに決める位置決め部を設けることで、切替機構の誤作動を抑制することができる。また、切替機構の組み付け作業性を向上させることが可能となる。
【0035】
また、本発明によれば、第2ブラケットを一部材からなる構成とすることで、乗物用シートの部品点数を削減することができる。
【0036】
また、本発明によれば、位置決め部を、第2ブラケットを構成する板金の一部を折り曲げて形成することで、乗物用シートの部品点数を削減することができる。
【0037】
また、本発明によれば、位置決め部を、締結部材の締め付け方向に突出させ、スイッチよりも第2ブラケットの固定部の近くに設けることで、切替機構の誤作動を抑制することができる。また、切替機構の取付剛性を向上させることができる。
【0038】
また、本発明によれば、位置決め部を複数設けることで、切替機構の誤作動を抑制することができる。
【0039】
また、本発明によれば、第1ブラケットにハーネス固定部を設けることで、乗物用シートの部品点数を削減することができる。
【0040】
また、本発明によれば、シートバックのガイド穴にガイドされる、アームレストの突出部が切替機構に当接する構成とすることで、乗物用シートの部品点数を削減することができる。
【0041】
また、本発明によれば、切替機構をアームレストの回動軸よりも下に配置することで、切替機構の誤作動や当たり感を感じることなどを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明において、前後、左右、上下は、乗物用シートに座る乗員を基準とする。
図1に示すように、本実施形態に係る乗物用シートは、自動車の後部座席に使用される車両用シートSとして構成されており、シートクッションS1と、シートバックS2と、アームレストARとを主に備えている。
【0044】
図2に示すように、アームレストARは、シートバックS2に対し、使用するときの位置である使用位置と、シートバックS2に収納される収納位置(
図1参照)との間で前後に回動可能に支持されている。アームレストARは、
図2に示す使用位置にあるときの上面の前端部に設けられた操作部11と、操作部11の後方に設けられたカップホルダ12とを有している。操作部11は、オーディオ機器や空調機器などを操作するための構成であり、操作ボタン13やディスプレイ14などを有している。操作部11は、アームレストARを収納位置から使用位置に回動させたときに通電されることで操作可能となる。
【0045】
図3(a)に示すように、シートバックS2は、シートクッションS1に対し、乗員がシートクッションS1(車両用シートS)に着座可能となる起立位置と、
図3(b)に示すように、シートクッションS1に近づくように前に倒れる倒伏位置との間で前後に回動可能に設けられている。
【0046】
図4に示すように、シートバックS2は、骨格を構成するフレームとしてのシートバックフレーム20を有し、アームレストARは、骨格を構成するアームレストフレーム30を有している。シートバックS2およびアームレストARは、シートバックフレーム20やアームレストフレーム30に、図示しないクッション材や表皮材などを被せることで構成されている。
【0047】
シートバックフレーム20には、支持部材としての支持ブラケット40が設けられている。
図5に示すように、支持ブラケット40は、アームレストARを回動可能に支持する部材である。支持ブラケット40は、板金からなり、その後部の上下の端に、アームレストARの左右方向外側に向けて延出する接合部45が設けられている。支持ブラケット40は、接合部45がシートバックフレーム20に溶接されることで(溶接部W1参照)、シートバックフレーム20に連結されている。
図9に示すように、支持ブラケット40は、左右方向から見て、略矩形状をなし、前端部がシートバックフレーム20から前方に突出するように配置され、後端がシートバックフレーム20の後端と略重なるように配置されている。
【0048】
図5に戻り、支持ブラケット40は、左右に貫通した軸支穴41およびガイド穴42を有している。軸支穴41は、アームレストARを回動可能に軸支する略円形の穴であり、支持ブラケット40の前端部の上下方向中央部に設けられている。また、ガイド穴42は、アームレストARの回動動作をガイドする長穴であり、左右方向から見て、軸支穴41の上方から後方にわたって軸支穴41を中心とした略円弧状に形成されている。このような支持ブラケット40は、アームレストARの左右両側に1つずつに設けられている(一方のみ図示)。
【0049】
アームレストフレーム30は、軸支部としての軸部31と、アームレスト側係合部としての突出部32とを有している。
軸部31は、アームレストフレーム30の後端部からアームレストARの左右方向外側に突出するように設けられている。軸部31は、アームレストフレーム30の左右両側に1つずつ設けられ(一方のみ図示)、端部が、対応する支持ブラケット40の軸支穴41に挿通されることで、支持ブラケット40に回動可能に支持されている。
【0050】
突出部32は、アームレストフレーム30の後端からアームレストARの左右方向外側に突出するように設けられている。突出部32は、左右方向から見て、軸部31からずれた位置、具体的には、軸部31の上斜め後方に配置されている。突出部32は、左右の端部(一方のみ図示)が、対応する支持ブラケット40のガイド穴42に係合しており、アームレストARが回動動作をしたときにガイド穴42によってガイドされる。突出部32は、左右の端部に、ガイド穴42からの抜け止めとして、フランジ部32Fを有している。突出部32の左端部は、フランジ部32FよりもアームレストARの左右方向外側まで延びており、このフランジ部32Fよりも外側まで延びる部分が後述する切替機構2に当接可能となっている。
【0051】
車両用シートSは、シートバックS2を倒伏位置から起立位置に回動させるときにアームレストARをシートバックS2とともに倒れた姿勢から起きた姿勢に回動させる連動機構1と、アームレストARに設けられた操作部11(
図2参照)の通電状態を切り替える切替機構2とを備えている。なお、連動機構1および切替機構2の構成の説明において、前後および上下は、
図5に示す状態、具体的には、シートバックS2が起立位置にあり、かつ、アームレストARが使用位置にある状態を基準とする。
【0052】
連動機構1は、支持ブラケット40に取り付けられた係合部材100を備えている。
図6(a)に示すように、係合部材100は、上下方向に長い長尺状をなし、係合部材100の下端部に設けられた側面視円形状の貫通穴110と、貫通穴110の上に設けられた開口部120とを有している。
【0053】
開口部120は、シートバックS2を倒伏位置から起立位置に回動させるときにアームレストARの突出部32を受け入れて突出部32に係合する部分であり、左右方向から見たときの係合部材100の外周面に設けられた、略上方に向けて開口する凹部として形成されている。
図6(b)に示すように、開口部120は、係合面121と、係合面121とは別に設けられた当接面122とを有している。係合面121は、シートバックS2を倒伏位置から起立位置に回動させるときにアームレストARの突出部32に係合する面であり、開口部120の内面のうちの底の面と上側の面とによって構成されている。開口部120の上側の面は、開口部120の底から開口縁に向けて、当接面122に近づくように、底面に対して鋭角をなすように延びている。当接面122は、アームレストARが収納位置にあるときにアームレストARの突出部32に当接する面であり、主に開口部120の下側の面によって構成されている。開口部120の下側の面は、底面に対して略直交するように延びている。
【0054】
支持ブラケット40には、前端部の下部(軸支穴41の下方)に貫通穴43が設けられており、この貫通穴43にアームレストARの左右方向内側から外側に向けてボルト91が挿通されている。ボルト91の頭部は、支持ブラケット40に溶接によって固定されている。係合部材100は、一対のワッシャ93に挟まれた状態で、貫通穴110にボルト91を挿通し、ボルト91にナット92を締結することで、支持ブラケット40に取り付けられている。係合部材100は、ボルト91に対して回動可能であり、これによって、シートバックS2に回動可能(移動可能)に設けられている。また、係合部材100は、回動軸としてのボルト91の周囲の部分、すなわち、貫通穴110の周囲の部分が、他部材としての一対のワッシャ93によって左右方向(回動軸方向)で挟まれている。ボルト91は、段付きボルトであるため、係合部材100と一対のワッシャ93は、ナット92によって締め付けられてはいない。そのため、係合部材100は、自由に回動できる。言い換えれば、係合部材100は、自重で回動するように設けられている。
【0055】
図7に示すように、係合部材100は、係合部材本体101と、係合部材本体101の略全体を覆うように設けられた被覆部材102とを有して構成されている。係合部材本体101と被覆部材102は、互いに異なる材料から形成されている。具体的に、係合部材100は、インサート成形などにより、係合部材本体101が金属から形成され、被覆部材102が樹脂から形成されている。言い換えれば、係合部材100は、金属製の係合部材本体101の表面を樹脂(被覆部材102)によってコーティングした構造となっている。被覆部材102は、係合部材本体101の略全体を覆っているため、貫通穴110の内周面や、開口部120の内面(係合面121および当接面122)、一対のワッシャ93に挟まれる部分などに設けられている。被覆部材102は、ワッシャ93と対面する部分に、対面するワッシャ93に向けて左右方向に突出する凸部130を有している。凸部130は、略半球状に形成され、
図6(a)に示すように、貫通穴110を取り囲むように4つ設けられている。
【0056】
係合部材100の上端部には、ストッパ部材140が取り付けられている。ストッパ部材140は、ゴムからなり、シートバックフレーム20や支持ブラケット40に当接することで、係合部材100の回動を規制する部材である。このようなゴム製のストッパ部材140が設けられていることで、係合部材100と、シートバックフレーム20や支持ブラケット40との接触音を抑制することができる。
【0057】
図8(a)に示すように、切替機構2は、スイッチ210と、レバー部材220と、第2ブラケット230とを主に備え、シートバックフレーム20に設けられた第1ブラケット50を介してシートバックフレーム20に取り付けられている。
スイッチ210は、操作部11(
図2参照)の通電状態を切り替えるマイクロスイッチであり、
図8(b)に示すアクチュエータ部212が押されたときに操作部11への通電を遮断し、アクチュエータ部212に対する押圧が解除されたときに操作部11への通電を許容するように設けられている。スイッチ210の端子部には、ハーネス240が接続されている。
【0058】
レバー部材220は、スイッチ210のアクチュエータ部212を作動させる部材であり、スイッチ210の前に配置されている。レバー部材220は、第2ブラケット230に回動可能に支持される軸支部221と、軸支部221から略前方に向けて延びる被当接部222と、軸支部221の下面に設けられた押圧部223とを有している。レバー部材220は、
図9に示す非当接位置と
図10に示す当接位置と間で回動可能に支持され、図示しないバネによって常時、非当接位置に向けて付勢されている。レバー部材220は、被当接部222を押し下げることで、非当接位置から当接位置に回動する。
図8(b)に示すように、押圧部223は、非当接位置にあるときにアクチュエータ部212と対向する第1の面223Aと、当接位置にあるときにアクチュエータ部212と対向する第2の面223Bとを有している。第1の面223Aは、レバー部材220の回動中心からの距離が、アクチュエータ部212と当接しないような距離に設定されている。そして、押圧部223は、第1の面223Aから図示時計回りに回動中心からの距離が徐々に大きくなっていき、第2の面223Bは、回動中心からの距離が、アクチュエータ部212に当接してアクチュエータ部212を押し込むような距離に設定されている。
【0059】
図8(a)に戻り、第2ブラケット230は、スイッチ210とレバー部材220を第1ブラケット50に取り付けるためのブラケットである。第2ブラケット230は、一の板金から形成された一部材からなり、固定部231と、第1取付部232と、第2取付部233と、位置決め部234とを有している。固定部231は、締結部材としてのボルト94によって第1ブラケット50に固定される部分であり、ボルト94が挿通される貫通穴231Aを有している。第1取付部232は、スイッチ210が固定される部分であり、左右方向から見て、固定部231から前斜め下方に延びるように設けられている。第2取付部233は、レバー部材220を回動可能に支持する部分であり、左右方向から見て、固定部231から前方に延びるように設けられている。第2取付部233と第1取付部232の前端部同士は、上下に連結されている(図示省略)。
【0060】
位置決め部234は、第1ブラケット50に係合してシートバックS2に対する切替機構2の位置を決める部分であり、本実施形態では、2つ設けられている。より詳細に、位置決め部234は、第1位置決め部234Aと第2位置決め部234Bからなる。第1位置決め部234Aは、固定部231の上端から上方に延び、上端部(板金の一部)を右に向けて折り曲げることで形成され、第2位置決め部234Bは、固定部231の後端から後方に延び、後端部(板金の一部)を右に向けて折り曲げることで形成されている。これにより、各位置決め部234は、端部が右、つまり、ボルト94の締め付け方向に突出するように形成されている。各位置決め部234は、第1取付部232に固定されたスイッチ210よりも、固定部231の近くに設けられている。
【0061】
第1ブラケット50は、切替機構2をシートバックフレーム20に取り付けるための部材である。第1ブラケット50は、板金からなり、シートバックフレーム20に固定される本体部51と、ハーネス固定部52とを有している。
本体部51は、左右に貫通した貫通穴53と位置決め穴54を有している。貫通穴53は、略円形の穴であり、本体部51の上下方向中央部の前寄りに設けられている。第1ブラケット50の、アームレストARの左右方向内側の面には、貫通穴53に対向して、図示しないナットが溶接によって第1ブラケット50に固定された状態で設けられている。位置決め穴54は、第1位置決め穴54Aと第2位置決め穴54Bからなる。第1位置決め穴54Aは、第1位置決め部234Aが係合可能な前後に長い略矩形状の穴であり、貫通穴53の上に設けられている。また、第2位置決め穴54Bは、第2位置決め部234Bが係合可能な上下に長い略矩形状の穴であり、貫通穴53の後に設けられている。
【0062】
ハーネス固定部52は、本体部51の後端部の上下方向中央部分を、アームレストARの左右方向外側の斜め後方に向けて延びるように折り曲げることで形成されている。ハーネス固定部52の中央部付近には、略左右に貫通するクリップ係合穴52Aが形成されている。ハーネス固定部52には、スイッチ210に接続されるハーネス240を保持するクリップ96がクリップ係合穴52Aに係合されることで、クリップ96を介してハーネス240が固定される(
図5参照)。
【0063】
第1ブラケット50は、本体部51がシートバックフレーム20に溶接されることで(溶接部W3,W4参照)、シートバックフレーム20に連結されている。
図9に示すように、第1ブラケット50は、左右方向から見て、支持ブラケット40の輪郭の内側で支持ブラケット40と重なるように配置されている。
【0064】
図8(a)に戻り、切替機構2は、第1位置決め部234Aを第1位置決め穴54Aに係合するとともに、第2位置決め部234Bを第2位置決め穴54Bに係合し、ボルト94を貫通穴231A,53に通して第1ブラケット50に設けられた図示しないナットに締結することで、シートバックフレーム20に固定されている。これにより、切替機構2は、シートバックS2に設けられている。
図9に示すように、切替機構2は、左右方向から見て、支持ブラケット40の輪郭の内側で支持ブラケット40と重なるように配置されている。また、切替機構2は、左右方向から見て、アームレストARの回動軸である軸部31よりも下に配置されている。より詳細に、切替機構2は、軸部31の後斜め下に配置されている。
【0065】
次に、切替機構2の動作について説明する。
図9に示すように、アームレストARが使用位置にあるとき、スイッチ210のアクチュエータ部212が押されていないので、切替機構2は、アームレストARの操作部11(
図2参照)への通電を許容し、操作部11は操作可能な状態となっている。このとき、アームレストARの突出部32は、支持ブラケット40に設けられたガイド穴42の上端部に位置している。
【0066】
アームレストARを使用位置から収納位置に回動させると、アームレストARの一部である突出部32は、ガイド穴42に沿って、ガイド穴42内を、ガイド穴42の上端部から下端部に向けて移動する。その途中で、突出部32は、切替機構2のレバー部材220に当接し、レバー部材220を非当接位置から
図10に示す当接位置に回動させる。これにより、押圧部223によってアクチュエータ部212が押されてスイッチ210が作動し、切替機構2は、操作部11への通電を遮断する。その結果、操作部11は操作不能な状態となる。
【0067】
一方、アームレストARを収納位置から使用位置に回動させると、突出部32は、ガイド穴42に沿って、ガイド穴42内を、ガイド穴42の下端部から上端部に向けて移動する。その途中で、突出部32とレバー部材220との当接が解除されるため、レバー部材220が図示しないバネの付勢力によって当接位置から
図9に示す非当接位置に回動する。これにより、アクチュエータ部212に対する押圧が解除され、切替機構2は、操作部11への通電を許容する。その結果、操作部11は操作可能な状態となる。
【0068】
次に、連動機構1の動作について説明する。
図11に示すように、シートバックS2が起立位置にあって、かつ、アームレストARが収納位置にあるとき、突出部32は、ガイド穴42の下端部に位置している。このとき、突出部32と、係合部材100の当接面122は、互いに当接している。また、このとき、係合部材100の係合面121の一部は、ガイド穴42内における突出部32の進路を塞ぐように、左右方向から見て、ガイド穴42と重なるように配置されている。
【0069】
図12に示すように、アームレストARを収納位置から使用位置に回動させ始めると、突出部32が、ガイド穴42内を下端部から上端部に向けて移動し始め、係合部材100が当接面122から離間する。そうすると、支えを失った係合部材100は、その上端部が回動軸(ボルト91)よりも後方に位置していることで、自重で図示時計回りに回動し、係合面121が、左右方向から見て、ガイド穴42内(突出部32の進路)から退避する。つまり、係合部材100は、シートバックS2が起立位置にある状態において、アームレストARを収納位置から使用位置に回動させると、当接面122と突出部32との当接が解除され、かつ、係合面121と突出部32との係合(係合の可能性)が解除されるようになっている。自重で回動した係合部材100は、ストッパ部材140がシートバックフレーム20に当接することでそれ以上の回動が規制される。その後、
図13に示すように、アームレストARをさらに使用位置に向けて回動させていくと、突出部32が、ガイド穴42内をさらに上端部に向けて移動する。そして、アームレストARが使用位置に配置されたところで、突出部32がガイド穴42の上端部に配置される。
【0070】
アームレストARを使用位置から収納位置に回動させていくと、
図13および
図12に示すように、突出部32は、ガイド穴42内を上端部から下端部に向けて移動していき、その途中で、係合部材100の当接面122に当接する。そこから、アームレストARをさらに収納位置に向けて回動させると、突出部32が当接面122を押すことで、係合部材100が図示反時計回りに回動する。そして、
図11に示すように、アームレストARが収納位置に到達すると、係合面121の一部が、左右方向から見て、ガイド穴42と重なる位置に配置される。このとき、係合部材100は、当接面122が突出部32によって支えられることで図示時計回りの回動が規制され、左右方向から見た外周面がシートバックフレーム20や支持ブラケット40などの周囲の部材から離れた状態で保持される。
【0071】
シートバックS2を
図11に示す起立位置から
図14に示す倒伏位置に回動させると、係合部材100は、その上端部が回動軸よりも前方に配置されることで、自重で図示反時計回り、つまり、突出部32と係合する方向に回動しようとするようになる。
【0072】
図15に示すように、シートバックS2を倒伏位置から起立位置に回動させ始めると、アームレストARが自重で収納位置から若干図示反時計回りに回動し、突出部32が、当接面122から離間する。そうすると、支えを失った係合部材100は、自重で図示反時計回りに回動し、係合面121が突出部32に係合する。その後、シートバックS2をさらに起立位置に向けて回動させていくと、係合面121が突出部32に係合して引っ掛かることで、係合部材100が突出部32を引き上げ、アームレストARがシートバックS2とともに倒れた姿勢から起きた姿勢に回動する。
【0073】
アームレストARが鉛直に起きた状態から、シートバックS2をさらに起立位置に向けて回動させると、アームレストARが自重で収納位置に回動しようとすることで、突出部32がガイド穴42内を下端部に向けて移動し、これによって、突出部32が係合面121から離間する。そうすると、このときには、係合部材100の上端部が回動軸よりも後方に位置しているので、係合部材100は、自重で突出部32との係合を解除する方向に回動する。その後、
図11に示すように、シートバックS2が起立位置に到達すると、アームレストARの突出部32が、使用位置から収納位置に回動させた場合と同様に、当接面122に当接して押すことで、係合部材100が図示反時計回りに回動し、外周面がシートバックフレーム20などから離れた状態で保持される。
【0074】
以上説明した本実施形態によれば、シートバックS2を倒伏位置から起立位置に回動させるときに係合部材100が突出部32に係合するので、アームレストARをシートバックS2とともに起きた姿勢に回動させることができる。そして、このシートバックS2とアームレストARの連動機構1は、軸部31を中心に回動可能に設けられたアームレストARの突出部32に、係合部材100が係合することで実現できるので、簡単かつコンパクトな構成とすることができる。
【0075】
また、係合部材100が突出部32を受け入れて突出部32に係合する開口部120を有するので、突出部と係合する部分を突出させて設ける構成と比較して、係合部材100(連動機構1)をコンパクトな構成とすることができる。
【0076】
また、アームレスト側係合部としてガイド穴42にガイドされる突出部32を利用したので、ガイド穴にガイドされる部分とは別にアームレスト側係合部を設ける必要がないため、連動機構1を簡単かつコンパクトな構成とすることができる。
【0077】
また、アームレストARが収納位置にあるときに突出部32と係合部材100が当接しているので、シートバックS2に回動可能に設けられた係合部材100を押さえておくことができる。これにより、係合部材100のがたつきや、がたつきによる音の発生を抑制することができる。
【0078】
また、係合面121と当接面122を別に設けたので、アームレストARが収納位置にあるとき(突出部32が当接面122に当接しているとき)には、突出部32と係合部材100(係合面121)との係合が解除された状態となる。これにより、連動機構1を有する構成でアームレストARを収納位置から使用位置に良好に動作させることができる。
【0079】
また、シートバックS2を起立位置から倒伏位置に回動させたときに係合部材100が突出部32と係合する方向に回動するので、係合部材100が突出部32に係合しやすくなる。これにより、シートバックS2を倒伏位置から起立位置に回動させるときに連動機構1を良好に機能させることができる。
【0080】
また、シートバックS2を倒伏位置から起立位置に回動させたときに係合部材100が突出部32との係合を解除する方向に回動するので、係合部材100が突出部32から外れやすくなる。これにより、連動機構1を有する構成でアームレストARを収納位置から使用位置に良好に動作させることができる。
【0081】
また、係合部材100が自重で回動するように設けられているので、係合部材を所定方向に回動させるためのバネなどを設ける必要がないため、連動機構1を簡単かつコンパクトな構成とすることができる。
【0082】
また、アームレストARを使用位置から収納位置に回動させたときに突出部32が当接面122に当接して押すことで係合部材100を回動させるので、係合部材100を周囲の部材から離した状態に保持することができる。これにより、係合部材100のがたつきや、がたつきによる音の発生をより抑制することができる。
【0083】
また、係合部材100が係合部材本体101と被覆部材102を有するので、それぞれをその機能上、最適な材料から形成することができる。本実施形態では、係合部材本体101が金属製なので係合部材100の強度を確保することができ、また、被覆部材102が樹脂製なので突出部32と係合部材100との摺接音を抑制したり、摩耗を抑制したりすることができる。
【0084】
また、被覆部材102がワッシャ93に挟まれる部分にワッシャ93に向けて突出する凸部130を有するので、係合部材100とワッシャ93との接触面積を小さくすることができる。これにより、係合部材100とワッシャ93との摺動抵抗を小さくできるため、係合部材100を良好に回動動作させることができる。特に本実施形態では、凸部130が略半球状に形成され、貫通穴110の周囲に断続的に設けられているので、例えば、凸部が環状に形成され、貫通穴の周囲に連続的に設けられるような構成と比較して、係合部材100とワッシャ93との接触面積(摺動抵抗)をより小さくできるため、係合部材100をより良好に回動動作させることができる。
【0085】
また、以上説明した本実施形態によれば、切替機構2が、アームレストARの一部である突出部32が当接することで作動するので、切替機構2を簡単かつコンパクトな構成とすることができる。これにより、車両用シートSの部品点数を削減したり、大型化を抑制したりすることができる。また、切替機構2が、突出部32が当接することで作動するので、切替機構2の誤作動を抑制することができる。
【0086】
また、切替機構2が支持ブラケット40の輪郭の内側に配置されているので、切替機構2をコンパクトに配置でき、車両用シートSの大型化を抑制することができる。
【0087】
また、切替機構2がシートバックS2に設けられているので、切替機構をシートバックに対し回動可能なアームレストに設ける場合よりも、切替機構2を安定した状態で配置することができる。これにより、切替機構2の誤作動を抑制することができる。また、切替機構をアームレストに設ける場合よりも、切替機構2に接続されるハーネス240にかかる負荷を低減することができる。
【0088】
また、第1ブラケット50が支持ブラケット40の輪郭の内側に配置されているので、第1ブラケット50をコンパクトに配置でき、車両用シートSの大型化を抑制することができる。
【0089】
また、第2ブラケット230が位置決め部234を有するので、切替機構2の位置を安定させることができ、切替機構2の誤作動を抑制することができる。また、第1ブラケット50に係合する部分が第2ブラケット230に設けられていることで、第2ブラケット230を第1ブラケット50に仮止めすることが可能となる。これにより、切替機構2の組み付け作業性を向上させることができる。
【0090】
また、第2ブラケット230が一部材からなるので、車両用シートSの部品点数を削減することができる。
【0091】
また、位置決め部234が第2ブラケット230を構成する板金の一部を折り曲げることで形成されているので、位置決め部234が第2ブラケット230に一体に形成されることになり、車両用シートSの部品点数を削減することができる。
【0092】
また、位置決め部234が固定部231の近くに設けられているので、ボルト94によって第2ブラケット230の固定部231を第1ブラケット50に固定することで、ボルト94の締め付け力により位置決め部234を第1ブラケット50に強固に係合させることができる。これにより、切替機構2の位置を安定させることができるので、切替機構2の誤作動を抑制することができる。また、位置決め部234が第1ブラケット50に強固に係合することで、第2ブラケット230(切替機構2)の取付剛性を向上させることができる。
【0093】
また、位置決め部234が複数設けられているので、アームレストARの当接により切替機構2にボルト94を中心に回動させようとする力がかかった場合でも、切替機構2の位置を安定させることができ、切替機構2の誤作動を抑制することができる。
【0094】
また、第1ブラケット50がハーネス固定部52を有するので、ハーネスを固定する部分を第1ブラケットとは別に設ける構成と比較して、車両用シートSの部品点数を削減することができる。
【0095】
また、突出部32が切替機構2のレバー部材220に当接するので、アームレストARのガイド穴42にガイドされる部分を利用して切替機構2を作動させることができ、車両用シートSの部品点数を削減することができる。
【0096】
また、切替機構2がアームレストARの軸部31よりも下に配置されているので、切替機構2を乗員の肘から遠いところに配置することができる。これにより、乗員が切替機構2に触れてしまうことを抑制できるので、切替機構2の誤作動や当たり感を感じることなどを抑制することができる。
【0097】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、下記のように発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0098】
前記実施形態では、係合部材100は、被覆部材102が係合部材本体101の略全体を覆うように設けられていたが、これに限定されず、被覆部材102は、係合部材本体101の一部、例えば、アームレスト側係合部と係合する部分などを覆うように設けられていてもよい。なお、被覆部材が、樹脂製で、少なくともアームレスト側係合部と係合する部分を覆うように設けられていることで、アームレスト側係合部と係合部材との摺接音を抑制したり、摩耗を抑制したりすることができる。
【0099】
前記実施形態では、係合部材100が自重で回動するように設けられていたが、これに限定されず、例えば、係合部材は、バネなどの付勢力によって回動するように設けられていてもよい。また、前記実施形態では、係合部材100がシートバックS2に回動可能に設けられていたが、これに限定されず、例えば、係合部材は、シートバックに平行移動可能に設けられていてもよい。
【0100】
前記実施形態では、切替機構2を構成する第2ブラケット230に、位置決め部234が2つ設けられていたが、これに限定されず、例えば、位置決め部は、3つ以上設けられていてもよい。また、位置決め部は、1つだけ設けられる構成であってもよい。
【0101】
前記実施形態では、切替機構2がシートバックS2に設けられ、アームレストARを使用位置から収納位置に回動させたときに突出部32(アームレストの一部)が当接することで作動するように構成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、切替機構は、アームレストに設けられ、アームレストを使用位置から収納位置に回動させたときにシートバックの一部が当接することで作動するように構成されていてもよい。
【0102】
前記実施形態では、車両用シートSが連動機構1を備えていたが、これに限定されず、例えば、車両用シートは、連動機構を備えない構成であってもよい。また、前記実施形態では、シートバックS2がシートクッションS1に対し起立位置と倒伏位置との間で回動可能に設けられていたが、これに限定されず、例えば、シートバックは、シートクッションに対し、回動しない構成であってもよい。
【0103】
前記実施形態では、乗物用シートとして、自動車で使用される車両用シートSを例示したが、これに限定されず、乗物用シートは、自動車以外の乗物、例えば、鉄道車両や船舶、航空機などで使用されるシートであってもよい。