(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出回路は、前記共振周波数と、前記基準値とは異なる他の基準値と、の比較に基づいて、前記キャップが前記筐体に適切に装着されたかどうかをさらに判定する、請求項1または2に記載の電子機器。
前記キャップが前記筐体に装着されたときに前記キャップと前記筐体との間に位置するように前記キャップに設置され、前記キャップが前記筐体に装着された状態で押下されたときに前記キャップに復元力を加えるように形成された弾性部材をさらに備える請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子機器。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本出願に係る電子機器の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。以下に説明する実施例では、本出願に係る電子機器として、携帯電話端末又はウェアラブル端末等の小型かつ携帯式の電子機器を例示している。ただし、本出願に係る電子機器は、タブレット端末又はモバイルPC等の中型ないし大型の電子機器であってもよいし、デスクトップPC又はサーバ等のような非携帯式の電子機器であってもよい。
【0012】
先ず、本出願の第1実施例の電子機器1について説明する。
図2は、第1実施例の電子機器1の斜視図である。
図2のように、電子機器1は、薄い直方体の全体形状を有する筐体10を有している。筐体10は、薄型の表示パネルDPを含む前壁部Fと、前壁部Fと平行に配置された後壁部Rと、前壁部F及び後壁部Rと交差しかつ筐体10の長手方向に沿って延びる一対の側壁部L1,L2と、を含んでいる。また、電子機器1は、筐体10の側壁部L1に取り外し可能に装着されたコネクタキャップ2を有している。コネクタキャップ2は、本出願に係る電子機器1のキャップの一例である。
【0013】
図3Aは、本実施例の電子機器1におけるコネクタキャップ2の近傍を示す斜視図である。
図3Aは、コネクタキャップ2が筐体10から取り外された状態の電子機器1を示している。
図3Aのように、筐体10の側壁部L1には、電子機器1と外部機器との間の電気的接続のための差し込み穴Iが設けられている。差し込み穴Iの内側には、外部機器との接続に用いられるケーブル等の接続器具の端子と結合可能なコネクタ(不図示)が設置されている。上記の外部機器には、筐体に内蔵された二次電池を充電するための充電器、及び筐体に内蔵されたメモリ内のデータを転送可能な外部ストレージ等が含まれる。上記のコネクタに加えて、或いは上記のコネクタの代わりに、メモリカード又はSIMカード(Subscriber Identity Module Card)のような小型(特に薄型)のデバイスが直接接続されるスロット状の接続部が、差し込み穴Iの内側に設置されていてもよい。
【0014】
本実施例の電子機器1において、コネクタキャップ2は、筐体10の側壁部L1に装着されることによって筐体10の差し込み穴Iを塞ぐように形成されている。
図3Aのように、コネクタキャップ2は、棒状の連結部材CM及び連結部材CMの運動を案内する案内部材GMを介して、筐体10の側壁部L1に移動可能に取り付けられている。連結部材CMの一方の端部は、筐体10に対向するコネクタキャップ2の面に固着されている。案内部材GMは、連結部材CMが挿通される孔THを有しており、筐体10の差し込み穴Iの内側に固定されている。
図3Bは、
図3Aの電子機器1を別の角度から見た斜視図である。
図3A及び
図3Bの例では、コネクタキャップ2及び連結部材CMが矢印A30の方向に押されると、連結部材CMが案内部材GMの孔THを通って筐体10の内側に格納され、コネクタキャップ2が筐体10の側壁部L1に装着される(
図2も参照)。
【0015】
図3A及び
図3Bのように、コネクタキャップ2は、平板状の蓋部21と、筐体10に対向する蓋部21の面に形成された突起部22と、突起部22の外周面に固着された環状の弾性シール部材23と、を含んでいる。コネクタキャップ2の蓋部21は、コネクタキャップ2が筐体10に装着されたときに筐体10の差し込み穴Iを覆うように形成されている。特に、筐体10に対向する蓋部21の面は、コネクタキャップ2が筐体10に装着されたときに筐体10側の受け面P1に対向する対向面210を含んでいる。
図3Bのように、蓋部21の対向面210は、突起部22の外周を取り囲むように環状に形成されている。
【0016】
コネクタキャップ2の突起部22は、コネクタキャップ2が筐体10に装着されたときに差し込み穴Iの内側に嵌入するように形成されている。蓋部21及び突起部22は、例えば、種々の樹脂材料の一体成型によって形成されうる。弾性シール部材23は、突起部22の外周面に形成された環状の溝に係止されており、突起部22が差し込み穴Iの内側に嵌入したときに突起部22の外周面と差し込み穴Iの内周面との間を密閉するシール部材の役割を果たしている。さらに、弾性シール部材23は、コネクタキャップ2が筐体10に装着された状態で押下されたときにコネクタキャップ2に復元力を付与する弾性部材の役割を果たしている。この復元力については
図5A〜
図5C等を参照して後述する。弾性シール部材23は、例えば、シリコンゴム又はニトリルゴム等のゴム材料から形成されうる。
【0017】
図3A及び
図3Bのように、筐体10の受け面P1は、コネクタキャップ2の対向面210と対応する形状を有しており、側壁部L1の外面よりも差し込み穴Iの深さ方向に落ち込んでいる。
図3Aでは、差し込み穴Iの深さ方向が矢印A30で表されている(他の図面においても同様である)。以下では、差し込み穴Iの深さ方向を単に「深さ方向」と称することがある。側壁部L1の外面から受け面P1までの深さ方向の距離は、コネクタキャップ2の蓋部21の厚さよりも大きくされる。これにより、コネクタキャップ2が筐体10に装着されたときに蓋部21が側壁部L1に対して外向きに突出するのを防止することができる。
【0018】
図3Aのように、電子機器1は、筐体10の受け面P1に所定のパターンで設置された第1の導電部31を有している。第1の導電部31は、例えば、LDS(Laser Direct Structuring)等の直接パターニング(Direct Patterning)によって形成された導電膜の形態を有しうる。このような導電膜は、二色成形によって製造された樹脂製品に対するメッキ加工によって形成されてもよい。また、
図3Bのように、電子機器1は、コネクタキャップ2の対向面210に所定のパターンで設置された第2の導電部32を有している。第2の導電部32は、第1の導電部31と同様に、直接パターニング、又は二色成形とメッキ加工の組合せによって形成された導電膜の形態を有しうる。
【0019】
図4Aは、
図3A中の筐体10の受け面P1を示す平面図である。
図4Aのように、筐体10側の第1の導電部31は、筐体10の長手方向における差し込み穴Iの両側に配置された第1及び第2の電極部E1,E2を含んでいる。第1及び第2の電極部E1,E2は、同一の寸法及び形状を有し、かつ受け面P1と平行な同一平面上に位置している。第1及び第2の電極部E1,E2は、互いに電気的に分離されている。
【0020】
図4Bは、
図3B中のコネクタキャップ2の対向面210を示す平面図である。
図4Bのように、コネクタキャップ2側の第2の導電部32は、コネクタキャップ2が筐体10に装着されたときに第1及び第2の電極部E1,E2にそれぞれ対向するように配置された第3及び第4の電極部E3,E4を含んでいる。第3及び第4の電極部E3,E4は、同一の寸法及び形状を有し、かつコネクタキャップ2の対向面210と平行な同一平面上に位置している。第3及び第4の電極部E3,E4は、コネクタキャップ2の長手方向に沿って延びる接続部ECによって互いに電気的に接続されている。第1〜第4の電極部E1〜E4は、筐体10とコネクタキャップ2との間の位置関係に応じて静電容量が変化する可変コンデンサを形成している。この可変コンデンサについては
図5A〜
図5C、及び
図7等を参照して詳細に説明する。
【0021】
図5Aは、本実施例の電子機器1の筐体10及びコネクタキャップ2を示す断面図である。特に、
図5Aは、
図4A及び
図4B中のV−V線に沿った筐体10及びコネクタキャップ2の断面を示している。
図5Aでは、コネクタキャップ2の突起部22の構造が簡略化されるとともに、上記の連結部材CM及び案内部材GMが省略されている。
図5Aのように、第1及び第2の電極部E1,E2は、筐体10の受け面P1に形成された溝GR1,GR1の内部に配置されており、第3及び第4の電極部E3,E4は、コネクタキャップ2の対向面210に形成された溝GR2,GR2の内部に配置されている。
【0022】
図5Aのように、筐体10は、コネクタキャップ2の装着時に突起部22の外周面と対向する差し込み穴Iの内周面P2と、コネクタキャップ2の装着時に突起部22の先端部と対向する差し込み穴Iの底面P3と、を含んでいる。
図5Aの状態では、弾性シール部材23が差し込み穴Iの内周面P2に密着しているので、差し込み穴Iの密閉性が十分に確保されている。つまり、
図5Aは、コネクタキャップ2が筐体10に適切に装着された状態の一例を示している。
図5Aの状態では、第1及び第3の電極部E1,E3と第2及び第4の電極部E2,E4との間には距離dの隙間が存在し、コネクタキャップ2の突起部22の先端と差し込み穴Iの底面P3との間にも隙間CRが存在する。
【0023】
本実施例の電子機器1において、コネクタキャップ2は、筐体10に装着された状態で押下されると筐体10に対して深さ方向に移動するように形成されている。特に、コネクタキャップ2は、上記の隙間CRが無くなるまで深さ方向に移動可能である。つまり、
図5A中のコネクタキャップ2が使用者の指先等によって押下されると、筐体10側の第1の電極部E1とコネクタキャップ2側の第3の電極部E3との間の深さ方向の距離dが減少することになる。このように、コネクタキャップ2は、電子機器1が外部機器に接続されていないときには、差し込み穴Iへの異物の侵入を防止する被覆部材の役割に加えて、使用者から所定の指示を受け付ける押下スイッチの役割を果たしうる。以下では、第1の電極部E1と第3の電極部E3との間の深さ方向の距離dを電極間距離dと称している。第2の電極部E2と第4の電極部E4との間の深さ方向の距離は、上記の電極間距離dと等しい。
【0024】
コネクタキャップ2によって実現される押下スイッチは、例えば、電子機器1の電源のオン/オフを切り替えるための電源スイッチである。或いは、上記の押下スイッチは、筐体10に内蔵されたデジタルカメラ等の撮像装置、又は電子機器1に実装された各種アプリケーションを作動させるための操作スイッチであってもよい。上記の押下スイッチは常時作動している必要はなく、例えば、所定のアプリケーションの起動時に作動を開始し、同アプリケーションの終了時に作動を終了するように制御されてもよい。なお、コネクタキャップ2が筐体10から取り外された場合には(
図3A及び
図3Bを参照)、電子機器1は、例えば、差し込み穴Iに挿入されたケーブルを介して外部機器と通信することによって使用者の指示を受け付ける。
【0025】
ところで、平行平板コンデンサの静電容量Cは以下の数式(1)から求められる。式中のSは各電極の面積であり、dは2つの電極間の距離であり、εは2つの電極間に配置された誘電体の誘電率である。
【数1】
【0026】
上記の数式(1)から分かるように、第1〜第4の電極部E1〜E4は、電極間距離dが減少するにつれて静電容量が増加する可変コンデンサを形成している。
図5Aの例では、第1及び第3の電極部E1,E3から形成される図中の左側のコンデンサと、第2及び第4の電極板E2,E4から形成される右側のコンデンサと、を直列に接続した合成コンデンサを上記の可変コンデンサとして扱っている。
図5A中の電極間距離dの値はd=d0であり、可変コンデンサの静電容量Cの値はC=C0である。
図5Aの状態では、上記の弾性シール部材23が差し込み穴Iの内周面P2だけでなく底面P3にも接触している。ただし、
図5A中のコネクタキャップ2には深さ方向の外力が作用していない。
図5A中の可変コンデンサの電極間距離d及び静電容量Cの値を以下では初期値d0,C0と称することがある。
【0027】
本実施例の電子機器1において、弾性シール部材23は、コネクタキャップ2が深さ方向の外力を受けて
図5Aの位置から移動したときに、差し込み穴Iの底面P3から反力を受けて圧縮変形するように形成されている。
図5Bは、
図5Aと同様の断面図であり、
図5Bとは異なるコネクタキャップ2の装着状態を示している。具体的に言うと、
図5Bは、
図5A中のコネクタキャップ2が深さ方向の外力を受けて僅かな距離だけ移動した状態を示している。そのため、
図5B中の電極間距離d1は、
図5A中の初期値d0よりも小さく(d1<d0)、
図5B中の可変コンデンサの静電容量C1は、
図5A中の初期値C0よりも大きい(C1>C0)。ただし、
図5Bの状態では、コネクタキャップ2の移動距離が不十分であるので、コネクタキャップ2は未だ押下されておらず、押下スイッチとしてのコネクタキャップ2に対する使用者の指示は未だ受け付けられていない。
【0028】
図5B中の電極間距離dの値(d1)は、コネクタキャップ2が押下されていない状態を表す、電極間距離dの境界値の一例である。つまり、本実施例の電子機器1では、電極間距離dが
図5B中の値(d1)を下回ったときに、コネクタキャップ2が押下された(すなわち、押下スイッチとしてのコネクタキャップ2が使用者の指示を受け付けた)と見做している。
図5Bの状態では、弾性シール部材23が差し込み穴Iの底面P3から反力を受けて圧縮変形している。そのため、コネクタキャップ2に対する外力が解除されると、コネクタキャップ2は弾性シール部材23の復元力によって
図5Aの状態に戻ることになる。本実施例の電子機器1では、上記の可変コンデンサを含む共振回路の共振周波数を検出するとともに、共振周波数の検出値に基づいてコネクタキャップ2の押下状態を判定している。このような判定処理を以下では状態判定処理と称している。状態判定処理の詳細については
図9等を参照して後述する。
【0029】
図5Cは、
図5A及び
図5Bと同様の断面図であり、
図5A及び
図5Bとは異なるコネクタキャップ2の装着状態を示している。具体的に言うと、
図5Cは、
図5A中のコネクタキャップ2が深さ方向の反対向きに僅かな距離だけ移動した状態を示している。ただし、
図5Cの状態でもコネクタキャップ2の弾性シール部材23が差し込み穴Iの内周面P2に密着しているので、差し込み穴Iの密閉性が十分に確保されている。
図5C中の電極間距離d2は
図5A中の初期値d0よりも大きいので(d2>d0)、
図5C中の可変コンデンサの静電容量C2は
図5A中の初期値C0よりも小さい(C2<C0)。
【0030】
図5C中の電極間距離dの値(d2)は、コネクタキャップ2が適切に装着された状態を表す、電極間距離dの境界値の一例である。つまり、
図5C中のコネクタキャップ2が深さ方向の反対向きにさらに移動すると、弾性シール部材23が差し込み穴Iの内周面P2に密着しなくなるので、差し込み穴Iの密閉性が十分に確保されなくなる。このような状態を以下ではコネクタキャップ2が誤装着された状態と称することがある。上記の状態判定処理では、共振周波数の検出値に基づいてコネクタキャップ2の装着状態をさらに判定している。
【0031】
続いて、
図6は、本実施例の電子機器1のシステム構成を示すブロック図である。
図6のように、電子機器1は、プロセッサ11、無線通信部12、オーディオ入出力部13、記憶部14、タッチセンサ部15、表示部16、振動発生部17、共振周波数検出回路18、及びコネクタ部CNを含んでいる。上記の構成要素について以下に詳細に説明する。
【0032】
プロセッサ11は、記憶部14内のプログラムを実行することによって各部の動作を制御するMPU(Micro Processing Unit)である。プロセッサ11が実行する制御処理には、上記の装着判定処理が含まれる。無線通信部12は、無線通信アンテナを用いて外部機器と無線通信を行う通信インタフェースである。特に、無線通信部12は、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、CDMA2000、又はLTE(Long Term Evolution)等の通信方式に従って基地局と無線通信を行うことができる。無線通信部12は、Wi−Fi(Wireless Fidelity)のような無線LAN(Local Area Network)の規格に従ってアクセスポイントと通信することもできる。
【0033】
オーディオ入出力部13は、音声入力装置の役割を果たすマイクロフォン(不図示)と、音声出力装置の役割を果たすスピーカ(不図示)と、を含んでいる。オーディオ入出力部13は、マイクロフォンから入力された音声信号を電気信号に変換してプロセッサ11に出力する機能、及びプロセッサ11から入力された電気信号を音声信号に変換してスピーカから出力する機能を有している。記憶部14は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を含むデータ記憶領域である。例えば、記憶部14には、プロセッサによってされる種々の制御プログラムが格納されている。
【0034】
タッチセンサ部15は、使用者の操作を受け付ける入力装置であり、表示パネルDPに内蔵された静電容量方式又は抵抗膜方式のタッチパネルを含んでいる(
図2及び
図3B等を参照)。タッチパネルは、マトリクス方式、表面弾性波方式、赤外線方式、又は電磁誘導方式等の他の方式を採用していてもよい。表示部16は、プロセッサ11から入力された静止画又は動画の映像信号を表示パネルDPに表示する機能を有している。振動発生部17は、振動モータのようなバイブレータを含んでおり、プロセッサ11から入力された制御信号に従って、使用者が感知可能な振動を筐体10内で発生する機能を有している。
【0035】
コネクタ部CNは、上記の第1〜第4の電極部E1〜E4を含む回路部品である。
図5A〜
図5Cを参照して説明した通り、第1〜第4の電極部E1〜E4は、筐体10及びコネクタキャップ2の深さ方向の位置関係に応じて静電容量Cが変化する可変コンデンサを形成している。
【0036】
共振周波数検出回路18は、上記の可変コンデンサを含む共振回路と、共振回路の交流電源の周波数を任意に変化させる周波数変換器と、を含む電子回路である。共振周波数検出回路18は、本出願に係る電子機器の検出回路の一例である。
図7は、
図6中の共振周波数検出回路18における共振回路181の回路図である。
図7中の可変コンデンサ4の両側に位置するa点及びb点は、
図3A中の筐体10内のa点及びb点にそれぞれ対応している。
図7のように、共振回路181は、RLC直列共振回路であり、同回路の電流信号を増幅して共振周波数の検出信号Gを出力する出力アンプAMPをさらに含んでいる。
【0037】
図8は、
図7の共振回路181の交流電源Eの周波数fと出力アンプAMPから出力された検出信号Gとの間の対応関係を示すグラフである。共振周波数検出回路18は、
図8のグラフに示される検出信号Gの変化に基づいて共振回路181の共振周波数を検出している。具体的に言うと、共振周波数検出回路18は、交流電源Eの周波数fを所定の範囲内で変化させる間に得られた検出信号Gの極大値を、共振回路181の共振周波数frとして検出している。一般にRLC直列共振回路の共振周波数は以下の数式(2)から求められる。式中のCはコンデンサの静電容量であり、式中のLはコイルのインダクタンスである。
【数2】
【0038】
図8中の第1の波形W1は、
図5A中のコネクタキャップ2の位置に対応する検出信号Gの変化を示している。つまり、第1の波形W1は、可変コンデンサ4の静電容量Cの値がC=C0であるときの検出信号Gの変化を示している。また、
図8中の第2の波形W2は、
図5B中のコネクタキャップ2の位置に対応する検出信号Gの変化を示している。つまり、第2の波形W2は、可変コンデンサ4の静電容量Cの値がC=C1であるときの検出信号Gの変化を示している(C1>C0)。上記の数式(2)から分かるように、RLC直列共振回路の共振周波数fはコンデンサの静電容量Cの平方根に反比例している。つまり、共振周波数fは静電容量Cが増加するにつれて減少するので、
図5B中のコネクタキャップ2の位置に対応する共振回路181の共振周波数fr1は、
図5A中の位置に対応する共振周波数fr0よりも小さくなる。
【0039】
続いて、
図8中の第3の波形W3は、
図5C中のコネクタキャップ2の位置に対応する検出信号Gの変化を示している。つまり、第3の波形W2は、可変コンデンサ4の静電容量Cの値がC=C2であるときの検出信号Gの変化を示している(C2<C0)。上記の数式(2)から分かるように、共振周波数fは静電容量Cが減少するにつれて増加するので、
図5C中のコネクタキャップ2の位置に対応する共振回路181の共振周波数fr2は、
図5A中の位置に対応する共振周波数fr0よりも大きくなる。
【0040】
以下の表1は、共振周波数検出回路18による共振周波数frの検出結果の一例を示している。表1中の誘電率εは空気の誘電率である。表1から分かるように、電極間距離dが減少すると、可変コンデンサ4の静電容量Cが増加するので、共振回路181の共振周波数frが減少する。他方、電極間距離dが増加すると、可変コンデンサ4の静電容量Cが減少するので、共振回路181の共振周波数frが増加する。
【表1】
【0041】
再び
図6を参照すると、共振周波数検出回路18は、共振周波数frの検出値と予め定めた第1の基準値との間の比較に基づいて、コネクタキャップ2が筐体10に装着された状態で押下されたかどうかを判定する機能を有している。特に、共振周波数検出回路18は、共振周波数frの検出値が第1の基準値を下回るかどうかを判定している。例えば、共振周波数検出回路18は、上記の第1の基準値として、
図5B中の電極間距離d1に対応する共振周波数の値(fr1)を採用しうる。本実施例では、電極間距離dが
図5A中の値d0から
図5B中の値d1までの範囲内にあるときには、コネクタキャップ2の移動距離が不十分なので、コネクタキャップ2は押下されていないと見做している。そのため、共振周波数検出回路18は、共振周波数frの検出値が
図5B中の電極間距離d1に対応する値(fr1)以上のときには(fr≧fr1のときには)、コネクタキャップ2が押下されていないと判定している。他方、共振周波数検出回路18は、共振周波数frの検出値が
図5B中の電極間距離d1に対応する値(fr1)を下回るときには(fr<fr1のときには)、コネクタキャップ2が押下されたと判定している。
【0042】
本実施例の電子機器1において、共振周波数検出回路18は、共振周波数frの検出値と予め定めた第2の基準値との間の比較に基づいて、コネクタキャップ2が筐体10に適切に装着されたかどうかをさらに判定する機能を有している。特に、共振周波数検出回路18は、共振周波数frの検出値が第2の基準値を上回るかどうかを判定している。例えば、共振周波数検出回路18は、上記の第2の基準値として、
図5C中の電極間距離d2に対応する共振周波数frの値(fr2)を採用しうる。上述した通り、電極間距離dが
図5C中の値(d2)以下のときには、筐体10の差し込み穴Iの密閉性が十分に確保されることになる。そのため、共振周波数検出回路18は、共振周波数frの検出値が
図5C中の電極間距離d2に対応する値(fr2)以下のときには(fr≦fr2のときには)、コネクタキャップ2が筐体10に適切に装着されたと判定している。
【0043】
他方、電極間距離dが
図5C中の値(d2)よりも大きいときには、筐体10の差し込み穴Iの密閉性が十分に確保されないことになる。そのため、共振周波数検出回路18は、共振周波数frの検出値が
図5C中の電極間距離d2に対応する値(fr2)を上回るときには(fr>fr2のときには)、コネクタキャップ2が筐体10に誤装着されたと判定している。上記の一連の判定に使用される共振周波数frの第1及び第2の基準値は、予め共振周波数検出回路18によって検出されて記憶部14に格納されている。そして、共振周波数検出回路18は、上記の判定の実行時に、記憶部14内の第1及び第2の基準値を読み込んで一時的に記憶している。なお、共振周波数検出回路18は、プロセッサ11とは別個の専用回路であってもよいし、プロセッサ11の一機能として実現されてもよい。
【0044】
続いて、上記の状態判定処理について説明する。
図9は、本実施例の電子機器1において実行される装着判定処理の手順を示すフローチャートである。
図9のように、ステップS901では、共振周波数検出回路18が、共振周波数frの第1の基準値(fr1)及び第2の基準値(fr2)を記憶部14から読み込んでいる。ステップS902では、共振周波数検出回路18が、共振回路181の共振周波数frを検出している。ステップS903では、共振周波数検出回路18が、ステップS902で検出した共振周波数frの値が、ステップS901で読み込んだ第1の基準値(fr1)を下回るかどうかを判定している。
【0045】
そして、共振周波数frの検出値が第1の基準値(fr1)を下回る場合には(ステップS903のYES)、共振周波数検出回路18は、コネクタキャップ2が押下されたことを示す出力信号をプロセッサ11に送信している(ステップS904)。プロセッサ11は、ステップS904で送信された出力信号に応答して、電子機器1の電源のオン/オフを切り替えるための制御処理を実行する。また、プロセッサ11は、ステップS904で送信された出力信号に応答して、振動発生部17に所定の制御信号を送信する。次いで、振動発生部17は、プロセッサの制御信号に従って、コネクタキャップ2が押下されたことを使用者に通知するための振動を発生させる。その後、状態判定処理の1回のループが終了する(リターン)。他方、共振周波数frの検出値が第1の基準値(fr1)以上である場合には(ステップS903のNO)、フローチャートは後述するステップS905に進む。ステップS905では、共振周波数検出回路18が、ステップS902で検出した共振周波数frの値が、ステップS901で読み込んだ第2の基準値(fr2)を上回るかどうかを判定している。
【0046】
そして、共振周波数frの検出値が第2の基準値(fr2)を上回る場合には(ステップS905のYES)、共振周波数検出回路18は、コネクタキャップ2が誤装着されたことを示す出力信号をプロセッサ11に送信している(ステップS906)。プロセッサ11は、ステップS906で送信された出力信号に応答して、表示部16に所定の制御信号を送信する。次いで、表示部16は、プロセッサ11の制御信号に従って、コネクタキャップ2が誤装着されたことを示す所定の警告メッセージを表示パネルDPに表示する。その後、状態判定処理の1回のループが終了する(リターン)。他方、共振周波数frの検出値が第2の基準値(fr2)以下である場合には(ステップS905のNO)、上記のステップS902以降の手順が再び実行される。上記のループは所定の周期で繰り返し実行される。なお、上記の状態判定処理は、電子機器1において常時作動するデーモン(監視プログラム)によって実現されている。
【0047】
以上のように、本実施例の電子機器1では、共振周波数検出回路18が、筐体10側の導電部31とコネクタキャップ2側の導電部32とで形成された可変コンデンサ4を含む共振回路181の共振周波数frを検出している。そして、共振周波数検出回路18は、共振周波数frの検出値と第1の基準値(fr1)との比較に基づいてコネクタキャップ2の押下状態を判定している。上述した通り、可変コンデンサ4の静電容量Cは電極間距離dが減少するにつれて増加し、共振回路181の共振周波数frは可変コンデンサ4の静電容量Cが増加するにつれて減少する。従って、本実施例の電子機器1によれば、筐体10に対するコネクタキャップ2の移動距離が所定の閾値を超えたかどうかを正確に判定でき、結果的に、コネクタキャップ2が筐体10に装着された状態で押下されたかどうかを正確に判定できる。このように、本実施例の電子機器1によれば、筐体10に装着可能なコネクタキャップ2を電源スイッチ等の押下スイッチとして使用することが可能になるので、押下スイッチを設置するための筐体10内の空間を削減することができる。
【0048】
さらに、本実施例の電子機器1では、共振周波数検出回路18が、共振周波数frの検出値と第2の基準値(fr2)との比較に基づいてコネクタキャップ2の装着状態を判定している。上述した通り、可変コンデンサの静電容量Cは電極間距離dが増加するにつれて減少し、共振回路181の共振周波数frは可変コンデンサ4の静電容量Cが減少するにつれて増加する。従って、本実施例の電子機器1によれば、可変コンデンサ4の電極間距離dが所定の境界値(d2)以下であるかどうかを正確に判定でき、結果的に、コネクタキャップ2が筐体10に適切に装着されたかどうかを正確に判定できる。
【0049】
続いて、第1実施例の電子機器1の変形例について説明する。
図10は、第1実施例の電子機器1の変形例を示す、
図5Aと同様の断面図である。
図10のように、本例の電子機器1は、コネクタキャップ2の押下時にコネクタキャップ2によって圧迫されるように筐体10に設置されたバネ部材5を有している。バネ部材5は、コネクタキャップ2によって圧迫されたときにクリック感を発生させるように形成されている。ここでいうクリック感とは、押下スイッチが押下されたことを使用者に知らせるための音又は感触を意味している。
【0050】
図10のように、バネ部材5は、深さ方向の反対向きに突出するように差し込み穴Iの底面P3に設置されたドーム状の板バネの形態を有している。コネクタキャップ2は、差し込み穴Iの底面P3に対向する突起部22の面からさらに突出した柱状部24を有しており、バネ部材5は、コネクタキャップ2の押下時に柱状部24によって圧迫されるように配置されている。本例の電子機器1によれば、コネクタキャップ2の押下時にバネ部材5がコネクタキャップ2介して使用者の指先等に良好なクリック感を与えるので、押下スイッチとしてのコネクタキャップ2の操作性を向上させることができる。
【0051】
次に、本出願の第2実施例の電子機器1について説明する。本実施例の電子機器1は、
図11A〜
図15等を参照して説明する箇所を除いて、上述した第1実施例の電子機器1と同様の構造を有している。
【0052】
図11Aは、本実施例の電子機器1におけるコネクタキャップ2の近傍を示す斜視図である。
図11Aのように、電子機器1は、筐体10の受け面P1に所定のパターンで設置された第1の導電部31と、差し込み穴Iの内周面P2に所定のパターンで設置された第3の導電部33と、を有している。
図11Bは、
図11Aの電子機器1を別の角度から見た斜視図である。
図11Bのように、電子機器1は、コネクタキャップ2の対向面210に所定のパターンで設置された第2の導電部32と、突起部22の外周面に所定のパターンで設置された第4の導電部34と、を有している。第1〜第4の導電部31〜34は、直接パターニング、又は二色成形とメッキ加工の組合せによって形成された導電膜の形態を有しうる。
【0053】
図12Aは、
図11A中の筐体10の受け面P1を示す平面図である。
図12Aのように、第1の導電部31は、筐体10の長手方向における差し込み穴Iの両側に配置された第1及び第2の電極部E1,E2を含んでいる。第1及び第2の電極部E1,E2は、同一の寸法及び形状を有しており、筐体10の長手方向に沿って延びる第1の接続部EC1によって互いに電気的に接続されている。第3の導電部33は、差し込み穴Iの内周面P2に沿って延びるU字状の薄板の形態を有している。第3の導電部33は、第1及び第2の電極部E1,E2とは電気的に接続されていない。
【0054】
図12Bは、本実施例の電子機器1のコネクタキャップ2の対向面210を示す平面図である。
図12Bのように、第2の導電部32は、コネクタキャップ2が筐体10に装着されたときに第1及び第2の電極部E1,E2にそれぞれ対向するように配置された第3及び第4の電極部E3,E4を含んでいる。第3及び第4の電極部E3,E4は、同一の寸法及び形状を有しており、コネクタキャップ2の長手方向に沿って延びる第2の接続部EC2によって互いに電気的に接続されている。第4の導電部34は、突起部22の外周面に沿って延びるU字状の薄板の形態を有している。第4の導電部34は、コネクタキャップ2が筐体10に装着されたときに第3の導電部33に対向するように配置されている。第4の導電部34は、コネクタキャップ2の長手方向と交差する方向に延びる第3の接続部EC3によって第3及び第4の電極部E3,E4と電気的に接続されている。
【0055】
図13Aは、本実施例の電子機器1の筐体10及びコネクタキャップ2を示す断面図である。特に、
図13Aは、
図12A及び
図12B中のXIII−XIII線に沿った筐体10及びコネクタキャップ2の断面を示している。
図13Aでは、コネクタキャップ2の突起部22の構造が簡略化されるとともに、上記の連結部材CM及び案内部材GMが省略されている。
図13Aの状態では、弾性シール部材23が差し込み穴Iの内周面P2に密着しているので、差し込み穴Iの密閉性が十分に確保されている。つまり、
図13Aは、コネクタキャップ2が筐体10に適切に装着された状態の一例を示している。
【0056】
上述した
図5A〜
図5C6Cの例と同様に、コネクタキャップ2は、筐体10に装着された状態で押下されると筐体10に対して深さ方向に移動するように形成されている。つまり、
図13A中のコネクタキャップ2が使用者の指先等によって押下されると、筐体10側の第1の電極部E1とコネクタキャップ2側の第3の電極部E3との間の深さ方向の距離dが減少することになる。このように、コネクタキャップ2は、電子機器1が外部機器に接続されていないときには、差し込み穴Iへの異物の侵入を防止する被覆部材の役割に加えて、使用者から所定の指示を受け付ける押下スイッチの役割を果たしうる。以下では、第1の電極部E1と第3の電極部E3との間の深さ方向の距離dを、
図5A〜
図5Cの例と同様に、電極間距離dと称している。第2の電極部E2と第4の電極部E4との間の深さ方向の距離は、電極間距離dと等しい。また、第3の導電部33の表面における第4の導電部34と対向する部分の面積を以下では電極面積Sと称している。
【0057】
図5A〜
図5Cの例と同様に、第1〜第4の電極部E1〜E4は、電極間距離dに応じて静電容量Cが減少する可変コンデンサを形成している。この可変コンデンサを以下では第1の可変コンデンサと称している。また、第3及び第4の導電部33,34は、電極面積Sに応じて静電容量C’が変化する可変コンデンサを形成している。この可変コンデンサを以下では第2の可変コンデンサと称している。
図13Aの状態では、第1の可変コンデンサの電極間距離dの値がd=d0であり、静電容量Cの値がC=C0である。また、
図13Aの状態では、第2の可変コンデンサの電極面積Sの値がS=S0であり、静電容量C’の値がC’=C0’である。
【0058】
図13Aの状態では、弾性シール部材23が差し込み穴Iの内周面P2だけでなく底面P3にも接触している。ただし、
図13A中のコネクタキャップ2には深さ方向の外力が作用していない。
図13A中の第1の可変コンデンサの電極間距離d及び静電容量Cの値を以下では初期値d0,C0と称することがある。同様に、
図13A中の第2の可変コンデンサの電極面積S及び静電容量C’の値を以下では初期値S0,C0’と称することがある。上述した
図5A〜
図5Cの例と同様に、弾性シール部材23は、コネクタキャップ2が深さ方向の外力を受けて
図13A中の位置から移動したときに、差し込み穴Iの底面P3から反力を受けて圧縮変形するように形成されている。
【0059】
図13Bは、
図13Aと同様の断面図であり、
図13Aとは異なるコネクタキャップ2の装着状態を示している。具体的に言うと、
図13Bは、
図13A中のコネクタキャップ2が深さ方向の外力を受けて僅かな距離だけ移動した状態を示している。そのため、
図13B中の電極間距離d1は、
図13A中の初期値d0よりも小さく(d1<d0)、
図13B中の第1の可変コンデンサの静電容量C1は、
図13A中の初期値C0よりも大きい(C1>C0)。また、
図13B中の電極面積S1は、
図13A中の初期値S0よりも大きく(S1>S0)、
図13B中の第2の可変コンデンサの静電容量C1’は、
図13A中の初期値C0’よりも大きい(C1’>C0’)。
図13Bの状態では、コネクタキャップ2の移動距離が不十分であるので、コネクタキャップ2は未だ押下されておらず、押下スイッチとしてのコネクタキャップ2に対する使用者の指示は未だ受け付けられていない。
【0060】
図13B中の電極間距離dの値(d1)は、コネクタキャップ2が押下されていない状態を表す、電極間距離dの境界値の一例である。つまり、本実施例の電子機器1では、電極間距離dが
図13B中の値(d1)を下回ったときに、コネクタキャップ2が押下された(つまり、押下スイッチとしてのコネクタキャップ2が使用者の指示を受け付けた)と見做している。
図13Bの状態では、弾性シール部材23が差し込み穴Iの底面P3から反力を受けて圧縮変形している。そのため、コネクタキャップ2に対する外力が解除されると、コネクタキャップ2は弾性シール部材23の復元力によって
図13Aの状態に戻ることになる。
【0061】
図13Cは、
図13A及び
図13Bと同様の断面図であり、
図13A及び
図13Bとは異なるコネクタキャップ2の装着状態を示している。具体的に言うと、
図13Cは、
図13A中のコネクタキャップ2が深さ方向の反対向きに僅かな距離だけ移動した状態を示している。そのため、
図13C中の電極間距離d2は、
図13A中の初期値d0よりも大きく(d2>d0)、
図13C中の第1の可変コンデンサの静電容量C2は、
図13A中の初期値C0よりも小さい(C2<C0)。また、
図13C中の電極面積S2は、
図13A中の初期値S0よりも小さく(S2<S0)、
図13C中の第2の可変コンデンサの静電容量C2’は、
図13A中の初期値C0’よりも小さい(C2’<C0’)。
【0062】
図13Cの状態でもコネクタキャップ2の弾性シール部材23が差し込み穴Iの内周面P2に密着しているので、差し込み穴Iの密閉性が十分に確保されている。
図13C中の電極間距離dの値(d2)は、コネクタキャップ2が適切に装着された状態を表す、電極間距離dの境界値の一例である。つまり、
図13C中のコネクタキャップ2が深さ方向の反対向きにさらに移動すると、差し込み穴Iの密閉性が十分に確保されなくなる。本実施例の電子機器1では、上記の第1及び第2コンデンサを直列に接続した合成コンデンサを含む共振回路の共振周波数を検出するとともに、共振周波数の検出値に基づいてコネクタキャップ2の装着状態及び押下状態を判定している。このような判定処理の具体的な手順は、上述した
図9の例と同様である。
【0063】
続いて、本実施例の電子機器1のシステム構成について説明する。本実施例の電子機器1のシステム構成は、上述した
図6の例と同様である。つまり、本実施例の電子機器1は、プロセッサ11、無線通信部12、オーディオ入出力部13、記憶部14、タッチセンサ部15、表示部16、振動発生部17、共振周波数検出回路18、及びコネクタ部CNを含んでいる。本実施例の電子機器1のプロセッサ11、無線通信部12、オーディオ入出力部13、記憶部14、タッチセンサ部15、表示部16、及び振動発生部17の機能は、上述した
図6の例と同様である。そのため、以下では電子機器1の残りの構成要素について説明する。
【0064】
コネクタ部CNは、上記の第1〜第4の導電部31〜34を含む回路部品である。
図12A及び
図12Bのように、第1の導電部31は第1及び第2の電極部E1,E2を含んでおり、第2の導電部32は第3及び第4の電極部E3,E4を含んでいる。
図13A〜
図13Cを参照して説明した通り、第1〜第4の電極部E1〜E4は電極間距離dに応じて静電容量Cが変化する第1の可変コンデンサを形成しており、第3及び第4の導電部33,34は電極面積Sに応じて静電容量C’が変化する第2の可変コンデンサを形成している。
【0065】
共振周波数検出回路18は、上記の第1及び第2の可変コンデンサ41,42を含む共振回路と、共振回路の交流電源の周波数を任意に変化させる周波数変換回路と、を含む電子回路である。
図14は、本実施例の電子機器1における共振周波数検出回路18の共振回路181の回路図である。
図14のように、共振回路181は、RLC直列共振回路であり、同回路の電流信号を増幅して共振周波数の検出信号Gを出力する出力アンプAMPをさらに含んでいる。また、共振回路181は、第1及び第2の可変コンデンサ41,42を直列に接続して形成した合成コンデンサ40を含んでいる。
図14中の合成コンデンサ40の両側に位置するa点及びb点は、
図11A中の筐体10内のa点及びb点にそれぞれ対応している。
【0066】
図15は、
図14の共振回路181の交流電源Eの周波数fと検出アンプAMPから出力された検出信号Gとの間の対応関係を示すグラフである。共振周波数検出回路18は、
図15のグラフに示される検出信号Gの変化に基づいて共振回路181の共振周波数frを検出している。具体的に言うと、共振周波数検出回路18は、交流電源Eの周波数fを所定の範囲内で変化させる間に得られた検出信号Gの極大値を、共振回路181の共振周波数frとして検出している。
【0067】
図15中の第1の波形W1は、
図13A中のコネクタキャップ2に対応する検出信号Gの変化を示している。つまり、第1の波形W1は、第1の可変コンデンサ41の静電容量Cの値がC=C0であり、かつ第2の可変コンデンサ42の静電容量C’の値がC’=C0’であるときの検出信号Gの変化を示している。
図15中の第2の波形W2は、
図13B中のコネクタキャップ2に対応する検出信号Gの変化を示している。つまり、第2の波形W2は、第1の可変コンデンサ41の静電容量Cの値がC=C1であり(C1>C0)、かつ第2の可変コンデンサ42の静電容量C’の値がC’=C1’であるとき検出信号Gの変化を示している(C1’>C0’)。
図14の共振回路181は、第1の可変コンデンサ41の静電容量Cが増加するにつれて共振周波数frが減少し、かつ第2の可変コンデンサ42の静電容量C’が増加するにつれて共振周波数frが減少するように形成されている。そのため、
図13Bの状態に対応する共振回路181の共振周波数fr1は、
図13Aの状態に対応する共振周波数fr0よりも小さい(fr1<fr0)。
【0068】
続いて、
図15中の第3の波形W3は、
図13C中のコネクタキャップ2に対応する検出信号Gの変化を示している。つまり、第3の波形W3は、第1の可変コンデンサ41の静電容量Cの値がC=C2であり(C2<C0)、かつ第2の可変コンデンサ42の静電容量C’の値がC’=C2’である(C2’<C0’)ときの検出信号Gの変化を示している。
図14の共振回路181は、第1の可変コンデンサ41の静電容量Cが減少するにつれて共振周波数frが増加し、かつ第2の可変コンデンサ42の静電容量C’が減少するにつれて共振周波数frが増加するように形成されている。そのため、
図13Cの状態に対応する共振回路181の共振周波数fr2は、
図13Aの状態に対応する共振周波数fr0よりも大きい(fr2>fr0)。
【0069】
以下の表2は、共振周波数検出回路18による共振周波数frの検出結果の一例を示している。表2中の誘電率εは空気の誘電率である。表2から分かるように、電極間距離dが減少すると合成コンデンサ40の静電容量Csが増加するので、共振回路181の共振周波数frが減少する。また、電極面積Sが増加すると合成コンデンサ40の静電容量Csが増加するので、共振回路181の共振周波数が減少する。他方、電極間距離dが増加すると、合成コンデンサ40の静電容量Csが減少するので、共振回路181の共振周波数frが増加する。また、電極面積Sが減少すると合成コンデンサ40の静電容量Csが減少するので、共振回路181の共振周波数frが増加する。
【表2】
【0070】
表1及び表2から分かるように、本実施例の電子機器1では、電極間距離dの初期値(d0)に対応する共振周波数(f0)と電極間距離dの境界値(d1)に対応する共振周波数(f1)との間の差(f0−f1)が相対的に大きくなる。同様に、本実施例の電子機器1では、電極間距離dの初期値(d0)に対応する共振周波数(f0)と電極間距離dの境界値(d2)に対応する共振周波数(f2)との間の差(f2−f0)が相対的に大きくなる。従って、本実施例の電子機器1によれば、コネクタキャップ2の押下状態及び装着状態をより正確に判定することが可能になる。
【0071】
続いて、共振周波数検出回路18は、共振周波数frの検出値と予め定めた第1の基準値との間の比較に基づいて、コネクタキャップ2が筐体10に装着された状態で押下されたかどうかを判定する機能を有している。特に、共振周波数検出回路18は、共振周波数frの検出値が第1の基準値を下回るかどうかを判定している。例えば、共振周波数検出回路18は、上記の第1の基準値として、
図13B中の電極間距離d1に対応する共振周波数の値(fr1)を採用しうる(
図15も参照)。本実施例では、電極間距離dが
図13A中の初期値(d0)から
図13B中の値(d1)までの範囲内にあるときには、コネクタキャップ2の移動距離が不十分なので、コネクタキャップ2は押下されていないと見做している。そのため、共振周波数検出回路18は、共振周波数frの検出値が
図13B中の電極間距離d1に対応する値(fr1)以上のときには(fr≧fr1のときには)、コネクタキャップ2が押下されていないと判定している。他方、共振周波数検出回路18は、共振周波数frの検出値が
図13B中の電極間距離d1に対応する値(fr1)を下回るときには(fr<fr1のときには)、コネクタキャップ2が押下されたと判定している。
【0072】
本実施例の電子機器1において、共振周波数検出回路18は、共振周波数frの検出値と予め定めた第2の基準値との間の比較に基づいて、コネクタキャップ2が筐体10に適切に装着されたかどうかをさらに判定する機能を有している。特に、共振周波数検出回路18は、共振周波数frの検出値が第2の基準値を上回るかどうかを判定している。例えば、共振周波数検出回路18は、上記の第2の基準値として、
図13C中の電極間距離d2に対応する共振周波数frの値(fr2)を採用しうる。本実施例では、電極間距離dが
図13C中の値(d2)以下であるときには、筐体10の差し込み穴Iの密閉性が十分に確保されることになる。そのため、共振周波数検出回路18は、共振周波数frの検出値が
図13C中の電極間距離d2に対応する値(fr2)以下のときには(fr≦fr2のときには)、コネクタキャップ2が筐体10に適切に装着されたと判定している。
【0073】
他方、電極間距離dが
図13C中の値(d2)よりも大きいときには、筐体10の差し込み穴Iの密閉性が十分に確保されないことになる。そのため、共振周波数検出回路18は、共振周波数frの検出値が
図13C中の電極間距離d2に対応する値(fr2)を上回るときには(fr>fr2のときには)、コネクタキャップ2が筐体10に誤装着されたと判定している。上記の一連の判定に使用される共振周波数frの第1及び第2の基準値は、予め共振周波数検出回路18によって検出されて記憶部14に格納されている。そして、共振周波数検出回路18は、上記の判定の実行時に、記憶部14内の第1及び第2の基準値を読み込んで一時的に記憶している。なお、共振周波数検出回路18は、プロセッサ11とは別個の専用回路であってもよいし、プロセッサ11の一機能として実現されてもよい。
【0074】
以上のように、本実施例の電子機器1では、共振周波数検出回路18が、共振周波数frの検出値と第1の基準値(fr1)との比較に基づいてコネクタキャップ2の押下状態を判定している。従って、本実施例の電子機器1によれば、筐体10に対するコネクタキャップ2の移動距離が所定の閾値を超えたかどうかを正確に判定でき、結果的に、コネクタキャップ2が筐体10に装着された状態で押下されたかどうかを正確に判定できる。このように、本実施例の電子機器1によれば、筐体10に装着可能なコネクタキャップ2を電源スイッチ等の押下スイッチとして使用することが可能になるので、押下スイッチを設置するための筐体10内の空間を削減することができる。特に、本実施例の電子機器1では、電極間距離dの初期値(d0)に対応する共振周波数(f0)と電極間距離dの境界値(d1)に対応する共振周波数(f1)との間の差(f0−f1)が相対的に大きくなる(表2を参照)。従って、本実施例の電子機器1によれば、コネクタキャップ2の押下状態をより正確に判定することが可能になる。
【0075】
さらに、本実施例の電子機器1では、共振周波数検出回路18が、共振周波数frの検出値と第2の基準値(fr2)との比較に基づいてコネクタキャップ2の装着状態を判定している。従って、本実施例の電子機器1によれば、可変コンデンサ4の電極間距離dが所定の境界値(d2)以下であるかどうかを正確に判定でき、結果的に、コネクタキャップ2が筐体10に適切に装着されたかどうかを正確に判定できる。特に、本実施例の電子機器1では、電極間距離dの初期値(d0)に対応する共振周波数(f0)と電極間距離dの境界値(d2)に対応する共振周波数(f2)との間の差(f2−f0)が相対的に大きくなる(表2を参照)。従って、本実施例の電子機器1によれば、コネクタキャップ2の装着状態をより正確に判定することが可能になる。
【0076】
以上、本出願を特にその好ましい実施の形態を参照して詳細に説明した。本出願の容易な理解のために、本出願の具体的な形態を以下に付記する。
【0077】
(付記1) 筐体と、
前記筐体に装着可能であり、前記筐体に装着された状態で押下されると前記筐体までの距離が変化するように形成されたキャップと、
前記筐体における前記キャップの受け面に設置された第1の導電部と、
前記キャップが前記筐体に装着されたときに前記第1の導電部に対向する前記キャップの位置に設置された第2の導電部と、
前記第1の導電部及び前記第2の導電部から形成される可変コンデンサに接続された共振回路と、
前記共振回路の共振周波数と予め定めた基準値との比較に基づいて、前記キャップが前記筐体に装着された状態で押下されたかどうかを判定する検出回路と、を備える電子機器。
【0078】
(付記2) 前記検出回路は、前記共振周波数が前記基準値を下回るときに、前記キャップが前記筐体に装着された状態で押下されたと判定する、付記1記載の電子機器。
(付記3) 前記検出回路は、前記共振周波数と、前記基準値とは異なる他の基準値と、の比較に基づいて、前記キャップが前記筐体に適切に装着されたかどうかをさらに判定する、付記1または2に記載の電子機器。
(付記4) 前記検出回路は、前記共振周波数が前記他の基準値を上回るときに、前記キャップが前記筐体に適切に装着されていないと判定する、付記3に記載の電子機器。
【0079】
(付記5) 前記キャップが前記筐体に装着されたときに前記キャップに対向する、前記受け面とは異なる前記筐体の面に設置された第3の導電部と、
前記キャップが前記筐体に装着されたときに前記第3の導電部に対向する前記キャップの位置に設置された第4の導電部と、をさらに備え、
前記共振回路は、前記可変コンデンサと、前記第3の導電部及び前記第4の導電部から形成された他の可変コンデンサと、を直列に接続した合成コンデンサを含む、付記1〜4のいずれかに記載の電子機器。
(付記6) 前記キャップが前記筐体に装着されたときに前記キャップと前記筐体との間に位置するように前記キャップに設置され、前記キャップが前記筐体に装着された状態で押下されたときに前記キャップに復元力を加えるように形成された弾性部材をさらに備える付記1〜5のいずれかに記載の電子機器。
(付記7) 前記筐体は、外部機器との接続のための差し込み穴を有し、
前記キャップは、前記筐体に装着されたときに前記差し込み穴を覆うように形成されている、付記1〜6のいずれかに記載の電子機器。
【0080】
(付記8) 前記キャップが前記筐体に装着された状態で押下されたときに前記キャップによって圧迫されるように前記筐体に設置され、前記キャップによって圧迫されたときにクリック感を発生させるように形成されたバネ部材をさらに備える、付記1〜7のいずれかに記載の電子機器。
(付記9) 前記バネ部材は、前記キャップが前記筐体に装着された状態で押下されたときに移動する方向の反対向きに突出したドーム状の板バネである、付記8に記載の電子機器。