特許第6555488号(P6555488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6555488-移動機構 図000002
  • 特許6555488-移動機構 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555488
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】移動機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/20 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
   F16H25/20 A
   F16H25/20 H
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-32284(P2017-32284)
(22)【出願日】2017年2月23日
(65)【公開番号】特開2018-135991(P2018-135991A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2018年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 陽介
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−086741(JP,U)
【文献】 特開2011−194523(JP,A)
【文献】 特開2007−292938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
右ネジ部分と左ネジ部分が左右に形成されたリードスクリューと、
前記右ネジ部分に螺合される第1のナット体と、
前記左ネジ部分に螺合される第2のナット体と、
前記リードスクリューに摺動自在に設けられ、前記第1のナット体に結合することで前記第1のナット体の前記リードスクリュー回りの回転を制限する第1のナット保持体と、
前記リードスクリューに摺動自在に設けられ、前記第2のナット体に結合することで前記第2のナット体の前記リードスクリュー回りの回転を制限する第2のナット保持体とを備え、
前記第1,第2のナット体と前記第1,第2のナット保持体との間には、前記第1,第2のナット体を任意の回転位置で結合可能な結合部が設けられており、
前記第1,第2のナット保持体は、前記第1のナット体と前記第2のナット体の間に配置され、
前記第1のナット保持体と前記第2のナット保持体の間には、前記第1のナット保持体と前記第2のナット保持体を互いに離間する方向に付勢する予圧バネが設けられていることを特徴とする移動機構。
【請求項2】
右ネジ部分と左ネジ部分が左右に形成されたリードスクリューと、
前記右ネジ部分に螺合される第1のナット体と、
前記左ネジ部分に螺合される第2のナット体と、
前記リードスクリューに摺動自在に設けられ、前記第1のナット体に結合することで前記第1のナット体の前記リードスクリュー回りの回転を制限する第1のナット保持体と、
前記リードスクリューに摺動自在に設けられ、前記第2のナット体に結合することで前記第2のナット体の前記リードスクリュー回りの回転を制限する第2のナット保持体とを備え、
前記第1,第2のナット体と前記第1,第2のナット保持体との間には、前記第1,第2のナット体を任意の回転位置で結合可能な結合部が設けられており、
前記第1,第2のナット体は、前記第1のナット保持体と前記第2のナット保持体の間に配置され、
前記第1のナット保持体と前記第2のナット保持体の間には、前記第1のナット保持体と前記第2のナット保持体を互いに近接する方向に付勢する予圧バネが設けられていることを特徴とする移動機構。
【請求項3】
前記結合部は、噛み合いクラッチであることを特徴とする請求項1又は2記載の移動機構。
【請求項4】
前記結合部は、摩擦クラッチであることを特徴とする請求項1又は2記載の移動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードスクリューを回転駆動して移動対象を直線的に移動させる移動機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リードスクリューに回転を制限したナットを螺合して、リードスクリューを回転駆動することで、ナットをリードスクリューの直線的な軸方向に移動させる機構が一般に知られている(例えば、下記特許文献1参照)。また、単体のリードスクリューに右ネジ部分と左ネジ部分を左右に分離して設け、右ネジ部分と左ネジ部分にそれぞれ回転を制限したナットを螺合して、リードスクリューを回転させることで、一対のナットを近接又は離間させる移動機構が各種の用途で用いられている(例えば、下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−280155号公報
【特許文献2】特開平8−221861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した一対のナットを近接又は離間させる移動機構では、一対のナットの初期間隔を調整する場合に、一対のナットが機構的にリンクされているので、その間隔及び位置をリードスクリューのネジピッチ以下の精度で調整することができない問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものである。すなわち、単体のリードスクリューに右ネジ部分と左ネジ部分を左右に設け、右ネジ部分と左ネジ部分にそれぞれ回転を制限したナットを螺合した移動機構において、一対のナットの間隔及び位置をネジピッチ以下の精度で調整できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明の移動機構は、以下の構成を具備するものである。
【0007】
一つには、右ネジ部分と左ネジ部分が左右に形成されたリードスクリューと、前記右ネジ部分に螺合される第1のナット体と、前記左ネジ部分に螺合される第2のナット体と、前記リードスクリューに摺動自在に設けられ、前記第1のナット体に結合することで前記第1のナット体の前記リードスクリュー回りの回転を制限する第1のナット保持体と、前記リードスクリューに摺動自在に設けられ、前記第2のナット体に結合することで前記第2のナット体の前記リードスクリュー回りの回転を制限する第2のナット保持体とを備え、前記第1,第2のナット体と前記第1,第2のナット保持体との間には、前記第1,第2のナット体を任意の回転位置で結合可能な結合部が設けられており、前記第1,第2のナット保持体は、前記第1のナット体と前記第2のナット体の間に配置され、前記第1のナット保持体と前記第2のナット保持体の間には、前記第1のナット保持体と前記第2のナット保持体を互いに離間する方向に付勢する予圧バネが設けられていることを特徴とする移動機構。
また一つには、右ネジ部分と左ネジ部分が左右に形成されたリードスクリューと、前記右ネジ部分に螺合される第1のナット体と、前記左ネジ部分に螺合される第2のナット体と、前記リードスクリューに摺動自在に設けられ、前記第1のナット体に結合することで前記第1のナット体の前記リードスクリュー回りの回転を制限する第1のナット保持体と、前記リードスクリューに摺動自在に設けられ、前記第2のナット体に結合することで前記第2のナット体の前記リードスクリュー回りの回転を制限する第2のナット保持体とを備え、前記第1,第2のナット体と前記第1,第2のナット保持体との間には、前記第1,第2のナット体を任意の回転位置で結合可能な結合部が設けられており、前記第1,第2のナット体は、前記第1のナット保持体と前記第2のナット保持体の間に配置され、前記第1のナット保持体と前記第2のナット保持体の間には、前記第1のナット保持体と前記第2のナット保持体を互いに近接する方向に付勢する予圧バネが設けられていることを特徴とする移動機構。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る移動機構の全体構成を示した説明図である。
図2】本発明の実施形態に係る移動機構の動作を示した説明図である((a)がリードスクリューを左回転させた動作を示し、(b)がリードスクリューを右回転させた動作を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1において、移動機構1は、回転駆動されるリードスクリュー2を備えている。リードスクリュー2は、ステッピングモータなどのモータ3に連結される減速機4の出力軸に結合され、フレーム5に両端を軸支されることで、左回転と右回転の両方に回転駆動される。
【0010】
また、リードスクリュー2は、右ネジ部分2Aと左ネジ部分2Bが左右に形成されており、右ネジ部分2Aには第1のナット体6が螺合され、左ネジ部分2Bには第2のナット体7が螺合されている。
【0011】
また、リードスクリュー2には、第1のナット保持体8と第2のナット保持体9が摺動自在に設けられている。第1,第2のナット保持体8,9は、リードスクリュー2のネジ部分には螺合しておらず、リードスクリュー2の外径より大きい口径の孔部8A,9Aを有している。
【0012】
第1のナット保持体8は、第1のナット体6に結合することで第1のナット体6のリードスクリュー2回りの回転を制限するものであり、第2のナット保持体9は、第2のナット体7に結合することで第2のナット体7のリードスクリュー2回りの回転を制限するものである。
【0013】
第1のナット体6と第1のナット保持体8とは、結合部10にて結合されている。また、第2のナット体7と第2のナット保持体9も同様に、結合部10にて結合されている。結合部10は、図示の例では、複数の爪を有する噛み合いクラッチである。
【0014】
第1のナット体6と第2のナット体7は、結合部10の結合を外すことで、任意の回転位置に回転させることができ、第1のナット体6を右ネジ部分2Aにおける任意の位置に、ネジピッチ以下の精度で移動させることができ、第2のナット体7を左ネジ部分2Bにおける任意の位置に、ネジピッチ以下の精度で移動させることができる。
【0015】
そして、任意の位置に移動させた第1のナット体6と第1のナット保持体8とを結合部10により結合し、任意の位置に移動させた第2のナット体7と第2のナット保持体9とを結合部10により結合することで、第1,第2のナット保持体8,9の間隔及び位置を任意に調整することができる。
【0016】
図示の例では、結合部10は噛み合いクラッチであるから、噛み合う爪をずらして結合することで、爪の数に応じた分解能で、第1,第2のナット体6,7の位置を調整することができる。これに対して、結合部10を無段階に結合できる摩擦クラッチなどにすることで、第1,第2のナット体6,7の位置を更に微細に調整することができる。
【0017】
第1,第2のナット保持体8,9は、第1のナット体6と第2のナット体7の間に配置されており、リードスクリュー2と平行なガイド軸11に沿って摺動自在に支持されている。ガイド軸11は、その両端が図示省略した支持体に支持され、リードスクリュー2との平行状態が保たれている。第1,第2のナット保持体8,9は、リードスクリュー2に交差する方向に延設される連結部8B,9Bを備えており、この連結部8B,9Bにガイド軸11に挿通する挿通孔を設けている。
【0018】
このように、第1,第2のナット保持体8,9は、リードスクリュー2とガイド軸11に摺動自在に支持されることで、リードスクリュー2回りの回転が制限されており、この第1,第2のナット保持体8,9に結合することで、第1,第2のナット体6,7のリードスクリュー2回りの回転が制限される。なお、ガイド軸11に代えて、軸形状を有さないガイド部であってもよい。このガイド部は、第1,第2のナット保持体8,9の回転を制限し、且つリードスクリュー2に平行移動可能なように係合する形状であればよく、例えば、リードスクリュー2に平行な面を有し、第1,第2のナット保持体8,9がその面に摺動する当接部を備えるものなどを採用することができる。
【0019】
第1のナット保持体8と第2のナット保持体9の間には、第1のナット保持体8と第2のナット保持体9を互いに離間する方向に付勢する予圧バネ12が設けられている。図示の例では、予圧バネ12は、圧縮コイルバネであって、ガイド軸11と同軸に配置している。
【0020】
第1,第2のナット体6,7と第1,第2のナット保持体8,9の配置関係は図示の例に限定されない。即ち、第1,第2のナット体6,7は、第1のナット保持体8と第2のナット保持体9の間に配置されていてもよい。この場合には、第1のナット保持体8と第2のナット保持体9の間には、第1のナット保持体8と第2のナット保持体9を互いに近接する方向に付勢する予圧バネ(引張バネ)が設けられる。
【0021】
なお、前述した予圧バネ12(圧縮バネ)は、ガイド軸11とは非同軸に配置されていても良く、例えば、リードスクリュー2と同軸或いはリードスクリュー2とガイド軸11の間に配置してもよい。また、前述したように予圧バネを引張バネにする場合にも、予圧バネをガイド軸11と非同軸に配置することができる。
【0022】
前述した例では、予圧バネ(圧縮バネ又は引張バネ)は、第1,第2のナット保持体8,9の間に配置された例を示しているが、これに限らず、図示省略した支持体と第1のナット保持体8の間及び図示省略した支持体と第2のナット保持体9との間にそれぞれ予圧バネを配置することができる。この場合、第1,第2のナット体6,7の間に第1,第2のナット保持体8,9を配置する例では、予圧バネは引張バネになり、第1,第2のナット保持体8,9の間に第1,第2のナット体6,7を配置する例では、予圧バネは圧縮バネになる。
【0023】
図2によって、移動機構1の動作を説明する。図2(a)に示すように、リードスクリュー2をモータ3側に向いて左回転させると、右ネジ部2Aに螺合した第1のナット体6が図示左方向に移動し、左ネジ部2Bに螺合した第2のナット体7が図示右方向に移動する。これによって、第1のナット体6と結合する第1のナット保持体8と第2のナット体7と結合する第2のナット保持体9は、互いに近接する方向に移動する。
【0024】
この際、予圧バネ12は、第1のナット保持体8と第2のナット保持体9によって圧縮されることになり、第1のナット保持体8と第2のナット保持体9は、予圧バネ12の予圧に抗して移動することになる。この状態では、予圧バネ12の予圧によって、第1,第2のナット体6,7はリードスクリュー2のネジ部に片寄せされているので、第1,第2のナット体6,7はバックラッシュを抑止した円滑な移動が可能になる。また、予圧バネ12の予圧によって、結合部10は噛み合う方向に付勢されているので、移動中に結合部10の結合状態を確実に維持することができる。
【0025】
図2(b)に示すように、リードスクリュー2をモータ3側に向いて右回転させると、右ネジ部2Aに螺合した第1のナット体6が図示右方向に移動し、左ネジ部2Bに螺合した第2のナット体7が図示左方向に移動する。これによって、第1のナット体6と結合する第1のナット保持体8と第2のナット体7と結合する第2のナット保持体9は、互いに離間する方向に移動する。
【0026】
この際、第1のナット保持体8と第2のナット保持体9は、予圧バネ12の予圧方向と同方向に移動するので、予圧バネ12の予圧がモータ4の駆動力をアシストする。これによって、第1のナット保持体8と第2のナット保持体9とが互いに離間する方向に移動する場合には、モータ4の電力消費を軽減することができる。また、この場合にも、予圧バネ12の予圧によって、第1,第2のナット体6,7はリードスクリュー2のネジ部に片寄せされるので、第1,第2のナット体6,7はバックラッシュを抑止した円滑な移動が可能になり、結合部10は噛み合う方向に付勢されているので、移動中に結合部10の結合状態を確実に維持することができる。
【0027】
そして、移動機構1は、第1,第2のナット保持体8,9の初期位置調整を、第1のナット保持体8と第1のナット体6との結合を外し、第2のナット保持体9と第2のナット体7との結合を外して、組み付け後に自由に調整することができる。組み付け後に位置調整する場合には、予圧バネ12を圧縮して第1,第2のナット保持体8,9と第1,第2のナット体6,7との結合を外し、第1,第2のナット体6,7を任意の位置に移動させた後、予圧バネ12の圧縮を解いて、再び結合部10での結合を行う。
【0028】
これによると、単体のリードスクリュー2に右ネジ部分2Aと左ネジ部分2Bを左右に設け、右ネジ部分2Aと左ネジ部分2Bにそれぞれ回転を制限した第1,第2のナット体6,7を螺合した移動機構1において、一対のナット体6,7の間隔及び位置をネジピッチ以下の精度で自由に調整することが可能になる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
1:移動機構,2:リードスクリュー,2A:右ネジ部分,2B:左ネジ部分,
3:モータ,4:減速機,5:フレーム,
6:第1のナット体,7:第2のナット体,
8:第1のナット保持体,9:第2のナット保持体,
10:結合部,11:ガイド軸,12:予圧バネ
図1
図2