特許第6555274号(P6555274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6555274コバルトのダメージを抑制した半導体素子の洗浄液、およびこれを用いた半導体素子の洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555274
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】コバルトのダメージを抑制した半導体素子の洗浄液、およびこれを用いた半導体素子の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20190729BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20190729BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20190729BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20190729BHJP
   C11D 7/10 20060101ALI20190729BHJP
   C11D 7/18 20060101ALI20190729BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20190729BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20190729BHJP
   C11D 7/38 20060101ALI20190729BHJP
   C11D 7/06 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   H01L21/304 647Z
   H01L21/88 B
   C11D17/08
   C11D7/10
   C11D7/18
   C11D7/26
   C11D7/32
   C11D7/38
   C11D7/06
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-558929(P2016-558929)
(86)(22)【出願日】2015年10月2日
(86)【国際出願番号】JP2015078077
(87)【国際公開番号】WO2016076033
(87)【国際公開日】20160519
【審査請求日】2018年7月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-230636(P2014-230636)
(32)【優先日】2014年11月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】尾家 俊行
(72)【発明者】
【氏名】島田 憲司
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−212818(JP,A)
【文献】 特開2009−069505(JP,A)
【文献】 特開2002−198346(JP,A)
【文献】 特開2012−094703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304−308
H01L 21/027
H01L 21/3205
H01L 21/768
G03F 7/42
C11D 7/02−38
C11D 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低誘電率膜(Low−k膜)と、(1)コバルトまたはコバルト合金を含む材料、あるいは(2)コバルトまたはコバルト合金およびタングステンを含む材料とを有する半導体素子の表面のドライエッチング残渣を除去する洗浄液であって、アルカリ金属化合物0.001〜7質量%、過酸化物0.005〜35質量%、防食剤0.005〜10質量%、アルカリ土類金属化合物0.000001〜1質量%および水を含む、前記洗浄液。
【請求項2】
前記アルカリ金属化合物が、水酸化リチウム、硫酸リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、硝酸リチウム、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、酢酸リチウム、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硝酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硝酸カリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、酢酸カリウム、水酸化セシウム、硫酸セシウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、硝酸セシウム、フッ化セシウム、塩化セシウム、臭化セシウム、ヨウ化セシウム、および酢酸セシウムからなる群より選択される少なくとも1種以上である請求項1に記載の洗浄液。
【請求項3】
前記過酸化物が、過酸化水素、過酸化尿素、メタクロロ過安息香酸、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酢酸、ジ−tert−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化アセトン、メチルエチルケトンペルオキシド、ヘキサメチレントリペルオキシド、およびクメンヒドロペルオキシドからなる群より選択される少なくとも1種以上である請求項1または2に記載の洗浄液。
【請求項4】
前記防食剤が、ジアミン化合物、アルカノールアミン化合物、ピラゾール化合物、イミダゾール化合物、およびトリアゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上である請求項1から3のいずれかに記載の洗浄液。
【請求項5】
前記ジアミン化合物が、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、および1,4−ブタンジアミンからなる群より選択される少なくとも1種以上である請求項4に記載の洗浄液。
【請求項6】
前記アルカノールアミン化合物が、2−アミノエタノール、2−メチルアミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、および1−アミノ−3−プロパノールからなる群より選択される少なくとも1種以上である請求項4に記載の洗浄液。
【請求項7】
前記ピラゾール化合物が、ピラゾール、および3,5−ジメチルピラゾールからなる群より選択される少なくとも1種以上である請求項4に記載の洗浄液。
【請求項8】
前記イミダゾール化合物が、1−メチルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、および5―メチルベンゾイミダゾールからなる群より選択される少なくとも1種以上である請求項4に記載の洗浄液。
【請求項9】
前記トリアゾール化合物が、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、および5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールからなる群より選択される少なくとも1種以上である請求項4に記載の洗浄液。
【請求項10】
前記アルカリ土類金属化合物が、カルシウム化合物、ストロンチウム化合物、およびバリウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上である請求項1から9のいずれかに記載の洗浄液。
【請求項11】
低誘電率膜(Low−k膜)と、(1)コバルトまたはコバルト合金を含む材料、あるいは(2)コバルトまたはコバルト合金およびタングステンを含む材料とを有する基板上に、ハードマスクパターンを形成し、次いでこのハードマスクパターンをマスクとして、前記低誘電率膜(Low−k膜)にドライエッチング処理を施した半導体素子を洗浄して、該半導体素子の表面のドライエッチング残渣を除去する洗浄方法であって、請求項1から10のいずれかに記載の洗浄液を用いることを特徴とする、前記洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体素子の製造工程において、少なくとも、低誘電率層間絶縁膜と、(1)コバルトまたはコバルト合金を含む材料、あるいは(2)コバルトまたはコバルト合金およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、半導体素子の表面に存在するドライエッチング残渣を除去する洗浄液、およびこれを用いた半導体素子の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高集積化された半導体素子の製造は、通常シリコンウェハなどの素子上に、導電用配線素材となる金属膜などの導電薄膜や、導電薄膜間の絶縁を行う目的の層間絶縁膜を形成した後、その表面にフォトレジストを均一に塗布して感光層を設け、これに選択的露光・現像処理を実施し所望のレジストパターンを作製する。次いでこのレジストパターンをマスクとして層間絶縁膜にドライエッチング処理を施すことにより該薄膜に所望のパターンを形成する。そして、レジストパターンおよびドライエッチング処理により発生した残渣物(以下、「ドライエッチング残渣」と称す)などを酸素プラズマによるアッシングを行い、その後、洗浄液などを用いて完全に除去するという一連の工程が一般的にとられている。
【0003】
近年、デザインルールの微細化が進み、信号伝送遅延が高速度演算処理の限界を支配するようになってきた。そのため、導電用配線素材がアルミニウムから電気抵抗のより低い銅へと移行し、層間絶縁膜はシリコン酸化膜から低誘電率膜(比誘電率が3より小さい膜。以下、「Low−k膜」と称す)への移行が進んでいる。しかし、配線の微細化が進行するに従い、配線を流れる電流密度が増大することにより銅のエレクトロマイグレーションが起こりやすくなる。そのため銅に代わる信頼性の高い配線材料としてコバルトを用いる技術や、銅のエレクトロマイグレーションを防止するキャップメタルとしてコバルト合金を導入する技術が報告されている。また、0.2μm以下のパターンでは、膜厚1μmのレジストにおけるパターンのアスペクト比(レジスト膜厚をレジスト線幅で割った比)が大きくなりすぎ、パターンが倒壊するなどの問題が生じている。これを解決するために、実際に形成したいパターン膜とレジスト膜の間にチタンあるいはシリコンを含む膜(以下、「ハードマスク」と称す)を挿入し、一旦レジストパターンをハードマスクにドライエッチングで転写し、その後、このハードマスクをエッチングマスクとして、ドライエッチングにより実際に形成したい膜にパターンを転写するハードマスク法が使われることがある。この方法は、ハードマスクをエッチングするときのガスと実際に形成したい膜をエッチングするときのガスを変更することができ、ハードマスクをエッチングするときにレジストとの選択比がとれ、実際の膜をエッチングするときにはハードマスクとの選択比がとれるガスを選ぶことができるので、薄いレジストでパターンを形成できる利点がある。また、基板との接続を行うコンタクトプラグにはタングステンを含む材料が使用される。
【0004】
ドライエッチング残渣を酸素プラズマで除去する場合、Low−k膜、コバルトおよびコバルト合金、バリアメタル、およびバリア絶縁膜が酸素プラズマなどに曝されてダメージを受け、電気特性が著しく劣化するという問題が生じる。そのため、Low−k膜が使用される半導体素子の製造においては、Low−k膜、コバルトおよびコバルト合金、バリアメタル、およびバリア絶縁膜のダメージを抑制しつつ、酸素プラズマ工程と同程度にドライエッチング残渣を除去する方法が求められる。さらにコンタクトプラグが露出する層でも使用するために、タングステンを含む材料のダメージを抑制することも求められる場合がある。また、ハードマスクを用いる場合には、ハードマスクを含む材料に対するダメージも抑制しなければならない。
【0005】
特許文献1には、ベンゾトリアゾールなどを用いたコバルトの腐食防止方法が提案されている。しかし、この方法では、コバルトのダメージを満足できる程度に抑制することはできていない(比較例6、9を参照)。
【0006】
特許文献2には、5−アミノ−1H−テトラゾールと1−ヒドロキシベンゾトリアゾールの組み合わせを用いたコバルトの腐食防止方法が提案されている。しかしながら、この方法では、コバルトのダメージを満足できる程度に抑制することはできていない(比較例7、10を参照)。
【0007】
特許文献3には、銅(II)イオンとベンゾトリアゾールなどを用い、コバルト上に腐食防止膜を形成するコバルトの腐食防止方法が提案されているが、この方法では、コバルトのダメージを満足できる程度に抑制することはできていない(比較例8、11を参照)。
【0008】
特許文献4には、4−アミノ−1,2,4−トリアゾールやポリエチレンイミンを用いたタングステンの腐食防止方法が提案されている。しかしながら、この方法では、タングステンを含む材料のダメージを満足できる程度に抑制することはできていない(比較例6、7、8を参照)。
【0009】
特許文献5には、第4級アンモニウム塩やピリジニウム、ビピリジニウム、イミダゾリウム塩を用いたタングステンの腐食防止方法が提案されている。しかしながら、この方法では、タングステンを含む材料のダメージを満足できる程度に抑制することはできていない(比較例9、10、11を参照)。
【0010】
特許文献6には、リン酸と塩酸と第1〜第4級アミンとアミノ酸型界面活性剤と水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液では残渣を満足できる程度に除去することができず、またコバルトのダメージを満足できる程度に抑制することができないため、本目的には使用できない(比較例12を参照)。
【0011】
特許文献7には、酸化剤と第4級アンモニウム水酸化物とアルカノールアミンとアルカリ金属水酸化物と水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液では、タングステンを含む材料のダメージを満足できる程度に抑制することができず、本目的には使用できない(比較例13を参照)。
【0012】
特許文献8には、酸化剤とアミンと第4級アンモニウム水酸化物やアルカリ金属水酸化物と有機溶剤と界面活性剤と水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液では、タングステンのダメージを満足できる程度に抑制することができず、本目的には使用できない(比較例14を参照)。
【0013】
特許文献9には、フッ素化合物と金属腐食防止剤と不動態化剤と水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されているが、この洗浄液では残渣を十分に除去することができず、またLow−k膜のダメージを満足できる程度に抑制することができないため、本目的には使用できない(比較例15を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2011−91248号公報
【特許文献2】特開2012−182158号公報
【特許文献3】特開平6−81177号公報
【特許文献4】特開2001−026890号公報
【特許文献5】特開2008−285508号公報
【特許文献6】特開2003−316028号公報
【特許文献7】特開2009−75285号公報
【特許文献8】特開2009−231354号公報
【特許文献9】特開2013−533631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルトまたはコバルト合金を含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する洗浄液、およびそれを用いた洗浄方法を提供することである。
更に、本発明の別の目的は、半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルトまたはコバルト合金およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する洗浄液、およびそれを用いた洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、上記課題を解決することができる。即ち、本発明は以下のとおりである。
<1> 低誘電率膜(Low−k膜)と、(1)コバルトまたはコバルト合金を含む材料、あるいは(2)コバルトまたはコバルト合金およびタングステンを含む材料とを有する半導体素子の表面のドライエッチング残渣を除去する洗浄液であって、アルカリ金属化合物0.001〜7質量%、過酸化物0.005〜35質量%、防食剤0.005〜10質量%、アルカリ土類金属化合物0.000001〜1質量%および水を含む、前記洗浄液である。
<2> 前記アルカリ金属化合物が、水酸化リチウム、硫酸リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、硝酸リチウム、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、酢酸リチウム、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硝酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硝酸カリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、酢酸カリウム、水酸化セシウム、硫酸セシウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、硝酸セシウム、フッ化セシウム、塩化セシウム、臭化セシウム、ヨウ化セシウム、および酢酸セシウムからなる群より選択される少なくとも1種以上である上記<1>に記載の洗浄液である。
<3> 前記過酸化物が、過酸化水素、過酸化尿素、メタクロロ過安息香酸、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酢酸、ジ−tert−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化アセトン、メチルエチルケトンペルオキシド、ヘキサメチレントリペルオキシド、およびクメンヒドロペルオキシドからなる群より選択される少なくとも1種以上である上記<1>または<2>に記載の洗浄液である。
<4> 前記防食剤が、ジアミン化合物、アルカノールアミン化合物、ピラゾール化合物、イミダゾール化合物、およびトリアゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上である上記<1>から<3>のいずれかに記載の洗浄液である。
<5> 前記ジアミン化合物が、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、および1,4−ブタンジアミンからなる群より選択される少なくとも1種以上である上記<4>に記載の洗浄液である。
<6> 前記アルカノールアミン化合物が、2−アミノエタノール、2−メチルアミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、および1−アミノ−3−プロパノールからなる群より選択される少なくとも1種以上である上記<4>に記載の洗浄液である。
<7> 前記ピラゾール化合物が、ピラゾール、および3,5−ジメチルピラゾールからなる群より選択される少なくとも1種以上である上記<4>に記載の洗浄液である。
<8> 前記イミダゾール化合物が、1−メチルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、および5―メチルベンゾイミダゾールからなる群より選択される少なくとも1種以上である上記<4>に記載の洗浄液である。
<9> 前記トリアゾール化合物が、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、および5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールからなる群より選択される少なくとも1種以上である上記<4>に記載の洗浄液である。
<10> 前記アルカリ土類金属化合物が、カルシウム化合物、ストロンチウム化合物、およびバリウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上である上記<1>から<9>のいずれかに記載の洗浄液である。
<11> 低誘電率膜(Low−k膜)と、(1)コバルトまたはコバルト合金を含む材料、あるいは(2)コバルトまたはコバルト合金およびタングステンを含む材料とを有する基板上に、ハードマスクパターンを形成し、次いでこのハードマスクパターンをマスクとして、前記低誘電率膜(Low−k膜)にドライエッチング処理を施した半導体素子を洗浄して、該半導体素子の表面のドライエッチング残渣を除去する洗浄方法であって、上記<1>から<10>のいずれかに記載の洗浄液を用いることを特徴とする、前記洗浄方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の洗浄液、およびこれを用いた洗浄方法により、半導体素子の製造工程において、少なくとも、低誘電率層間絶縁膜と、(1)コバルトまたはコバルト合金を含む材料、あるいは(2)コバルトまたはコバルト合金およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面上のドライエッチング残渣を除去することが可能となり、高精度、高品質の半導体素子を歩留まりよく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ドライエッチング残渣除去前の半導体素子における、ハードマスクを含むコバルトキャップメタル構造を有する層の一例を示す概略断面図である。
図2】ドライエッチング残渣除去前の半導体素子における、タングステンを含む材料を有する層の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の洗浄液は、半導体素子を製造する洗浄工程において使用され、その際、ドライエッチング残渣を十分満足できる程度に洗浄・除去でき、且つ、少なくとも、Low-k膜と、(1)コバルトまたはコバルト合金を含む材料、あるいは(2)コバルトまたはコバルト合金およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制することができる。本発明の洗浄液は、コバルトまたはコバルト合金を含む材料を有する半導体素子に対し使用することができるが、コバルトまたはコバルト合金およびタングステンを含む材料を有する半導体素子に対し使用することもできる。コバルトまたはコバルト合金とタングステンとの両方を有する場合、コバルトまたはコバルト合金とタングステンとは、一つの半導体素子を構成する同一の層に含まれている必要はなく、一つの半導体素子を構成する別々の層にそれぞれ含まれていればよい。本発明によれば、一つの洗浄液によって、コバルトまたはコバルト合金を含む層に対してはコバルトまたはコバルト合金を防食することができ、タングステンを含む別の層に対してはタングステンを防食することができるため、極めて利便性がよい。本発明の洗浄液が適用される半導体素子は、(1)コバルトまたはコバルト合金、あるいは(2)コバルトまたはコバルト合金およびタングステンチタンが含まれていればよく、これら以外の金属が含まれていてもよい。
【0020】
本発明の洗浄液に含まれるアルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化リチウム、硫酸リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、硝酸リチウム、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、酢酸リチウム、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硝酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硝酸カリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、酢酸カリウム、水酸化セシウム、硫酸セシウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、硝酸セシウム、フッ化セシウム、塩化セシウム、臭化セシウム、ヨウ化セシウム、および酢酸セシウムが挙げられる。
これらの中でも、水酸化リチウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硝酸カリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、酢酸カリウム、および炭酸セシウムがより好ましい。
これらのアルカリ金属は、単独または2種類以上を組み合わせて配合できる。
【0021】
本発明の洗浄液に含まれるアルカリ金属化合物の濃度範囲は、0.001〜7質量%であり、好ましくは0.005〜5質量%であり、さらに好ましくは0.01〜4.5質量%であり、特に好ましくは0.1〜3質量%である。上記範囲内だとドライエッチング残渣を効果的に除去することができる。濃度範囲が7質量%より大きい場合は、Low−k膜にダメージを与える懸念がある。
【0022】
本発明の洗浄液に含まれる過酸化物は、(−O−O−)の構造を有する化合物である(Oは酸素原子)。過酸化物の具体例は、過酸化水素、過酸化尿素、メタクロロ過安息香酸、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酢酸、ジ−tert−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化アセトン、メチルエチルケトンペルオキシド、ヘキサメチレントリペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどであるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、過酸化水素、メタクロロ過安息香酸、およびtert−ブチルヒドロペルオキシドがより好ましい。また、これらは単独または2種類以上を組み合わせて配合できる。
【0023】
無機過酸化物は水と反応し、洗浄液中に過酸化水素を発生するので実質的に過酸化水素と同等である。そのため、洗浄液中に過酸化水素を発生させるために無機過酸化物を添加しても良い。無機過酸化物の具体例は、過酸化リチウム、過酸化カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化ルビジウム、過酸化セシウム、過酸化ベリリウム、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、過酸化バリウム、過酸化亜鉛、過酸化カドミウム、過酸化銅であるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
本発明の洗浄液に含まれる過酸化物の濃度範囲は、0.005〜35質量%であり、好ましくは0.01〜30質量%であり、さらに好ましくは0.1〜25質量%であり、特に好ましくは0.5〜6質量%である。濃度範囲が0.005質量%未満ではドライエッチング残渣を除去できない場合がある。一方、濃度範囲が35質量%より大きい場合は、タングステンを含む材料やハードマスクにダメージを与える場合がある。
【0025】
本発明の洗浄液に含まれる防食剤としては、例えば、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミンなどのジアミン化合物;2−アミノエタノール、2−メチルアミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、1−アミノ−3−プロパノールなどのアルカノールアミン化合物;ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾールなどのピラゾール化合物;1−メチルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、5―メチルベンゾイミダゾールなどのイミダゾール化合物;1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールなどのトリアゾール化合物が挙げられる。
これらの中でも、1,2−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、2−アミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、ピラゾール、1−メチルイミダゾール、1,2,4−トリアゾール、および5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールがより好ましい。
これらの防食剤は、単独または2種類以上を組み合わせて配合できる。
【0026】
本発明の洗浄液に含まれる防食剤の濃度範囲は、0.005〜10質量%であり、好ましくは0.008〜8質量%であり、さらに好ましくは0.01〜5質量%であり、特に好ましくは0.01〜3質量%である。上記範囲内だとコバルトのダメージを抑制することができる。
【0027】
本発明の洗浄液に含まれるアルカリ土類金属化合物としては、カルシウム化合物、ストロンチウム化合物、およびバリウム化合物が挙げられる。これらカルシウム化合物、ストロンチウム化合物、およびバリウム化合物の具体例としては、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、硝酸カルシウム、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、酸化カルシウム、過酸化カルシウム、硫化カルシウム、酢酸カルシウム、水酸化ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、亜硫酸ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、炭酸水素ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、酸化ストロンチウム、過酸化ストロンチウム、硫化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、水酸化バリウム、硫酸バリウム、亜硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸水素バリウム、硝酸バリウム、フッ化バリウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、過酸化バリウム、硫化バリウム、酢酸バリウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの中でも、水酸化カルシウム、炭酸ストロンチウム、水酸化バリウム、硝酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸水素バリウム、および塩化バリウムがより好ましく、水酸化バリウム、硝酸バリウム、および塩化バリウムが特に好ましい。
これらのアルカリ土類金属化合物は、単独または2種類以上を組み合わせて配合できる。
【0028】
本発明の洗浄液に含まれるアルカリ土類金属化合物の濃度範囲は、0.000001〜1質量%であり、好ましくは0.000001〜0.5質量%であり、より好ましくは0.00001〜0.1質量%であり、特に好ましくは0.00075〜0.075質量%である。上記範囲内だとドライエッチング残渣を効果的に除去することができる。濃度範囲が0.000001質量%未満ではタングステンにダメージを与える場合がある。
本発明者らは、洗浄液に含まれるアルカリ土類金属化合物が、タングステンを含む材料に対して防食効果を示すことを初めて見出した。そのメカニズムは明らかになっていないが、アルカリ土類金属化合物がタングステンの表面に吸着し、洗浄液に含まれる過酸化水素などの過酸化物やアルカリがタングステンを侵食するのを防いでいると考えられる。
【0029】
本発明の洗浄液には、所望により本発明の目的を損なわない範囲で従来から半導体用洗浄液に使用されているアルカリ化合物を配合してもよい。例えば、第4級アンモニウム水酸化物、アンモニア、有機アミン、ルビジウム化合物、ベリリウム化合物、マグネシウム化合物などを添加することができる。ただし、使用できるアルカリはこれらに限定されるものではない。
【0030】
本発明の洗浄液には、本発明の目的を損なわない範囲で従来から半導体用洗浄液に使用されている添加剤を配合してもよい。例えば、添加剤として、キレート剤、界面活性剤、消泡剤などが挙げられる。
【0031】
本発明の洗浄液を使用する温度は10〜80℃、好ましくは20〜70℃の範囲であり、エッチングの条件や使用される半導体素子により適宜選択すればよい。本発明の洗浄方法は、必要に応じて超音波を併用することができる。
本発明の洗浄液を使用する時間は0.2〜60分の範囲であり、エッチングの条件や使用される半導体素子により適宜選択すればよい。本発明の洗浄液を使用した後のリンス液としては、アルコールのような有機溶剤を使用することもできるが、水でリンスするだけでも十分である。
【0032】
本発明の洗浄液が適用される半導体素子および表示素子は、シリコン、非晶質シリコン、ポリシリコン、ガラスなどの基板材料;酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、およびこれらの誘導体などの絶縁材料;コバルト、コバルト合金、タングステン、チタン−タングステンなどの材料;ガリウム−砒素、ガリウム−リン、インジウム−リン、インジウム−ガリウム−砒素、インジウム−アルミニウム−砒素などの化合物半導体;クロム酸化物などの酸化物半導体などを含む。
【0033】
一般的なLow−k膜として、ヒドロキシシルセスキオキサン(HSQ)系やメチルシルセスオキサン(MSQ)系のOCD(商品名、東京応化工業社製)、炭素ドープ酸化シリコン(SiOC)系のBlack Diamond(商品名、Applied Materials社製)、Aurora(商品名、ASM International社製)、Coral(商品名、Novellus Systems社製)、無機系のOrion(商品名、Trikon Tencnlogies社製)が使用される。Low−k膜はこれらに限定されるものではない。
【0034】
本発明の洗浄液が適用される半導体素子は、バリアメタル、バリア絶縁膜、及び/又はハードマスクを含んでいてもよい。
一般的なバリアメタルとして、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、ルテニウム、マンガン、マグネシウムならびにこれらの酸化物が使用される。バリアメタルはこれらに限定されるものではない。
【0035】
一般的なバリア絶縁膜として、窒化シリコン、炭化シリコン、窒化炭化シリコンが使用される。バリア絶縁膜はこれらに限定されるものではない。
【0036】
一般的なハードマスクとして、シリコン、チタン、アルミニウム、タンタル、またはこれらのいずれかの酸化物、窒化物または炭化物が使用される。
本発明の洗浄液が適用される半導体素子に含まれるハードマスクとしては、好ましくは10原子%以上のチタンを含む材料である。そのチタンの原子組成百分率は、好ましくは15原子%以上であり、より好ましくは20原子%以上であり、さらに好ましくは25原子%以上であり、特に好ましくは30原子%以上である。チタン系の材料の具体例は、酸化チタン、窒化チタン、チタン、チタンシリサイドなどであり、好ましくは酸化チタン、窒化チタン、およびチタンである。これらの材料は2種類以上を積層して使用することもできる。ハードマスクはこれらに限定されるものではない。
本発明において、チタンの含有量は、X線光電子分光法(XPS)のイオンスパッタ法により、対象となるチタンを含む材料のチタン原子の構成比を測定することにより調べることができる。チタンを含む材料の表面近傍は酸化されることで酸素原子の構成比が材料の内部よりも高くなる場合がある。そのため、チタンと酸素の原子の構成比が一定となるまで、イオンスパッタによりチタンを含む材料の表面をエッチングし、イオンスパッタにより露出したチタンを含む材料の内部のチタン原子の構成比を測定することができる。測定装置としては、完全自動XPS分析装置K−Alpha(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いることができる。
【0037】
本発明の洗浄液が適用される半導体素子に含まれるタングステンを含む材料は、10原子%以上のタングステンを含む材料であり、そのタングステンの原子組成百分率は、好ましくは15原子%以上であり、より好ましくは20原子%以上であり、さらに好ましくは25原子%以上であり、特に好ましくは30原子%以上である。タングステンを含む材料の具体例は、酸化タングステン、窒化タングステン、タングステン、タングステンシリサイドなどであり、好ましくは酸化タングステン、窒化タングステン、およびタングステンである。しかし、タングステンを含む材料は10原子%以上のタングステンを含む材料であれば、これらに限定されるものではない。
本発明において、タングステンの含有量は、前述のようにXPSのイオンスパッタ法により、対象となるタングステンを含む材料のタングステン原子の構成比を測定することにより調べることができる。測定装置としては、完全自動XPS分析装置K−Alpha(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いることができる。
【0038】
本発明の洗浄液が適用される半導体素子に含まれるコバルト合金を含む材料の具体例としては、コバルトタングステンリン、コバルトタングステンボロン、コバルトクロム、コバルトクロムモリブデン、コバルト鉄、コバルトニオブジルコニウム、コバルトアルミニウム、コバルトニッケル、コバルトチタン、鉄ニッケルコバルト、コバルトパラジウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
次に、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0040】
SEM観察
測定機器:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡SU9000を用い、倍率10万倍で観察した。
判定:
I. ドライエッチング残渣の除去状態
E:ドライエッチング残渣が完全に除去された。
P:ドライエッチング残渣の除去が不十分であった。
E判定を合格とした。
II. タングステンを含む材料のダメージ
E:洗浄前と比べてタングステンを含む材料に変化が見られなかった。
G:タングステンを含む材料の表面に少し荒れが見られた。
P:タングステンを含む材料に大きな穴が見られた。
EとG判定を合格とした。
III. コバルトのダメージ
E:洗浄前と比べてコバルトに変化が見られなかった。
P:洗浄前と比べてコバルトに変化が見られた。
E判定を合格とした。
IV. Low−k膜のダメージ
E:洗浄前と比べてLow−k膜に変化が見られなかった。
G:Low−k膜がわずかにくぼんでいた。
P:Low−k膜が大きくくぼんでいた。
EとG判定を合格とした。
V. ハードマスクのダメージ
E:洗浄前と比べてハードマスクに変化が見られなかった。
P:ハードマスクに剥がれまたは形状の変化が見られた。
E判定を合格とした。
【0041】
実施例1〜27
試験には、図1および図2に示す層を有する半導体素子を使用した。ドライエッチング残渣1を除去するため、表1に記した洗浄液に表2に示した温度、時間で半導体素子を浸漬し、その後、超純水によるリンス、乾燥窒素ガス噴射による乾燥を行った。洗浄後の半導体素子をSEMで観察することにより、ドライエッチング残渣1の除去状態と、タングステンを含む材料3、コバルト4、Low−k膜2、およびハードマスク6のダメージを判断した。試験に使用したハードマスク6は酸化チタンであり、30原子%のチタンを含んでいた。また、試験に使用したタングステンを含む材料は酸化タングステンであり、40原子%のタングステンを含んでいた。
なお、チタンとタングステンの含有量は、上述した通り、X線光電子分光法(XPS)のイオンスパッタ法により測定した。いずれも測定装置としては、完全自動XPS分析装置K−Alpha(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いた。
【0042】
表2に示した本発明の洗浄液を適用した実施例1〜27においては、タングステンを含む材料3、コバルト4、Low−k膜2、およびハードマスク6のダメージを防ぎながら、ドライエッチング残渣1を完全に除去していることがわかる。また、いずれの実施例においても、バリアメタル7およびバリア絶縁膜5にはダメージが見られなかった。
【0043】
比較例1(アルカリ金属化合物なし)
過酸化水素6質量%、1,2,4−トリアゾール1質量%、硝酸バリウム0.001質量%、および水92.999質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2A)で図1および図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、洗浄条件と評価結果を表4に示した。ドライエッチング残渣1は除去できなかった。Low−k膜2、ハードマスク6およびタングステンを含む材料3のダメージは防いだものの、コバルト4にダメージが見られた。よって、2Aの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルトまたはコバルト合金を含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0044】
比較例2(過酸化物なし)
水酸化カリウム0.6質量%、1,2,4−トリアゾール1質量%、硝酸バリウム0.001質量%、および水98.399質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2B)で図1および図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去できなかった。Low−k膜2、ハードマスク6およびタングステンを含む材料3のダメージは防いだものの、コバルト4にダメージが見られた。よって、2Bの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルトまたはコバルト合金を含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0045】
比較例3(防食剤なし)
水酸化カリウム0.6質量%、過酸化水素6質量%、硝酸バリウム0.001質量%、および水93.399質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2C)で図1および図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去でき、またLow−k膜2、ハードマスク6およびタングステンを含む材料3のダメージは防いだ。しかし、コバルト4にダメージが見られた。よって、2Cの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルトまたはコバルト合金を含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0046】
比較例4(アルカリ土類金属化合物なし)
水酸化カリウム0.6質量%、過酸化水素6質量%、1,2,4−トリアゾール1質量%、および水92.4質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2D)で図1および図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去でき、またLow−k膜2とコバルト4のダメージは防いだ。しかし、タングステンを含む材料3とハードマスク6にダメージが見られた。よって、2Dの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0047】
比較例5(アルカリ土類金属化合物なし)
水酸化カリウム0.01質量%、過酸化水素0.01質量%、1,2,4−トリアゾール1質量%、および水98.98質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2E)で図1および図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去でき、Low−k膜2およびコバルト4のダメージは防いだ。しかし、タングステンを含む材料3およびハードマスク6にダメージが見られた。よって、2Eの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0048】
比較例6(特許文献1、4に記載の発明)
水酸化カリウム0.6質量%、過酸化水素6質量%、ベンゾトリアゾール0.1質量%、ポリエチレンイミン(分子量1800)0.01質量%、および水93.29質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2F)で図1および図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去でき、Low−k膜2のダメージは防いだ。しかし、タングステンを含む材料3、コバルト4およびハードマスク6にダメージが見られた。よって、2Fの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0049】
比較例7(特許文献2、4に記載の発明)
水酸化カリウム0.6質量%、過酸化水素6質量%、5−アミノ−1H−テトラゾール0.1質量%、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール0.1質量%、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール0.01質量%、および水93.19質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2G)で図1および図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去でき、Low−k膜2のダメージは防いだ。しかし、タングステンを含む材料3、コバルト4およびハードマスク6にダメージが見られた。よって、2Gの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0050】
比較例8(特許文献3、4に記載の発明)
水酸化カリウム0.6質量%、過酸化水素6質量%、ベンゾトリアゾール0.102質量%、硫酸銅5水和物0.125質量%、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール0.01質量%、および水93.163質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2H)で図1および図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去でき、Low−k膜2のダメージは防いだ。しかし、タングステンを含む材料3、コバルト4およびハードマスク6にダメージが見られた。よって、2Hの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0051】
比較例9(特許文献1、5に記載の発明)
水酸化カリウム0.6質量%、過酸化水素6質量%、ベンゾトリアゾール0.1質量%、エソカードO/12[オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド](ライオン株式会社製)0.001質量%、および水93.299質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2I)で図1および図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去でき、Low−k膜2のダメージは防いだ。しかし、タングステンを含む材料3、コバルト4およびハードマスク6にダメージが見られた。よって、2Iの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0052】
比較例10(特許文献2、5に記載の発明)
水酸化カリウム0.6質量%、過酸化水素6質量%、5−アミノ−1H−テトラゾール0.1質量%、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール0.1質量%、エソカードO/12[オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド](ライオン株式会社製)0.001質量%、および水93.199質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2J)で図1および図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去でき、Low−k膜2のダメージは防いだ。しかし、タングステンを含む材料3、コバルト4およびハードマスク6にダメージが見られた。よって、2Jの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0053】
比較例11(特許文献3、5に記載の発明)
水酸化カリウム0.6質量%、過酸化水素6質量%、ベンゾトリアゾール0.102質量%、硫酸銅5水和物0.125質量%、エソカードO/12[オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド](ライオン株式会社製)0.001質量%、および水93.172質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2K)で図1および図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去でき、Low−k膜2のダメージは防いだ。しかし、タングステンを含む材料3、コバルト4およびハードマスク6にダメージが見られた。よって、2Kの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0054】
比較例12(特許文献6に記載の発明)
リン酸1.35質量%、塩酸1質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム5質量%、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム0.01質量%、および水92.64質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2L)で図1および図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去できなかった。Low−k膜2、ハードマスク6およびタングステンを含む材料3のダメージは防いだものの、コバルト4にダメージが見られた。よって、2Lの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルトまたはコバルト合金を含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0055】
比較例13(特許文献7に記載の発明)
水酸化テトラメチルアンモニウム12質量%、過酸化水素5質量%、水酸化カリウム2質量%、トリエタノールアミン35質量%、および水46質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2M)で図1および図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1は除去できなかった。Low−k膜2、ハードマスク6およびコバルト4のダメージは防いだものの、タングステンを含む材料3にダメージが見られた。よって、2Mの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0056】
比較例14(特許文献8に記載の発明)
水酸化カリウム2.6質量%、過酸化水素0.9質量%、オルト過ヨウ素酸2質量%、エチレンジアミン0.03質量%、ジエチレントリアミン0.01質量%、サーフィノール465[2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールに65mol%のエチレンオキシドが付加した組成物](エアープロダクツジャパン株式会社製)0.02質量%、セチルトリメチルアンモニウムクロリド0.02質量%、N−メチルピロリドン10質量%、および水84.42質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2N)で図1および図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。Low−k膜2、ハードマスク6およびコバルト4のダメージは防いだものの、ドライエッチング残渣1は除去できず、タングステンを含む材料3にダメージが見られた。よって、2Nの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0057】
比較例15(特許文献9に記載の発明)
ベンゾトリアゾール0.1質量%、1,2,4−トリアゾール0.1質量%、フッ化アンモニウム5質量%、ホウ酸1質量%、および水93.8質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2O)で図1および図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ハードマスク6、タングステンを含む材料3およびコバルト4のダメージは防いだものの、ドライエッチング残渣1は除去できず、Low−k膜2にダメージが見られた。よって、2Oの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0058】
比較例16
水酸化カリウム1.2質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム16.5質量%、グリセリン30質量%、過酸化水素0.009質量%、および水 52.291質量%を含む洗浄液(表3、洗浄液2P)で図1および図2に示す層を有する半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ハードマスク6、タングステンを含む材料3およびコバルト4のダメージは防いだものの、ドライエッチング残渣1は除去できず、Low−k膜2にダメージが見られた。よって、2Pの洗浄液は、本発明の対象である半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、コバルト(またはコバルト合金)およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる。
【0059】
【表1】
KOH:水酸化カリウム
CO:炭酸カリウム
KNO:硝酸カリウム
LiCO:炭酸リチウム
LiOH:水酸化リチウム
NaOH:水酸化ナトリウム
CsCO:炭酸セシウム
mCPBA:メタクロロ過安息香酸
TBHP:tert−ブチルヒドロペルオキシド
1,2,4−TAZ:1、2、4−トリアゾール
Ba(NO:硝酸バリウム
Ca(OH):水酸化カルシウム
SrCO:炭酸ストロンチウム
BaSO:硫酸バリウム
【0060】

【表2】
除去状態I:ドライエッチング残渣1の除去状態
ダメージII:タングステンを含む材料3のダメージ
ダメージIII:コバルト4のダメージ
ダメージIV:Low−k膜2のダメージ
ダメージV:ハードマスク6のダメージ
【0061】
【表3】
エソカードO/12;[オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム−ビス)トリフルオロメタンスルホニル)イミド](ライオン株式会社製)
サーフィノール465;[2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールに65mol%のエチレンオキシドが付加した組成物](エアープロダクツジャパン株式会社製)
【0062】
【表4】
除去状態I:ドライエッチング残渣1の除去状態
ダメージII:タングステンを含む材料3のダメージ
ダメージIII:コバルト4のダメージ
ダメージIV:Low−k膜2のダメージ
ダメージV:ハードマスク6のダメージ
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の洗浄液および洗浄方法により、半導体素子の製造工程において、少なくとも、Low−k膜と、(1)コバルトまたはコバルト合金を含む材料、あるいは(2)コバルトまたはコバルト合金およびタングステンを含む材料とのダメージを抑制し、被処理物の表面のドライエッチング残渣を除去することが可能となり、高精度、高品質の半導体素子を歩留まりよく製造することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0064】
1:ドライエッチング残渣
2:Low−k膜
3:タングステンを含む材料
4:コバルト
5:バリア絶縁膜
6:ハードマスク
7:バリアメタル
8:銅
図1
図2