(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の蓄電素子の実測電流値、所要の蓄電素子間の実測電圧差及び実測温度差、並びに前記所要の蓄電素子のうちの一の蓄電素子の電圧及び温度についての実測値と予測値との差を入力データとし、異常要因を出力データとする学習データに基づいて学習された学習器を備え、
前記判定部は、
前記実測値取得部で取得した実測電流値、前記第1算出部で算出した実測電圧差及び実測温度差、並びに前記第2算出部で算出した実測値と予測値との差を前記学習器に入力して、異常要因の有無を判定する請求項3に記載の異常要因判定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
移動体や施設に設置されている蓄電素子は、蓄電素子の設置条件や周囲温度などの環境状態に応じて、充放電挙動や劣化の進行速度が異なると考えられる。学習済みのニューラルネットワーク部に蓄電素子の状態量を入力し、蓄電素子の想定より早期の劣化の有無を判定する場合、蓄電素子が本当に劣化しているのか、あるいは正常であるにも関わらず環境差によって誤って劣化していると判定されているのかを峻別できない。
【0006】
本発明は、複数の蓄電素子を含む蓄電システムに関する異常要因を判定する異常要因判定装置、劣化判定装置、コンピュータプログラム、異常要因判定方法及び劣化判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
複数の蓄電素子を含む蓄電システムに関する異常要因を判定する異常要因判定装置は、前記複数の蓄電素子の電気値及び温度値を含む実測値を取得する実測値取得部と、前記複数の蓄電素子の電気値及び温度値を含む予測値を取得する予測値取得部と、前記実測値取得部で取得した実測値及び前記予測値取得部で取得した予測値に基づいて蓄電システムに関する異常要因の有無を判定する判定部とを備える。
【0008】
複数の蓄電素子を含む蓄電システムに関する異常要因をコンピュータに判定させるためのコンピュータプログラムは、コンピュータに、前記複数の蓄電素子の電気値及び温度値を含む実測値を取得する処理と、前記複数の蓄電素子の電気値及び温度値を含む予測値を取得する処理と、取得した実測値及び予測値に基づいて蓄電システムに関する異常要因の有無を判定する処理とを実行させる。
【0009】
複数の蓄電素子を含む蓄電システムに関する異常要因を判定する異常要因判定方法は、前記複数の蓄電素子の電気値及び温度値を含む実測値を取得し、前記複数の蓄電素子の電気値及び温度値を含む予測値を取得し、取得された実測値及び予測値に基づいて蓄電システムに関する異常要因の有無を判定する。
【0010】
実測値取得部は、複数の蓄電素子の電気値(例えば、電流値、電圧値)及び温度値を含む実測値を取得する。実測値は、蓄電システムに含まれる複数の蓄電素子のセンサ(電流センサ、電圧センサ、温度センサ)から取得することができる。実測値の取得頻度は、蓄電システムの運用状態などに応じて適宜決定することができる。例えば、負荷変動が比較的大きい運用状態では、実測値の取得頻度を多くする(例えば、1時間ごとに5分間実測する)ことができる。また、負荷変動が比較的小さい運用状態では、実測値の取得頻度を少なくする(例えば、6時間ごとに5分間実測する)ことができる。
【0011】
予測値取得部は、複数の蓄電素子の電気値(例えば、電圧値)及び温度値を含む予測値を取得する。予測値は、実際にセンサから取得した値ではなく、複数の蓄電素子の設置条件や周囲温度などの環境状態に応じて、事前に想定される値であり、算出された値又は推定された値を意味する。
【0012】
判定部は、取得した実測値及び予測値に基づいて蓄電システムに関する異常要因の有無を判定する。複数の蓄電素子に流れる実測電流値により、重負荷であるか軽負荷であるか、あるいは負荷変動の大小を判定できる。複数の蓄電素子それぞれの電圧の実測値に基づいて、所要の蓄電素子間の電圧差を求めることができる。また、複数の蓄電素子それぞれの温度の実測値に基づいて、所要の蓄電素子間の温度差を求めることができる。判定部は、これらの電圧差及び温度差の実測値、及び実測値と予測値との差などを考慮することにより、異常要因(例えば、蓄電素子の異常(想定よりも早期の劣化など)、あるいは蓄電素子の環境の異常)の有無を判定することができる。
【0013】
異常要因判定装置は、前記判定部での判定結果に基づいて蓄電システムの運用支援情報を提供する提供部を備えてもよい。
【0014】
提供部は、判定部での判定結果に基づいて蓄電システムの運用支援情報を提供する。例えば、蓄電素子の異常であると判定された場合、提供部は、負荷の軽減、蓄電素子の交換などの情報を提供できる。また、環境の異常であると判定された場合、提供部は、空調の調整など(例えば、温度を下げる等)の情報を提供でき、異常要因に応じて蓄電システムの最適な運用を支援する運用支援情報を提供することができる。
【0015】
異常要因判定装置は、前記実測値取得部で取得した実測値に基づいて所要の蓄電素子間の実測電圧差及び実測温度差を算出する第1算出部と、前記実測値取得部で取得した実測値及び前記予測値取得部で取得した予測値に基づいて前記所要の蓄電素子のうちの一の蓄電素子の電圧及び温度についての実測値と予測値との差を算出する第2算出部とを備え、前記判定部は、前記実測値取得部で取得した実測電流値、前記第1算出部で算出した実測電圧差及び実測温度差、並びに前記第2算出部で算出した実測値と予測値との差に基づいて異常要因の有無を判定してもよい。
【0016】
第1算出部は、実測値取得部で取得した実測値に基づいて所要の蓄電素子間の実測電圧差及び実測温度差を算出する。
【0017】
第2算出部は、実測値取得部で取得した実測値及び予測値取得部で取得した予測値に基づいて所要の蓄電素子のうちの一の蓄電素子の電圧及び温度についての実測値と予測値との差を算出する。
【0018】
判定部は、実測値取得部で取得した実測電流値、第1算出部で算出した実測電圧差及び実測温度差、並びに第2算出部で算出した実測値と予測値との差に基づいて異常要因の有無を判定する。例えば、実測電流値及び蓄電素子間の実測電圧差が大きく、実測値と予測値との差も大きい場合には、当該一の蓄電素子の異常であると判定できる。一方、実測電流値及び蓄電素子間の実測電圧差は大きいが、実測値と予測値との差が小さい場合には、例えば、蓄電システム内の蓄電素子間の配置や設置条件の違い、蓄電素子間のSOCのずれ等に起因し、想定内の状態(異常ではない)であると判定できる。
【0019】
また、実測電流値が小さく、蓄電素子間の実測温度差が大きく、実測値と予測値との差も大きい場合には、環境の異常であると判定できる。一方、実測電流値が小さく、蓄電素子間の実測温度差が大きいが、実測値と予測値との差が小さい場合には、蓄電システム内の蓄電素子間の配置や設置条件の違い等に起因し、想定内の状態(異常ではない)であると判定できる。
【0020】
異常要因判定装置において、前記判定部は、前記異常要因として前記蓄電素子の異常であるか又は前記蓄電素子の環境の異常であるかを判定してもよい。
【0021】
判定部は、異常要因として、蓄電素子の異常であるか又は蓄電素子の環境の異常であるかを判定する。蓄電素子の異常は、例えば、蓄電素子が想定よりも早期に劣化していると判定される場合を含む。また、蓄電素子の異常と環境の異常とを区別して判定できるので、誤って蓄電素子の異常であると判定することを防止できる。
【0022】
異常要因判定装置は、複数の蓄電素子の実測電流値、所要の蓄電素子間の実測電圧差及び実測温度差、並びに前記所要の蓄電素子のうちの一の蓄電素子の電圧及び温度についての実測値と予測値との差を入力データとし、異常要因を出力データとする学習データに基づいて学習された学習器を備え、前記判定部は、前記実測値取得部で取得した実測電流値、前記第1算出部で算出した実測電圧差及び実測温度差、並びに前記第2算出部で算出した実測値と予測値との差を前記学習器に入力して、異常要因の有無を判定してもよい。
【0023】
学習器は、複数の蓄電素子の実測電流値、所要の蓄電素子間の実測電圧差及び実測温度差、並びに所要の蓄電素子のうちの一の蓄電素子の電圧及び温度についての実測値と予測値との差を入力データとし、異常要因を出力データとする学習データに基づいて学習されてある。
【0024】
学習器は、例えば、実測電流値及び蓄電素子間の実測電圧差が大きく、実測値と予測値との差も大きい場合には、当該一の蓄電素子の異常を出力するように学習されてある。また、学習器は、実測電流値及び蓄電素子間の実測電圧差が大きく、実測値と予測値との差が小さい場合には、想定内の状態(異常ではない)であることを出力するように学習されてある。
【0025】
学習器は、実測電流値が小さく、蓄電素子間の実測温度差が大きく、実測値と予測値との差も大きい場合には、環境の異常を出力するように学習されてある。また、学習器は、実測電流値が小さく、蓄電素子間の実測温度差が大きく、実測値と予測値との差が小さい場合には、想定内の状態(異常ではない)であることを出力するように学習されている。
【0026】
判定部は、実測値取得部で取得した実測電流値、第1算出部で算出した実測電圧差及び実測温度差、並びに第2算出部で算出した実測値と予測値との差を学習器に入力して、異常要因の有無を判定する。これにより、異常要因(例えば、蓄電素子の異常(想定よりも早期の劣化など)、あるいは蓄電素子の環境の異常)を判定することができる。また、蓄電素子の異常と環境の異常とを区別して判定できるので、誤って蓄電素子の異常であると判定することを防止できる。
【0027】
蓄電素子の劣化を判定する劣化判定装置は、蓄電素子の実測電気値及び実測温度値を含む実測時系列データを取得する実測データ取得部と、前記蓄電素子の予測電気値及び予測温度値を含む予測時系列データを取得する予測データ取得部と、前記実測時系列データ及び予測時系列データを入力データとし、前記蓄電素子の劣化の判定を出力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる学習処理部とを備える。
【0028】
蓄電素子の劣化をコンピュータに判定させるためのコンピュータプログラムは、コンピュータに、蓄電素子の実測電気値及び実測温度値を含む実測時系列データを取得する処理と、前記蓄電素子の予測電気値及び予測温度値を含む予測時系列データを取得する処理と、前記実測時系列データ及び予測時系列データを入力データとし、前記蓄電素子の劣化の判定を出力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる処理とを実行させる。
【0029】
蓄電素子の劣化を判定する劣化判定方法は、蓄電素子の実測電気値及び実測温度値を含む実測時系列データを取得し、前記蓄電素子の予測電気値及び予測温度値を含む予測時系列データを取得し、前記実測時系列データ及び予測時系列データを入力データとし、前記蓄電素子の劣化の判定を出力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる
。
【0030】
実測データ取得部は、蓄電素子の実測電気値及び実測温度値を含む実測時系列データを取得する。電気値は、電圧及び電流を含む。実測電気値は、例えば、電圧センサから取得した電圧値、電流センサから取得した電流値を含む。実測温度値は、温度センサから取得した温度である。
【0031】
予測データ取得部は、当該蓄電素子の予測電気値及び予測温度値を含む予測時系列データを取得する。予測電気値及び予測温度値は、実際にセンサから取得した値ではなく、蓄電素子の設置条件や周囲温度などの環境状態に応じて、事前に想定される値であり、算出された値又は推定された値を意味する。
【0032】
学習処理部は、実測時系列データ及び予測時系列データを入力データとし、蓄電素子の劣化の判定を出力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる。学習モデルは、蓄電素子の実測電気値及び実測温度値を含む実測時系列データだけでなく、当該蓄電素子の予測電気値及び予測温度値を含む予測時系列データも学習する。すなわち、蓄電素子の実測電気値及び実測温度値がどのように推移し、かつ当該蓄電素子の予測電気値及び予測温度値がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。予測時系列データは、蓄電素子の設置条件や周囲温度などの環境状態により想定されるデータであるから、学習モデルは、環境差による蓄電素子の充放電挙動を学習することができる。
【0033】
これにより、蓄電素子の設置条件や周囲温度などの環境差がある場合でも蓄電素子の劣化を精度良く判定できる学習済み学習モデルを生成することができる。
【0034】
蓄電素子の劣化を判定する劣化判定装置は、蓄電素子の実測電気値及び実測温度値を含む実測時系列データを取得する実測データ取得部と、前記蓄電素子の予測電気値及び予測温度値を含む予測時系列データを取得する予測データ取得部と、前記実測時系列データ及び予測時系列データを入力データとし、前記蓄電素子の劣化の判定を出力する学習済みの学習モデルとを備える。
【0035】
蓄電素子の劣化をコンピュータに判定させるためのコンピュータプログラムは、コンピュータに、蓄電素子の実測電気値及び実測温度値を含む実測時系列データを取得する処理と、前記蓄電素子の予測電気値及び予測温度値を含む予測時系列データを取得する処理と、前記実測時系列データ及び予測時系列データを学習済の学習モデルに入力して前記蓄電素子の劣化を判定する処理とを実行させる。
【0036】
蓄電素子の劣化を判定する劣化判定方法は、蓄電素子の実測電気値及び実測温度値を含む実測時系列データを取得し、前記蓄電素子の予測電気値及び予測温度値を含む予測時系列データを取得し、前記実測時系列データ及び予測時系列データを学習済の学習モデルに入力して前記蓄電素子の劣化を判定する。
【0037】
学習済みの学習モデルは、実測時系列データ及び予測時系列データを入力データとし、蓄電素子の劣化の判定を出力する。学習済みの学習モデルは、蓄電素子の実測電気値及び実測温度値がどのように推移し、かつ当該蓄電素子の予測電気値及び予測温度値がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習済みである。予測時系列データは、蓄電素子の設置条件や周囲温度などの環境状態により想定されるデータであるから、学習済みの学習モデルは、環境差による蓄電素子の充放電挙動を学習済みである。
【0038】
これにより、蓄電素子の設置条件や周囲温度などの環境差がある場合でも蓄電素子の劣化を精度良く判定することができる。
【0039】
劣化判定装置において、前記学習処理部は、前記実測電気値と予測電気値との差又は比、及び前記実測温度値と予測温度値との差又は比それぞれの時系列データを入力データとする学習データに基づいて前記学習モデルを学習させてもよい。
【0040】
学習処理部は、実測電気値と予測電気値との差又は比、及び実測温度値と予測温度値との差又は比それぞれの時系列データを入力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる。
【0041】
学習モデルは、実測電気値と予測電気値との差又は比がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。また、学習モデルは、実測温度値と予測温度値との差又は比がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。これにより、学習モデルは、環境差による蓄電素子の充放電挙動を学習することができる。
【0042】
劣化判定装置において、前記実測データ取得部は、前記蓄電素子の実測電圧値を含む実測時系列データを取得し、前記予測データ取得部は、前記蓄電素子の予測電圧値を含む予測時系列データを取得し、前記学習処理部は、前記実測電圧値を含む実測時系列データ及び前記予測電圧値を含む予測時系列データを入力データとする学習データに基づいて前記学習モデルを学習させてもよい。
【0043】
実測データ取得部は、蓄電素子の実測電圧値を含む実測時系列データを取得する。予測データ取得部は、当該蓄電素子の予測電圧値を含む予測時系列データを取得する。学習処理部は、実測電圧値を含む実測時系列データ及び予測電圧値を含む予測時系列データを入力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる。
【0044】
学習モデルは、実測電圧値及び予測電圧値がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。これにより、学習モデルは、想定される電圧差に応じて、蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。
【0045】
劣化判定装置において、前記実測データ取得部は、前記蓄電素子の実測電流値を含む実測時系列データを取得し、前記予測データ取得部は、前記蓄電素子の予測電流値を含む予測時系列データを取得し、前記学習処理部は、前記実測電流値を含む実測時系列データ及び前記予測電流値を含む予測時系列データを入力データとする学習データに基づいて前記学習モデルを学習させてもよい。
【0046】
実測データ取得部は、蓄電素子の実測電流値を含む実測時系列データを取得する。予測データ取得部は、蓄電素子の予測電流値を含む予測時系列データを取得する。学習処理部は、実測電流値を含む実測時系列データ及び予測電流値を含む予測時系列データを入力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる。
【0047】
学習モデルは、実測電流値及び予測電流値がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。これにより、学習モデルは、想定される電流差に応じて、蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。
【0048】
劣化判定装置において、前記実測データ取得部は、蓄電モジュールを構成する複数の蓄電セルそれぞれの実測電気値と前記複数の蓄電セルの実測電気値の平均値との差又は比を含む実測時系列データを取得し、前記学習処理部は、前記差又は比を含む実測時系列データを入力データとする学習データに基づいて前記学習モデルを学習させてもよい。
【0049】
実測データ取得部は、蓄電モジュールを構成する複数の蓄電セルそれぞれの実測電気値と複数の蓄電セルの実測電気値の平均値との差又は比を含む実測時系列データを取得する。すなわち、複数の蓄電セルそれぞれの実測電気値を平均した平均値と、複数の蓄電セルそれぞれの実測電気値との差又は比を含む実測時系列データを取得する。
【0050】
学習処理部は、当該差又は比を含む実測時系列データを入力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる。これにより、学習モデルは、複数の蓄電セルそれぞれの実測電気値を平均した平均値と、複数の蓄電セルそれぞれの実測電気値との差又は比がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。これにより、学習モデルは、蓄電セル間の実測電気値に応じて、蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。
【0051】
劣化判定装置において、前記予測データ取得部は、蓄電モジュールを構成する複数の蓄電セルそれぞれの予測電気値と前記複数の蓄電セルの予測電気値の平均値との差又は比を含む予測時系列データを取得し、前記学習処理部は、前記差又は比を含む予測時系列データを入力データとする学習データに基づいて前記学習モデルを学習させてもよい。
【0052】
予測データ取得部は、蓄電モジュールを構成する複数の蓄電セルそれぞれの予測電気値と複数の蓄電セルの予測電気値の平均値との差又は比を含む予測時系列データを取得する。すなわち、複数の蓄電セルそれぞれの予測電気値を平均した平均値と、複数の蓄電セルそれぞれの予測電気値との差又は比を含む実測時系列データを取得する。
【0053】
学習処理部は、当該差又は比を含む予測時系列データを入力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる。これにより、学習モデルは、複数の蓄電セルそれぞれの予測電気値を平均した平均値と、複数の蓄電セルそれぞれの予測電気値との差又は比がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。これにより、学習モデルは、蓄電セル間の事前の環境差に応じて、蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。
【0054】
劣化判定装置において、前記予測データ取得部は、蓄電モジュールを構成する複数の蓄電セルそれぞれの予測温度値と前記複数の蓄電セルの予測温度値の平均値との差又は比を含む予測時系列データを取得し、前記学習処理部は、前記差又は比を含む予測時系列データを入力データとする学習データに基づいて前記学習モデルを学習させてもよい。
【0055】
予測データ取得部は、蓄電モジュールを構成する複数の蓄電セルそれぞれの予測温度値と複数の蓄電セルの予測温度値の平均値との差又は比を含む予測時系列データを取得する。すなわち、複数の蓄電セルそれぞれの予測温度値を平均した平均値と、複数の蓄電セルそれぞれの予測温度値との差又は比を含む予測時系列データを取得する。複数の蓄電セルそれぞれの予測温度値は、蓄電セルに流れる予測電流値、蓄電モジュール内の蓄電セルの配置状況、蓄電モジュールの予測温度値などに基づいて求めることができる。
【0056】
学習処理部は、当該差又は比を含む予測時系列データを入力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる。これにより、学習モデルは、複数の蓄電セルそれぞれの予測温度値を平均した平均値と、複数の蓄電セルそれぞれの予測温度値との差又は比がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。これにより、学習モデルは、蓄電セル間の事前の環境差に応じて、蓄電素
子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。
【0057】
劣化判定装置において、前記実測データ取得部は、前記蓄電素子の実測圧力値を含む実測時系列データを取得し、前記予測データ取得部は、前記蓄電素子の予測圧力値を含む予測時系列データを取得し、前記学習処理部は、前記実測圧力値と予測圧力値との差又は比を含む時系列データを入力データとする学習データに基づいて前記学習モデルを学習させてもよい。
【0058】
実測データ取得部は、蓄電素子の実測圧力値を含む実測時系列データを取得する。予測データ取得部は、当該蓄電素子の予測圧力値を含む予測時系列データを取得する。学習処理部は、実測圧力値と予測圧力値との差又は比を含む時系列データを入力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる。
【0059】
学習モデルは、実測圧力値及び予測圧力値がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。これにより、学習モデルは、想定される圧力差に応じて、蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。
【0060】
劣化判定装置において、前記学習処理部は、前記蓄電素子に係る環境異常の有無を出力データとする学習データに基づいて前記学習モデルを学習させてもよい。
【0061】
学習処理部は、蓄電素子に係る環境異常の有無を出力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる。学習モデルに、環境異常の有無を学習させることにより、例えば、蓄電素子の劣化だけでなく、環境異常もあることを学習させることができ、蓄電素子の劣化と環境異常とを区別して判定することが可能となる。
【0062】
劣化判定装置は、前記学習処理部が学習させた学習済の学習モデルを用いて前記蓄電素子の劣化を判定してもよい。
【0063】
学習処理部が学習させた学習済の学習モデルを用いて蓄電素子の劣化を判定する。これにより、蓄電素子の設置条件や周囲温度などの環境差がある場合でも蓄電素子の劣化を精度良く判定することができる。
【発明の効果】
【0064】
上述の構成により、蓄電システムに関する異常要因を判定することができ、異常要因に応じて蓄電システムの最適な運用を支援する運用支援情報を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0066】
(第1実施形態)
以下、本実施の形態に係る劣化判定装置を図面に基づいて説明する。
図1は本実施の形態の遠隔監視システム100の概要を示す図である。
図1に示すように、公衆通信網(例えば、インターネットなど)N1及び移動通信規格による無線通信を実現するキャリアネットワークN2などを含むネットワークNには、火力発電システムF、メガソーラー発電システムS、風力発電システムW、無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)U及び鉄道用の安定化電源システム等に配設される整流器(直流電源装置、又は交流電源装置)Dなどが接続されている。また、ネットワークNには、後述の通信デバイス1、通信デバイス1から情報を収集し、劣化判定装置としてのサーバ装置2、及び収集された情報を取得するクライアント装置3などが接続されている。
【0067】
より具体的には、キャリアネットワークN2には基地局BSが含まれ、クライアント装置3は、基地局BSからネットワークNを経由してサーバ装置2と通信することができる。また、公衆通信網N1にはアクセスポイントAPが接続されており、クライアント装置3は、アクセスポイントAPからネットワークNを経由してサーバ装置2との間で情報を送受信することができる。
【0068】
メガソーラー発電システムS、火力発電システムF及び風力発電システムWには、パワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning System)P、及び蓄電システム101が併設されている。蓄電システム101は、蓄電モジュール群Lを収容したコンテナCを複数並設して構成されている。蓄電モジュール群Lは、例えば、蓄電セル(セルとも称する)を複数直列に接続した蓄電モジュール(モジュールとも称する)と、蓄電モジュールを複数直列に接続したバンクと、バンクを複数並列に接続したドメインとの階層構造にて構成されている。蓄電素子は、鉛蓄電池及びリチウムイオン電池のような二次電池や、キャパシタのような、再充電可能なものであることが好ましい。蓄電素子の一部が、再充電不可能な一次電池であってもよい。
【0069】
図2は遠隔監視システム100の構成の一例を示すブロック図である。遠隔監視システム100は、通信デバイス1、サーバ装置2、クライアント装置3などを備える。
【0070】
図2に示すように、通信デバイス1は、ネットワークNに接続されるとともに、対象装置P、U、D、Mにも接続されている。対象装置P、U、D、Mは、パワーコンディショナP、無停電電源装置U、整流器D、後述する管理装置Mを含む。
【0071】
遠隔監視システム100では、各対象装置P、U、D、Mに接続した通信デバイス1を用いて、蓄電システム101における蓄電モジュール(蓄電セル)の状態(例えば、電圧、電流、温度、SOC(充電状態)を監視するとともに収集する。遠隔監視システム100は、検知された蓄電セルの状態(劣化状態などを含む)をユーザ又はオペレータ(保守担当者)が確認できるように提示する。
【0072】
通信デバイス1は、制御部10、記憶部11、第1通信部12及び第2通信部13を備える。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)などで構成され、内蔵するROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを用い、通信デバイス1全体を制御する。
【0073】
記憶部11は、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いることができる。記憶部11には、制御部10が読み出して実行するデバイスプログラム1Pが記憶されている。記憶部11には、制御部10の処理によって収集された情報、イベントログ等の情報が記憶される。
【0074】
第1通信部12は、対象装置P、U、D、Mとの通信を実現する通信インタフェースであり、例えば、RS−232C又はRS−485等のシリアル通信インタフェースを用いることができる。
【0075】
第2通信部13は、ネットワークNを経由して通信を実現するインタフェースであり、例えば、Ethernet(登録商標)、又は無線通信用アンテナ等の通信インタフェースを用いる。制御部10は、第2通信部13を介してサーバ装置2と通信が可能である。
【0076】
クライアント装置3は、発電システムS、Fの蓄電システム101の管理者、対象装置P、U、D、Mの保守担当者等のオペレータが使用するコンピュータであってもよい。クライアント装置3は、デスクトップ型又はラップトップ型のパーソナルコンピュータであってもよいし、スマートフォン又はタブレット型の通信端末であってもよい。クライアント装置3は、制御部30、記憶部31、通信部32、表示部33、及び操作部34を備える。
【0077】
制御部30は、CPUを用いたプロセッサである。制御部30は、記憶部31に記憶されているWebブラウザプログラムに基づき、サーバ装置2又は通信デバイス1により提供されるWebページを表示部33に表示させる。
【0078】
記憶部31は、例えばハードディスク又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いる。記憶部31には、Webブラウザプログラムを含む各種プログラムが記憶されている。
【0079】
通信部32は、有線通信用のネットワークカード等の通信デバイス、基地局BS(
図1参照)に接続する移動通信用の無線通信デバイス、又はアクセスポイントAPへの接続に対応する無線通信デバイスを用いることができる。制御部30は、通信部32により、ネットワークNを介してサーバ装置2又は通信デバイス1との間で通信接続又は情報の送受信が可能である。
【0080】
表示部33は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイを用いることができる。表示部33は、制御部30のWebブラウザプログラムに基づく処理により、サーバ装置2で提供されるWebページのイメージを表示することができる。
【0081】
操作部34は、制御部30との間で入出力が可能なキーボード及びポインティングデバイス、若しくは音声入力部等のユーザインタフェースである。操作部34は、表示部33のタッチパネル、又は筐体に設けられた物理ボタンを用いてもよい。操作部34は、ユーザによる操作情報を制御部20へ通知する。
【0082】
サーバ装置2の構成については後述する。
【0083】
図3は通信デバイス1の接続形態の一例を示す図である。
図3に示すように、通信デバイス1は、管理装置Mに接続される。管理装置Mには、さらに、バンク#1〜#Nそれぞれに設けられた管理装置Mが接続されている。なお、通信デバイス1は、バンク#1〜#Nそれぞれに設けられた管理装置Mと通信して蓄電素子の情報を受信する端末装置(計測モニタ)であってもよいし、電源関連装置に接続可能なネットワークカード型の通信デバイスであってもよい。
【0084】
各バンク#1〜#Nは、複数の蓄電モジュール60を備え、各蓄電モジュール60は、制御基板(CMU:Cell Monitoring Unit)70を備える。バンク毎に設けられている管理装置Mは、蓄電モジュール60に夫々内蔵されている通信機能付きの制御基板70とシリアル通信によって通信を行うことができるとともに、通信デバイス1に接続された管理装置Mとの間で情報の送受信を行うことができる。通信デバイス1に接続された管理装置Mは、ドメインに所属するバンクの管理装置Mからの情報を集約し、通信デバイス1へ出力する。
【0085】
図4はサーバ装置2の構成の一例を示すブロック図である。サーバ装置2は、制御部20、通信部21、記憶部22、及び処理部23を備える。処理部23は、予測データ生成部24、学習データ生成部25、学習モデル26、学習処理部27、及び入力データ生成部28を備える。サーバ装置2は、1台のサーバコンピュータでもよいが、これに限定されるものではなく、複数台のサーバコンピュータで構成してもよい。
【0086】
制御部20は、例えば、CPUで構成することができ、内蔵するROM及びRAM等のメモリを用い、サーバ装置2全体を制御する。制御部20は、記憶部22に記憶されているサーバプログラム2Pに基づく情報処理を実行する。サーバプログラム2PにはWebサーバプログラムが含まれ、制御部20は、クライアント装置3へのWebページの提供、Webサービスへのログインの受け付け等を実行するWebサーバとして機能する。制御部20は、サーバプログラム2Pに基づき、SNMP(Simple Network Management Protocol)用サーバとして通信デバイス1から情報を収集することも可能である。
【0087】
通信部21は、ネットワークNを介した通信接続及びデータの送受信を実現する通信デバイスである。具体的には、通信部21は、ネットワークNに対応したネットワークカードである。
【0088】
記憶部22は、例えばハードディスク又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いることができる。記憶部22には、制御部20の処理によって収集される監視対象となる対象装置P、U、D、Mの状態を含むセンサ情報(例えば、蓄電素子の実測電圧データ、実測電流データ、実測温度データ、実測圧力データ)を記憶する。
【0089】
処理部23は、記憶部22のデータベースに収集された蓄電素子(蓄電モジュール、蓄電セル)のセンサ情報(時系列の実測電圧データ、時系列の実測電流データ、時系列の実測温度データ、時系列の実測圧力データ)を、蓄電素子毎に区分して取得することができる。
【0090】
処理部23は、学習モデル26を学習させる学習モードと、学習済の学習モデル26を用いて蓄電素子の劣化、及び蓄電素子が設置される環境の異常(環境異常)の有無を判定する判定モードで動作する。
【0091】
図5は学習モデル26の構成の一例を示す模式図である。学習モデル26は、深層学習(ディープラーニング)を含むニューラルネットワークモデルであり、入力層、出力層及び複数の中間層から構成されている。なお、
図5では、便宜上、2つ中間層を図示しているが、中間層の層数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0092】
入力層、出力層及び中間層には、1つ又は複数のノード(ニューロン)が存在し、各層のノードは、前後の層に存在するノードと一方向に所望の重みで結合されている。入力層のノードの数と同数の成分を有するベクトルが、学習モデル26の入力データ(学習用の入力データ及び判定用の入力データ)として与えられる。入力データには、蓄電素子情報(SOC、満充電容量、SOC−OCV(開回路電圧:open circuit voltage)曲線、内部抵抗など)、実測値時系列データ(電圧、電流、温度、圧力など)、予測値時系列データ(電圧、電流、温度、圧力など)等が含まれる。出力データには、蓄電素子の劣化の判定、環境異常の有無が含まれる。これらの情報の詳細は後述する。
【0093】
入力層の各ノードに与えられたデータは、最初の中間層に入力して与えられると、重みおよび活性化関数を用いて中間層の出力が算出され、算出された値が次の中間層に与えられ、以下同様にして出力層の出力が求められるまで次々と後の層(下層)に伝達される。なお、ノードを結合する重みのすべては、学習アルゴリズムによって計算される。
【0094】
出力データは、出力層のノードの数(出力層のサイズ)と同じサイズの成分を有するベクトル形式のデータとすることができる。例えば、
図5に示すように、出力層のノード数を4とし、出力ノードは、それぞれ蓄電素子が劣化状態である確率、蓄電素子が正常である確率、環境が異常である確率、及び環境が正常である確率などとすることができる。
【0095】
学習モデル26及び学習処理部27は、例えば、CPU(例えば、複数のプロセッサコアを実装したマルチ・プロセッサなど)、GPU(Graphics Processing Units)、DSP(Digital Signal Processors)、FPGA(Field-Programmable Gate Arrays)などのハードウェアを組み合わせることによって構成することができる。また、量子プロセッサを組み合わせることもできる。学習モデル26は、ニューラルネットワークモデルに限定されるものではなく、他の機械学習モデルでもよい。
【0096】
図6は蓄電モジュール内の蓄電セルの温度分布の一例を示す模式図である。
図6では、便宜上、温度分布を、高(かなり高い)、中(やや高い)、低(通常)の三つに分類しているが、実際の温度分布は、さらに細かく(例えば、1℃単位で)表すことができる。蓄電モジュール内の各蓄電セルの配置、蓄電モージュル(蓄電セル)に流れる電流値、蓄電モジュールの設置条件、蓄電モジュールの雰囲気温度などの環境の様々な要因に基づいて、温度分布を事前に想定(予測)することができる。
図6の例では、外側よりも中央付近に配置された蓄電セルの温度が高い傾向にあり、また、蓄電モジュールの下側よりも上側の方が、温度が高い傾向にあることが分かる。このように、蓄電セル間の温度差は、環境の様々な要因が集約されて現れるといえる。
【0097】
図7は環境差による蓄電素子の挙動の相違の一例を示す模式図である。
図7において、縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示す。電圧は、例えば、蓄電素子を充電している場合の推移であるが、放電時も同様である。環境差は、
図7の例では、温度差である。図中、符号Bで示す曲線は、正常な蓄電素子の電圧の推移を示す。仮に温度差を考慮せずに、符号Aで示す曲線の蓄電素子の電圧の推移を見た場合、符号Bで示す正常な蓄電素子の電圧の推移に比べて、電圧が高いので、例えば、蓄電素子の内部抵抗が増加しており、容量が低下していると判断することができ、符号Aで示す曲線の蓄電素子は劣化していると判断する可能性がある。しかし、実際には、符号Aで示す曲線の蓄電素子の電圧の推移は、符号Bで示す正常な蓄電素子の温度(高:普通)よりもかなり低い温度での推移を表し、環境差(温度差)を考慮すれば、符号Aで示す曲線の蓄電素子は正常の範囲内であるということができる。一方、符号Cで示す曲線は、想定よりも劣化している蓄電素子の電圧の推移を表している。このように、環境差を考慮しないと、正常な蓄電素子を劣化していると判断する可能性がある。別言すれば、環境差を考慮することにより、正常な蓄電素子を劣化していると誤判定することを防止することが可能となる。
【0098】
図8は環境差による蓄電素子の挙動の相違の他の例を示す模式図である。
図8において、縦軸は満充電容量(FCC)を示し、横軸は時間を示す。環境差は、
図8の例では、温度差である。満充電容量は、蓄電素子を満充電したときの容量である。図中、符号Aで示す曲線は、正常な蓄電素子の満充電容量の推移を示す。仮に温度差を考慮せずに、符号Bで示す曲線の蓄電素子の満充電容量の推移を見た場合、符号Aで示す正常な蓄電素子の満充電容量の推移に比べて、満充電容量が低いので、例えば、蓄電素子の劣化が進行していると判断することができ、符号Bで示す曲線の蓄電素子は劣化していると判断する可能性がある。しかし、実際には、符号Bで示す曲線の蓄電素子の満充電容量の推移は、符号Aで示す正常な蓄電素子の温度(低:普通)よりもかなり高い温度での推移を表し、環境差(温度差)を考慮すれば、符号Bで示す曲線の蓄電素子は正常の範囲内であるということができる。一方、符号Cで示す曲線は、想定よりも劣化している蓄電素子の満充電容量の推移を表している。このように、環境差を考慮しないと、正常な蓄電素子を劣化していると判断する可能性がある。別言すれば、環境差を考慮することにより、正常な蓄電素子を劣化していると誤判定することを防止することが可能となる。
【0099】
図9は蓄電素子の電圧の時系列データの一例を示す模式図である。
図9において、縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示す。電圧は、例えば、蓄電素子を充放電している場合の推移である。図中、実測電圧データは、電圧センサから取得した電圧値を示す。予測電圧データは、蓄電素子の想定される環境差を考慮して事前に想定した電圧値を示す。実測電圧値と予測電圧値との差又は比が、所定の電圧閾値以内であれば、蓄電素子は、環境差を考慮した想定内の状態にあり正常であると判定することができる。しかし、実測電圧値と予測電圧値との差又は比が、所定の電圧閾値より大きくなった場合、蓄電素子は、想定内の状態から逸脱し、劣化していると判定することができる(図中、矢印で示す箇所)。なお、この例は想定よりも劣化している蓄電素子の場合であり、正常な場合は差又は比が誤差範囲内となる。なお、正常であっても温度差により所定範囲内のズレが生じる。
【0100】
すなわち、実測電圧値と予測電圧値との差又は比の時系列データと、蓄電素子の劣化の判定に関するデータによって、学習モデル26を学習させることができる。
【0101】
図10は蓄電素子の温度の時系列データの一例を示す模式図である。
図10において、縦軸は温度を示し、横軸は時間を示す。温度は、例えば、蓄電素子を充放電している場合の推移である。図中、実測温度データは、温度センサから取得した温度値を示す。予測温度データは、蓄電素子の想定される環境差を考慮して事前に想定した温度値を示す。実測温度値と予測温度値との差又は比が、所定の温度閾値以内であれば、蓄電素子は、環境差を考慮した想定内の状態にあり正常であると判定することができる。実測温度値と予測温度値との差又は比が、所定の温度閾値より大きくなった場合、蓄電素子は、想定内の状態から逸脱し、劣化していると判定することができる(図中、矢印で示す箇所)。
【0102】
すなわち、実測温度値と予測温度値との差又は比の時系列データと、蓄電素子の劣化の判定に関するデータによって、学習モデル26を学習させることができる。
【0103】
上述の例では、電圧値と温度値について説明したが、これに限定されない。例えば、実測電流値と予測電流値との差又は比の時系列データと蓄電素子の劣化の判定に関するデータによって、学習モデル26を学習させることができる。また、例えば、
図6に示すように複数の蓄電セルがスタックされた蓄電モジュールにおける、セル間の圧力値の実測圧力値と予測圧力値との差又は比の時系列データと蓄電素子の劣化の判定に関するデータによって、学習モデル26を学習させることができる。
【0104】
図11は蓄電セルそれぞれの電圧と平均電圧の時系列データの一例を示す模式図である。
図11において、縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示す。電圧は、例えば、蓄電素子を充放電している場合の推移である。便宜上、蓄電セルをC1、C2、及びC3とする。図中、蓄電セルC1、C2、及びC3の電圧値と、蓄電セルC1、C2、及びC3の各電圧値の平均値を示す。蓄電セル間の環境差を考慮すれば、蓄電セルC1、C2、及びC3の各電圧値は、一定のばらつき(正常である場合の許容範囲内のばらつき)が存在する。すなわち、蓄電セルC1、C2、及びC3の各電圧値と平均値との差又は比が、所定の電圧閾値以内であれば、蓄電セルは、環境差を考慮した想定内の状態にあり正常であると判定することができる。しかし、蓄電セルC1、C2、及びC3の各電圧値と平均値との差又は比が、所定の電圧閾値より大きくなった場合、蓄電セルは、想定内の状態から逸脱し、劣化していると判定することができる(図中、矢印で示す箇所)。
【0105】
すなわち、複数の蓄電セルの各電圧値と平均値との差又は比の時系列データと、蓄電素子の劣化の判定に関するデータによって、学習モデル26を学習させることができる。なお、時系列データは、実測値の時系列データでもよく、予測値の時系列データでもよい。また、時系列データは、電圧値に限定されるものではなく、電流値、あるいは圧力値であってもよい。
【0106】
図12は蓄電セルそれぞれの温度と平均温度の時系列データの一例を示す模式図である。
図12において、縦軸は温度を示し、横軸は時間を示す。温度は、例えば、蓄電素子を充放電している場合の推移である。便宜上、蓄電セルをC1、C2、及びC3とする。図中、蓄電セルC1、C2、及びC3の温度と、蓄電セルC1、C2、及びC3の各温度の平均値を示す。蓄電セル間の環境差を考慮すれば、蓄電セルC1、C2、及びC3の各温度は、一定のばらつき(正常である場合の許容範囲内のばらつき)が存在する。すなわち、蓄電セルC1、C2、及びC3の各温度と平均値との差又は比が、所定の温度閾値以内であれば、蓄電セルは、環境差を考慮した想定内の状態にあり正常であると判定することができる。しかし、蓄電セルC1、C2、及びC3の各温度と平均値との差又は比が、所定の温度閾値より大きくなった場合、蓄電セルは、想定内の状態から逸脱し、劣化していると判定することができる(図中、矢印で示す箇所)。
【0107】
すなわち、複数の蓄電セルの各温度と平均値との差又は比の時系列データと、蓄電素子の劣化の判定に関するデータによって、学習モデル26を学習させることができる。なお、時系列データは、実測値の時系列データでもよく、予測値の時系列データでもよい。
【0108】
以下では、まず学習モデル26の学習モードについて説明する。
【0109】
処理部23は、蓄電素子の実測電気値及び実測温度値を含む実測時系列データを取得する。電気値は、電圧及び電流を含む。実測電気値は、例えば、電圧センサから取得した電圧値、電流センサから取得した電流値を含む。実測温度値は、温度センサから取得した温度である。
【0110】
予測データ生成部24は、当該蓄電素子の予測電気値及び予測温度値を含む予測時系列データを生成する。予測電気値及び予測温度値は、実際にセンサから取得した値ではなく、蓄電素子の設置条件や周囲温度などの環境状態に応じて、事前に想定される値であり、算出された値又は推定された値を意味する。
【0111】
処理部23は、予測データ生成部24が生成した、当該蓄電素子の予測電気値及び予測温度値を含む予測時系列データを取得することができる。
【0112】
学習データ生成部25は、実測時系列データ及び予測時系列データを入力データとし、蓄電素子の劣化の判定を出力データとする学習データを生成する。
【0113】
学習処理部27は、生成した学習データに基づいて学習モデル26を学習させる。
【0114】
なお、上述の学習データ生成部25は、サーバ装置2内に具備する必要はなく、他のサーバ装置に具備するようにし、当該サーバ装置で生成された学習データを取得し、学習処理部27が、取得した学習データに基づいて学習モデル26を学習させるでもよい。本明細書の以下の説明においても同様である。
【0115】
学習モデル26は、蓄電素子の実測電気値及び実測温度値を含む実測時系列データだけでなく、当該蓄電素子の予測電気値及び予測温度値を含む予測時系列データも学習することができる。すなわち、蓄電素子の実測電気値及び実測温度値がどのように推移し、かつ当該蓄電素子の予測電気値及び予測温度値がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。予測時系列データは、蓄電素子の設置条件や周囲温度などの環境状態により想定されるデータであるから、学習モデル26は、環境差による蓄電素子の充放電挙動を学習することができる。
【0116】
これにより、蓄電素子の設置条件や周囲温度などの環境差がある場合でも蓄電素子の劣化を精度良く判定することができる学習済み学習モデル26を生成することができる。
【0117】
図13は学習データの第1例を示す構成図である。
図13に示すデータは、学習用の入力データを示す。
図13に示すように、入力データは、実測値データと、予測値データとを含む。実測値データ及び予測値データは、蓄電素子の電圧、電流、温度、圧力の時系列データ(時間t1、t2、t3、…tN)である。例えば、実測電圧値の時系列データは、Va(t1)、Va(t2)、Va(t3)、…、Va(tN)で表し、予測電圧値の時系列データは、Ve(t1)、Ve(t2)、Ve(t3)、…、Ve(tN)で表している。他のデータも同様である。
【0118】
また、学習データ生成部25は、実測電気値と予測電気値との差又は比、及び実測温度値と予測温度値との差又は比それぞれの時系列データを入力データとする学習データを生成してもよい。
【0119】
学習モデル26は、実測電気値と予測電気値との差又は比がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。また、学習モデル26は、実測温度値と予測温度値との差又は比がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。これにより、学習モデル26は、環境差による蓄電素子の充放電挙動を学習することができる。
【0120】
具体的には、学習データ生成部25は、実測電圧値を含む実測時系列データ及び予測電圧値を含む予測時系列データを入力データとする学習データを生成することができる。
【0121】
この場合、学習モデル26は、実測電圧値及び予測電圧値がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。これにより、学習モデル26は、想定される電圧差に応じて、蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。
【0122】
また、学習データ生成部25は、実測電流値を含む実測時系列データ及び予測電流値を含む予測時系列データを入力データとする学習データを生成することができる。
【0123】
この場合、学習モデル26は、実測電流値及び予測電流値がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。これにより、学習モデル26は、想定される電流差に応じて、蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。
【0124】
また、学習データ生成部25は、実測圧力値と予測圧力値との差又は比を含む時系列データを入力データとする学習データを生成することができる。
【0125】
この場合、学習モデル26は、実測圧力値及び予測圧力値がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。これにより、学習モデル26は、想定される圧力差に応じて、蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。
【0126】
図14は学習データの第2例を示す構成図である。
図14に示すデータは、学習用の入力データを示す。
図14に示すように、入力データは、実測値と予測値との差の時系列データとすることができる。具体的には、電圧差、電流差、温度差、圧力差の時系列データ(時間t1、t2、t3、…tN)である。例えば、電圧差の時系列データは、{Va(t1)−Ve(t1)}、{Va(t2)−Ve(t2)}、{Va(t3)−Ve(t3)}、…、{Va(tN)−Ve(tN)}で表している。他のデータも同様である。
【0127】
図15は学習データの第3例を示す構成図である。
図15に示すデータは、学習用の入力データを示す。
図15に示すように、入力データは、実測値と予測値との比の時系列データとすることができる。具体的には、電圧比、電流比、温度比、圧力比の時系列データ(時間t1、t2、t3、…tN)である。例えば、電圧比の時系列データは、{Va(t1)/Ve(t1)}、{Va(t2)/Ve(t2)}、{Va(t3)/Ve(t3)}、…、{Va(tN)/Ve(tN)}で表している。他のデータも同様である。
【0128】
学習データ生成部25は、蓄電素子に係る環境異常の有無を出力データとする学習データを生成することができる。学習モデル26に、環境異常の有無を学習させることにより、例えば、蓄電素子の劣化だけでなく、環境異常もあることを学習させることができ、蓄電素子の劣化と環境異常とを区別して判定することが可能となる。
【0129】
図16は学習モードでの学習モデル26の処理の一例を示す模式図である。
図16に示すように、学習モデル26には、時間t1、t2、t3、…、tNの時系列データが入力される。入力される時系列データは、例えば、
図13〜
図15で例示したようなデータである。学習モデル26の出力ノードには、入力データが、蓄電素子が正常の場合、劣化している場合、環境正常の場合、あるいは環境異常の場合のいずれの場合のデータであるかに応じて、出力値(例えば、1と0のいずれか)を設定することができる。例えば、学習用の入力データが、蓄電素子が劣化している場合のデータであれば、「蓄電素子の劣化あり」の出力ノードに1を設定し、他の出力ノードに0を設定すればよい。また、学習用の入力データが、環境異常である場合のデータであれば、「環境異常あり」の出力ノードに1を設定し、他の出力ノードに0を設定すればよい。なお、学習モードにおける出力データは、蓄電素子が正常の場合、劣化している場合、環境正常の場合、あるいは環境異常の場合それぞれの確率でもよい。この場合、出力ノードの出力値が、確率に近づくように学習モデル26を学習させることができる。
【0130】
次に、蓄電セル間のばらつきを考慮した学習データについて説明する。
【0131】
学習データ生成部25は、蓄電モジュールを構成する複数の蓄電セルそれぞれの実測電気値と複数の蓄電セルの実測電気値の平均値との差又は比を含む実測時系列データを入力データとする学習データを生成することができる。電気値は、例えば、電圧値、電流値とすることができる。
【0132】
これにより、学習モデル26は、複数の蓄電セルそれぞれの実測電気値を平均した平均値と、複数の蓄電セルそれぞれの実測電気値との差又は比がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。これにより、学習モデル26は、蓄電セル間の実測電気値に応じて、蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。
【0133】
また、学習データ生成部25は、蓄電モジュールを構成する複数の蓄電セルそれぞれの予測電気値と複数の蓄電セルの予測電気値の平均値との差又は比を含む予測時系列データを入力データとする学習データを生成することができる。
【0134】
これにより、学習モデル26は、複数の蓄電セルそれぞれの予測電気値を平均した平均値と、複数の蓄電セルそれぞれの予測電気値との差又は比がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。これにより、学習モデル26は、蓄電セル間の事前の環境差に応じて、蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。
【0135】
学習データ生成部25は、蓄電モジュールを構成する複数の蓄電セルそれぞれの予測温度値と複数の蓄電セルの予測温度値の平均値との差又は比を含む予測時系列データを入力データとする学習データを生成することができる。複数の蓄電セルそれぞれの予測温度値は、蓄電セルに流れる予測電流値、蓄電モジュール内の蓄電セルの配置状況、蓄電モジュールの予測温度値などに基づいて求めることができる。
【0136】
これにより、学習モデル26は、複数の蓄電セルそれぞれの予測温度値を平均した平均値と、複数の蓄電セルそれぞれの予測温度値との差又は比がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。これにより、学習モデル26は、蓄電セル間の事前の環境差に応じて、蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習することができる。
【0137】
次に、学習済みの学習モデル26による判定モードについて説明する。
【0138】
入力データ生成部28は、実測時系列データ及び予測時系列データを含む入力データを生成する。
【0139】
図17は判定モードでの学習モデル26の処理の一例を示す模式図である。
図17に示すように、学習済みの学習モデル26には、時間t1、t2、t3、…、tNの時系列データが入力される。入力される時系列データは、例えば、
図13〜
図15で例示したようなデータと同様の構成を有する。学習済みの学習モデル26は、入力された時系列データに基づいて、蓄電素子の劣化、環境異常の有無を判定する。なお、環境異常の有無の判定は、必須ではなく、蓄電素子の劣化だけを判定するようにしてもよい。
【0140】
学習済みの学習モデル26の出力ノードには、蓄電素子の劣化の確率、蓄電素子の正常の確率、環境異常の確率、環境正常の確率が出力される。
【0141】
このように、学習済みの学習モデル26は、実測時系列データ及び予測時系列データを入力データとし、蓄電素子の劣化の判定を出力することができる。学習済みの学習モデルは26、蓄電素子の実測電気値及び実測温度値がどのように推移し、かつ当該蓄電素子の予測電気値及び予測温度値がどのように推移したときに、当該蓄電素子が正常であるのか劣化しているのかを学習済みである。予測時系列データは、蓄電素子の設置条件や周囲温度などの環境状態により想定されるデータであるから、学習済みの学習モデル26は、環境差による蓄電素子の充放電挙動を学習済みである。
【0142】
これにより、蓄電素子の設置条件や周囲温度などの環境差がある場合でも蓄電素子の劣化を精度良く判定することができる。
【0143】
図18は学習モードでの処理部23の処理手順の一例を示すフローチャートである。処理部23は、蓄電素子の実測時系列データを取得し(S11)、当該蓄電素子の予測時系列データを取得する(S12)。
【0144】
処理部23は、実測時系列データ及び予測時系列データを入力データとし、蓄電素子の劣化の判定を出力データとする学習データを生成する(S13)。処理部23は、生成した学習データに基づいて、学習モデル26の学習及び更新を行い(S14)、処理を終了するか否かを判定する(S15)。処理を終了しないと判定した場合(S15でNO)、処理部23は、ステップS11以降の処理を続け、処理を終了すると判定した場合(S15でYES)、処理を終了する。
【0145】
図19は判定モードでの処理部23の処理手順の一例を示すフローチャートである。処理部23は、蓄電素子の実測時系列データを取得し(S21)、当該蓄電素子の予測時系列データを取得する(S22)。
【0146】
処理部23は、実測時系列データ及び予測時系列データに基づいて入力データを生成し(S23)、蓄電素子の劣化を判定し(S24)、処理を終了する。
【0147】
上述のように、本実施の形態のサーバ装置2によれば、移動体や施設において稼働している蓄電素子で検出されたセンサ情報に基づいて、実際の使用状態における蓄電素子の詳細な挙動と、想定される環境差による影響も併せて学習モデル26に学習させることができるので、蓄電素子の劣化を精度良く判定することができない。また、例えば、蓄電素子が正常であるにも関わらず、あたかも劣化しているように見えてしまうような環境異常の有無も判定することが可能となる。
【0148】
上述の実施の形態では、サーバ装置2が、学習モデル26及び学習処理部27を備える構成であったが、これに限定されない。例えば、学習モデル26及び学習処理部27を別の1又は複数のサーバに設けるようにしてもよい。劣化判定装置は、サーバ装置2に限定されない。例えば、劣化判定シミュレータのような装置であってもよい。
【0149】
(第2実施形態)
上述の第1実施形態では、蓄電素子が本当に劣化していると判定されることと、蓄電素子は正常であるにも関わらず環境差によって誤って劣化しているように判定されることを峻別して、蓄電素子の想定よりも早期の劣化の有無を判定する構成であったが、同様の観点から蓄電システムの異常要因を判定することもできる。以下、第2実施形態について説明する。
【0150】
図20は第2実施形態の異常要因判定装置としてのサーバ装置2の構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すサーバ装置2との相違点は、処理部23が、第1算出部231、第2算出部232、異常要因判定部233及び運用支援情報提供部234を備える点である。同様の箇所は同一符号を付して説明を省略する。
【0151】
処理部23は、実測値取得部としての機能を有し、複数の蓄電素子の電流、電圧及び温度の実測値を取得する。実測値は、蓄電システムに含まれる複数の蓄電素子のセンサ(電流センサ、電圧センサ、温度センサ)から取得することができる。実測値の取得頻度は、蓄電システムの運用状態などに応じて適宜決定することができる。例えば、負荷変動が比較的大きい運用状態では、実測値の取得頻度を多くする(例えば、1時間ごとに5分間実測する)ことができる。また、負荷変動が比較的小さい運用状態では、実測値の取得頻度を少なくする(例えば、6時間ごとに5分間実測する)ことができる。
【0152】
処理部23は、予測値取得部としての機能を有し、複数の蓄電素子の電圧及び温度の予測値を取得する。予測値は、実際にセンサから取得した値ではなく、複数の蓄電素子の設置条件や周囲温度などの環境状態に応じて、事前に想定される値であり、算出された値又は推定された値を意味する。予測値は、予め、サーバ装置2で生成してもよく、外部の装置で生成してもよい。
【0153】
第1算出部231は、処理部23が取得した実測値に基づいて所要の蓄電素子間の実測電圧差及び実測温度差を算出する。
【0154】
第2算出部232は、処理部23が取得した実測値及び予測値に基づいて所要の蓄電素子のうちの一の蓄電素子の電圧及び温度についての実測値と予測値との差を算出する。
【0155】
図21は実測値と予測値との関係の一例を示す説明図である。
図21において、蓄電システムを構成する複数の蓄電素子が直列に接続されている状態を示す。
図6に示すように、蓄電セルが複数直列に接続されて1つの蓄電モジュールを構成する。そして、蓄電モジュールが複数直列に接続されたバンクを構成する。
図21に示す蓄電セルは、例えば、バンクを構成する複数の蓄電セルのうちの所要の2つの蓄電セルi、jを図示している。なお、蓄電セルi、jは、
図6に示すような配置状態に応じて、複数の蓄電セルのうち任意の蓄電セルを選定できる。
【0156】
蓄電セルi、jに流れる電流を実測セル電流Ieと表す。蓄電セルiの実測セル電圧をVeiと表し、蓄電セルjの実測セル電圧をVejと表し、蓄電セルi、j間の実測セル間電圧差をΔV(ΔV=Vei−Vej)で表す。
【0157】
蓄電セルiの予測セル電圧をVciと表し、蓄電セルiの実測と予測の電圧差をΔVeci(ΔVeci=Vei−Vci)で表す。蓄電セルjの予測セル電圧をVcjと表し、蓄電セルjの実測と予測の電圧差をΔVecj(ΔVecj=Vej−Vcj)で表す。
【0158】
蓄電セルiの実測セル温度をTeiと表し、蓄電セルjの実測セル温度をTejと表し、蓄電セルi,j間の実測セル間温度差をΔT(ΔT=Tei−Tej)で表す。
【0159】
蓄電セルiの予測セル温度をTciと表し、蓄電セルiの実測と予測の温度差をΔTeci(ΔTeci=Tei−Tci)で表す。蓄電セルjの予測セル温度をTcjと表し、蓄電セルjの実測と予測の温度差をΔTecj(ΔTecj=Tej−Tcj)で表す。
【0160】
異常要因判定部233は、判定部としての機能を有し、処理部23で取得した実測値及び予測値に基づいて蓄電システムに関する異常要因の有無を判定する。複数の蓄電素子に流れる電流の実測値(実測電流値ともいう)により、重負荷であるか軽負荷であるか、あるいは負荷変動の大小を判定できる。また、前述のように、複数の蓄電素子それぞれの電圧の実測値に基づいて、所要の蓄電素子間の電圧差を求めることができる。また、複数の蓄電素子それぞれの温度の実測値に基づいて、所要の蓄電素子間の温度差を求めることができる。異常要因判定部233は、これらの電圧差及び温度差の実測値、及び実測値と予測値との差などを考慮することにより、異常要因の有無、異常要因の種別、例えば、蓄電素子の異常(想定よりも早期の劣化など)、蓄電素子の環境の異常、あるいは想定内の状態(異常ではない)を峻別して判定することができる。
【0161】
次に、異常要因判定の具体例について説明する。
【0162】
図22は蓄電システムの使用状態での実測値と予測値の推移の第1例を示す模式図である。
図22では、充放電電流、蓄電システムを構成する複数の蓄電セルのうちの所要の蓄電セル間の電圧差、当該蓄電セル間の温度差の時間的推移を表している。なお、
図22に例示する推移は、模式的に示すものであり、実際の推移と異なる場合がある。また、図示している推移期間の長さは、例えば、数時間でもよく、12時間、24時間、数日間などであってもよい。
【0163】
図22に示すように、充電電流及び放電電流は比較的小さな振幅で変動し、実測セル電流Ieは小さい。また、実測セル間電圧差ΔV、及び実測と予測の電圧差ΔVecそれぞれは、小さい値で推移している。
【0164】
温度差については、推移期間の前半において、実測セル間温度差ΔTは大きな値で推移し、実測と予測の温度差ΔTecは小さい値で推移している。時点taにおいて、異常要因を判定すると、蓄電セルに流れる電流は小さく、蓄電セルには重負荷が掛かっていないことが分かる。従って、蓄電セル固有の影響は少ないと考えられる。蓄電セル間の実測の温度差は大きいが、予測値(計算値)との差が小さいので、温度差(例えば、配置や設置条件の違いによる環境差)は想定の範囲内であると判定することができ、蓄電システムは異常ではないと判定できる。
【0165】
図22に示すように、推移期間の後半において、蓄電システムの状態が変わり、実測セル間温度差ΔTは大きい値で推移し、実測と予測の温度差ΔTecも大きい値で推移している。時点tbにおいて、異常要因を判定すると、蓄電セルに流れる電流は小さく、蓄電セルには重負荷が掛かっていないことが分かる。従って、蓄電セル固有の影響は少ないと考えられる。蓄電セル間の実測の温度差は大きく、予測値(計算値)との差も大きいので、蓄電セルの環境が想定の範囲を超えている可能性が高く、環境の異常であると判定することができる。
【0166】
図23は蓄電システムの使用状態での実測値と予測値の推移の第2例を示す模式図である。
図23も、充放電電流、蓄電システムを構成する複数の蓄電セルのうちの所要の蓄電セル間の電圧差、当該蓄電セル間の温度差の時間的推移を表している。なお、
図23に例示する推移は、模式的に示すものであり、実際の推移と異なる場合がある。また、図示している推移期間の長さは、例えば、数時間でもよく、12時間、24時間、数日間などであってもよい。
【0167】
図23に示すように、充電電流及び放電電流は比較的大きな振幅で変動し、実測セル電流Ieは大きい。また、推移期間の前半において、実測セル間温度差ΔTは大きい値で推移し、推移期間の後半において、小さい値で推移している。実測と予測の温度差ΔTecは、小さい値で推移している。
【0168】
電圧差については、推移期間の前半において、実測セル間電圧差ΔVは大きい値で推移し、実測と予測の電圧差ΔVecは小さな値で推移している。時点tcにおいて、異常要因を判定すると、蓄電セルに流れる電流は大きく、蓄電セルには重負荷が掛かっていることが分かる。従って、蓄電セル固有の影響の可能性があり得ると考えられる。蓄電セル間の実測の電圧差は大きいが、予測値(計算値)との差が小さいので、蓄電セル間の温度差による影響や蓄電セル間のSOCのずれなどの影響である可能性が高く、想定の範囲内であると判定することができ、蓄電システムは異常ではないと判定できる。
【0169】
図23に示すように、推移期間の後半において、蓄電システムの状態が変わり、実測セル間電圧差ΔVは大きい値で推移し、実測と予測の電圧差ΔVecも大きい値で推移している。時点tdにおいて、異常要因を判定すると、蓄電セルに流れる電流は大きく、蓄電セルには重負荷が掛かっている可能性があることが分かる。従って、蓄電セル固有の影響の可能性があり得ると考えられる。蓄電セル間の実測の電圧差は大きく、予測値(計算値)との差も大きいので、蓄電セルの異常であると判定することができる。
【0170】
上述のように、異常要因判定部233は、蓄電素子の異常であるか又は蓄電素子の環境の異常であるかを判定することができる。蓄電素子の異常は、例えば、蓄電素子が想定よりも早期に劣化していると判定される場合を含む。また、蓄電素子の異常と環境の異常とを区別して判定できるので、誤って蓄電素子の異常であると判定することを防止できる。
【0171】
より具体的には、異常要因判定部233は、処理部23で取得した電流の実測値、第1算出部231で算出した実測電圧差及び実測温度差、並びに第2算出部232で算出した実測値と予測値との差に基づいて異常要因を判定することができる。例えば、電流の実測値及び蓄電素子間の実測電圧差が大きく、実測値と予測値との差も大きい場合には、当該一の蓄電素子の異常であると判定できる。一方、電流の実測値及び蓄電素子間の実測電圧差は大きいが、実測値と予測値との差が小さい場合には、例えば、蓄電システム内の蓄電素子間の配置や設置条件の違い、蓄電素子間のSOCのずれ等に起因し、想定内の状態(異常ではない)であると判定できる。
【0172】
また、電流の実測値が小さく、蓄電素子間の実測温度差が大きく、実測値と予測値との差も大きい場合には、環境の異常であると判定できる。一方、電流の実測値が小さく、蓄電素子間の実測温度差が大きいが、実測値と予測値との差が小さい場合には、蓄電システム内の蓄電素子間の配置や設置条件の違い等に起因し、想定内の状態(異常ではない)であると判定できる。
【0173】
異常要因判定部233は、例えば、ルールベースモデルを用いた機械学習(機械学習によってルールを見つける)を含むように構成することができ、あるいはニューラルネットワークモデル(学習器)を含むように構成することができる。まず、ルールベースモデルについて説明する。
【0174】
図24は異常要因判定のルールベースモデルの一例を示す説明図である。
図24では、便宜上、NO.1からNO.4の4つのケースについて説明する。NO.1のケースでは、実測セル電流Ieが閾値未満であり、実測セル間電圧ΔVが閾値未満であり、実測セル間温度ΔTが閾値以上であり、実測と予測の電圧差ΔVecが閾値未満であり、実測と予測の温度差ΔTecが閾値未満である場合、異常要因の判定結果は、想定内(異常なし)とすることができる。この場合、蓄電システムの運用支援情報は、例えば、「現在の運用を継続する」とすることができる。
【0175】
NO.2のケースでは、実測セル電流Ieが閾値未満であり、実測セル間電圧ΔVが閾値未満であり、実測セル間温度ΔTが閾値以上であり、実測と予測の電圧差ΔVecが閾値以上であり、実測と予測の温度差ΔTecが閾値未満である場合、異常要因の判定結果は、環境の異常とすることができる。この場合、蓄電システムの運用支援情報は、例えば、「空調の調整」とすることができる。
【0176】
NO.3のケースでは、実測セル電流Ieが閾値以上であり、実測セル間電圧ΔVが閾値以上であり、実測セル間温度ΔTが閾値以上であり、実測と予測の電圧差ΔVecが閾値未満であり、実測と予測の温度差ΔTecが閾値未満である場合、異常要因の判定結果は、想定内(異常なし)とすることができる。この場合、蓄電システムの運用支援情報は、例えば、「現在の運用を継続する」とすることができる。
【0177】
NO.4のケースでは、実測セル電流Ieが閾値以上であり、実測セル間電圧ΔVが閾値以上であり、実測セル間温度ΔTが閾値未満であり、実測と予測の電圧差ΔVecが閾値未満であり、実測と予測の温度差ΔTecが閾値以上である場合、異常要因の判定結果は、蓄電素子の異常とすることができる。この場合、蓄電システムの運用支援情報は、例えば、「負荷の軽減」、「蓄電素子の交換」とすることができる。
【0178】
図24に示す各閾値は、例えば、機械学習によって決定することができる。
【0179】
運用支援情報提供部234は、提供部としての機能を有し、異常要因判定部233での判定結果に基づいて蓄電システムの運用支援情報を提供することができる。上述のように、例えば、蓄電素子の異常であると判定された場合、運用支援情報提供部234は、負荷の軽減、蓄電素子の交換などの情報を提供できる。また、環境の異常であると判定された場合、運用支援情報提供部234は、空調の調整など(例えば、温度を下げる等)の情報を提供でき、異常要因に応じて蓄電システムの最適な運用を支援する運用支援情報を提供することができる。
【0180】
次に、ニューラルネットワークモデルについて説明する。
【0181】
図25は学習モデル233aの構成の一例を示す模式図である。学習モデル233aは、深層学習(ディープラーニング)を含むニューラルネットワークモデルであり、入力層、出力層及び複数の中間層から構成されている。なお、
図25では、便宜上、2つ中間層を図示しているが、中間層の層数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0182】
入力層、出力層及び中間層には、1つ又は複数のノード(ニューロン)が存在し、各層のノードは、前後の層に存在するノードと一方向に所望の重みで結合されている。入力層のノードの数と同数の成分を有するベクトルが、学習モデル233aの入力データ(学習用の入力データ及び異常要因判定用の入力データ)として与えられる。入力データには、蓄電素子情報(SOC、満充電容量、SOC−OCV(開回路電圧:open circuit voltage)曲線、内部抵抗など)、実測セル電流、実測セル間電圧、実測と予測の電圧差、実測と予測の温度差等が含まれる。出力データには、異常要因(蓄電素子の異常、環境の異常、想定の範囲内であって異常なし等)が含まれる。
【0183】
出力データは、出力層のノードの数(出力層のサイズ)と同じサイズの成分を有するベクトル形式のデータとすることができる。例えば、出力ノードは、「蓄電素子の異常」、「環境の異常」、「蓄電素子の状態は想定内」、「環境の状態は想定内」それぞれの確率を出力することができる。
【0184】
学習モデル233aは、例えば、CPU(例えば、複数のプロセッサコアを実装したマルチ・プロセッサなど)、GPU(Graphics Processing Units)、DSP(Digital Signal Processors)、FPGA(Field-Programmable Gate Arrays)などのハードウェアを組み合わせることによって構成することができる。
【0185】
学習モデル233aは、複数の蓄電素子の電流の実測値、所要の蓄電素子間の実測電圧差及び実測温度差、並びに所要の蓄電素子のうちの一の蓄電素子の電圧及び温度についての実測値と予測値との差を入力データとし、異常要因を出力データとする学習データに基づいて学習されてある。
【0186】
学習モデル233aは、例えば、電流の実測値及び蓄電素子間の実測電圧差が大きく、実測値と予測値との差も大きい場合には、当該一の蓄電素子の異常を出力するように学習されてある。また、学習モデル233aは、電流の実測値及び蓄電素子間の実測電圧差が大きく、実測値と予測値との差が小さい場合には、想定内の状態(異常ではない)であることを出力するように学習されてある。
【0187】
学習モデル233aは、電流の実測値が小さく、蓄電素子間の実測温度差が大きく、実測値と予測値との差も大きい場合には、環境の異常を出力するように学習されてある。また、学習モデル233aは、電流の実測値が小さく、蓄電素子間の実測温度差が大きく、実測値と予測値との差が小さい場合には、想定内の状態(異常ではない)であることを出力するように学習されている。
【0188】
異常要因判定部233は、処理部23で取得した電流の実測値、第1算出部231で算出した実測電圧差及び実測温度差、並びに第2算出部232で算出した実測値と予測値との差を学習モデル233aに入力して、異常要因を判定することができる。これにより、異常要因(例えば、蓄電素子の異常(想定よりも早期の劣化など)、あるいは蓄電素子の環境の異常)を判定することができる。また、蓄電素子の異常と環境の異常とを区別して判定できるので、誤って蓄電素子の異常であると判定することを防止できる。
【0189】
図26は第2実施形態のサーバ装置2の処理手順の一例を示すフローチャートである。便宜上、処理の主体を処理部23として説明する。処理部23は、複数の蓄電素子の電流、電圧及び温度の実測値を取得し(S31)、複数の蓄電素子の電圧及び温度の予測値を取得する(S32)。
【0190】
処理部23は、実測セル間電圧及び実測セル間温度を算出し(S33)、電圧及び温度について実測値と予測値との差を算出する(S34)。処理部23は、異常要因を判定し(S35)、想定内であるか否かを判定する(S36)。
【0191】
想定内でない場合(S36でNO)、処理部23は、異常要因に応じた運用支援情報を出力し(S37)、後述のステップS38の処理を行う。想定内である場合(S36でYES)、処理部23は、現状の運用を維持し(S39)、処理を終了するか否かを判定する(S38)。処理を終了しない場合(S38でNO)、処理部23は、ステップS31以降の処理を繰り返し、処理を終了する場合(S38でYES)、処理を終了する。
【0192】
本実施の形態の制御部20及び処理部23は、CPU(プロセッサ)、GPU、RAM(メモリ)などを備えた汎用コンピュータを用いて実現することもできる。すなわち、
図18、
図19及び
図26に示すような、各処理の手順を定めたコンピュータプログラムをコンピュータに備えられたRAM(メモリ)にロードし、コンピュータプログラムをCPU(プロセッサ)で実行することにより、コンピュータ上で制御部20及び処理部23を実現することができる。コンピュータプログラムは記録媒体に記録され流通されてもよい。サーバ装置2で学習させた学習モデル26、それに基づくコンピュータプログラム及び学習用データが、ネットワークN及び通信デバイス1経由で遠隔監視の対象装置P、U、D、Mや端末装置(計測モニタ)、あるいは通信デバイス1又はクライアント装置3に配信されインストールされてもよい。この場合、対象装置P、U、D、M、端末装置(計測モニタ)、通信デバイス1又はクライアント装置3において、学習モデル26の学習、及び学習済みの学習モデル26による劣化判定を行うことができる。
【0193】
上述の実施の形態において、学習モデル26は、例えば、リカレントニューラルネットワーク(回帰型ニューラルネットワーク:RNN)でもよい。この場合、前の時間の中間層を次の時間の入力と合わせて学習するようにしてもよい。
【0194】
実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【課題】複数の蓄電素子を含む蓄電システムに関する異常要因を判定する異常要因判定装置、劣化判定装置、コンピュータプログラム、異常要因判定方法及び劣化判定方法を提供する。
【解決手段】異常要因判定装置は、複数の蓄電素子の電気値及び温度値を含む実測値を取得する実測値取得部と、複数の蓄電素子の電気値及び温度値を含む予測値を取得する予測値取得部と、取得した実測値及び予測値に基づいて蓄電システムに関する異常要因の有無を判定する判定部とを備える。