(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御情報処理部は、前記制御パケットを前記多重化装置へ送信してから前記受信部が前記多重化装置から受信するまでの時間に基づいて異常を判定する、請求項1または請求項2に記載のスクランブル装置。
前記制御情報は、MMT(MPEG Media Transport)方式におけるECM(Entitlement Control Message)である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のスクランブル装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0016】
(1)本発明の実施の形態に係るスクランブル装置は、受信した複数のパケットに時刻情報を含めて多重化して送信する多重化装置からの前記パケットを受信する受信部と、前記受信部によって受信された前記パケットに含まれる対象情報にスクランブル処理を行うスクランブル部と、前記スクランブル部によって前記スクランブル処理の行われた前記対象情報を含むパケットを他の装置へ送信する送信部と、前記スクランブル部によって前記スクランブル処理の行われた前記対象情報の復号化に用いる制御情報を含むパケットである制御パケットを作成して時刻情報を含めて前記多重化装置へ送信する制御情報処理部とを備え、前記受信部は、前記多重化装置によって多重化されて送信された前記制御パケットを受信し、前記制御情報処理部は、前記受信部による前記制御パケットの受信タイミングに基づいて異常を判定する。
【0017】
このように、多重化装置へ送信した制御パケットの到着を監視し、到着タイミングに基づいて異常を判定する構成により、スクランブル処理を効率的かつ有効に行いながら、制御情報の伝送の良好な監視、維持および異常処理等を実現することができる。したがって、本発明の実施の形態に係るスクランブル装置では、番組の情報が伝送されるシステムにおいて、スクランブル処理に関する情報を良好に伝送し、受信側において安定した復号化を実現することができる。
【0018】
(2)好ましくは、前記制御情報処理部は、前記制御パケットを所定間隔で前記多重化装置へ送信し、前記制御情報処理部は、前記受信部による前記制御パケットの受信間隔に基づいて異常を判定する。
【0019】
このような構成により、簡易な処理で、制御パケットの異常を即時に検出することができる。
【0020】
(3)好ましくは、前記制御情報処理部は、前記制御パケットを前記多重化装置へ送信してから前記受信部が前記多重化装置から受信するまでの時間に基づいて異常を判定する。
【0021】
このような構成により、簡易な処理で、たとえばスクランブル鍵の更新を良好に監視することができる。
【0022】
(4)好ましくは、前記制御情報処理部は、前記制御パケットを所定間隔で前記多重化装置へ送信し、前記制御情報処理部は、現在時刻に前記所定間隔を加えた値を前記時刻情報として前記制御パケットに含める。
【0023】
このような構成により、スクランブル装置から送信された制御パケットのタイムスタンプ値の影響で多重化装置が当該制御パケットを誤って多重化しない可能性を低減することができる。
【0024】
(5)好ましくは、前記制御情報は、MMT(MPEG Media Transport)方式におけるECM(Entitlement Control Message)である。
【0025】
このような構成により、多重化装置における入出力の時間差を確定的には決めることができないMMT方式に従う放送システムにおいて、スクランブル処理を効率的かつ有効に行いながら、ECM伝送の良好な監視、維持および異常処理等を実現することができる。
【0026】
(6)本発明の実施の形態に係るスクランブル処理プログラムは、スクランブル装置において用いられるスクランブル処理プログラムであって、コンピュータを、受信した複数のパケットに時刻情報を含めて多重化して送信する多重化装置からの前記パケットを受信する受信部と、前記受信部によって受信された前記パケットに含まれる対象情報にスクランブル処理を行うスクランブル部と、前記スクランブル部によって前記スクランブル処理の行われた前記対象情報を含むパケットを他の装置へ送信する送信部と、前記スクランブル部によって前記スクランブル処理の行われた前記対象情報の復号化に用いる制御情報を含むパケットである制御パケットを作成して時刻情報を含めて前記多重化装置へ送信する制御情報処理部と、として機能させるためのプログラムであり、前記受信部は、前記多重化装置によって多重化されて送信された前記制御パケットを受信し、前記制御情報処理部は、前記受信部による前記制御パケットの受信タイミングに基づいて異常を判定する。
【0027】
このように、多重化装置へ送信した制御パケットの到着を監視し、到着タイミングに基づいて異常を判定する構成により、スクランブル処理を効率的かつ有効に行いながら、制御情報の伝送の良好な監視、維持および異常処理等を実現することができる。したがって、本発明の実施の形態に係るスクランブル装置では、番組の情報が伝送されるシステムにおいて、スクランブル処理に関する情報を良好に伝送し、受信側において安定した復号化を実現することができる。
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0029】
[構成]
図1は、本発明の実施の形態に係る放送システムの構成を示す図である。
【0030】
図1を参照して、放送システム301は、たとえばMMT(MPEG Media Transport)方式に従う放送システムであり、送信側において、NTP(Network Time Protocol)サーバ251と、多重化装置201と、スクランブル装置101とを備える。なお、放送システム301は、他の方式に従う放送システムであってもよい。
【0031】
NTPサーバ251は、現在時刻を示す時刻情報を多重化装置201およびスクランブル装置101等の各装置に配信する。
【0032】
多重化装置201およびスクランブル装置101は、NTPサーバ251から受信した時刻情報に基づいて現在時刻を管理する。
【0033】
多重化装置201は、映像信号、音声信号、制御信号、データ放送信号および文字スーパー信号等のコンポーネント信号の情報(以下、対象情報とも称する。)を含むパケットを受信し、多重化してスクランブル装置101へ送信する。このパケットは、MMT方式に従うMMTパケットであり、ヘッダ部およびペイロードにより構成される。ヘッダ部には識別子、タイムスタンプおよびシーケンス番号等が格納され、ペイロードには対象情報等が格納される。
【0034】
多重化装置201は、MMTパケットをスクランブル装置101へ送信する際、当該MMTパケットのヘッダ部におけるタイムスタンプのフィールドに、現在時刻の値を格納する。
【0035】
このように、多重化装置201は、受信した複数のMMTパケットに時刻情報を含め、各MMTパケットを多重化して送信する。
【0036】
スクランブル装置101は、多重化装置201から受信したMMTパケットのペイロードに格納された対象情報に所定のスクランブル処理を行い、処理後のMMTパケットを復号化装置等の受信側の装置へ送信する。
【0037】
また、スクランブル装置101は、上記スクランブル処理を行った対象情報の復号化に用いるスクランブル鍵等の制御情報を含むMMTパケットであるECMパケット(制御パケット)を作成し、多重化装置201へ送信する。ここで、スクランブル装置101は、ECMパケットを多重化装置201へ送信する際、たとえば、ECMパケットのヘッダ部におけるタイムスタンプのフィールドに、現在時刻の値を格納する。
【0038】
多重化装置201は、スクランブル装置101から受信したECMパケットを、他のMMTパケットと同様に多重化してスクランブル装置101へ送信する。
【0039】
[課題]
ここで、たとえばMPEG2−TS(Moving Picture Experts Group 2 Transport Stream)規格に従う従来の放送システムでは、STC(System Time Clock)と呼ばれる放送局の基準クロックのカウンタ値を各装置で共有し、規格に準拠して送出パケットにPCR(Program Clock Reference)として記述することにより、装置間の同期が図られている。
【0040】
この同期特性の確保のため、多重化装置では、入出力間の信号の時間遅れすなわち通過遅延ができる限りないことが装置の仕様となっている。これを前提にして、従来の放送システムでは、たとえば、スクランブル装置は、ECMを所定のタイミングで多重化装置へ送信する仕組みとなっていた。
【0041】
これに対して、MMT方式では、上記のようなカウンタ値を用いた同期方式が撤廃され、パケットに正確な時刻を記述する方式を採用している。
【0042】
これに伴い、多重化装置は、パケットを正確な時刻に送出する仕様となり、また、多重化装置における入出力の時間差を確定的には決めることができない、すなわちMMTパケットの通過遅延時間の要求が定められていない。このため、MMT方式の放送システムでは、多重化装置における短時間の通過遅延を保証することが困難である。
【0043】
これに対して、放送システム301では、スクランブル装置101は、多重化装置201においてECMの挿入が適正に行われたことを監視する。
【0044】
たとえば、MMT方式では、パケットにタイムスタンプが記述されているため、タイムスタンプ値と現在時刻との比較を逐一行うことにより、ECMパケットを監視する方法が考えられる。
【0045】
しかしながら、このような方法では、以下の(1)(2)のような問題がある。
(1)処理の負荷が大きいため、すべてのパケットを対象にすることは困難である。したがって、エラー時において即時対応がとれない恐れがある。
(2)ECMの同期特性については、時刻の正確性は求められず、適正なタイミングで挿入されていれば良いとされる。さらに、タイムスタンプが多重化装置201において書き換えられる場合があることから、タイムスタンプ値を基準にした監視は本来の目的に沿ったものとは言えない。
【0046】
そこで、放送システム301では、以下のような構成および動作により、上記課題を解決する。
【0047】
図2は、本発明の実施の形態に係る放送システムにおけるスクランブル装置の構成を示す図である。
【0048】
図2を参照して、スクランブル装置101は、受信部11と、スクランブル部12と、送信部13と、制御情報処理部14と、タイマ15と、タイマ制御部16とを備える。
【0049】
受信部11は、多重化装置201からのMMTパケットを受信してスクランブル部12へ出力する。
【0050】
スクランブル部12は、受信部11によって受信されたMMTパケットに含まれる対象情報にスクランブル処理を行い、スクランブル処理後のMMTパケットを送信部13へ出力する。また、たとえば、スクランブル部12は、対象情報を含まないMMTパケットを受信部11から受けて送信部13へ出力してもよい。
【0051】
送信部13は、スクランブル部12によってスクランブル処理の行われた対象情報を含むMMTパケットを他の装置へ送信する。また、たとえば、送信部13は、対象情報を含まないMMTパケットをスクランブル部12から受けて他の装置へ送信してもよい。
【0052】
また、スクランブル部12は、スクランブル処理を行った対象情報の復号化に用いる制御情報を制御情報処理部14へ出力する。
【0053】
制御情報処理部14は、スクランブル部12によってスクランブル処理の行われた対象情報の復号化に用いる制御情報を含むMMTパケットである制御パケットを作成して時刻情報を含めて多重化装置201へ送信する。たとえば、制御情報処理部14は、制御パケットを所定間隔で多重化装置201へ送信する。
【0054】
タイマ制御部16は、NTPサーバ251から受信した時刻情報に基づいて、タイマ15のプリセット等の各種設定を行う。
【0055】
制御情報処理部14は、タイマ15の出力値に基づく現在時刻を時刻情報としてECMパケットに格納する。
【0056】
受信部11は、多重化装置201によって多重化されて送信された制御パケットを受信する。
【0057】
制御情報処理部14は、受信部11による制御パケットの受信タイミングに基づいて異常を判定する。
【0058】
具体的には、ECM監視方式1として、スクランブル装置101は、ECMパケットの到来間隔を常時監視する。
【0059】
すなわち、ECMパケットは、スクランブル装置101から送出され、多重化装置201においてコンポーネント信号と多重化された後、スクランブル装置101へ送出される。
【0060】
スクランブル装置101が受信するn番目のECMパケットと(n+1)番目のECMパケットとの到来間隔は、スクランブル装置101によるECMパケットの送出間隔±αの範囲となるはずである。
【0061】
制御情報処理部14は、このECMパケットの到来間隔を監視することにより、多重化装置201においてECMパケットの挿入が適正に行われたことを確認することができる。
【0062】
すなわち、制御情報処理部14は、受信部11による制御パケットの受信間隔に基づいて異常を判定する。
【0063】
図3は、本発明の実施の形態に係るスクランブル装置によるECM監視方式を説明するためのタイミング図である。
図3において、横軸は時間を示す。
【0064】
図3を参照して、スクランブル鍵K1に対応する期間の時刻TS1において、スクランブル装置101は、スクランブル鍵K1およびK2を含むECMパケットを多重化装置201へ送信する。スクランブル装置101は、時間TBの間隔で、当該ECMパケットを多重化装置201へ繰り返し送信する。
【0065】
制御情報処理部14は、スクランブル装置101が受信するn番目のECMパケットと(n+1)番目のECMパケットとの到来間隔TDが、ECMパケットの送出間隔TB±αの範囲に収まる場合、多重化装置201においてECMパケットの挿入が適正に行われていると判断し、当該範囲に収まらない場合、多重化装置201においてECMパケットの挿入が適正に行われていないと判断する。
【0066】
制御情報処理部14は、ECMパケットのヘッダ部に含まれる識別子およびシーケンス番号等を参照することにより、ECMパケットを特定することが可能である。
【0067】
ECM監視方式1は、処理が簡易であり、即時に異常を検出することができる。また、略一定周期で到来するというECMに関する受信機における要求事項にも合致している。
【0068】
ここで、たとえば、制御情報処理部14は、現在時刻に上記所定間隔を加えた値を時刻情報として制御パケットに含める。
【0069】
具体的には、スクランブル装置101は、時刻TS1において、ECMパケットのヘッダ部におけるタイムスタンプのフィールドに、「現在時刻(TS1)+時間TB」の値を格納する。
【0070】
これにより、多重化装置201は、当該ECMパケットを、時間TB分スプールすなわち保持してからスクランブル装置101へ送信する。すなわち、時刻TS1から時間TBおよび多重化装置201における遅延時間TCが経過した時刻TS2において、当該ECMパケットが多重化装置201からスクランブル装置101へ送信される。この際、当該ECMパケットのタイムスタンプ値は、時刻TS2に書き換えられてスクランブル装置101へ送信される。
【0071】
このように「現在時刻(TS1)+時間TB」の値を用いる構成により、スクランブル装置101から送信されたECMパケットのタイムスタンプ値に起因して多重化装置201が当該ECMパケットを誤って多重化しない可能性を低減することができる。
【0072】
また、ECM監視方式2として、スクランブル装置101は、たとえばECM更新後の最初のECMパケットの送出から当該ECMパケットの入力までの間隔を監視する。
【0073】
すなわち、映像、音声およびデータ放送等のコンテンツに対してスクランブルをかける、すなわち暗号化する際のスクランブル鍵は数秒間隔で更新され、ECMパケットには、当該スクランブル鍵が格納される。
【0074】
スクランブル鍵の更新が正常に行われないと、受信機において番組を視聴できなくなることが予想されるため、スクランブル鍵の更新を監視することは重要である。
【0075】
スクランブル鍵を更新してから最初のECMパケットを多重化装置201へ送信し、当該ECMパケットがスクランブル装置101に戻ってくるまでの時間TEは、時間TBに多重化装置201の遅延時間TCを加算した時間(TB+TC)となるはずである。
【0076】
制御情報処理部14は、制御パケットを多重化装置201へ送信してから受信部11が多重化装置201から受信するまでの時間TEに基づいて異常を判定する。
【0077】
すなわち、制御情報処理部14は、この時間TEを監視することにより、スクランブル鍵の更新が正常に行われたことを確認する。具体的には、制御情報処理部14は、時間TEが時間(TB+TC)±βの範囲に収まる場合、多重化装置201においてECMパケットの挿入が適正に行われていると判断し、当該範囲に収まらない場合、多重化装置201においてECMパケットの挿入が適正に行われていないと判断する。
【0078】
なお、時間TBはシステム運用に応じて決定される。また、多重化装置201の遅延時間TCは個体差がある。このため、放送システム301では、時間TBおよびTCは、たとえばスクランブル装置101において設定変更可能とする。
【0079】
以降同様に、時刻TS1からスクランブル鍵の更新間隔TAが経過した、スクランブル鍵K2に対応する期間の時刻TS3において、スクランブル装置101は、スクランブル鍵K2およびK3を含むECMパケットを多重化装置201へ送信する。スクランブル装置101は、時間TBの間隔で、当該ECMパケットを多重化装置201へ繰り返し送信する。
【0080】
また、同様に、スクランブル装置101は、時刻TS3において、ECMパケットのヘッダ部におけるタイムスタンプのフィールドに、「現在時刻(TS3)+時間TB」の値を格納する。
【0081】
これにより、多重化装置201は、当該ECMパケットを、時間TB分スプールすなわち保持してからスクランブル装置101へ送信する。すなわち、時刻TS3から時間TBおよび多重化装置201における遅延時間TCが経過した時刻TS4において、当該ECMパケットが多重化装置201からスクランブル装置101へ送信される。この際、当該ECMパケットのタイムスタンプ値は、時刻TS4に書き換えられてスクランブル装置101へ送信される。
【0082】
なお、制御情報処理部14は、ECM監視方式1および2を並行して行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。制御情報処理部14は、各方式のいずれか一方を行う構成であってもよいし、順番に行う構成であってもよい。
【0083】
図4は、本発明の実施の形態に係るスクランブル装置によるECM監視方式を説明するためのタイミング図である。以下で説明する内容以外は
図3と同様である。
【0084】
図4を参照して、たとえば、制御情報処理部14は、現在時刻を時刻情報として制御パケットに含める。
【0085】
具体的には、スクランブル装置101は、時刻TS11において、ECMパケットのヘッダ部におけるタイムスタンプのフィールドに、現在時刻(TS11)の値を格納する。
【0086】
これにより、多重化装置201は、
図3に示す例と異なり、当該ECMパケットを、時間TB分のスプールを行わずにスクランブル装置101へ送信する。すなわち、時刻TS11から多重化装置201における遅延時間TCが経過した時刻TS12において、当該ECMパケットが多重化装置201からスクランブル装置101へ送信される。この際、当該ECMパケットのタイムスタンプ値は、時刻TS12に書き換えられてスクランブル装置101へ送信される。
【0087】
ECM監視方式2として、スクランブル装置101は、たとえばECM更新後の最初のECMパケットの送出から当該ECMパケットの入力までの間隔を監視する。
【0088】
図4に示す例では、スクランブル鍵を更新してから最初のECMパケットを多重化装置201へ送信し、当該ECMパケットがスクランブル装置101に戻ってくるまでの時間TEは、多重化装置201の遅延時間TCとなるはずである。
【0089】
制御情報処理部14は、制御パケットを多重化装置201へ送信してから受信部11が多重化装置201から受信するまでの時間TEに基づいて異常を判定する。
【0090】
すなわち、制御情報処理部14は、この時間TEを監視することにより、スクランブル鍵の更新が正常に行われたことを確認する。具体的には、制御情報処理部14は、時間TEが遅延時間TC±βの範囲に収まる場合、多重化装置201においてECMパケットの挿入が適正に行われていると判断し、当該範囲に収まらない場合、多重化装置201においてECMパケットの挿入が適正に行われていないと判断する。
【0091】
以降同様に、時刻TS11からスクランブル鍵の更新間隔TAが経過した、スクランブル鍵K2に対応する期間の時刻TS13において、スクランブル装置101は、スクランブル鍵K2およびK3を含むECMパケットを多重化装置201へ送信する。スクランブル装置101は、時間TBの間隔で、当該ECMパケットを多重化装置201へ繰り返し送信する。
【0092】
また、同様に、スクランブル装置101は、時刻TS13において、ECMパケットのヘッダ部におけるタイムスタンプのフィールドに、現在時刻(TS13)の値を格納する。
【0093】
これにより、多重化装置201は、
図3に示す例と異なり、当該ECMパケットを、時間TB分のスプールを行わずにスクランブル装置101へ送信する。すなわち、時刻TS13から多重化装置201における遅延時間TCが経過した時刻TS14において、当該ECMパケットが多重化装置201からスクランブル装置101へ送信される。この際、当該ECMパケットのタイムスタンプ値は、時刻TS14に書き換えられてスクランブル装置101へ送信される。
【0094】
[動作の流れ]
放送システム301における各装置は、コンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートの各ステップの一部または全部を含むプログラムを図示しないメモリから読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態で流通する。
【0095】
図5は、本発明の実施の形態に係るスクランブル装置がECMパケットの監視処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図5は、
図3に対応する動作の流れを示している。
【0096】
図5を参照して、まず、制御情報処理部14は、現在時刻の値をタイムスタンプ値とするECMパケットを作成する(ステップS1)。
【0097】
次に、制御情報処理部14は、作成したECMパケットを多重化装置201へ送信する。制御情報処理部14は、ECMパケットを所定間隔すなわち送出間隔TBで繰り返し送信する(ステップS2)。
【0098】
次に、受信部11は、多重化装置201からECMパケットを受信し、受信したECMパケットの内容を制御情報処理部14に通知する(ステップS3)。
【0099】
次に、制御情報処理部14は、受信部11からの通知を受けて、ECMパケットの到来間隔TDを算出し、算出値がECMパケットの送出間隔TB±αの範囲に収まらない場合(ステップS4でNO)、多重化装置201においてECMパケットの挿入が適正に行われていないと判断し、警報出力を行う(ステップS6)。
【0100】
また、制御情報処理部14は、受信部11からの通知を受けて、スクランブル鍵を更新してから最初のECMパケットを多重化装置201へ送信して当該ECMパケットがスクランブル装置101に戻ってくるまでの時間TEを算出する(ステップS5)。そして、制御情報処理部14は、算出した時間TEが時間(TB+TC)±βの範囲に収まらない場合(ステップS5でNO)、多重化装置201においてECMパケットの挿入が適正に行われていないと判断し、警報出力を行う(ステップS6)。
【0101】
一方、制御情報処理部14は、ECMパケットの到来間隔TDがECMパケットの送出間隔TB±αの範囲に収まり(ステップS4でYES)、かつ時間TEが時間(TB+TC)±βの範囲に収まる場合(ステップS5でYES)、多重化装置201においてECMパケットの挿入が適正に行われていると判断し、監視処理を継続する。
【0102】
ところで、デジタル放送システムの受信機においては、ECMを取得して解析することにより復号化を実施することから、関係情報の内容の整合性、および関係情報のタイミングの同期特性は、デジタル放送システムにおいて極めて重要である。したがって、送信側のシステムにおいてこれらの監視等を行うことは、非常に重要な機能となる。
【0103】
これに対して、本発明の実施の形態に係るスクランブル装置では、受信部11は、受信した複数のMMTパケットに時刻情報を含めて多重化して送信する多重化装置201からのMMTパケットを受信する。スクランブル部12は、受信部11によって受信されたMMTパケットに含まれる対象情報にスクランブル処理を行う。送信部13は、スクランブル部12によってスクランブル処理の行われた対象情報を含むMMTパケットを他の装置へ送信する。制御情報処理部14は、スクランブル部12によってスクランブル処理の行われた対象情報の復号化に用いる制御情報を含むMMTパケットである制御パケットを作成して時刻情報を含めて多重化装置201へ送信する。受信部11は、多重化装置201によって多重化されて送信された制御パケットを受信する。そして、制御情報処理部14は、受信部11による制御パケットの受信タイミングに基づいて異常を判定する。
【0104】
このように、多重化装置201へ送信したECMパケットの到着を監視し、到着タイミングに基づいて異常を判定する構成により、スクランブル処理を効率的かつ有効に行いながら、ECM伝送の良好な監視、維持および異常処理等を実現することができる。
【0105】
したがって、本発明の実施の形態に係るスクランブル装置では、番組の情報が伝送されるシステムにおいて、スクランブル処理に関する情報を良好に伝送し、受信側において安定した復号化を実現することができる。
【0106】
また、本発明の実施の形態に係るスクランブル装置では、制御情報処理部14は、制御パケットを所定間隔で多重化装置201へ送信する。制御情報処理部14は、受信部11による制御パケットの受信間隔に基づいて異常を判定する。
【0107】
このような構成により、簡易な処理で、ECMパケットの異常を即時に検出することができる。
【0108】
また、本発明の実施の形態に係るスクランブル装置では、制御情報処理部14は、制御パケットを多重化装置201へ送信してから受信部11が多重化装置201から受信するまでの時間に基づいて異常を判定する。
【0109】
このような構成により、簡易な処理で、たとえばスクランブル鍵の更新を良好に監視することができる。
【0110】
また、本発明の実施の形態に係るスクランブル装置では、制御情報処理部14は、現在時刻に上記所定間隔を加えた値を時刻情報として制御パケットに含める。
【0111】
このような構成により、スクランブル装置101から送信されたECMパケットのタイムスタンプ値の影響で多重化装置201が当該ECMパケットを誤って多重化しない可能性を低減することができる。
【0112】
また、本発明の実施の形態に係るスクランブル装置では、制御情報は、MMT(MPEG Media Transport)方式におけるECM(Entitlement Control Message)である。
【0113】
このような構成により、多重化装置201における入出力の時間差を確定的には決めることができないMMT方式に従う放送システム301において、スクランブル処理を効率的かつ有効に行いながら、ECM伝送の良好な監視、維持および異常処理等を実現することができる。
【0114】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0115】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
【0116】
[付記1]
受信した複数のパケットに時刻情報を含めて多重化して送信する多重化装置からの前記パケットを受信する受信部と、
前記受信部によって受信された前記パケットに含まれる対象情報にスクランブル処理を行うスクランブル部と、
前記スクランブル部によって前記スクランブル処理の行われた前記対象情報を含むパケットを他の装置へ送信する送信部と、
前記スクランブル部によって前記スクランブル処理の行われた前記対象情報の復号化に用いる制御情報を含むパケットである制御パケットを作成して時刻情報を含めて前記多重化装置へ送信する制御情報処理部とを備え、
前記受信部は、前記多重化装置によって多重化されて送信された前記制御パケットを受信し、
前記制御情報処理部は、前記受信部による前記制御パケットの受信タイミングに基づいて異常を判定し、
前記多重化装置における前記パケットの通過遅延時間の要求が定められていない、スクランブル装置。