特許第6555088号(P6555088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6555088ガラス物品の製造方法及びガラス物品の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555088
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】ガラス物品の製造方法及びガラス物品の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 9/46 20060101AFI20190729BHJP
   C03B 9/38 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   C03B9/46
   C03B9/38
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-217823(P2015-217823)
(22)【出願日】2015年11月5日
(65)【公開番号】特開2017-88431(P2017-88431A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕次
(72)【発明者】
【氏名】大石 幸博
【審査官】 和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−035413(JP,A)
【文献】 特公昭45−032067(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 9/38
C03B 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材に係止するとともに貫通孔を有する係止部を備えたパリソンを前記支持部材に支持させた状態で前記パリソンにガスを送り込むことにより前記係止部と一体のガラス成形体を前記支持部材の下方位置でブロー成形するブロー成形工程と、
前記ガラス成形体と前記係止部との接続部分を切断することで中空部を有するガラス物品を得る切断工程と、を備えるガラス物品の製造方法であって、
前記切断工程において、飛散用ガスノズルからガスを噴射することにより前記切断により発生するガラス粉を吹き飛ばすとともに、
前記飛散用ガスノズルは、前記係止部の貫通孔に向けてガスを噴射する第1飛散用ガスノズルと、前記ガラス成形体の側方位置で下方に向けてガスを噴射する第2飛散用ガスノズルと、を備え、
前記切断工程において、前記第1飛散用ガスノズル及び前記第2飛散用ガスノズルからガスを噴射した状態で前記切断を行うことを特徴とするガラス物品の製造方法。
【請求項2】
前記切断工程において、前記飛散用ガスノズルから前記係止部の貫通孔に向けてガスを噴射した状態で前記切断を行うことを特徴とする請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項3】
前記切断工程において、
前記飛散用ガスノズルから前記係止部における貫通孔の内縁よりも中央側となる領域にガスを噴射し、前記係止部における貫通孔の内縁の全周からガスを噴出させた状態で前記切断を行うことを特徴とする請求項2に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項4】
前記ブロー成形工程と前記切断工程との間に冷却工程をさらに備え、
前記冷却工程では、冷却用ガスノズルから前記係止部の貫通孔内に向けてガスを噴射することで前記ガラス成形体の内面を冷却することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項5】
支持部材に係止するとともに貫通孔を有する係止部を備えたパリソンを前記支持部材に支持させた状態で前記パリソンにガスを送り込むことにより前記係止部と一体のガラス成形体を前記支持部材の下方位置でブロー成形するブロー成形部と、
前記ガラス成形体と前記係止部との接続部分を切断することで中空部を有するガラス物品を得る切断部と、を備えるガラス物品の製造装置であって、
前記切断部は、前記切断により発生するガラス粉を吹き飛ばす飛散用ガスノズルを備え
前記飛散用ガスノズルは、前記係止部の貫通孔に向けてガスを噴射する第1飛散用ガスノズルと、前記ガラス成形体の側方位置で下方に向けてガスを噴射する第2飛散用ガスノズルと、を備えることを特徴とするガラス物品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空部を有するガラス物品の製造方法及びガラス物品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中空部を有するガラス物品をブロー成形により成形するガラス物品の製造方法が知られている(特許文献1参照)。特許文献1には、支持部材に支持させた状態のパリソンにエアを吹き込むことでガラス成形体をブロー成形するブロー成形工程を備えるガラス物品(ガラス容器)の製造方法が開示されている。詳述すると、特許文献1に開示されるガラス物品の製造方法では、支持部材(支持リング)に係止する係止部を有するパリソンを支持部材に支持させた状態でブロー成形工程が行われる。このブロー成形工程により、係止部と一体のガラス成形体が得られる。次に、ガラス成形体と係止部(モイル)との接続部分を切断する切断工程が行われることで、中空部を有するガラス物品が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平02−137738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のガラス物品の製造方法では、ブロー成形されたガラス成形体と支持部材に係止する係止部との接続部分を切断する切断工程において発生したガラス粉が、ガラス物品内に入り込む場合がある。ガラス物品内に入り込んだガラス粉の多くは洗浄により取り除くことが可能であるものの、残留の懸念や、これに伴うガラス物品の内面品位の低下が想定されるため、ガラス物品に入り込むガラス粉を削減することが重要である。また、後工程である洗浄工程を省略或いは簡略化すれば製造コストを低減できるという観点からも、ガラス粉の侵入を抑制することは重要である。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、中空部を有するガラス物品内に入り込むガラス粉を削減することを可能にしたガラス物品の製造方法及びガラス物品の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するガラス物品の製造方法は、支持部材に係止するとともに貫通孔を有する係止部を備えたパリソンを前記支持部材に支持させた状態で前記パリソンにガスを送り込むことにより前記係止部と一体のガラス成形体を前記支持部材の下方位置でブロー成形するブロー成形工程と、前記ガラス成形体と前記係止部との接続部分を切断することで中空部を有するガラス物品を得る切断工程と、を備えるガラス物品の製造方法であって、
前記切断工程において、飛散用ガスノズルからガスを噴射することにより前記切断により発生するガラス粉を吹き飛ばす。
【0007】
この方法によれば、切断工程において、ガラス物品の周囲に飛散するガラス粉を飛散用ガスノズルから噴出するガスにより吹き飛ばすことができるため、ガラス物品内にガラス粉が入り込み難くなる。
【0008】
上記ガラス物品の製造方法では、前記切断工程において、前記飛散用ガスノズルから前記係止部の貫通孔に向けてガスを噴射した状態で前記切断を行うことが好ましい。
この方法によれば、ガラス成形体の切断箇所で発生するガラス粉を速やかにガラス成形体から離間するように吹き飛ばすことができる。
【0009】
上記ガラス物品の製造方法では、前記切断工程において、前記飛散用ガスノズルから前記係止部における貫通孔の内縁よりも中央側となる領域にガスを噴射し、前記係止部における貫通孔の内縁の全周からガスを噴出させた状態で前記切断を行うことが好ましい。
【0010】
この方法によれば、切断工程において浮遊するガラス粉を係止部から離間するように吹き飛ばすことができる。また、ガラス成形体の切断箇所からガスを噴出させることができるため、ガラス物品内にガラス粉がより入り込み難くなる。
【0011】
上記ガラス物品の製造方法は、前記ブロー成形工程と前記切断工程との間に冷却工程をさらに備え、前記冷却工程では、冷却用ガスノズルから前記係止部の貫通孔内に向けてガスを噴射することで前記ガラス成形体の内面を冷却することが好ましい。
【0012】
この方法によれば、切断工程に供されるガラス成形体の内面が冷却されるため、切断工程においてガラス成形体(ガラス物品)の内面にガラス粉が溶着することを抑えることができる。
【0013】
上記ガラス物品の製造方法において、前記飛散用ガスノズルは、前記係止部の貫通孔に向けてガスを噴射する第1飛散用ガスノズルと、前記ガラス成形体の側方位置で下方に向けてガスを噴射する第2飛散用ガスノズルと、を備え、前記切断工程において、前記第1飛散用ガスノズル及び前記第2飛散用ガスノズルからガスを噴射した状態で前記切断を行うことが好ましい。
【0014】
この方法によれば、切断工程で発生するガラス粉を第1飛散用ガスノズルから噴射されるガスによって速やかにガラス成形体から離間するように吹き飛ばすことができる。また、浮遊するガラス粉を第2飛散用ガスノズルから噴射されるガスによって下方に吹き飛ばすことができる。これにより、浮遊するガラス粉を速やかに降下させることができるため、浮遊するガラスがガラス成形体(ガラス物品)内に流入し難くなる。
【0015】
上記課題を解決するガラス物品の製造装置は、支持部材に係止するとともに貫通孔を有する係止部を備えたパリソンを前記支持部材に支持させた状態で前記パリソンにガスを送り込むことにより前記係止部と一体のガラス成形体を前記支持部材の下方位置でブロー成形するブロー成形部と、前記ガラス成形体と前記係止部との接続部分を切断することで中空部を有するガラス物品を得る切断部と、を備えるガラス物品の製造装置であって、前記切断部は、前記切断により発生するガラス粉を吹き飛ばす飛散用ガスノズルを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、中空部を有するガラス物品内に入り込むガラス粉を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態におけるガラス物品の製造装置を示す模式図であり、(a)はディスクゴブ成形部及びパリソン成形部を示し、(b)はディスクゴブ成形部を示し、(c)はディスクゴブ成形部及びパリソン成形部を示し、(d)〜(f)はパリソン成形部の要部を示し、(g)〜(i)はブロー成形部の要部を示す。
図2】ガラス物品の製造装置を示す模式図であり、(a)及び(b)は冷却部及び切断部を示す。
図3】(a)は、切断部とガラス成形体との位置関係を説明する平面図であり、(b)は切断部を示す模式図である。
図4】ガラス物品の製造装置における切断部の変更例を示す模式図である。
図5】ガラス物品の製造装置における切断部の変更例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、ガラス物品の製造方法及びガラス物品の製造装置の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。本実施形態におけるガラス物品の製造方法(製造装置)は、ブロー・アンド・ブロー方式のまわし吹き成形法により、中空部を有するガラス物品を製造する方法(装置)である。まず、ガラス物品の製造装置について説明する。
【0019】
図1(a)〜図1(c)に示すように、ガラス物品の製造装置11は、ディスクゴブ(円盤状のガラス)を成形するディスクゴブ成形部12を備えている。
ディスクゴブ成形部12は、溶融ガラスを吐出するフィーダー13と、フィーダー13から吐出された溶融ガラスを切断し、ガラスゴブG1(溶融ガラス塊)を形成する切断刃14と、ガラスゴブG1を所定方向に滑らせるシュート15と、シュート15の下流端に配置され、ガラスゴブG1が載置されるプレスヘッド16とを備えている。ディスクゴブ成形部12は、プレスヘッド16の上昇によりガラスゴブG1をプレスするとともに、得られたディスクゴブG2を吸着保持するサクションヘッド17と、サクションヘッド17を移動させるアーム18(図1(c)参照)とをさらに備えている。
【0020】
図1(a)に示すように、ガラス物品の製造装置11は、パリソン成形部19をさらに備えている。パリソン成形部19は、ディスクゴブG2が載置される支持部材20と、第1軸A1を軸中心として支持部材20を公転させる回転テーブル21と、支持部材20に載置されたディスクゴブG2にガスを送り込むブローヘッド22とを備えている。支持部材20は、ブローヘッド22から流れ出すガスを通じる貫通孔20aを有している。ブローヘッド22は、図1(e)に示すようにディスクゴブG2から離間した上部位置と、図1(f)に示すようにディスクゴブG2に接する下部位置とに上下動可能に設けられている。支持部材20及びブローヘッド22は、図1(f)に示すように第2軸A2を軸中心として自転されるように構成されている。
【0021】
図1(g)に示すように、パリソン成形部19で成形されたパリソンPは、中空部を有するパリソン本体部P1と、支持部材20に係止する係止部P2とを有している。係止部P2は、上方に開口するとともにパリソン本体部P1の中空部と連通する貫通孔H1を有している。詳述すると、係止部P2は、連続した環状に形成され、支持部材20の上面に係止している。パリソン本体部P1は、係止部P2の係止により、支持部材20の貫通孔20aに吊り下げられるように支持されている。
【0022】
図1(g)〜図1(i)に示すように、ガラス物品の製造装置11は、パリソンPからガラス成形体G3をブロー成形するブロー成形部23を備えている。ブロー成形部23は、上述した回転テーブル21の回転により移動した支持部材20及びブローヘッド22と、ブロー成形用金型24とを備えている。パリソンPは、支持部材20の移動に伴ってパリソン成形部19からブロー成形部23に搬送される。ブロー成形用金型24は、分割型であり、左右に開閉される第1金型24a及び第2金型24bから構成されている。ブロー成形部23では、パリソンPの係止部P2と一体のガラス成形体G3が支持部材20の下方位置でブロー成形される。
【0023】
図2(a)及び図2(b)に示すように、ガラス物品の製造装置11は、冷却部25及び切断部26をさらに備えている。ガラス成形体G3は、支持部材20の移動によって搬送方向D1として示すように上述したブロー成形部23から冷却部25に搬送される。冷却部25は、上述した回転テーブル21の回転により移動した支持部材20と、支持部材20に支持されたガラス成形体G3を冷却する冷却用ガスノズル27を備えている。冷却用ガスノズル27は、支持部材20に係止されている係止部P2の貫通孔H1内に向けてガスを噴射することでガラス成形体G3の内面を冷却するように配置されている。
【0024】
切断部26は、上述した回転テーブル21の回転により移動した支持部材20と、支持部材20に支持されたガラス成形体G3の移動に伴ってガラス成形体G3に当接する当接部材28とを備えている。ガラス成形体G3は、支持部材20の移動によって搬送方向D1として示すように冷却部25から切断部26に搬送される。
【0025】
図3(a)及び図3(b)に示すように、切断部26では、搬送されたガラス成形体G3が当接部材28に当接することで、ガラス成形体G3と係止部P2との接続部分に応力が集中し、ガラス成形体G3と係止部P2との接続部分が切断(割断)される。
【0026】
切断部26は、ガラス成形体G3と係止部P2との接続部分の切断により発生するガラス粉G4を吹き飛ばす飛散用ガスノズル29をさらに備えている。本実施形態の飛散用ガスノズル29は、支持部材20に係止されている係止部P2の貫通孔H1に向けてガスを噴射する第1飛散用ガスノズル30と、ガラス成形体G3の側方位置で下方に向けてガスを噴射する第2飛散用ガスノズル31とから構成されている。
【0027】
図3(a)に示すように、第1飛散用ガスノズル30は、係止部P2における貫通孔H1の内縁よりも中央側となる領域Cにガスを噴射し、図3(b)に矢印で示すように係止部P2における貫通孔H1の内縁の全周からガスを噴出させる。こうした第1飛散用ガスノズル30の噴射口30aは、係止部P2における貫通孔H1の内径よりも小さい外形を有している。第2飛散用ガスノズル31は、第1飛散用ガラスよりもガラス成形体G3の搬送方向D1の下流側において下方に向けてガスを噴射するように配置されている。第1飛散用ガスノズル30及び第2飛散用ガスノズル31において、ガスを噴射する方向は、例えば、水平方向から下方に45°以上、90°以下となる範囲に設定されることが好ましい。
【0028】
本実施形態の第2飛散用ガスノズル31は、スリット状の噴射口31aを有するスリットノズルであり、下方に向かうカーテン状のガス流を発生させる。第2飛散用ガスノズル31(スリットノズル)は、ガラス成形体G3の搬送方向D1と交差し、かつガラス成形体G3の径方向に延在するガス流を発生させる。
【0029】
切断部26は、図示を省略したコンベアをさらに備え、切断部26で得られたガラス物品G5は搬送方向D1とは反対の搬出方向D2に向けて搬出される。
次に、ガラス物品G5の製造方法を説明する。
【0030】
本実施形態のガラス物品G5の製造方法は、ディスクゴブ成形部12を用いたディスクゴブ成形工程、パリソン成形部19を用いたパリソン成形工程、ブロー成形部23を用いたブロー成形工程、冷却部25を用いた冷却工程、及び切断部26を用いた切断工程を備えている。
【0031】
図1(a)及び図1(b)に示すように、ディスクゴブ成形工程では、フィーダー13から吐出された溶融ガラスを切断して得られるガラスゴブG1をプレスヘッド16とサクションヘッド17との間でプレスすることでディスクゴブG2を成形する。次に、図1(c)に示すように、成形されたディスクゴブG2をサクションヘッド17に吸着保持させるとともに、アーム18の水平回転によって支持部材20上にディスクゴブG2を移動させる。続いて、図1(d)に示すように、サクションヘッド17の吸着保持を解除することでディスクゴブG2を支持部材20上に載置する。
【0032】
パリソン成形工程は、支持部材20上に載置されたディスクゴブG2からパリソンPを成形する工程である。
図1(e)に示すように、支持部材20上に載置されたディスクゴブG2が半溶融状態の場合、ディスクゴブG2の中央部分は、自重により支持部材20の貫通孔20aから垂れ下がる。図1(f)に示すように、パリソン成形工程では、ディスクゴブG2に接する下部位置までブローヘッド22を下降し、ブローヘッド22からディスクゴブG2にガスを送り込むことでパリソンPを成形する。得られたパリソンPは、支持部材20に係止する係止部P2を備え、支持部材20に係止されている。なお、パリソン成形工程は、第2軸A2を軸中心として支持部材20(ディスクゴブG2)を自転させた状態で行われる。
【0033】
ブロー成形工程は、パリソンPを支持部材20に支持させた状態でパリソンPにガスを送り込む工程である。
図1(g)に示すように、ブロー成形工程では、まず第1金型24aと第2金型24bとを閉じることによりブロー成形用金型24のキャビティにパリソン本体部P1を配置する。次に、図1(h)に示すように、ブロー成形工程では、係止部P2と一体のガラス成形体G3を支持部材20の下方位置でブロー成形する。なお、ブロー成形工程は、第2軸A2を軸中心として支持部材20(パリソンP)及びブロー成形用金型24を自転させた状態で行われる。
【0034】
図1(i)に示すように、ブロー成形工程後には、第1金型24aと第2金型24bとを開くとともに、ブローヘッド22を係止部P2から離間した上部位置まで上昇させることで、支持部材20に支持された状態のガラス成形体G3が得られる。
【0035】
冷却工程は、ガラス成形体G3の内面を冷却する工程である。
図2(a)に示すように、冷却工程では、冷却用ガスノズル27から係止部P2における貫通孔H1内に向けてガスを噴射することでガラス成形体G3の内面を冷却する。詳述すると、冷却工程では、冷却用ガスノズル27からガラス成形体G3内にガスが吹き込まれることでガラス成形体G3の内面の冷却が促進される。冷却用ガスノズル27から噴射させるガスとしては、例えば、エアが用いられ、必要に応じて強制的に冷却したガスを用いることもできる。
【0036】
切断工程は、ガラス成形体G3と係止部P2との接続部分を切断することで中空部を有するガラス物品G5を得る工程である。
図2(b)に示すように、切断工程では、支持部材20により搬送されるガラス成形体G3が当接部材28に当接する。これにより、図3(b)に示すように、ガラス成形体G3と係止部P2との接続部分が切断(割断)される。切断工程では、上述した飛散用ガスノズル29からガスを噴射することによりガラス成形体G3と係止部P2との接続部分の切断により発生するガラス粉G4を吹き飛ばす。本実施形態の飛散用ガスノズル29は、上述した第1飛散用ガスノズル30及び第2飛散用ガスノズル31を備え、第1飛散用ガスノズル30及び第2飛散用ガスノズル31からガスを噴射した状態で上記の切断を行う工程である。また、本実施形態の切断工程は、図3(a)及び図3(b)に示すように、第1飛散用ガスノズル30から係止部P2における貫通孔H1の内縁よりも中央側となる領域Cにガスを噴射し、係止部P2における貫通孔H1の内縁の全周からガスを噴出させた状態で上記の切断を行う工程である。
【0037】
飛散用ガスノズル29から噴出させるガスとしては、例えば、エアが用いられ、必要に応じて強制的に冷却したガスを用いることもできる。
得られたガラス物品G5は、図示を省略したコンベアで搬出される。ガラス物品G5は、さらにガラス物品G5の開口部をより精密に切断する精密切断工程やガラス物品G5を洗浄する洗浄工程等が行われた後、各種用途に用いられる。ガラス物品G5の用途としては、例えば、魔法ビンの内ビンガラス、照明器具や各種センサを構成するガラスシェル、理化学容器、及びテーブルウエアが挙げられる。
【0038】
次に、ガラス物品G5の製造方法における主な作用について説明する。
上述したガラス物品G5の製造方法において、切断工程では、ガラス成形体G3と係止部P2との接続部分の切断により発生するガラス粉G4を吹き飛ばす飛散用ガスノズル29を用いている。この方法によれば、ガラス物品G5の周囲に飛散するガラス粉G4を飛散用ガスノズル29から噴出するガスにより吹き飛ばすことができるため、ガラス物品G5内にガラス粉G4が入り込み難くなる。
【0039】
以上詳述した実施形態によれば、次のような作用効果が発揮される。
(1)ガラス物品G5の製造方法は、ブロー成形工程と切断工程とを備えている。ブロー成形工程は、パリソンPを支持部材20に支持させた状態でパリソンPにガスを送り込む工程である。パリソンPは、支持部材20に係止するとともに貫通孔H1を有する係止部P2を備えている。ブロー成形工程では、係止部P2と一体のガラス成形体G3を支持部材20の下方位置でブロー成形する。切断工程は、ガラス成形体G3と係止部P2との接続部分を切断することで中空部を有するガラス物品G5を得る工程である。この切断工程では、飛散用ガスノズル29からガスを噴射することによりガラス成形体G3と係止部P2との接続部分の切断により発生するガラス粉G4を吹き飛ばしている。
【0040】
この方法によれば、上述した作用が得られるため、中空部を有するガラス物品G5内に入り込むガラス粉G4を削減することが可能となる。このため、例えば、ガラス物品G5内を洗浄する洗浄工程を簡略化することが可能となる。
【0041】
(2)ガラス物品G5の製造方法における切断工程は、第1飛散用ガスノズル30から係止部P2の貫通孔H1に向けてガスを噴射した状態で切断を行う工程である。この場合、ガラス成形体G3の切断箇所で発生するガラス粉G4を速やかにガラス成形体G3から離間するように吹き飛ばすことができる。従って、中空部を有するガラス物品G5内に入り込むガラス粉G4をさらに削減することが可能となる。
【0042】
(3)ガラス物品G5の製造方法における切断工程は、第1飛散用ガスノズル30から係止部P2における貫通孔H1の内縁よりも中央側となる領域Cにガスを噴射し、係止部P2における貫通孔H1の内縁の全周からガスを噴出させた状態で切断を行う工程である。この場合、切断工程において浮遊するガラス粉G4を係止部P2から離間するように吹き飛ばすことができる。また、ガラス成形体G3の切断箇所からガスを噴出させることができるため、ガラス物品G5内にガラス粉G4がより入り込み難くなる。従って、中空部を有するガラス物品G5内に入り込むガラス粉G4をさらに削減することが可能となる。
【0043】
(4)ガラス物品G5の製造方法は、ブロー成形工程と切断工程との間に冷却工程をさらに備えている。冷却工程では、冷却用ガスノズル27から係止部P2の貫通孔H1内に向けてガスを噴射することでガラス成形体G3の内面を冷却している。この場合、切断工程に供されるガラス成形体G3の内面が冷却されるため、切断工程においてガラス成形体G3(ガラス物品G5)の内面にガラス粉G4が溶着することを抑えることができる。従って、ガラス物品G5の内面におけるガラス粉G4の溶着を要因とした不良の発生を抑えることで、ガラス物品G5の歩留まりを向上することが可能となる。
【0044】
(5)ガラス物品G5の製造方法における飛散用ガスノズル29は、係止部P2の貫通孔H1に向けてガスを噴射する第1飛散用ガスノズル30と、ガラス成形体G3の側方位置で下方に向けてガスを噴射する第2飛散用ガスノズル31とを備えている。ガラス物品G5の製造方法における切断工程は、第1飛散用ガスノズル30及び第2飛散用ガスノズル31からガスを噴射した状態で切断を行う工程である。
【0045】
この場合、切断工程で発生するガラス粉G4を第1飛散用ガスノズル30から噴射されるガスによって速やかにガラス成形体G3から離間するように吹き飛ばすことができる。また、浮遊するガラス粉G4を第2飛散用ガスノズル31から噴射されるガスによって下方に吹き飛ばすことができる。これにより、浮遊するガラス粉G4を速やかに降下させることができるため、浮遊するガラスがガラス成形体G3(ガラス物品G5)内に流入し難くなる。従って、中空部を有するガラス物品G5内に入り込むガラス粉G4をさらに削減することが可能となる。
【0046】
(6)ガラス物品G5の製造方法において、ガラス成形体G3が当接部材28に当接され、係止部P2とガラス成形体G3との接続部分が切断されると、ガラス粉G4は、ガラス成形体G3よりも当接部材28側、すなわちガラス成形体G3における搬送方向D1の下流側において浮遊し易い。上記実施形態のように第2飛散用ガスノズル31をガラス成形体G3の搬送方向D1の下流側に配置することにより、浮遊するガラス粉G4を速やかに降下させることができる。これにより、中空部を有するガラス物品G5内に入り込むガラス粉G4をさらに削減することが可能となる。
【0047】
(7)ガラス物品G5の製造装置11は、ブロー成形部23と切断部26とを備えている。ブロー成形部23は、パリソンPを支持部材20に支持させた状態でパリソンPにガスを送り込むように構成されている。パリソンPは、支持部材20に係止するとともに貫通孔H1を有する係止部P2を備えている。ブロー成形部23は、係止部P2と一体のガラス成形体G3を支持部材20の下方位置でブロー成形するように構成されている。切断部26は、ガラス成形体G3と係止部P2との接続部分を切断することで中空部を有するガラス物品G5を得るように構成されている。切断部26は、ガラス成形体G3と係止部P2との接続部分の切断により発生するガラス粉G4を吹き飛ばす飛散用ガスノズル29を備えている。この構成によれば、上記(1)欄で述べた作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0048】
(変更例)
上記実施形態を次のように変更してもよい。なお、以下では、ガラス物品G5の製造装置11における変更例を説明するが、ガラス物品G5の製造方法においても同様に変更することができる。
【0049】
図4に示すように、ガラス物品G5の製造装置11における第1飛散用ガスノズル30を係止部P2の貫通孔H1に向けずにガスを噴射するように設けることもできる。また、図示を省略するが、ガラス物品G5の製造装置11における第1飛散用ガスノズル30を係止部P2における貫通孔H1の内縁よりも中央側の領域Cではなく、例えば、係止部P2における貫通孔H1の全体を含む領域にガスを噴射するように第1飛散用ガスノズル30を変更することもできる。
【0050】
・ガラス物品G5の製造装置11において、第1飛散用ガスノズル30及び第2飛散用ガスノズル31のいずれか一方を省略してもよい。例えば、図5に示すように、ガラス物品G5の製造装置11における第1飛散用ガスノズル30を省略し、飛散用ガスノズル29として第2飛散用ガスノズル31のみを備えたガラス物品G5の製造装置11に変更してもよい。
【0051】
・ガラス物品G5の製造装置11において、冷却用ガスノズル27を備えた冷却部25を省略し、例えば、ブロー成形部23から切断部26までのガラス成形体G3の搬送時間(ブロー成形工程から切断工程までの時間)をより長く確保することで、ガラス成形体G3の内面の冷却を促進してもよい。但し、ガラス物品G5の生産効率を高めるためには、ブロー成形部23から切断部26までの搬送時間(ブロー成形工程から切断工程までの時間)を短縮することが好ましく、この場合においてガラス成形体G3の内面の冷却を促進するという観点から、上記冷却部25を設けることが好適である。
【0052】
・ガラス物品G5の製造装置11において、第1飛散用ガスノズル30の噴射口30aの形状、及び第2飛散用ガスノズル31の噴射口31aの形状は、特に限定されず、例えば、円形状等の形状に変更してもよい。冷却用ガスノズル27の噴射口の形状についても、適宜変更することができる。
【0053】
・ガラス物品G5の製造装置11において、第1飛散用ガスノズル30、第2飛散用ガスノズル31、及び冷却用ガスノズル27の数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。例えば、冷却用ノズルをガラス成形体G3の搬送方向D1に沿って複数設けることで、ガラス成形体G3の内面の冷却を多段階で行うこともできる。
【0054】
・ガラス物品G5の製造装置11は、回転テーブル21を備えたロータリー式の装置であるが、IS(Individual Section)機に変更することもできる。
・ガラス物品G5の製造装置11におけるパリソン成形部19は、プレスによりパリソンを成形するパリソン成形部に変更してもよい。
【0055】
・ガラス物品G5の製造装置11におけるブロー成形部23は、ブロー成形用金型24を用いずにガラス成形体G3をブロー成形するブロー成形部に変更することもできる。
・ガラス物品G5の製造装置11は、ディスクゴブ成形部12を備えているが、別途成形したディスクゴブを用いてガラス物品G5を製造する装置や、別途成形したパリソンからガラス物品G5を製造する装置に変更してもよい。
【符号の説明】
【0056】
11…ガラス物品の製造装置、20…支持部材、23…ブロー成形部、25…冷却部、26…切断部、27…冷却用ガスノズル、29…飛散用ガスノズル、30…第1飛散用ガスノズル、31…第2飛散用ガスノズル、P…パリソン、P2…係止部、H1…貫通孔、G3…ガラス成形体、G4…ガラス粉、G5…ガラス物品、C…領域。
図1
図2
図3
図4
図5