特許第6555529号(P6555529)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 清水建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6555529-鋼板コンクリート造の接合構造 図000002
  • 特許6555529-鋼板コンクリート造の接合構造 図000003
  • 特許6555529-鋼板コンクリート造の接合構造 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555529
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】鋼板コンクリート造の接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/61 20060101AFI20190729BHJP
   E04B 5/40 20060101ALI20190729BHJP
   E04B 1/16 20060101ALI20190729BHJP
   E04B 2/86 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   E04B1/61 505Z
   E04B5/40 A
   E04B1/16 E
   E04B2/86 601S
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-243236(P2015-243236)
(22)【出願日】2015年12月14日
(65)【公開番号】特開2017-110347(P2017-110347A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(72)【発明者】
【氏名】太田 和也
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−059901(JP,U)
【文献】 特開平06−331776(JP,A)
【文献】 特開2012−215038(JP,A)
【文献】 特開2003−041656(JP,A)
【文献】 特開2007−224651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/61
E04B 5/40
E04B 1/16
E04B 2/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板コンクリート造の床と鋼板コンクリート造の壁との接合構造であって、
前記床は、
互いに上下方向に離間して配置された一対の床側鋼板と、
該一対の床側鋼板の間に充填された床側コンクリート部と、を備え、
前記壁は、
前記床の端部と接合され一方向に沿って延びる第一壁側鋼板と、該第一壁側鋼板と水平方向に離間して配置され一方向に沿って延びる第二壁側鋼板と、
前記第一壁側鋼板と前記第二壁側鋼板とを前記床側鋼板の高さ位置で連結し、鉛直面に沿うとともに前記一方向に間隔を有して配置された複数の連結鋼板と、
前記第一壁側鋼板と前記第二壁側鋼板との間に、前記連結鋼板の上下方向にわたって充填された壁側コンクリート部と、を備え
前記第一壁側鋼板には、前記連結鋼板と対応する高さ位置に貫通孔が形成され、
前記連結鋼板の前記第一壁側鋼板側の端部は、前記貫通孔に配置され、前記床側鋼板に接合されていることを特徴とする鋼板コンクリート造の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板コンクリート造の接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、構造物の床、壁、柱、梁等の躯体の外殻を鋼板で形成して、その内部にコンクリートを充填し、鋼板の内面に設けられた複数のスタッドを介して、鋼板とコンクリートとを構造的に一体化した鋼板コンクリート造(SC構造)が知られている。このような鋼板コンクリート構造は、大断面の頑強な躯体を効率的に構築できるため、原子力施設の建屋等に普及しつつある(下記特許文献1参照)。
【0003】
また、鋼板コンクリート造の床と鋼板コンクリート造の壁との接合部分では、接合強度を確保するために、壁内にダイアフラム鋼板を水平面に沿って配置し、ダイアフラム鋼板の端部が壁の外面を形成する鋼板に剛接合された構成が知られている。このダイアフラム鋼板には、コンクリート打設用の開口が所定の位置に形成されていて、打設されたコンクリートは当該開口を通り、ダイアフラム鋼板の下方に充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−84692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように壁内に水平面に沿ってダイアフラム鋼板が配置される構成では、ダイアフラム鋼板の下方では、コンクリート打設用の開口からの位置によりコンクリートの充填性にムラが生じる虞がある。具体的には、コンクリート打設用の開口の直下ではコンクリートが十分に充填されるが、コンクリート打設用の開口から離間した位置ではコンクリートの充填が不十分になる虞がある。
さらに、水平面に沿って配置されたダイアフラム鋼板により、壁内のコンクリートの連続性が上下に分断されるため、耐震壁としての面内せん断力の伝達機能が低下する虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、壁内のコンクリートの充填性を良好且つ連続性を確保することができる鋼板コンクリート造の接合構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る鋼板コンクリート造の接合構造は、鋼板コンクリート造の床と鋼板コンクリート造の壁との接合構造であって、前記床は、互いに上下方向に離間して配置された一対の床側鋼板と、該一対の床側鋼板の間に充填された床側コンクリート部と、を備え、前記壁は、前記床の端部と接合され一方向に沿って延びる第一壁側鋼板と、該第一壁側鋼板と水平方向に離間して配置され一方向に沿って延びる第二壁側鋼板と、前記第一壁側鋼板と前記第二壁側鋼板とを前記床側鋼板の高さ位置で連結し、鉛直面に沿うとともに前記一方向に間隔を有して配置された複数の連結鋼板と、前記第一壁側鋼板と前記第二壁側鋼板との間に、前記連結鋼板の上下方向にわたって充填された壁側コンクリート部と、を備え、前記第一壁側鋼板には、前記連結鋼板と対応する高さ位置に貫通孔が形成され、前記連結鋼板の前記第一壁側鋼板側の端部は、前記貫通孔に配置され、前記床側鋼板に接合されていることを特徴とする。
【0008】
このように構成された鋼板コンクリート造の接合構造では、壁側コンクリート部を構成するコンクリートは、複数の連結鋼板の間の空間を通過して、第一壁側鋼板と第二壁側鋼板との間で充填される。連結鋼板は、鉛直面に沿って、一方向に間隔を有して配置されている。よって、複数の連結鋼板の間に形成される空間が大きく確保され、コンクリートの充填箇所が一方向に沿って確保されるため、壁内のコンクリートの充填性を良好とすることできる。
また、複数の連結鋼板の間に形成される空間を介して、壁側コンクリート部の連結鋼板の上方に位置する部分と壁側コンクリート部の連結鋼板の下方に位置する部分とが連通される。よって、壁側コンクリート部の連続性を確保することができる。
また、第一壁側鋼板には、連結鋼板と対応する高さ位置に貫通孔が形成され、連結鋼板の第一壁側鋼板側の端部は、貫通孔に配置され、床側鋼板に接合されている。よって、床側鋼板に生じる引張力を連結鋼板に伝達することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る鋼板コンクリート造の接合構造によれば、壁内のコンクリートの充填性を良好且つ連続性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の鋼板コンクリート造の接合構造を示す模式的な平面図である。
図2図1のA−Aにおける模式的な断面図である。
図3】(a)本発明の一実施形態の変形例の図1のA−Aに相当する箇所の模式的な断面図、(b)(a)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る鋼板コンクリート造の接合構造について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態の鋼板コンクリート造の接合構造を示す平面図である。図2は、図1のA−Aにおける模式的な断面図である。なお、図1において、壁側コンクリート部の図示を省略している。
図1及び図2に示すように、鋼板コンクリート造の床10と、鋼板コンクリート造の壁20とが、接合構造1により接合されている。
【0014】
床10は、上面を形成する上部床鋼板(床側鋼板)11と、上部床鋼板11の下方に配置され床10の下面を形成する下部床鋼板(床側鋼板)12と、上部床鋼板11と下部床鋼板12との間に充填された床コンクリート部(床側コンクリート部)13と、有している。
【0015】
上部床鋼板11及び下部床鋼板12は、それぞれ平板状に形成され、水平面に沿って配置されている。上部床鋼板11には、鉛直方向に貫通する開口Hが複数形成されている。開口Hは、床コンクリート部13のコンクリートを打設するためのものである。コンクリート打設後に、開口Hの形状に対応した形状の開口板14を溶接することで、開口Hは閉塞される。
【0016】
上部床鋼板11の下面には、下方に向かって延びるスタッドSが複数設けられている。下部床鋼板12の上面には、上方に向かって延びるスタッドSが複数設けられている。
【0017】
壁20は、床10の端部20Eに沿って配置され、所定の水平方向(一方向)に延びるように構成されている。本実施形態では、床10の二辺の端部20Eにそれぞれ沿って壁20が配置されている。
【0018】
壁20は、床10の端部20Eと接合される内側壁鋼板(第一壁側鋼板)21と、内側壁鋼板21と水平方向に離間して配置された外側壁鋼板(第二壁側鋼板)22と、内側壁鋼板21と外側壁鋼板22との間に充填された壁コンクリート部(壁側コンクリート部)23と、有している。
【0019】
内側壁鋼板21及び外側壁鋼板22は、それぞれ平板状に形成され、鉛直面に沿って配置されている。
【0020】
内側壁鋼板21の床10側を向く面には、床10側に向かって延びるスタッドSが複数設けられている。上部床鋼板11及び下部床鋼板12に設けられたスタッドS、及び内側壁鋼板2の床10側を向く面に設けられたスタッドSを介して、床コンクリート部13は上部床鋼板11、下部床鋼板12及び内側壁鋼板21と一体化されている。
【0021】
内側壁鋼板21の外側壁鋼板22側を向く面には、外側壁鋼板22側に向かって延びるスタッドSが複数設けられている。外側壁鋼板22の内側壁鋼板21側を向く面には、内側壁鋼板21側に向かって延びるスタッドSが複数設けられている。これらスタッドSを介して、壁コンクリート部23は内側壁鋼板21及び外側壁鋼板22と一体化されている。
【0022】
内側壁鋼板21には、上部床鋼板11及び下部床鋼板12が配置される高さ位置に、板厚方向に貫通する挿通孔(貫通孔)21Hが形成されている。
【0023】
内側壁鋼板21と外側壁鋼板22とは、鉛直ダイアフラム鋼板(連結鋼板)30により連結されている。
【0024】
鉛直ダイアフラム鋼板30は、上部床鋼板11及び下部床鋼板12が配置される高さ位置に配置されている。鉛直ダイアフラム鋼板30は、壁20の延在方向(所定方向)に沿って、等間隔に複数配置されている。隣り合うダイアフラム鋼板の間の空間部Tは、壁コンクリート部23を構成するコンクリートが充填される際に通過する空間とされている。
【0025】
鉛直ダイアフラム鋼板30は、内側壁鋼板21と外側壁鋼板22との間に架設され、鉛直面に沿って配置される主板部31を有している。主板部31は、板状に形成され、鉛直面に沿って配置されている。
【0026】
主板部31の外側壁鋼板22側の端部30Xは、外側壁鋼板22に溶接等により接合されている。主板部31の内側壁鋼板21側の端部30Y側は、上部床鋼板11及び下部床鋼板12の挿通孔21Hに挿通されている。
【0027】
鉛直ダイアフラム鋼板30の端部30Yには、傾斜部32が形成されている。上部床鋼板11に沿って配置される鉛直ダイアフラム鋼板30の傾斜部32は、下方に向かうにしたがって次第に内側壁鋼板21に近づくように傾斜している。傾斜部32の上部は、上部床鋼板11に接合されている。
【0028】
下部床鋼板12に沿って配置される鉛直ダイアフラム鋼板30の傾斜部32は、上方に向かうにしたがって次第に内側壁鋼板21に近づくように傾斜している。傾斜部32の下部は、下部床鋼板12に接合されている。
【0029】
壁コンクリート部23は、鉛直ダイアフラム鋼板30の上下方向にわたって充填されている。隣り合うダイアフラム鋼板の間に形成された空間部Tを通過したコンクリートが、壁コンクリート部23におけるダイアフラム鋼板よりも下方に充填される。
【0030】
このように構成された鋼板コンクリート造の接合構造1では、壁コンクリート部23を構成するコンクリートは、複数の鉛直ダイアフラム鋼板30の間の空間部Tを通過して、内側壁鋼板21と外側壁鋼板22との間で充填される。鉛直ダイアフラム鋼板30は、鉛直面に沿って、所定方向(壁20の延在方向)に間隔を有して配置されている。よって、複数の鉛直ダイアフラム鋼板30の間に形成される空間部Tが大きく確保され、コンクリートの充填箇所が壁20の延在方向に沿って確保されるため、壁20内のコンクリートの充填性を良好とすることできる。
【0031】
また、複数の鉛直ダイアフラム鋼板30の間に形成される空間部Tを介して、壁コンクリート部23の鉛直ダイアフラム鋼板30の上方に位置する部分と壁コンクリート部23の鉛直ダイアフラム鋼板30の下方に位置する部分とが連通される。よって、壁コンクリート部23の連続性を確保することができる。
【0032】
また、内側壁鋼板21には、鉛直ダイアフラム鋼板30と対応する高さ位置に挿通孔21Hが形成され、鉛直ダイアフラム鋼板30の内側壁鋼板21側の端部30Yは、挿通孔21Hに配置され、上部床鋼板11または下部床鋼板12に接合されている。よって、上部床鋼板11または下部床鋼板12に生じる引張力を鉛直ダイアフラム鋼板30に伝達することができる。
【0033】
(変形例)
次に、上記に示す実施形態の変形例について、主に図3を用いて説明する。
以下の変形例において、前述した実施形態で用いた部材と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図3は、(a)は本発明の一実施形態の変形例の図1のA−Aに相当する箇所の模式的な断面図、(b)(a)の部分拡大図である。
図3に示すように、上部床鋼板11には、下面から下方に突出する複数のリブ15が設けられている。リブ15は、床10の一方の端部20E(図1参照。以下同じ。)に平行に複数設けられるとともに、床10の一方の端部20Eと直交する他方の端部20E(図1参照。以下同じ。)に平行に複数設けられている。換言すると、リブ15は、平面視で格子状に形成されている。平面視において、リブ15は、開口Hと重ならない位置に配置されている。
【0034】
リブ15には、板厚方向に貫通する孔16が形成されている。孔16には、床コンクリート部13を構成するコンクリートが充填されている。
【0035】
このように構成された鋼板コンクリート造の接合構造1では、リブ15に形成された孔16にはコンクリートが充填されているため、上部床鋼板11と床コンクリート部13とを一体化するためのスタッドとして機能する。また、上部床鋼板11に設けられたリブ15により、上部床鋼板11に生じた引張力が効率的に鉛直ダイアフラム鋼板30に伝達される。
【0036】
なお、上述した実施の形態において示した組立手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0037】
例えば、リブ15は、上部床鋼板11に設けられているが、下部床鋼板12の上面から上方に突出するように設けられていてもよい。あるいは、リブ15は、上部床鋼板11(下部床鋼板12)の端部20E側にのみ設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…接合構造
10…床
11…上部床鋼板(床側鋼板)
12…下部床鋼板(床側鋼板)
13…床コンクリート部(床側コンクリート部)
14…開口板
20…壁
21…内側壁鋼板(第一壁側鋼板)
21H…挿通孔(貫通孔)
22…外側壁鋼板(第二壁側鋼板)
23…壁コンクリート部(壁側コンクリート部)
30…鉛直ダイアフラム鋼板(連結鋼板)
31…主板部
32…傾斜部
H…開口
S…スタッド
T…空間部
図1
図2
図3