(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555508
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】水中航走体の回収方法及び回収システム
(51)【国際特許分類】
B63C 11/00 20060101AFI20190729BHJP
B63C 7/16 20060101ALI20190729BHJP
B63B 21/66 20060101ALI20190729BHJP
B63B 23/58 20060101ALI20190729BHJP
B63B 23/48 20060101ALI20190729BHJP
B63G 8/00 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
B63C11/00 B
B63C7/16
B63B21/66
B63B23/58
B63B23/48
B63G8/00 L
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-57261(P2015-57261)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2016-175538(P2016-175538A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】真貝 昌俊
【審査官】
杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0025523(US,A1)
【文献】
特開昭59−176183(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/173392(WO,A1)
【文献】
米国特許第07025014(US,B1)
【文献】
実開昭63−016296(JP,U)
【文献】
特開昭60−131395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/00
B63B 21/66
B63C 11/48
B63C 7/16
B63G 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中航走体を水中から母船に回収する水中航走体の回収方法であって、
前記母船から繰り出したケーブルを水中で水平方向に張った状態とし、
前記ケーブルを横切るように、かつ、前記ケーブルに先端が衝突するように、前記水中航走体を水中で航走させ、
前記水中航走体の先端を前記ケーブルに衝突させてから、前記水中航走体の表面に設けられたフックを水中で前記ケーブルに係合させた後、
前記ケーブルを巻き取って前記水中航走体を前記母船に回収する、
ことを特徴とする水中航走体の回収方法。
【請求項2】
前記ケーブルは、水中で水の抵抗を受け得る曳航体を備え、該曳航体を水中に投入して前記ケーブルを繰り出した後、前記ケーブルを前記母船で曳航することにより、前記ケーブルを水中で水平方向に張った状態とする、ことを特徴とする請求項1に記載の水中航走体の回収方法。
【請求項3】
前記ケーブルは、水中で浮遊可能な浮遊ケーブルを備え、該浮遊ケーブルを水中に投入して前記ケーブルを繰り出した後、前記母船を停止した状態で前記ケーブルを水中で水平方向に張った状態とする、ことを特徴とする請求項1に記載の水中航走体の回収方法。
【請求項4】
前記ケーブルは、間隔を隔てて配置された水深センサを備え、該水深センサにより水中で水平方向に張られた前記ケーブルの水深を計測し、前記水中航走体を航走させる水深を設定する、ことを特徴とする請求項1に記載の水中航走体の回収方法。
【請求項5】
水中航走体を水中から母船に回収する水中航走体の回収システムであって、
繰り出し可能かつ巻き取り可能に構成され前記母船に搭載されたケーブルと、
前記水中航走体の上部及び下部に設けられたフックと、を備え、
前記母船から繰り出した前記ケーブルを水中で水平方向に張った状態で前記水中航走体の先端を前記ケーブルに接触させるように航走させ、前記水中航走体の先端を前記ケーブルに衝突させてから前記フックを前記ケーブルに係合させるようにした、
ことを特徴とする水中航走体の回収システム。
【請求項6】
前記ケーブルは、水中で水の抵抗を受け得る曳航体又は水中で浮遊可能な浮遊ケーブルを有する、ことを特徴とする請求項5に記載の水中航走体の回収システム。
【請求項7】
前記ケーブルは、間隔を隔てて配置された複数の水深センサを有する、ことを特徴とする請求項5に記載の水中航走体の回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中航走体の回収方法及び回収システムに係り、特に、荒天時でも水中航走体を的確に母船に回収することができる水中航走体の回収方法及び回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
海中や海底における種々の調査を行うため、調査に必要な機器を搭載した水中航走体を母船から海に投入し、海中で航走させることが行われている。特に、大深度や広域の調査では、母船から切り離された状態で自由に海中を航走可能な自律航行型の水中航走体が用いられることが多い。かかる水中航走体は、母船から海中に投入し、調査終了後に母船に引き上げられる。
【0003】
従来、水中航走体を海中から母船に引き上げる方法として、水中航走体から揚収索に繋がれたブイを放出し、海面に浮くブイを母船の甲板から投擲した回収索(サンドレット等)で海面において引っ掛け、その索を手繰ることで水中航走体を母船に回収する方法が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
また、水中航走体を海面に浮上させて停止させ、母船の甲板から先端にフロートが取り付けられた回収索を投擲し、その回収索を水中航走体に設けられたフックに海面で係合させ、回収索を手繰ることで水中航走体を母船に回収する方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−229005号公報
【特許文献2】特開2003−291888号公報
【特許文献3】特開昭59−176183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載された回収方法は、海面に浮上したブイに母船から投擲した回収索を引っ掛けており、特許文献3に記載された回収方法は、海面に浮上した水中航走体のフックに母船から投擲した回収索を引っ掛けており、何れにしても海面で水中航走体を引っ掛ける作業となっている。
【0007】
このため、海面が波立つ荒天時には、水中航走体の回収が困難となるケースが多い。すなわち、従来の水中航走体の回収方法では、回収のポイントとなる引っ掛け作業を海面で行っていたので、気象や海象の影響を受け易く、荒天時における回収が困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を鑑みて創案されたものであり、荒天時でも水中航走体を的確に母船に回収することができる水中航走体の回収方法及び回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、水中航走体を水中から母船に回収する水中航走体の回収方法であって、前記母船から繰り出したケーブルを水中で水平方向に張った状態とし、前記ケーブルを横切るように
、かつ、前記ケーブルに先端が衝突するように、前記水中航走体を水中で航走させ、
前記水中航走体の先端を前記ケーブルに衝突させてから、前記水中航走体の表面に設けられたフックを水中で前記ケーブルに係合させた後、前記ケーブルを巻き取って前記水中航走体を前記母船に回収する、ことを特徴とする水中航走体の回収方法が提供される。
【0010】
前記ケーブルは、水中で水の抵抗を受け得る曳航体を備え、該曳航体を水中に投入して前記ケーブルを繰り出した後、前記ケーブルを前記母船で曳航することにより、前記ケーブルを水中で水平方向に張った状態とするようにしてもよい。
【0011】
また、前記ケーブルは、水中で浮遊可能な浮遊ケーブルを備え、該浮遊ケーブルを水中に投入して前記ケーブルを繰り出した後、前記母船を停止した状態で前記ケーブルを水中で水平方向に張った状態とするようにしてもよい。
【0012】
また、前記ケーブルは、間隔を隔てて配置された水深センサを備え、該水深センサにより水中で水平方向に張られた前記ケーブルの水深を計測し、前記水中航走体を航走させる水深を設定するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明によれば、水中航走体を水中から母船に回収する水中航走体の回収システムであって、繰り出し可能かつ巻き取り可能に構成され前記母船に搭載されたケーブルと、前記水中航走体の
上部及び下部に設けられたフックと、を備え、前記母船から繰り出した前記ケーブルを水中で水平方向に張った状態で
前記水中航走体の先端を前記ケーブルに接触させるように航走させ、前記水中航走体の先端を前記ケーブルに衝突させてから前記フックを前記ケーブルに係合させるようにした、ことを特徴とする水中航走体の回収システムが提供される。
【0014】
前記ケーブルは、水中で水の抵抗を受け得る曳航体を有していてもよいし、水中で浮遊可能な浮遊ケーブルを有していてもよい。また、前記ケーブルは、間隔を隔てて配置された複数の水深センサを有していてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る水中航走体の回収方法及び回収システムによれば、母船から繰り出したケーブルを水中で水平方向に張った状態にして水中航走体のフックを係合させるようにしたことから、荒天時に水面が波立っている場合であっても、水中のケーブルは波の影響を受け難く、ケーブルを安定して展張することができ、水中航走体を的確にケーブルに係合させて母船に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る水中航走体の回収システムの概略を示す側面図である。
【
図2】第一実施形態に係る水中航走体の回収方法の概略を示す平面図である。
【
図4】第一実施形態に係る水中航走体の説明図であり、(a)は水中航走体の部分破断側断面図、(b)は水中航走体に設けたフックの側面図である。
【
図5】本発明の第二実施形態に係る水中航走体の回収システムの概略を示す側面図である。
【
図6】第二実施形態に係る水中航走体の回収方法の概略を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付すことにより重複した説明を省略し、また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
図1〜
図4を用いて本発明の第一実施形態に係る水中航走体の回収方法及び回収システムについて説明する。
【0019】
本発明の第一実施形態に係る水中航走体1の回収システムは、
図1に示したように、水中航走体1を水中(例えば、海中2)から母船3に回収する水中航走体1の回収システムであって、繰り出し可能かつ巻き取り可能に構成され母船3に搭載されたケーブル4と、水中航走体1の表面に設けられたフック5と、を備え、ケーブル4は、海中2で水の抵抗を受け得る曳航体6と、間隔を隔てて配置された複数の水深センサ19と、を有し、母船3から繰り出したケーブル4を海中2で水平方向に張った状態でフック5をケーブル4に係合させるようにしたことを特徴とする。
【0020】
ここで、「ケーブル4を海中2で水平方向に張った状態」とは、ケーブル4を水平方向に引っ張って海中2で展張させた状態を意味し、ケーブル4が海中2で水平に展張された状態のみならず、海中2で斜めに展張された状態も含む趣旨である。
【0021】
水中航走体1は、例えば、
図1及び
図4(a)に示したように、先端1aが流線型の円柱状の本体8と、本体8の尾部に配置された垂直翼9及び水平翼10と、を備えており、垂直翼9及び水平翼10を操舵することで進行方向を変更できるようになっている。本体8は、浮力を調節するための浮き袋を有していてもよい。本体8には、深度センサ11、慣性航法装置12、制御装置13、音響通信器14、電動機15等が収容されている。なお、水中航走体1は、図示した構成に限定されるものではない。
【0022】
深度センサ11は、水中航走体1の深度を計測するセンサである。慣性航法装置12は、ジャイロや加速度センサ等を用いて水中航走体1の位置や速度を算出する機器である。制御装置13は、水中航走体1の深度、位置、速度等に基づいて目標とする進行方向、進行速度等を制御する機器である。音響通信器14は、水中航走体1の位置や速度や深度等を母船3に音波で送信し、母船3から制御装置13に指令を与えるための各種信号を音波で受信する。電動機15は、制御装置13からの指令に応じてスクリュー16を駆動する。
【0023】
また、
図4(b)に示したように、水中航走体1の本体8の表面にはフック5が取り付けられている。フック5は、例えば、水中航走体1の表面に固定されたJ字状のフック本体5aと、水中航走体1の表面に回動自在に取り付けられたI字状の抜止金具5bと、抜止金具5bとフック本体5aとの間に設けられたバネ5cと、を備えている。
【0024】
抜止金具5bは、通常はバネ5cの付勢力によって先端5dがフック本体5aに押し付けられて閉じており、ケーブル4によって押されるとバネ5cが縮んで開きケーブル4をフック本体5aの内部に導く。その後、バネ5cが復元して抜止金具5bが閉じ、ケーブル4がフック5から抜けない状態となる。
【0025】
また、
図4(a)に示したように、フック5は水中航走体1の上部及び下部の両方に取り付けられていてもよい。ケーブル4は、母船3に曳航された曳航体6が海水から受ける抵抗によって、
図4(a)の図面裏表方向に延出された状態となっており、水中航走体1の先端1aに衝突した後、水中航走体1の上側に案内された場合には上部のフック5と係合し、水中航走体1の下側に案内された場合には下部のフック5と係合する。
【0026】
かかる構成により、水中航走体1の先端1aに衝突したケーブル4が、水中航走体1の上側に案内された場合であっても下側に案内された場合であっても、上部及び下部の何れか一方のフック5に係合させることができる。
【0027】
また、
図4(a)に示したように、フック5は、水中航走体1の重心位置Gに合わせて取り付けられている。このため、フック5に係合したケーブル4を吊り上げたとき、水中航走体1が略水平姿勢となり、水中航走体1の取り扱い(ハンドリング)が良好となる。
【0028】
また、
図4(a)に示したように、水中航走体1の先端1aからフック5に渡る表面に、先端1aに衝突したケーブル4を案内するためのガイド部材17を設けるようにしてもよい。ガイド部材17は、例えば、水中航走体1の表面を覆う鞘状に形成されている。ガイド部材17は、プラスチック樹脂等のケーブル4が滑りやすい材質から成り、ケーブル4の衝突による水中航走体1の損傷を防止するプロテクタとしても機能する。なお、ガイド部材17と水中航走体1の先端1aとの間に衝撃吸収用の隙間18を設け、ケーブル4が衝突したときにガイド部材17を隙間18で撓ませることにより衝撃を吸収するようにしてもよい。
【0029】
母船3は、水中航走体1の運搬、回収、制御等を行う作業船である。母船3は、水中航走体1を制御する制御装置(図示せず)や水中航走体1との間で各種信号やデータを送受信する通信機器(図示せず)を有している。また、母船3は、
図1に示したように、ケーブル4の繰り出し及び巻き取りを行うクレーン7を有している。
【0030】
ケーブル4は、例えば、ワイヤロープであり、少なくとも水中航走体1を吊り上げ可能な強度を有している。ケーブル4は、通常時はクレーン7に巻き取られており、水中航走体1の回収時に海中2に投入されクレーン7から繰り出される。ケーブル4は、比重が海水と略等しい中性浮遊のケーブルであってもよい。また、
図1に示したように、ケーブル4の先端には曳航体6が接続されている。
【0031】
曳航体6は、例えば、
図3に示したように、輪郭が円錐状のワイヤフレーム6aと、ワイヤフレーム6aに張られたネット6bと、を有している。かかる構成によれば、前進する母船3によってケーブル4が曳航されると、海水がネット6bを通過する際の抵抗によってケーブル4が張った状態となる。ネット6bは、円錐状のワイヤフレーム6aの側面(頂点と底面との間の面)に張るのみならず、底面に張るようにしてもよい。
【0032】
曳航体6は、海水よりも比重が大きいため、曳航時に海面2aに浮き上がることなく沈んだ状態が維持される。また、輪郭を円錐状とすることにより、曳航時に生じる振動や揺動を低減することができる。曳航体6は、上述した構成に限られず、曳航時に海水によって抵抗が生じる構造であれば足り、例えば、パラシュート状の構造であってもよい。
【0033】
また、
図1及び
図2に示したように、ケーブル4には、所定の間隔(例えば、4〜5m)を隔てて複数の水深センサ19が取り付けられている。水中航走体1のフック5は、水深センサ19間のケーブル4に係合される。このように、複数の水深センサ19を配置することにより、水深センサ19間に展張されたケーブル4の位置をより正確に把握することができる。例えば、二つの水深センサ19の水深が異なる場合には、その間の水深(例えば、平均値)を水中航走体1の目標深度に設定することができる。
【0034】
ここで、二つの水深センサ19の水深差が水中航走体1の本体8の直径よりも小さければ、水中航走体1をケーブル4に的確に衝突させることができる。したがって、水深センサ19の水深差が水中航走体1の本体8の直径よりも小さくなるように、母船3の速度や方向を制御するようにしてもよい。
【0035】
上述した本実施形態に係る水中航走体1の回収システムを用いることにより、
図2に示したように、母船3から繰り出したケーブル4を海中2で水平方向に張った状態とし、ケーブル4を横切るように水中航走体1を海中2で航走させ、水中航走体1の表面に設けられたフック5を海中2でケーブル4に係合させた後、ケーブル4を巻き取って水中航走体1を母船3に回収することができる。
【0036】
ケーブル4を海中2で水平方向に張った状態にするには、曳航体6を海中2に投入してケーブル4を繰り出した後、ケーブル4を母船3で曳航する。曳航体6は、上述したように、海中2で海水の抵抗を受け得る構成を成していることから、母船3で曳航することにより、ケーブル4を海中2で略水平方向に展張することができる。
【0037】
次に、水深センサ19により海中2で水平方向に張られたケーブル4の水深を計測し、水中航走体1を航走させる水深を設定する。また、母船3の速度及び方向並びにケーブル4の位置情報に基づいて、水中航走体1を航走させる方向や速度を設定する。このとき、水中航走体1の水深・方向・速度は、先端1aが水深センサ19間のケーブル4に略直角に衝突するように設定することが好ましい。なお、水中航走体1の水深は、先端1aをケーブル4に衝突させずにフック5に係合させることができるように設定してもよい。
【0038】
そして、水中航走体1を海中2でケーブル4に向かって航走させることにより、フック5をケーブル4に係合させる。フック5がケーブル4に係合したか否かは、母船3から目視で確認するようにしてもよいし、フック5にセンサを配置してケーブル4の係合を母船3で把握できるようにしてもよい。
【0039】
その後、クレーン7を作動させてケーブル4を巻き取ることにより、曳航体6をフック5に係止させることができ、水中航走体1を曳航体6とともに母船3に回収することができる。したがって、曳航体6は、フック5に係合した状態で曳航されたとき及びクレーン7により水中航走体1を吊り上げたときに、フック5から抜けないような構成を有している。
【0040】
クレーン7により母船3上に吊り上げた水中航走体1は、例えば、母船3の所定の収容場所(例えば、甲板上)にクレーン7によって搬送して載置するようにしてもよいし、クレーン7上にそのまま固定するようにしてもよい。
【0041】
本実施形態に係る水中航走体1の回収方法及び回収システムによれば、母船3から繰り出したケーブル4を海中2で水平方向に張った状態にして水中航走体1のフック5を係合させるようにしたことから、荒天時に水面が波立っている場合であっても、海中2のケーブル4は波の影響を受け難く、ケーブル4を安定して展張することができ、水中航走体1を的確にケーブル4に係合させて母船3に回収することができる。
【0042】
次に、
図5及び
図6を用いて本発明の第二実施形態に係る水中航走体1の回収方法及び回収システムを説明する。
【0043】
第二実施形態に係る水中航走体1の回収システムは、基本的に上述した第一実施形態に係る回収システムと同様の構成を有しており、ケーブル4の先端に曳航体6に替えて、海中2で浮遊可能な浮遊ケーブル20を接続したものである。また、浮遊ケーブル20の両端には、浮遊ケーブル20の姿勢を安定させる錘21を配置するようにしてもよい。水深センサ19は、錘21間の浮遊ケーブル20に配置される。
【0044】
浮遊ケーブル20の海中2における姿勢を安定させるためには、浮遊ケーブル20の比重xが海水の比重aよりも僅かに小さく、錘21の比重yが海水の比重aよりも僅かに大きく、x<a<yの関係を有していることが好ましい。なお、水深センサ19の比重zは、浮遊ケーブル20の比重xと等しいか僅かに小さい(z≦x)ことが好ましい。
【0045】
第二実施形態に係る水中航走体1の回収方法は、上述した第一実施形態に係る回収方法とケーブル4の展張の仕方が異なるものでる。具体的には、第二実施形態に係る回収方法では、浮遊ケーブル20を海中2に投入してケーブル4を繰り出した後、母船3を停止した状態でケーブル4を海中2で水平方向に張った状態にしている。このように、浮遊ケーブル20を用いることにより、ケーブル4を曳航させることなく水平方向に展張した状態を保持することができ、水中航走体1の航走制御を容易に行うことができる。
【0046】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例又は修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
1 水中航走体
1a 先端
2 海中
2a 海面
3 母船
4 ケーブル
5 フック
5a フック本体
5b 抜止金具
5c バネ
5d 先端
6 曳航体
6a ワイヤフレーム
6b ネット
7 クレーン
8 本体
9 垂直翼
10 水平翼
11 深度センサ
12 慣性航法装置
13 制御装置
14 音響通信器
15 電動機
16 スクリュー
17 ガイド部材
18 隙間
19 水深センサ
20 浮遊ケーブル
21 錘