特許第6555273号(P6555273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6555273タングステンを含む材料のダメージを抑制した半導体素子の洗浄液、およびこれを用いた半導体素子の洗浄方法
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  • 特許6555273-タングステンを含む材料のダメージを抑制した半導体素子の洗浄液、およびこれを用いた半導体素子の洗浄方法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555273
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】タングステンを含む材料のダメージを抑制した半導体素子の洗浄液、およびこれを用いた半導体素子の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20190729BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20190729BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20190729BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20190729BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20190729BHJP
   C11D 7/10 20060101ALI20190729BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20190729BHJP
   C11D 7/06 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   H01L21/304 647Z
   H01L21/30 572B
   H01L21/88 B
   C11D17/08
   C11D7/10
   C11D7/32
   C11D7/06
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-558927(P2016-558927)
(86)(22)【出願日】2015年10月2日
(86)【国際出願番号】JP2015078075
(87)【国際公開番号】WO2016076031
(87)【国際公開日】20160519
【審査請求日】2018年7月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-230634(P2014-230634)
(32)【優先日】2014年11月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】尾家 俊行
(72)【発明者】
【氏名】島田 憲司
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−516360(JP,A)
【文献】 特開2008−216843(JP,A)
【文献】 特開2005−292288(JP,A)
【文献】 特開2012−094703(JP,A)
【文献】 特開2009−069505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304−308
H01L 21/027
H01L 21/3205
H01L 21/768
G03F 7/42
C11D 7/02−38
C11D 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低誘電率膜(Low-k膜)と10原子%以上のタングステンを含む材料とを有する半導体素子の表面上のフォトレジストを除去する洗浄液であって、
アルカリ土類金属化合物0.001〜5質量%、無機アルカリおよび/または有機アルカリ0.1〜30質量%、並びに水を含み、
前記アルカリ土類金属化合物が、カルシウム化合物、ストロンチウム化合物、およびバリウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、前記洗浄液。
【請求項2】
前記洗浄液のpH値が10〜14である請求項1に記載の洗浄液。
【請求項3】
前記10原子%以上のタングステンを含む材料が、酸化タングステン、窒化タングステン、タングステン、およびタングステンシリサイドからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の洗浄液。
【請求項4】
前記アルカリ土類金属化合物が、硝酸バリウム、水酸化バリウム、塩化バリウム、酢酸バリウム、酸化バリウム、臭化バリウム、炭酸バリウム、フッ化バリウム、ヨウ化バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、臭化カルシウム、炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、ヨウ化カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、及びリン酸ストロンチウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1から3のいずれかに記載の洗浄液。
【請求項5】
前記無機アルカリが、水酸化リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、酢酸リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酢酸カリウム、水酸化セシウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、酢酸セシウム、およびアンモニアからなる群より選択される1種以上であり、
前記有機アルカリが、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、コリン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ペンチルアミン、へキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、2−メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、および1−アミノ−2−プロパノールからなる群より選択される1種以上である請求項1から4のいずれかに記載の洗浄液。
【請求項6】
実質的に過酸化物、過塩素酸および過塩素酸塩を含まない請求項1から5のいずれかに記載の洗浄液。
【請求項7】
低誘電率膜(Low-k膜)と10原子%以上のタングステンを含む材料とを有する半導体素子の表面上のフォトレジストを除去する洗浄方法であって、請求項1から6のいずれかに記載の洗浄液を用いることを特徴とする洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電率膜とタングステンを含む材料とを有する半導体素子の製造工程において、低誘電率膜とタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、半導体素子の表面上のフォトレジストを除去する洗浄液、およびそれを用いた洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高集積化された半導体素子の製造は通常、シリコンウェハなどの素子上に導電用配線素材となる金属膜などの導電薄膜や、導電薄膜間の絶縁を行う目的の層間絶縁膜を形成した後、その表面にフォトレジストを均一に塗布して感光層を設け、これに選択的露光・現像処理を実施し所望のレジストパターンを作製する。次いでこのレジストパターンをマスクとして層間絶縁膜にドライエッチング処理を施すことにより該薄膜に所望のパターンを形成する。次に、フォトレジストを酸素プラズマによるアッシング、または洗浄液を用いた洗浄により完全に除去するという一連の工程が一般的にとられている。
【0003】
近年、デザインルールの微細化が進み、信号伝送遅延が高速度演算処理の限界を支配するようになってきた。そのため、導電用配線素材がアルミニウムから電気抵抗のより低い銅へと移行し、層間絶縁膜はシリコン酸化膜から低誘電率膜(比誘電率が3より小さい膜。以下、「Low−k膜」と称す)への移行が進んでいる。配線の微細化が進行するに従い、基板との接続を行うコンタクトプラグには耐熱性の高いタングステンを含む材料が使用されている。また、デザインルールの微細化に伴い、トランジスタのゲートの構成が酸化シリコンと多結晶シリコンの組み合わせから高誘電率材料と金属の組み合わせに変更されるようになってきた。この金属として、タングステンを含む材料が用いられる場合がある。また、アルミニウム配線において、異なる層の配線を繋ぐコンタクトプラグにはタングステンを含む材料が用いられる。
【0004】
タングステンを含む材料を用いた半導体素子を製造する工程において、フォトレジストを酸素プラズマで除去する場合、Low-k膜が酸素プラズマなどに曝されてダメージを受け、電気特性が著しく劣化するという問題が生じる。また、タングステンを含む材料が酸素プラズマなどに曝されてダメージを受け、その後の製造工程に不具合が生じる。そのため、Low-k膜とタングステンを含む材料が使用される半導体素子の製造においては、Low-k膜とタングステンを含む材料のダメージを抑制しつつ、酸素プラズマ工程と同程度にフォトレジストを除去することが求められる。
【0005】
洗浄液による処理では、アルカリ性の洗浄液を用いることでフォトレジストを除去できることが知られている。しかし、アルカリ性の洗浄液がタングステンを含む材料に接液すると、タングステンを含む材料に激しくダメージを与えてしまう場合がある。一方、フォトレジストを効果的に除去でき、タングステンを含む材料へのダメージが低減されたアルカリ性の洗浄液も提案されているが(特許文献1、4、8、9)、これらはLow-k膜のダメージを抑制することができない。以上から、フォトレジストを効果的に除去でき、タングステンを含む材料とLow-k膜にダメージを与えないアルカリ性の洗浄液が望まれている。
【0006】
特許文献1には、水酸化カリウムと4級アンモニウム水酸化物と有機溶剤とピラゾールと水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではフォトレジストを除去しつつ、タングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、Low−k膜のダメージを抑制することはできないため、本目的には使用できない(比較例6、7を参照)。
【0007】
特許文献2には、フッ素化合物と金属腐食防止剤と不動態化剤と水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではタングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することと、Low−k膜のダメージを抑制することができないため、本目的には使用できない(比較例8を参照)。
【0008】
特許文献3には、フッ化アンモニウムとグルコン酸と水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではタングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することと、Low−k膜のダメージを抑制することができないため、本目的には使用できない(比較例9を参照)。
【0009】
特許文献4には、リン酸、塩酸、アミン、アラニン型界面活性剤および水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではフォトレジストを除去しつつ、タングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、Low−k膜のダメージを抑制することはできないため、本目的には使用できない(比較例10、11を参照)。
【0010】
特許文献5には、過酸化水素とトリアゾール類と水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではLow−k膜のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することと、タングステンを含む材料のダメージを抑制することができないため、本目的には使用できない(比較例12を参照)。
【0011】
特許文献6には、過酸化水素と4級アンモニウム水酸化物と4級アンモニウム塩と水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではLow−k膜のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することと、タングステンのダメージを抑制することができないため、本目的には使用できない(比較例13を参照)。
【0012】
特許文献7には、アミンとヒドロキシルアミン塩と4級アンモニウム水酸化物と有機酸と有機溶剤と水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではタングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することと、Low−k膜のダメージを抑制することができないため、本目的には使用できない(比較例14を参照)。
【0013】
特許文献8には、N、N−ジエチルヒドロキシルアミンとヒドロキシルアミンと水溶性有機溶剤と金属防食剤と水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではフォトレジストを除去しつつ、タングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、Low−k膜のダメージを抑制することはできないため、本目的には使用できない(比較例15、16を参照)。
【0014】
特許文献9には、無機塩基と4級アンモニウム水酸化物と有機溶剤とアゾールと水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではフォトレジストを除去しつつ、タングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、Low−k膜のダメージを抑制することはできないため、本目的には使用できない(比較例17、18を参照)。
【0015】
特許文献10には、過酸化水素とフッ酸と有機溶剤とアゾールと水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではフォトレジストを除去することができない。さらに、タングステンを含む材料のダメージとLow−k膜のダメージを抑制することもできないため、本目的には使用できない(比較例19を参照)。
【0016】
特許文献11には、フッ酸と有機溶剤とアゾールと水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではタングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することと、Low−k膜のダメージを抑制することができないため、本目的には使用できない(比較例20を参照)。
【0017】
特許文献12には、フッ酸とシリコン含有化合物と界面活性剤とカルボン酸と防食剤と水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではタングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することと、Low−k膜のダメージを抑制することができないため、本目的には使用できない(比較例21を参照)。
【0018】
特許文献13には、糖類とヒドロキシルアミン類と4級アンモニウム化合物と有機酸と水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではLow−k膜のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することと、タングステンを含む材料のダメージを抑制することができないため、本目的には使用できない(比較例22を参照)。
【0019】
特許文献14と特許文献15には、酸またはその塩と窒素原子を含むキレート剤と有機溶剤と水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではタングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することと、Low−k膜のダメージを抑制することができないため、本目的には使用できない(比較例23を参照)。
【0020】
特許文献16には、アルカリ、WzMXy(式中、Mは、Si、Ge、Sn、Pt、P、B、Au、Ir、Os、Cr、Ti、Zr、Rh、RuおよびSbからなる群から選択される金属であり;Xは、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択されるハロゲン化物であり;Wは、H、アルカリまたはアルカリ土類金属および金属イオン不含水酸化物塩基部分から選択され; yは、ハロゲン化金属に応じて、4ないし6の数であり;そして、zは、1、2または3の数である)を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではフォトレジストを除去することはできず、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制することはできないため、本目的には使用できない(比較例24を参照)。また、本発明の洗浄液でタングステンを含む材料のダメージを抑制する目的で配合されているアルカリ土類金属化合物の代わりに、特許文献16記載のWzMXyを配合した洗浄液は、タングステンを含む材料のダメージを抑制することはできず、Low−k膜にダメージを与えてしまう(比較例25を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第2013/187313号
【特許文献2】特表2013−533631号公報
【特許文献3】特開2007−298930号公報
【特許文献4】特開2003−316028号公報
【特許文献5】特開2001−026890号公報
【特許文献6】特開2008−285508号公報
【特許文献7】特開2011−243610号公報
【特許文献8】特開平8−334905号公報
【特許文献9】特開2011−118101号公報
【特許文献10】特開2009−21516号公報
【特許文献11】特開2009−209431号公報
【特許文献12】特開2009−527131号公報
【特許文献13】特開2012−009513号公報
【特許文献14】特開2003−257922号公報
【特許文献15】特開2003−223010号公報
【特許文献16】特表2007−510307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、Low−k膜とタングステンを含む材料とを有する半導体素子の製造工程において、Low−k膜とタングステンを含む材料のダメージを抑制し、該半導体素子の表面上のフォトレジストを除去する洗浄液、およびそれを用いた洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明によれば、上記課題を解決することができる。即ち、本発明は以下のとおりである。
<1> 低誘電率膜(Low-k膜)と10原子%以上のタングステンを含む材料とを有する半導体素子の表面上のフォトレジストを除去する洗浄液であって、アルカリ土類金属化合物0.001〜5質量%、無機アルカリおよび/または有機アルカリ0.1〜30質量%、並びに水を含む、前記洗浄液である。
<2> 前記洗浄液のpH値が10〜14である上記<1>に記載の洗浄液である。
<3> 前記10原子%以上のタングステンを含む材料が、酸化タングステン、窒化タングステン、タングステン、およびタングステンシリサイドからなる群より選択される少なくとも1種である上記<1>または<2>に記載の洗浄液である。
<4> 前記アルカリ土類金属化合物が、カルシウム化合物、ストロンチウム化合物、およびバリウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種である上記<1>から<3>のいずれかに記載の洗浄液である。
<5> 前記無機アルカリが、水酸化リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、酢酸リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酢酸カリウム、水酸化セシウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、酢酸セシウム、およびアンモニアからなる群より選択される1種以上であり、
前記有機アルカリが、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、コリン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ペンチルアミン、へキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、2−メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、および1−アミノ−2−プロパノールからなる群より選択される1種以上である上記<1>から<4>のいずれかに記載の洗浄液である。
<6> 実質的に過酸化物、過塩素酸および過塩素酸塩を含まない上記<1>から<5>のいずれかに記載の洗浄液である。
<7> 低誘電率膜(Low-k膜)と10原子%以上のタングステンを含む材料とを有する半導体素子の表面上のフォトレジストを除去する洗浄方法であって、上記<1>から<6>のいずれかに記載の洗浄液を用いることを特徴とする洗浄方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の洗浄液およびそれを用いた洗浄方法により、半導体素子の製造工程において、Low-k膜とタングステンを含む材料のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを選択的に除去することが可能となり、高精度、高品質の半導体素子を歩留まりよく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】フォトレジスト除去前の半導体素子のタングステンを含む材料とLow−k膜を含む構造の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の洗浄液は、半導体素子を製造する洗浄工程で使用され、その際、フォトレジストを十分満足できる程度に洗浄・除去でき、且つ、Low-k膜とタングステンを含む材料のダメージを抑制することができる。
【0027】
本発明の洗浄液が適用される半導体素子に含まれるタングステンを含む材料は、10原子%以上のタングステンを含む材料であり、そのタングステンの原子組成百分率は、好ましくは15原子%以上であり、より好ましくは20原子%以上であり、さらに好ましくは25原子%以上であり、特に好ましくは30原子%以上である。タングステンを含む材料の具体例は、酸化タングステン、窒化タングステン、タングステン、タングステンシリサイドなどであり、好ましくは酸化タングステン、窒化タングステン、およびタングステンである。しかし、タングステンを含む材料は10原子%以上のタングステンを含む材料であれば、これらに限定されるものではない。
本発明において、タングステンの含有量は、X線光電子分光法(XPS)のイオンスパッタ法により、対象となるタングステンを含む材料のタングステン原子の構成比を測定することにより調べることができる。タングステンを含む材料の表面近傍は酸化されることで酸素原子の構成比が材料の内部よりも高くなる場合がある。そのため、タングステンと酸素の原子の構成比が一定となるまで、イオンスパッタによりタングステンを含む材料の表面をエッチングし、イオンスパッタにより露出したタングステンを含む材料の内部のタングステン原子の構成比を測定することができる。測定装置としては、完全自動XPS分析装置K−Alpha(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いることができる。
【0028】
本発明の洗浄液に含まれるアルカリ土類金属化合物の濃度範囲は0.001〜5質量%であり、好ましくは0.005〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01〜1質量%であり、特に好ましくは0.05〜 0.8質量%である。上記範囲内だとタングステンを含む材料を効果的に防食することができる。濃度範囲が5質量%を超えると、フォトレジストの除去性が低下する場合がある。
本発明者らは、洗浄液に含まれるアルカリ土類金属化合物が、タングステンを含む材料に対して防食効果を示すことを初めて見出した。そのメカニズムは明らかになっていないが、アルカリ土類金属化合物がタングステンの表面に吸着し、洗浄液に含まれるアルカリがタングステンを侵食するのを防いでいると考えられる。
【0029】
アルカリ土類金属化合物の具体例は、カルシウム化合物、ストロンチウム化合物、およびバリウム化合物である。さらに具体的には、硝酸バリウム、水酸化バリウム、塩化バリウム、酢酸バリウム、酸化バリウム、臭化バリウム、炭酸バリウム、フッ化バリウム、ヨウ化バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、臭化カルシウム、炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、ヨウ化カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、リン酸ストロンチウムなどを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
これらの中でも、硝酸バリウム、水酸化バリウム、塩化バリウム、酢酸バリウム、酸化バリウム、臭化バリウム、炭酸バリウム、フッ化バリウム、ヨウ化バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、硝酸カルシウム、および塩化ストロンチウムが好ましい。
これらアルカリ土類金属化合物は、単独または2種類以上を組み合わせて配合できる。
【0030】
本発明の洗浄液に含まれる無機アルカリおよび/または有機アルカリ(両方を使用する場合はそれらの合計)の濃度範囲は0.1〜30質量%であり、好ましくは0.5〜25質量%であり、さらに好ましくは1〜20質量%であり、特に好ましくは2〜15質量%である。上記範囲内だとタングステンを含む材料を効果的に防食することができる。濃度範囲が30質量%を超えると、Low-k膜にダメージを与える場合がある。
【0031】
本発明で使用される無機アルカリとして、水酸化リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、酢酸リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酢酸カリウム、水酸化セシウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、酢酸セシウム、およびアンモニアなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの中でも、水酸化カリウムおよびアンモニアが好ましい。
一方、有機アルカリとして、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、コリン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ペンチルアミン、へキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、2−メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、1−アミノ−2−プロパノールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの中でも、水酸化テトラメチルアンモニウムおよびトリエチルアミンが好ましい。
これらのアルカリは、単独または2種類以上を組み合わせて配合できる。
【0032】
本発明の洗浄液に含まれる水は、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理などによって、金属イオンや有機不純物、パーティクル粒子などが除去された水が好ましく、特に純水、超純水が好ましい。また、洗浄液中の水の濃度は、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上である。その場合、水の濃度は各種薬剤を除いた残部である。
【0033】
本発明の洗浄液のpH値は10〜14の任意の範囲で使用することが好ましい。より好ましいpH値は11〜14であり、さらに好ましくは11.4〜14であり、特に好ましくは12〜14である。この範囲のpH値であるとタングステンを含む材料のダメージを効果的に抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを選択的に除去することができる。
【0034】
本発明の洗浄液は、実質的に過酸化物、過塩素酸および過塩素酸塩を含まない。ここで言う実質的とは、過酸化物、過塩素酸および過塩素酸塩の合計が1質量%未満を意味する。また、本発明の洗浄液の一実施形態は、過酸化物、過塩素酸および過塩素酸塩を全く含まない。過酸化物の具体例としては、過酸化水素、過酸化尿素、メタクロロ過安息香酸、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酢酸、ジ−tert−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化アセトン、メチルエチルケトンペルオキシド、ヘキサメチレントリペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、過酸化リチウム、過酸化カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化ルビジウム、過酸化セシウム、過酸化ベリリウム、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、過酸化バリウム、過酸化亜鉛、過酸化カドミウム、過酸化銅などが挙げられる。一方、過塩素酸なおよび過塩素酸塩の具体例としては、過塩素酸、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸銀、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸バリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸亜鉛、過塩素酸アセチルコリン、過塩素酸鉛、過塩素酸ルビジウム、過塩素酸セシウム、過塩素酸カドミウム、過塩素酸鉄、過塩素酸アルミニウム、過塩素酸ストロンチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸ランタン、過塩素酸インジウム、過塩素酸テトラ−n−ヘキシルアンモニウムなどが挙げられる。
【0035】
本発明の洗浄液には、本発明の目的を損なわない範囲で従来から半導体用洗浄液に使用されている添加剤を配合してもよい。例えば、添加剤として、先に示した過酸化物以外の酸化剤、酸、金属防食剤、水溶性有機溶剤、フッ素化合物、還元剤、キレート剤、界面活性剤、消泡剤などを加えることができる。
【0036】
本発明の洗浄液を使用する温度は10〜85℃であり、好ましくは30〜70℃の範囲であり、エッチングの条件や使用される半導体素子により適宜選択すればよい。
本発明の洗浄方法は、必要に応じて超音波を併用することができる。
本発明の洗浄液を使用する時間は0.1〜120分であり、好ましくは1〜60分の範囲であり、エッチングの条件や使用される半導体素子により適宜選択すればよい。
本発明の洗浄液を使用した後のリンス液としては、アルコールのような有機溶剤を使用することもできるが、水でリンスするだけでも十分である。
【0037】
一般的なLow−k膜として、ヒドロキシシルセスキオキサン(HSQ)系やメチルシルセスオキサン(MSQ)系のOCD(商品名、東京応化工業社製)、炭素ドープ酸化シリコン(SiOC)系のBlack Diamond(商品名、Applied Materials社製)、Aurora(商品名、ASM International社製)、Coral(商品名、Novellus Systems社製)、および無機系のOrion(商品名、Trikon Tencnlogies社製)が使用されるが、Low−k膜はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
次に実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0039】
SEM観察:
半導体素子の洗浄・除去処理前後の状況観察は以下のSEM(走査型電子顕微鏡)装置を用いて、100,000倍で観察した。
測定機器:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡SU9000
判定:
洗浄・除去後の判定はSEM観察後、以下の基準に従った。
I. フォトレジストの除去状態
E:フォトレジストが完全に除去された。
G:フォトレジストが概ね除去された。
P:フォトレジストの除去が不十分であった。
EとG判定を合格とした。
II. タングステンを含む材料のダメージ
E:洗浄前と比べてタングステンを含む材料に変化が見られなかった。
G:洗浄前と比べてタングステンを含む材料に僅かに変化が見られた。
P:タングステンを含む材料に形状の変化が見られた。
EとG判定を合格とした。
III. Low−k膜のダメージ
E:洗浄前と比べてLow−k膜に変化が見られなかった。
G:洗浄前と比べてLow−k膜に僅かに変化が見られた。
P:Low−k膜に形状の変化が見られた。
F:Low−k膜の形状に著しく変化が見られた。
EとG判定を合格とした。
【0040】
実施例1〜10
試験には、図1に示したような断面の配線構造を有する半導体素子を使用し、洗浄効果を調べた。フォトレジスト3を除去するため、表1に記した洗浄液に表2に示した温度、時間で浸漬した。浸漬時は、洗浄液中で撹拌子を350rpmで回転させた。その後、超純水によるリンス、乾燥窒素ガス噴射による乾燥を行った。洗浄後の半導体素子をSEMで観察することにより、フォトレジスト3(図1)の除去状態とタングステンを含む材料1(図1)とLow−k膜2(図1)のダメージを判断した。試験に使用したタングステンを含む材料は酸化タングステンであり、30原子%のタングステンを含んでいた。
なお、タングステンの含有量は、上述した通り、X線光電子分光法(XPS)のイオンスパッタ法により測定した。いずれも測定装置としては、完全自動XPS分析装置K−Alpha(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いた。
【0041】
表2に示した本発明の洗浄液を適用した実施例1〜10においては、タングステンを含む材料1とLow−k膜2のダメージを防ぎながら、フォトレジスト3を完全に除去していることがわかる。
【0042】
比較例1〜5
実施例1〜5で用いた洗浄液(表1、洗浄液1A〜1D)において、硝酸バリウム(アルカリ土類金属化合物)を添加しない洗浄液(表3、洗浄液2A〜2D)で図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と洗浄結果を示した。比較例1〜5に示す洗浄液2A〜2Dに硝酸バリウムを加えた洗浄液(表1、洗浄液1A〜1D)と比べると、フォトレジスト3の除去性とLow−k膜2のダメージに差異はなかったが、タングステンを含む材料1にはいずれもダメージが見られた。よって、2A〜2Dの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。また、これらと実施例6〜10から、アルカリ土類金属化合物がフォトレジスト3の除去性を悪化させずにタングステンを含む材料1のダメージを抑制するのに有用であることがわかる。
【0043】
比較例6、7(特許文献1に記載の発明)
水酸化カリウム0.005質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム10質量%、ジエチレングリコールモノメチルエーテル50質量%、ピラゾール0.1質量%、および水38.895%質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2E)で図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液で50℃、20分間洗浄すると、フォトレジストを除去することはできるが、タングステンを含む材料と、Low−k膜の両材料にダメージを与えた(比較例6)。タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制するため、浸漬時間を25℃、0.5分間と緩和すると、タングステンを含む材料にダメージを与えないが、フォトレジストを除去できず、Low−k膜にダメージを与えた(比較例7)。よって、2Eの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0044】
比較例8(特許文献2に記載の発明)
ベンゾトリアゾール0.1質量%、1,2,4−トリアゾール0.1質量%、フッ化アンモニウム5質量%、ホウ酸1質量%、および水93.8質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2F)で図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではタングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することはできず、Low−k膜にダメージを与えた。よって、2Fの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0045】
比較例9(特許文献3に記載の発明)
フッ化アンモニウム0.25質量%、グルコン酸0.06質量%、および水99.69質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2G)で図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではタングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することはできず、Low−k膜にダメージを与えた。よって、2Gの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0046】
比較例10、11(特許文献4に記載の発明)
リン酸1.35質量%、塩酸1質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム5質量%、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム0.01質量%、および水92.64質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2H)で図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液で6分間洗浄すると、タングステンを含む材料にダメージを与えずに、フォトレジストを除去することはできるが、Low−k膜にダメージを与えた(比較例10)。Low−k膜のダメージを抑制するため、浸漬時間を4分間と短くすると、タングステンを含む材料にダメージを与えないが、フォトレジストを除去できず、Low−k膜にもダメージを与えた(比較例11)。よって、2Hの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0047】
比較例12(特許文献5に記載の発明)
過酸化水素5質量%、アミノトリアゾール0.01質量%、および水94.99質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2I)で図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではLow−k膜のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することはできず、タングステンを含む材料にダメージを与えた。よって、2Iの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0048】
比較例13(特許文献6に記載の発明)
過酸化水素15質量%、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム0.2質量%、エソカードO/12[オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド](ライオン株式会社製)0.001質量%、および水84.799質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2J)で図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではLow−k膜のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することはできず、タングステンを含む材料にダメージを与えた。よって、2Jの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0049】
比較例14(特許文献7に記載の発明)
オクチルアミン1.9質量%、ヒドロキシルアミン硫酸塩6質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム4.9質量%、ギ酸2質量%、2−メチル−4−ペンタンジオール8質量%、および水77.2質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2K)で図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではタングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することはできず、Low−k膜にダメージを与えた。よって、2Kの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0050】
比較例15、16(特許文献8に記載の発明)
N,N−ジエチルヒドロキシルアミン20質量%、ヒドロキシルアミン2質量%、ジメチルスルホキシド53質量%、カテコール10質量%、および水15質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2L)で図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液で50℃、1分間洗浄すると、タングステンを含む材料にダメージを与えずに、フォトレジストを除去することはできるが、Low−k膜にダメージを与えた(比較例15)。Low−k膜のダメージを抑制するため、浸漬時間を0.2分間にすると、タングステンを含む材料にダメージを与えないが、フォトレジストを除去できず、Low−k膜にもダメージを与えた(比較例16)。よって、2Lの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0051】
比較例17、18(特許文献9に記載の発明)
水酸化テトラメチルアンモニウム10質量%、水酸化カリウム0.02質量%、2−フェニル−4−メチルイミダゾール2質量%、ジエチレングリコールモノメチルエーテル20質量%、および水67.98質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2M)で図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液で50℃、10分間洗浄すると、フォトレジストを除去することはできるが、タングステンを含む材料とLow−k膜にダメージを与えた(比較例17)。タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制するため、浸漬温度を30℃に下げ、処理時間を1分と短くすると、タングステンを含む材料にダメージを与えないが、フォトレジストを除去できず、Low−k膜にダメージを与えた(比較例18)。よって、2Mの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0052】
比較例19(特許文献10に記載の発明)
過酸化水素14質量%、フッ酸0.3質量%、ジエチレングリコールモノメチルエーテル58.4質量%、ビニルイミダゾール1質量%、および水26.3質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2N)で図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではフォトレジストを除去することはできず、タングステンを含む材料とLow−k膜にダメージを与えた。よって、2Nの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0053】
比較例20(特許文献11に記載の発明)
フッ酸0.3質量%、ジエチレングリコールモノメチルエーテル60質量%、2−エチル−4−メチルイミダゾール1質量%、および水38.7質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2O)で図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではタングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することはできず、Low−k膜にダメージを与えた。よって、2Oの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0054】
比較例21(特許文献12に記載の発明)
フッ酸0.1質量%、アミノプロピルトリメトキシシラン0.1質量%、ベンゾトリアゾール0.1質量%、エタノール1質量%、酢酸1質量%、および水97.7質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2P)で図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではタングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することはできず、Low−k膜にダメージを与えた。よって、2Pの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0055】
比較例22(特許文献13に記載の発明)
ヒドロキシルアミン硫酸塩2質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム3.4質量%、クエン酸2質量%、ソルビトール0.5質量%、および水92.1質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2Q)で図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではLow−k膜のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することはできず、タングステンを含む材料にダメージを与えた。よって、2Qの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0056】
比較例23(特許文献14、15に記載の発明)
酢酸アンモニウム5質量%、グリシン0.8質量%、アンモニア0.18質量%、ジメチルスルホキシド3.6質量%、および水90.42質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2R)で図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではタングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することはできず、Low−k膜にダメージを与えた。よって、2Rの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0057】
比較例24(特許文献16に記載の発明)
TMAH3.35質量%、CyDTA0.11質量%、過酸化水素1.64質量%、ヘキサフルオロケイ酸0.23質量%、および水94.67質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2S)で図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではフォトレジストを除去することはできず、タングステンを含む材料とLow−k膜にダメージを与えた。よって、2Sの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0058】
比較例25
KOH1質量%、ヘキサフルオロケイ酸0.5質量%、および水98.5質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2T)で図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液では、フォトレジストを除去することはできるが、タングステンを含む材料とLow−k膜にダメージを与えた。よって、2Tの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0059】
【表1】
KOH:水酸化カリウム
NH:アンモニア
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム
TEA:トリエチルアミン
Ba(NO:硝酸バリウム
Ba(OH):水酸化バリウム
BaCl:塩化バリウム
Ca(NO:硝酸カルシウム
SrCl:塩化ストロンチウム
【0060】
【表2】
除去状態I: フォトレジスト3の除去状態
ダメージII: タングステン系の材料1のダメージ
ダメージIII: Low−k膜2のダメージ
【0061】
【表3】
KOH:水酸化カリウム
NH:アンモニア
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム
TEA:トリエチルアミン
【0062】
【表4】
KOH:水酸化カリウム
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム
DGME:ジエチレングリコールモノメチルエーテル
エソカードO/12;[オレイルビス(2‐ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム‐ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド](ライオン株式会社製)
DMSO:ジメチルスルホキシド
CyDTA:trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N‘,N’―四酢酸1水和物
【0063】
【表5】
除去状態I: フォトレジスト3の除去状態
ダメージII: タングステン系の材料1のダメージ
ダメージIII: Low−k膜2のダメージ
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の洗浄液および洗浄方法により、半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去することが可能となり、高精度、高品質の半導体素子を歩留まりよく製造することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0065】
1:タングステンを含む材料
2:層間絶縁膜(Low−k膜)
3:フォトレジスト
図1