(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555469
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】燃焼促進器
(51)【国際特許分類】
F23D 14/70 20060101AFI20190729BHJP
F23C 13/06 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
F23D14/70 Z
F23C13/06
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-106242(P2015-106242)
(22)【出願日】2015年5月26日
(65)【公開番号】特開2016-217673(P2016-217673A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】511055809
【氏名又は名称】株式会社イーコンセプト
(73)【特許権者】
【識別番号】511055810
【氏名又は名称】松山 進
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】松山 進
【審査官】
岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−235701(JP,A)
【文献】
実開昭49−090941(JP,U)
【文献】
実開昭59−139735(JP,U)
【文献】
特開昭62−129613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/70
F23C 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方へ向けて伸延した状態で火炎が形成される燃焼空間の外側を囲繞する囲壁に吸気孔を形成するとともに、囲壁の内側又は/及び外側に、燃焼空間の内部で空気を旋回させるための旋回流形成板を設け、前記囲壁は、上方へ向けて漸次狭くなる円錐形状とし、円錐形状の壁面の下部に前記吸気孔を形成したことを特徴とする燃焼促進器。
【請求項2】
前記囲壁は、上端部よりも上方にまで外側の旋回流形成板を設けたことを特徴とする請求項1に記載の燃焼促進器。
【請求項3】
前記囲壁は、燃焼ガスと接触する部分に触媒を担持したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃焼促進器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火炎が形成される燃焼空間の周囲に配置して燃焼空間の内部での火炎の燃焼を促進させるための燃焼促進器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火炎は、燃料と酸素との化学反応により空間内に形成される。そして、燃料と酸素とが継続的に供給されるとともに、燃焼によって生成された燃焼ガスが継続的に排出されることで、空間内の所定位置に火炎が保持される。
【0003】
そのため、火炎は、外気の影響によって燃料や酸素の供給や燃焼ガスの排出が乱されると、不完全燃焼による温度低下や煙の発生が生じたり、燃焼が継続できずに消炎してしまう。
【0004】
そこで、従来においては、火炎が形成される燃焼空間の周囲に筒状のカバーを設けて、火炎が外気の影響を受けずに継続して燃焼できるようにしている(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−235930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来のように燃焼空間の周囲に筒状のカバーを設けただけでは、外気の影響を受けることがなくなるものの、燃焼自体を促進させることはできない。
【0007】
そこで、本発明者は、鋭意研究を重ね、燃焼空間の周囲に設けるカバーの構造を改良することで、燃焼自体を促進させることができるようにした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明では、燃焼促進器において、上方へ向けて伸延した状態で火炎が形成される燃焼空間の外側を囲繞する囲壁に吸気孔を形成するとともに、囲壁の内側又は/及び外側に、燃焼空間の内部で空気を旋回させるための旋回流形成板を設け、前記囲壁は、上方へ向けて漸次狭くなる円錐形状と
し、円錐形状の壁面の下部に前記吸気孔を形成することにした。
【0010】
また、
請求項2に係る本発明では、前記
請求項1に係る本発明において、前記囲壁は、上端部よりも上方にまで外側の旋回流形成板を設けることにした。
【0011】
また、
請求項3に係る本発明では、前記請求項1
又は請求項2に係る本発明において、前記囲壁は、燃焼ガスと接触する部分に触媒を担持することにした。
【発明の効果】
【0012】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0013】
すなわち、本発明では、燃焼促進器において、火炎が形成される燃焼空間の外側を囲繞する囲壁に吸気孔を形成するとともに、囲壁の内側又は/及び外側に、燃焼空間の内部で空気を旋回させるための旋回流形成板を設けることにしているために、囲壁によって内部の燃焼空間の空気の流れが乱されることがなく、しかも、吸気孔を通して外部から流入する空気を燃焼空間の内部で旋回させることができる。そして、旋回する空気の流れ(旋回流)によって火炎の表面に螺旋状の凹凸が形成され、火炎の表面積を増大させることができる。これにより、火炎の燃焼が促進され、燃焼温度を増大させることができるとともに、不完全燃焼による煙の発生を抑制することができる。
【0014】
特に、囲壁を円錐形状とした場合には、燃焼空間の内部の空気を上方へ向けて良好に排出させることができ、火炎の形成を安定させることができる。
【0015】
また、囲壁の上端部よりも上方にまで外側の旋回流形成板を設けた場合には、囲壁の上端部よりも上方に突出して火炎が形成された場合でも、火炎の先端部に向けて空気を旋回させて供給することができ、火炎全体の燃焼を促進させることができる。
【0016】
また、囲壁と燃焼ガスとが接触する部分に触媒を担持した場合には、旋回流の作用で燃焼ガスを触媒に押圧することができ、燃焼ガスに含まれる有害物質や未燃焼物質の分解や除去などを良好に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る燃焼促進器の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1〜
図5に示すように、燃焼促進器1は、火炎2を形成する燃焼装置3の上部に載置して使用される。なお、燃焼促進器1は、火炎2の外方を囲繞するように配置されればよく、燃焼装置3に直接載置して使用される場合に限定されるものではない。また、燃焼装置3は、火炎2を形成することができればよく、キャンドルやガス・灯油等の燃料を用いた燃焼器具などを用いることができる。
【0020】
燃焼促進器1は、火炎2が形成される燃焼空間4(燃料と酸素とによって燃焼反応が生じる空間)の外側を囲繞する囲壁5を有する。なお、囲壁5は、燃焼空間4の外側を囲繞できればよく、燃焼空間4の外側全体を囲繞する場合に限られず、燃焼空間4の外側一部(たとえば、火炎の上下中央部など)を囲繞するものであってもよい。
【0021】
囲壁5は、水平な断面の面積が上方へ向けて漸次狭くなる円錐形状としており、下端部及び上端部に円形状の開口6,7を形成している。
【0022】
また、囲壁5は、円錐形状の壁面の下部に円形状の吸気孔8を円周方向に等しい間隔をあけて複数個(ここでは、8個)設けている。この吸気孔8は、囲壁5の外側と内側とを貫通しており、囲壁5の外側の空気を囲壁5の内側に導入する。なお、囲壁5の内側に導入された空気は、囲壁5の上端部の開口7から排出される。
【0023】
この囲壁5の内側には、燃焼空間4の内部で空気を一定方向(ここでは、反時計回り)へ向けて旋回させるための複数枚(ここでは、8枚)の内側旋回流形成板9を設けている。各内側旋回流形成板9は、平面視において、囲壁5の中心からの放射線(半径方向に伸延する直線)に対して一定方向側(ここでは、時計回り側)に傾斜させた状態で囲壁5の円錐形状の内壁面に取付けられている。このように、全ての内側旋回流形成板9の内側端部及び外側端部をそれぞれ同一円上に配置するとともに、各内側旋回流形成板9の外側端部を内側端部に対して円周方向に向けて一定方向(ここでは、時計回り)にずらすことで、隣設する内側旋回流形成板9の間を外側から内側に向けて通過する空気が平面視で燃焼空間4の内部で一定方向(ここでは、反時計回り)に旋回するようにしている。
【0024】
また、囲壁5の外側には、円環板状の鍔10を形成し、その鍔10の上部に燃焼空間4の内部で空気を一定方向(ここでは、反時計回り)へ向けて旋回させるための複数枚(ここでは、8枚)の外側旋回流形成板11を設けている。各外側旋回流形成板11は、平面視において、囲壁5の中心からの放射線(半径方向に伸延する直線)に対して一定方向側(ここでは、時計回り側)に傾斜させた状態で囲壁5の円錐形状の外壁面よりも外側に取付けられている。このように、全ての外側旋回流形成板11の内側端部及び外側端部をそれぞれ同一円上に配置するとともに、各外側旋回流形成板11の外側端部を内側端部に対して円周方向に向けて一定方向(ここでは、時計回り)にずらすことで、隣設する外側旋回流形成板11の間を外側から内側に向けて通過する空気が平面視で一定方向(ここでは、反時計回り)に旋回しながら燃焼空間4の内部に流入するようにしている。
【0025】
なお、内側旋回流形成板9による旋回方向と外側旋回流形成板11による旋回方向とは同一方向(ここでは、反時計回り)になるようにする。
【0026】
燃焼促進器1は、以上に説明したように構成しており、燃焼促進器1の外方の空気は、外側旋回流形成板11の作用によって平面視で一定方向(ここでは、反時計回り)に旋回しながら吸気孔8を通過して囲壁5の内部に流入する。吸気孔8を通過した空気は、さらに内側旋回流形成板9の作用によって平面視で一定方向(ここでは、反時計回り)に旋回しながら燃焼空間4の内部に流入する。そして、燃焼空間4の内部に流入した空気で燃料を燃焼させることで火炎2が形成される。燃焼ガスは、囲壁5の円錐状の内壁面や内側旋回流形成板9に案内されて上端部の開口7から排出される。そのため、囲壁5の燃焼ガスが通過する表面(燃焼ガスと接触する表面:囲壁5の内壁面や内側旋回流形成板9の表面や開口7の表面など)にパラジウムやロジウムなどの触媒を担持させることで、旋回流の作用で燃焼ガスを触媒に押圧することができ、燃焼ガスに含まれる有害物質や未燃焼物質の分解や除去などを良好に行うことができる。
【0027】
なお、上記燃焼促進器1では、内側旋回流形成板9と外側旋回流形成板11の両方を設けているが、これに限られず、内側旋回流形成板9だけを設けてもよく、また、外側旋回流形成板11だけを設けてもよい。また、上記燃焼促進器1では、囲壁5を円錐形状としているが、これに限られず、円筒形状や矩形ダクト形状などとしてもよい。さらに、上記燃焼促進器1では、外側旋回流形成板11の上端部を囲壁5の上端部(開口7)よりも上方にまで伸延させているが、これに限られず、吸気孔8の周囲に形成されていればよい。
【0028】
以上に説明したように、上記燃焼促進器1は、火炎2が形成される燃焼空間4の外側を囲繞する囲壁5に吸気孔8を形成するとともに、囲壁5の内側又は/及び外側に、燃焼空間4の内部で空気を旋回させるための旋回流形成板(内側旋回流形成板9、外側旋回流形成板11)を設けた構成となっている。
【0029】
そのため、上記構成の燃焼促進器1では、囲壁5によって内部の燃焼空間4の空気の流れが乱されることがなく、しかも、吸気孔8を通して外部から流入する空気を燃焼空間4の内部で旋回させることができる。そして、旋回する空気の流れ(旋回流)によって火炎2の表面に螺旋状の凹凸が形成され、火炎2の表面積を増大させることができる。これにより、火炎2の燃焼が促進され、燃焼温度を増大させることができるとともに、不完全燃焼による煙の発生を抑制することができる。
【0030】
また、上記燃焼促進器1は、囲壁5を円錐形状とした構成となっている。
【0031】
そのため、上記構成の燃焼促進器1では、燃焼空間4の内部の空気を上方へ向けて良好に排出させることができ、火炎2の形成を安定させることができる。これによって、火炎2の燃焼をより一層促進させることができる。
【0032】
また、上記燃焼促進器1は、囲壁5の上端部よりも上方にまで外側旋回流形成板11を設けた構成となっている。
【0033】
そのため、上記構成の燃焼促進器1では、囲壁5の上端部よりも上方に突出して火炎2が形成された場合でも、火炎2の先端部に向けて空気を旋回させて供給することができ、これによっても、火炎2の燃焼をより一層促進させることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 燃焼促進器 2 火炎
3 燃焼装置 4 燃焼空間
5 囲壁 6,7 開口
8 吸気孔 9 内側旋回流形成板
10 鍔 11 外側旋回流形成板