(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555475
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】照明方法および照明システム
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20190729BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20190729BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20190729BHJP
【FI】
F21S2/00 360
F21S2/00 623
F21V5/04 200
F21Y115:10
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-179632(P2015-179632)
(22)【出願日】2015年9月11日
(65)【公開番号】特開2017-54772(P2017-54772A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】戸田 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】植田 慶幸
(72)【発明者】
【氏名】大澤 滋
【審査官】
竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−135810(JP,A)
【文献】
実開昭61−183015(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 5/04
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板およびこの基板に実装された複数の発光素子を有する発光モジュール、前記発光素子からの光の配光を制御する複数のレンズを有するレンズユニット、および前記発光モジュールおよび前記レンズユニットを収容するとともに前記発光モジュールおよび前記レンズユニットに対向する照射開口を設けた灯体を備え、前記レンズは前記灯体の前後方向に長く長手方向に沿って斜め前方へ向けた光軸を有する凸レンズによって構成され、複数の前記レンズのうち左右方向の中央領域に配設される前記レンズの光軸は前方に向けられるとともに左右方向の両側領域に配設される前記レンズほどその光軸が左右側方へ向けて傾斜される照明器具を用い、
長方形の照明領域の長手方向に対して交差する短手方向の両側に設置される支柱上に前記照明器具を配設するとともに、
前記照射開口を前記照明領域の方向に向けて前端側が水平面から10〜25°上昇傾斜するように前記照明器具を配設し、
前記照明器具の前記照射開口から放出される光によって前記照明領域を照明する
ことを特徴とする照明方法。
【請求項2】
長方形の照明領域の長手方向に対して交差する短手方向の両側に設置される支柱と;
基板およびこの基板に実装された複数の発光素子を有する発光モジュール、前記発光素子からの光の配光を制御する複数のレンズを有するレンズユニット、および前記発光モジュールおよび前記レンズユニットを収容するとともに前記発光モジュールおよび前記レンズユニットに対向する照射開口を有する灯体を備え、前記レンズは前記灯体の前後方向に長く長手方向に沿って斜め前方へ向けた光軸を有する凸レンズによって構成され、複数の前記レンズのうち左右方向の中央領域に配設される前記レンズの光軸は前方に向けられるとともに左右方向の両側領域に配設される前記レンズほどその光軸が左右側方へ向けて傾斜され、前記照射開口を前記照明領域の方向に向けて前端側が水平面から10〜25°上昇傾斜するように前記支柱上に配設される照明器具と;
を具備することを特徴とする照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、長方形の照明領域を照明する照明方法および照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長方形の照明領域として例えばテニスコートを照明する場合、複数のテニスコートが設けられた全体領域の周囲に比較的高い支柱を設置し、この支柱上に複数の投光器を設置し、テニスコートから遠いところに設置された投光器から投光することにより、テニスコートにおける均斉度よくしていることが多い。
【0003】
また、テニスコートの長手方向に対して交差する短手方向の両側に比較的低い支柱を設置し、この支柱上に放電ランプを用いた照明器具を設置することもある。この場合、照明器具内に配設した反射板によって放電ランプから放射される光の配光を制御している。
【0004】
そして、照明器具の光源としてランプからLEDなどの発光素子への移行が進んでいるが、照明領域での均斉度の確保や明るさの確保が難しい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−242714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、長方形の照明領域を均斉度よく、かつ効率よく照明できる照明方法および照明システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の照明方法は、基板およびこの基板に実装された
複数の発光素子を有する発光モジュール、発光素子からの光の配光を制御する
複数のレンズを有するレンズユニット、および発光モジュールおよびレンズユニットを収容するとともに発光モジュールおよびレンズユニットに対向する照射開口を設けた灯体を備える照明器具を用いる。
レンズは灯体の前後方向に長く長手方向に沿って斜め前方へ向けた光軸を有する凸レンズによって構成され、複数のレンズのうち左右方向の中央領域に配設されるレンズの光軸は前方に向けられるとともに左右方向の両側領域に配設されるレンズほどその光軸が左右側方へ向けて傾斜される。長方形の照明領域の長手方向に対して交差する短手方向の両側に設置される支柱上に照明器具を配設するとともに、照射開口を照明領域の方向に向けて
前端側が水平面から10〜25°上昇傾斜するように照明器具を配設する。照明器具の照射開口から放出される光によって照明領域を照明する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長方形の照明領域を均斉度よく、かつ効率よく照明することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態を示す照明システムの照明器具の側面図である。
【
図4】同上照明器具に用いるレンズの模式図である。
【
図7】同上照明システムによる照明領域が1つの場合の照度分布図である。
【
図8】比較例として放電ランプを備える照明器具を用いた場合の照明領域が1つの場合の照度分布図である。
【
図9】同上照明システムによる照明領域が3つの場合の照度分布図である。
【
図10】比較例として放電ランプを備える照明器具を用いた場合の照明領域が3つの場合の照度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態を、
図1ないし
図10を参照して説明する。
【0011】
図7または
図9に示すように、照明システム10は、例えばテニスコートなどの長方形の照明領域11を照明するものである。
【0012】
照明システム10は、照明領域11の長手方向に対して交差する短手方向の両側に立設される支柱12(
図1および
図2参照)、およびこの支柱12上に設置される照明器具13を備えている。
図7に示すように、照明領域11が1つの場合には、照明領域11の短手方向の両側に支柱12および照明器具13がそれぞれ3つずつ設置される。
図9に示すように、3つの照明領域11が並ぶ場合には、両側の照明領域11の短手方向の外側にそれぞれ3つずつ支柱12および照明器具13が設置され、隣接する照明領域11間の中央に1つの支柱12および4つの照明器具13がそれぞれ設置されるとともに隣接する照明領域11間の長手方向の両端に支柱12および照明器具13がそれぞれ1つずつ設置される。
【0013】
図1および
図2に、支柱12および照明器具13を示す。
【0014】
支柱12は、円筒状に形成され、照明領域11から外側で地面に立設されている。地面からの支柱12の高さ(照明器具13の設置高さ)は、比較的低い4.5〜6m程度とされている。支柱12の上端からは照明領域11へ向けてアーム16が突設され、このアーム16の先端に照明器具13を取り付けるための取付板17が設けられている。なお、支柱12の設置場所に応じて、支柱12からは1つまたは4つのアーム16が突設されている。
【0015】
また、2つの照明器具13が並び、これら2つの照明器具13が連結部20を介して一体に連結されている。連結部20によって2つの照明器具13がアーム16の取付板17に取り付けられている。灯体21は前後方向に長く、灯体21の後部が連結部20に取り付けられている。なお、1つのアーム16に取り付けられる照明器具13は、1つでもよし、3つ以上を並設してもよい。
【0016】
図3に示すように、照明器具13は、灯体21を備えるとともに、この灯体21内に配設された複数の発光モジュール22、複数のレンズユニット23および電源回路24を備えている。
【0017】
灯体21は、筐体26、およびこの筐体26の下面を覆うカバー体27を備えている。筐体26は、金属製で、下面側が開口されている。筐体26内の前側に発光モジュール取付面28が形成され、筐体26内の後側に電源回路24を収容する収容部29が形成されている。発光モジュール取付面28の上側には複数の放熱フィン30が上方に突設されている。カバー体27は、灯体21の照射開口31を形成する枠体32、および照射開口31を閉塞する透光板33を備えている。
【0018】
発光モジュール22は、基板35、およびこの基板35に実装された複数の発光素子36を備えている。発光素子36は、例えばLEDである。3つの発光モジュール22の基板35が、発光モジュール取付面28に前後方向に並んで配設されている。そして、灯体21内に収容された発光モジュール22は、灯体21の照射開口31に平行に対向されている。
【0019】
複数のレンズユニット23は、発光モジュール22毎に配設されている。レンズユニット23には、発光素子36からの光の配光をそれぞれ制御する複数のレンズ38が形成されている。
図4にレンズ38の模式図を示す。模式図では、レンズ38を下側から見た図であって、光出射側から見た図である。レンズ38は、灯体21の前後方向に長い凸レンズによって構成され、凸レンズの長手方向に沿って斜め前方へ向けた光軸を有している。複数のレンズ38のうち、左右方向の中央領域に配設されるレンズ38の光軸は前方に向けられ、左右方向の両側領域に配設されるレンズ38ほどその光軸が左右側方へ向けて傾斜されている。すなわち、レンズユニット23は、複数のレンズ38によって、前方へ向けた配光を有するとともに左右方向へ向けて広がる配光を有する。そして、
図5および
図6にレンズ38の配光特性図を示す。
図5および
図6中のaは前後方向の配光曲線、bは左右方向の配光曲線である。配光曲線aに示すように、レンズ38から斜め前方への向かう光の強度が高い配光が得られるとともに、配光曲線bに示すように、レンズ38から左右方向に広がる配光が得られる。そして、灯体21内に収容されたレンズユニット23は、灯体21の照射開口31に平行に対向されている。
【0020】
電源回路24は、交流電源を直流電源に変換して発光モジュール22に供給する。
【0021】
そして、支柱12に取り付けられた照明器具13は、照射開口31を照明領域11の方向に向けて、前端側が上昇するように傾斜されており、水平面(照射領域11の面または地面)からの角度αは10〜25°の範囲とされている。照明器具13の照射開口31から透光板33を透過して放出される光によって照明領域11を照明する。
【0022】
図7に示すように、照明領域11が1つの場合、照明領域11の短手方向の両側に支柱12および照明器具13がそれぞれ3つずつ設置され、各照明器具13から放出される光が照明領域11を含む地面に照射される。
【0023】
そして、
図7には、照明システム10による照明領域11が1つの場合の照度分布を示している。また、
図8には、比較例として、放電ランプを備える照明器具13を用いた場合の照明領域11が1つの場合の照度分布を示している。
図7および
図8において、照明領域11の中央が例えば300lx以上の明るさを有する最も明るい領域A1であり、領域A1から領域A2(300lx未満、200lx以上)、領域A3(200lx未満、100lx以上)の順に暗くなる。
【0024】
図7および
図8の照度分布から分かるように、
図7の本実施形態では、
図8の比較例に対して、照明領域11の明るい領域A1の範囲が広く、照明領域11の均斉度がよくなった。
【0025】
また、
図9に示すように、3つの照明領域11が並ぶ場合、両側の照明領域11の短手方向の外側にそれぞれ3つずつ支柱12および照明器具13が設置され、隣接する照明領域11間の中央に1つの支柱12および4つの照明器具13がそれぞれ設置されるとともに隣接する照明領域11間の長手方向の両端に支柱12および照明器具13がそれぞれ1つずつ設置される。
【0026】
そして、
図9には、照明システム10による照明領域11が3つの場合の照度分布を示している。また、
図10には、比較例として、放電ランプを備える照明器具13を用いた場合の照明領域11が3つの場合の照度分布を示している。
図9および
図10において、照明領域11の中央が例えば500lx以上の明るさを有する最も明るい領域A0であり、領域A0から領域A1(500lx未満、300lx以上)、領域A2、領域A3の順に暗くなる。
【0027】
図9および
図10の照度分布から分かるように、
図9の本実施形態では、
図10の比較例に対して、照明領域11の明るい領域A1の範囲が広く、照明領域11の均斉度がよくなった。
【0028】
図7および
図9のように、照明領域11の明るい領域A1の範囲が広く、照明領域11の均斉度がよくなったのは、照明領域11の短手方向の両側に支柱12および照明器具13を設置するともに、照射開口31を照明領域11の方向に向けて水平面(照射領域11の面または地面)から10〜25°上昇傾斜するように照明器具13を設置していることによるもので、照明領域11とは反対の外側方へ光の漏れが少なくなり、照明領域11に対して効率よく光を照射することができ、照明領域11の明るい領域A0,A1の範囲が広く、照明領域11の均斉度をよくできる。
【0029】
照明器具13の照射開口31が傾斜する角度αが10°よりも小さいと、照明器具13の後方への漏れ光が多くなり、照明領域11へ光を照射する効率が低下するともに均斉度が低下し、また、25°よりも大きいと、照明領域11における照明器具13に近い場所での明るさが低下するとともに均斉度が低下する。そのため、照射開口31を照明領域11の方向に向けて水平面(照射領域11の面または地面)から10〜25°上昇傾斜するように照明器具13を設置することが好ましい。
【0030】
さらに、照明器具13のレンズユニット23は、複数のレンズ38によって、前方へ向けた配光を有するとともに左右方向へ向けて広がる配光を有するため、照明領域11の均斉度をさらによくできる。
【0031】
しかも、照明領域11に対して効率よく光を照射することができることで、照明器具13の光出力を抑えて消費電力を低くすることが可能となり、消費電力を低くしても照明領域11の均斉度を確保することができる。
【0032】
また、複数の照明器具13を並設して支柱12に取り付けることにより、照明領域11の所望の均斉度および明るさを得ることができる。
【0033】
なお、長方形の照明領域11は、テニスコートに限らず、例えばフットサルコートなどでもよい。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
10 照明システム
11 照明領域
12 支柱
13 照明器具
21 灯体
22 発光モジュール
23 レンズユニット
31 照射開口
35 基板
36 発光素子
38 レンズ