(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ゴムラテックス及び/又は樹脂エマルジョンと、最大繊維径が1,000nm未満であるセルロース繊維とを含有し、前記セルロース繊維が官能基を有してもよいセルロースを有する、タイヤパンクシール剤。
前記セルロース繊維の含有量が、前記ゴムラテックスの固形分の含有量1:100質量部、又は、前記樹脂エマルジョンの固形分の含有量2:100質量部に対して、0.01〜5.0質量部である、請求項1又は2に記載のタイヤパンクシール剤。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレートまたはメタクリレートを表し、(メタ)アクリロイルはアクリロイルまたはメタクリロイルを表し、(メタ)アクリルはアクリルまたはメタクリルを表す。
また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、シール性、保管性及び注入性のうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果により優れるということがある。
【0009】
本発明において、ゴムラテックスは、分散質としてのゴムと分散媒とを含み、ゴムは分散媒中に分散している。樹脂エマルジョンは、分散質としての樹脂と分散媒とを含み、樹脂は分散媒中に分散している。なお本発明においてエマルジョンはサスペンション(液相である分散媒に固相である分散質が分散した系)及び液相である分散媒に液相である分散質が分散した系を含む概念とする。
【0010】
ゴムラテックス又は樹脂エマルジョンに含有される分散媒は特に制限されない。例えば、水;水と水に可溶な有機溶媒との混合物が挙げられる。
【0011】
本発明において、ゴムラテックスの固形分はゴムを意味する。ゴムラテックスの固形分の含有量はゴムラテックスに含有されるゴムの含有量、又は、ゴムラテックスの分散媒以外の成分の合計含有量を意味する。本発明において、ゴムラテックスに含有されるゴムの含有量と、ゴムラテックスの分散媒以外の成分の合計含有量とはほぼ同じである。
本発明において、樹脂エマルジョンの固形分は樹脂を意味する。樹脂エマルジョンの固形分の含有量は樹脂エマルジョンに含有される樹脂の含有量、又は、樹脂エマルジョンの分散媒以外の成分の合計含有量を意味する。本発明において、樹脂エマルジョンに含有される合成樹脂の含有量と樹脂エマルジョンの分散媒以外の成分の合計含有量とはほぼ同じである。
【0012】
本発明において、タイヤパンクシール剤に含有される媒体は、タイヤパンクシール剤から、ゴムラテックスに含有されるゴム及び/又は樹脂エマルジョンに含有される樹脂と、セルロース繊維とを除く、残りの成分全体を意味するものとする。なお、本発明のタイヤパンクシール剤が、更に、例えば、分散媒を含む成分(上記ゴムラテックス又は上記樹脂エマルジョンを除く。)を含有する場合、上記媒体は、更に、上記分散媒を含む成分から分散質(固形分)を除いた残りの成分を含むものとする。
なお、セルロース繊維が乾燥していない状態(例えば、ゲル状、水溶液又は分散液が挙げられる。)で使用される場合、タイヤパンクシール剤に含有される媒体は、セルロース繊維の使用様態に由来する媒体を含むことができる。
本発明のタイヤパンクシール剤を製造する際、更に、水等の分散媒を系内に加えた場合、上記媒体は、上記加えられた分散媒を更に含むことができる。
【0013】
[タイヤパンクシール剤]
本発明のタイヤパンクシール剤は、ゴムラテックス及び/又は樹脂エマルジョンと、最大繊維径が1,000nm未満であるセルロース繊維とを含有し、セルロース繊維が官能基を有してもよいセルロースを有する、タイヤパンクシール剤である。
【0014】
本発明のタイヤパンクシール剤において、セルロース繊維の最大繊維径がより細い(1,000nm未満である)ことによって、セルロース繊維の表面積が大きくなり、ゴムラテックスのゴム及び/又は樹脂エマルジョンの樹脂が保管中又はタイヤへの注入時に凝集することを抑制すると推測される。又は、セルロース繊維の最大繊維径がより細いことによって、ゴムラテックスのゴム及び/又は樹脂エマルジョンの樹脂の間に入り込みやすくなり、ゴムラテックスのゴム及び/又は樹脂エマルジョンの樹脂が保管中又はタイヤへの注入時に凝集することを抑制すると推測される。
しかし、本発明において、所定のセルロース繊維は、パンク孔をシールする際には、上記凝集を妨げないと推測される。
このように、本発明のタイヤパンクシール剤は、シールする際のゴム及び/又は樹脂の凝集性と、保管中及び/又は注入時のゴム及び/又は樹脂の耐凝集性とのバランスに優れると考えられる。
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
【0015】
本発明のタイヤパンクシール剤はゴムラテックス及び/又は樹脂エマルジョンを含有する。
ゴムラテックスに含まれるゴム及び/又は樹脂エマルジョンに含まれる樹脂は、パンク孔をシールする機能を有する。
本発明のタイヤパンクシール剤がゴムラテックス及び樹脂エマルジョンを含有する場合、本発明の効果(特に、保管性又は注入性)により優れる。
【0016】
<ゴムラテックス>
本発明のタイヤパンクシール剤は、ゴムラテックスを含有することができる。
本発明のタイヤパンクシール剤に含有されうるゴムラテックスは特に制限されない。例えば、天然ゴムラテックス、ニトリルゴムラテックス、スチレンブタジエンゴムラテックス、アクリルゴムラテックスが挙げられる。
なかでも、本発明の効果(特にシール性)により優れるという観点から、天然ゴムラテックスが好ましい。天然ゴムラテックスは特に制限されない。天然ゴムラテックスは、タンパク質を除去したもの、及び、除去していないもののうちのいずれであってもよい。
ゴムラテックスはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ゴムラテックスはその製造方法について特に制限されない。
ゴムラテックスは市販品を使用することができる。天然ゴムラテックスの市販品としては具体的には例えば、脱蛋白天然ゴムラテックス(SeLatexシリーズ、SRIハイブリッド社製)、脱蛋白天然ゴムラテックス(Hytex HA、フェルフェックス社製、野村貿易社)、超低アンモニア天然ゴムラテックス(ULACOL、レヂテックス社製)が挙げられる。
【0017】
(ゴムラテックスの固形分の含有量1)
本発明において、ゴムラテックスの固形分の含有量1は、本発明の効果(特にシール性)により優れるという観点から、タイヤパンクシール剤全量の10〜50質量%が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。
【0018】
<樹脂エマルジョン>
本発明のタイヤパンクシール剤は、樹脂エマルジョンを含有することができる。
本発明のタイヤパンクシール剤に含有されうる樹脂エマルジョンは特に制限されない。
樹脂エマルジョンとしては、例えば、酢酸ビニル系重合体エマルジョンが挙げられる。
酢酸ビニル系重合体エマルジョンは、上記エマルジョンに含有される酢酸ビニル系重合体が酢酸ビニルによる繰り返し単位を有するポリマーであれは特に制限されない。
【0019】
(酢酸ビニル系重合体エマルジョン)
酢酸ビニル系重合体エマルジョンに含有される酢酸ビニル系重合体は酢酸ビニルの単独重合体又は共重合体のいずれであってもよい。
【0020】
酢酸ビニル系重合体が共重合体である場合、酢酸ビニル以外の単量体は、エチレン性不飽和結合を有する化合物であれば特に制限されない。例えば、エチレンのようなオレフィン;ベオバ(バーサチック酸とビニルアルコールとのエステル);(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸のような(メタ)アクリル系モノマー;スチレンのような芳香族ビニル化合物が挙げられる。
【0021】
酢酸ビニル系重合体エマルジョンとしては、例えば、酢酸ビニル単独重合体エマルジョン、酢酸ビニル系共重合体エマルジョンが挙げられる。
酢酸ビニル系共重合体エマルジョンとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンが挙げられる。
エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンは、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル−ベオバ共重合体エマルジョン、及び、エチレン−酢酸ビニル−ベオバ−(メタ)アクリル系モノマー共重合体エマルジョンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。エチレン−酢酸ビニル−ベオバ−(メタ)アクリル系モノマー共重合体を構成する(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸)が挙げられる。
【0022】
なかでも、樹脂エマルジョンは、本発明の効果(特に注入性)により優れるという観点から、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン及び酢酸ビニル単独重合体エマルジョンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0023】
樹脂エマルジョンはその製造方法について特に制限されない。樹脂エマルジョンは市販品を使用することができる。
樹脂エマルジョンはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
(ゴムラテックスの固形分の含有量1)
本発明のタイヤパンクシール剤がゴムラテックスを含有する場合、ゴムラテックスの固形分の含有量1は、本発明の効果(特にシール性)により優れるという観点から、タイヤパンクシール剤全量の2〜45質量%が好ましく、4〜36質量%がより好ましい。
【0025】
(樹脂エマルジョンの固形分の含有量2)
本発明のタイヤパンクシール剤が樹脂エマルジョンを含有する場合、樹脂エマルジョンの固形分の含有量2は、本発明の効果(特に注入性)により優れるという観点から、タイヤパンクシール剤全量の1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、3〜8質量%が更に好ましい。
【0026】
(ゴムラテックスの固形分の含有量1及び樹脂エマルジョンの固形分の含有量2の合計量)
本発明のタイヤパンクシール剤がゴムラテックス及び樹脂エマルジョンを含有する場合、ゴムラテックスの固形分の含有量1及び樹脂エマルジョンの固形分の含有量2の合計量は、本発明の効果(特にシール性と注入性)により優れるという観点から、タイヤパンクシール剤全量の3〜65質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましく、20〜40質量%が更に好ましい。
【0027】
また、本発明のタイヤパンクシール剤がゴムラテックス及び樹脂エマルジョンを含有する場合、樹脂エマルジョンの固形分の含有量2は、本発明の効果(特に注入性)により優れるという観点から、ゴムラテックスの固形分の含有量1:100質量部に対して、0.1〜100質量部が好ましく、10〜80質量部がより好ましい。
【0028】
<セルロース繊維>
本発明のタイヤパンクシール剤は、最大繊維径が1,000nm未満であるセルロース繊維を含有する。上記セルロース繊維は、官能基を有してもよいセルロースを有する。
本発明において、セルロース繊維は、複数のセルロースの束を意味する。
また、本発明において、セルロース繊維の繊維径は、1つのセルロース繊維の短径を意味する。セルロース繊維の最大繊維径は、1つのセルロース繊維が有する最も太い部分の直径を意味する。
セルロース繊維の長さは、1つのセルロース繊維の長径を意味する。
【0029】
なお、本発明において、セルロース繊維は官能基を有してもよい。セルロース繊維が有してもよい官能基は、セルロース繊維を構成するセルロースが有してもよい官能基と同様である。上記セルロースが官能基を有する場合、セルロース繊維は官能基を有することとなる。
【0030】
セルロース繊維又はこれを構成するセルロースは、例えば、マイナスイオン又はプラスイオンを有することができる。セルロース繊維又はこれを構成するセルロースが官能基を有する場合、上記官能基がマイナスイオン又はプラスイオンを構成してもよい。
この場合、セルロース繊維又はこれを構成するセルロースは更に対イオンを有してもよい。上記対イオンは特に制限されない。
セルロース繊維又はこれを構成するセルロースは、マイナスイオンを有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0031】
本発明において、セルロース繊維の繊維径又は長さは、以下の方法で測定できる。
まず、固形分率で0.05〜0.1質量%の微細セルロースの水分散体を調製し、該分散体を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして観察用試料とする。次に、上記観察用試料を、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)又は原子間力顕微鏡(AFM)等で倍率500〜5000倍で観察して、セルロース繊維の繊維径又は長さを求めることができる。
【0032】
(セルロース繊維の最大繊維径)
セルロース繊維の最大繊維径は、上記観察用試料を、上記SEM等で上記倍率で観察し、そのなかから任意に120本のセルロース繊維を選び、選ばれた各セルロース繊維において最も太い部分の繊維径を測定して得られた測定値である。
【0033】
(セルロース繊維の数平均繊維径)
セルロース繊維の数平均繊維径は、上記観察用試料を、上記SEM等で上記倍率で観察し、そのなかから任意に120本のセルロース繊維を選び、選ばれたセルロース繊維の先端部の繊維径を測定して、得られた測定値を平均した値である。
【0034】
(セルロース繊維の平均長さ)
セルロース繊維の平均長さは、上記観察用試料を、上記SEM等で上記倍率で観察し、そのなかから任意に120個のセルロース繊維を選び、選ばれたセルロース繊維の長さを測定して、得られた測定値を平均した値である。
【0035】
セルロース繊維の最大繊維径は、本発明の効果(特に注入性)により優れるという観点から、500nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。
【0036】
セルロース繊維の数平均繊維径は、本発明の効果(特に注入性)により優れるという観点から、2〜300nmが好ましく、2〜150nmがより好ましく、2〜100nmが更に好ましく、2〜20nmが特に好ましい。
【0037】
セルロース繊維の平均長さは、本発明の効果(特に注入性)により優れるという観点から、10〜150,000nmが好ましく、20〜100,000nmがより好ましい。
セルロース繊維の(平均長さ/数平均繊維径)は、本発明の効果に(特に注入性)により優れるという観点から、5〜1,000が好ましく、10〜800がより好ましい。
【0038】
本発明において、セルロース繊維は、官能基を有してもよいセルロースを有する。
セルロース繊維を構成するセルロースは、官能基を有することが好ましい。
セルロースが有することができる官能基としては、例えば、カルボニル基及びアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基が挙げられる。
【0039】
上記カルボニル基は、例えば、カルボキシ基(−COOH)、又は、アルデヒド基を形成してもよい。
上記カルボニル基としては、例えば、式:−CO−Xで表される基が挙げられる。
上記式において、Xは、R、OH又はHを表し、Rはヘテロ原子を有してもよい炭化水素基を表す。上記ヘテロ原子又は炭化水素基は特に制限されない。
上記官能基の少なくとも一部が、マイナスイオン又はプラスイオンを構成してもよい。上記官能基の少なくとも一部が、具体的には例えば、−COO
-となってもよい。
【0040】
上記アルコキシ基は特に制限されない。上記アルコキシ基を形成するアルキル基は直鎖状、分岐状及び環状の何れであってもよく、これらの組合せであってもよい。上記アルキル基の炭素数は1〜10個とすることができる。
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルが挙げられる。
【0041】
セルロース繊維を構成するセルロースが官能基を有する場合、上記官能基はセルロースを構成する6員環と直接又は有機基を介して結合できる。上記有機基としては例えば、酸素原子、炭化水素基、これらの組合せが挙げられる。具体的には例えば、−O−CH
2−、−CH
2−O−CH
2−、−CH
2−が挙げられる。
セルロース繊維を構成するセルロースは、水酸基(例えば、セルロースに由来する水酸基)を有してもよい。
セルロース繊維を構成するセルロースは、上記官能基、又は、上記官能基及び水酸基を有することができる。
【0042】
上記官能基の含有量(モル)は、本発明の効果により優れ、分散性に優れるという観点から、セルロース繊維(重量)に対して、0.1〜2.2mmol/gが好ましく、0.5〜2.0mmol/gがより好ましい。
【0043】
ここで、本発明において、セルロール繊維が官能基を有するセルロースを有し、上記官能基がカルボニル基(具体的には、カルボキシ基、又は、アルデヒド基)である場合、セルロース繊維の重量に対するセルロースのアルデヒド基およびカルボキシ基の量(mmol/g)は、以下の手法により評価できる。
乾燥重量を精秤したセルロース繊維の試料から0.5〜1質量%スラリーを60ml調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して電気伝導度測定を行う。測定はpHが約11になるまで続ける。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下式を用いて官能基量1を決定する。官能基量1がカルボキシ基の量を示す。
官能基量1(mmol/g)=V(ml)×0.05/セルロースの質量(g)
次に、セルロース試料を、酢酸でpHを4〜5に調製した2%亜塩素酸ナトリウム水溶液中で更に48時間常温で酸化し、上記手法によって再び官能基量2を測定する。この酸化によって追加された官能基量(=官能基量2−官能基量1)を算出し、アルデヒド基量とする。
【0044】
セルロース繊維の製造方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
セルロース繊維を構成するセルロースが官能基を有する場合のセルロース繊維の製造方法としては、例えば、官能基を有さない原料セルロース(例えば、原料セルロース繊維)を用いて、従来公知の方法で、上記原料セルロースが有する水酸基の少なくとも一部又は全部を、上記官能基に置換する方法が挙げられる。
【0045】
セルロース繊維は、水溶性及び非水溶性のいずれであってもよい。セルロース繊維は、乾燥した状態で使用されてもよい。
セルロース繊維はその形態について特に制限されない。例えば、粉末、ゲル状、水溶液、分散液が挙げられる。セルロース繊維の形態が例えば、ゲル状、水溶液又は分散液である場合、セルロース繊維に適用された媒体(例えば分散媒)は特に制限されない。例えば、水が挙げられる。
セルロース繊維はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
セルロース繊維(正味のセルロース繊維)の含有量は、本発明の効果(特に注入性)により優れるという観点から、ゴムラテックスの固形分の含有量1:100質量部、又は、上記樹脂エマルジョンの固形分の含有量2:100質量部に対して、0.01〜10.0質量部が好ましく、0.01〜5.0質量部がより好ましく、0.1〜2.0質量部が更に好ましい。
【0047】
本発明のタイヤパンクシール剤がゴムラテックス及び樹脂エマルジョンを含有する場合、セルロース繊維の含有量は、本発明の効果(特に注入性)により優れるという観点から、ゴムラテックスの固形分の含有量1及び樹脂エマルジョンの固形分の含有量2の合計量100質量部に対して、0.01〜10.0質量部が好ましく、0.01〜5.0質量部がより好ましく、0.05〜4.0質量部が更に好ましい。
【0048】
セルロース繊維は、本発明のタイヤパンクシール剤において、タイヤパンクシール剤の媒体中に分散していることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0049】
(凍結防止剤)
本発明のタイヤパンクシール剤は更に凍結防止剤を含有することができる。
上記凍結防止剤は特に制限されない。
なかでも、低温での注入性に優れるという観点から、凍結防止剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0050】
凍結防止剤の含有量は、低温での注入性に優れるという観点から、タイヤパンクシール剤全量に対して、10〜80質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましい。
【0051】
(界面活性剤)
本発明のタイヤパンクシール剤は、更に、界面活性剤を含有することができる。
界面活性剤は特に制限されない。例えば、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、両イオン系の界面活性剤が挙げられる。
【0052】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル型、ポリオキシエチレンアルキルアミン型、ポリオキシエチレンアルキルアミド型、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル型、ポリオキシエチレンひまし油型、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエスエル型、ポリオキシエチレンロジンエステル型、ポリオキシエチレンラノリンエーテル型、ポリオキシエチレン多価アルコールエーテル型、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル型、多価アルコール脂肪酸エステル型、脂肪酸アルカノールアマイド型等のノニオン系界面活性剤が挙げられる。ノニオン系界面活性剤のHLBは12.0〜19.0が好ましい。
【0053】
HLBは有機概念図に基づく小田式による計算値を意味し、この計算方法は、例えば「乳化・可溶化の技術」〔昭和51年、工学図書(株)〕に記載されている。またHLBを導き出すための有機性値及び無機性値については「有機概念図−基礎と応用−」〔昭和59年三共出版(株)〕記載の無機性基表(昭和49年、藤田らの報告値)を用いて算出できる。
【0054】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテルが挙げられる。
【0055】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、アルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩(石けん)、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、(モノ)アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシモノおよびジスチリルフェニルエーテルスルホコハク酸モノエステル塩、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩が挙げられる。
【0056】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、テトラアルキルアンモニウムクロライド、トリアルキルベンジルアンモニウムクロライド、アルキルアミン、モノオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンが挙げられる。
【0057】
界面活性剤は、本発明の効果(特に保管性)により優れるという観点から、ノニオン系界面活性剤およびアニオン系界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0058】
セルロース繊維と界面活性剤の組合せについて、本発明の効果により優れるという観点から、界面活性剤は、ノニオン系界面活性剤およびアニオン系界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、アニオン系界面活性剤がより好ましい。
【0059】
界面活性剤の量は、本発明の効果(特に保管性)により優れるという観点から、ゴムラテックスの固形分の含有量1:100質量部、樹脂エマルジョンの固形分の含有量2:100質量部、又は、上記含有量1と上記含有量2との合計100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0060】
(その他の成分)
本発明のタイヤパンクシール剤は、上述した各成分以外に、所望により、例えば、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、分散剤、脱水剤、帯電防止剤、ゲル化剤、タッキファイヤーのような添加剤を更に含有することができる。
【0061】
本発明のタイヤパンクシール剤が更に上記タッキファイヤーを含有する場合、シール性をより向上させることができる。
上記タッキファイヤーとしては、例えば、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、ロジン系樹脂、ポリビニルエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジンが挙げられる。
上記タッキファイヤーの形態は特に制限されない。例えば、上記タッキファイヤーを固形分として含むエマルジョン(水中油滴型エマルジョン)が挙げられる。
上記タッキファイヤーは、本発明のタイヤパンクシール剤を例えば保管又は製造する際において、ゴムラテックス(例えば、天然ゴムラテックス)を凝固させないものであることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0062】
上記タッキファイヤーの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、タイヤパンクシール剤の全量に対して、1.0〜30.0質量%が好ましく、5.0〜10.0質量%がより好ましい。
【0063】
本発明のタイヤパンクシール剤は、最大繊維径が1,000nm以上のセルロース繊維を含有しないことが好ましい態様の1つとして挙げられる。この場合、最大繊維径が1,000nm以上のセルロース繊維の含有量は、タイヤパンクシール剤全体に対して、0〜5質量%とすることができる。
【0064】
(製造方法)
本発明のタイヤパンクシール剤はその製造方法について、特に限定されない。例えば、ゴムラテックス及び/又は樹脂エマルジョン、及び、上記セルロース繊維を、所望により用いることができる、凍結防止剤、界面活性剤、又は、添加剤とともに、減圧下で混合ミキサー等の混合機を用いて混合する方法が挙げられる。
必要に応じて系内に更に水を加えてもよい。
また、上記各成分が分散媒又は媒体を含有する場合、上記各成分として、上記各成分から分散媒等を一部又は全て除いたものを使用してもよい。
【0065】
(タイヤパンクシール剤に含有される水の量)
本発明のタイヤパンクシール剤における水の含有量(水の総量)は、タイヤパンクシール剤全量の10〜40質量%であることが好ましく、15〜30質量%がより好ましい。
【0066】
上記セルロース繊維は、本発明のタイヤパンクシール剤の媒体中に分散していることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0067】
本発明のタイヤパンクシール剤は、タイヤのパンク孔をシールすることができる。
本発明のタイヤパンクシール剤の使用方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。具体的には例えば、本発明のタイヤパンクシール剤をコンプレッサー等を用いてタイヤのバルブからタイヤ内部に注入する。その後車を走行させタイヤが回転すると、タイヤ内の本発明のタイヤパンクシール剤に含有されるゴムラテックス(及び/又は樹脂エマルジョン)の固形分が凝集し、凝集した固形分がパンク孔をシールして、パンクしたタイヤを再び走行可能な状態にすることができる。
本発明のタイヤパンクシール剤を使用する際の温度について特に制限されず、広い温度範囲の条件下において使用することができる。使用温度は例えば−40〜80℃とすることができる。
本発明のタイヤパンクシール剤は、長期間、及び/又は、例えば上記のような広い温度範囲の条件下において保管できる。
【実施例】
【0068】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0069】
<タイヤパンクシール剤の製造>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを撹拌機で混合し、タイヤパンクシール剤を製造した。
第1表の「ゴムラテックス」欄に示す2つの数値は、(ゴムラテックスの使用量)/(使用されたゴムラテックス中の固形分(ゴム)の含有量)を意味する。
第1表の「樹脂エマルジョン」欄に示す2つの数値は、(樹脂エマルジョンの使用量)/(使用された樹脂エマルジョン中の固形分(樹脂)の含有量)を意味する。
第1表の「セルロース繊維1」欄の数値は、使用されたセルロース繊維1に含有される正味のセルロース繊維の含有量を意味する。セルロース繊維2、3及び比較セルロース繊維も同様である。
【0070】
<評価>
上記のとおり製造された組成物を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
(保管性)
上記のとおり製造されたタイヤパンクシール剤を70℃の環境下で静止して保管し、10日毎にタイヤパンクシール剤を目視で観察し、タイヤパンクシール剤の表層に膜(クリーム)が張っているかを確認した。観察開始から上記膜を確認した日までの日数を保管性の欄に記載した。
・評価基準
上記日数が長いほど、保管性に優れる。
【0071】
(シール性)
215/60 R16のタイヤのトレッドのショルダー部にパンク孔(直径4mm)を空けた。
次いで、パンク孔を空けたタイヤをドラム試験機に装着し、上記のとおり製造されたタイヤパンクシール剤650mLをタイヤのバルブコアから注入し、タイヤ内圧が200kPaになるように空気を充填した。
その後、荷重350kg、時速30kmの条件下で上記タイヤを走行させて停止する間欠運転を繰り返し、空気漏れがなくなるまで、タイヤパンクが修理できる走行距離(パンク修理距離)を測定した。空気漏れの有無は、上記パンク孔の部分に石鹸水を吹き付け、石鹸水が泡になるか否かで確認した。
・評価基準
パンク修理距離が短いほど、シール性に優れる。
【0072】
(注入性)
上記のとおり製造されたタイヤパンクシール剤650mLを70℃に加温した。
コンプレッサーを使用して、注入圧300kPaの条件で、195/65 R15のタイヤ(トレッドのショルダー部にパンク孔(直径4mm)を有する)に、上記タイヤパンクシール剤をバルブコアからタイヤ内へ注入し、注入開始から注入完了までの時間を測定した。
・評価基準
注入時間が短いほど、注入性に優れる。
【0073】
【表1】
【0074】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
【0075】
・ゴムラテックス:天然ゴムラテックス(Hytex HA、フェルフェックス社製、野村貿易社;固形分60質量%)
【0076】
・樹脂エマルジョン:バーサチック酸ビニル−エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン(スミカフレックス950HQ、住化ケムテックス;固形分約50質量%)
【0077】
・凍結防止剤:プロピレングリコール(ADEKA社製 工業用プロピレングリコール)
【0078】
・界面活性剤:アニオン系界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウム(製品名:エマール10PT、花王社製)
【0079】
・セルロース繊維1:セルロース繊維。最大繊維径10nm、数平均繊維径5nm、平均長さ50nm。カルボニル基を含有する。カルボニル基含有量1.0mmol/g。商品名レオクリスタ、第一工業製薬社製。セルロース繊維含有量2.0質量%。セルロース繊維1はマイナスイオンを有する。
【0080】
・セルロース繊維2:セルロース繊維。最大繊維径500nm、数平均繊維径250nm、平均長さ800nm。カルボニル基を含有する。商品名セルロースナノファイバー、大王製紙社製。水分散体。
【0081】
・セルロース繊維3:セルロース繊維。最大繊維径500nm、数平均繊維径200nm、平均長さ500nm。メトキシ基を含有する。商品名変性セルロースナノファイバー、日本製紙社製。セルロース繊維含有量2質量%。
【0082】
・比較セルロース繊維:セルロース繊維。最大繊維径3000nm、数平均繊維径2000nm。カルボニル基を含有する。商品名メトロースLH−32、日本製紙社製。セルロース繊維含有量100質量%。
【0083】
第1表に示す結果から明らかなように、所定のセルロース繊維を含有せず、代わりに最大繊維径が1,000nm以上である比較セルロース繊維を含有する比較例1、2は、保管性、注入性が悪かった。
所定のセルロース繊維を含有しない比較例3は、保管性、注入性が悪かった。
樹脂エマルジョン及び所定のセルロース繊維を含有しない比較例4は、保管性、注入性が悪かった。
ゴムラテックス及び所定のセルロース繊維を含有しない比較例5は、シール性が悪かった。
【0084】
これに対して、本発明のタイヤパンクシール剤は、保管性、シール性及び注入性に優れた。