(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555091
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】ロボット搬送装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20190729BHJP
B65G 49/07 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B65G49/07 C
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-220290(P2015-220290)
(22)【出願日】2015年11月10日
(65)【公開番号】特開2017-92233(P2017-92233A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】重田 貴司
(72)【発明者】
【氏名】河合 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】竹内 晴紀
(72)【発明者】
【氏名】須田 佳雅
(72)【発明者】
【氏名】五味 久
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 成則
【審査官】
山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−062345(JP,A)
【文献】
特開2004−179519(JP,A)
【文献】
特開2001−095632(JP,A)
【文献】
特開2005−311260(JP,A)
【文献】
特開平11−334813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B65G 49/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ロボットが配置される搬送空間であって、前記搬送ロボットによる搬送物の搬送先となる複数の周辺空間が周辺に配置され、複数の開口を介して前記複数の周辺空間のそれぞれと連通する搬送空間と、
前記搬送空間内の気体を循環させるための複数の循環流路であって、前記複数の開口を含む前記搬送ロボットの作業領域を避けるように、前記搬送空間を挟む位置に設けられた複数の循環流路と、
を備え、
前記複数の循環流路は、前記搬送空間を形成する柱部材の内部に設けられたことを特徴とする、ロボット搬送装置。
【請求項2】
前記柱部材は、前記搬送空間を形成し且つ前記複数の開口が設けられた壁部材に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載のロボット搬送装置。
【請求項3】
所定の配列方向に沿って3以上の前記開口が配列しており、
前記複数の循環流路は、少なくとも、前記3以上の開口のうち前記配列方向に互いに隣接する2つの開口の間のそれぞれに設けられたことを特徴とする、請求項1又は2に記載のロボット搬送装置。
【請求項4】
前記搬送ロボットは、前記複数の開口の配列方向に移動可能であり、
前記搬送空間と前記複数の循環流路とを循環する気体の通過領域に設けられた、気体中の粉塵を除去するフィルタをさらに備えたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のロボット搬送装置。
【請求項5】
前記複数の循環流路は、前記配列方向と直交する直交方向に沿って、互いに平行に延在し、且つ、それぞれ、一端側の吸気口及び他端側の排気口を介して前記搬送空間と連通し、前記吸気口から吸引された前記搬送空間内の気体を前記排気口から前記搬送空間に戻すように構成されており、
前記複数の循環流路の前記排気口と前記搬送空間とを連通させる共通空間をさらに備え、
前記複数の循環流路の前記排気口から排出された気体が、前記直交方向における前記他端側から前記一端側に向かう方向に、前記共通空間を経由して前記搬送空間に戻されるように構成されたことを特徴とする、請求項4に記載のロボット搬送装置。
【請求項6】
前記共通空間は、前記搬送空間に対して前記直交方向と直交する面全体に延在することを特徴とする、請求項5に記載のロボット搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送空間に配置された搬送ロボットによって周辺空間に搬送物を搬送するロボット搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット搬送装置は、例えば、半導体ウェハや液晶ディスプレイパネル等の基板を処理する工程や、細胞の培養又は試験を行う工程に用いられる。当該工程では、搬送空間の環境(ガス濃度、温度、湿度等)を整える必要がある。この点、特許文献1(
図4参照)では、搬送空間(ウェーハ搬送室9)内の気体(不活性ガス)を循環させることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−146349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、搬送空間(ウェーハ搬送室9)の一方側に循環流路(ガス帰還路10)が設けられている。この場合、搬送空間内の気流に偏りが生じ、搬送空間全体の不活性ガスを循環させることができない。そのため、搬送空間内において温度や湿度のばらつきが生じ易く、搬送空間全体の環境を一様に整えるのは困難である。
【0005】
また、ロボット搬送装置においては、搬送空間全体の環境を一様に整えることの他、装置全体の小型化も求められている。
【0006】
本発明の目的は、搬送空間全体の気体を循環させて搬送空間全体の環境を一様に整えること、及び、装置全体の小型化を、共に実現可能なロボット搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の観点によると、搬送ロボットが配置される搬送空間であって、前記搬送ロボットによる搬送物の搬送先となる複数の周辺空間が周辺に配置され、複数の開口を介して前記複数の周辺空間のそれぞれと連通する搬送空間と、前記搬送空間内の気体を循環させるための複数の循環流路であって、前記複数の開口を含む前記搬送ロボットの作業領域を避けるように、前記搬送空間を挟む位置に設けられた複数の循環流路と、を備え、前記複数の循環流路は、前記搬送空間を形成する柱部材の内部に設けられたことを特徴とする、ロボット搬送装置が提供される。
【0008】
上記観点によれば、複数の循環流路が搬送空間を挟む位置に設けられていることから、搬送空間全体の気体を循環させて搬送空間全体の環境を一様に整えることが可能である。さらに、複数の循環流路を、搬送空間を形成する柱部材の内部に設けたことで、ロボット搬送装置全体の小型化を実現することができる。つまり、上記観点によれば、搬送空間全体の気体を循環させて搬送空間全体の環境を一様に整えること、及び、装置全体の小型化を、共に実現可能である。
【0009】
前記柱部材は、前記搬送空間を形成し且つ前記複数の開口が設けられた壁部材に接続されてよい。当該構成によれば、ロボット搬送装置の強度向上を実現することができる。
【0010】
所定の配列方向に沿って3以上の前記開口が配列しており、前記複数の循環流路は、少なくとも、前記3以上の開口のうち前記配列方向に互いに隣接する2つの開口の間のそれぞれに設けられてよい。当該構成によれば、循環流路を効率よく分散配置し、搬送空間全体の環境を整えることができる。
【0011】
前記搬送ロボットは、前記複数の開口の配列方向に移動可能であり、本発明に係るロボット搬送装置は、前記搬送空間と前記複数の循環流路とを循環する気体の通過領域に設けられた、気体中の粉塵を除去するフィルタをさらに備えてよい。当該構成によれば、搬送ロボットの移動に伴い粉塵が発生し得るが、フィルタによって粉塵を除去し、搬送空間をクリーンに保つことができる。
【0012】
前記複数の循環流路は、前記配列方向と直交する直交方向に沿って、互いに平行に延在し、且つ、それぞれ、一端側の吸気口及び他端側の排気口を介して前記搬送空間と連通し、前記吸気口から吸引された前記搬送空間内の気体を前記排気口から前記搬送空間に戻すように構成されており、本発明に係るロボット搬送装置は、前記複数の循環流路の前記排気口と前記搬送空間とを連通させる共通空間をさらに備え、前記複数の循環流路の前記排気口から排出された気体が、前記直交方向における前記他端側から前記一端側に向かう方向に、前記共通空間を経由して前記搬送空間に戻されるように構成されてよい。当該構成によれば、搬送ロボットの移動に伴い発生する粉塵をより効率よく回収し、搬送空間をよりクリーンに保つことができる。
【0013】
前記共通空間は、前記搬送空間に対して前記直交方向と直交する面全体に延在してよい。当該構成によれば、搬送空間全体に気体を行き渡らせることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の循環流路が搬送空間を挟む位置に設けられていることから、搬送空間全体の気体を循環させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るロボット搬送装置の水平方向に沿った断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るロボット搬送装置の
図1のII−II線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係るロボット搬送装置1は、半導体ウェハを処理する工程に用いられるものであり、
図1に示すように、搬送ロボット20が配置される搬送空間10を有する。搬送空間10は、柱部材10P1〜10P10と壁部材10W1〜10W4とで構成されるフレーム10Fによって形成されている。
【0017】
各柱部材10P1〜10P10の内部に、搬送空間10内の気体(空気、不活性ガス、滅菌ガス等)を循環させるための循環流路30が設けられている。各循環流路30は、鉛直方向(直交方向)に沿って延在している。
【0018】
壁部材10W1〜10W4のうち互いに対向する壁部材10W1,10W2には、それぞれ4つ及び2つの開口15が設けられている。各壁部材10W1,10W2において、複数の開口15は
図1に示す配列方向に沿って配列している。
【0019】
柱部材10P1〜10P5は壁部材10W1に接続されており、柱部材10P6〜10P10は壁部材10W2に接続されている。複数の循環流路30は、少なくとも、配列方向に互いに隣接する2つの開口15の間のそれぞれに設けられている。
【0020】
搬送空間10の周辺には、搬送ロボット20による搬送物(本実施形態では、半導体ウェハ)の搬送先となる複数の周辺空間(例えばロードポート装置やロードロック室等)50が配置されている。本実施形態では、壁部材10W1,10W2に対してそれぞれ4つ及び2つの周辺空間50が対向するように配置されている。搬送空間10は、複数の開口15を介して、複数の周辺空間50のそれぞれと連通可能となっている。各開口15には開閉可能なドア(図示略)が設けられており、各ドアの開閉によって開口15を介した搬送空間10と周辺空間50との連通及び連通遮断が切り換えられる。
【0021】
搬送ロボット20は、開口15の配列方向に移動可能である。搬送ロボット20の作業領域20Rは、搬送空間10内の略全領域と、各開口15と、各周辺空間50の一部とを含む。複数の循環流路30は、作業領域20Rを避けるように、搬送空間10を挟む位置に設けられている。
【0022】
複数の循環流路30は、
図2に示すように、鉛直方向に沿って互いに平行に延在している。各循環流路30は、一端側(下方)の吸気口31及び他端側(上方)の排気口32を介して、搬送空間10と連通している。吸気口31及び排気口32は、それぞれ、各柱部材10P1〜10P10の下端部分及び上端部分に形成された開口である。各循環流路30は、吸気口31から吸引された搬送空間10内の気体を排気口32から搬送空間10に戻すように構成されている。
【0023】
ロボット搬送装置1は、複数の循環流路30の排気口32と搬送空間10とを連通させる共通空間40をさらに有する。共通空間40は、搬送空間10の上方(ロボット搬送装置1の天井部分)に設けられており、搬送空間10に対して水平面(直交方向と直交する面)全体に延在している。複数の循環流路30の排気口32から排出された気体は、鉛直方向における他端側(上方)から一端側(下方)に向かう方向に、共通空間40を経由して搬送空間10に戻される。
【0024】
ロボット搬送装置1は、搬送空間10と複数の循環流路30とを循環する気体の通過領域に設けられた、気体中の粉塵を除去するフィルタ41をさらに有する。本実施形態において、フィルタ41は、搬送空間10と共通空間40との間において水平面に沿って延在している。
【0025】
上述のような循環気流が形成されるよう、共通空間40や、搬送空間10における吸気口31の近傍に、複数のファン42が設けられている。
【0026】
以上に述べたように、本実施形態によれば、複数の循環流路30が搬送空間10を挟む位置に設けられている。したがって、搬送空間10全体の気体を循環させて搬送空間10全体の環境を一様に整えることが可能である。さらに、複数の循環流路30を、搬送空間10を形成する柱部材10P1〜10P10の内部に設けている。これにより、ロボット搬送装置1全体の小型化を実現することができる。つまり、上記観点によれば、搬送空間10全体の気体を循環させて搬送空間10全体の環境を一様に整えること、及び、ロボット搬送装置1全体の小型化を、共に実現可能である。
【0027】
柱部材10P1〜10P10は、搬送空間10を形成し且つ複数の開口15が設けられた壁部材10W1,10W2に接続されている。当該構成によれば、ロボット搬送装置1の強度向上を実現することができる。
【0028】
複数の循環流路30は、少なくとも、配列方向に互いに隣接する2つの開口15の間のそれぞれに設けられている。当該構成によれば、循環流路30を効率よく分散配置し、搬送空間10全体の環境を整えることができる。
【0029】
ロボット搬送装置1は、搬送空間10と複数の循環流路30とを循環する気体の通過領域に設けられた、気体中の粉塵を除去するフィルタ41をさらに備えている。当該構成によれば、搬送ロボット20の移動に伴い粉塵が発生し得るが、フィルタ41によって粉塵を除去し、搬送空間10をクリーンに保つことができる。
【0030】
複数の循環流路30は、鉛直方向(直交方向)に沿って互いに平行に延在し、且つ、それぞれ、一端側の吸気口31及び他端側の排気口32を介して搬送空間10と連通し、吸気口31から吸引された搬送空間10内の気体を排気口32から搬送空間10に戻すように構成されている。また、ロボット搬送装置1は、複数の循環流路30の排気口32と搬送空間10とを連通させる共通空間40をさらに備え、複数の循環流路30の排気口32から排出された気体が、鉛直方向における他端側(上方)から一端側(下方)に向かう方向に、共通空間40を経由して搬送空間10に戻されるように構成されている。当該構成によれば、搬送ロボット20の移動に伴い発生する粉塵をより効率よく回収し、搬送空間10をよりクリーンに保つことができる。
【0031】
共通空間40は、搬送空間10に対して水平面(直交方向と直交する面)全体に延在している。当該構成によれば、搬送空間10全体に気体を行き渡らせることができる。
【0032】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、例えば以下のように、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0033】
・本発明に係るロボット搬送装置は、半導体ウェハを処理する工程に用いられることに限定されず、液晶ディスプレイパネルを処理する工程、細胞の培養又は試験を行う工程、その他任意の工程に用いられてよい。
・搬送物は、ロボット搬送装置が適用される工程に応じて適宜変更可能である(例えば、液晶ディスプレイパネルを処理する工程にロボット搬送装置が適用される場合、液晶ディスプレイパネルが搬送物となる)。
・循環流路を介して搬送空間にクリーンエアやガス等を供給し、当該ガスを含む気体を搬送空間全体に循環させてもよい。
・循環流路は、鉛直方向に延在することに限定されず、例えば水平方向に延在してもよい。また、複数の循環流路の延在方向は、互いに平行であることに限定されず、互いに交差してもよい(例えば、鉛直方向に延在する循環流路と、水平方向に延在する循環流路とが設けられてもよい)。また、循環流路は、真っ直ぐな形状であることに限定されず、湾曲した形状であってもよい。
・ファンの位置や数は、搬送空間と複数の循環流路とを循環する気流を形成できる限り、特に限定されない。
・搬送空間と複数の循環流路とを循環する気体の通過領域に、温湿度制御装置(湿度を低下させるドライヤ、温度を低下させるクーラ、半導体ウェハの除電を行うイオナイザ等)を設けてもよい。これにより、搬送空間全体の温度を一定に保つことができる。
・複数の周辺空間は、搬送空間の周辺の任意の位置に配置されてよい。例えば、複数の周辺空間は、搬送空間の周囲全体に亘って配置されてもよい(上述の実施形態において、壁部材10W3,10W4に対向する周辺空間がさらに設けられてもよい)。或いは、複数の周辺空間は、搬送空間の一方側(上述の実施形態において、壁部材10W1又は壁部材10W2)のみに設けられてもよい。
・複数の周辺空間は、互いに異なる構成であってもよいし、互いに同じ構成であってもよい。
・開口にドアを設けなくてもよい。
・開口の配列方向は、水平方向に限定されず、例えば鉛直方向であってもよい。
・搬送ロボットの移動方向は、水平方向に限定されず、例えば鉛直方向であってもよい。
・複数の開口が鉛直方向に配列し且つ搬送ロボットが鉛直方向に移動可能である場合に、水平方向の循環気流を生じさせてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 ロボット搬送装置
10 搬送空間
10P1〜10P10 柱部材
10W1〜10W4 壁部材
15 開口
20 搬送ロボット
20R 搬送ロボットの作業領域
30 循環流路
31 吸気口
32 排気口
40 共通空間
41 フィルタ
42 ファン
50 周辺空間