(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
<伸張シート>
本発明の伸張シートは、平坦な基材に複数の切り込みが形成されることにより構成されており、その複数の切り込みによって、二次元的に配置された複数の迂回路と複数の分岐部が形成されている。
【0011】
基材は平坦であれば、特にその材質を問わないが、切り込みの幅を容易に拡張できるように可撓性を備えることが好ましい。
なお、平坦とは、マクロ的な意味で平坦であることを意味し、例えば、基材の表面に細かい凹凸が付されていたり、表面が粗面化されていたりすることは差し支えない。
【0012】
基材は、本発明の効果を享受する利益が大きいことから、非伸縮性であることが好ましい。伸縮性の素材であれば、特に切り込みを設けることなく、任意に伸張できるからである。また、伸縮性の素材の場合、素材に加わる力により無制限に延びてしまう傾向があるが、非伸縮性の基材であれば、最短経路の長さによって伸張の程度が制限される。そのため、非伸縮性の基材の場合、伸張の程度をコントロールしやすい。
基材には、例えば、紙、合成紙、プラスチックフィルム、織布、不織布、金属薄膜等が使用できる。具体的な基材の材質、厚み、強度等は、その用途に応じて適宜選択すればよい。
【0013】
切り込みは直線状でも曲線状でもよい。また、1つの切り込みは、他の切り込みと交差してもよく、他の切り込みの途中に合流していてもよい。
二次元的に配置された複数の迂回路と複数の分岐部を、以下に説明する条件を満たすように形成できる限り、種々の切り込みのパターンが採用できる。
切り込みは、その幅を無視できる程度の線状の切り込みに限定されず、紡錘状、楕円状三日月状、矩形状、円などであってもよい。ただし、伸張させた際の基材破壊を防ぐ観点から、切り込みの幅は無視できる程度に小さいことが好ましく、例えば、矩形状の切り込みは好ましくない。また、伸張させた際の基材破壊を防ぐ観点から、切り込みの終端には、円形又は楕円形の終端部を設けてもよい。また、切り込みにおける終端部に繋がる部分を、終端部に向けて広がるテーパー状とし、当該テーパー部と終端部とが、全体として液摘状の形状となるようにしてもよい。
【0014】
図26に、切り込みCの終端に終端部Cxを設けた例を示す。終端部Cxの直径r(楕円の場合は短径、以下同じ)は、終端部Cx以外の切り込みCの幅よりも大きいことが好ましい。直径が大きい程、伸張させた際の終端部Cxを起点とする基材破壊を防ぐ効果が大きい。但し、大きすぎると、終端部Cxと他の切り込みCとの距離d(例えば
図26における距離d1〜d3)が近くなりすぎ、当該部分の迂回路の強度が低下するので好ましくない。
基材の厚みや強度にもよるが、例えば厚み0.13mm程度の不織布からなる基材の場合、終端部Cxの直径rは、0.2〜3mmが好ましく、0.5〜2mmがより好ましく、0.8〜1.5mmがさらに好ましい。また、距離dは、1.4mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、2.5mm以上がさらに好ましい。
【0015】
本発明における迂回路とは、切り込みで切断されることなく連続する領域によって形成された第1の端部と第2の端部を持つ道である。各々の迂回路を経由して各々の第1の端部から第2の端部に至る最短経路の長さは、該第1の端部と第2の端部間の直線距離よりも長い。なお、本発明において直線距離とは、切り込みの幅を拡張していない、当初の平坦な基材面における直線距離を意味する。
【0016】
各迂回路と隣接する迂回路との間は、前記切り込みにより切断されている。そのため、当該切り込みの幅を拡張することにより、隣接する迂回路の間が離間可能とされている。なお、もともと無視できない幅のある切り込みの場合、隣接する迂回路の間が離間するとは、隣接する迂回路の間が当初の切り込みの幅よりも大きくなることを意味する。
【0017】
各迂回路の第1の端部と第2の端部には、原則として分岐部が存在する。本発明における分岐部とは、2以上の迂回路の第1または第2の端部が合流する部分である。
分岐部はある程度の面積を有する領域であるが、便宜上、面積を無視できる点として捉えてもよい。切り込みは、分岐部の内部にも形成されていてもよい。
【0018】
分岐部Pxと分岐部Pyとが1つの迂回路Rxにより連結され、さらに分岐部Pyと分岐部Pzとが別の迂回路Ryにより連結されている場合、分岐部Pyが、迂回路Rxと迂回路Ryの端部が合流する部分である。
一つの分岐部で合流する迂回路の端部の数は2以上であれば特に限定はないが、切り込みの設けやすさ等の観点から、8以下であることが好ましく6以下であることがより好ましい。
【0019】
前述の分岐部Pxと分岐部Pyとは、1つの迂回路Rxにより連結されている。その場合、これら一対の分岐部は、迂回路により直接連結されているという。前述の分岐部Pxと分岐部Pzとは、迂回路Rxと迂回路Ryにより連結されているが、その場合、これら一対の分岐部は、間接的に連結されているのであって、直接連結されているとは言わない。なお、以下の説明において、単に「連結」といった場合には、特に断りのない限り、直接の連結を意味する。
【0020】
後述の枠部が存在する態様では、その枠部に近い部分において、第1の端部に分岐部が存在し第2の端部に枠部が存在するような迂回路もある。この場合、分岐部と枠部が連結されているという。
また、後述の枠部が存在しない態様においては、その周縁部分において、第1の端部に分岐部が存在し、第2の端部は伸張シートの周縁に至るような迂回路もある。
【0021】
迂回路により連結されている分岐部間の迂回路を経由する最短経路の長さ(以下、「最短距離」という場合がある。)は、分岐部間の直線距離(本発明において、切り込みの幅を拡張していない、当初の平坦な基材面における直線距離を意味する。)よりも長い。すなわち、基材における迂回路によって連結されている分岐部間には、その間を直線で結ぶ経路(以下、「直線経路」という場合がある。)を少なくとも1箇所以上で切断するように切り込みが設けられている。
【0022】
直線経路を切断する切り込みの幅が拡張されることにより、その直線形路の両端の分岐部間の距離(以下、切り込みの幅が拡張されることにより大きくなった分岐部間の距離を「伸張距離」という場合がある。)が大きくなる。伸張距離が、最短距離を超えることはない。
基材の厚みを無視すれば、最短距離が伸張距離の最大値となる。その場合、各分岐部間の最大の伸び率(最大の伸張距離/直線距離)は、最短距離/直線距離となる。
【0023】
各分岐部は、原則として以下の条件αを満たす。周縁に近い部分では、迂回路によって他の2つの分岐部としか連結されておらず、下記条件αを満たさない分岐部も存在する。
条件αを満たす分岐部が連結する分岐部の数は、3以上であれば特に限定はないが、切り込みの設けやすさ等の観点から、8以下であることが好ましく6以下であることがより好ましい。
(条件α)
当該1つの分岐部に対して前記迂回路により直接連結されている分岐部が3つ以上存在する。
【0024】
複数の分岐部は、条件αを満たす分岐部同士を直接連結する迂回路で結んでいくと、網が形成されるように配置されている。網を形成するためには、条件αを満たす分岐部同士を連結する迂回路で結んだとき、網の目となる環を形成することが必要である。環を形成するためには、3つ以上の分岐部が必要である。
1つの網の目を形成する分岐部の数は、3以上であれば特に限定はないが、切り込みの設けやすさ等の観点から、10以下であることが好ましく8以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましい。
1つの網の目を形成する分岐部の各々が条件αを満たすことにより、網の目が二次元的に広がった網を形成することができる。
【0025】
本発明の伸張シートは伸張可能な網として機能する。ゴムひもで形成された網に例えれば、迂回路がゴムひもにあたり、分岐部がゴムひもの交点にあたる。1つの分岐部は、迂回路により連結されている3つ以上の分岐部により支持されているので、その位置が安定している。
各分岐部間の伸張の程度は、各迂回路に加えられる応力に応じて、各迂回路を画する各切り込みの幅の拡張の程度が変化することにより調整される。
【0026】
1つの分岐部の位置は、当初の基材における位置から、3次元の任意の方向に変化させることが可能である。その際、迂回路で連結されている他の分岐部の位置と共に変化させることもできるし、連結されている他の分岐部の位置を変化させることなくその1つの分岐部の位置のみを変化させることもできる。
また、1つの分岐部の位置を固定したまま、その分岐部に迂回路で連結されている他の分岐部の位置を、個別に調整することもできる。
【0027】
本発明の伸張シートは、さらに、枠部を有していてもよい。その場合、複数の迂回路と分岐部の全体が、前記枠部の内側に配置されている。枠部には、枠部の周縁の形状を保持可能な範囲で、また、新たな迂回路や分岐部を形成しない範囲で切り込みが形成されていてもよい。枠部の周縁の形状に特に限定はなく、矩形、矩形以外の多角形、円形、楕円形等とすることができる。
本発明の伸張シートは、枠部を変形させることなく、枠部の内側を、枠部の存在する平面から離れるように伸張させることができる。そのため、本発明の収納容器を構成する基板のように、全体の形状と面積を一定させておきたい用途に使用しやすい。
【0028】
本発明の伸張シートは、枠部を有していなくてもよい。その場合、複数の切り込みの幅を拡張することにより、平面視における伸張シート全体の形状を変形させたり、周縁で囲まれる面積を拡張したりすることも含めて、三次元的に変形させることができる。そのため、後述の包装材のような用途に適用できる。
【0029】
本発明の伸張シートの製造方法に特に限定はないが、基材を所定のパターンで打ち抜き加工することが好ましい。打ち抜きの装置としては、平板型の打ち抜き装置の他、ローラー型の打ち抜き装置を用いてもよい。
また、基材をレーザー加工することにより、製造してもよい。
【0030】
以下、各実施形態に基づき、本発明の伸張シートについて詳述する。なお、以下の説明においては、便宜上、図示に基づいて上下、左右、縦横、斜め等の説明を行う場合があるが、伸張シートの切り込みパターン全体の方向に特に限定はなく、例えば、図示上の上下を左右に、左右を上下としてもよいし、図示上の位置から、45°回転させた切り込みパターンとしてもよい。
なお、第1実施形態、第5実施形態、第6実施形態は、参考実施形態である。
【0031】
[第1実施形態の伸張シート]
図1は、本発明の第1実施形態に係る伸張シート1Aである。伸張シート1Aは、平坦な基材1aに切り込みCが複数形成されている。また、切り込みCによって、二次元的に配置された複数の迂回路Rと分岐部Pが形成されている。また、基材1aの周縁部は、枠部Fとされ、当該枠部の内側に切り込みCが形成されている。
【0032】
なお、迂回路Rの内、迂回路Rαは第1の端部と第2の端部の双方に分岐部Pが存在する。迂回路Rβは第1の端部と第2の端部の一方に分岐部Pが存在するが、他方は枠部Fである。また、分岐部Pの内、分岐部Pαは条件αを満たす。一方、分岐部Pβ1と分岐部Pβ2は条件αを満たさない。分岐部Pβ1に対して迂回路Rにより直接連結されている分岐部は1つのみである。分岐部Pβ2に対して迂回路Rにより直接連結されている分岐部は2つである。
【0033】
図2は、本発明の第1実施形態の変形例に係る伸張シート1Bである。伸張シート1Bは、平坦な基材1bに切り込みCが複数形成されている。伸張シート1Bには枠部がなく、切り込みCは、基材1bの周縁部まで含めた全体に形成されている。また、切り込みCによって、二次元的に配置された複数の迂回路Rと分岐部Pが形成されている。
【0034】
なお、迂回路Rの内、迂回路Rαは第1の端部と第2の端部の双方に分岐部Pが存在する。迂回路Rβは第1の端部と第2の端部の一方に分岐部Pが存在するが、他方は伸張シート1Bの周縁に至っている。また、分岐部Pの内、分岐部Pαは条件αを満たす。一方、分岐部Pβは条件αを満たさない。分岐部Pβ1に対して迂回路Rにより直接連結されている分岐部は1つのみである。分岐部Pβ2に対して迂回路Rにより直接連結されている分岐部は2つである。
【0035】
図3は、伸張シート1Aと伸張シート1Bの一部拡大図である。
図3に基づき、第1実施形態における切り込みCと、切り込みCによって形成されている迂回路Rと分岐部Pについて詳述する。
本実施形態では、風車状の切り込みパターンが多数組み合わされて、全体の切り込みパターンが構成されている。各風車状の切り込みパターンは、6つの切り込みCが単一の連結点を基端として60°間隔で放射状に形成され、各切り込みの先端が時計方向に60°の角度で折れ曲がった構成である。
【0036】
図3には、連結点C11xを基端とする風車状の切り込みパターンと、連結点C12xを基端とする風車状の切り込みパターンと、連結点C13xを基端とする風車状の切り込みパターンと、その周囲の他の切り込みを示した。
連結点C11xを基端とする風車状の切り込みパターンは、切り込みC11a〜C11fの6つの切り込みCから構成されている。連結点C12xを基端とする風車状の切り込みパターンは、切り込みC12a〜C12fの6つの切り込みCから構成されている。連結点C13xを基端とする風車状の切り込みパターンは、切り込みC13a〜C13fの6つの切り込みCから構成されている。
【0037】
図3に示すように、各風車状の切り込みパターンは、各風車状の切り込みパターンにおける1つの切り込みが、他の風車状の切り込みパターンにおける一対の切り込みの間に挿入されるように配置されている。例えば、切り込みC11aと切り込みC11fの間には切り込みC12dが挿入され、切り込みC11aと切り込みC11bの間には切り込みC13eが挿入されている。
【0038】
また、3つの各風車状の切り込みパターンは、各風車状の切り込みパターンにおける1つの切り込みの折れ曲がった先端側が、正三角形の各辺に沿うように、互いに離間して形成されている。例えば、切り込みC11a、C12c、C13eの各々の折れ曲がった先端側が正三角形の各辺に沿うように互いに離間して形成されている。
【0039】
そして、このような3つの切り込みCで断続的に囲まれた正三角形の内側が本実施形態の分岐部Pとなっている。
図3には、正三角形の内側に形成された分岐部Pとして、正三角形の重心に位置する点状の分岐部Pを示した。具体的には、切り込みC11a、C12c、C13eの各々の折れ曲がった先端側で断続的に囲まれた正三角形の重心に位置する分岐部Pとして分岐部P10を示した。また、分岐部P10を取り囲む位置に形成された分岐部P11〜P13と、分岐部P11〜P13のさらに外側に形成された分岐部P14a〜P14iを示した。
本実施形態の分岐部Pは、1つの分岐部Pの周囲を他の3つの分岐部Pが、等方的かつ等距離で囲むような関係で二次元的に配置されている。
【0040】
なお、本実施形態の分岐部Pは、前記正三角形内側の、ある程度面積のある領域として捉えてもよい。例えば、分岐部P14e’のように、前記正三角形の重心を中心とする円状の分岐部Pとして捉えてもよい。また、分岐部P14f’のように、前記正三角形の重心を中心とする正三角形状の分岐部Pとして捉えてもよい。
【0041】
各分岐部P間は、切り込みによって形成された迂回路Rにより連結されている。例えば、切り込みC11aと切り込みC13eとで挟まれた領域、切り込みC13eと切り込みC11bとで挟まれた領域、及び切り込みC11bと切り込みC13dとで挟まれた領域が、分岐部P10と分岐部P11との間を連結する迂回路R11となっている。
分岐部P10と分岐部P11との間の直線経路は、切り込みC13eと切り込みC11bにより切断されているので、迂回路R11を経由する最短経路S11は、切り込みC13eの先端と切り込みC11bの先端を経由する経路となっている。
【0042】
同様に、切り込みC12cと切り込みC11aとで挟まれた領域、切り込C11aと切り込みC12dとで挟まれた領域、及び切り込みC12dと切り込みC11fとで挟まれた領域が、分岐部P10と分岐部P12との間を連結する迂回路R12となっている。
また、迂回路R12を経由する最短経路S12は、切り込みC11aの先端と切り込みC12dの先端を経由する経路となっている。
【0043】
同様に、切り込みC13eと切り込みC12cとで挟まれた領域、切り込C12cと切り込みC13fとで挟まれた領域、及び切り込みC13fと切り込みC12bとで挟まれた領域が、分岐部P10と分岐部P13との間を連結する迂回路R13となっている。
また、迂回路R13を経由する最短経路S13は、切り込みC12cの先端と切り込みC13fの先端を経由する経路となっている。
【0044】
迂回路R11と迂回路R12との間は、切り込みC11aにより切断されて離間可能となっている。迂回路R12と迂回路R13との間は、切り込みC12cにより切断されて離間可能となっている。迂回路R13と迂回路R11との間は、切り込みC13eにより切断されて離間可能となっている。同様に、他の隣接する迂回路Rの間も切り込みCにより切断されて離間可能となっている。
分岐部P10に対して迂回路により直接連結されている分岐部は、分岐部P11〜P13の3つであり、条件αを満たしている。
図3における他の分岐部Pも条件αを満たしている。
【0045】
これらの分岐部同士を直接連結する迂回路で結んでいくと、六角形状の環を形成することができる。具体的には、分岐部P10、分岐部P13、分岐部P14a、分岐部P14b、分岐部P14c、及び分岐部P12からなる環が形成できる。また、分岐部P10、分岐部P11、分岐部P14g、分岐部P14f、分岐部P14e、及び分岐部P12からなる環が形成できる。この二つの環は、分岐部P10と分岐部P12との間で重なり連結されている。
同様に、次々と連結される環、すなわち、網の目を形成することができる。全体としては、各六角形状の環を網の目とする網を形成するように分岐部Pが配置されている。
そのため、本実施形態の伸張シートは、伸張可能な網として機能させることができる。
【0046】
[第2実施形態の伸張シート]
図4は、本発明の第2実施形態に係る伸張シート2である。伸張シート2は、平坦な基材2aに切り込みCが複数形成されている。また、切り込みCによって、二次元的に配置された複数の迂回路Rと分岐部Pが形成されている。また、基材2aの周縁部は、枠部Fとされ、当該枠部の内側に切り込みCが形成されている。なお、第2実施形態は、枠部Fのない態様に変更してもよい。
【0047】
図5は、伸張シート2の一部拡大図である。
図5に基づき、第2実施形態における切り込みCと、切り込みCによって形成されている迂回路Rと分岐部Pについて説明する。
本実施形態では、同一の重心を持つ相似形の5つの正三角形を描くように、破線からなる多重三角形状の切り込みパターンが構成され、この多重三角形状の切り込みパターンが多数組み合わされて、全体の切り込みパターンが構成されている。
【0048】
図5には、切り込みC20a〜C20eからなる多重三角形状の切り込みパターンと、切り込みC22a〜C22eからなる多重三角形状の切り込みパターンの一部と、切り込みC23a〜C23eからなる多重三角形状の切り込みパターンの一部と、その周囲の他の切り込みを示した。
【0049】
図5に示すように、切り込みC20a〜C20eからなる多重三角形状の切り込みパターンの内、切り込みC20eが描く最も外側の三角形の頂点が、切り込みC22a〜C22eからなる多重三角形状の切り込みパターンの重心に位置するようになっている。複数の多重三角形状の切り込みパターンが、その重心が他の多重三角形状の切り込みパターンの最も外側の三角形の頂点となるように、互いに重なり合っている。
【0050】
そして、このような多重三角形状の切り込みパターンの重心が、本実施形態の分岐部Pとなっている。
図5には、切り込みC20a〜C20eからなる多重三角形状の切り込みパターンの重心に位置する分岐部P20を示した。また、この分岐部P20を取り囲む位置に形成された分岐部P21〜P26を示した。
本実施形態の分岐部Pは、1つの分岐部Pの周囲を他の6つの分岐部Pが、等方的かつ等距離で囲むような関係で二次元的に配置されている。
なお、本実施形態の分岐部Pも、多重三角形状の切り込みパターンの重心近傍における切り込みを含まない範囲を分岐部Pと扱ってもよい。例えば、多重三角形状の切り込みパターンの重心を中心とする円状の分岐部P(図示は省略)として捉えてもよい。
【0051】
各分岐部P間は、切り込みCによって形成された迂回路Rにより連結されている。多重三角形状の切り込みパターンを構成する相似形の各三角形の間が迂回路Rとなっている。また、各三角形を構成する破線状の切り込みの破断位置は、互い違いとされており、これにより、各三角形の間の迂回路Rがつながるようになっている。
【0052】
ある多重三角形状の切り込みパターンの重心に位置する分岐部Pとその多重三角形状の切り込みパターンの最も外側の三角形の頂点に位置する分岐部Pとの間の直線経路は、当該多重三角形状の切り込みパターンにより切断されている。
そのため、この二つの分岐部P間の迂回路Rを経由する最短経路は、当該多重三角形状の切り込みパターンの破断位置を縫うような経路となっている。
【0053】
例えば、分岐部P20と分岐部P22との間の直線経路は、切り込みC20b、C20dにより切断されている。そのため、分岐部P20と分岐部P22との間の、迂回路Rを経由する最短経路S22aとS22bは、切り込みC20a〜C20eの各々の破断した先端を経由する経路となっている。
同様に、分岐部P20と分岐部P24との間の迂回路Rを経由する最短経路S24aとS24b、並びに、分岐部P20と分岐部P26との間の迂回路Rを経由する最短経路S26aとS26bも、切り込みC20a〜C20eの各々の破断した先端を経由する経路となっている。
【0054】
一方、分岐部P20と分岐部P23との間の直線経路は、分岐部P23の位置を重心とする多重三角形状の切り込みパターンである破線状の切り込みC23b、C23dにより切断されているので、分岐部P20と分岐部P23との間の、迂回路Rを経由する最短経路S23aとS23bは、切り込みC23a〜C23eの各々の破断した先端を経由する経路となっている。
同様に、分岐部P20と分岐部P21との間の迂回路Rを経由する最短経路S21aとS21b、並びに、分岐部P20と分岐部P25との間の迂回路Rを経由する最短経路S25aとS25bも、分岐部P21と分岐部P25の各々の位置を重心とする多重三角形状の切り込みパターンで切断され、これらの切り込みCの各々の破断した先端を経由する経路となっている。
【0055】
最短経路S22bが経由する迂回路Rと、最短経路S23aが経由する迂回路Rとの間は、切り込みC23eにより切断されて離間可能となっている。最短経路S23bが経由する迂回路Rと、最短経路S24aが経由する迂回路Rとの間も、切り込みC23eにより切断されて離間可能となっている。同様に、他の隣接する迂回路Rの間も切り込みCにより切断されて離間可能となっている。
分岐部P20に対して迂回路により直接連結されている分岐部は、分岐部P21〜P26の6つであり、条件αを満たしている。
図5における他の分岐部Pも条件αを満たしている。
【0056】
これらの分岐部同士を直接連結する迂回路で結んでいくと、三角形状の環を形成することができる。具体的には、分岐部P20、分岐部P21、及び分岐部P26からなる環が形成できる。また、分岐部P20、分岐部P21、及び分岐部P22からなる環が形成できる。この二つの環は、分岐部P20と分岐部P22との間で重なり連結されている。
同様に、次々と連結される環、すなわち、網の目を形成することができる。全体としては、各三角形状の環を網の目とする網を形成するように分岐部Pが配置されている。
そのため、本実施形態の伸張シートは、伸張可能な網として機能させることができる。
【0057】
[第3実施形態の伸張シート]
図6は、本発明の第3実施形態に係る伸張シート3である。伸張シート3は、平坦な基材3aに切り込みCが複数形成されている。また、切り込みCによって、二次元的に配置された複数の迂回路Rと分岐部Pが形成されている。また、基材3aの周縁部は、枠部Fとされ、当該枠部の内側に切り込みCが形成されている。なお、第3実施形態は、枠部Fのない態様に変更してもよい。
【0058】
図7は、伸張シート3の一部拡大図である。
図7に基づき、第3実施形態における切り込みCと、切り込みCによって形成されている迂回路Rと分岐部Pについて説明する。
本実施形態では、破線からなる斜め格子状の切り込みパターンと、破線からなる縦横格子状の切り込みパターンと、縦横格子状の切り込みパターンの各格子と同一の重心を持つ相似形の3つの正方形を描くように、破線からなる多重四角形状の切り込みパターンが構成され、これらが組み合わされて、全体の切り込みパターンが構成されている。
【0059】
図7に示すように、斜め格子状の切り込みパターンは、平行かつ等間隔で形成された右下がりの複数の切り込みC31aと、平行かつ等間隔で形成された右上がりの複数の切り込みC31bとで構成されている。切り込みC31aと切り込みC31bとは、各々の破断箇所と破断箇所の中点において、90°の角度で交差している。
【0060】
縦横格子状の切り込みパターンは、平行かつ等間隔で形成された横方向の複数の切り込みC32aと、平行かつ等間隔で形成された縦方向の複数の切り込みC32bとで構成されている。切り込みC31aと切り込みC31bとは、各々斜め格子状の切り込みパターンと45°の角度で交差する方向に形成されている。また、切り込みC31aと切り込みC31bの破断位置は、斜め格子状の切り込みパターンの交差箇所を挟む位置とされている。
【0061】
多重四角形状の切り込みパターンは、縦横格子状の切り込みパターンの各格子に近い大きさのものから順に、切り込みC33a、切り込みC33b、切り込みC33cが形成されている。いずれも破線からなり、各格子と同じ重心をもつ正方形を描くように形成されている。
【0062】
そして、このような多重四角形状の切り込みパターンの重心であり、かつ縦横格子状の切り込みパターンの破断箇所である位置が、本実施形態の分岐部Pとなっている。
図7には、図示中央の多重四角形状の切り込みパターンの重心に位置する分岐部P30を示した。また、この分岐部P30の縦横の位置に形成された分岐部P31〜P34と、斜めの位置に形成された分岐部P35〜P38とを示した。
【0063】
本実施形態の分岐部Pは、1つの分岐部Pの周囲を他の9つの分岐部Pが、縦横または斜めの方向から囲む関係で二次元的に配置されている。
なお、本実施形態の分岐部Pも、斜め格子状の切り込みパターンを含まない範囲(破断箇所範囲)を分岐部Pと扱ってもよい。例えば、斜め格子状の切り込みパターンの破断箇所をつなぐ正方形状の分岐部P37aを捉えてもよいし、多重四角形状の切り込みパターンの重心を中心として、円状の分岐部P38aを捉えてもよい。
【0064】
縦横に位置する各分岐部P間は、切り込みCによって形成された迂回路Rにより連結されている。縦横格子状の切り込みパターンと多重四角形状の切り込みパターンを構成する外側の四角形との間、及び多重四角形状の切り込みパターンを構成する各四角形の間が迂回路Rとなっている。また、縦横格子状の切り込みパターンと、各四角形を構成する破線状の切り込みの破断位置は、互い違いとされており、これにより、縦横に位置する各分岐部P間の迂回路Rがつながるようになっている。
【0065】
縦横に位置する各分岐部P間の直線経路は、縦横格子状の切り込みパターンと、多重四角形状の切り込みパターンにより切断されている。そのため、この二つの分岐部P間の迂回路Rを経由する最短経路は、これらの切り込みパターンの破断位置を縫うような経路となっている。
【0066】
例えば、分岐部P30と分岐部P31との間の直線経路は、切り込みC33bと、C33bと、これらの間に形成された横方向の切り込みC32aにより切断されている。そのため、分岐部P30と分岐部P31との間の、迂回路Rを経由する最短経路S31a、S31bは、分岐部P30を重心とする多重四角形状の切り込みC33a〜C33cと、分岐部P31を重心とする多重四角形状の切り込みC33a〜C33cと、これらの間に形成された横方向の切り込みC32aの各々の破断した先端を経由する経路となっている。
【0067】
同様に、分岐部P30と分岐部P32との間の迂回路Rを経由する最短経路S32a、S32bと、分岐部P30と分岐部P33との間の迂回路Rを経由する最短経路S33a、S33bと、分岐部P30と分岐部P34との間の迂回路Rを経由する最短経路S34a、S34bも、連結する各分岐部Pを重心とする多重四角形状の切り込みと、これらの間に形成された縦または横方向の切り込みの破断した先端を経由する経路となっている。
【0068】
最短経路S31bが経由する迂回路Rと、最短経路S32aが経由する迂回路Rとの間は、切り込みC31bにより切断されて離間可能となっている。最短経路S32bが経由する迂回路Rと、最短経路S33aが経由する迂回路Rとの間は、切り込みC31aにより切断されて離間可能となっている。同様に、他の隣接する迂回路Rの間も切り込みCにより切断されて離間可能となっている。
分岐部P30に対して迂回路により直接連結されている分岐部は、分岐部P31〜P34の4つであり、条件αを満たしている。
図7における他の分岐部Pも条件αを満たしている。
【0069】
これらの分岐部同士を直接連結する迂回路で結んでいくと、四角形状の環を形成することができる。具体的には、分岐部P30、分岐部P31、分岐部P35、及び分岐部P34からなる環が形成できる。また、分岐部P30、分岐部P34、分岐部P38、及び分岐部P33からなる環が形成できる。この二つの環は、分岐部P30と分岐部P34との間で重なり連結されている。
同様に、次々と連結される環、すなわち、網の目を形成することができる。全体としては、各四角形状の環を網の目とする網を形成するように分岐部Pが配置されている。
そのため、本実施形態の伸張シートは、伸張可能な網として機能させることができる。
【0070】
[第4実施形態の伸張シート]
図8は、本発明の第4実施形態に係る伸張シート4である。伸張シート4は、平坦な基材4aに切り込みCが複数形成されている。また、切り込みCによって、二次元的に配置された複数の迂回路Rと分岐部Pが形成されている。また、基材4aの周縁部は、枠部Fとされ、当該枠部の内側に切り込みCが形成されている。なお、第4実施形態は、枠部Fのない態様に変更してもよい。
【0071】
図9は、伸張シート4の一部拡大図である。
図9に基づき、第4実施形態における切り込みCと、切り込みCによって形成されている迂回路Rと分岐部Pについて説明する。
本実施形態では、連結点C41xにおいて、60°の角度で切り込みC41a、切り込みC41b、切り込みC41cが交差し、斜め交差パターンを形成している。また、この斜め交差パターンと離間して、連結点C42xにおいて、60°の角度で切り込みC42a、切り込みC42b、切り込みC42cが交差し、斜め交差パターンを形成している。
また、連結点C43xを交差点とする同様の斜め交差パターンが形成されている。連結点C41xと連結点C42xと連結点C43xは、正三角形の頂点となるように配置されている。
【0072】
また、連結点C41xを交差点とする斜め交差パターンと連結点C42xを交差点とする斜め交差パターンとの間には、連結点C41xと連結点C42xを結ぶ直線上に、これら一対の交差パターンから離間して切り込みC40aが形成されている。また、切り込みC40aの両側に切り込みC40bと切り込みC40cが形成されている。
【0073】
また、切り込みC41cの途中を基端とする切り込みC41dと、切り込みC42bの途中を基端とする切り込みC42dが切り込みC40aと切り込みC40bの間に形成されている。また、切り込みC41bの途中を基端とする切り込みC41eと切り込みC42cの途中を基端とする切り込みC42eが切り込みC40aと切り込みC40cの間に形成されている。
また、切り込みC41cの先端を基端とする切り込みC41gと、切り込みC42bの途中を基端とする切り込みC42gが切り込みC40bの外側に形成されている。また、切り込みC41bの先端を基端とする切り込みC41fと切り込みC42cの先端を基端とする切り込みC42fが切り込みC40cの外側に形成されている。
【0074】
また、連結点C41xを交差点とする斜め交差パターンと連結点C43xを交差点とする斜め交差パターンとの間、連結点C42xを交差点とする斜め交差パターンと連結点C43xを交差点とする斜め交差パターンとの間にも、同様の複数の切り込みが形成されている。
【0075】
そして、連結点C41xと連結点C42xと連結点C43xを頂点とする正三角形の重心が、本実施形態の分岐部P40となっている。同様に、連結点C41xと連結点C43xと他の連結点を頂点とする正三角形の重心が分岐部P41となっており、連結点C41xと連結点C42xと他の連結点を頂点とする正三角形の重心が分岐部P42となっており、連結点C42xと連結点C43xと他の連結点を頂点とする正三角形の重心が分岐部P43となっている。
【0076】
本実施形態の分岐部Pは、1つの分岐部Pの周囲を他の3つの分岐部Pが、等方的かつ等距離で囲むような関係で二次元的に配置されている。
なお、本実施形態の分岐部Pも、3つの連結点を頂点とする三角形の重心近傍における切り込みを含まない範囲を分岐部Pと扱ってもよい。例えば、前記重心を中心とする円状の分岐部P(図示は省略)として捉えてもよい。
【0077】
分岐部P40と分岐部P42との間は、切り込みCによって形成された迂回路Rにより連結されている。切り込みC40a〜C40cと、切り込みC41d〜C41gと、切り込みC42d〜C42gとの間が迂回路Rとなっている。
分岐部P40と分岐部P42との間の直線経路は、切り込みC40a〜C40cにより切断されている。そのため、この二つの分岐部P間の迂回路Rを経由する最短経路S42a、S42bは、迂回路Rを形成する切り込みパターンの破断位置を縫うような経路となっている。
同様にして、分岐部P40と分岐部P41との間の迂回路Rを経由する最短経路S41a、S41bと、分岐部P40と分岐部P43との間の迂回路Rを経由する最短経路S43a、S43bが形成されている。
【0078】
最短経路S41bが経由する迂回路Rと、最短経路S42aが経由する迂回路Rとの間は、切り込みC41bにより切断されて離間可能となっている。最短経路S42bが経由する迂回路Rと、最短経路S43aが経由する迂回路Rとの間は、切り込みC42cにより切断されて離間可能となっている。同様に、他の隣接する迂回路Rの間も切り込みCにより切断されて離間可能となっている。
分岐部P40に対して迂回路により直接連結されている分岐部は、分岐部P41〜P43の3つであり、条件αを満たしている。
図9における他の分岐部Pも条件αを満たしている。
【0079】
これらの分岐部同士を直接連結する迂回路で結んでいくと、六角形状の環を形成することができる。具体的には、
図8に示すような環N41、N42、N43のような環を連結して形成できる。全体としては、各六角形状の環を網の目とする網を形成するように分岐部Pが配置されている。
そのため、本実施形態の伸張シートは、伸張可能な網として機能させることができる。
【0080】
[第5実施形態の伸張シート]
図10は、本発明の第5実施形態に係る伸張シート5である。伸張シート5は、平坦な基材5aに切り込みCが複数形成されている。また、切り込みCによって、二次元的に配置された複数の迂回路Rと分岐部Pが形成されている。また、基材5aの周縁部は、枠部Fとされ、当該枠部の内側に切り込みCが形成されている。なお、第5実施形態は、枠部Fのない態様に変更してもよい。
【0081】
図11は、伸張シート5の一部拡大図である。
図10に基づき、第5実施形態における切り込みCと、切り込みCによって形成されている迂回路Rと分岐部Pについて説明する。
本実施形態では、風車状の切り込みパターンが多数組み合わされて、全体の切り込みパターンが構成されている。各風車状の切り込みパターンは、5つの切り込みCが単一の連結点を基端として放射状に形成され、各切り込みの先端が反時計方向に折れ曲がっているパターンである。
【0082】
図11には、連結点C51xを基端とする切り込みC51a〜C51eからなる風車状の切り込みパターンと、連結点C52xを基端とする切り込みC52a〜C52eからなる風車状の切り込みパターンの一部を示した。また、同様に、連結点C53xを基端とする風車状の切り込みパターンの一部と、連結点C54xを基端とする風車状の切り込みパターンと、連結点C55xを基端とする風車状の切り込みパターンの一部を示した。
【0083】
連結点C51xを基端とする切り込みC51a〜C51eからなる風車状の切り込みパターンにおいて、切り込みC51aと切り込みC51bとがなす角度は75°であり、切り込みC51bと切り込みC51cとがなす角度は60°であり、切り込みC51cと切り込みC51dとがなす角度、切り込みC51dと切り込みC51eとがなす角度、切り込みC51eと切り込みC51aとがなす角度は、各々75°である。
また、切り込みC51aと切り込みC51dの先端は反時計方向に90°の角度で折れ曲がっており、切り込みC51b、C51c、C51eの先端は反時計方向に60°の角度で折れ曲がっている。他の連結点を基端とする風車状の切り込みパターンは、この連結点C51xを基端とする風車状の切り込みパターンを回転させたパターンとなっている。
【0084】
図11に示すように、各風車状の切り込みパターンは、各風車状の切り込みパターンにおける1つの切り込みが、他の風車状の切り込みパターンにおける一対の切り込みの間に挿入されるように配置されている。例えば、切り込みC51dは、連結点C52xを基端とする切り込みパターンの切り込み52bと切り込み52cの間に挿入されている。
【0085】
そして、各風車状の切り込みパターンにおける切り込みの、折れ曲がった先端で囲まれる部分が本実施形態の分岐部Pとなっている。
図11には、分岐部P50と、分岐部P50を取り囲む分岐部P51〜P54と、分岐部P54を分岐部P50と共に取り囲む分岐部P55と分岐部P56を示した。
【0086】
本実施形態の分岐部Pは、1つの分岐部Pの周囲を他の4つの分岐部Pが囲み、その4つの分岐部Pの各々を、3つの分岐部Pが囲むような関係で二次元的に配置されている。
なお、本実施形態の分岐部Pも、図示した点状の分岐部Pを中心とする円状の分岐部P(図示は省略)として捉えてもよい。
【0087】
分岐部P50と分岐部P51との間は、切り込みCによって形成された迂回路R51により連結されている。切り込みC52cと切り込みC51dの間、切り込みC51dと切り込みC52bの間、切り込みC52bと切り込みC51eの間が迂回路R51となっている。
分岐部P50と分岐部P51との間の直線経路は、切り込みC51dと切り込みC52bにより切断されている。そのため、迂回路R51を経由する最短経路S51は、これらの切り込みの先端を経由する経路となっている。
【0088】
同様にして、分岐部P50と分岐部P52との間の迂回路R52を経由する最短経路S52、分岐部P50と分岐部P53との間の迂回路R53を経由する最短経路S53、分岐部P50と分岐部P54との間の迂回路R54を経由する最短経路S54が形成されている。
また、分岐部P54と分岐部P55との間の迂回路R55を経由する最短経路S55、分岐部P54と分岐部P56との間の迂回路R56を経由する最短経路S56が形成されている。なお、分岐部P54と分岐部P55との間は、上述の他の分岐部間と最短距離が異なり、また、直線距離も異なっている。
【0089】
迂回路R51と迂回路R52との間は、切り込みC52cにより切断されて離間可能となっている。迂回路R51と迂回路R54との間は、切り込みC51dにより切断されて離間可能となっている。迂回路R54と迂回路R55との間は、切り込みC51cにより切断されて離間可能となっている。同様に、他の隣接する迂回路Rの間も切り込みCにより切断されて離間可能となっている。
分岐部P50に対して迂回路により直接連結されている分岐部は、分岐部P51〜P54の4つであり、条件αを満たしている。また、分岐部P54に対して迂回路により直接連結されている分岐部は、分岐部P50、P55、及びP56の3つであり、条件αを満たしている。
図11における他の分岐部Pも条件αを満たしている。
【0090】
これらの分岐部同士を直接連結する迂回路で結んでいくと、五角形状の環を形成することができる。具体的には、
図10に示すような環N51、N52、N53のような環を連結して形成できる。全体としては、各五角形状の環を網の目とする網を形成するように分岐部Pが配置されている。
そのため、本実施形態の伸張シートは、伸張可能な網として機能させることができる。
【0091】
[第6実施形態の伸張シート]
図12は、本発明の第6実施形態に係る伸張シート6である。伸張シート6は、平坦な基材6aに切り込みCが複数形成されている。また、切り込みCによって、二次元的に配置された複数の迂回路Rと分岐部Pが形成されている。また、基材6aの周縁部は、枠部Fとされ、当該枠部の内側に切り込みCが形成されている。なお、第6実施形態は、枠部Fのない態様に変更してもよい。
【0092】
図13は、伸張シート6の一部拡大図である。
図13に基づき、第6実施形態における切り込みCと、切り込みCによって形成されている迂回路Rと分岐部Pについて説明する。
本実施形態では逆Zの両端側が円弧状に延びた切り込みCが複数形成されている。
図13に示すように、切り込みC61〜C64の4つの切り込みCが、各円弧状に延びた一端側が渦巻き状になるように、90°ずつ角度を変えて形成されている。また、これらの切り込みC61〜C64の中央と交差する切り込みC65〜C68が形成されている。
【0093】
切り込みC65は切り込みC61と、連列点C61xにおいて90°の角度で交差している。切り込みC66は切り込みC62と、連列点C62xにおいて90°の角度で交差している。切り込みC67は切り込みC63と、連列点C63xにおいて90°の角度で交差している。切り込みC68は切り込みC64と、連列点C64xにおいて90°の角度で交差している。
【0094】
そして、4つの切り込みCの各円弧状に延びた一端側が渦巻き状に組み合わされた内側が、本実施形態の分岐部Pとなっている。
図13には、分岐部P60と、分岐部P60の上下左右に形成された分岐部P61〜P64と、分岐部P60の4つの斜め方向に形成された分岐部P65〜P68を示した。
本実施形態の分岐部Pは、縦横格子の交点に位置するような関係で二次元的に配置されている。なお、本実施形態の分岐部Pも、図示した点状の分岐部Pを中心とする円状の分岐部P(図示は省略)として捉えてもよい。
【0095】
分岐部P60と分岐部P61との間は、切り込みCによって形成された迂回路R61により連結されている。切り込みC64と切り込みC61の間、切り込みC64と切り込みC65の間、切り込みC68と切り込みC65の間が迂回路R61となっている。
分岐部P60と分岐部P61との間の直線経路は、切り込みC63、C64、C65、及び分岐部P61の周りに渦巻きを形成する他の切り込みにより切断されている。そのため、迂回路R61を経由する最短経路S61は、切り込みC64と切り込みC65の各々に沿う経路とこれら双方に対する接線とを経由する経路となっている。
【0096】
同様にして、分岐部P60と分岐部P62との間の迂回路R62を経由する最短経路S62、分岐部P60と分岐部P63との間の迂回路R63を経由する最短経路S63、分岐部P60と分岐部P64との間の迂回路R64を経由する最短経路S64が形成されている。
【0097】
迂回路R61と迂回路R62との間は、切り込みC61により切断されて離間可能となっている。迂回路R62と迂回路R63との間は、切り込みC62により切断されて離間可能となっている。迂回路R63と迂回路R64との間は、切り込みC63により切断されて離間可能となっている。迂回路R64と迂回路R61との間は、切り込みC64により切断されて離間可能となっている。同様に、他の隣接する迂回路Rの間も切り込みCにより切断されて離間可能となっている。
分岐部P60に対して迂回路により直接連結されている分岐部は、分岐部P61〜P64の4つであり、条件αを満たしている。
図13における他の分岐部Pも条件αを満たしている。
【0098】
これらの分岐部同士を直接連結する迂回路で結んでいくと、四角形状の環を形成することができる。具体的には、分岐部P60、分岐部P61、分岐部P66、及び分岐部P62からなる環が形成できる。また、分岐部P60、分岐部P62、分岐部P67、及び分岐部P63からなる環が形成できる。この二つの環は、分岐部P60と分岐部P62との間で重なり連結されている。
そのため、本実施形態の伸張シートは、伸張可能な網として機能させることができる。
【0099】
[第7実施形態の伸張シート]
図14は、本発明の第7実施形態に係る伸張シートの一部拡大図である。本実施形態では、1つの伸張シート内に、分岐部P間の最大の伸び率(基材の厚さを無視すれば、最短距離/直線距離に等しい。)が異なる部分が混在している。
図14において、分岐部P71と分岐部P72の間の直線形路を切断する切り込みC71a〜C71cは、各々分岐部P72と分岐部P73の間の直線形路を切断する切り込みC72a〜C72cより長い。また、分岐部P73と分岐部P74の間の直線形路を切断する切り込みC73a〜C73cは、各々切り込みC72a〜C72cより短い。
【0100】
そのため、分岐部P71と分岐部P72の間の迂回路Rを経由する最短経路S71a、S71bは、分岐部P72と分岐部P73の間の迂回路Rを経由する最短経路S72a、S72bより長い。また、分岐部P73と分岐部P73の間の迂回路Rを経由する最短経路S73a、S73bが最も短い。
その結果、最大の伸び率は、分岐部P71と分岐部P72の間が最も大きくなり、分岐部P73と分岐部P74の間が最も小さくなる。
このように、類似の切り込みパターンであってもその長さを調整することにより、伸び率を調整することができる。
1つの伸張シート内における分岐部P間の最大の伸び率が均一な場合にも、切り込みの長さを調整することにより伸び率の調整が可能である。
【0101】
[第8実施形態の伸張シート]
図15は、本発明の第8実施形態に係る伸張シートの一部拡大図である。本実施形態では、切り込みの一部が楕円状とされている。
図15に示すように、90°の角度で交差する切り込みC81aと切り込みC81bが形成されている。また、切り込みC81aと切り込みC81bの各々の両端には、一対の短い切り込みC81cと切り込みC81dが、各々接続されている。また、切り込みC81aと切り込みC81bの各々の交差点の間には、楕円状の切り込みC81eが設けられている。
そして四対の切り込みC81cと切り込みC81dに囲まれる4角形の領域内に分岐部Pが形成されている。
【0102】
図15に示すように、分岐部P81aと分岐部P81bとの間の直線形路は、切り込みC81eにより切断されている。
分岐部P81aと分岐部P81bとの間の迂回路Rを経由する最短経路S81aと最短経路S81bは、切り込みC81cと切り込みC81dの各々の先端を通る切り込みC81eの接線と、切り込みC81eの周縁を経由する経路となっている。
【0103】
[第9実施形態の伸張シート]
図16は、本発明の第9実施形態に係る伸張シートの一部拡大図である。本実施形態では、分岐部P内に円形の切り込みが形成されている。
図16に示すように、90°の角度で交差する切り込みC82aと切り込みC82bが形成されている。また、切り込みC82aと切り込みC82bの各々の両端には、一対の短い切り込みC82cと切り込みC82dが、各々接続されている。また、切り込みC82aと切り込みC82bの各々の交差点の間には、切り込みC82eが設けられている。また、四対の切り込みC82cと切り込みC82dに囲まれる4角形の領域内に円形の切り込みC82fが形成されている。
【0104】
本実施形態の分岐部Pは、分岐部P82a、P82bのように、切り込みC82fの周縁に沿った円形の領域として捉えてもよいし、分岐部P82c、分岐部P82dのように、四対の切り込みC82cと切り込みC82dに囲まれる4角形の領域として捉えてもよい。
前者の場合の最短経路S82aとS82bは前記円形の領域を起点とし、後者の場合の最短経路S82cとS82dは前記四角形の領域を起点する。
【0105】
[第10実施形態の伸張シート]
図17は、本発明の第10実施形態に係る伸張シートの一部拡大図である。本実施形態では、分岐部内に十文字の切り込みが形成されている。
図17に示すように、90°の角度で交差する切り込みC83aと切り込みC83bが複数形成されている。また、各々の切り込みC83aと切り込みC83bの各々の両端には、一対の屈曲した短い切り込みC83cと切り込みC83dが、各々接続されている。また、切り込みC83aと切り込みC83bの各々の交差点の間には、切り込みC83eが設けられている。また、四対の切り込みC82cと切り込みC82dに囲まれる略十文字状の領域内に、切り込みC83aと平行な方向に切り込みC83fが、切り込みC83bに平行な方向に切り込みC83gが形成されている。切り込みC83fと切り込みC83gは交差している。
【0106】
本実施形態の分岐部Pは、分岐部P83a、P83bのように、四対の切り込みC83cと切り込みC83dに囲まれる略十文字状の領域として捉えることができる。最短経路S83aとS83bは前記略十文字状の領域を起点する。
本実施形態では、分岐部P内に形成された切り込みの存在により、分岐部P自体も伸張することができる。
【0107】
<伸張シートの用途>
以下、本発明の伸張シートの使用態様について説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態の伸張シートを用いた態様について説明したが、第1実施形態の伸張シートに代えて、他の実施形態の伸張シートや、その他の本発明に係る伸張シートに変更できることはもちろんである。
【0108】
また、以下の説明では伸張シートを1枚だけで使用する態様について説明したが、各々複数枚の伸張シートを重ねて使用してもよい。その場合の枚数に特に限定はないが、例えば2〜20枚とすることができる。重ねる場合、それぞれの切り込みのパターンが、完全に重ならないようにずらして重ねると、使用時に互いに絡み合い、形状を固定しやすくなるので好ましい。重ねる場合、各シートの切り込みのパターンは、同一であっても異なっていてもよい。
【0109】
[収納容器]
図18は、本発明の実施形態に係る収納容器10の斜視図である。収納容器10は、6つの矩形状の基板で直方体状の空洞を囲む容器であり、その1つの基板が、第1実施形態の伸張シート1Aで構成されている。
伸張シート1Aは、押圧により切り込みCが開く。例えばその中央部分を外側から押圧すると、
図19に示すように、枠部Fに近い切り込みCaの幅はあまり開かないが、切り込みCb、切り込みCcと内側に行くに従い大きく幅が開く。その結果、
図20に示すように、伸張シート1Aは、当初の空洞の内側に向けて撓む。さらに押圧を強めると、
図21に示すように、切り込みCの幅はさらに開く。
【0110】
図22は、収納容器10にブドウ11を載せて収納した状態を示すイメージ図である。ブドウのように凹凸のある包装対象物を伸張シート1Aに載せると、その凹凸に応じて切り込みCの幅が開き、凸部分ほど当初の空洞の内側に向けて撓む。
したがって、本実施形態の収納容器10によれば、様々な形態の包装対象物を、優れた圧力分散性で収納することができる。また、伸張シート1Aは、1枚の基材から構成されているので、保管や廃棄時等の取り扱いが容易である。
収納容器10に用いる伸張シート1Aを構成する基材は、包装対象物等の使用目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、包装対象物に対する負荷を少しでも減らすことを重視する場合には、柔軟性とクッション性のある基材を選択することができる。また、包装対象物が重量物である場合は、充分な強度を持たせることを優先して基材を選択することができる。
【0111】
包装対象物を収納容器10の伸張シート1Aからなる面に載せて収納した後は、その上側から、適宜の蓋材をかぶせてもよい。
収納容器10の1面を構成する伸張シート1Aには、包装対象物に応じて適宜の強度の基材を用いることができる。
なお、
図22の伸張シート1Aは、
図18等と表裏が逆転したものである。
本発明の収納容器は、直方体状の空洞を囲む態様に限定されない。例えば円柱状の空洞を囲む態様であってもよい。その場合、一方の底面を画する円形の基板を、本発明の伸張シートで構成すればよい。
【0112】
[包装材]
図23は、本発明の伸張シートを用いた包装材20である。包装材20は、第1実施形態の伸張シート1Bから構成されている。包装材20に包装対象物を載せた後、包装対象物に沿うように包装材20を伸張させると、包装対象物の形状に沿って変形する。そして、伸張させた包装材20の二つの辺が出会うと、両辺の近傍の切り込みが絡み合いアンカー効果を発揮する。そのため、セロテープ(登録商標)、糊等の別途の固定手段を用いることなく、
図23に示すように、収納物を包装した状態で固定できる。
包装材20に用いる伸張シート1Bを構成する基材は、包装対象物等の使用目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、包装対象物に対する負荷を少しでも減らすことを重視する場合には、柔軟性とクッション性のある基材を選択することができる。また、アンカー効果を重視する場合には、アンカー効果を発揮しやすい程度の強度を持たせることを優先して基材を選択することができる。
【0113】
[たわし]
図24は、本発明の伸張シートを用いた、たわし30である。たわし30は、第1実施形態の伸張シート1Aから構成されている。周縁を一箇所に纏めるように伸張シート1Aを丸めると、切り込みの切断面が表に露出して、たわしとして使用することができる。
たわし30に用いる伸張シート1Aを構成する基材は、洗浄対象物の材質等に応じて、適宜選択すればよい。例えば、洗浄対象物を傷つけないことを重視する場合は、柔らかい材質の基材を選択することができる。また、強い力での洗浄を求めたい場合は、剛性のある基材を選択することができる。また、耐水性を重視して基材を選択してもよいし、吸水性を重視して基材を選択してもよい。
【0114】
[収納ポーチ]
図25は、本発明の伸張シートを用いた、収納ポーチ40である。収納ポーチ40は、第1実施形態の伸張シート1Aの中央を
図1の横方向に沿って折り曲げることにより構成されている。
図25の辺40aが折り曲げた側ある。辺40b、40cの側は、各々重ね合わされた枠部Fが接着されている。辺40dの側は、各々重ね合わされた枠部Fが接着されることなく、環状に開ける開口部となっている。
【0115】
この辺40dの開口部から、収納物を挿入すると、収納物の形状と大きさに合わせて切り込みが開き分岐部Pが伸張するので、収納物の収納が可能となる。
収納ポーチ40に用いる伸張シート1Aを構成する基材は、使用目的等に応じて、適宜選択すればよい。例えば、収納物の保護を重視する場合は、柔軟性とクッション性のある基材を選択できる。また、ファッション性を重視する場合は、意匠性に優れた基材を選択することができる。
辺40d側には、握り手をつけてもよい。また、ゴムやひもを通して辺40d側を絞り、巾着状のポーチとしてもよい。
【0116】
[他の用途]
本発明の伸張シートに、平坦な状態で絵柄を描くと、三次元的なモザイクパズルとして使用できる。すなわち、絵柄の描かれた伸張シートの切り込みをランダムに開くと、切り込みが複雑に絡み合い、これを元の絵柄に戻す作業を楽しむことができる。
また、枠部のない伸張シートを伸張させると、レース模様を生じさせることができるので、装飾シートとして使用することができる。