(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定輪、当該固定輪と同心の配置で設けられている回転輪、前記固定輪と前記回転輪との間に介在している複数の転動体、及び前記複数の転動体を保持する保持器を有している軸受部と、
前記軸受部の軸方向の隣に設けられている付属部と、を備え、
前記付属部は、前記固定輪の軸方向の隣に設けられている付属本体部と、当該付属本体部から軸方向に延び前記保持器と前記回転輪との間に介在している延在部と、を有し、
前記付属本体部は、前記転動体が存在する軸受内部に向かって潤滑油を吐出するポンプを有し、
前記延在部は、前記保持器側及び前記回転輪側のそれぞれに壁部を有することで当該壁部の間に中空部が形成されており、
前記ポンプから吐出した潤滑油が前記中空部を通過して前記軸受内部に向かう構成であり、
前記延在部には、径方向に対して傾斜する方向に貫通し、前記保持器と対向する面及び前記回転輪と対向する面のそれぞれで開口している流路が形成されており、
前記中空部は、前記延在部のうち前記流路が形成されていない部分に設けられている、転がり軸受装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔転がり軸受装置の全体構成〕
図1は、転がり軸受装置1の実施の一形態を示す断面図である。この転がり軸受装置1は、軸7を実質的に支持する軸受部20と、この軸受部20のために機能する付属部40とを備えている。本実施形態の転がり軸受装置1は、工作機械の主軸(軸7)を回転可能に支持するために、軸受ハウジング8に収容された状態にある。
【0013】
〔軸受部20の構成〕
軸受部20は、内輪21、外輪22、複数の玉(転動体)23、及びこれら玉23を保持する保持器24を有している。内輪21は、軸7に外嵌する円筒状の部材であり、その外周に軌道面として軌道溝(以下、内輪軌道溝25という。)が形成されている。外輪22は、軸受ハウジング8の内周面に固定される円筒状の部材であり、その内周に軌道面として軌道溝(以下、外輪軌道溝26という。)が形成されている。本実施形態では、固定輪(固定側の軌道輪)である外輪22に対して、回転輪(回転側の軌道輪)である内輪21が軸7と共に回転する。
【0014】
玉23は、内輪21と外輪22との間に介在しており、内輪軌道溝25及び外輪軌道溝26を転動する。これにより、内輪21と外輪22とは同心の配置となる。本実施形態では、玉23は軌道溝25,26に対して接触角を有して接触しており、この軸受部20はアンギュラ玉軸受を構成している。
【0015】
保持器24は、一対の円環部31,32と、これら円環部31,32を繋ぐ柱部33とを有している。これら円環部31,32と周方向で隣り合う一対の柱部33,33とにより囲まれる領域がポケット27となる。保持器24は、環状の部材からなり、周方向に沿ってポケット27が複数形成されている。そして、各ポケット27に一つの玉23が収容され、これにより、保持器24は、複数の玉23を周方向に並べて保持することができる。円環部31,32それぞれは、内輪21と外輪22との間であって、玉23の軸方向隣に設けられている。第1円環部31の径方向外側面31aは、外輪22の内周面22aに摺接可能であり、この保持器24は外輪22により径方向の位置決めがされる(外輪案内)。
【0016】
〔付属部40の全体構成について〕
付属部40は、全体として円環形状であり、軸受部20の軸方向の隣に設けられている。付属部40は、円環形状である付属本体部41と、この付属本体部41から軸方向に延びて設けられている延在部42とを有している。
【0017】
付属本体部41は、固定輪である外輪22の軸方向の隣に設けられている。本実施形態では、付属本体部41は、外輪22と別体であり外輪間座としての機能も有している。そこで、この付属本体部41は、剛性を有するために金属製であり、内部に空間Sを有する環状の部材(環状のケース)である。この空間Sには、後に説明する潤滑油(オイル)用のタンク62及びポンプ61(
図4参照)が設けられている。なお、付属本体部41は、アキシアル荷重及び予圧を受ける部分のみが金属製であってもよい。つまり、付属本体部41のアキシアル荷重及び予圧を受けない部分は金属でなく樹脂等で構成されていてもよい。この場合、具体的には延在部42が樹脂であってもよい。
【0018】
延在部42は、付属本体部41の一部(径方向内側部分の側面)から玉23の近傍まで軸方向に延びており、保持器24の第1円環部31と内輪21との間に介在している。延在部42は、玉23に向かって延びており、延在部42の先端42aは、玉23の外周面形状(球面形状)に沿った形状(球面形状)を有している。そして、この先端42aと玉23との間には隙間が形成されている。
【0019】
〔延在部42について(その1)〕
図2は、
図1のA矢視の断面図である。本実施形態では、延在部42は環状に設けられており、その外周面(径方向外側面)46は、保持器24の第1円環部31の内周面36と径方向に対向している。また、延在部42の内周面(径方向内側面)47は、内輪21の外周面37と径方向に対向している。そして、この延在部42には、流路50が形成されている。転がり軸受装置1(付属本体部41)の中心線に直交する面(横断面)において、この流路50は、径方向に対して傾斜する方向に貫通している。流路50は、延在部42を横断面において径方向に対して傾斜する方向に貫通していることで、保持器24の第1円環部31と対向する外周面46及び内輪21と対向する内周面47のそれぞれで開口している。
図2において、流路50の保持器24側の開口が第1開口部51であり、内輪21側の開口が第2開口部52である。
【0020】
本実施形態の流路50は、保持器24側から内輪21側へ向かうにしたがって、回転方向(
図2において矢印R1方向)に進む内側傾斜面53を有している。前記回転方向(矢印R1方向)とは、内輪21の回転方向である。なお、外輪22に対して内輪21が回転することで、複数の玉23及び保持器24も同方向に回転することから、前記回転方向(矢印R1方向)は、保持器24の回転方向でもある。また、流路50は、径方向内側に位置する前記内側傾斜面53に対向する外側傾斜面54を有している。
【0021】
図3は、流路50を説明するための
図2の拡大図である。この流路50は、保持器24側から内輪21側に向かうにしたがって流路幅が縮小している部分を有している。なお、前記流路幅は、転がり軸受装置1(付属本体部41)の中心線に直交する断面(横断面)における流路50の幅寸法であり、内側傾斜面53と外側傾斜面54との間隔(付属本体部41と同心で同じ直径の仮想円に沿った間隔寸法)である。本実施形態では、流路50の全長にわたって内輪21側に向かって流路幅が縮小しており、第1開口部51よりも第2開口部52が狭くなっている。つまり、横断面において、内側傾斜面53と外側傾斜面54との間隔が、保持器24側から内輪21側に向かうにしたがって小さくなっている。
【0022】
流路50は、延在部42の少なくとも一箇所に設けられていればよいが、延在部42の複数箇所に形成されていてもよい。流路50の数は、軸受部20のサイズ等に応じて変更可能である。
【0023】
以上の構成を備えた転がり軸受装置1によれば、前記のとおり内輪21が回転すると、同方向に保持器24も回転することから、この保持器24の回転により、保持器24の第1円環部31と延在部42との間の環状空間K1(
図3参照)に存在するエアが、粘性により第1円環部31に引き連れられて周方向に沿って流動する。すると、この周方向に沿って流動するエアの一部は、延在部42に形成されている流路50に沿って流れることができ(
図3の矢印X)、そして、流路50から流れ出たエアは内輪21の外周面37に吹き付けられる。
つまり、保持器24の第1円環部31に引き連れられるエアの一部は、第1開口部51から流路50に入り、第2開口部52から出ることができ、この第2開口部52を出たエアの一部は、径方向内側へ向かう速度成分を有することから、内輪21の外周面37に吹き付けられる。
【0024】
特に本実施形態では、流路50は、第1開口部51側から第2開口部52側に向かうにしたがって流路幅が縮小しているため、エアの一部がこの流路50を通過すると、そのエアの圧力が高まり、内輪21にエアを勢いよく吹き付けることが可能となる。
【0025】
また、内輪21も回転していることから、流路50から流れ出るエアを、この回転する内輪21によって、延在部42との間の環状空間K2に引き込む作用が生じ、流路50におけるエアの流れを活発化させることができる。
【0026】
以上より、本実施形態の転がり軸受装置1では、保持器24及び内輪21の回転エネルギーを活用してエアを流路50から内輪21に吹き付けることができる。このため、従来のように圧縮エアを外部から供給しなくても、流路50を流れるエアにより冷却効果を高めることが可能となり、軸受部20(特に内輪21)の温度上昇を抑制することができる。
【0027】
図3により、流路50に関して更に説明する。流路50を構成する前記内側傾斜面53及び前記外側傾斜面54それぞれは、流れるエアの抵抗が小さくなるように、滑らかな曲面形状を有している。
図3に示す横断面において、内側傾斜面53は凸の曲面からなり、外側傾斜面54は凹の曲面からなる。また、これら曲面は、スパイラル形状となっている。これにより、流路50においてエアが流れやすくなる。
【0028】
また、流路50において、エアの流入口となる第1開口部51の内の回転方向前方側の部分51a、及びエアの流出口となる第2開口部52の内の回転方向後方側の部分52aは、それぞれナイフエッジとならないように面取り形状(R面形状)を有している。これにより、流れるエアの乱れを抑制することができる。
【0029】
図6は、延在部42を径方向外側から見た説明図である。本実施形態の延在部42では、流路50は、延在部42の径方向内側及び径方向外側(開口部51,52)において開口しているのみならず、軸受内部側(
図6では、右側)に向かう軸方向においても開口している。
【0030】
図7は、
図6に示す延在部42の変形例を示す説明図である。
図7に示す延在部42では、流路50は、延在部42の径方向内側及び径方向外側(開口部51,52)において開口しているが、
図6の場合と異なり、軸方向において閉じている。つまり、延在部42は、流路50と軸受内部側(玉23)との間に、流路50を軸方向から閉じるための側壁部69を有している。この側壁部69によれば、回転する玉23に引き連れられるエアが、流路50を流れるエアに対して与える影響を無くすことが可能となる。つまり、内輪21が高速で回転すると、複数の玉23も内輪21の回りを回転し、回転する玉23にエアが引き連れられる。そして、これら玉23に対して延在部42の先端42a(
図1参照)が接近していると、玉23に引き連れられるエアにより、流路50を流れるエアに対して、乱れを生じさせる可能性があるが、
図7に示す前記側壁部69によれば、このような乱れの発生を防ぐことができ、エアは流路50を通って内輪21へ向かってスムーズに流れやすくなる。なお、
図6の形態の方が、
図7の形態と比較して、流路50の成形について容易である。
【0031】
〔付属部40の設備について〕
図4は、
図1に示す断面部分と異なる部分の断面図である。前記のとおり付属部40は、円環形状である付属本体部41を有しており、付属本体部41は外輪22の軸方向の隣に並んで設けられている。そして、付属本体部41は、玉23が存在する軸受内部に向かって潤滑油(オイル)を吐出するポンプ61を有している。
【0032】
本実施形態のポンプ61は、潤滑油を溜める領域である溜り部63と、この溜り部63の潤滑油を吐出口64から押し出すためのアクチュエータ(ピエゾ素子)65とを有している。溜り部63には、タンク62(
図1参照)から潤滑油が供給される。ポンプ61による潤滑油の吐出動作は、図外の制御ユニットにより制御されており、ポンプ61は潤滑油を油滴として玉23に向けて吐出する。吐出口64から吐出される油滴は所定の流速を有しており、吐出口64から飛び出して玉23に当たることができる。ポンプ61からピコリットル単位又はナノリットル単位の極微量の潤滑油が1ショット毎に吐出される。
【0033】
図示しないが、ポンプ61の電源(発電装置や蓄電池等)、各種センサ(温度、振動、油膜状態検出等のためのセンサ)、及びこのセンサの出力に基づいてポンプ61を制御する制御ユニットについても、付属本体部41が備えていてもよい。なお、これらの各部品及びタンク62は、転がり軸受装置1の外部に設けられていてもよい。
【0034】
図5は、
図4のB矢視の断面図である。
図4と
図5において、前記延在部42は、保持器24の第1円環部31側に第1の壁部(外周壁部)66を有しており、また、内輪21側に第2の壁部(内周壁部)67を有している。そして、これら壁部66,67の間に中空部68が形成されている。この中空部68は、延在部42のうち前記流路50が形成されていない部分に設けられている(
図5参照)。そして、この中空部68においてポンプ61の吐出口64が玉23に向かって開口している。この吐出口64から吐出された油滴(潤滑油)は、この中空部68を通過して玉23が存在している軸受内部へ向かい、玉23に到達することができる。
【0035】
延在部42が有しているこれら壁部66,67(中空部68)の意義について説明する。本実施形態の転がり軸受装置1において、内輪21が高速で回転すると、内輪21と外輪22との間の環状空間に存在するエアには、その回転方向の流れが発生する。したがって、これら内輪21及び外輪22を有する軸受部20の隣に設けられているポンプ61から、油滴(潤滑油)を軸受内部に向かって吐出しても、その油滴は前記エアの流れに巻き込まれて効率よく玉23に到達できないおそれがある。
しかし、本実施形態では、前記のとおり、ポンプ61から吐出させた液滴は延在部42の中空部68を通過することとなり、この際、壁部66,67が風防として機能することができ、油滴は玉23が存在する軸受内部に確実に供給され、潤滑油を玉23に到達させることができる。このため、軸受部20において潤滑性を確保することができる。
そして、風防として機能する壁部66,67(中空部68)により、ポンプ61から油滴を玉23の近傍で吐出させなくても、潤滑油を玉23に供給することが可能となる。微量の潤滑油(油滴)を玉23の近傍で吐出させるためには、ポンプ61から細長いノズルが必要となるが、本実施形態の場合では不要となる。
【0036】
〔延在部42の構成(その2)〕
図8は、延在部42に形成される流路50に関する他の形態を示す説明図である。
図3に示す形態では、流路50は、径方向外側(保持器24側)から径方向内側(内輪21側)へ向かうにしたがって、回転方向(
図3において矢印R1方向)に進む内側傾斜面53を有しているのに対して、
図8に示す形態では、流路50の傾斜方向が反対となっている。その他の構成については同じであり、同じ点についての説明は省略する。
【0037】
図8に示すように、延在部42には、流路50が形成されている。転がり軸受装置1(付属本体部41)の中心線に直交する面(横断面)において、この流路50は、径方向に対して傾斜する方向に貫通している。つまり、流路50は、延在部42を横断面において径方向に対して傾斜する方向に貫通していることで、保持器24の第1円環部31と対向する外周面46及び内輪21と対向する内周面47のそれぞれで開口している。
図8において、流路50の保持器24側の開口が第1開口部51であり、内輪21側の開口が第2開口部52である。
【0038】
そして、
図8に示す流路50は、内輪21側から保持器24側へ向かうにしたがって、回転方向(
図8において矢印R1方向)に進む外側傾斜面54を有している。前記回転方向(矢印R1方向)とは、内輪21の回転方向である。なお、外輪22に対して内輪21が回転することで、複数の玉23及び保持器24も同方向に回転することから、前記回転方向(矢印R1方向)は、保持器24の回転方向でもある。また、流路50は、径方向外側に位置する前記外側傾斜面54に対向する内側傾斜面53を有している。
【0039】
この流路50を有する場合、内輪21の回転により、内輪21と延在部42との間の環状空間K2に存在するエアが、粘性により内輪21に引き連れられて周方向に沿って流動する。すると、この周方向に沿って流動するエアの一部は、延在部42に形成されている流路50に沿って流れることができ(
図8の矢印Y)、そして、流路50から流れ出たエアは保持器24の第1円環部31の内周面36、更にはこの保持器24が保持している玉23に吹き付けられる構成となる。
つまり、内輪21に引き連れられるエアの一部は、第2開口部52から流路50に入り、第1開口部51から出ることができ、この第1開口部51を出たエアの一部は、径方向外側へ向かう速度成分を有することから、保持器24の第1円環部31の内周面36に吹き付けられる。
【0040】
特に、
図8の場合、流路50は、内輪21側から保持器24の第1円環部31側に向かうにしたがって、横断面における流路幅が縮小している部分を有している。この構成により、エアが流路を通過するとそのエアの圧力を高め、保持器(転動体)にエアを勢いよく吹き付けることが可能となる。
【0041】
また、保持器24も回転していることから、流路50から流れ出るエアを、この回転する保持器24によって、延在部42との間の環状空間K1に引き込む作用が生じ、流路50におけるエアの流れを活発化させることができる。
【0042】
以上より、
図8に示す転がり軸受装置1では、内輪21及び保持器24の回転エネルギーを活用してエアを流路50から保持器24(玉23)に吹き付けることができる。このため、従来のように圧縮エアを外部から供給しなくても、流路50を流れるエアにより冷却効果を高めることが可能となり、軸受部20(特に保持器24、更には玉23)の温度上昇を抑制することができる。
【0043】
〔その他〕
前記各実施形態の転がり軸受装置1によれば、軸受部20の温度上昇を抑制するために、従来のような圧縮エアを発生させるためのユニットが不要となり、構成の簡素化が図れる。
また、軸7及び内輪21の回転が高速化するにしたがって、延在部42の流路50によるエアを吹き付ける機能が高まることから、この転がり軸受装置1は、高速回転する機器に好適である。
そして、転がり軸受1にポンプ61(
図4及び
図5参照)が組み込まれていることで、長期間メンテナンスフリーとすることができ、また、潤滑油の飛散の少ない低環境負荷の状態で使用することができる。
【0044】
また、本発明の転がり軸受装置1は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
前記実施形態では、軸受部20がアンギュラ玉軸受である場合について説明したが、軸受の形式はこれに限らず、深溝玉軸受であってもよく、また、円すい転がり軸受や、円筒ころ軸受であってよい。また、この転がり軸受装置1を、工作機械の主軸用以外の用途に用いることができる。
【0045】
また、前記各実施形態では、内輪21が回転輪である場合について説明したが、外輪22が回転輪であり、内輪21が固定輪であってもよい。この場合、付属部40が有する延在部42は、外輪22と保持器24の第1円環部31との間に設けられればよい。
また、前記実施形態では、外輪22と付属本体部41とは別体であるが(
図2参照)、外輪22と付属本体部41とを一体不可分とし、これらを単一の環状部材により構成してもよい。
また、付属部40において、ポンプ61は細長いノズルを有し、このノズルの先端を潤滑油の吐出口とする構成であってもよい。
【0046】
本発明について説明する。
軸受の潤滑のために潤滑油を軸受に供給するための手段として、内輪及び外輪等を有する軸受部の隣にポンプを設け、このポンプから潤滑油を軸受内部へ吐出するものがある。
ここで、例えば外輪が固定輪であり内輪が回転輪である場合、内輪が高速で回転すると、内輪と外輪との間の空間に存在するエアには、その回転方向の流れが発生する。したがって、軸受部の隣に設けられているポンプから潤滑油を軸受内部に向かって吐出しても、その潤滑油は前記エアの流れに巻き込まれて効率よく転動体に到達できないことがある。
そこで、
本発明として、固定輪と回転輪との間に吐出した潤滑油を転動体に到達させることが可能となる転がり軸受装置について説明する。なお、この
本発明の理解を容易とするために、
図1〜
図8で用いた符号を括弧書きで示している。
【0047】
本発明の転がり軸受装置は、
固定輪(22)、当該固定輪(22)と同心の配置で設けられている回転輪(21)、前記固定輪(22)と前記回転輪(21)との間に介在している複数の転動体(23)、及び前記複数の転動体(23)を保持する保持器(24)を有している軸受部(20)と、
前記軸受部(20)の軸方向の隣に設けられている付属部(40)と、を備え、
前記付属部(40)は、前記固定輪(22)の軸方向の隣に設けられている付属本体部(41)と、当該付属本体部(41)から軸方向に延び前記保持器(24)と前記回転輪(21)との間に介在している延在部(42)と、を有し、
前記付属本体部(41)は、前記転動体(23)が存在する軸受内部に向かって潤滑油を吐出するポンプ(61)を有し、
前記延在部(42)は、前記保持器(24)側及び前記回転輪(21)側のそれぞれに壁部(66,67)を有することで当該壁部(66,67)の間に中空部(68)が形成されており、
前記ポンプ(61)から吐出した潤滑油が前記中空部(68)を通過して前記軸受内部に向かう構成である。
【0048】
この
転がり軸受装置によれば、ポンプ(61)から吐出させた潤滑油は、延在部(42)の中空部(68)を通過することとなり、この際、前記壁部(66,67)が風防として機能することができ、潤滑油は転動体(23)が存在する軸受内部に供給され、潤滑油を転動体(23)に到達させることができる。この結果、軸受部(20)において潤滑性を確保することができる。
なお、前記の各実施形態(
図1〜
図8)で説明した転がり軸受装置1が備えている各部の構成を、この
発明に適用することができる。