【実施例】
【0039】
次に、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0040】
SEM観察
測定機器:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡SU9000を用い、倍率10万倍で観察した。
判定:
I. ドライエッチング残渣の除去状態
E:ドライエッチング残渣が完全に除去された。
P:ドライエッチング残渣の除去が不十分であった。
E判定を合格とした。
II. タングステンを含む材料のダメージ
E:洗浄前と比べてタングステンを含む材料に変化が見られなかった。
G:タングステンを含む材料の表面に少し荒れが見られた。
P:タングステンを含む材料に大きな穴が見られた。
EとG判定を合格とした。
III. コバルトのダメージ
E:洗浄前と比べてコバルトに変化が見られなかった。
P:洗浄前と比べてコバルトに変化が見られた。
E判定を合格とした。
IV. Low−k膜のダメージ
E:洗浄前と比べてLow−k膜に変化が見られなかった。
G:Low−k膜がわずかにくぼんでいた。
P:Low−k膜が大きくくぼんでいた。
EとG判定を合格とした。
V. ハードマスクのダメージ
E:洗浄前と比べてハードマスクに変化が見られなかった。
P:ハードマスクに剥がれまたは形状の変化が見られた。
E判定を合格とした。
【0041】
実施例1〜27
試験には、
図1および
図2に示す層を有する半導体素子を使用した。ドライエッチング残渣1を除去するため、表1に記した洗浄液に表2に示した温度、時間で半導体素子を浸漬し、その後、超純水によるリンス、乾燥窒素ガス噴射による乾燥を行った。洗浄後の半導体素子をSEMで観察することにより、ドライエッチング残渣1の除去状態と、タングステンを含む材料3、コバルト4、Low−k膜2、およびハードマスク6のダメージを判断した。試験に使用したハードマスク6は酸化チタンであり、30原子%のチタンを含んでいた。また、試験に使用したタングステンを含む材料は酸化タングステンであり、40原子%のタングステンを含んでいた。
なお、チタンとタングステンの含有量は、上述した通り、X線光電子分光法(XPS)のイオンスパッタ法により測定した。いずれも測定装置としては、完全自動XPS分析装置K−Alpha(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いた。
【0042】
表2に示した本発明の洗浄液を適用した実施例1〜27においては、タングステンを含む材料3、コバルト4、Low−k膜2、およびハードマスク6のダメージを防ぎながら、ドライエッチング残渣1を完全に除去していることがわかる。また、いずれの実施例においても、バリアメタル7およびバリア絶縁膜5にはダメージが見られなかった。
【0043】
比較例1(アルカリ金属化合物なし)
過酸化水素6質量%、1,2,4−トリアゾール1質量%、硝酸バリウム0.001質量%、および水92.999質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2A)で
図1および
図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、洗浄条件と評価結果を表4に示した。ドライエッチング残渣1は除去できなかった。Low−k膜2、ハードマスク6およびタングステンを含む材料3のダメージは防いだものの、コバルト4にダメージが見られた。よって、2Aの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルトまたはコバルト合金を含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0044】
比較例2(過酸化物なし)
水酸化カリウム0.6質量%、1,2,4−トリアゾール1質量%、硝酸バリウム0.001質量%、および水98.399質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2B)で
図1および
図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去できなかった。Low−k膜2、ハードマスク6およびタングステンを含む材料3のダメージは防いだものの、コバルト4にダメージが見られた。よって、2Bの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルトまたはコバルト合金を含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0045】
比較例3(防食剤なし)
水酸化カリウム0.6質量%、過酸化水素6質量%、硝酸バリウム0.001質量%、および水93.399質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2C)で
図1および
図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去でき、またLow−k膜2、ハードマスク6およびタングステンを含む材料3のダメージは防いだ。しかし、コバルト4にダメージが見られた。よって、2Cの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルトまたはコバルト合金を含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0046】
比較例4(アルカリ土類金属化合物なし)
水酸化カリウム0.6質量%、過酸化水素6質量%、1,2,4−トリアゾール1質量%、および水92.4質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2D)で
図1および
図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去でき、またLow−k膜2とコバルト4のダメージは防いだ。しかし、タングステンを含む材料3とハードマスク6にダメージが見られた。よって、2Dの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0047】
比較例5(アルカリ土類金属化合物なし)
水酸化カリウム0.01質量%、過酸化水素0.01質量%、1,2,4−トリアゾール1質量%、および水98.98質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2E)で
図1および
図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去でき、Low−k膜2およびコバルト4のダメージは防いだ。しかし、タングステンを含む材料3およびハードマスク6にダメージが見られた。よって、2Eの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0048】
比較例6(特許文献1、4に記載の発明)
水酸化カリウム0.6質量%、過酸化水素6質量%、ベンゾトリアゾール0.1質量%、ポリエチレンイミン(分子量1800)0.01質量%、および水93.29質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2F)で
図1および
図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去でき、Low−k膜2のダメージは防いだ。しかし、タングステンを含む材料3、コバルト4およびハードマスク6にダメージが見られた。よって、2Fの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0049】
比較例7(特許文献2、4に記載の発明)
水酸化カリウム0.6質量%、過酸化水素6質量%、5−アミノ−1H−テトラゾール0.1質量%、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール0.1質量%、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール0.01質量%、および水93.19質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2G)で
図1および
図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去でき、Low−k膜2のダメージは防いだ。しかし、タングステンを含む材料3、コバルト4およびハードマスク6にダメージが見られた。よって、2Gの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0050】
比較例8(特許文献3、4に記載の発明)
水酸化カリウム0.6質量%、過酸化水素6質量%、ベンゾトリアゾール0.102質量%、硫酸銅5水和物0.125質量%、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール0.01質量%、および水93.163質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2H)で
図1および
図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去でき、Low−k膜2のダメージは防いだ。しかし、タングステンを含む材料3、コバルト4およびハードマスク6にダメージが見られた。よって、2Hの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0051】
比較例9(特許文献1、5に記載の発明)
水酸化カリウム0.6質量%、過酸化水素6質量%、ベンゾトリアゾール0.1質量%、エソカードO/12[オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド](ライオン株式会社製)0.001質量%、および水93.299質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2I)で
図1および
図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去でき、Low−k膜2のダメージは防いだ。しかし、タングステンを含む材料3、コバルト4およびハードマスク6にダメージが見られた。よって、2Iの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0052】
比較例10(特許文献2、5に記載の発明)
水酸化カリウム0.6質量%、過酸化水素6質量%、5−アミノ−1H−テトラゾール0.1質量%、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール0.1質量%、エソカードO/12[オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド](ライオン株式会社製)0.001質量%、および水93.199質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2J)で
図1および
図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去でき、Low−k膜2のダメージは防いだ。しかし、タングステンを含む材料3、コバルト4およびハードマスク6にダメージが見られた。よって、2Jの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0053】
比較例11(特許文献3、5に記載の発明)
水酸化カリウム0.6質量%、過酸化水素6質量%、ベンゾトリアゾール0.102質量%、硫酸銅5水和物0.125質量%、エソカードO/12[オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド](ライオン株式会社製)0.001質量%、および水93.172質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2K)で
図1および
図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去でき、Low−k膜2のダメージは防いだ。しかし、タングステンを含む材料3、コバルト4およびハードマスク6にダメージが見られた。よって、2Kの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0054】
比較例12(特許文献6に記載の発明)
リン酸1.35質量%、塩酸1質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム5質量%、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム0.01質量%、および水92.64質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2L)で
図1および
図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去できなかった。Low−k膜2、ハードマスク6およびタングステンを含む材料3のダメージは防いだものの、コバルト4にダメージが見られた。よって、2Lの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルトまたはコバルト合金を含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0055】
比較例13(特許文献7に記載の発明)
水酸化テトラメチルアンモニウム12質量%、過酸化水素5質量%、水酸化カリウム2質量%、トリエタノールアミン35質量%、および水46質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2M)で
図1および
図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去できなかった。Low−k膜2、ハードマスク6およびコバルト4のダメージは防いだものの、タングステンを含む材料3にダメージが見られた。よって、2Mの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0056】
比較例14(特許文献8に記載の発明)
水酸化カリウム2.6質量%、過酸化水素0.9質量%、オルト過ヨウ素酸2質量%、エチレンジアミン0.03質量%、ジエチレントリアミン0.01質量%、サーフィノール465[2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールに65mol%のエチレンオキシドが付加した組成物](エアープロダクツジャパン株式会社製)0.02質量%、セチルトリメチルアンモニウムクロリド0.02質量%、N−メチルピロリドン10質量%、および水84.42質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2N)で
図1および
図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。Low−k膜2、ハードマスク6およびコバルト4のダメージは防いだものの、ドライエッチング残渣1は除去できず、タングステンを含む材料3にダメージが見られた。よって、2Nの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0057】
比較例15(特許文献9に記載の発明)
ベンゾトリアゾール0.1質量%、1,2,4−トリアゾール0.1質量%、フッ化アンモニウム5質量%、ホウ酸1質量%、および水93.8質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2O)で
図1および
図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ハードマスク6、タングステンを含む材料3およびコバルト4のダメージは防いだものの、ドライエッチング残渣1は除去できず、Low−k膜2にダメージが見られた。よって、2Oの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0058】
比較例16
水酸化カリウム1.2質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム16.5質量%、グリセリン30質量%、過酸化水素0.009質量%、および水 52.291質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2P)で
図1および
図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ハードマスク6、タングステンを含む材料3およびコバルト4のダメージは防いだものの、ドライエッチング残渣1は除去できず、Low−k膜2にダメージが見られた。よって、2Pの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0059】
【表1】
KOH:水酸化カリウム
K
2CO
3:炭酸カリウム
KNO
3:硝酸カリウム
Li
2CO
3:炭酸リチウム
LiOH:水酸化リチウム
NaOH:水酸化ナトリウム
Cs
2CO
3:炭酸セシウム
mCPBA:メタクロロ過安息香酸
TBHP:tert−ブチルヒドロペルオキシド
1,2,4−TAZ:1、2、4−トリアゾール
Ba(NO
3)
2:硝酸バリウム
Ca(OH)
2:水酸化カルシウム
SrCO
3:炭酸ストロンチウム
BaSO
4:硫酸バリウム
【0060】
【表2】
除去状態I:ドライエッチング残渣1の除去状態
ダメージII:タングステンを含む材料3のダメージ
ダメージIII:コバルト4のダメージ
ダメージIV:Low−k膜2のダメージ
ダメージV:ハードマスク6のダメージ
【0061】
【表3】
エソカードO/12;[オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム−ビス)トリフルオロメタンスルホニル)イミド](ライオン株式会社製)
サーフィノール465;[2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールに65mol%のエチレンオキシドが付加した組成物](エアープロダクツジャパン株式会社製)
【0062】
【表4】
除去状態I:ドライエッチング残渣1の除去状態
ダメージII:タングステンを含む材料3のダメージ
ダメージIII:コバルト4のダメージ
ダメージIV:Low−k膜2のダメージ
ダメージV:ハードマスク6のダメージ