【実施例】
【0038】
次に実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0039】
SEM観察:
半導体素子の洗浄・除去処理前後の状況観察は以下のSEM(走査型電子顕微鏡)装置を用いて、100,000倍で観察した。
測定機器:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡SU9000
判定:
洗浄・除去後の判定はSEM観察後、以下の基準に従った。
I. フォトレジストの除去状態
E:フォトレジストが完全に除去された。
G:フォトレジストが概ね除去された。
P:フォトレジストの除去が不十分であった。
EとG判定を合格とした。
II. タングステンを含む材料のダメージ
E:洗浄前と比べてタングステンを含む材料に変化が見られなかった。
G:洗浄前と比べてタングステンを含む材料に僅かに変化が見られた。
P:タングステンを含む材料に形状の変化が見られた。
EとG判定を合格とした。
III. Low−k膜のダメージ
E:洗浄前と比べてLow−k膜に変化が見られなかった。
G:洗浄前と比べてLow−k膜に僅かに変化が見られた。
P:Low−k膜に形状の変化が見られた。
F:Low−k膜の形状に著しく変化が見られた。
EとG判定を合格とした。
【0040】
実施例1〜10
試験には、
図1に示したような断面の配線構造を有する半導体素子を使用し、洗浄効果を調べた。フォトレジスト3を除去するため、表1に記した洗浄液に表2に示した温度、時間で浸漬した。浸漬時は、洗浄液中で撹拌子を350rpmで回転させた。その後、超純水によるリンス、乾燥窒素ガス噴射による乾燥を行った。洗浄後の半導体素子をSEMで観察することにより、フォトレジスト3(
図1)の除去状態とタングステンを含む材料1(
図1)とLow−k膜2(
図1)のダメージを判断した。試験に使用したタングステンを含む材料は酸化タングステンであり、30原子%のタングステンを含んでいた。
なお、タングステンの含有量は、上述した通り、X線光電子分光法(XPS)のイオンスパッタ法により測定した。いずれも測定装置としては、完全自動XPS分析装置K−Alpha(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いた。
【0041】
表2に示した本発明の洗浄液を適用した実施例1〜10においては、タングステンを含む材料1とLow−k膜2のダメージを防ぎながら、フォトレジスト3を完全に除去していることがわかる。
【0042】
比較例1〜5
実施例1〜5で用いた洗浄液(表1、洗浄液1A〜1D)において、硝酸バリウム(アルカリ土類金属化合物)を添加しない洗浄液(表3、洗浄液2A〜2D)で
図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と洗浄結果を示した。比較例1〜5に示す洗浄液2A〜2Dに硝酸バリウムを加えた洗浄液(表1、洗浄液1A〜1D)と比べると、フォトレジスト3の除去性とLow−k膜2のダメージに差異はなかったが、タングステンを含む材料1にはいずれもダメージが見られた。よって、2A〜2Dの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。また、これらと実施例6〜10から、アルカリ土類金属化合物がフォトレジスト3の除去性を悪化させずにタングステンを含む材料1のダメージを抑制するのに有用であることがわかる。
【0043】
比較例6、7(特許文献1に記載の発明)
水酸化カリウム0.005質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム10質量%、ジエチレングリコールモノメチルエーテル50質量%、ピラゾール0.1質量%、および水38.895%質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2E)で
図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液で50℃、20分間洗浄すると、フォトレジストを除去することはできるが、タングステンを含む材料と、Low−k膜の両材料にダメージを与えた(比較例6)。タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制するため、浸漬時間を25℃、0.5分間と緩和すると、タングステンを含む材料にダメージを与えないが、フォトレジストを除去できず、Low−k膜にダメージを与えた(比較例7)。よって、2Eの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0044】
比較例8(特許文献2に記載の発明)
ベンゾトリアゾール0.1質量%、1,2,4−トリアゾール0.1質量%、フッ化アンモニウム5質量%、ホウ酸1質量%、および水93.8質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2F)で
図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではタングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することはできず、Low−k膜にダメージを与えた。よって、2Fの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0045】
比較例9(特許文献3に記載の発明)
フッ化アンモニウム0.25質量%、グルコン酸0.06質量%、および水99.69質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2G)で
図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではタングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することはできず、Low−k膜にダメージを与えた。よって、2Gの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0046】
比較例10、11(特許文献4に記載の発明)
リン酸1.35質量%、塩酸1質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム5質量%、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム0.01質量%、および水92.64質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2H)で
図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液で6分間洗浄すると、タングステンを含む材料にダメージを与えずに、フォトレジストを除去することはできるが、Low−k膜にダメージを与えた(比較例10)。Low−k膜のダメージを抑制するため、浸漬時間を4分間と短くすると、タングステンを含む材料にダメージを与えないが、フォトレジストを除去できず、Low−k膜にもダメージを与えた(比較例11)。よって、2Hの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0047】
比較例12(特許文献5に記載の発明)
過酸化水素5質量%、アミノトリアゾール0.01質量%、および水94.99質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2I)で
図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではLow−k膜のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することはできず、タングステンを含む材料にダメージを与えた。よって、2Iの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0048】
比較例13(特許文献6に記載の発明)
過酸化水素15質量%、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム0.2質量%、エソカードO/12[オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド](ライオン株式会社製)0.001質量%、および水84.799質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2J)で
図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではLow−k膜のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することはできず、タングステンを含む材料にダメージを与えた。よって、2Jの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0049】
比較例14(特許文献7に記載の発明)
オクチルアミン1.9質量%、ヒドロキシルアミン硫酸塩6質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム4.9質量%、ギ酸2質量%、2−メチル−4−ペンタンジオール8質量%、および水77.2質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2K)で
図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではタングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することはできず、Low−k膜にダメージを与えた。よって、2Kの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0050】
比較例15、16(特許文献8に記載の発明)
N,N−ジエチルヒドロキシルアミン20質量%、ヒドロキシルアミン2質量%、ジメチルスルホキシド53質量%、カテコール10質量%、および水15質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2L)で
図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液で50℃、1分間洗浄すると、タングステンを含む材料にダメージを与えずに、フォトレジストを除去することはできるが、Low−k膜にダメージを与えた(比較例15)。Low−k膜のダメージを抑制するため、浸漬時間を0.2分間にすると、タングステンを含む材料にダメージを与えないが、フォトレジストを除去できず、Low−k膜にもダメージを与えた(比較例16)。よって、2Lの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0051】
比較例17、18(特許文献9に記載の発明)
水酸化テトラメチルアンモニウム10質量%、水酸化カリウム0.02質量%、2−フェニル−4−メチルイミダゾール2質量%、ジエチレングリコールモノメチルエーテル20質量%、および水67.98質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2M)で
図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液で50℃、10分間洗浄すると、フォトレジストを除去することはできるが、タングステンを含む材料とLow−k膜にダメージを与えた(比較例17)。タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制するため、浸漬温度を30℃に下げ、処理時間を1分と短くすると、タングステンを含む材料にダメージを与えないが、フォトレジストを除去できず、Low−k膜にダメージを与えた(比較例18)。よって、2Mの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0052】
比較例19(特許文献10に記載の発明)
過酸化水素14質量%、フッ酸0.3質量%、ジエチレングリコールモノメチルエーテル58.4質量%、ビニルイミダゾール1質量%、および水26.3質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2N)で
図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではフォトレジストを除去することはできず、タングステンを含む材料とLow−k膜にダメージを与えた。よって、2Nの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0053】
比較例20(特許文献11に記載の発明)
フッ酸0.3質量%、ジエチレングリコールモノメチルエーテル60質量%、2−エチル−4−メチルイミダゾール1質量%、および水38.7質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2O)で
図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではタングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することはできず、Low−k膜にダメージを与えた。よって、2Oの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0054】
比較例21(特許文献12に記載の発明)
フッ酸0.1質量%、アミノプロピルトリメトキシシラン0.1質量%、ベンゾトリアゾール0.1質量%、エタノール1質量%、酢酸1質量%、および水97.7質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2P)で
図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではタングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することはできず、Low−k膜にダメージを与えた。よって、2Pの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0055】
比較例22(特許文献13に記載の発明)
ヒドロキシルアミン硫酸塩2質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム3.4質量%、クエン酸2質量%、ソルビトール0.5質量%、および水92.1質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2Q)で
図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではLow−k膜のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することはできず、タングステンを含む材料にダメージを与えた。よって、2Qの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0056】
比較例23(特許文献14、15に記載の発明)
酢酸アンモニウム5質量%、グリシン0.8質量%、アンモニア0.18質量%、ジメチルスルホキシド3.6質量%、および水90.42質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2R)で
図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではタングステンを含む材料のダメージを抑制することはできるが、フォトレジストを除去することはできず、Low−k膜にダメージを与えた。よって、2Rの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0057】
比較例24(特許文献16に記載の発明)
TMAH3.35質量%、CyDTA0.11質量%、過酸化水素1.64質量%、ヘキサフルオロケイ酸0.23質量%、および水94.67質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2S)で
図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液ではフォトレジストを除去することはできず、タングステンを含む材料とLow−k膜にダメージを与えた。よって、2Sの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0058】
比較例25
KOH1質量%、ヘキサフルオロケイ酸0.5質量%、および水98.5質量%を含む洗浄液(表4、洗浄液2T)で
図1に示した半導体素子を洗浄した。表5に洗浄条件と評価結果を示した。この洗浄液では、フォトレジストを除去することはできるが、タングステンを含む材料とLow−k膜にダメージを与えた。よって、2Tの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、タングステンを含む材料とLow−k膜のダメージを抑制し、被処理物の表面のフォトレジストを除去する目的には使用できないことがわかる(表5)。
【0059】
【表1】
KOH:水酸化カリウム
NH
3:アンモニア
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム
TEA:トリエチルアミン
Ba(NO
3)
2:硝酸バリウム
Ba(OH)
2:水酸化バリウム
BaCl
2:塩化バリウム
Ca(NO
3)
2:硝酸カルシウム
SrCl
2:塩化ストロンチウム
【0060】
【表2】
除去状態I: フォトレジスト3の除去状態
ダメージII: タングステン系の材料1のダメージ
ダメージIII: Low−k膜2のダメージ
【0061】
【表3】
KOH:水酸化カリウム
NH
3:アンモニア
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム
TEA:トリエチルアミン
【0062】
【表4】
KOH:水酸化カリウム
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム
DGME:ジエチレングリコールモノメチルエーテル
エソカードO/12;[オレイルビス(2‐ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム‐ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド](ライオン株式会社製)
DMSO:ジメチルスルホキシド
CyDTA:trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N‘,N’―四酢酸1水和物
【0063】
【表5】
除去状態I: フォトレジスト3の除去状態
ダメージII: タングステン系の材料1のダメージ
ダメージIII: Low−k膜2のダメージ