特許第6555370号(P6555370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555370
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】ブレイク装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20190729BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20190729BHJP
   B26F 3/00 20060101ALI20190729BHJP
   B28D 7/00 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   H01L21/78 V
   B28D5/00 A
   B26F3/00 A
   B28D7/00
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-34104(P2018-34104)
(22)【出願日】2018年2月28日
(62)【分割の表示】特願2015-129600(P2015-129600)の分割
【原出願日】2015年6月29日
(65)【公開番号】特開2018-101801(P2018-101801A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2018年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】栗山 規由
(72)【発明者】
【氏名】武田 真和
(72)【発明者】
【氏名】村上 健二
(72)【発明者】
【氏名】橋本 多市
【審査官】 杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−244222(JP,A)
【文献】 特開2013−086288(JP,A)
【文献】 特開2015−003350(JP,A)
【文献】 特開2015−046475(JP,A)
【文献】 特開平11−090900(JP,A)
【文献】 特開2006−327877(JP,A)
【文献】 特開2011−033372(JP,A)
【文献】 特許第4199471(JP,B2)
【文献】 特開2004−119901(JP,A)
【文献】 特開2002−050820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B26F 3/00
B28D 5/00
B28D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にスクライブラインが形成された半導体基板をブレイクバーで押し付けて撓ませることにより、前記半導体基板を前記スクライブラインに沿って分断するブレイク装置であって、
記半導体基板の上面側の表面高さを測定する光学系の変位計と、
前記変位計によって得られた測定数値を分析処理して、その測定数値が前記ブレイクバーの押し込み開始位置に対してブレがある場合、そのブレ量だけ前記ブレイクバーの予め設定された規定押し込み量を加減して、当該ブレイクバーを昇降動作させるコンピュータの制御部とからなるブレイク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス、シリコン、セラミック等の脆性材料からなる半導体基板のブレイク装置に関する。特に本発明は、半導体基板を、その表面に加工されたスクライブラインに沿って分断してチップ等の単位製品を切り出すブレイク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、マザー基板となる半導体基板からチップを切り出す工程では、まず、半導体基板の表面にカッターホイールやレーザをスクライブ予定ラインに沿ってスクライブすることにより、互いに直交するX方向並びにY方向のスクライブライン(亀裂)を形成する。その後、ブレイク装置でスクライブラインの反対側の面からブレイクバーを押し付けて基板を撓ませることにより、半導体基板を四角形のチップに分断する(特許文献1並びに特許文献2参照)。
【0003】
ブレイク装置で分断される半導体基板は、多くの場合、図1(a)に示すように、円形のダイシングフレーム1に貼設された樹脂製のダイシングテープ2に保持されている。半導体基板Wの上面又は裏面には、先行するスクライブ工程において互いに直交するスクライブラインSが加工されている。また、図1(b)は、スクライブラインSが半導体基板Wの上面に設けられている場合であって、半導体基板Wの上面側に保護フィルム3が貼り付けられている。また、図1(c)はスクライブラインSが半導体基板Wの下面に設けられている場合であって、半導体基板Wの上面側に保護フィルム3が貼り付けられるようにしている。
【0004】
ブレイクに際し、図1(b)の半導体基板Wは、図7に示すように、スクライブラインSを加工した面が下向きになるように反転させて、スクライブラインSがテーブル4の中間に設けた左右一対の受刃6、6の間に位置するようにしてテーブル4に載置される。
また、図1(c)の半導体基板Wは、図8に示すように、そのままの姿勢でスクライブラインSが左右の受刃6、6の間に位置するようにしてテーブル4に配置される。
この後、上方からブレイクバー7’をスクライブラインSに向かって押し下げることにより、基板Wを受刃6、6の間で三点曲げにより撓ませて、スクライブラインSのクラックを基板厚み方向に浸透させて分断する。上記した保護フィルム3は、分断時に半導体基板Wが直接ブレイクバー7’や受刃6に接触して傷付くことを防ぐためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−70135号公報
【特許文献2】特開2004−39931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ブレイクバーによる分断では、基板に対する押し込み量が大きいと、基板の撓みが大きくなって分断端縁同士が接触するなどして分断端面に欠けが生じたり、保護フィルムが破れて基板表面を傷付けたりすることがある。また逆に押し込み量が少ないと、基板の撓み不足により分断されない部分が発生する等の不都合が生じるため、ブレイクバーの適正な押し込み量を確保する必要がある。
しかし、上記押し込み量の適正レンジは狭く、例えば、厚さ1mmの半導体基板Wでは200〜300μmであり、しかも当該数値が微細であるため調整に手間を要する。また、半導体基板Wやダイシングテープ2、保護フィルム3の厚みが、規定の厚みに対してばらついている場合、ブレイクバー7’の押し込み開始位置がダイシングテープ2や保護フィルム3の表面に接触した位置と異なることにより、半導体基板Wに対する押し込み量が不必要に増減し、きれいに分断することができない。
【0007】
そこで本発明は、上記の従来課題に鑑み、半導体基板や保護フィルム、ダイシングテープの厚みのバラツキに影響されることなく、適正なブレイクバーの押し込み量を維持することができるブレイク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明では次のような技術的手段を講じた。すなわち本発明は、表面にスクライブラインが形成された半導体基板をブレイクバーで押し付けて撓ませることにより、前記半導体基板を前記スクライブラインに沿って分断するブレイク装置であって、前記半導体基板の上面側の表面高さを測定する光学系の変位計と、前記変位計によって得られた測定数値を分析処理して、その測定数値が前記ブレイクバーの押し込み開始位置に対してブレがある場合、そのブレ量だけ前記ブレイクバーの予め設定された規定押し込み量を加減して、当該ブレイクバーを昇降動作させるコンピュータの制御部とからなるブレイク装置を特徴とする。
【0009】
上記発明において、前記変位計の測定基準値となるゼロ点を前記ブレイクバーの押し込み開始位置に設定し、測定により得られた前記ゼロ点からのブレ量を前記ブレイクバーの規定押し込み量に加減するのがよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、変位計によって得られた測定数値を分析処理し、その測定数値がブレイクバーの押し込み開始位置に対してブレがある場合、予め設定されたブレイクバーの規定押し込み量からそのブレ量だけ加減して、ブレイクバーを押し込むようにしたものであるから、半導体基板や保護フィルム、ダイシングテープの厚みにバラツキがあっても、これらに影響されることなく適正な押し込み量で半導体基板を分断することができる。これにより、ブレイクバーの過大な押し込みによる基板分断面の欠けや損傷、あるいは押し込み不足による未分断の発生をなくして確実かつ効率的に分断することができる。
【0011】
上記発明において、前記変位計が、上側にある保護フィルムを透過して前記半導体基板の表面を測定するのがよい。
これにより、半導体基板の上面と保護フィルムとの間にミクロレベルで不揃いな半田バンプ等の凸状の構造物が設けられている場合でも、これに影響されることなく適正な押し込み量で基板を分断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明における加工対象物となる半導体基板を示す斜視図と断面図。
図2】本発明に係るブレイク装置のブレイク機構部分を示す概略的断面図。
図3】本発明での変位計のゼロ点とブレイクバーの押し込み開始位置の設定方法を示す説明図。
図4】本発明のブレイク装置におけるコンピュータを示すブロック図。
図5】別の半導体基板をブレイクする際の説明図。
図6】さらに別の半導体基板をブレイクする際の説明図。
図7】従来のブレイク手段の一例を示す断面図。
図8】従来のブレイク手段の他の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の詳細を図に示した実施形態に基づき説明する。本実施例において加工対象とする半導体基板Wは、主としてイメージセンサ用半導体基板であって、その形態は先に述べた図1に示したものと同じである。以下においては、図1(c)の半導体基板Wのブレイクについて説明する。
【0014】
図2は本発明に係るブレイク装置Aのブレイク機構部分を示す説明図であって、半導体基板Wをダイシングフレーム1と共に載置するテーブル4を備えている。テーブル4の中間には空間5が設けられており、この空間5内に左右一対の受刃6、6が配置されている。受刃6、6の間に形成される空隙6aは図2の前後方向(X方向)に延びており、この空隙6aの中心ラインの上方に、X方向に延びる長尺板状のブレイクバー7が設けられている。
【0015】
ブレイクバー7はモータを駆動源とするガイド等の昇降機構(図示外)を内蔵する保持部材8により装置のフレーム9に保持され、受刃6に向かって昇降できるように形成されており、このブレイクバー7と受刃6とがセットとなってブレイク機構を構成する。そして、このブレイク機構と半導体基板Wを載置したテーブル4とが相対的に移動することによって、半導体基板Wに設けられた複数のスクライブラインSをブレイク機構により順次分断することができるように形成されている。本実施例では、ブレイクバー7と受刃6とからなるブレイク機構を定置し、テーブル4がY方向に移動するように形成されている。なお、当然のことながら、テーブル4を定置しておいて、ブレイク機構をY方向に移動するようにしてもよい。
【0016】
さらに、テーブル4の上方には、分断すべき半導体基板Wの保護フィルム3の表面高さを計測する非接触の変位計10が設置されている。この変位計10としては、反射光を利用した光学系の変位計が用いられる。
【0017】
また、変位計10によって計測された数値データを解析処理し、その結果に基づいてブレイクバー7の規定押し込み量を加減する制御部11がブレイク装置Aに付設されたコンピュータCに設けられている。
コンピュータCは、図4のブロック図に示すように、上記した制御部11に加え、入力部12と、表示部13を備えている。制御部11は、CPU、RAM、ROM等のコンピュータハードウエアにより構成され、上記した変位計10による測定データの解析処理の他に、テーブル4の移動やブレイクバー7によるブレイク動作等、各部機構の動作全般の制御を行う。入力部12は、オペレータがブレイク装置Aに対してブレイクバー7の規定押し込み量の設定や種々のデータ及び操作指示等を入力するためのものであり、表示部13は処理メニューや動作状況を表示するためのものである。
【0018】
次に、本発明に係るブレイク装置の動作について説明する。
まず、図2に示すように半導体基板Wをダイシングフレーム1と共にテーブル4上へ載置する。この際、半導体基板WのスクライブラインSの何れかが受刃6、6間の中心にくるようにする。そしてブレイクバー7を降下させて基板表面を押し込み、半導体基板Wを撓ませることによりスクライブラインSを分断する。
【0019】
ブレイクバー7が半導体基板W表面の保護フィルム3に接触して半導体基板Wへの押し込みを開始してから、半導体基板Wが撓んでスクライブラインSが分断されるまでのブレイクバー7の規定押し込み量は、予めコンピュータCに入力されている。例えば、半導体基板Wの厚みが1mm、保護フィルム3の厚みが0.03mm、ダイシングテープ2の厚みが0.1mmの場合には、250μmが規定押し込み量として設定されている。しかし、半導体基板Wやダイシングテープ2、保護フィルム3の厚みは製品ロット毎に変化することがあり、厚みが変化すると最適な押し込み量を得ることができない。
本発明では、半導体基板Wをテーブル4に載置して分断する前に、変位計10で半導体基板Wに貼り付けた保護フィルム3の表面高さを測定し、その高さがブレイクバー7の押し込み開始位置(変位計のゼロ点)に対してブレ(差)があれば、コンピュータCの制御部11によってそのブレ量だけ規定押し込み量が加減される。これにより、常に最適の押し込み量でブレイクすることができる。
【0020】
ブレイクバー7の押し込み開始位置並びに変位計10のゼロ点は、例えば以下の方法によって設定することができる。
図3(a)に示すように、ブレイクバー7が保護フィルム3の表面に接触して押し込みが開始される位置と同じ高さとしたタッチセンサ14をテーブル4上に設置し、変位計10の光線をタッチセンサ14の頂面14aに照射して変位計10のゼロ点を設定する。次いで図3(b)に示すように、ブレイクバー7の先端をタッチセンサ14の頂面14aに接触させてブレイクバー7の押し込み開始位置を決める。つまり、ブレイクバー7の保護フィルム3表面での押し込み開始位置が変位計10のゼロ点となる。また、ブレイクバー7の実質的な昇降量は、上方に待機した位置から押し込み開始位置までの距離L1に規定押し込み量L2を加算した値となる。
【0021】
図5は、図1(b)で示した半導体基板Wを分断する場合であって、本実施例では、ダイシングフレーム1を反転させてスクライブラインS並びに保護フィルム3を下側にした状態で受刃6及びテーブル4に載置することになるため、ダイシングテープ2が上側になる。
したがって変位計10は、ダイシングテープ2の表面を計測することになり、変位計10のゼロ点並びにブレイクバー7の押し込み開始位置は、ダイシングテープ2の表面高さに設定される。
【0022】
図6はブレイク対象となる半導体基板の別の一例を示す。この半導体基板Wは、上面に半田バンプ等の凸状の構造物15が設けられており、その表面が保護フィルム3で被覆されている。半田バンプ等の構造物15はミクロレベルでは不揃いであり、その高さにバラツキがある。このバラツキは保護フィルム3の表面にも影響する。したがって、この場合は、保護フィルム3の表面で変位計10の計測を行うのでなく、保護フィルム3を透過させて半導体基板Wの表面で高さを計測する。これにより、変位計10のゼロ点並びにブレイクバー7の押し込み開始位置は、半導体基板Wの表面高さに設定される。また、保護フィルム3は変位計10の光線を透過する透明な材料で作製されることとなり、計測時に保護フィルム3の光屈折率が変位計の測定値に影響されるため、その屈折率を予め計算して測定値を補正する必要がある。
この場合も、先の実施例と同じように、計測により変位計10のゼロ点にブレがあれば、そのブレ量だけブレイクバー7の規定押し込み量を加減することによって、保護フィルム3の表面高さのバラツキに関係なく、最適の押し込み量を得ることができる。
【0023】
以上、本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施形態に特定されるものでなく、その目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、一方の面に保護フィルムを備え、他方の面がダイシングテープに貼り付けられた半導体基板をブレイクバーで分断するブレイク装置に利用される。
【符号の説明】
【0025】
A ブレイク装置
C コンピュータ
S スクライブライン
W 半導体基板
1 ダイシングフレーム
2 ダイシングテープ
3 保護フィルム
4 テーブル
6 受刃
7 ブレイクバー
10 変位計
11 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8