【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は、
少なくとも1つの部屋を有し、
上記部屋は内部に閉空間である生活および/または活動空間を有し、
上記生活および/または活動空間には、壁面に壁掛け式のエアコンディショナーが取り付けられ、上記エアコンディショナーの上部の吸気口に中性能フィルターからなるプレフィルターが取り付けられ、上記エアコンディショナーの送風口から上記生活および/または活動空間の内部に流出する気体の全部が、上記プレフィルターの上記吸気口へ還流するように構成されており、
少なくとも1つのガス交換装置を有し、
上記ガス交換装置は、
少なくとも2つの気体吸入口と少なくとも2つの気体吐出口とを有する、閉空間を構成する箱状構造体を有し、
上記少なくとも2つの気体吸入口の1つが、上記少なくとも2つの気体吐出口の1つと連通するとともに、上記少なくとも2つの気体吸入口の他の1つが、上記少なくとも2つの気体吐出口の他の1つと連通し、
上記2つの連通路は、おのおの独立流路を形成しつつも、ダスト微粒子を通さず、気体分子は通す膜を以てお互いに近接しながら隔てられるように構成され、
上記部屋を取り囲む外部空間から導入される空気が上記気体吸入口の1つから上記ガス交換装置の上記箱状構造体に導入され、この気体吸入口と連通する上記気体吐出口から上記外部空間へと送出される一方、上記生活および/または活動空間の内気が上記気体吸入口の他の1つから上記ガス交換装置の上記箱状構造体に導入され、この気体吸入口と連通する上記気体吐出口から上記生活および/または活動空間へ還流され、
上記膜は、上記生活および/または活動空間の体積をV、上記膜の面積をA’、厚みをL、上記膜中の二酸化酸素の拡散定数をD’とした時、{(V/A’)/(D’/L)}でスケーリングさせて設定された面積A’を有し、
上記生活および/または活動空間内部の二酸化炭素発生レートをB’、外部と平衡状態にあり上記生活および/または活動空間内部で二酸化炭素発生の無い時の二酸化炭素濃度をξ
O 、上記生活および/または活動空間内部における目標二酸化炭素濃度をξ(ξ<5000ppm)とした時、上記膜の面積A’が、
を満たすように設定されている建築物である。
【0011】
また、この発明は、
少なくとも1つの部屋を有し、
上記部屋は内部に閉空間である生活および/または活動空間を有し、
上記生活および/または活動空間には、壁面に壁掛け式のエアコンディショナーが取り付けられ、上記エアコンディショナーの上部の吸気口に中性能フィルターからなるプレフィルターが取り付けられ、上記エアコンディショナーの送風口から上記生活および/または活動空間の内部に流出する気体の全部が、上記プレフィルターの上記吸気口へ還流するように構成されており、
少なくとも1つのガス交換装置を有し、
上記ガス交換装置は、
少なくとも2つの気体吸入口と少なくとも2つの気体吐出口とを有する、閉空間を構成する箱状構造体を有し、
上記少なくとも2つの気体吸入口の1つが、上記少なくとも2つの気体吐出口の1つと連通するとともに、上記少なくとも2つの気体吸入口の他の1つが、上記少なくとも2つの気体吐出口の他の1つと連通し、
上記2つの連通路は、おのおの独立流路を形成しつつも、ダスト微粒子を通さず、気体分子は通す膜を以てお互いに近接しながら隔てられるように構成され、
上記部屋を取り囲む外部空間から導入される空気が上記気体吸入口の1つから上記ガス交換装置の上記箱状構造体に導入され、この気体吸入口と連通する上記気体吐出口から上記外部空間へと送出される一方、上記生活および/または活動空間の内気が上記気体吸入口の他の1つから上記ガス交換装置の上記箱状構造体に導入され、この気体吸入口と連通する上記気体吐出口から上記生活および/または活動空間へ還流され、
上記膜が、下記(1)により求められる上記膜の面積Aの下限値A
min と、下記(2)により求められる上記膜の面積A’の下限値A’
min とに対し、MAX(A
min ,A’
min )以上の面積を有する建築物である。
(1)上記膜の面積をA、厚みをL、上記膜中の気体分子の拡散定数をDとした時、上記生活および/または活動空間に対し、法令またはその他の理由により要求される換気風量をFとするとき、A≧FL/Dを満たす上記膜の面積A。
(2)上記生活および/または活動空間の体積をV、上記膜の面積をA’、厚みをL、上記膜中の二酸化炭素の拡散定数をD’とした時、上記膜の面積A’は{(V/A’)/(D’/L)}でスケーリングさせて設定され、
上記生活および/または活動空間内部の二酸化炭素発生レートをB’、外部と平衡状態にあり上記生活および/または活動空間内部で二酸化炭素発生の無い時の二酸化炭素濃度をξ
O 、上記生活および/または活動空間内部における目標二酸化炭素濃度をξ(ξ<5000ppm)とした時、
を満たす上記膜の面積A’。
【0012】
ここで、膜の面積Aの下限値A
min はA≧FL/Dの右辺、膜の面積A’の下限値A’
min は式(18)を満たす最小値である。また、MAX(A
min ,A’
min )は、A
min とA’
min との大きい方を意味する。
【0013】
この建築物の発明においては、好適には、ガス交換装置は、上記生活および/または活動空間の内気が上記気体吸入口の他の1つから上記箱状構造体に導入され、この気体吸入口と連通する上記気体吐出口から上記生活および/または活動空間へ還流される風量fが上記Fに対し、
f≧F
を満たすように設定される。
【0014】
また、この発明は、
少なくとも1つの部屋を有し、
上記部屋は内部に閉空間である生活および/または活動空間を有し、
上記生活および/または活動空間には、壁面に壁掛け式のエアコンディショナーが取り付けられており、
少なくとも1つのガス交換装置を有し、
上記ガス交換装置は、
少なくとも2つの気体吸入口と少なくとも2つの気体吐出口とを有する、閉空間を構成する箱状構造体を有し、
上記少なくとも2つの気体吸入口の1つが、上記少なくとも2つの気体吐出口の1つと連通するとともに、上記少なくとも2つの気体吸入口の他の1つが、上記少なくとも2つの気体吐出口の他の1つと連通し、
上記2つの連通路は、おのおの独立流路を形成しつつも、ダスト微粒子を通さず、気体分子は通す膜を以てお互いに近接しながら隔てられるように構成され、
上記部屋を取り囲む外部空間から導入される空気が上記気体吸入口の1つから上記ガス交換装置の上記箱状構造体に導入され、この気体吸入口と連通する上記気体吐出口から上記外部空間へと送出される一方、上記生活および/または活動空間の内気が上記気体吸入口の他の1つから上記ガス交換装置の上記箱状構造体に導入され、この気体吸入口と連通する上記気体吐出口から上記生活および/または活動空間へ還流され、
上記膜は、上記生活および/または活動空間の体積をV、上記膜の面積をA’、厚みをL、上記膜中の二酸化酸素の拡散定数をD’とした時、{(V/A’)/(D’/L)}でスケーリングさせて設定された面積A’を有し、
上記生活および/または活動空間内部の二酸化炭素発生レートをB’、外部と平衡状態にあり上記生活および/または活動空間内部で二酸化炭素発生の無い時の二酸化炭素濃度をξ
O 、上記生活および/または活動空間内部における目標二酸化炭素濃度をξ(ξ<5000ppm)とした時、上記膜の面積A’が、
を満たすように設定されている建築物
の上記エアコンディショナーの上部の吸気口に取り付けられるプレフィルターであって、
上記プレフィルターは中性能フィルターからなり、
上記プレフィルターが上記エアコンディショナーの上記吸気口に取り付けられた時、上記エアコンディショナーの送風口から上記生活および/または活動空間の内部に流出する気体の全部が、上記プレフィルターの上記吸気口へ還流するように構成されることを特徴とするものである。
【0015】
ここで、上記の各発明におけるガス交換装置は、好適には、部屋を構成する壁と生活および/または活動空間との間の空間、具体的には、例えば、屋根裏や部屋の側壁に設けられた二重壁の内部に設置されるが、設置場所はこれに限定されるものではなく、必要に応じて選ばれる。
【0016】
部屋とは、閉空間を構成する包囲体によって構成されるものであり、具体的には、例えば、建築物の一室等が挙げられる。建築物としては、例えば、戸建住宅、アパート、マンション、ビルディング、病院、映画館、養護施設、学校、保育園、幼稚園、体育館、工場、塗装ルーム、漆塗り部屋等、人間活動を支えるあらゆる室が挙げられる。また、部屋は、例えば、内部空間を有する移動体内部の部屋などにも適用でき、かかる移動体としては、例えば、自動車、なかんずく救急車、飛行機、旅客列車、旅客バス、ヨット船室、客船等が挙げられる。
【0017】
上記の建築物においては、生活および/または活動空間の内部と外部との間において、空気の気流としての出入りが無いが、生活および/または活動空間と外界との界面の少なくとも一部が上記膜によって隔てられていることにより、生活および/または活動空間に直接の気体の出入りがあるのと等価な、内部気体のリフレッシュ能力を有する。ここで、空気の気流としての出入りが無いというのは、例えば、この建築物の稼動中に、当該生活および/または活動空間に関する気流がイン、アウトともに厳密にゼロであることを意味するが、このことに限定されるものではなく、例えば、生活および/または活動空間の100%循環フィードバックされる空気流量よりはるかに少ない流量の清浄空気流を出し入れすることも含む。また、生活および/または活動空間の内部と外部との間において正味の空気の流れが無いというのは、例えば、部屋の内の外が等圧であることを含む。
【0018】
生活および/または活動空間とは、例えば、内部で人が就寝・寛ぎ・作業・労働等の日常生活/活動を行う空間であり、居住、静養、実験、製造・塗装作業、養護活動、医科/歯科治療等の場として用いて好適なものである。
【0019】
ダスト微粒子を通さず、気体分子は通す膜(ガス交換膜)は、この膜によって隔てられる空間の間においてダスト微粒子を通さず気体分子を通すことができる膜であれば、基本的には限定されないが、例えば、ダスト微粒子を通さず気体分子は通す膜の隔てる空間の圧力差が0であっても、膜の両側の空気を構成する気体成分の分圧に差があるときには、この膜を介して気体分子が交換され得るものであることが好ましい。ここで、「ダスト微粒子は通さず」とは、ダスト微粒子を完全に(100%)通さない場合のほか、ダスト微粒子を厳密に100%は通さない場合も含む(以下同様)。具体的には、一般に使用される古来よりの障子紙の他、中性能フィルター、HEPAフィルター、ULPAフィルター等が挙げられる。より詳細には、ダスト微粒子の阻止率(透過率)は100%(0%)ならずとも、粒径10μm以上の粒子に対しては、少なくとも90%以上(10%以下)、望ましくは99%(1%)以下である。ダスト微粒子を通さず気体分子は通す膜の素材は、必要に応じて選ばれるが、例えば、防塵フィルター素材、障子紙、不織布、ポリエステルまたはアクリル系等の合成繊維や、パルプ、レーヨン等のセルロース系繊維が用いられる。
【0020】
プレフィルターに用いられる中性能フィルターは、特に限定されないが、例えば、粒径10μm以上の粒子に対する捕集効率γが60%以上98%以下である。このような中性能フィルターは、表面積をできるだけ大きくするために、好適には、障子紙等の平面状のフィルター材が繰り返し折り曲げられた、すなわち山折り谷折りされた形状を有するが、これに限定されるものではない。
【0021】
この発明におけるA≧FL/Dなる不等式および式(18)の導出方法を説明する。
【0022】
今、ある体積Vをもつ生活および/または活動空間(人間が生活・活動する空間)を考える。建築基準法等に則って風量Fにて換気がなされているとする。この気流により、この空間内の空気は十分早くかき回され、双方の内部で空気を構成するガス分子は十分早く均一化すると考えてよく、この時、この部屋内部では空間座標依存性を無視することができる。この部屋で、酸素消費量B(m
3 /s)の活動がなされているとする。時刻tにおける部屋内部の酸素濃度をη(t)とし、外界の酸素濃度(=部屋内部で酸素消費の無い時の酸素濃度)をη
o とすると、時刻t+δtにおける酸素の体積Vη(t+δt)は、時刻tにおける酸素体積Vη(t)を使って
【数1】
と記すことができる。この式(1)の第2項は、時間区間(t、t+δt)の間の酸素消費に伴う酸素体積の減少、第3項はその間に風量Fの換気を通じて外界のフレッシュエア(酸素濃度η
0 を有する)が入ってくることによる酸素体積の増加、第4項は(上述の風量Fの外気給気に伴い)同量の内気(その酸素濃度はη(t)であることに注意)がその間に排出されることによる酸素体積の減少を示す。右辺第一項を左辺に移項して両辺をδtで除することにより、微分方程式:
【数2】
が得られる。初期条件として、時刻t=0で室内の酸素濃度は外界のそれと等しいことから、η(0)=η
0 が成り立つので、微分方程式(2)の解は、
【数3】
と求まる。十分時間がたつと系は定常状態に達し、式(3)の指数関数部がゼロになることから、或はまた、式(2)の左辺がゼロとなることから解るように、内部の酸素濃度は一定値
【数4】
に収束する。
【0023】
他方、体積Vをもつ生活および/または活動空間を、外界との気流のやりとりのない孤立系として成立させると、この生活および/または活動空間を閉空間として定義する“外界との境界面”を横切る空気流がゼロとなる。即ち、上述の部屋に流れ込む風量(=部屋から流れ出る風量)Fはゼロである。その代わり、当該境界面の一部にガス交換能力を有する膜を用いて隔壁を形成する。この膜の面積をA,厚みをL,この膜を通過する気体分子の拡散定数をDとする。この孤立閉空間をなす部屋において、上記と同じく単位時間あたりB(m
3 /s)にて酸素を消費せしめるとすると、アボガドロ数をN
0 、系の置かれた圧力(〜1気圧)における1モルあたりの気体体積をC、上記隔壁(ガス交換膜)の面積をA、隔壁を通して包囲体の内部に入ってくる酸素のフラックスをjとすると、時刻t+δtにおける酸素の体積Vη(t+δt)は、時刻tにおける酸素体積Vη(t)を使って
【数5】
が成り立つ。ここでも(後段にて述べるように100%循環フィードバック系を部屋内に構築すると、エアコンディショナーにより発生する空気流により、生活および/または活動空間での空気は十分早くかき回されるため、空気を構成するガス分子は生活および/または活動空間内部で十分早く均一化するので)生活および/または活動空間内部では空間座標依存性を良い近似で無視することができることを用いた。
【0024】
式(5)の右辺第3項は、上記ガス交換膜の両側(即ち生活および/または活動空間内部と外界との間)での酸素濃度差(濃度勾配)のために流入してくる酸素分子の数である(空気流としてではなく、分子の拡散として酸素が生活および/または活動空間内部に入ってくるのであり、上述の式(1)〜(4)で記述される現象とは全く性質を異にする)。式(5)において、jは
【数6】
で与えられる。ただし、φは生活および/または活動空間の内部の単位体積当たりの酸素分子数、Dはガス交換膜中の酸素の拡散定数で、ガス交換膜に垂直な方向をx軸としたとき、∇はこのx軸方向の微分演算子である。生活および/または活動空間の体積をV、ガス交換膜の厚みをLとすると、Lは、生活および/または活動空間の寸法に比べ3桁以上程度小さく、極めて薄いと見なせるので、数式(5)は、
【数7】
と良い精度で近似することが出来る。η
0 は、式(1)、式(2)におけるのと同様に、外界の酸素濃度であり、通常20.9%程度である。式(7)より、微分方程式
【数8】
が導かれる。数式(8)の厳密解は、
【数9】
と求まる。ここでは十分時間がたった後の定常状態に対応する解に興味があるので、式(8)の左辺=0とおくと、時刻tにおける酸素濃度は
【数10】
と求まる(式(9)でt→∞とした場合に一致する)。
【0025】
ここで、建築基準法等に従って風量Fで換気して、室内の酸素濃度を担保する方法と、障子紙などのガス交換膜としての機能をもつ膜を生活および/または活動空間の一部に用いることで外界から(酸素が濃度勾配を緩和する方向にガス交換膜内を拡散することを利用して)酸素を室内(包囲体内)に供給する場合の2つを比較することができる。即ち、式(2)と式(8)[ 或は、式(4)と式(10)] を比べると、
【数11】
と同定することで、建築基準法等に従って風量Fで換気して、室内の酸素濃度を担保する方法と、障子紙などの面積A、厚みL、分子拡散定数Dを持つガス交換膜を室内と外界の境界の一部に用いることが、等価であることが示された。これは空気中の窒素は生命体の維持活動には基本的にバイスタンダーであることによる。従来のノンゼロ風量換気が”全血献血”に相当するところ、本発明の手法は、”成分献血”に相当すると考えると理解しやすい。日本古来の障子の有効性が、今、厳密に定量性を以って理解される。次元解析を行うと風量Fは[m
3 /s]の次元をもち、AD/Lは、次元[(m
2 ・m
3 /s)/m]=[m
3 /s]であり、まさに風量の次元をもつことから、等価性が裏付けられる。即ち、建築基準法等に従って風量Fで換気して、室内の酸素濃度を担保する方法は、式(11)を満たすA,D,Lを有するガス交換膜をして気密性を持つ生活および/または活動空間と外界との境界に用いることで、同等の酸素交換能を担保することができる。この境界・界面は、一枚のガス交換膜(必要に応じてこれをGas Exchange Membrane:GEMと呼ぶ)であってもよいし、多数枚を集積して、各膜面の両側を内気と外気が層状に流れるようにした一体物、即ちガス交換装置(必要に応じてこれをGas Exchange Box :G×Bと呼ぶ)でもよい。これらにより、メカニカルな駆動力に基づく換気ではなく、濃度勾配が存在するところに生じる拡散を通じて、気密性の高い生活および/または活動空間内部への必要なガス成分(例えば酸素)の外界からの供給、あるいは、或る閉空間内部からの不必要ガス成分(例えば二酸化炭素)の外界への排出を行うことを可能とする(当該閉空間の一部として構成する定量的面積を有するところの)ガス交換膜を与えることができる。エネルギー等分配則が成り立つため、当該ガス交換膜中の各気体分子の拡散定数は、当該分子の質量のスクエアルート(の逆数)に従うのみであるので、例えば、二酸化炭素と酸素では桁数に違いはなく、前係数にいくらかの差がある程度である(共に、〜10
-5m
2 /sのオーダーである)。
【0026】
続いて、生活および/または活動空間の内部で燃焼が生じる場合の酸素消費と二酸化炭素発生を考える。単純に炭素が燃える場合は、
【化1】
糖系の燃焼では最終的に
【化2】
となり、酸素消費と二酸化炭素発生はほぼ1:1であるということができる。この炭素系化合物の燃焼にともなう二酸化炭素の濃度ξ(t)の変化は、燃焼に伴い濃度が上昇する方向であり、内部の濃度が高まると外界に放出されるので、二酸化炭素発生レートをB’(m
3 /s)、外界の二酸化炭素濃度をξ
o 、ガス交換膜面積をA’、上記ガス交換膜における二酸化炭素の拡散定数をD’として
【数12】
が成立する。これより
【数13】
が得られる。この方程式の解は、時刻t=0で、内部と外界で二酸化炭素濃度が平衡状態にある場合は、ξ(0)=ξo より
【数14】
となる。十分時間がたった時は、二酸化炭素濃度は、
【数15】
に収束するが、時刻t=0で、内部の二酸化炭素濃度が式(15)より大きな或る値Coである場合は、式(13)の解は
【数16】
となる。
【0027】
生活および/または活動空間内の二酸化炭素濃度が当初外界と平衡状態の状況から出発し、生活および/または活動空間内部で人が活動する場合を考えよう。生活および/または活動空間内の二酸化炭素濃度は、法規制よりある一定値ξ
max を超え無いよう求められている。これを勘案して、ターゲットとする二酸化炭素濃度ξ(ξ<ξ
max )を、式(15)より
【数17】
である必要があり、これを満たすべくガス交換膜の面積A’は
【数18】
であれば、生活および/または活動空間内部の二酸化炭素濃度は、法規制値を超えることがなく、内部で活動する人間の安全が保たれる。
【0028】
今、生活および/または活動空間内部にて人間がある一定の活動をする際に、これを超えないようにと目標とする二酸化炭素濃度をξ(ξ<ξ
max を満たす)とすると、式(18)より、二酸化炭素発生量が小さいほど、ガス交換膜が薄いほど、また、二酸化炭素分子の拡散定数が大きいガス交換膜であるほど、その必要面積Aは小さくてよいとの指針が得られる。これを変形して
【数19】
が得られる。左辺の分子は、生活および/または活動空間の形(生活および/または活動空間のアスペクト比)のみで決まり、分母はガス交換膜の性質のみで決まる。そして、互いより峻別された分子と分母、両者の比であるところの左辺が応答の時定数を決める。式(19)より、この応答時間は、二酸化炭素の発生レートが大きい時ほど、小さくある(即ち、早く応答する)必要があることがわかる。式(19)の左辺の量について同じ値を与える(V,A‘,D’, L)の組は、各々の値が異なっていても、生活および/または活動空間としては同じ応答時間を有する。このスケーリング則により、任意の生活および/または活動空間に対し、高清浄システムを設計できる。
【0029】
遵守すべき二酸化炭素濃度を与えるいくつかのスタンダードがある。例えば、建築物環境衛生管理基準では1000ppm以下、学校環境衛生基準では1500ppm以下であることが望ましいとされるが、例えば学校の実際の教室では、状況によって、2500ppm〜3000ppmになることも報告されている(生命にはかかわらないが、ぼーっとしたり、集中力が弱まることが指摘されている)。衛生的な限界値は、5000ppmとされている。酸素の場合、20.9%の標準濃度に対し、望ましくは20%台であることが求められるが、健康上・活動上の問題を引き起こさない値としては、18.5%という値が与えられている。従って、上記の基準濃度を満たすようにガス交換膜面積を定めるには、二酸化炭素に対して順守するには、酸素に対しての時に比べ約一桁大きい面積を必要とすることが、式(18)の不等式における濃度変数の組み込まれ方からわかる。このため、ガス交換能力を高めるには、後述の
図3〜
図6に示すようなガス交換膜の多数枚スタック構造をコアとして、これに室内気体(内気)と外気を、ガス交換膜を介して、気流としては直接混じらぬよう、しかし、濃度勾配による拡散によってガス成分自体は交換できるよう設定することが、特に、二酸化炭素の室内から室外への排出において、効果的であることがわかる。空気中の酸素と二酸化炭素の拡散定数は、各々、約1.7×10
-5m
2 /s、約1.6×10
-5m
2 /sである。拡散のみにて、数mオーダーの大きさの生活および/または活動空間の濃度を一定にするには、数十時間程度要してしまうので現実的でない。効率的にガス交換を行い、この後、すみやかに生活および/または活動空間内のガス濃度を平準化するには、ガス交換装置にファンを2基設置して、外気の流れと、ガス交換後室内に還流する内気の流れを有意に生じさせることが好ましい。風量は生活および/または活動空間の大きさに応じて、一般的には0.1〜数百m
3 /分に設定される。内気が通る領域のガス交換膜の面間隔(幅)および外気が通る領域のガス交換膜の面間隔(幅)は必要に応じて選ばれる。例えば、内気が通る領域のガス交換膜の面間隔を、ガス交換に要する時間が短くなるように小さく調整し、外気が通る領域のガス交換膜の面間隔はそれより大きく設定することができる。このようなガス交換膜の面間隔の非対称な設定では、ガス交換後の成分濃度を、体積比を通じて、局所的に外気の濃度に近づける効果が期待される。上記のファン風量が十分大きい場合は、対称的に面間隔を設定することも、内気・外気対称的にファンを設定できるということで、系の全体としての対称性、安定性の面で有力である。