特許第6555463号(P6555463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6555463-車両の走行制御装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555463
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20190729BHJP
   F16H 59/02 20060101ALI20190729BHJP
   F16H 59/54 20060101ALI20190729BHJP
   F16H 59/18 20060101ALI20190729BHJP
   F16H 59/74 20060101ALI20190729BHJP
   F16H 63/46 20060101ALI20190729BHJP
   F16D 48/02 20060101ALI20190729BHJP
   B60W 10/00 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   F16H61/02
   F16H59/02
   F16H59/54
   F16H59/18
   F16H59/74
   F16H63/46
   F16D48/02 640H
   B60W10/00 148
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-257553(P2014-257553)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2016-118240(P2016-118240A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】303002158
【氏名又は名称】三菱ふそうトラック・バス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】小関 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】森元 繁幸
【審査官】 星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/190652(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/057837(WO,A1)
【文献】 特開2005−226701(JP,A)
【文献】 特開2008−192125(JP,A)
【文献】 特開2010−070142(JP,A)
【文献】 特開2005−220775(JP,A)
【文献】 特開2000−356146(JP,A)
【文献】 特開平11−078618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00−61/12
F16H 61/16−61/24
F16H 61/66−61/70
F16H 63/40−63/50
F16D 25/00−39/00
F16D 48/00−48/12
B60W 10/00−50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源であるエンジンがクラッチを介して自動変速機と接続されている車両の走行制御装置であって、
ASRであるブレーキシステムによる前記車両の駆動力制御手段と、
所定の惰性走行開始条件が成立したとき、前記クラッチの切断状態及び前記自動変速機のギヤのニュートラル状態の少なくとも何れかの状態とすることで惰性走行を実行する惰性走行制御手段とを備え、
前記惰性走行制御手段は、前記駆動力制御手段の作動を所定時間以上継続して検出したとき、前記惰性走行を禁止する、車両の走行制御装置。
【請求項2】
車両の駆動源であるエンジンがクラッチを介して自動変速機と接続されている車両の走行制御装置であって、
ABS又はASRであるブレーキシステムによる前記車両の駆動力制御手段と、
所定の惰性走行開始条件が成立したとき、前記クラッチの切断状態及び前記自動変速機のギヤのニュートラル状態の少なくとも何れかの状態とすることで惰性走行を実行する惰性走行制御手段と、
前記車両の低μ路発進をオンにより可能とする低μ路発進モードスイッチと、
アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度検出手段と
を備え、
前記惰性走行制御手段は、前記駆動力制御手段の作動を所定時間以上継続して検出したとき、前記惰性走行を禁止し、前記惰性走行を禁止した後に前記車両が停車し、その後、前記低μ路発進モードスイッチがオフであり、且つ前記アクセル開度検出手段により検出された前記アクセルペダルの開度が所定の第1閾値以上となって前記車両が発進したという前記惰性走行の禁止を解除する条件が成立したとき、前記惰性走行の禁止を解除する、車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記惰性走行禁止解除する条件には、前記エンジンが非稼働状態であるという条件がさらに含まれ、前記惰性走行制御手段は、当該惰性走行禁止解除する条件の何れかが成立したとき、前記惰性走行の禁止を解除する、請求項又はに記載の車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記惰性走行制御手段による前記惰性走行のオン、オフを切り替え可能な惰性走行スイッチをさらに備え、
前記惰性走行禁止解除する条件には、前記惰性走行スイッチがオフからオンに操作されたという条件がさらに含まれ、前記惰性走行制御手段は、当該惰性走行禁止解除する条件の何れかが成立したとき、前記惰性走行の禁止を解除する、請求項からの何れか一項に記載の車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動変速機として、変速ギヤの切り替え及びクラッチの断接を自動で行う、いわゆるAMT(Automated Manual Transmission)が開発されている。AMTは運転者によるクラッチ操作が不要でありながら、トルクコンバータを用いた自動変速機よりも動力伝達におけるロスが少なく燃費が向上するという利点がある。
【0003】
このようなAMTでは、運転者がアクセルペダルもブレーキペダルも踏み込んでいないときに、自動的にクラッチを切断状態又は変速機のギヤをニュートラル状態とすることで、エンジンのフリクションを駆動系から切り離した惰性走行を行うことができる。これにより、走行の負荷を低減し、エンジンブレーキによる速度低下及びその後の速度復帰のための再加速を回避できることで燃費の向上を図ることができる。
【0004】
そして、車両が低μ路(低摩擦路)走行中であることが認識されているときは惰性走行制御を禁止する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−30711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、車両走行中の路面が低μ路であるか否かは、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の制御ユニットが出力するスリップ信号により車輪の回転速度差を検出して判別している。したがって、厳密にはABSが実際に作動した信号を低μ路検出のトリガーとはしていない。このため、凍結路などの低μ路ではない砂利道や泥道の走行中、或いは、タイヤ空転時も低μ路走行中と判別され、低μ路検出の精度が著しく低下するおそれがある。これでは、不必要に惰性走行が禁止され、車両のドライバビリティや燃費が悪化するという問題がある。
【0007】
また、特許文献1では、低μ路走行後に低μ路ではないと判別されると、即座に惰性走行禁止が解除される。しかし、低μ路はABSのスリップ信号という間接的な信号により検出されるため、実際には低μ路走行中にも拘わらず惰性走行禁止が解除され、惰性走行が開始されるおそれがあり、車両走行の安全性を確保できないばかりか、違和感や恐怖感を運転者に与えかねない。
【0008】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、低μ路を精度良く検出し、低μ路走行中における惰性走行を確実に禁止することにより、車両の燃費、運転者の安全性及びドライバビリティの全てを向上することができる車両の走行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0010】
(1)本適用例に係る車両の走行制御装置は、車両の駆動源であるエンジンがクラッチを介して自動変速機と接続されている車両の走行制御装置であって、ASRであるブレーキシステムによる前記車両の駆動力制御手段と、所定の惰性走行開始条件が成立したとき、前記クラッチの切断状態及び前記自動変速機のギヤのニュートラル状態の少なくとも何れかの状態とすることで惰性走行を実行する惰性走行制御手段とを備え、前記惰性走行制御手段は、前記駆動力制御手段の作動を所定時間以上継続して検出したとき、前記惰性走行を禁止する。
【0011】
(2)本適用例に係る車両の走行制御装置は、車両の駆動源であるエンジンがクラッチを介して自動変速機と接続されている車両の走行制御装置であって、ABS又はASRであるブレーキシステムによる前記車両の駆動力制御手段と、所定の惰性走行開始条件が成立したとき、前記クラッチの切断状態及び前記自動変速機のギヤのニュートラル状態の少なくとも何れかの状態とすることで惰性走行を実行する惰性走行制御手段と、前記車両の低μ路発進をオンにより可能とする低μ路発進モードスイッチと、アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度検出手段とを備え、前記惰性走行制御手段は、前記駆動力制御手段の作動を所定時間以上継続して検出したとき、前記惰性走行を禁止し、前記惰性走行を禁止した後に前記車両が停車し、その後、前記低μ路発進モードスイッチがオフであり、且つ前記アクセル開度検出手段により検出された前記アクセルペダルの開度が所定の第1閾値以上となって前記車両が発進したという前記惰性走行の禁止を解除する条件が成立したとき、前記惰性走行の禁止を解除する。
【0013】
)本適用例に係る車両の走行制御装置は、前記惰性走行禁止解除する条件には、前記エンジンが非稼働状態であるという条件がさらに含まれ、前記惰性走行制御手段は、当該惰性走行禁止解除する条件の何れかが成立したとき、前記惰性走行の禁止を解除する。
【0014】
)本適用例に係る車両の走行制御装置は、前記惰性走行制御手段による前記惰性走行のオン、オフを切り替え可能な惰性走行スイッチをさらに備え、前記惰性走行禁止解除する条件には、前記惰性走行スイッチがオフからオンに操作されたという条件がさらに含まれ、前記惰性走行制御手段は、当該惰性走行禁止解除する条件の何れかが成立したとき、前記惰性走行の禁止を解除する。
【発明の効果】
【0015】
上記手段を用いる本発明によれば、低μ路を精度良く検出し、低μ路走行中における惰性走行を確実に禁止することにより、車両の燃費、運転者の安全性及びドライバビリティの全てを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態における車両の走行制御装置を備えた車両の駆動系を示す概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態における車両の走行制御装置のECUが実行する惰性走行制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した車両の走行制御装置の一実施形態を説明する。
【0018】
図1は本実施形態の車両の走行制御装置を備えた車両の駆動系を示す概略構成図であり、以下同図に基づき本実施形態の構成について説明する。
【0019】
本実施形態における車両1はトラックであり、走行用動力源としてディーゼルエンジン(以下、エンジンという)2が搭載されている。エンジン2の出力軸2aにはクラッチ装置3を介して自動変速機(以下、単に変速機という)4の入力軸4aが接続され、クラッチ装置3の接続時にエンジン2の回転が変速機4に伝達されるようになっている。当該変速機4は、例えば前進12段及び後進1段を備えた手動式変速機をベースとしたものであり、以下に述べるように、その変速操作及び変速に伴うクラッチ装置3の断接操作を自動化した、いわゆるAMT(Automated Manual Transmission)である。
【0020】
クラッチ装置3は、フライホイール5にクラッチ板6をプレッシャスプリング7により圧接させて接続される一方、フライホイール5からクラッチ板6を離間させることにより切断される摩擦式クラッチとして構成されている。クラッチ板6にはアウタレバー8を介してエアシリンダ9が連結され、エアシリンダ9には電磁弁10が介装されたエア通路11を介して圧縮エアを充填したエアタンク12が接続されている。
【0021】
電磁弁10の開弁時にはエアタンク12からエア通路11を介してエアシリンダ9に圧縮エアが供給され、エアシリンダ9が作動してアウタレバー8を介してクラッチ板6をフライホイール5から離間させ、これによりクラッチ装置3が接続状態から切断状態に切り替えられる。一方、電磁弁10が閉弁すると、圧縮エアの供給中止によりエアシリンダ9が作動しなくなることから、クラッチ板6はプレッシャスプリング7によりフライホイール5に圧接され、これによりクラッチ装置3は切断状態から接続状態に切り替えられる。このように電磁弁10の開閉に応じてエアシリンダ9が作動して、クラッチ装置3を自動的に断接操作可能になっている。
【0022】
変速機4には変速段を切り替えるためのギヤシフトユニット13が設けられ、図示はしないがギヤシフトユニット13は、変速機4内の各変速段に対応するシフトフォークを作動させる複数のエアシリンダ、及び各エアシリンダを作動させる複数の電磁弁を内蔵している。ギヤシフトユニット13はエア通路14を介して上記したエアタンク12と接続されており、各電磁弁の開閉に応じてエアタンク12からの圧縮エアが対応するエアシリンダに供給され、そのエアシリンダが作動して対応するシフトフォークを切替操作すると、切替操作に応じて変速機4の変速段のギヤ入れが行われる。このようにギヤシフトユニット13の電磁弁の開閉に応じてエアシリンダが作動して、変速機4を自動的に変速操作可能になっている。なお、本実施形態では主にエアによりクラッチ装置3及び変速機4を作動させているが、作動方式はこれに限られず、例えば油圧を用いてもよい。
【0023】
車両1内には、図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM、RAMなど)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタなどを備えたECU(制御ユニット)20が設置されており、エンジン2、クラッチ装置3、変速機4の総合的な制御を行う。
【0024】
ECU20の入力側には、例えば、運転席に設けられたシフトレバー15の切替位置を検出するレバー位置センサ21、アクセルペダル16の操作量(アクセル開度及びアクセル開度変化率)を検出するアクセルセンサ22、ブレーキペダル17の操作を検出するブレーキスイッチ23、変速機4の現変速段を検出する変速段センサ24、車両1が走行している路面の勾配を検出する勾配センサ25、エンジン2の回転速度からエンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ26、変速機4の出力軸4bに設けられて出力軸回転速度から車速を検出する車速センサ27、車両1の加速度を検出する加速度センサ28、などのセンサ類が接続されている。
【0025】
また、車両1には、車両1の駆動力をブレーキシステムにより制御するABS(アンチロック・ブレーキ・システム)、及びASR(アンチ・スピン・レギュレータ)が装備されている。
【0026】
ABSは、急ブレーキ、或いは、低μ路でのブレーキペダル17の操作において、車輪ロックによって発生する車両1の滑走を低減する装置である。ABSは、アンチロック・ブレーキング・システムとも称され、ECU20にて低μ路が検出されると、ブレーキペダル17を一気に踏み込むのではなく徐々に踏み込み、車両1の滑走が始まるとブレーキペダル17の踏み込みを少し緩めてから再び踏み込む、といった操作を繰り返す。即ち、いわゆるポンピングブレーキと称するブレーキ操作をECU20により自動的に行うものである。
【0027】
ASRは、車速センサ27と、各車輪を独立して制御可能なブレーキ機構とを利用し、車両1の駆動力が急に強くなり、車輪がスピンしたとき、自動的にブレーキを作動させてスピンを抑制する操作をECU20により自動的に行う装置である。ASRは、アクセルペダル16の踏みすぎによる車輪のスピンを抑制するべく、エンジン2の出力も自動的に制御する。ASRは、ABSのブレーキシステムに、エンジン制御出力機構と、制動力によりデフの作動トルクを制御する機構とを付加して形成され、一般にABSと組み合わせて装備される。
【0028】
また、ECU20の出力側には、上記したクラッチ装置3の電磁弁10、ギヤシフトユニット13の各電磁弁などが接続されると共に、図示はしないが、エンジン2の燃料噴射弁などが接続されている。なお、このように単一のECU20で総合的に制御することなく、例えばECU20とは別にエンジン制御専用のECUを備えるようにしてもよい。
【0029】
そして、例えばECU20は、エンジン回転数センサ26により検出されたエンジン回転数及びアクセルセンサ22により検出されたアクセル開度に基づき、図示しないマップからエンジン2の各気筒への燃料噴射量を算出すると共に、エンジン回転数及び燃料噴射量に基づき図示しないマップから燃料噴射時期を算出する。そして、これらの算出値に基づき各気筒の燃料噴射弁を駆動制御しながらエンジン2を運転する。
【0030】
また、ECU20は、レバー位置センサ21によりシフトレバー15のD(ドライブ)レンジへの切替が検出されているときには自動変速モードを実行し、アクセル開度及び車速センサ27により検出された車速に基づき、後述するシフトマップから目標変速段を算出する。そして、クラッチ装置3の電磁弁10を開閉してエアシリンダ9によりクラッチ装置3を断接操作させながら、ギヤシフトユニット13の所定の電磁弁を開閉してエアシリンダにより対応するシフトフォークを切替操作して目標変速段にギヤ入れし、これにより常に適切な変速段をもって車両を走行させる。
【0031】
なお、シフトレバー15が選択可能なシフト位置としては、駐車時に選択するP(パーキング)レンジ、変速機4のギヤをニュートラルとするN(ニュートラル)レンジ、前進走行時に選択するD(ドライブ)レンジ、後進時に選択するR(リバース)レンジ、手動で変速段をシフトアップ又はシフトダウン可能なM(マニュアル)レンジ等がある。
【0032】
また、車両1は、後述する惰性走行のオン、オフを行う惰性走行スイッチ29、ブレーキペダル17の操作に応じた制動以外で制動力を生じさせる補助ブレーキのオン、オフを行う補助ブレーキスイッチ30、車両1の低μ路発進をオンにより可能とする低μ路発進モードスイッチ31も備えている。補助ブレーキとしては、例えば、排気ブレーキ、エンジン2の圧縮開放ブレーキ、リターダがある。
【0033】
さらに、ECU20は、車両走行中に以下に説明する各種条件が成立した際に、変速機4のギヤをニュートラル状態とし、且つクラッチ装置3を接続状態とすることで惰性走行を実行する(惰性走行制御手段)。
【0034】
ここで、図2を参照すると、ECU20が実行する惰性走行制御ルーチンを表すフローチャートが示されており、以下同フローチャートに沿って惰性走行制御について詳しく説明する。
【0035】
まず、ECU20は、ステップS1として、ABS又はASRが所定時間t以上継続して作動したか否かを判別する。時間tは、ABS又はASRの誤作動を排除し、ABS又はASRが確実に作動したことを判別可能な時間(例えば1sec)に設定される。当該判別結果が真(Yes)である場合は、ステップS2に進む。一方、当該判別結果が偽(No)である場合は、当該ルーチンをリターンする。
【0036】
ステップS2においてECU20は、惰性走行を実行しているか否かを判別する。当該判別結果が真(Yes)である場合は、ステップS3に進み惰性走行を終了し、ステップS4に進む。当該判別結果が偽(No)である場合は、そのままステップS4に進む。
【0037】
ステップS4においてECU20は、惰性走行を禁止し、次のステップS5に進む。惰性走行禁止になると、例えば運転者により惰性走行スイッチ29がオンに操作されたとしても惰性走行は実行されない。
ステップS5においてECU20は、車両1が停車し、低μ路発進モードスイッチ31がオフであり、且つアクセルセンサ22の情報からアクセル開度が所定の第1閾値P1以上である、即ち、P1≦アクセル開度の関係式が成立するか否かを判別する。P1≦アクセル開度を満たす状態は、運転者がアクセルペダル16を明らかに踏み込んだ場合を想定している。
【0038】
具体的には、アクセル開度P1には、アクセルペダル16を踏み込んで停車した車両1を発進させ、車速が安定すれば即座に惰性走行させたいという運転者の意思が強いと推定される、アクセル開度の値(例えば60%)が設定される。当該判別結果が偽(No)である場合は、車両1が走行中であるか、或いは、低μ路発進モードスイッチ31がオンであるか、或いは、アクセル開度が60%未満であって、運転者が慎重なアクセル操作を行っており、車両1が低μ路を走行中であると想定されるため、惰性走行禁止を継続するべくステップS6に進む。ステップ5から以降のステップS7までは惰性走行禁止解除条件に相当する。
【0039】
ステップS6においてECU20は、車両1がキーオフ状態であり、エンジン2が停止しているか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である場合、即ちエンジン2が稼働中である場合には、ステップS7に進む。
【0040】
ステップS7においてECU20は、惰性走行スイッチ29がオフ状態からオン状態に操作されたか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である場合、即ち惰性走行スイッチ29がオフのままである場合には、運転者に惰性走行を実施する意思はないと推定できるため、ステップS5を再び判別する。また、惰性走行スイッチ29がオンのままである場合には、運転者に惰性走行を実施する強い意思はないと推定できるため、ステップS5を再び判別する。
【0041】
一方、ステップS5からS7の惰性走行禁止解除条件の何れかが成立したとき、即ちステップS5からS7の少なくとも1つの判別結果が真(Yes)となる場合は、ステップS8に進み、ECU20は、惰性走行禁止を解除し、当該ルーチンをリターンする。
【0042】
ステップS5では、停車後に、低μ路発進モードスイッチ31のオフ、且つアクセルペダル16の操作量大という条件の成立によって、低μ路は終了したと推定され、惰性走行を実行したいという運転者の強い意思が存在するため、惰性走行禁止を解除する。ステップS7では、低μ路終了と運転者の惰性走行実行意思を惰性走行スイッチ29の操作から判別している。
【0043】
また、ステップS6は、エンジン2が停止すれば、たとえ低μ路に駐車中であっても、運転者は慎重に車両1を発進させると推定されるため、惰性走行禁止状態を一旦リセットする意味で設けられている。また、基本的には、車両1がキーオフされた場合は、惰性走行制御を含む種々の制御をリセットした方が運転者のドライバビリティは向上する。このため、ステップS6でキーオフの判別結果を得た場合には惰性走行禁止を強制的に解除することとしている。
【0044】
また、前述したように、ステップS7で惰性走行スイッチ29がオンのままである場合には、運転者に惰性走行を実施する強い意思はないと推定できるため、ステップS7を再び判別する。しかし、惰性走行スイッチ29が一度オフされた後にオンに操作された場合には、運転者に惰性走行を実施する強い意思があると推定できるため、ステップS8に進み、惰性走行禁止を解除する。
【0045】
以上のように、低μ路を精度良く検出し、低μ路走行中における惰性走行を確実に禁止することにより、車両1の燃費、運転者の安全性及びドライバビリティの全てを向上することができる。
【0046】
具体的には、ブレーキシステムによるASR、ABSといった駆動力制御の作動が終了したからといって、必ずしも低μ路が終了したとはいえない場合が想定されるため、駆動力制御が作動終了しても、しばらくは低μ路走行が継続される可能性があることに留意するべきである。したがって、例えば、低μ路では運転者はゆっくりと車両1を発進させるのが一般的であり、アクセルペダル16を60%以上の踏み込み量で一杯に踏んで車両1を発進させた場合、低μ路は終了しているものと想定される。そこで、ステップS5の判別を行い、当該判別結果が偽(No)である場合、低μ路から車両1が抜け出していないと判断し、惰性走行禁止を継続するのが好適である。
【0047】
このように、本発明の惰性走行制御では、ブレーキシステムによるASR、ABSといった駆動力制御が誤作動無く確実に作動するか否かで低μ路を検出した場合に惰性走行を禁止し、その後の運転者の運転操作、即ち低μ路発進モード操作、アクセル操作、キー操作、惰性走行スイッチ操作から惰性走行禁止解除が適切と推定される状況となるまで惰性走行を禁止する。こうして、低μ路における惰性走行を禁止し、運転者の適切な運転操作に基づいて惰性走行の禁止を解除することにより、惰性走行を不用意に禁止するのではなく、惰性走行を可能な範囲で許容しつつ、運転者の意思を極力尊重し、運転者の使い勝手を損なうことなく、安全性を確保しながら、車両1の燃費を向上することができる。
【0048】
以上で本発明に係る車両の走行制御装置の実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
【0049】
上記実施形態では、車両1をトラックとしているが、本発明を適用することのできる車両はこれに限られるものではなく、乗用車にも適用することができる。
【0050】
また、上記実施形態では、エンジン2はディーゼルエンジンであるが、エンジンはこれに限られず、例えばガソリンエンジンでもよい。また、上記実施形態では、変速機は前進12段後進1段の変速段を有したものであるが、変速機の構成はこれに限られず、例えば前進6段、又は前進16段等の変速機であってもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、変速機4のギヤをニュートラル状態とし、且つクラッチ装置3を接続状態とすることで惰性走行を行っているが、惰性走行はエンジンを駆動系から切り離せればよく、これに限られるものではない。例えばクラッチ装置を切断状態とするのみ、又はクラッチ装置3を切断状態とするとともに変速機のギヤをニュートラル状態として惰性走行を行ってもよい。
【0052】
また、上記実施形態の惰性走行開始条件と惰性走行終了条件とは、上述した各ステップの判別や判別順序に限られるものではなく、車両1に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 車両
2 エンジン
3 クラッチ装置
4 変速機
16 アクセルペダル
20 ECU(惰性走行制御手段、駆動力制御手段)
22 アクセルセンサ(アクセル開度検出手段)
29 惰性走行スイッチ
31 低μ路発進モードスイッチ
図1
図2