(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記滅菌槽内で被滅菌物を滅菌中、前記判定手段は、前記通液部に対する液体の出口温度と入口温度との温度差が設定値未満である場合、前記滅菌槽内へのエアリークがあると判定する
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のエアリーク検知装置。
前記通液部に対する液体の入口温度、出口温度および流量の内、出口温度の他、入口温度を設定温度に維持しない場合には入口温度も、また、流量を設定流量に維持しない場合には流量も、前記滅菌工程中、所定時間ごとに運転データ記憶手段に保存し、
この運転データ記憶手段に保存されたデータを、所定機器に出力可能とされた
ことを特徴とする請求項7に記載の蒸気滅菌装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術のように運転前にリークテストを行うだけでは、運転中に発生したエアリークを検知することができない。たとえば、蒸気滅菌装置は、運転開始後、滅菌槽内の減圧を伴う前処理工程において、滅菌槽内からの空気排除が図られるが、この前処理工程において、滅菌槽内を減圧した際に、外部から滅菌槽内へ空気が流入するおそれがある。また、滅菌槽と扉との隙間の封止を行うために、パッキンを加圧空気で扉へ押し付ける場合があるが(たとえば上記特許文献1)、加圧空気の圧力は滅菌槽内の圧力よりも高いので、パッキン溝から漏れた加圧空気が滅菌槽内へ流入するおそれもある。そして、従来技術では、このような運転中のエアリークを検知することができない。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、運転中に生じたエアリークを検知可能なエアリーク検知装置とこれを備えた蒸気滅菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、滅菌槽内から空気排除後に滅菌槽内に蒸気供給して滅菌槽内の被滅菌物を滅菌する蒸気滅菌装置に用いられ、前記滅菌槽外に設けられ、前記滅菌槽内と連通する中空部を有すると共に、その中空部内の流体と熱交換する液体の通液部を有する熱交換器と、前記通液部に対する液体の入口温度、出口温度および流量に基づき、前記滅菌槽内へのエアリークの有無を判定する判定手段とを備えることを特徴とするエアリーク検知装置である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、エアリーク検知装置の熱交換器は、中空部が滅菌槽内と連通すると共に、通液部には液体が通される。従って、熱交換器において、滅菌槽内からの蒸気の凝縮熱伝達により、通液部の液体は加温されて昇温される。ここで、仮に滅菌槽内へのエアリークが生じた場合、熱交換器の中空部にも蒸気に同伴して空気が導入され、蒸気は凝縮するが空気は凝縮しないことになる。従って、エアリークが生じると、熱交換器の通液部に通される液体への熱伝達量が低下し、通液部の液体の昇温が妨げられる。これを利用して、通液部に対する液体の入口温度、出口温度および流量に基づき、滅菌槽内へのエアリークの有無を判定することができる。なお、エアリーク検知装置が滅菌槽外に設けられるので、滅菌槽内における被滅菌物の収容空間を狭めるおそれはないし、被滅菌物の出し入れを邪魔するおそれもない。また、エアリーク検知装置が滅菌槽外に設けられるので、滅菌蒸気により外部から熱を受けるおそれがなく、エアリークの有無を正確に知ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記通液部には、液体が設定流量で通され、前記判定手段は、前記通液部に対する液体の入口温度および出口温度に基づき、前記滅菌槽内へのエアリークの有無を判定することを特徴とする請求項1に記載のエアリーク検知装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、通液部に液体を設定流量で通すことで、通液部に対する液体の入口温度および出口温度に基づき、滅菌槽内へのエアリークの有無を判定することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記通液部には、液体が設定流量で通されると共に、その液体は、前記通液部の入口温度を設定温度に維持され、前記判定手段は、前記通液部に対する液体の出口温度に基づき、前記滅菌槽内へのエアリークの有無を判定することを特徴とする請求項1に記載のエアリーク検知装置である。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、通液部に液体を設定流量で通すと共に、通液部に対する液体の入口温度を設定温度に維持することで、通液部に対する液体の出口温度に基づき、滅菌槽内へのエアリークの有無を判定することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記滅菌槽内で被滅菌物を滅菌中、前記判定手段は、前記通液部に対する液体の出口温度と入口温度との温度差が設定値未満である場合、前記滅菌槽内へのエアリークがあると判定することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のエアリーク検知装置である。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、通液部に液体を設定流量で通しつつ、滅菌槽内で被滅菌物を滅菌中、通液部に対する液体の出口温度と入口温度との温度差が設定値未満であるか否かにより、容易に確実に、滅菌槽内へのエアリークの有無を判定することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記熱交換器は、軸線を上下方向へ沿って配置された内管と、これを取り囲むよう設けられた外管とを備え、前記内管は、下端部が前記滅菌槽に接続されて、内管の中空穴が前記滅菌槽内と連通される一方、上端部が閉塞されており、前記内管と前記外管との間の円筒状空間に、下方から上方へ向けて、前記液体としての水が通されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアリーク検知装置である。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、内管と外管との二重管を用いて、熱交換器を容易に構成することができる。また、内管は、下端部が滅菌槽に接続されるから、内管への蒸気導入と、内管からの凝縮水排出とが円滑になされる。また、内管は、上端部が閉塞されているので、エアリークが生じた場合の空気を内管内に滞留させて、通液部の液体の昇温を防止することができる。さらに、内管と外管との間の円筒状空間には、下方から上方へ向けて液体が通されるので、当該円筒状空間からの空気抜きを図ることができ、正確にエアリークの有無を判定することができる。その他、通液部に通す液体として水を用いることで、容易に安定して調達できると共に、万一の熱交換器の破損にも安全である。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記内管の中空穴には、上方から下方へ向けて、圧縮空気を供給可能とされることを特徴とする請求項5に記載のエアリーク検知装置である。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、内管の中空穴に圧縮空気を通すことで、熱交換器からの凝縮水の排出と、熱交換器の冷却とを図ることができる。その際、内管は、上下方向へ沿って配置され、上方から下方へ圧縮空気が通されるので、内管からの凝縮水の排出を容易に確実に行うことができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載のエアリーク検知装置を備えた蒸気滅菌装置であって、被滅菌物が収容されると共に前記エアリーク検知装置が接続される滅菌槽と、この滅菌槽内の気体を外部へ吸引排出して前記滅菌槽内を減圧する減圧手段と、減圧された前記滅菌槽内へ外気を導入して前記滅菌槽内を復圧する復圧手段と、前記滅菌槽内へ蒸気を供給する給蒸手段と、前記滅菌槽内から蒸気の凝縮水を排出するドレン排出手段と、大気圧との差圧により前記滅菌槽内の気体を外部へ排出する排気手段と、前記滅菌槽内の圧力を検出する圧力センサと、前記滅菌槽内の温度を検出する温度センサと、これらセンサの検出信号に基づき前記各手段を制御して、前記滅菌槽内の空気を排除する前処理工程、前記滅菌槽内の被滅菌物を蒸気で滅菌する滅菌工程、前記滅菌槽内から蒸気を排出する排気工程、および前記滅菌槽内を減圧して被滅菌物を乾燥する乾燥工程を順次に実行する制御手段とを備え、前記滅菌工程において、前記エアリーク検知装置の前記熱交換器に液体を通して、前記判定手段により前記滅菌槽内へのエアリークの有無を判定することを特徴とする蒸気滅菌装置である。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、上記各請求項に記載の発明の作用効果を奏する蒸気滅菌装置を実現することができる。特に、滅菌工程において、エアリーク検知装置の熱交換器に液体を通して、滅菌槽内へのエアリークの有無を判定することができる。
【0021】
さらに、請求項8に記載の発明は、前記通液部に対する液体の入口温度、出口温度および流量の内、出口温度の他、入口温度を設定温度に維持しない場合には入口温度も、また、流量を設定流量に維持しない場合には流量も、前記滅菌工程中、所定時間ごとに運転データ記憶手段に保存し、この運転データ記憶手段に保存されたデータを、所定機器に出力可能とされたことを特徴とする請求項7に記載の蒸気滅菌装置である。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、通液部に対する液体の出口温度の他、所望により入口温度および流量を、滅菌工程中、所定時間ごとに運転データ記憶手段に保存しておき、必要に応じて所定機器に出力可能であるから、滅菌管理を容易に確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のエアリーク検知装置とこれを備えた蒸気滅菌装置によれば、運転中に生じたエアリークを検知可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例のエアリーク検知装置1とこれを備えた蒸気滅菌装置2を示す概略図であり、一部を断面にして示している。以下、まずは、蒸気滅菌装置2について説明し、その後、エアリーク検知装置1について説明する。
【0026】
本実施例の蒸気滅菌装置2は、被滅菌物(図示省略)が収容されると共にエアリーク検知装置1が接続される滅菌槽3と、この滅菌槽3内の気体を外部へ吸引排出して滅菌槽3内を減圧する減圧手段4と、減圧された滅菌槽3内へ外気を導入して滅菌槽3内を復圧する復圧手段5と、滅菌槽3内へ蒸気を供給する給蒸手段6と、滅菌槽3内から蒸気の凝縮水を排出するドレン排出手段7と、大気圧との差圧により滅菌槽3内の気体を外部へ排出する排気手段8と、これら各手段4〜8を制御する第一制御手段(図示省略)とを備える。
【0027】
被滅菌物は、特に問わないが、典型的には医療器具である。被滅菌物は、所望により、滅菌バッグ、不織布または滅菌コンテナなどに収容されていてもよい。被滅菌物は、滅菌槽3内の棚に載せられるか、台車に載せられて台車ごと滅菌槽3内に収容される。
【0028】
滅菌槽3は、内部空間の減圧および加圧に耐える中空容器であり、典型的には略矩形の箱状に形成されている。本実施例の滅菌槽3は、被滅菌物を出し入れするための扉(図示省略)を正面(
図1の紙面に対し垂直手前側)に備える。但し、正面および背面にそれぞれ扉を備え、一方の扉を、滅菌槽3内に被滅菌物を入れるための搬入扉とし、他方の扉を、滅菌後に滅菌槽3外に被滅菌物を取り出すための搬出扉としてもよい。いずれにしても、扉を閉じることで、滅菌槽3の開口部を気密に閉じることができる。つまり、滅菌槽3と扉との隙間は、パッキン(図示省略)で封止される。この際、滅菌槽3の開口部に沿って設けた環状パッキンを、加圧空気で扉へ押し付けて、両者の隙間を封止してもよい。
【0029】
滅菌槽3内を外側から温めるために、本実施例では、滅菌槽3の外壁に蒸気ジャケット9が設けられる。具体的には、蒸気滅菌装置2は、内缶10と外缶11とを備え、内缶10にて滅菌槽3が構成され、内缶10と外缶11との隙間が蒸気ジャケット9とされる。本実施例では、蒸気ジャケット9は、滅菌槽3の上下左右の各壁体に連続的に設けられる。蒸気ジャケット9には、ジャケット給蒸路(図示省略)を介して蒸気が供給され、その蒸気の凝縮水は、ジャケットドレン排出路(図示省略)を介して外部へ排出される。蒸気ジャケット9内を所定圧力に維持するように、蒸気ジャケット9内への蒸気供給を制御することで、滅菌槽3内を外側から所定温度で加熱することができる。
【0030】
減圧手段4は、真空排気路12を介して、滅菌槽3内の気体を外部へ吸引排出する。滅菌槽3内からの真空排気路12には、真空弁13、水封式の真空ポンプ14および逆止弁15が順に設けられる。さらに、真空排気路12には、真空弁13と真空ポンプ14との間に、蒸気凝縮用の熱交換器が設けられてもよい。真空弁13を開くと共に真空ポンプ14を作動させることで、滅菌槽3内の気体を外部へ吸引排出して、滅菌槽3内を減圧することができる。
【0031】
復圧手段5は、減圧下の滅菌槽3内に、給気路16を介して外気を導入する。滅菌槽3内への給気路16には、エアフィルタ17、給気弁18および逆止弁19が順に設けられる。滅菌槽3内が減圧された状態で給気弁18を開くと、差圧により外気を滅菌槽3内へ導入して、滅菌槽3内を復圧することができる。
【0032】
給蒸手段6は、給蒸路20を介して、滅菌槽3内へ蒸気(飽和蒸気)を供給する。給蒸路20には、給蒸弁21が設けられている。給蒸弁21を開くことで、蒸気供給源(図示省略)からの蒸気を滅菌槽3内へ供給することができる。給蒸弁21の開閉または開度を調整して、滅菌槽3内への蒸気供給の有無または量を変更することができる。
【0033】
ドレン排出手段7は、ドレン排出路22を介して、滅菌槽3内から蒸気の凝縮水を排出する。滅菌槽3内からのドレン排出路22には、スチームトラップ23および逆止弁24が順に設けられる。給蒸手段6により滅菌槽3内へ蒸気を供給中、蒸気の凝縮水はドレン排出手段7により滅菌槽3外へ排出される。
【0034】
排気手段8は、加圧下の滅菌槽3内から、排気路25を介して気体を導出する。滅菌槽3内からの排気路25には、排気弁26および逆止弁27が順に設けられる。滅菌槽3内が加圧された状態で排気弁26を開くと、差圧により滅菌槽3内の気体を外部へ導出して、滅菌槽3内の圧力を下げることができる。なお、図示例では、排気路25は、上流側(滅菌槽3側)において、ドレン排出路22と共通管路とされている。
【0035】
滅菌槽3には、滅菌槽3内の圧力を検出する圧力センサ28と、滅菌槽3内の温度を検出する温度センサ29とが設けられる。圧力センサ28の設置位置は、特に問わないが、たとえば図示例のように、滅菌槽3の上方側部に設けられる。一方、温度センサ29は、滅菌に関する各種の規格に沿って、所定の位置に設けられる。図示例では、前記共通管路(ドレン排出路22と排気路25との共通管路)の内、滅菌槽3からの出口部に設けられる。
【0036】
第一制御手段は、前記各センサ28,29の検出信号や経過時間などに基づき、前記各手段4〜8を制御する第一制御器(図示省略)である。具体的には、真空弁13、真空ポンプ14、給気弁18、給蒸弁21、排気弁26、圧力センサ28および温度センサ29などは、第一制御器に接続される。そして、第一制御器は、後述するように、所定の手順(プログラム)に従い、滅菌槽3内の被滅菌物の滅菌を図る。
【0037】
さらに、本実施例では、蒸気滅菌装置2は、タッチパネル(図示省略)の他、所望により操作ボタン(図示省略)などを備え、これらも第一制御器に接続される。タッチパネルは、ディスプレイの表面に入力パネルを配置して構成され、ディスプレイ上に各種表示を行うと共に、ディスプレイ上の表示ボタンが押されると入力パネルでそれを検知し、適宜画面表示を変えながら、各種の設定または操作を可能とする。タッチパネルの表示画面のデータや、蒸気滅菌装置2の動作用プログラムなどは、情報記憶部(図示省略)に記憶されている。この情報記憶部は、後述する運転データを記憶するための運転データ記憶部(運転データ記憶手段)として用いることもできる。
【0038】
蒸気滅菌装置2は、その運転内容を特に問わないが、典型的には、予熱工程、前処理工程、滅菌工程、排気工程および乾燥工程を順次に実行する。以下、各工程について説明する。なお、初期状態において、給気弁18および排気弁26は開かれる一方、これ以外の各弁13,21は閉じられており、真空ポンプ14は停止している。予熱工程の前または後には、滅菌槽3内に被滅菌物が収容され、滅菌槽3の扉は気密に閉じられる。その際、給気弁18および排気弁26も閉じられる。
【0039】
予熱工程では、滅菌槽3内を予熱する。具体的には、蒸気ジャケット9内に蒸気を供給し、蒸気ジャケット9内を所定圧力に維持することで、滅菌槽3内を所定温度に加熱して維持する。予熱工程の開始から所定時間経過後、前処理工程を開始するが、予熱工程の内容は、以降の各工程においても継続して実施される。
【0040】
前処理工程では、滅菌槽3内の空気を排除する。具体的には、減圧手段4により滅菌槽3内を減圧するが、その際、給蒸手段6による給蒸を伴ってもよい。また、減圧手段4により滅菌槽3内を一旦減圧後、給蒸手段6による給蒸と減圧手段4による減圧とを繰り返してもよいし、給蒸手段6による給蒸で大気圧を超える圧力まで滅菌槽3内を加圧する場合には、給蒸手段6による給蒸と排気手段8による排気とを繰り返してもよい。いずれにしても、滅菌槽3内からの空気排除を図った後、最終的には、給蒸手段6による給蒸で、滅菌槽3内を滅菌圧力まで昇圧する。そして、温度センサ29の検出温度が滅菌温度になると、次工程へ移行する。
【0041】
滅菌工程では、滅菌槽3内の被滅菌物を蒸気で滅菌する。具体的には、温度センサ29の検出温度が滅菌温度(典型的には135℃)を維持するように、給蒸手段6を制御して、滅菌時間保持することで、滅菌槽3内の被滅菌物を滅菌する。その後、給蒸手段6による給蒸を停止して、次工程へ移行する。
【0042】
排気工程では、加圧下の滅菌槽3内から蒸気を排出して、滅菌槽3内の圧力を大気圧近くまで下げる。具体的には、排気弁26を開けて、滅菌槽3外へ蒸気を導出した後、排気弁26を閉じる。
【0043】
乾燥工程では、滅菌槽3内の被滅菌物を乾燥させる。具体的には、減圧手段4により滅菌槽3内を乾燥圧力まで減圧して乾燥時間保持することで、滅菌槽3内の被滅菌物を真空乾燥させる。但し、乾燥工程では、減圧手段4による乾燥圧力までの減圧と、復圧手段5による大気圧近くまでの復圧とを、繰り返してもよい。被滅菌物の乾燥後には、減圧手段4を停止する一方、復圧手段5により滅菌槽3内を大気圧まで復圧して、一連の運転を終了する。
【0044】
次に、本実施例のエアリーク検知装置1について説明する。本実施例のエアリーク検知装置1は、滅菌槽3に接続される熱交換器30と、この熱交換器30に対する給排水手段31と、この給排水手段31を制御すると共に滅菌槽3内へのエアリークの有無を判定する第二制御手段(図示省略)とを備える。
【0045】
熱交換器30は、滅菌槽3外に設けられる。熱交換器30は、連通管32を介して滅菌槽3内と連通する中空部33を有すると共に、その中空部33内の流体と熱交換する液体の通液部34を有する。通液部34に通される液体は、特に問わないが、典型的には水(常温水)である。以下、通液部34に通される液体は、水であるとして説明するが、その他の液体の場合も同様である。
【0046】
熱交換器30は、中空部33内の流体と通液部34内の通水とを混ぜることなく熱交換する。熱交換器30は、その構成を特に問わないが、本実施例では金属製の二重管から構成される。具体的には、熱交換器30は、軸線を上下方向へ沿って配置された内管35と、これを取り囲むよう設けられた外管36とを備える。外管36内には、その下部開口から上方へ向けて内管35が挿入されている。外管36の上端部において、内管35と外管36の各上部開口が上端壁37で閉じられる一方、外管36の下端部において、内管35と外管36との隙間が下端壁38で閉じられる。なお、好ましくは、内管35および外管36は、断面円形状とされ、内管35は、外管36の軸線に沿って配置される。また、図示例では、内管35の上部開口と外管36の上部開口とは、それぞれ別個の上端壁37で閉じられているが、内管35の上端面と外管36の上端面とを同一高さに配置して、内管35の上部開口と外管36の上部開口とは、共通の上端壁37で閉じられてもよい。いずれにしても、本実施例では、内管35と外管36の各上部開口を閉じると共に、外管36の下端部において内管35との隙間を閉じることで、内管35と外管36との隙間としての円筒状空間が、ジャケット状の通液部34となる。
【0047】
内管35の下端部は、連通管32を介して、滅菌槽3と接続される。これにより、内管35内と滅菌槽3内とが連通される。図示例では、内管35の下端部は、外管36よりも下方へ延出しており、その延出部において連通管32と接続される。連通管32は、たとえば、内管35と同一の内外径を有する管から構成される。その場合、連通管32と内管35とを連続的に、言い換えれば一つの部材として構成することもできる。但し、連通管32の内外径を、内管35の内外径と異ならせてもよい。なお、熱交換器30および連通管32は、断熱材で覆われるのが好ましい。また、図示例では、熱交換器30には、壁体への取付用フランジ39が設けられている。
【0048】
外管36は、その内径が内管35の外径よりも大きな円管である。外管36の周側壁の上下両端部には、外管36の径方向外側へ延出して、円筒状の口部36a,36bが設けられている。この口部36a,36bは、通液部34に対する水の出入口であり、給排水手段31に接続される。
【0049】
給排水手段31は、熱交換器30の通液部34に通水する。前述したとおり、本実施例では、熱交換器30の通液部34は、内管35と外管36との間の円筒状空間から構成されるが、この円筒状空間には、下方から上方へ向けて通水されるのが好ましい。そのため、本実施例では、下側の口部36aが給水口とされ、上側の口部36bが排水口とされる。
【0050】
給排水手段31について具体的に説明すると、通液部34には、給水路40と排水路41とが接続される。本実施例では、前述したとおり、外管36の周側壁の上下両端部には、外管36の径方向外側へ延出して、円筒状の口部36a,36bが設けられている。そして、下側の口部36aに給水路40が接続される一方、上側の口部36bに排水路41が接続される。この際、図示例では、各接続部にT字管42(42X,42Y)が用いられている。T字管42は、左右方向へ延出する直管状(短管状)の主管部42aと、その主管部42aの長手方向中央部から径方向外側へ延出する枝管部42bとが一体形成されている。
【0051】
そして、下側の口部36aと給水路40とは、次のようにして接続される。すなわち、下側のT字管42Xは、主管部42aを左右方向へ沿って配置され、一方の開口部が下側の口部36aに接続され、他方の開口部には、後述する入口温度センサ43が設けられつつ閉塞される。そして、枝管部42bを下方へ向けて配置され、その下部開口に給水路40が接続される。
【0052】
一方、上側の口部36bと排水路41とは、次のようにして接続される。すなわち、上側のT字管42Yは、主管部42aを左右方向へ沿って配置され、一方の開口部が上側の口部36bに接続され、他方の開口部には、後述する出口温度センサ44が設けられつつ閉塞される。そして、枝管部42bを上方へ向けて配置され、その上部開口に排水路41が接続される。
【0053】
このような構成により、熱交換器30の通液部34には、下方から上方へ向けて、水が通されることになる。従って、熱交換器30の通液部34からの空気抜きを自然に図ることができ、通液部34の通水と中空部33内の流体との熱交換を安定して図ることができる。
【0054】
給水路40には、熱交換器30へ向けて、ストレーナ45、給水弁46、減圧弁47および流量調整用ノズル48が順に設けられる。ストレーナ45は水中の夾雑物を捕捉し、給水弁46は電磁弁から構成され、減圧弁47は出口側圧力を所定に維持する。そして、流量調整用ノズル48により、給水弁46の開放時、設定流量で熱交換器30に通水することができる。
【0055】
ところで、本実施例では、給水弁46を開くことで、給水源の圧力により、熱交換器30に通水することができる。但し、給水源の圧力によっては、給水弁46に代えてまたはこれに加えて、給水路40に給水ポンプを設置してもよい。その場合、以下の説明において、給水弁46の開放時、給水ポンプを作動させればよい。なお、給水ポンプを定流量ポンプから構成する場合、減圧弁47および流量調整用ノズル48の設置を省略することができる。
【0056】
排水路41は、前述したとおり、上側のT字管42Yの枝管部42bに接続される。その際、上方へ向けた枝管部42bの上部に接続され、図示例では、エルボ管などの適宜の配管を介して、最終的には下方の排水ピットなどへ向けて配管される。なお、排水路41には、所望により排水弁を設けてもよい。その場合、排水弁は、給水弁46と連動して開閉を制御される。
【0057】
通液部34に対する水の入口温度および出口温度を監視可能に、温度センサ43,44が設けられる。具体的には、通液部34への入口部には、入口温度センサ43が設けられる一方、通液部34からの出口部には、出口温度センサ44が設けられる。図示例では、前述したとおり、下側のT字管42Xの主管部42aは、一方の開口部が熱交換器30の口部36aに接続され、他方の開口部に入口温度センサ43が差し込まれて設けられる。また、上側のT字管42Yの主管部42aは、一方の開口部が熱交換器30の口部36bに接続され、他方の開口部に出口温度センサ44が差し込まれて設けられる。その他、給水路40または排水路41には、所望により、通水流量を監視する流量センサ(図示省略)を設けてもよい。特に、流量調整用ノズル48がないなどにより、設定流量で通水できない場合には、流量センサが設けられる。
【0058】
第二制御手段は、前記各センサ43,44の検出信号や経過時間などに基づき、給排水手段31などを制御する第二制御器(図示省略)である。具体的には、給水弁46の他、入口温度センサ43および出口温度センサ44などは、第二制御器に接続される。そして、第二制御器は、以下に述べるようにして、滅菌槽3内へのエアリークの有無を判定する判定手段としても機能する。
【0059】
第二制御器には、第一制御器と同様、所望により、タッチパネル(図示省略)、操作ボタン(図示省略)、および情報記憶部(図示省略)が接続される。そして、この情報記憶部は、後述する運転データを記憶するための運転データ記憶部(運転データ記憶手段)としても機能する。
【0060】
第二制御器は、蒸気滅菌装置2にて実行中の工程を把握可能に、第一制御器にも接続される。但し、これに代えて、第二制御器は、第一制御器と共通化してもよい。つまり、蒸気滅菌装置2の運転を制御するための第一制御器に、滅菌槽3内へのエアリークの有無を判定する判定機能を持たせてもよい。以下、第一制御器と第二制御器とが共通の一つの制御器として構成された例について説明するが、第一制御器と第二制御器とに分けて構成されてもよい。その場合、第一制御器が、前述したように蒸気滅菌装置2の運転を制御し、第二制御器が、以下に述べる各処理を実行する。第一制御器と第二制御器とを分けて構成する場合、既存または既設の蒸気滅菌装置2に、本実施例のエアリーク検知装置1を後付けで設置することも容易となる。
【0061】
以下、本実施例のエアリーク検知装置1の使用方法について説明する。
前述したように、蒸気滅菌装置2では、予熱工程、前処理工程、滅菌工程、排気工程および乾燥工程が順次に実行される。前処理工程では、滅菌槽3内からの空気排除がなされるが、これに伴い、滅菌槽3内と連通する熱交換器30の内管35内(言い換えれば中空部33内)からも空気排除がなされる。その後の滅菌工程では、滅菌槽3内へ蒸気が導入されるが、これに伴い、熱交換器30の内管35内へも蒸気が導入される。
【0062】
前記各工程の内、少なくとも滅菌工程中、給排水手段31により熱交換器30の通液部34に通水する。たとえば、滅菌工程の開始に伴い、給水弁46を開けて、熱交換器30の通液部34に通水する。これにより、中空部33内の流体と通液部34の通水とが熱交換され、通液部34の出口側水温は、入口側水温よりも高くなる。つまり、熱交換器30において、滅菌槽3内からの蒸気の凝縮熱伝達により、通液部34の通水は加温されて昇温される。ここで、仮に滅菌槽3内へのエアリークが生じた場合(たとえば前処理工程において滅菌槽3内を減圧した際に外部から滅菌槽3内へ空気が流入したり、滅菌槽3と扉との隙間を封止するパッキンを加圧するための加圧空気が滅菌槽3内へ流入したりした場合)、熱交換器30の中空部33にも蒸気に同伴して空気が導入され、蒸気は凝縮するが空気はそのまま滞留することになる。従って、エアリークが生じると、熱交換器30の通液部34への通水への熱伝達量が低下し、通液部34の通水の昇温が妨げられる。これを利用して、通液部34に対する通水の入口温度、出口温度および流量に基づき、滅菌槽3内へのエアリークの有無を判定することができる。
【0063】
このように、滅菌工程中(但し滅菌工程開始から設定時間経過後の滅菌工程中などとしてもよい)、通液部34に対する水の入口温度、出口温度および流量に基づき、滅菌槽3内へのエアリークの有無を判定することができる。具体的には、制御器は、入口温度センサ43、出口温度センサ44および流量センサの検出信号に基づき、熱交換器30において通水が加温される熱量を把握できるから、その熱量が設定値未満であるか否かで、滅菌槽3内へのエアリークの有無を判定することができる。
【0064】
ここで、図示例のように、通液部34に設定流量で水を通す場合、通液部34に対する水の入口温度および出口温度に基づき、滅菌槽3内へのエアリークの有無を判定することもできる。すなわち、通液部34への通水流量を設定流量に維持できる場合、制御器は、入口温度センサ43および出口温度センサ44の検出信号に基づき、滅菌槽3内へのエアリークの有無を判定することができる。この際、滅菌工程中の熱交換器30に対する水の出口温度と入口温度との温度差が設定値未満であるか否かにより、滅菌槽3内へのエアリークの有無を判定することもできる。つまり、温度差が設定値未満であれば、滅菌槽3内へのエアリークがあると判定でき、温度差が設定値以上であれば、滅菌槽3内へのエアリークがないと判定できる。
【0065】
さらに、通液部34に設定流量で水を通すと共に、通液部34の入口水温を設定温度に維持できる場合、通液部34に対する水の出口温度に基づき、滅菌槽3内へのエアリークの有無を判定することもできる。たとえば、通液部34への通水流量を設定流量に維持でき、しかも、通液部34への給水温度を設定温度に維持できる場合、入口温度センサ43の設置を省略して、制御器は、出口温度センサ44の検出信号に基づき、滅菌槽3内へのエアリークの有無を判定することができる。この際、滅菌工程中、熱交換器30に対する水の出口温度が設定値未満であるか否かにより、滅菌槽3内へのエアリークの有無を判定することもできる。つまり、出口温度が設定値未満であれば、滅菌槽3内へのエアリークがあると判定でき、出口温度が設定値以上であれば、滅菌槽3内へのエアリークがないと判定できる。
【0066】
いずれにしても、従来のリークテストとは異なり、滅菌運転中のエアリークを検知することができる。そして、好適には、滅菌工程の終了時まで、エアリークの有無を監視し続け、所望により、その結果を出力機器(たとえば蒸気滅菌装置2またはエアリーク検知装置1に設けられたタッチパネル)に出力することができる。つまり、滅菌槽3内へのエアリークがあると判定した場合、その旨、出力機器(たとえばタッチパネル)に出力して異常を報知する。あるいは、これに代えてまたはこれに加えて、蒸気滅菌装置2の運転を中止してもよい。
【0067】
なお、本実施例のエアリーク検知装置1とこれを備えた蒸気滅菌装置2によれば、エアリーク検知装置1(特に本体部としての熱交換器30)が滅菌槽3外に設けられるので、滅菌槽3内における被滅菌物の収容空間を狭めるおそれがないし、被滅菌物の出し入れを邪魔するおそれもない。また、エアリーク検知装置1が滅菌槽3外に設けられるので、滅菌蒸気により外部から熱を受けるおそれがなく、滅菌槽3内へのエアリークの有無を正確に知ることができる。
【0068】
ところで、制御器(第一制御器または第二制御器)は、次のようにして、滅菌管理を実施可能なことが好ましい。すなわち、通液部34に対する水の入口温度、出口温度および流量の内、出口温度の他、入口温度を設定温度に維持しない場合には入口温度も、また、流量を設定流量に維持しない場合には流量も、少なくとも滅菌工程中、所定時間ごとに運転データ記憶部に保存し、この運転データ記憶部に保存されたデータを、所定機器に出力可能とするのがよい。
【0069】
たとえば、流量調整用ノズル48により設定流量で通水できる場合、入口温度センサ43と出口温度センサ44の各検出温度を、所定時間ごとに(たとえば数秒間隔で)、運転データ記憶部に保存する。その際、運転ごとに、運転日時、滅菌条件(滅菌圧力、滅菌温度、滅菌時間)などの各種設定値の他、実際の運転中の所定時間ごとの滅菌槽3内の圧力や温度なども保存するのが好ましい。そして、これらデータを、必要に応じて、たとえば運転日時に基づき運転データ記憶部から取得して、タッチパネルなどに出力可能とする。これにより、過去の履歴の確認が可能となり、滅菌管理を容易に確実に行うことができる。
【0070】
本発明のエアリーク検知装置1とこれを備えた蒸気滅菌装置2は、前記実施例の構成(制御を含む)に限らず適宜変更可能である。特に、(a)滅菌槽3外に設けられ、滅菌槽3内と連通する中空部33を有すると共に、その中空部33内の流体と熱交換する液体の通液部34を有する熱交換器30と、(b)通液部34に対する液体の入口温度、出口温度および流量の内、少なくとも出口温度に基づき、滅菌槽3内へのエアリークの有無を判定する判定手段とを備えるのであれば、その他の構造は適宜に変更可能である。
【0071】
たとえば、エアリーク検知装置1は、さらに圧縮空気供給手段を備えてもよい。この場合、内管35内に上方から下方へ向けて圧縮空気を供給可能に、内管35の上端部に圧縮空気供給路が接続される。そして、圧縮空気供給路には、熱交換器30へ向けて、圧縮空気供給弁、エアフィルタおよび逆止弁が順に設けられる。圧縮空気供給弁を開くことで、圧縮空気供給源(図示省略)からの圧縮空気を、内管35内へ供給することができる。内管35内へ供給された圧縮空気は、連通管32を介して滅菌槽3内へ導出される。圧縮空気供給手段を設けた場合も、前処理工程および滅菌工程では、圧縮空気供給路が閉じられる(つまり圧縮空気を供給しない)ので、前記実施例と同様に、エアリークの有無を判定することができる。そして、滅菌工程後には、設定タイミングにおいて、圧縮空気供給手段により、熱交換器30の内管35内に圧縮空気を通して、熱交換器30からの凝縮水の排出と、熱交換器30の冷却とを図ることができる。たとえば、滅菌工程直後、または蒸気滅菌装置2の運転完了後(一連の工程終了後)、圧縮空気供給弁を開いて、熱交換器30の内管35内に圧縮空気を通して、熱交換器30からの凝縮水の排出と、熱交換器30の冷却とを図る。これにより、次回の運転に備えることができる。但し、乾燥工程において熱交換器30も加熱され得ることを考慮して、熱交換器30への圧縮空気の供給は、蒸気滅菌装置2の運転完了後に行うのが好ましい。
【0072】
また、熱交換器30の構成、つまり中空部33や通液部34の形状や姿勢等は、前記実施例の構成に限定されない。たとえば、通液部34は、前記実施例では中空部33を取り囲むジャケット状としたが、中空部33を取り囲むコイル状としたり、中空部33内に配置されるコイル状としたりしてもよい。
【0073】
さらに、前記実施例において、熱交換器30と滅菌槽3とを接続する連通管32には、所望により開閉弁を設けてもよい。その場合、たとえば乾燥工程において、開閉弁を閉じておくことで、滅菌槽3内から熱交換器30への伝熱を防止できる。