特許第6555480号(P6555480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6555480板ガラスの姿勢変更装置及び姿勢変更方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555480
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】板ガラスの姿勢変更装置及び姿勢変更方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 49/06 20060101AFI20190729BHJP
   B65G 47/244 20060101ALI20190729BHJP
   B65G 47/248 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   B65G49/06 Z
   B65G47/244
   B65G47/248 F
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-37527(P2016-37527)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-154835(P2017-154835A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】奥 隼人
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 浩市
(72)【発明者】
【氏名】下津 浩一
(72)【発明者】
【氏名】西村 直樹
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−096908(JP,A)
【文献】 特開平10−035884(JP,A)
【文献】 特開2003−100581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 49/06
B65G 47/244
B65G 47/248
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に搬送される板ガラスの姿勢を変更する装置であって、
前記板ガラスを上方に凸となるように湾曲させて支持する支持体と、前記支持体を昇降させる昇降装置と、前記支持体を回転させる回転装置と、を備え
前記支持体は、交差するように設けられる少なくとも二本の長尺状の支持部材を備え、前記支持部材は、前記板ガラスを上方に凸となるように湾曲させて支持することを特徴とする姿勢変更装置。
【請求項2】
前記支持部材は、上方に凸となるように湾曲状に構成されてなる請求項に記載の姿勢変更装置。
【請求項3】
前記支持体は、液体を吐出する吐出部を有する請求項1又は2に記載の姿勢変更装置。
【請求項4】
前記支持体は、枠形状を有する請求項1からのいずれか1項に記載の姿勢変更装置。
【請求項5】
所定の方向に搬送される板ガラスの姿勢を変更する装置であって、
前記板ガラスを上方に凸となるように湾曲させて支持する支持体と、前記支持体を昇降させる昇降装置と、前記支持体を回転させる回転装置と、を備え、
前記支持体は、液体を吐出する吐出部を有することを特徴とする姿勢変更装置。
【請求項6】
所定の方向に搬送される板ガラスの姿勢を変更する装置であって、
前記板ガラスを上方に凸となるように湾曲させて支持する支持体と、前記支持体を昇降させる昇降装置と、前記支持体を回転させる回転装置と、を備え、
前記支持体は、枠形状を有することを特徴とする姿勢変更装置。
【請求項7】
所定の方向に搬送される板ガラスの姿勢を変更する方法であって、
交差するように設けられる少なくとも二本の長尺状の支持部材を備える支持体によって前記板ガラスを上方に凸となるように湾曲させて支持するとともに、前記支持体を回転させることにより前記板ガラスの姿勢を水平方向において変更させることを特徴とする板ガラスの姿勢変更方法。
【請求項8】
所定の方向に搬送される板ガラスの姿勢を変更する方法であって、
支持体に設けられた吐出部から吐出させた液体を前記支持体と前記板ガラスとの間に介在させた状態で、前記支持体によって前記板ガラスを上方に凸となるように湾曲させて支持するとともに、前記支持体を回転させることにより前記板ガラスの姿勢を水平方向において変更させることを特徴とする板ガラスの姿勢変更方法。
【請求項9】
所定の方向に搬送される板ガラスの姿勢を変更する方法であって、
枠形状を有する支持体によって前記板ガラスを上方に凸となるように湾曲させて支持するとともに、前記支持体を回転させることにより前記板ガラスの姿勢を水平方向において変更させることを特徴とする板ガラスの姿勢変更方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ガラスの製造技術に関し、特に板ガラスの姿勢変更装置及び姿勢変更方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ(OLED)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用の板ガラスを製造する場合、例えばダウンドロー法等の成形法により成形された大型のガラス基板を切断することで、所定の大きさの板ガラスを形成する。具体的には、例えばダイヤモンドカッター等のスクライブホイールを使用してガラス基板を割断することにより、板ガラスが形成される。
【0003】
ガラス基板を割断して板ガラスを形成すると、その切断面(端面)には、数μm〜100μm程度の深さの微小なクラックが形成される。このクラックは、板ガラスの機械的強度の低下を招くことから、板ガラスの端面を加工することによって除去される。すなわち、板ガラスの機械的強度を高め、板ガラスの割れや欠けを防止し、後工程でのハンドリングを行い易くするために、板ガラスの端面には、研削加工(面取り)及び研磨加工が施される。
【0004】
板ガラスの端面加工装置(端面加工処理ライン)としては、特許文献1に開示されるように、第一面取り機、姿勢変更装置(反転機)、及び第二面取り機を備えたものがある。この端面加工装置は、矩形の板ガラスの端面加工にあたり、第一面取り機の加工具によって板ガラスの二辺に係る端面を加工(研削・研磨)した後、姿勢変更装置によってこの板ガラスを水平方向に90°回転させてその姿勢を変更し、その後、第二面取り機の加工具によって残りの二辺に係る端面を加工(研削・研磨)する(同文献の段落0021及び図3参照)。
【0005】
板ガラスの端面に対する加工では、加工具として、研削ホイールや研磨ホイールが使用される。これらの加工具を長期間使用すると、その研削面・研磨面から砥粒が脱落し、摩耗や目詰まりを起こし、さらには、研削面・研磨が摩擦により高温となり、砥粒が熱により破損するおそれがある。このため、端面加工装置では、加工具の研削面・研磨面を冷却し、板ガラスの端面と研削面・研磨面との間の摩擦抵抗を調整すべく、加工具と板ガラスの端面との間に水等の加工液が供給される(同文献の段落0004等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−193892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような端面加工装置による板ガラスの端面加工では、研削時に供給された加工液が板ガラスの上面に残留することになる。加工液が板ガラスの上面に残留したままの状態で板ガラスを持ち上げて水平方向に90°回転させると、残留した加工液の重量により板ガラスが下方に凸となるように大きく撓んでしまい、これによって破損が生じるおそれがある。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、板ガラスの上面に加工液が残留したとしても、安定して回転させることが可能な板ガラスの姿勢変更装置及び姿勢変更方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、所定の方向に搬送される板ガラスの姿勢を変更する装置であって、前記板ガラスを上方に凸となるように湾曲させて支持する支持体と、前記支持体を昇降させる昇降装置と、前記支持体を回転させる回転装置と、を備えることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、支持体によって板ガラスを上方に凸となるように湾曲させて支持することにより、板ガラスの上面に残留する加工液を、昇降装置による支持体の上昇時に板ガラスから落下させることができる。これにより、端面加工後に板ガラスの上面に加工液が残留したとしても上昇時に板ガラスが破損するのを防止でき、板ガラスを安定して回転させることができる。
【0011】
本発明に係る板ガラスの姿勢変更装置において、前記支持体は、交差するように設けられる少なくとも二本の長尺状の支持部材を備え、前記各支持部材は、前記板ガラスを上方に凸となるように湾曲させて支持することが望ましい。
【0012】
これらの支持部材によって板ガラスを上方に凸状となるように支持することにより、板ガラスは、椀状に湾曲することになる。これにより、板ガラスの上面に残留する加工液を落下させ、板ガラスの上面に残留する加工液の量を可及的に低減できる。
【0013】
また、前記支持体は、液体を吐出する吐出部を有することが望ましい。吐出部から液体を吐出することにより、支持体が板ガラスを支持する際に、板ガラスの下面と支持体との間にこの液体を介在させることができる。これにより、板ガラスの下面をこの液体により保護し、姿勢変更時における板ガラスの擦傷の発生を防止できる。
【0014】
また、前記支持体は、枠形状を有することが望ましい。これにより、支持体は、板ガラスの端辺を支持することができ、しかも支持体を軽量化でき、回転装置によって支持体を回転させるときに、その駆動力を低減することが可能になる。
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するためのものであり、所定の方向に搬送される板ガラスの姿勢を変更する方法であって、支持体によって板ガラスを上方に凸となるように支持するとともに、前記支持体を回転させることにより前記板ガラスの姿勢を水平方向において変更することを特徴とする。
【0016】
かかる構成によれば、板ガラスを上方に凸となるように湾曲させて支持することにより、板ガラスの上面に残留する加工液を、板ガラスから落下させることができる。これにより、端面加工後に板ガラスの上面に残留する加工液の量を可及的に低減し、板ガラスの破損を防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、板ガラスの上面に加工液が残留したとしても、板ガラスを安定して回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】姿勢変更装置を含む加工装置を示す平面図である。
図2】姿勢変更装置の平面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4】支持体の支持部材における部分断面図である。
図5】姿勢変更装置による板ガラスの姿勢変更を説明するための側面である。
図6】支持体の他の例を示す側面図である。
図7】支持体の他の例を示す側面図である。
図8】支持体の他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1乃至図5は、本発明に係る姿勢変更装置(旋回機)を含む加工装置の一実施形態を示す。
【0020】
図1に示すように、加工装置1は、第一加工装置1aと、第二加工装置1bと、姿勢変更装置2とを備える。第一加工装置1a及び第二加工装置1bは、矩形状の板ガラスGの端面を加工する端面加工装置である。なお、図1に示すように、板ガラスGは、第一加工装置1a、姿勢変更装置2、そして第二加工装置1bの順に搬送される。
【0021】
この加工装置1では、図1に示すように、第一加工装置1aによって板ガラスGの二辺の端面を加工した後、姿勢変更装置2によって板ガラスGの姿勢を水平方向に90°変更し(実線及び二点鎖線で示す)、第二加工装置1bによって残りの二辺の端面を加工する。本実施形態では、第一加工装置1a及び第二加工装置1bとして、板ガラスGの端面における研削(面取り)を行う研削装置を例示するが、これに限定されるものではない。すなわち、第一加工装置1a及び第二加工装置1bは、板ガラスGの端面を研磨する研磨装置を含み得る。
【0022】
第一加工装置1a及び第二加工装置1bは、板ガラスGの端面を加工する各々一対の加工具3a,3bと、各加工具3a,3bに対応して設けられる加工液の供給装置4a,4bとを備える。各加工具3a,3bは、板ガラスGの端面の面取りを行う一対の研削ホイールである。各供給装置4a,4bは、水その他の加工液を吐出するノズル5を含む。第一加工装置1a及び第二加工装置1bは、加工具3a,3bと板ガラスGとの接触部分に向かってノズル5から加工液を供給しながら、加工具3a,3bを板ガラスGの一辺に沿って直線的に移動させることで、板ガラスGの各端面をその全長にわたって研削する。
【0023】
姿勢変更装置2は、第一加工装置1aと第二加工装置1bとの間に配置されている。姿勢変更装置2は、図2及び図3に示すように、板ガラスGを支持する支持体6と、支持体6を昇降させる昇降装置7と、支持体6を回転させる回転装置8と、板ガラスGを所定の方向に移動させる複数の搬送装置9とを備える。
【0024】
支持体6は、図2に示すように平面視四角形状の枠体として構成される。具体的には、支持体6は、所定の角度で交差する複数の第一支持部材10及び第二支持部材11を備える。本実施形態において、第一支持部材10と第二支持部材11とは約90°の角度で交差しているが、この角度に限定されるものではない。また、各支持部材10,11は共に金属製(例えばアルミニウム製)で中空状かつ長尺状の棒状部材である。複数の第一支持部材10及び第二支持部材11を交差させることで、支持体6は、複数の開口部を有する枠形状となる。
【0025】
各支持部材10,11は、上方に凸となるように湾曲して構成されている。図3では、第二支持部材11の湾曲形状を示しているが、第一支持部材10においても第二支持部材11と同様の湾曲形状を呈する。各支持部材10,11の曲率半径は、70000mm以上140000mm以下とされることが望ましい。各支持部材10,11の曲率半径を異ならせることにより、支持体6は、全体として上方に凸となる椀形状に構成される。これにより、支持体6に載置された板ガラスGは、支持体6の形状に応じて、上方に凸となるように椀状に湾曲する。
【0026】
図4に示すように、各支持部材10,11の内部には、水等の液体Lが充填されている。具体的には、第一支持部材10と第二支持部材11は、その中空部分が連通するように、各交差部分において連結されている。これにより、この液体Lは、第一支持部材10及び第二支持部材11の内部を流通する。各支持部材10,11は、内部の液体Lを吐出するための孔13を有する。支持体6には図示しないポンプが接続されており、各支持部材10,11は、所定の圧力により内部の液体Lがこの孔13から吐出するように構成される。なお、上記の構成に限らず、各支持部材10,11の内部に、液体Lが流通する配管を設け、この配管の液体Lを孔13から吐出させてもよい。
【0027】
図2乃至図4に示すように、各支持部材10,11は、その上面に板ガラスGを支持するための複数の支持部12を有する。各支持部12は、長方形に構成されるとともに、例えば、ゴム等の弾性体により構成される。各支持部12の材質は弾性体に限定されず、スポンジその他の収縮可能な材料により構成され得る。各支持部12は、この支持部材10,11の孔13に連通する孔14を有する。この孔14は、各支持部材10,11の内部に充填されている液体Lを支持部12の上面に吐出する吐出部として機能する。
【0028】
昇降装置7は、シリンダ装置その他のアクチュエータにより構成される。図3に示すように、昇降装置7は、回転装置8の下側に配置され、支持体6を回転装置8とともに昇降させる。昇降装置7は、支持体6を待機位置から上昇させることにより、搬送装置9上の板ガラスGを支持体6に支持させ、回転装置8による板ガラスGの姿勢変更が終了すると、この支持体6を待機位置へと下降させる。
【0029】
回転装置8は、モータ等のアクチュエータにより構成される。図3に示すように、回転装置8は、回転軸15を有しており、この回転軸15は、支持体6の中央部の下面側に固定されている。回転装置8は、回転軸15を回転駆動することにより、支持体6を回転軸15まわりに約90°の角度で回転(回動)させ、これによって板ガラスGの姿勢を水平方向において変更する。
【0030】
搬送装置9は、第一加工装置1aにおいて加工された板ガラスGの姿勢変更装置2への移送、及び姿勢変更装置2から第二加工装置1bへの板ガラスGの移送を行う。図2及び図3に示すように、搬送装置9は、枠状に構成される支持体6の開口部に対応する位置に設けられている。
【0031】
搬送装置9は、複数対のローラ16と、各ローラ16に巻回される複数の搬送ベルト17とを備える。複数対のローラ16は、一方のローラ16同士が同軸状に配置されており、同様に、他方のローラ16同士も同軸状に配置されている。搬送ベルト17は、例えば無端状のゴムベルトにより構成されるが、これに限定されるものではない。
【0032】
複数の搬送ベルト17のうちの一つは、ローラ16を回転駆動するためのものであり、図示しない駆動装置によってこの搬送ベルト17が回走駆動されることで、他のローラ16に巻回されている他の搬送ベルト17が板ガラスGを搬送すべく回走する。
【0033】
以下、上記構成の姿勢変更装置2を用いて板ガラスGの姿勢を変更する方法について説明する。
【0034】
第一加工装置1aによって板ガラスGの二辺に係る端面が加工される間、姿勢変更装置2は待機状態となっている。この待機状態では、支持体6は、図3及び図5(a)に示すように、搬送装置9の搬送ベルト17の上部よりも下方に位置付けられる。これにより、搬送ベルト17は、板ガラスGを受け取り可能な状態となっている。なお、支持体6に係る支持部12の孔(吐出部)14は、各支持部材10,11の内部に充填される液体Lを吐出し続けている。
【0035】
第一加工装置1aによる加工が終了すると、姿勢変更装置2の搬送装置9が、第一加工装置1aから板ガラスGを受け取る。このとき、板ガラスGの上面には、第一加工装置1aの供給装置4aから供給された加工液が溜まった状態となっている(図示略)。搬送装置9は、図5(a)に示すように、この板ガラスGを支持体6の上方に配置する。
【0036】
その後、昇降装置7が支持体6を上昇させ、支持部12を板ガラスGの下面に接触させる。このとき、支持部12は弾性体により構成されていることから、板ガラスGの下面に接触したときの衝撃を吸収する。昇降装置7は、さらに支持体6を上昇させ、図5(b)に示すように、支持部12を搬送装置9の搬送ベルト17よりも上方に移動させる。これにより、板ガラスGは、この搬送ベルト17から離間し、支持体6のみで板ガラスGを支持した状態となる。
【0037】
このとき、板ガラスGは、図5(b)に示すように、支持体6の湾曲形状に応じて上方に凸となるように湾曲する。この変形により、板ガラスGの上面に溜まっていた加工液は、この板ガラスGの縁部に向かって移動し、この縁部から落下する。
【0038】
昇降装置7が板ガラスGを所定の位置まで上昇させると、回転装置8は、回転軸15を駆動し、支持体6をこの回転軸15まわりに約90°回転させる。これにより、板ガラスGの姿勢が水平方向に沿って変更される。その後、昇降装置7は、支持体6を下降させ、搬送装置9の搬送ベルト17の上部よりも下方に移動させる。これにより、板ガラスGは、再び搬送ベルト17に接触するとともに、支持体6から離間する。
【0039】
その後、搬送装置9は搬送ベルト17を回走させ、板ガラスGを第二加工装置1bへと移送する。第二加工装置1bは、加工具3bによって板ガラスGの残りの二辺に係る端面を加工する。第二加工装置1bによる加工が終了すると、板ガラスGは、洗浄工程を経て製品化される。
【0040】
以上説明した本実施形態に係る板ガラスGの姿勢変更装置2及び姿勢変更方法によれば、支持体6によって板ガラスGを上方に凸となるように湾曲させて支持することで、板ガラスGの上面に残留する加工液を、この板ガラスGから落下させることができる。
【0041】
さらに、第一支持部材10と第二支持部材11のそれぞれを、上方に凸となるように湾曲して構成することで、支持体6は、板ガラスGを椀状に湾曲させることができ、板ガラスG上に残留する加工液を板ガラスGの中心部から放射状に移動させることができる。これにより、板ガラスG上に残留する加工液を可及的に低減できる。したがって、板ガラスGを昇降させる際及び板ガラスGを回転させる際に、加工液による過重が板ガラスGに作用することもなくなる。これにより、板ガラスGを安定して回転させることが可能になる。
【0042】
また、支持体6は、支持部12の吐出部(孔14)から液体Lを吐出することで、板ガラスGの下面と支持部12との間にこの液体Lを介在させることができる。これにより、板ガラスGの下面を保護し、姿勢変更時における板ガラスGの擦傷の発生を防止できる。
【0043】
また、支持体6を枠形状に構成することで、板ガラスGの端辺付近を支持体6に支持させることができ、さらに支持体6を軽量化できるとともに、その開口部に、搬送装置9を配置可能なスペースを確保することができる。これにより、回転装置8によって支持体6を回転させるときに、その駆動力を可及的に低減できるとともに、姿勢変更装置2を小型化することが可能になる。
【0044】
図6乃至図8は、支持体6の他の例を示す。上記の実施形態では、支持体6を構成する支持部材10,11がその全長にわたって湾曲形状に構成されていたが、図6乃至図8に示す例では、その形状が異なる。以下の説明では、支持体6を構成する第一支持部材10を例示して説明するが、第二支持部材11も同じように構成され得る。
【0045】
図6に示す例では、第一支持部材10は、その一部が湾曲しており、他の部分が直線状に構成されている。具体的には、第一支持部材10は、その中途部(中央部)が上方に凸となるように湾曲する湾曲部18となり、この湾曲部18の端部に直線部19が繋がって形成されたものである。この例においても、板ガラスGは、支持部12に支持されたときに、第一支持部材10の形状に応じて、上方に凸となるように湾曲状に変形する。この湾曲により、板ガラスGの上面に残留する加工液を板ガラスGから落下させ、加工液の残量を低減できる。
【0046】
図7に示す例では、第一支持部材10は、支持体6の中央部に対応する部分が上方に凸となるように屈曲状に構成されている。具体的には、第一支持部材10は、直線状に構成される、第一直線部20及び第二直線部21を有する。第一直線部20は、一端部が第二直線部21に連結されており、他端部がこの一端部よりも下方に位置するように傾斜している。同様に第二直線部21は、一端部が第一直線部20と連結されており、他端部がこの一端部よりも下方に位置するように傾斜している。
【0047】
このように、第一支持部材10を屈曲形状に構成することで、板ガラスGは、支持部12に支持されたときに、第一支持部材10の形状に応じて、上方に凸となるように湾曲する。この変形により、板ガラスGの上面に残留する加工液を板ガラスGから落下させることができ、板ガラスG上における加工液の残量を低減できる。
【0048】
図8に示す例では、第一支持部材10は、図7に示す例のように中途部が屈曲したものではなく、一端部から他端部まで直線状に構成されている。この例では、第一支持部材10の上面に配置される複数の支持部12について、厚さの異なるものを使用することにより、板ガラスGを上方に凸となるように湾曲させる。
【0049】
すなわち、第一支持部材10には複数の支持部12が形成されているが、このうち、中間に位置する支持部12の厚さが最も厚く構成され、この中間位置から第一支持部材10の各端部に向かうにつれて、支持部12の厚さを徐々に薄くしている。さらに、各支持部12の上面は、曲面状又は傾斜面状に構成されている。
【0050】
これにより、側面視において、支持部12の上面を結ぶ軌跡は、上方に凸となる曲線状に形成される。したがって、支持体6に支持される板ガラスGは、この支持部12の上面が描く曲線に倣って上方に凸となるように湾曲する。この湾曲により、板ガラスGの上面に残留する加工液を板ガラスGから落下させることができ、板ガラスG上における加工液の残量を低減できる。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0052】
上記の実施形態では、各支持部材10,11の上面に支持部12を設けた支持体6の例を示したが、これに限定されない。すなわち、支持部12を設けることなく、各支持部材10,11の上面にて板ガラスGを支持してもよい。
【0053】
上記の実施形態では、板ガラスGの姿勢を変更するために、支持体6を回転装置8の回転軸15まわりに、約90°回転させた例を示したが、この回転角度は90°に限定されず、任意の角度に設定することが可能である。
【0054】
上記の実施形態では、支持体6を枠形状に構成した例を示したが、これに限定されない。例えば二本の支持部材10,11、すなわち、一本の第一支持部材10及び一本の第二支持部材11を直交させて支持体6を十字状に構成してもよい。
【0055】
上記の実施形態では、支持体6を構成する第一支持部材10と第二支持部材11とを同じように湾曲乃至屈曲させた例を示したが、これに限定されない。例えば、第一支持部材10、第二支持部材11の一方のみを湾曲形状乃至屈曲形状に構成してもよい。図8に係る例においても同様に、各支持部材10,11の一方のみにおいて、支持部12の厚さを異ならせる構成としてもよい。各支持部材10,11の湾曲形状には、これらの上面のみを上方に凸となるように構成し、これらの下面が直線状とされたものも含まれる。
【符号の説明】
【0056】
3 姿勢変更装置
6 支持体
7 昇降装置
8 回転装置
10 第一支持部材(支持部材)
11 第二支持部材(支持部材)
14 支持部の孔(吐出部)
G 板ガラス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8