(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555003
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】フェンダー構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/16 20060101AFI20190729BHJP
B62D 25/22 20060101ALI20190729BHJP
B62D 33/06 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
B62D25/16 C
B62D25/22
B62D33/06 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-163196(P2015-163196)
(22)【出願日】2015年8月20日
(65)【公開番号】特開2017-39416(P2017-39416A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】松木 茂
(72)【発明者】
【氏名】宇野 雄一郎
【審査官】
梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−034779(JP,U)
【文献】
実開昭55−099909(JP,U)
【文献】
実開平03−121981(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/16
B62D 25/22
B62D 33/06
B62D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブボディの側面に、移動用ステップが取り付けられるフェンダーを取り付けるフェンダー構造であって、
前記移動用ステップが取り付けられるフェンダーの周縁に位置するように前記キャブボディ側に固定されたフェンダー支持板と、前記フェンダー支持板に設けられると共に前記移動用ステップの周縁位置のフェンダー裏面と当接してフェンダーの凹みを防止するバッファラバーとを備えたことを特徴とするフェンダー構造。
【請求項2】
前記フェンダーには、前記移動用ステップを車幅方向外側から埋め込むための開口部が形成され、前記移動用ステップの周縁には、前記開口部を車幅方向外側から覆うと共にフェンダー表面と当接するフランジ部が形成され、前記バッファラバーは、前記フェンダー表面と前記フランジ部とが当接する位置のフェンダー裏面と当接する請求項1に記載のフェンダー構造。
【請求項3】
前記キャブボディには、前記移動用ステップを載置して支持する支持ブラケットが設けられ、前記フェンダー支持板は、前記支持ブラケットに下方に延びるように設けられた請求項1又は2に記載のフェンダー構造。
【請求項4】
前記フェンダー裏面には、前記バッファラバーと当接するリブが形成された請求項2又は3に記載のフェンダー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブボディの側面に、移動用ステップ及びフェンダーを取り付けるフェンダー構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大型車のキャブは、軽量化等のためにフェンダーが樹脂成形品とされているものがある。キャブの軽量化は、キャブをチルト可能に支持する支持機構の軽量化にもつながり、最大積載量が増加できる等の種々のメリットが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−229582号公報
【特許文献2】特開2001−301662号公報
【特許文献3】特開2014−091474号公報
【特許文献4】特開2005−329874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本出願人は、フェンダーとキャブ後方へ移動するための移動用ステップとを別体で樹脂形成し、必要に応じてフェンダーに移動用ステップを後付けする構造を発明した(未公開)。かかる構造によれば、移動用ステップがあるタイプのキャブと移動用ステップがないタイプのキャブとで共通のフェンダーを用いることができ、コストダウンを図ることができる。
【0005】
しかしながら、フェンダーをキャブボディ側のブラケットで強化するにあたり、移動用ステップの周囲のフェンダーまでボルトで締結すると、剛性のないフェンダーが曲がってしまい、フェンダーと移動用ステップとの間に隙間ができるという課題が発生した。また、このような隙間の発生を防ぐために移動用ステップの周囲をボルト締結がない自由な状態にすると、フェンダーが洗車等のために軽く押されるだけで凹み、フェンダーと移動用ステップとの間に隙間ができるという別の問題が発生した。
【0006】
そこで、本発明の目的は、フェンダーの曲がりや凹みを防ぐことができ、移動用ステップとフェンダーとの間に隙間ができるのを防ぐことができるフェンダー構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明は、キャブボディの側面に、移動用ステップが取り付けられるフェンダーを取り付けるフェンダー構造であって、前記移動用ステップが取り付けられるステップの周縁に位置するように前記キャブボディ側に固定されたフェンダー支持板と、前記フェンダー支持板に設けられると共に前記移動用ステップの周縁位置のフェンダー裏面と当接してフェンダーの凹みを防止するバッファラバーとを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフェンダー構造によればフェンダーの曲がりや凹みを防ぐことができ、移動用ステップとフェンダーとの間に隙間ができるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る移動用ステップとフェンダーの要部断面図である。
【
図2】キャブボディ、フェンダー及び移動用ステップの取付構造を説明する背面説明図である。
【
図4】キャブボディ、フェンダー及び移動用ステップの取付構造を説明する斜視説明図である。
【
図5】フェンダー支持板とバッファラバーの斜視分解説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。なお、後述する実施の形態における前後左右は、車両の走行方向を基準とする。例えば、前方は車両走行方向前方とし、後方は車両走行方向後方とする。
【0011】
図6に示すキャブ1は、大型車のものであり、キャブボディ11(
図4参照)の側面に配置される金属製の側板2と、側板2の下縁と隣接して配置されると共にキャブボディ11の側面に配置されるフェンダー3と、フェンダー3の下縁と隣接して配置されると共に前輪タイヤ4を覆うように配置されるマッドフェンダー5とを備える。
【0012】
フェンダー3は、ABS樹脂等の樹脂からなり、前方に配置されるフロントフェンダー6と、フロントフェンダー6の後端に隣接して配置されるリアフェンダー7とからなる。
【0013】
図3に示すように、リアフェンダー7は、キャブ1の外装面を形成するフェンダー面部9と、フェンダー面部9の裏面に設けられたリブ10と、フェンダー面部9にリブ10上に重ねて設けられキャブボディ11の取付ブラケット12等にリアフェンダー7をボルト締めするための第一締結部13と、フェンダー面部9に形成され移動用ステップ8を埋め込んで設けるための開口部19と、開口部19の周囲に設けられフェンダー面部9に移動用ステップ8を締結するための第二締結部15とを備える。
【0014】
リブ10は、格子状に形成されると共に開口部19より下方に形成されている。また特に、リブ10は、フェンダー面部9の表面と後述する移動用ステップ8のフランジ部23とが当接する位置(高さ)のフェンダー面部9に形成され車長方向に延びるステップ裏リブ部10aを有する。第一締結部13は、裏面から車幅方向内側に突出して形成されており、ナット(図示せず)が内蔵されている。
【0015】
第二締結部15は、後述する移動用ステップ8側から車幅方向内側に延びる取付ボルト16を上下に移動可能に挿通させるようになっている。
【0016】
また、開口部19は、後述する移動用ステップ8の位置決めをするためのノッチ21を有する。ノッチ21は、開口部19の下側に下方に直線状に延びて形成される。
【0017】
移動用ステップ8は、図示しない座席空間から架装まで地上に降りることなく移動できるようにするためのものであり、上縁部がリアフェンダー7の第2締結部15に下方に微少移動可能に取り付けられると共に、下部がキャブボディ11に設けるブラケット30の外延側32に設けられる。
【0018】
図3及び
図4に示すように、移動用ステップ8は、リアフェンダー7の開口部19に車幅方向外側から内側に埋め込まれるステップ本体22と、ステップ本体22の外周に形成されると共に開口部19周縁のフェンダー面部9と密接するように形成されたフランジ部23とを有する。ステップ本体22は、車幅方向内側に窪む凹状に形成されており、略水平に形成されると共に前後に長く形成された踏み板部24を有する。フランジ部23は、開口部19を車幅方向外側から覆うようにステップ本体22から外周方向に延びると共に車幅方向内側に湾曲して形成されており、外周端がフェンダー面部9の外面と密着する形状に形成されている。また、フランジ部23の上部には、リアフェンダー7側に移動用ステップ8を取り付けるための取付ボルト16が車長方向に間隔を隔てて複数設けられている。取付ボルト16は、それぞれネジ部が車幅方向内側に延びると共に露出されるようにフランジ部23に固定されている。またさらに、フランジ部23の下部には、リアフェンダー7のノッチ21と嵌合する嵌合板27が上下に延びると共に車幅方向内側に突出して形成されている。嵌合板27は、下端の位置がノッチ21の下端より上方となるように形成されており、移動用ステップ8がリアフェンダー7に対して下方に微少移動するのを許容するようになっている。
【0019】
取付ボルト16には、第二締結部15が挿通されると共に、金属板からなるリテーナ28が挿通され、ナット29が螺合される。
【0020】
また、キャブボディ11には、リアフェンダー7を取り付けるための取付ブラケット12が設けられると共に、移動用ステップ8の踏み板部24を載置させて支持するための支持ブラケット30が設けられている。取付ブラケット12は、上下に延びて形成されており、キャブボディ11の後側部から下方に一対並行に延びて設けられる。支持ブラケット30は、車長方向に長く形成されると共に、一対の取付ブラケット12に跨がって配置される。支持ブラケット30は、キャブボディ11の後側部から下方に延びる下延部31と、下延部31の下端から車幅方向外側に延びる外延部32とを備える。外延部32は、移動用ステップ8の踏み板部24の底面に当接することで踏み板部24を下方から支持するようになっている。
【0021】
また、一対の取付ブラケット12間に位置する支持ブラケット30には、開口部19周縁のリアフェンダー7の凹みを防止するための裏当て装置14が複数設けられている。
【0022】
図1及び
図2に示すように、裏当て装置14は、移動用ステップ8が取り付けられるリアフェンダー7の周縁、すなわち、開口部19の周縁に位置するように支持ブラケット30に固定されたフェンダー支持板33と、フェンダー支持板33に設けられると共に移動用ステップ8の周縁位置のフェンダー裏面と当接してリアフェンダー7の凹みを防止するバッファラバー34とを備える。
【0023】
図1及び
図5に示すように、フェンダー支持板33は、金属板を略L字状に屈曲して形成される。具体的には、フェンダー支持板33は、外延部32の底面に重ねて配置され外延部32に締結される締結板部35と、締結板部35から屈曲されて下方に延びバッファラバー34を支持するラバー支持板部36とを備える。ラバー支持板部36は、リアフェンダー7との間にバッファラバー34を安定して介在させられるようにフェンダー面部9の裏面に対して平行に配置される。
【0024】
バッファラバー34は、ゴム等の弾性を有する樹脂からなる。バッファラバー34は、厚板状に形成されリアフェンダー7と干渉する干渉部37と、干渉部37から車幅方向内側に延びて形成されラバー支持板部36に形成された取付孔(図示せず)に嵌入して取り付けられる嵌入取付部38とを備える。
【0025】
バッファラバー34は、特に開口部19に沿って車長方向に延びるリアフェンダー裏リブ部10aと当接するように配置されており、リアフェンダー7を局所的に変形させないようになっている。
【0027】
図3及び
図4に示すように、キャブ1の側部を形成する場合、まず、キャブボディ11に取付ブラケット12及び支持ブラケット30を取り付けると共に、支持ブラケット30の外延部32にフェンダー支持板33を取り付け、フェンダー支持板33にバッファラバー34を取り付ける。
【0028】
この後、予めフロントフェンダー6にリアフェンダー7を取り付けると共に、リアフェンダー7に移動用ステップ8を取り付けて形成したフェンダー3を、キャブボディ11側に取り付ける。
【0029】
このとき、リアフェンダー7がキャブボディ11の取付位置に位置合わせされることで、リアフェンダー7の裏リブ部10aがバッファラバー34の干渉部37と当接され、リアフェンダー7が取付ブラケット12等に締結されることで干渉部37がリアフェンダー7とフェンダー支持板33との間に挟まれる。これにより、バッファラバー34がリアフェンダー7とフェンダー支持板33との間で若干押し潰され、開口部19の下縁に沿う位置のリアフェンダー7が車幅方向外側に押されて移動用ステップ8のフランジ部23に圧接される。
【0030】
このように、移動用ステップ8が取り付けられるリアフェンダー7の周縁に位置するようにキャブボディ11側に固定されたフェンダー支持板33と、フェンダー支持板33に設けられると共に移動用ステップ8の周縁位置のフェンダー裏面と当接してリアフェンダー7の凹みを防止するバッファラバー34とを備えるものとしたため、人が移動用ステップ8上に載るなどして移動用ステップ8が下方に沈み込んだ場合であってもリアフェンダー7が曲がるのを防ぐことができる。また、リアフェンダー7が洗車等のために車幅方向内側に押された場合であってもその力をバッファラバー34及びフェンダー支持板33で受けることができ、リアフェンダー7と移動用ステップ8との間に隙間ができるのを防ぐことができる。
【0031】
また、リアフェンダー7には、移動用ステップ8を車幅方向外側から埋め込むための開口部19が形成され、移動用ステップ8の周縁には、開口部19を車幅方向外側から覆うと共にリアフェンダー表面と当接するフランジ部23が形成され、バッファラバー34は、リアフェンダー表面とフランジ部23とが当接する位置のリアフェンダー裏面と当接するものとしたため、リアフェンダー表面とフランジ部23との間に隙間ができるのを簡単な構造で確実に防ぐことができる。
【0032】
キャブボディ11には、移動用ステップ8を載置して支持する支持ブラケット30が設けられ、フェンダー支持板33は、支持ブラケット30に下方に延びるように設けられるものとしたため、開口部19の下縁に沿う位置にバッファラバー34を簡単な構造で配置することができると共に、リアフェンダー7の凹みを確実に防ぐことができる。
【0033】
リアフェンダー裏面には、バッファラバー34と当接するステップ裏リブ部10aが形成されるものとしたため、バッファラバー34からの弾性力でリアフェンダー7が変形するのを確実に防ぐことができる。
【0034】
なお、裏当て装置14は開口部19の下側の周縁にのみ配置されるものとしたがこれに限るものではない、開口部19の上側の周縁に配置されてもよく、開口部19の車長方向前後の周縁に配置されてもよい。
【0035】
また、フェンダー3は、前後別々に樹脂成形するものとしたが、これに限るものではない。リアフェンダー7は、フロントフェンダー6と一体に形成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
7 リアフェンダー
8 移動用ステップ
11 キャブボディ
33 フェンダー支持板
34 バッファラバー