(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2画像ずれ量算出手段は、前記過去画像の一部分に対して設定した位置ずれ探索領域において前記現在フレーム画像との前記第2画像ずれ量を算出するように構成され、
前記位置ずれ探索領域は、前記第1画像ずれ量に基づいて前記過去画像における位置および大きさが設定されている、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置。
前記位置ずれ探索領域は、前記第1画像ずれ量分の移動後における前記過去画像の一部分の周囲に、前記第1画像ずれ量の誤差範囲に相当する範囲だけ拡張した領域に設定される、請求項2に記載のヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置。
前記第2画像ずれ量算出手段は、前記過去画像と前記現在フレーム画像とを解析して前記過去画像と前記現在フレーム画像との間の画像解析ずれ量を算出し、前記第1画像ずれ量と前記画像解析ずれ量とに基づいて、前記第2画像ずれ量を算出するように構成されている、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置。
前記第2画像ずれ量算出手段は、前記第1画像ずれ量と前記画像解析ずれ量とを、前記現在フレーム画像の外界の明るさによるノイズ量に応じて重み付け加算することにより、前記第2画像ずれ量を算出するように構成されている、請求項4に記載のヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置。
前記第2画像ずれ量算出手段は、前記現在フレーム画像の前記ノイズ量が多くなるほど前記第1画像ずれ量の重みを大きくする、請求項5に記載のヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置。
前記第2画像ずれ量算出手段は、前記第1画像ずれ量に基づいて前記過去画像の位置補正を行い、位置補正された前記過去画像と前記現在フレーム画像との前記第2画像ずれ量を画像中の局所領域毎に算出するように構成され、
前記画像合成手段は、前記1フレーム前に合成および出力された前記過去画像の前記局所領域毎の位置を前記第2画像ずれ量に基づいて補正し、前記局所領域毎の位置を前記第2画像ずれ量に基づいて補正された前記過去画像と前記現在フレーム画像とを合成するように構成されている、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置。
前記第1画像ずれ量算出手段は、前記姿勢検出手段の検出結果と、過去に算出された前記第2画像ずれ量の履歴から推定される推定画像ずれ量とに基づいて、前記第1画像ずれ量を算出するように構成されている、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置。
前記画像合成手段は、前記補正された過去画像と前記現在フレーム画像との類似度を画像中の局所領域毎に算出し、算出した前記類似度に応じた重み付けで、前記補正された過去画像と前記現在フレーム画像とを合成するように構成されている、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置。
前記画像合成手段は、前記補正された過去画像と前記現在フレーム画像との類似度が高くなるほど、前記現在フレーム画像よりも前記補正された過去画像の重み付けを大きくして合成する、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置。
前記画像合成手段は、リカーシブフィルタを用いて、前記補正された過去画像と前記現在フレーム画像とを合成するように構成されている、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置。
前記画像合成手段は、合成により得られた合成画像を、前記現在フレーム画像に対応する現在フレームの出力画像として前記表示画面に出力し、かつ、次のフレームにおける前記過去画像として記憶するように構成されている、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置。
前記第1画像ずれ量算出手段は、前記撮影装置の平行移動による画像ずれを除外し、前記撮影装置の回転による前記第1画像ずれ量を算出する、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置。
前記第1画像ずれ量算出手段は、前記撮影装置のローリング方向の回転位置ずれを除外し、前記撮影装置のヨーイング方向およびピッチング方向における前記第1画像ずれ量を算出する、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、画像解析によって各フレーム画像の位置ずれを補正する場合、各フレーム画像のノイズが多い場合などに位置ずれの検出精度が低下して、時間方向フィルタを施したときの残像を効果的に抑制できない場合があるため、外乱や環境の変化に対する強さ(ロバスト性)を持つ画像解析方法とする必要がある。また、撮影装置によって撮影された動画像をヘルメットのバイザー等に表示する際に、動画像と画像を見ている時点での実際の光景が時間的にずれて利用者に違和感を与えないように、できるだけ画像表示の遅延を小さくする必要がある。しかし、ノイズ低減のための画像処理の計算コストが大きくなると、処理の遅延が発生してしまうという不都合がある。このため、位置ずれ検出の精度およびロバスト性の向
上と、計算コストの低減によるリアルタイム性の確保との両立を図ることが求められている。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、位置ずれ検出の精度およびロバスト性を向上させ、かつ、画像処理の計算コストの増大を抑制することが可能なヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置、ヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理方法およびヘッドマウントディスプレイシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置は、使用者の頭部に装着され、所定のフレーム間隔で画像を撮影する撮影装置および表示画面を備えたヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置であって、使用者の頭部に装着された撮影装置の姿勢を検出可能な姿勢検出手段と、姿勢検出手段の検出結果に基づき、撮影装置により撮影されたフレーム間の撮影装置のヨーイング方向およびピッチング方向における第1画像ずれ量を算出する第1画像ずれ量算出手段と、第1画像ずれ量と、撮影装置により撮影された現在フレーム画像と、過去に撮影装置により撮影され
、1フレーム前に合成および出力された過去画
像とに基づいて、過去画像と現在フレーム画像との第2画像ずれ量を算出する第2画像ずれ量算出手段と、第2画像ずれ量に基づいて
1フレーム前に合成および出力された過去画像を補正し、補正された
1フレーム前の過去画像
を少なくとも含む1又は複数フレーム分の過去画像と現在フレーム画像とを合成する画像合成手段とを備える。
【0009】
この発明の第1の局面によるヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置では、上記のように、姿勢検出手段の検出結果に基づき、撮影装置により撮影されたフレーム間の撮影装置のヨーイング方向およびピッチング方向における第1画像ずれ量を算出する第1画像ずれ量算出手段と、第1画像ずれ量と、撮影装置により撮影された現在フレーム画像と、過去に撮影装置により撮影され
、1フレーム前に合成および出力された過去画
像とに基づいて、過去画像と現在フレーム画像との第2画像ずれ量を算出する第2画像ずれ量算出手段とを設ける。これにより、過去画像と現在フレーム画像との第2画像ずれ量を算出する際に、姿勢検出手段によって検出した撮影装置の姿勢変化に基づく第1画像ずれ量を利用することができるので、ノイズによって画像解析では十分な位置ずれ検出精度が得られない場合でも、位置ずれ検出精度が低下するのを抑制することができる。また、第1画像ずれ量のみによって位置補正を行う場合と異なり、姿勢検出手段の検出結果に多少の誤差が含まれる場合にも第2画像ずれ量の算出によって位置ずれの検出精度を確保することが可能となるので、ロバスト性を向上させることができる。さらに、撮影装置のヨーイング方向およびピッチング方向における第1画像ずれ量を算出することにより、ローリング方向も含めた位置ずれを考慮する場合と比べて位置ずれ検出のための計算コストを低減することができる。これらの結果、位置ずれ検出の精度およびロバスト性を向上させ、かつ、画像処理の計算コストの増大を抑制することができる。
【0010】
上記第1の局面によるヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置において、好ましくは、第2画像ずれ量算出手段は、過去画像の一部分に対して設定した位置ずれ探索領域において現在フレーム画像との第2画像ずれ量を算出するように構成され、位置ずれ探索領域は、第1画像ずれ量に基づいて過去画像における位置および大きさが設定されている。このように構成すれば、第1画像ずれ量を利用して、たとえば第1画像ずれ量分だけ移動した移動後の位置を中心とする所定範囲に位置ずれ探索領域を絞ることができる。その結果、過去画像の全体にわたって位置ずれ探索を行う場合と比較して、位置ずれ検出の精度を確保しながら位置ずれ探索領域を狭めた分だけ効果的に計算コストを低減することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、位置ずれ探索領域は、第1画像ずれ量分の移動後における過去画像の一部分の周囲に、第1画像ずれ量の誤差範囲に相当する範囲だけ拡張した領域に設定される。このように構成すれば、第1画像ずれ量の誤差範囲を考慮した最小限の範囲に位置ずれ探索領域を限定することができるので、より効果的に計算コストを低減することができる。
【0012】
上記第1の局面によるヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置において、好ましくは、第2画像ずれ量算出手段は、過去画像と現在フレーム画像とを解析して過去画像と現在フレーム画像との間の画像解析ずれ量を算出し、第1画像ずれ量と画像解析ずれ量とに基づいて、第2画像ずれ量を算出するように構成されている。このように構成すれば、姿勢検出手段の検出結果に基づく第1画像ずれ量と、画像解析によって得られた画像解析ずれ量との両方を考慮して、第2画像ずれ量を算出することができる。このため、たとえば現在フレーム画像のノイズによって画像解析ずれ量の精度が得にくい場合や、逆に姿勢検出手段の検出結果にノイズが発生して第1画像ずれ量の精度が得にくい場合にも、第1画像ずれ量と画像解析ずれ量とにより互いに検出精度を補い合わせることができるので、位置ずれ検出の精度およびロバスト性を効果的に向上させることができる。
【0013】
この場合、好ましくは、第2画像ずれ量算出手段は、第1画像ずれ量と画像解析ずれ量とを、現在フレーム画像の
外界の明るさによるノイズ量に応じて重み付け加算することにより、第2画像ずれ量を算出するように構成されている。このように構成すれば、たとえば現在フレーム画像のノイズ量が多い場合には、第1画像ずれ量の重み付けを大きくすることにより位置ずれ検出の精度を確保することができる。また、ノイズ量が少なく画像解析ずれ量の精度が得られる場合には、画像解析ずれ量の重み付けを大きくすることにより第1画像ずれ量の精度よりも更に位置ずれ検出精度を向上させることも望める。その結果、位置ずれ検出の精度およびロバスト性をより効果的に向上させることができる。
【0014】
上記第1画像ずれ量と画像解析ずれ量とを、現在フレーム画像のノイズ量に応じて重み付け加算する構成において、好ましくは、第2画像ずれ量算出手段は、現在フレーム画像のノイズ量が多くなるほど第1画像ずれ量の重みを大きくする。このように構成すれば、現在フレーム画像のノイズ量が少ない場合には高精度を得ることが可能な画像解析ずれ量の重みを大きくし、現在フレーム画像のノイズ量が多く画像解析ずれ量の精度が得にくくなるほど第1画像ずれ量の重み付けを大きくすることができる。これにより、位置ずれ検出の精度およびロバスト性を確実に向上させることができる。
【0015】
上記第1の局面によるヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置において、好ましくは、第2画像ずれ量算出手段は、第1画像ずれ量に基づいて過去画像の位置補正を行い、位置補正された過去画像と現在フレーム画像との第2画像ずれ量を画像中の局所領域毎に算出するように構成され、画像合成手段は、
1フレーム前に合成および出力された過去画像の局所領域毎の位置を第2画像ずれ量に基づいて補正し、局所領域毎の位置を第2画像ずれ量に基づいて補正された過去画像と現在フレーム画像とを合成するように構成されている。このように構成すれば、局所領域毎の位置を第2画像ずれ量に基づいて局所的に補正することができる。その結果、画像全体の中で移動する物体が映り込んだ場合などでも、物体が写る画像部分に局所的な残像が残るのを抑制しつつ、画像全体のノイズを低減することができる。
【0016】
上記第1の局面によるヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置において、好ましくは、第1画像ずれ量算出手段は、姿勢検出手段の検出結果と、過去に算出された第2画像ずれ量の履歴から推定される推定画像ずれ量とに基づいて、第1画像ずれ量を算出するように構成されている。ここで、撮影装置を用いて撮影されたフレーム毎の各画像のずれには、時系列的な連続性があるため、第2画像ずれ量の履歴から現在フレーム画像における画像の位置ずれ量の範囲を推定することが可能である。そのため、上記のように構成すれば、たとえば姿勢検出手段の検出結果にノイズが乗って、他の検出値から外れた外れ値が検出される場合でも、推定画像ずれ量を考慮することにより第1画像ずれ量の検出精度を確保することができる。また、推定画像ずれ量を予め算出しておくことにより、第1画像ずれ量を速やかに算出することができるので、推定画像ずれ量を用いる場合でも処理遅れの発生を抑制することができる。
【0017】
上記第1の局面によるヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置において、好ましくは、画像合成手段は、補正された過去画像と現在フレーム画像との類似度を画像中の局所領域毎に算出し、算出した類似度に応じた重み付けで、補正された過去画像と現在フレーム画像とを合成するように構成されている。このように構成すれば、たとえば位置合わせをしても類似度が低くなるような場合に、現在フレーム画像に大きな重み付けをすることにより、より現在の状態(現在フレーム画像)を反映させた出力画像を生成することができる。
【0018】
この場合、好ましくは、画像合成手段は、補正された過去画像と現在フレーム画像との類似度が高くなるほど、現在フレーム画像よりも補正された過去画像の重み
付けを大きく
して合成する。このように構成すれば、過去画像と現在フレーム画像とのフレーム間において外界の状況に変化がない場合(類似度が高い場合)に、ノイズを含んだ現在フレーム画像の重みを小さくして合成できるので、ノイズをより効果的に低減することができる。
【0019】
上記第1の局面によるヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置において、好ましくは、画像合成手段は、リカーシブフィルタを用いて、補正された過去画像と現在フレーム画像とを合成するように構成されている。ここで、リカーシブフィルタは、現在フレーム画像と、直前の1枚の過去画像とを、重み付け加算することにより合成する処理である。このように構成すれば、2枚の画像の重み付け加算を行うだけでよいので、効果的に計算コストを低減することができる。
【0020】
上記第1の局面によるヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置において、好ましくは、画像合成手段は、合成により得られた合成画像を、現在フレーム画像に対応する現在フレームの出力画像として表示画面に出力し、かつ、次のフレームにおける過去画像として記憶するように構成されている。このように構成すれば、現在フレーム画像とのずれが最も小さい直前のフレームで得られた合成画像を用いて合成を行うことができるので、計算コストを低減することができる。
【0021】
上記第1の局面によるヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置において、好ましくは、第1画像ずれ量算出手段は、撮影装置の平行移動による画像ずれを除外し、撮影装置の回転による第1画像ずれ量を算出する。ここで、撮影装置の平行移動による画像ずれは、遠近の被写体の位置関係が変化するため、画像全体の位置ずれとして補正しにくい一方、たとえば飛行機などのパイロットが使用するヘッドマウントディスプレイの場合、頭部の動きは回転が多く、平行移動による位置ずれの影響は相対的に小さくなる。このため、平行移動による画像ずれを除外し、回転位置ずれに限定して第1画像ずれ量を算出することにより、位置ずれ検出精度への影響を効果的に抑制しつつ、計算コストを低減することができる。
【0022】
上記第1の局面によるヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理装置において、好ましくは、第1画像ずれ量算出手段は、撮影装置のローリング方向の回転位置ずれを除外し、撮影装置のヨーイング方向およびピッチング方向における第1画像ずれ量を算出する。ここで、ヘッドマウントディスプレイでは、ローリング方向の回転は使用者が首を左右に傾ける動きに相当し、ヨーイング方向(左右への首振り)およびピッチング方向(上下への首振り)と比べて動作が少ない。そこで、ローリング方向を除外してヨーイング方向およびピッチング方向に限定して第1画像ずれ量を算出することにより、位置ずれ検出精度への影響を効果的に抑制しつつ、計算コストを低減することができる。
【0023】
この発明の第2の局面におけるヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理方法は、使用者の頭部に装着され、所定のフレーム間隔で画像を撮影する撮影装置および表示画面を備えたヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理方法であって、使用者の頭部に装着された撮影装置の姿勢を検出するステップと、撮影装置の姿勢の検出結果に基づき、撮影装置により撮影されたフレーム間の撮影装置のヨーイング方向およびピッチング方向における第1画像ずれ量を算出するステップと、第1画像ずれ量と、撮影装置により撮影され
、1フレーム前に合成および出力された過去画
像とに基づいて、過去画像と現在フレーム画像との第2画像ずれ量を算出するステップと、第2画像ずれ量に基づいて
1フレーム前に合成および出力された過去画像を補正し、補正された
1フレーム前の過去画像
少なくとも含む1又は複数フレーム分の過去画像と現在フレーム画像とを合成するステップとを備える。
【0024】
この発明の第2の局面によるヘッドマウントディスプレイ用の動画像処理方法では、上記のように、撮影装置の姿勢の検出結果に基づき、撮影装置により撮影されたフレーム間の撮影装置のヨーイング方向およびピッチング方向における第1画像ずれ量を算出するステップと、第1画像ずれ量と、撮影装置により撮影された現在フレーム画像と、過去に撮影装置により撮影され
、1フレーム前に合成および出力された過去画
像とに基づいて、過去画像と現在フレーム画像との第2画像ずれ量を算出するステップと、を設ける。これにより、過去画像と現在フレーム画像との第2画像ずれ量を算出する際に、検出した撮影装置の姿勢変化に基づく第1画像ずれ量を利用することができるので、ノイズによって画像解析では位置ずれ検出精度が得られない場合でも、位置ずれ検出精度が低下するのを抑制することができる。また、第1画像ずれ量のみによって位置補正を行う場合と異なり、姿勢検出結果に多少の誤差が含まれる場合にも第2画像ずれ量の算出によって位置ずれの検出精度を確保することが可能となるので、ロバスト性を向上させることができる。さらに、撮影装置のヨーイング方向およびピッチング方向における第1画像ずれ量を算出することにより、ローリング方向も含めた位置ずれを考慮する場合と比べて位置ずれ検出のための計算コストを低減することができる。これらの結果、位置ずれ検出の精度およびロバスト性を向上させ、かつ、画像処理の計算コストの増大を抑制することができる。
【0025】
この発明の第3の局面におけるヘッドマウントディスプレイシステムは、使用者の頭部に装着され、所定のフレーム間隔で画像を撮影する撮影装置および表示画面を備えたヘッドマウントディスプレイと、使用者の頭部に装着された撮影装置の姿勢を検出可能な姿勢検出装置と、撮影装置により撮影された画像を表示画面に表示させるための動画像処理装置とを備え、動画像処理装置は、姿勢検出装置の検出結果に基づき、撮影装置により撮影されたフレーム間の撮影装置のヨーイング方向およびピッチング方向における第1画像ずれ量を算出する第1画像ずれ量算出手段と、第1画像ずれ量と、撮影装置により撮影された現在フレーム画像と、過去に撮影装置により撮影され
、1フレーム前に合成および出力された過去画
像とに基づいて、過去画像と現在フレーム画像との第2画像ずれ量を算出する第2画像ずれ量算出手段と、第2画像ずれ量に基づいて
1フレーム前に合成および出力された過去画像を補正し、補正された
1フレーム前の過去画像
を少なくとも含む1又は複数フレーム分の過去画像と現在フレーム画像とを合成する画像合成手段とを含む。
【0026】
この発明の第3の局面によるヘッドマウントディスプレイシステムでは、上記のように、姿勢検出装置の検出結果に基づき、撮影装置により撮影されたフレーム間の撮影装置のヨーイング方向およびピッチング方向における第1画像ずれ量を算出する第1画像ずれ量算出手段と、第1画像ずれ量と、撮影装置により撮影された現在フレーム画像と、過去に撮影装置により撮影され
、1フレーム前に合成および出力された過去画
像とに基づいて、過去画像と現在フレーム画像との第2画像ずれ量を算出する第2画像ずれ量算出手段と、を含む動画像処理装置を設ける。これにより、過去画像と現在フレーム画像との第2画像ずれ量を算出する際に、検出した撮影装置の姿勢変化に基づく第1画像ずれ量を利用することができるので、ノイズによって画像解析では位置ずれ検出精度が得られない場合でも、位置ずれ検出精度が低下するのを抑制することができる。また、姿勢検出結果に基づく第1画像ずれ量のみによって位置補正を行う場合と異なり、姿勢検出結果に多少の誤差が含まれる場合にも第2画像ずれ量の算出によって位置ずれの検出精度を確保することが可能となるので、ロバスト性を向上させることができる。さらに、第1画像ずれ量をヨーイング方向およびピッチング方向に限定して算出することにより、ローリング方向も含めた位置ずれを考慮する場合と比べて位置ずれ検出のための計算コストを低減することができる。これらの結果、位置ずれ検出の精度およびロバスト性を向上させ、かつ、画像処理の計算コストの増大を抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、上記のように、位置ずれ検出の精度およびロバスト性を向上させ、かつ、画像処理の計算コストの増大を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
(第1実施形態)
まず、
図1〜
図8を参照して、本発明の第1実施形態によるヘッドマウントディスプレイシステム(以下、「HMDシステム」という)100の全体構成について説明する。第1実施形態では、HMDシステム100が、自動車、航空機、船舶など、人を搭乗させて移動する移動体のうち、特に航空機(飛行機やヘリコプタ)などの上空(空中)を移動する移動体1に搭載される例について説明する。
【0031】
[ヘッドマウントディスプレイシステムの全体構成]
図1に示すように、第1実施形態によるHMDシステム100は、撮影装置11および表示画面12を備えたヘッドマウントディスプレイ(以下、「HMD」という)10と、撮影装置11により撮影された画像を表示画面12に表示させるための動画像処理装置20と、撮影装置11の姿勢を検出可能な姿勢検出装置30とを備える。姿勢検出装置30は、本発明の「姿勢検出手段」の一例である。
【0032】
HMDシステム100は、撮影装置11により撮影された動画像を、HMD10の表示画面12に表示させることにより、使用者に、表示画面12を透過して視認される光景と、表示画面12に表示される動画像とを重ねて視認させることが可能である。これにより、HMDシステム100は、夕方や夜間など肉眼では外界を把握し難い低照度の環境下において、肉眼よりも感度の高い撮影装置11の動画像により視野を補完したり、表示画面12を透過して視認される物体に重ねて各種情報表示を行ったりすることができる。第1実施形態では、使用者は、移動体1(航空機)の搭乗者(パイロット)などである。
【0033】
HMD10は、使用者の頭部2に装着される撮影装置11および表示画面12を備える頭部装着型の表示装置である。
図1では、ヘルメット型形状のHMD10の例を示している。HMD10は、ヘルメット13と、バイザー状の表示画面12と、撮影装置11とを備え、表示画面12および撮影装置11がヘルメット13に取り付けられている。また、HMD10は、表示画面12に画像を投影するための表示素子14および光学系15を備えている。
【0034】
表示画面12は、透光性を有し、使用者が表示画面12を透過して視線方向前方の光景を視認することができる。
図2に示すように、撮影装置11は、図示しないレンズと撮像素子とを含み、左右の各画像用にヘルメット13(
図1参照)の左右両側に一対設けられている。それぞれの撮影装置11は、使用者の視線方向前方(一対のカメラ間を結ぶ左右方向と直交する前方方向)に撮影光軸方向が一致するように固定されている。表示素子14は、一対設けられており、左目用画像と右目用画像とを一対の光学系15によりそれぞれコリメートさせて表示画面12に投影するように構成されている。表示画面12で反射された左目用画像と右目用画像とが、外部から表示画面12を透過した外界光と重なって、使用者の左目および右目にそれぞれ視認される。なお、
図1に示すヘルメット13には、姿勢検出装置30により検出するためのマーカ32が取り付けられている。
【0035】
動画像処理装置20は、HMD10の映像信号の処理装置として、ヘルメット13内に組み込まれている。動画像処理装置20は、撮影装置11により撮影された動画像を受け取り、画像処理を行って表示素子14に出力することにより、表示画面12に動画像を表示させる機能を有する。
図2に示すように、動画像処理装置20は、動画像処理装置20の制御部としてのCPU21と、メモリ22と、第1インターフェース部23および第2インターフェース部24と、駆動回路25とを備えている。これらのCPU21およびメモリ22と、第1インターフェース部23および第2インターフェース部24と、駆動回路25とは、左目用画像用と右目用画像用とでそれぞれ一対ずつ設けられている。
【0036】
CPU21は、メモリ22に記憶されたプログラムを実行することにより、撮影装置11および表示素子14を制御するとともに、撮影された動画像に所定の画像処理を行うように構成されている。すなわち、CPU21は、第1インターフェース部23を介して撮影装置11により撮影された動画像を受け取り、映像信号を生成して駆動回路25に出力する。また、CPU21は、第2インターフェース部24を介して姿勢検出装置30の検出信号(検出結果)を取得し、検出信号を用いて動画像の画像処理を行う。CPU21による画像処理の詳細は、後述する。
【0037】
第1インターフェース部23は、撮影装置11に接続され、撮影装置11により撮影された動画像の映像信号をCPU21に送る。第2インターフェース部24は、姿勢検出装置30と有線又は無線により接続され、姿勢検出装置30の検出信号をCPU21に送る。駆動回路25は、CPU21から送られた映像信号に基づいて表示素子14を駆動するための回路である。
【0038】
図1に示すように、姿勢検出装置30は、使用者の頭部2に装着されたヘルメット13の姿勢を検出することにより、ヘルメット13に固定された撮影装置11の姿勢を検出するように構成されている。第1実施形態では、姿勢検出装置30は、HMD10(ヘルメット13)の外部に設けられ、HMD10(ヘルメット13)の外部から撮影装置11の姿勢を光学的に検出するように構成されている。
【0039】
姿勢検出装置30は、一対のカメラ31(ステレオカメラ)と、使用者の頭部に取り付けられたマーカ32と、検出制御部33とを備える。一対のカメラ31は、使用者が搭乗する移動体1に取り付け固定されている。一対のカメラ31は、互いに異なる方向からマーカ32を撮像するように互いに離間した所定位置に配置されている。
【0040】
マーカ32は、たとえばLEDなどの発光素子であり、撮影装置11(ヘルメット13)の3次元の姿勢を決定できるように、3つ以上設けられている。それぞれのマーカ32は、カメラ31によって撮影可能なヘルメット13の表面上の位置に固定的に取り付けられている。
【0041】
検出制御部33は、CPU34およびメモリ35を含むコンピュータである。CPU34は、メモリ35に記憶されたプログラムを実行することにより、姿勢検出処理を実行するように構成されている。メモリ35には、一対のカメラ31の位置関係(カメラ間の距離d)の情報や、3つ以上のマーカ32の相対的な位置関係の情報(相対位置座標)などが記憶されている。
【0042】
CPU34は、カメラ31により撮像された画像から各マーカ32を抽出し、それぞれのカメラ31に対する各マーカ32の方向角度α1およびα2を算出する。そして、CPU34は、一対のカメラ31に対する各マーカ32の方向角度α1およびα2と、一対のカメラ31間の距離dとを用いて、三角測量の原理に基づいて各マーカ32の空間位置座標を算出する。各マーカ32はヘルメット13に所定の相対位置座標で固定されているため、CPU34は、3点以上のマーカ32の空間位置座標とマーカ間の相対位置座標とに基づいて、ヘルメット13の現在の角度(姿勢)を算出する。ヘルメット13に対する撮影装置11の相対位置関係も既知であるので、ヘルメット13の現在の角度(姿勢)から撮影装置11の現在の角度(姿勢)が算出できる。
【0043】
このようにして、姿勢検出装置30は、撮影装置11の使用者の頭部2に装着された撮影装置11の姿勢を検出する。姿勢検出装置30は、(CPU21)は、検出した撮影装置11の姿勢の検出信号を、動画像処理装置20に第2インターフェース部24を介して送るように構成されている。なお、姿勢検出装置30は、たとえば特開2008−59204号公報に開示された構成などを採用することができるので、詳細な説明は省略する。
【0044】
[動画像処理装置の詳細構成]
次に、動画像処理装置20の画像処理に関する詳細な構成について説明する。
図3に示すように、動画像処理装置20のCPU21が実行する制御処理を機能ブロックとして説明すると、CPU21は、第1画像ずれ量算出部41と、第2画像ずれ量算出部42と、画像合成部43とを有する。第1画像ずれ量算出部41と、第2画像ずれ量算出部42と、画像合成部43とは、それぞれ、本発明の「第1画像ずれ量算出手段」と、「第2画像ずれ量算出手段」と、「画像合成手段」との一例である。
【0045】
図3および
図4を参照して、第1画像ずれ量算出部41は、姿勢検出装置30の検出結果に基づき、撮影装置11により撮影されたフレーム間の第1画像ずれ量G1を算出する。第1画像ずれ量G1は、撮影装置11により撮影された最新の現在フレーム画像51と、1フレーム前に表示画面12に表示させた直前の過去画像52(直前のフレームで出力した出力画像)との間の画像上の位置ずれ量である。
【0046】
具体的には、第1画像ずれ量算出部41は、姿勢検出装置30の検出結果から、撮影装置11が1フレームを撮影する間の撮影装置11の姿勢(頭部角度)の変化量を算出する。たとえば、撮影装置11のフレームレートが60fps(Frames per second)である場合、1/60秒の間の姿勢(頭部角度)の角度変化量が算出される。
【0047】
次に、第1画像ずれ量算出部41は、算出した角度変化量を、1フレーム間の画像ずれ量に変換する。第1実施形態では、第1画像ずれ量算出部41は、撮影装置11の平行移動による画像ずれを除外し、撮影装置11の回転による画像ずれ量のみを算出する。これは、撮影装置11の回転による画像ずれは、遠近の被写体の位置関係が変化せず画面(画角)が変化するだけであるのに対して、撮影装置11の平行移動による画像ずれの場合、遠近の被写体の位置関係が変化する(撮影装置11に近い被写体ほど位置ずれが大きくなる)ため、画像全体の位置ずれとして考慮しにくいためである。また、飛行機などの移動体1に搭乗する使用者(パイロット)の場合、使用者の頭部2の動きは回転が多く、遠方の風景を観察することが多いため、平行移動による位置ずれの影響は相対的に小さくなる。そのため、撮影装置11の平行移動による画像ずれを無視した近似が十分成立し、かつ、計算コストを低減することが可能である。
【0048】
また、第1実施形態では、
図5(A)に示すように、第1画像ずれ量算出部41は、撮影装置11のヨーイング方向およびピッチング方向における第1画像ずれ量G1を算出するように構成されている。つまり、ローリング方向の回転位置ずれを除外する。HMDの場合、ローリング方向の回転は、使用者が首を左右に傾ける動きに相当する。移動体1への搭乗時における使用者の頭部2の動作はヨーイング方向(左右への首振り)およびピッチング方向(上下への首振り)が支配的であり、ローリング方向の動作は少ない。このため、ローリング方向の回転位置ずれを除外しても、画像の位置ずれにほとんど影響を与えずに済む。
【0049】
これらにより、1フレーム前の直前の過去画像52の座標を(Xpre,Ypre)、現在フレーム画像51の座標を(Xpos,Ypos)とすると、角度変化による第1画像ずれ量G1の変化後の座標が下式(1)で表される。
【数1】
【0050】
ここで、
図5(B)に示すように、AOVx[°]およびAOVy[°]は撮影装置11の視野角であり、PIXx[pixel]およびPIXy[pixel]は画素数である。Δθx[°]およびΔθy[°]が撮影装置11の角度変化量である。また、姿勢検出装置30(
図1参照)のカメラ31間の中央の所定位置を回転座標系の原点としている。右辺第2項が第1画像ずれ量G1に相当する。
【0051】
図3および
図4に示すように、第2画像ずれ量算出部42は、第1画像ずれ量G1と、撮影装置11により撮影された現在フレーム画像51と、過去に撮影装置11により撮影された一又は複数のフレーム画像に基づく過去画像52(直前のフレームで出力した出力画像)とに基づいて、過去画像52と現在フレーム画像51との第2画像ずれ量G2を算出する。
【0052】
過去画像52と現在フレーム画像51との位置ずれ量の算出方法は、画像解析を行う公知の方法を採用することができる。位置ずれ量の算出方法は、たとえばパターンマッチングであり、過去画像52および現在フレーム画像51の画像上で相互相関を用いてずれ量を算出する方法や、過去画像52および現在フレーム画像51を周波数領域に変換し、周波数空間での位相相関に基づいてずれ量を算出する位相限定相関法などを用いることができる。画像解析によるずれ量の算出は、画像の局所領域毎に上記処理を行うことによって、画像の局所領域毎にずれ量を算出することも可能である。
【0053】
第1実施形態では、第2画像ずれ量算出部42は、過去画像52の一部分に対して設定した位置ずれ探索領域61において現在フレーム画像51との第2画像ずれ量G2を算出するように構成されており、位置ずれ探索領域61は、第1画像ずれ量G1に基づいて過去画像52における位置および大きさが設定されている。
【0054】
具体的には、
図4の過去画像52に対してA方向の第1画像ずれ量G1が算出されたとする。このとき、たとえば過去画像52の画像部分62に着目すると、画像52aのように画像部分62を第1画像ずれ量G1分だけA方向に移動させれば、現在フレーム画像51に一致すると考えられる。ただし、実際には姿勢検出装置30の検出結果に基づく第1画像ずれ量G1には所定の誤差範囲が存在する。そこで、位置ずれ探索領域61は、第1画像ずれ量G1分の移動後の位置(画像52aの位置)を中心として、画像部分62の周囲に第1画像ずれ量G1の誤差範囲に相当する範囲Eだけ拡張した領域に設定される。
【0055】
第2画像ずれ量算出部42は、位置ずれ探索領域61におけるパターンマッチングの結果として、過去画像52と現在フレーム画像51との第2画像ずれ量G2を算出する。
【0056】
次に、画像合成部43(
図3参照)は、第2画像ずれ量G2に基づいて過去画像52を位置ずれ補正し、補正された過去画像52と現在フレーム画像51とを合成する。すなわち、画像合成部43は、直前の過去画像52を第2画像ずれ量G2分だけ位置ずれ補正した上で、現在フレーム画像51に合成する。
【0057】
第1実施形態では、画像合成部43は、リカーシブフィルタを用いて、補正された過去画像52と現在フレーム画像51とを合成するように構成されている。リカーシブフィルタは、現在フレーム画像51に過去画像52を重み付け加算することにより合成する処理である。現在フレーム画像51をPn、過去画像52をQn−1、重み係数をkとするとき、生成される合成画像Qnは、下記式(2)で表される。
Qn(i,j)=k×Pn(i,j)+(1−k)×Qn−1(i,j)…(2)
ここで、i、jは画像中のX方向およびY方向の各画素である。
【0058】
合成処理の結果、合成画像53が得られる。動画像処理装置20は、画像合成部43によって合成された合成画像53を、撮影画像である現在フレーム画像51に対応する現在フレームの出力画像としてHMD10の表示素子14に出力する。この結果、現在フレーム51がノイズNC(
図4参照)を含んでいる場合に、ノイズNCが低減された合成画像53が表示される。合成画像53はメモリ22に記憶され、次のフレームでは、合成画像53が直前のフレームの過去画像52として利用されることになる。つまり、
図4に示した過去画像52は、1フレーム前に合成および出力された合成画像53である。
【0059】
第1実施形態において、好ましくは、画像合成部43は、補正された過去画像52と現在フレーム画像51との類似度を画像中の局所領域毎に算出し、算出した類似度に応じた重み付けで、補正された過去画像52と現在フレーム画像51とを合成する。すなわち、画像合成部43は、
図6に示すように、位置ずれ補正後の過去画像52と現在フレーム画像51との類似度が高くなるほど、現在フレーム画像51よりも過去画像52の重みを大きくする。したがって、上式(2)で示したように、局所領域に属する画素群毎に、合成処理を行う際の重み係数kが変化する。類似度は、たとえば相関関数を算出することにより判定され、補正された過去画像52と現在フレーム画像51との相関が高い場合に類似度が大きくなる。
【0060】
これにより、類似度が高い場合には、ノイズNCを含んだ現在フレーム画像51よりも、合成処理によってノイズNCが低減された過去画像52の合成割合が大きくなる結果、ノイズNCが更に低減される。一方、画像合成部43は、類似度が低い場合には、現在フレーム画像51よりも過去画像52の重みを小さくする。これにより、現在フレームから見て変化が存在する(類似度が低い)過去画像52よりも現在フレーム画像51の合成割合が大きくなる結果、現在の状況が正確に反映された合成画像53が得られる。一例としては、点滅する光源が局所領域に映り込んでおり、過去画像52では消灯状態で、現在フレーム画像51では点灯状態にある場合などでは、点灯状態にある現在フレーム画像51がより強く合成画像53に反映される結果、点灯状態と消灯状態との中間のような合成画像53になることが回避できる。
【0061】
また、第1実施形態では、第1画像ずれ量G1の算出に際して、第2画像ずれ量G2の履歴から算出される推定画像ずれ量G3(
図7参照)を利用するのが好ましい。すなわち、第1画像ずれ量算出部41は、姿勢検出装置30の検出結果と、過去に算出された第2画像ずれ量G2の履歴から推定される推定画像ずれ量G3とに基づいて、第1画像ずれ量G1を算出する。
【0062】
ここで、第2画像ずれ量G2はフレーム間の位置ずれ量であるため、撮影装置11の時系列的な姿勢変化や、移動体1の移動に伴う視界(光景)の時系列的な変化に対応した連続性を有する。このため、
図7に示すように、nを現在のフレームとした場合にG2(n−2)、G2(n−1)、G2(n)で示す過去の時点から現在までの第2画像ずれ量G2の変化に基づく近似計算などにより、次のフレームの推定画像ずれ量G3を算出することが可能である。
【0063】
第1画像ずれ量算出部41は、姿勢検出装置30の検出結果から算出されたずれ量と、推定画像ずれ量G3とを重み付け加算することにより、第1画像ずれ量G1を算出する。この結果、姿勢検出装置30の検出結果にノイズなどが含まれる場合にも、時系列的に見て起こりえない外れ値が第1画像ずれ量G1として算出されることが抑制される。
【0064】
[動画像処理装置の制御処理]
次に、
図8を参照して、動画像処理装置20の制御処理について説明する。以下では、第1画像ずれ量算出部41、第2画像ずれ量算出部42および画像合成部43による処理を区別せず、CPU21による処理として説明する。
【0065】
図8のステップS1において、動画像処理装置20のCPU21が、撮影装置11から現在フレーム画像51を取得する。ここで、現在フレームをn番目のフレームとする。直前のフレームはn−1番目のフレームとなる。
【0066】
ステップS1と並行して、ステップS2において、CPU21が、姿勢検出装置30から現在の(現在フレーム(n)の)撮影装置11の角度情報を検出結果として取得する。ステップS3において、CPU21が、メモリ22に記憶した1つ前のフレーム(n−1)の角度情報と、現在フレーム(n)の角度情報とに基づいて1フレーム間の角度変化量を算出する。ステップS4において、CPU21が、算出した角度変化量から、上記式(1)を用いて第1画像ずれ量G1を算出する。
【0067】
次に、ステップS5において、CPU21が、第1画像ずれ量G1に基づいて位置ずれ探索領域61を設定し、画像解析(パターンマッチング)によって第2画像ずれ量G2を算出する。そして、ステップS6において、CPU21は、算出した第2画像ずれ量G2によって直前フレーム(n−1)で表示した過去画像52の位置ずれ補正を行う。
【0068】
次に、ステップS7において、CPU21が、補正された過去画像52と現在フレーム画像51とを、リカーシブフィルタによって合成する。CPU21は、得られた合成画像53を、現在フレーム画像51に対応する現在フレーム(n)の出力画像としてHMD10の表示素子14に出力するとともに、メモリ22に記憶する。
【0069】
以上の制御処理をフレーム毎に繰り返すことによって、動画像処理装置20の画像処理が行われる。この結果、HMDシステム100は、撮影装置11により撮影した動画像を動画像処理装置20により画像処理した上で、出力画像としてHMD10(表示画面12)に表示する動作を行う。
【0070】
[第1実施形態の効果]
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0071】
第1実施形態では、上記のように、姿勢検出装置30の検出結果に基づき、撮影装置11により撮影されたフレーム間の撮影装置11のヨーイング方向およびピッチング方向における第1画像ずれ量G1を算出する第1画像ずれ量算出部41と、第1画像ずれ量G1と、撮影装置11により撮影された現在フレーム画像51と、過去に撮影装置11により撮影された一又は複数のフレーム画像に基づく過去画像52(直前フレームの過去画像52)とに基づいて、過去画像52と現在フレーム画像51との第2画像ずれ量G2を算出する第2画像ずれ量算出部42とを設ける。これにより、過去画像52と現在フレーム画像51との第2画像ずれ量G2を算出する際に、姿勢検出装置30の検出結果に基づく第1画像ずれ量G1を利用することができるので、ノイズNCによって画像解析では十分な位置ずれ検出精度が得られない場合でも、位置ずれ検出精度が低下するのを抑制することができる。また、姿勢検出装置30の検出結果に基づく第1画像ずれ量G1のみによって位置補正を行う場合と異なり、姿勢検出装置30の検出結果に多少の誤差が含まれる場合にも、第2画像ずれ量G2を算出することによって位置ずれの検出精度を確保することが可能となるので、ロバスト性を向上させることができる。さらに、撮影装置11のヨーイング方向およびピッチング方向における第1画像ずれ量G1を算出することにより、ローリング方向も含めた位置ずれを考慮する場合と比べて計算コストを低減することができる。これらの結果、位置ずれ検出の精度およびロバスト性を向上させ、かつ、画像処理の計算コストの増大を抑制することができる。
【0072】
第1実施形態では、上記のように、第2画像ずれ量算出部42を、過去画像52の一部分に対して設定した位置ずれ探索領域61において現在フレーム画像51との第2画像ずれ量G2を算出するように構成する。そして、位置ずれ探索領域61を、第1画像ずれ量G1に基づいて過去画像52における位置および大きさに設定する。これにより、姿勢検出装置30の検出結果に基づく第1画像ずれ量G1を利用して、第1画像ずれ量G1分だけ移動した移動後の位置を中心とする所定範囲に位置ずれ探索領域61を絞ることができる。その結果、位置ずれ検出の精度を確保しながら位置ずれ探索領域61を狭めた分だけ効果的に計算コストを低減することができる。
【0073】
第1実施形態では、上記のように、位置ずれ探索領域61を、第1画像ずれ量G1分の移動後における過去画像52の一部分(画像部分62)の周囲に、第1画像ずれ量G1の誤差範囲に相当する範囲Eだけ拡張した領域に設定する。これにより、第1画像ずれ量G1の誤差範囲(姿勢検出装置30の誤差範囲)を考慮した最小限の範囲に位置ずれ探索領域61を限定することができるので、より効果的に計算コストを低減することができる。
【0074】
第1実施形態では、上記のように、第1画像ずれ量算出部41を、姿勢検出装置30の検出結果と、過去に算出された第2画像ずれ量G2の履歴から推定される推定画像ずれ量G3とに基づいて、第1画像ずれ量G1を算出するように構成する。これにより、たとえば姿勢検出装置30の検出結果にノイズが乗った場合でも、推定画像ずれ量G3を考慮することにより第1画像ずれ量G1の検出精度を確保することができる。
【0075】
第1実施形態では、上記のように、画像合成部43を、補正された過去画像52と現在フレーム画像51との類似度を画像中の局所領域毎に算出し、算出した類似度に応じた重み付けで、補正された過去画像52と現在フレーム画像51とを合成するように構成する。これにより、たとえば位置合わせをしても類似度が低くなるような場合に、現在フレーム画像51に大きな重み付けをすることにより、より現在の状態(現在フレーム画像51)を反映させた出力画像を生成することができる。
【0076】
第1実施形態では、上記のように、画像合成部43を、補正された過去画像52と現在フレーム画像51との類似度が高くなるほど、現在フレーム画像51よりも補正された過去画像52の重みを大きくするように構成する。これにより、過去画像52と現在フレーム画像51とのフレーム間において外界の状況に変化がない場合(類似度が高い場合)に、ノイズを含んだ現在フレーム画像51の重みを小さくして合成できるので、ノイズをより効果的に低減することができる。
【0077】
第1実施形態では、上記のように、画像合成部43を、リカーシブフィルタを用いて、補正された過去画像52と現在フレーム画像51とを合成するように構成する。これにより、2枚の画像の重み付け加算を行うだけでよいので、効果的に計算コストを低減することができる。
【0078】
第1実施形態では、上記のように、合成により得られた合成画像53を、現在フレーム画像51に対応する現在フレームの出力画像として表示画面12に出力し、かつ、次のフレームにおける過去画像52としてメモリ22に記憶するように、画像合成部43を構成する。これにより、現在フレーム画像51(フレームn)とのずれが最も小さい直前のフレーム(n−1)で得られた合成画像53を用いて合成を行うことができるので、計算コストを低減することができる。
【0079】
第1実施形態では、上記のように、第1画像ずれ量算出部41を、撮影装置11の平行移動による画像ずれを除外し、撮影装置11の回転による第1画像ずれ量G1を算出するように構成する。ここで、飛行機などの移動体1に搭乗する使用者(パイロット)の場合、頭部2の動きは回転が多く、平行移動による位置ずれの影響は相対的に小さくなるため、平行移動による画像ずれを除外し、回転位置ずれに限定して第1画像ずれ量G1を算出することにより、位置ずれ検出精度への影響を効果的に抑制しつつ、計算コストを低減することができる。
【0080】
第1実施形態では、上記のように、第1画像ずれ量算出部41を、撮影装置11のローリング方向の回転位置ずれを除外し、撮影装置11のヨーイング方向およびピッチング方向における第1画像ずれ量G1を算出するように構成する。ここで、HMD10では、ローリング方向の回転はヨーイング方向およびピッチング方向と比べて動作が少なく、位置ずれの影響が小さいため、ローリング方向を除外してヨーイング方向およびピッチング方向に限定して第1画像ずれ量G1を算出することにより、位置ずれ検出精度への影響を効果的に抑制しつつ、計算コストを低減することができる。
【0081】
(第2実施形態)
次に、
図1、
図3および
図9〜
図11を参照して、本発明の第2実施形態によるHMDシステムについて説明する。第2実施形態では、第1画像ずれ量G1に基づいて位置ずれ探索領域61を設定し、位置ずれ探索領域61の画像解析(パターンマッチング)によって第2画像ずれ量G2を算出する例を示した上記第1実施形態とは異なり、第1画像ずれ量G1と画像解析で得られた画像解析ずれ量との両方から第2画像ずれ量G2を算出する例について説明する。なお、第2実施形態において、HMDシステムおよび動画像処理装置の装置構成(ハードウェア構成)は上記第1実施形態と同様であり、動画像処理装置120のCPU121による制御処理が上記第1実施形態とは異なる。そのため、上記第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0082】
第2実施形態によるHMDシステム200(
図1参照)において、動画像処理装置120(
図3参照)のCPU121(第2画像ずれ量算出部42)は、
図9に示すように、過去画像52と現在フレーム画像51とを解析して過去画像52と現在フレーム画像51との間の画像解析ずれ量G11を算出し、第1画像ずれ量G1と画像解析ずれ量G11とに基づいて、第2画像ずれ量G2を算出するように構成されている。
【0083】
画像解析ずれ量G11の算出は、パターンマッチングなどの公知の方法を採用することができる。第2画像ずれ量算出部42は、過去画像52と現在フレーム画像51とを画像全体にわたってパターンマッチングなどの画像解析を行うことにより、過去画像52と現在フレーム画像51との間の画像解析ずれ量G11を算出する。
【0084】
具体的には、
図9の画像152に示すように、過去画像52に対してA方向の第1画像ずれ量G1が算出されたとする。一方、画像解析の結果、過去画像52に対してB方向の画像解析ずれ量G11が算出されたとする。第2画像ずれ量算出部42は、得られた第1画像ずれ量G1と画像解析ずれ量G11とを所定の重み係数rを用いた重み付け加算によって、第2画像ずれ量G2を算出する。
【0085】
すなわち、第2画像ずれ量G2は、下式(3)によって算出される。
G2=r×G1+(1−r)×G11…(3)
この結果、第1画像ずれ量G1および画像解析ずれ量G11に対して、重み係数rに応じた割合の中間値として第2画像ずれ量G2が算出される。
【0086】
第2画像ずれ量G2の算出に際して、第2実施形態では、第2画像ずれ量算出部42は、現在フレーム画像51のノイズNCの量(ノイズ量)に応じて重み付け加算することにより、第2画像ずれ量G2を算出する。
【0087】
すなわち、現在フレーム画像51に含まれるノイズ量は、外界の明るさ(照度)などの外的な要因により変化する。昼間など外界が明るい場合にはノイズ量が少なく、外界の明るさが低下するほどノイズ量が多くなる。画像解析による画像解析ずれ量G11の誤差範囲は、ノイズ量が多いほど大きくなる。これに対して、姿勢検出装置30の検出結果に基づいて算出された第1画像ずれ量G1の誤差範囲は、外界の明るさ等によらず略一定と考えることができる。ノイズ量が少ない場合、第1画像ずれ量G1よりも画像解析ずれ量G11の方が高い精度を得ることができる。
【0088】
そこで、第2画像ずれ量算出部42は、
図10に示すように、現在フレーム画像51のノイズ量が多くなるほど第1画像ずれ量G1の重みが大きくなる(画像解析ずれ量G11の重みが小さくなる)ように重み係数rを設定する。重み係数rは、
図10のように複数の代表値をメモリ22に記憶しておき、ノイズ量に応じた中間値を代表値に基づき補完するなどによって算出できる。また、重み係数の値と、その重み係数を適用するノイズ量の範囲とを対応付けてメモリ22に記憶しておき、ノイズ量に応じた段階的な値を読み出すようにしてもよい。また、現在フレーム画像51のノイズ量は、画像解析によってノイズ量自体を評価してもよいし、外界の明るさによって評価してもよい。
【0089】
この結果、現在フレーム画像51のノイズ量が少なく画像解析ずれ量G11の精度が高い(誤差範囲が小さい)場合に画像解析ずれ量G11の重みが大きくなり、ノイズ量が多く画像解析ずれ量G11の精度が低い(誤差範囲が大きい)場合に第1画像ずれ量G1の重みが大きくなる。
【0090】
得られた第2画像ずれ量G2に基づいて過去画像52が補正され、補正された過去画像52と現在フレーム画像51とが合成される。
【0091】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0092】
[動画像処理装置の制御処理]
次に、
図8および
図11を参照して、第2実施形態による動画像処理装置120の制御処理について説明する。
【0093】
図11のステップS1〜S5は上記第1実施形態(
図8参照)と同様である。
【0094】
ステップS11において、CPU121が、ステップS1で得られた現在フレーム(n)の現在フレーム画像51と、メモリ22に記憶された直前フレーム(n−1)の過去画像52とを画像解析することにより、画像解析ずれ量G11を算出する。
【0095】
また、ステップS12において、CPU121が、ステップS1で得られた現在フレーム画像51に含まれるノイズ量に応じて、重み係数rを決定する。
【0096】
そして、ステップS13において、CPU121が、ステップS4で得られた第1画像ずれ量G1と、ステップS11で得られた画像解析ずれ量G11とを、ステップS12で決定した重み係数rを用いて重み付け加算することにより、第2画像ずれ量G2を算出する。その後、CPU121は、上記第1実施形態と同様に、ステップS6において第2画像ずれ量G2に基づいて直前フレーム(n−1)の過去画像52を補正し、ステップS7において、補正された過去画像52と現在フレーム画像51とを合成する。
【0097】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0098】
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、第2画像ずれ量G2を算出する際に第1画像ずれ量G1を利用することにより、ノイズ量の多少に対して精度を維持することができ、かつ、第1画像ずれ量G1をヨーイング方向およびピッチング方向に限定して算出することにより計算コストを低減することができる。その結果、位置ずれ検出の精度およびロバスト性を向上させ、かつ、画像処理の計算コストの増大を抑制することができる。
【0099】
また、第2実施形態では、上記のように、第2画像ずれ量算出部42を、第1画像ずれ量G1と画像解析ずれ量G11とに基づいて第2画像ずれ量G2を算出するように構成する。これにより、第1画像ずれ量G1と画像解析ずれ量G11との両方を考慮して、第2画像ずれ量G2を算出することができる。このため、現在フレーム画像51のノイズNCが多く画像解析ずれ量G11の精度が得にくい場合や、逆に姿勢検出装置30の検出結果にノイズが発生して第1画像ずれ量G1の精度が得にくい場合にも、第1画像ずれ量G1と画像解析ずれ量G11とにより互いに検出精度を補い合わせることができるので、位置ずれ検出の精度およびロバスト性を効果的に向上させることができる。
【0100】
また、第2実施形態では、上記のように、第2画像ずれ量算出部42を、第1画像ずれ量G1と画像解析ずれ量G11とを、現在フレーム画像51のノイズ量に応じて重み付け加算することにより、第2画像ずれ量G2を算出するように構成する。これにより、現在フレーム画像51のノイズ量が多く画像解析ずれ量G11の精度が得にくい場合に、第1画像ずれ量G1の重み付けを大きくすることにより位置ずれ検出の精度を確保することができる。また、現在フレーム画像51のノイズ量が少なく画像解析ずれ量G11の精度が得られる場合に、画像解析ずれ量G11の重み付けを大きくすることにより位置ずれ検出精度を向上させることも望める。その結果、位置ずれ検出の精度およびロバスト性をより効果的に向上させることができる。
【0101】
また、第2実施形態では、上記のように、第2画像ずれ量算出部42を、現在フレーム画像51のノイズ量が多くなるほど第1画像ずれ量G1の重みを大きくするように構成する。これにより、現在フレーム画像51のノイズ量が少ない場合には高精度を得ることが可能な画像解析ずれ量G11の重みを大きくし、現在フレーム画像51のノイズ量が多く画像解析ずれ量G11の精度が得にくくなるほど第1画像ずれ量G1の重み付けを大きくすることができる。その結果、位置ずれ検出の精度およびロバスト性を確実に向上させることができる。
【0102】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0103】
(第2実施形態の変形例)
上記第2実施形態では、現在フレーム画像51のノイズ量に応じて重み係数を決定する例を示したが、第2実施形態の変形例では、第1画像ずれ量G1および画像解析ずれ量G11のそれぞれの変化量に基づいて重み係数rを決定する例について説明する。
【0104】
第1画像ずれ量G1および画像解析ずれ量G11はフレーム間の位置ずれ量であるため、時系列的な連続性を有する。このため、
図12に示すように、たとえば第1画像ずれ量G1の過去のある時点から現在までの履歴に対して、今回(現在フレーム)の第1画像ずれ量G1が大きく変化する場合は、姿勢検出装置30の検出結果にノイズが含まれた結果としての外れ値である可能性が高くなり、第1画像ずれ量G1の信頼度が低いと評価することができる。
【0105】
そこで、第2実施形態の変形例では、第2画像ずれ量算出部42は、第1画像ずれ量G1および画像解析ずれ量G11の履歴から今回(現在フレーム)の第1画像ずれ量G1および画像解析ずれ量G11のそれぞれの変化量Vを算出することにより、第1画像ずれ量G1および画像解析ずれ量G11のそれぞれの信頼度を算出する。第2画像ずれ量算出部42は、変化量Vが大きく外れ値である可能性が高いほど、低い信頼度を算出する。そして、第2画像ずれ量算出部42は、第1画像ずれ量G1および画像解析ずれ量G11の信頼度の割合に応じて重み係数rを決定する。
【0106】
この結果、第1画像ずれ量G1および画像解析ずれ量G11のうち信頼度の高い方に相対的に大きな重み係数rを設定して重み付け加算することにより、算出される第2画像ずれ量G2へのノイズの影響を低減することができる。
【0107】
(第3実施形態)
次に、
図1、
図3、
図13〜
図15を参照して、本発明の第3実施形態によるHMDシステムについて説明する。第3実施形態では、上記第1実施形態および上記第2実施形態とは異なり、第1画像ずれ量G1により過去画像を補正した上で、局所領域毎に第2画像ずれ量G2を算出する例について説明する。なお、第3実施形態において、HMDシステムおよび動画像処理装置の装置構成(ハードウェア構成)は上記第1実施形態と同様であり、動画像処理装置220のCPU221による制御処理が上記第1実施形態とは異なる。そのため、上記第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0108】
第3実施形態によるHMDシステム300(
図1参照)において、動画像処理装置220のCPU221(
図3参照)は、
図13に示すように、第1画像ずれ量G1により過去画像52を補正した上で、局所領域261毎に第2画像ずれ量G2を算出するように構成されている。
【0109】
すなわち、CPU221において、第2画像ずれ量算出部42は、第1画像ずれ量G1に基づいて直前フレーム(n−1)の過去画像52の位置補正を行い、位置補正された過去画像252と現在フレーム画像51との第2画像ずれ量G2を画像中の局所領域261毎に算出する。そして、画像合成部43は、位置補正された過去画像252の局所領域261毎の位置を第2画像ずれ量G2に基づいて補正し、補正された過去画像253と現在フレーム(n)の現在フレーム画像51とを合成する。
【0110】
具体的には、直前フレーム(n−1)の過去画像52に対してA方向の第1画像ずれ量G1が算出されたとする。第2画像ずれ量算出部42は、まず、第1画像ずれ量G1分だけ過去画像52の位置補正を行い、画像全体の位置を現在フレーム画像51に一致させる。この結果、補正された過去画像252が得られる。
【0111】
ここで、過去画像52および現在フレーム画像51に移動物体262が映り込んでいる場合を考える。位置補正された過去画像252(フレーム(n−1))における移動物体262の位置と、現在フレーム画像51(フレーム(n))における移動物体262の位置とは、1フレーム間の移動物体262自体の移動量分だけずれることになる。
【0112】
そこで、第3実施形態では、第2画像ずれ量算出部42は、位置補正された過去画像252の局所領域261毎の位置ずれを局所的な第2画像ずれ量G2として算出する。
【0113】
局所領域261毎の位置ずれは、たとえば局所領域261に限定したパターンマッチングを過去画像52の全体にわたって行うことにより検出される。すなわち、
図14に示すように、位置補正された過去画像252について設定した局所領域261について、比較対象となる現在フレーム画像51の全体にわたってパターンマッチングを行う。その結果、相関の最も高い位置の局所領域261同士が対応付けられるとともに、局所領域261同士の位置ずれが第2画像ずれ量G2として算出される。位置補正された過去画像252の全領域にわたって、局所領域261の設定と現在フレーム画像51とのパターンマッチングとを繰り返すことによって、局所領域261毎の第2画像ずれ量G2が算出される。
【0114】
この結果、
図13に示すように、位置補正された過去画像252において移動物体262が写る局所領域261aと、現在フレーム画像51において移動物体262が写る局所領域261bとの間で、第2画像ずれ量G2が算出されることになる。画像合成部43は、位置補正された過去画像252の局所領域261毎の位置を第2画像ずれ量G2に基づいて補正して、局所領域261毎に補正された過去画像253を得る。そして、画像合成部43は、補正された過去画像253と現在フレーム画像51とを合成する。これにより、過去画像52と現在フレーム画像51との画像全体の位置補正後に残る移動物体262の残像を、現在フレーム画像51に一致させて低減することが可能となる。
【0115】
過去画像52において移動物体262が映り込んでいない局所領域261は、通常、現在フレーム画像51における同一位置の局所領域261同士で相関が最も高くなる。第1画像ずれ量G1に誤差が含まれていれば、現在フレーム画像51における同一位置から誤差範囲分ずれた範囲内で相関が最も高くなるため、この位置ずれが局所領域261毎の第2画像ずれ量G2となる。
【0116】
第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0117】
[動画像処理装置の制御処理]
次に、
図8および
図15を参照して、第3実施形態による動画像処理装置220の制御処理について説明する。
【0118】
図15のステップS1〜S5は上記第1実施形態(
図8参照)と同様である。
【0119】
ステップS21において、CPU221が、ステップS4で得られた第1画像ずれ量G1に基づいて直前フレーム(n−1)の過去画像52の画像全体の位置ずれ補正を行う。
【0120】
ステップS22において、CPU221が、ステップS21で位置補正された過去画像252の局所領域261と、ステップS1で得られた現在フレーム画像51との局所領域261毎の第2画像ずれ量G2を算出する。
【0121】
CPU221は、ステップS23において、得られた第2画像ずれ量G2に基づき、それぞれの局所領域261の位置ずれ補正を行い、ステップS7において、位置補正された直前フレーム(n−1)の過去画像253と現在フレーム(n)の現在フレーム画像51とを合成する。
【0122】
[第3実施形態の効果]
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0123】
第3実施形態では、上記第1実施形態と同様に、第2画像ずれ量G2を算出する際に第1画像ずれ量G1を利用して予め位置ずれ補正を行うことにより、ノイズ量の多少に対して精度を維持することができ、かつ、第1画像ずれ量G1をヨーイング方向およびピッチング方向に限定して算出することにより計算コストを低減することができる。その結果、位置ずれ検出の精度およびロバスト性を向上させ、かつ、画像処理の計算コストの増大を抑制することができる。
【0124】
また、第3実施形態では、上記のように、第2画像ずれ量算出部42を、第1画像ずれ量G1に基づいて過去画像52の位置補正を行い、位置補正された過去画像252と現在フレーム画像51との第2画像ずれ量G2を画像中の局所領域261毎に算出するように構成する。そして、画像合成部43を、位置補正された過去画像252の局所領域261毎の位置を第2画像ずれ量G2に基づいて補正し、補正された過去画像253と現在フレーム画像51とを合成するように構成する。これにより、局所領域261毎の位置を第2画像ずれ量G2に基づいて局所的に補正することができるので、画像全体の中で移動物体262が局所的に映り込んだ場合などでも、移動物体262が写る画像部分に局所的に残像が残るのを抑制しつつ、画像全体のノイズを低減することができる。
【0125】
第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0126】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0127】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、航空機(飛行機やヘリコプタ)などの移動体に搭載されるHMDシステムに、本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、自動車などの陸上移動体や、船舶など水上移動体に搭載されるHMDシステムに本発明を適用してもよい。また、たとえばゲーム用途に用いられるHMDシステムや、日常生活においてユーザに装着されて使用されるHMDシステムに本発明を適用してもよい。
【0128】
また、上記第1〜第3実施形態では、HMD10の外部から撮影装置11の姿勢を光学的に検出する姿勢検出装置30の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、姿勢検出装置は、たとえばHMD10に内蔵される加速度センサおよびジャイロセンサ等のセンサであってもよいし、センサ方式と光学方式との組み合わせであってもよい。姿勢検出装置による撮影装置の姿勢の検出方式はどのような方式であってもよい。
【0129】
また、上記第1〜第3実施形態では、動画像処理装置20(120、220)をHMD10に内蔵した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、動画像処理装置がHMDに外部接続される別個の処理ユニットであってもよい。
【0130】
また、上記第1〜第3実施形態では、左目用画像と右目用画像とを表示するために、HMD10の撮影装置11および表示素子14や、動画像処理装置20のCPU21などを一対ずつ設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、片目のみに画像を投影するHMDであってもよい。その場合、上記の撮影装置、表示素子、動画像処理装置のCPU等は、1つずつ設ければよい。また、動画像処理装置のCPUについては、1つのCPUによって左目用画像および右目用画像との両方を生成するようにしてもよい。
【0131】
また、上記第1〜第3実施形態では、現在フレーム(n)の現在フレーム画像51と直前フレーム(n−1)の過去画像52とをリカーシブフィルタにより合成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、リカーシブフィルタ以外の手法を用いて現在フレーム画像と過去画像とを合成してもよい。たとえば、複数フレーム分過去画像と現在フレーム画像との移動平均を算出する移動平均フィルタにより合成を行ってもよい。ただし、移動平均フィルタでは、リカーシブフィルタと比較して計算コストが増大する。