(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ロングタームエボリューション(LTE)
【0003】
WCDMA(登録商標)無線アクセス技術をベースとする第3世代の移動通信システム(3G)は、世界中で広範な規模で配備されつつある。この技術を機能強化または発展・進化させる上での最初のステップとして、高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)と、エンハンストアップリンク(高速アップリンクパケットアクセス(HSUPA)とも称する)とが導入され、これにより、極めて競争力の高い無線アクセス技術が提供されている。
【0004】
ユーザからのますます増大する需要に対応し、新しい無線アクセス技術に対する競争力を確保する目的で、3GPPは、ロングタームエボリューション(LTE)と称される新しい移動通信システムを導入した。LTEは、今後10年間にわたり、データおよびメディアの高速伝送ならびに大容量の音声サポートに要求されるキャリアを提供するように設計されている。高いビットレートを提供する能力は、LTEにおける重要な方策である。
【0005】
LTE(ロングタームエボリューション)に関する作業項目(WI)の仕様は、E−UTRA(Evolved UMTS Terrestrial Radio Access(UTRA):進化したUMTS地上無線アクセス)およびE−UTRAN(Evolved UMTS Terrestrial Radio Access Network(UTRAN):進化したUMTS地上無線アクセスネットワーク)と称され、最終的にリリース8(LTEリリース8)として公開される。LTEシステムは、パケットベースの効率的な無線アクセスおよび無線アクセスネットワークであり、IPベースの全機能を低遅延かつ低コストで提供する。LTEでは、与えられたスペクトルを用いてフレキシブルなシステム配備を達成するために、スケーラブルな複数の送信帯域幅(例えば、1.4MHz、3.0MHz、5.0MHz、10.0MHz、15.0MHz、および20.0MHz)が指定されている。ダウンリンクには、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)をベースとする無線アクセスが採用されている。なぜなら、かかる無線アクセスは、低いシンボルレートのため本質的にマルチパス干渉(MPI)を受けにくく、また、サイクリックプレフィックス(CP)を使用しており、さらに、さまざまな送信帯域幅の構成に対応可能だからである。アップリンクには、SC−FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access:シングルキャリア周波数分割多元接続)をベースとする無線アクセスが採用されている。なぜなら、ユーザ機器(UE)の送信出力が限られていることを考えれば、ピークデータレートを向上させるよりも広いカバレッジエリアを提供することが優先されるからである。LTEリリース8/9では、数多くの主要なパケット無線アクセス技術(例えば、MIMO(多入力多出力)チャネル伝送技術)が採用され、高効率の制御シグナリング構造が達成されている。
【0006】
LTEアーキテクチャ
【0007】
図1は、LTEの全体的なアーキテクチャを示しており、
図2は、E−UTRANのアーキテクチャをより詳細に示している。E−UTRANは、eNodeBから構成され、eNodeBは、UE向けの、E−UTRAのユーザプレーン(PDCP/RLC/MAC/PHY)および制御プレーン(RRC)のプロトコルを終端処理する。eNodeB(eNB)は、物理(PHY)レイヤ、メディアアクセス制御(MAC)レイヤ、無線リンク制御(RLC)レイヤ、およびパケットデータ制御プロトコル(PDCP)レイヤ(これらのレイヤはユーザプレーンのヘッダ圧縮および暗号化の機能を含む)をホストする。eNBは、制御プレーンに対応する無線リソース制御(RRC)機能も提供する。eNBは、無線リソース管理、アドミッション制御、スケジューリング、交渉によるアップリンクQoS(サービス品質)の実施、セル情報のブロードキャスト、ユーザプレーンデータおよび制御プレーンデータの暗号化/復号化、ダウンリンク/アップリンクのユーザプレーンパケットヘッダの圧縮/復元など、多くの機能を実行する。複数のeNodeBは、X2インタフェースによって互いに接続されている。
【0008】
また、複数のeNodeBは、S1インタフェースによってEPC(Evolved Packet Core:進化したパケットコア)、より具体的には、S1−MMEによってMME(Mobility Management Entity:移動管理エンティティ)、S1−Uによってサービングゲートウェイ(SGW:Serving Gateway)に接続されている。S1インタフェースは、MME/サービングゲートウェイとeNodeBとの間の多対多関係をサポートする。SGWは、ユーザデータパケットをルーティングして転送する一方で、eNodeB間のハンドオーバー時におけるユーザプレーンのモビリティアンカーとして機能し、さらに、LTEと別の3GPP技術との間のモビリティのためのアンカー(S4インタフェースを終端させ、2G/3GシステムとPDN GWとの間でトラフィックを中継する)として機能する。SGWは、アイドル状態のユーザ機器に対しては、ダウンリンクデータ経路を終端させ、そのユーザ機器へのダウンリンクデータが到着したときにページングをトリガーする。SGWは、ユーザ機器のコンテキスト(例えばIPベアラサービスのパラメータ、ネットワーク内部ルーティング情報)を管理および格納する。さらに、SGWは、合法傍受(lawful interception)の場合にユーザトラフィックの複製を実行する。
【0009】
MMEは、LTEのアクセスネットワークの主要な制御ノードである。MMEは、アイドルモードのユーザ機器の追跡およびページング手順(再送信を含む)の役割を担う。MMEは、ベアラの有効化/無効化プロセスに関与し、さらには、最初のアタッチ時と、コアネットワーク(CN)ノードの再配置を伴うLTE内ハンドオーバー時とに、ユーザ機器のSGWを選択する役割も担う。MMEは、(HSSと対話することによって)ユーザを認証する役割を担う。非アクセス層(NAS:Non-Access Stratum)シグナリングはMMEにおいて終端され、MMEは、一時的なIDを生成してユーザ機器に割り当てる役割も担う。MMEは、サービスプロバイダの公衆陸上移動網(PLMN:Public Land Mobile Network)に入るためのユーザ機器の認証をチェックし、ユーザ機器のローミング制約を実施する。MMEは、NASシグナリングの暗号化/整合性保護においてネットワーク内の終端点であり、セキュリティキーの管理を行う。シグナリングの合法傍受も、MMEによってサポートされる。さらに、MMEは、LTEのアクセスネットワークと2G/3Gのアクセスネットワークとの間のモビリティのための制御プレーン機能を提供し、SGSNからのS3インタフェースを終端させる。さらに、MMEは、ローミングするユーザ機器のためのホームHSSに向かうS6aインタフェースを終端させる。
【0010】
LTE(リリース8)におけるコンポーネントキャリアの構造
【0011】
【0012】
【0013】
「コンポーネントキャリア」という用語は、数個のリソースブロックの組合せに言及する。LTEの将来のリリースにおいて、「コンポーネントキャリア」という用語はもはや使用されない。代わりに、この用語は「セル」に変更される。「セル」は、ダウンリンクリソースおよび任意でアップリンクリソースの組合せに言及する。ダウンリンクリソースのキャリア周波数とアップリンクリソースのキャリア周波数との連結(linking)は、ダウンリンクリソースで送信されるシステム情報に示される。
【0014】
LTEのさらなる発展(LTE−A)
【0015】
世界無線通信会議2007(WRC−07)において、IMT−Advancedの周波数スペクトルが決定された。IMT−Advancedのための全体的な周波数スペクトルは決定されたが、実際に利用可能な周波数帯域幅は、地域や国によって異なる。しかしながら、利用可能な周波数スペクトルのアウトラインの決定に続いて、3GPP(第3世代パートナーシッププロジェクト)において無線インタフェースの標準化が開始された。3GPP TSG RAN #39会合において、「Further Advancements for E-UTRA (LTE-Advanced)」に関する検討項目の記述が承認された。この検討項目は、E−UTRAを進化・発展させるうえで(例えば、IMT−Advancedの要求条件を満たすために)考慮すべき技術要素をカバーしている。以下では、2つの主要な技術要素について説明する。
【0016】
より広い帯域幅をサポートするためのLTE−Aにおけるキャリアアグリゲーション
【0017】
LTE−Advancedシステムがサポートできる帯域幅は100MHzであるが、LTEシステムは20MHzをサポートできるのみである。最近、無線スペクトルの不足によって無線ネットワークの発展が妨げられており、結果として、LTE−Advancedシステムのための十分に広いスペクトル帯域を見つけることが困難である。したがって、より広い無線スペクトル帯域を得るための方法を見つけることが緊急課題であり、1つの可能な答えがキャリアアグリゲーション機能である。
【0018】
キャリアアグリゲーションでは、最大で100MHzの広い送信帯域幅をサポートする目的で、2つ以上のコンポーネントキャリアがアグリゲートされる。LTE−Advancedシステムでは、LTEシステムにおけるいくつかのセルが、より広い1つのチャネルにアグリゲートされ、このチャネルは、たとえLTEにおけるこれらのセルが異なる周波数帯域である場合でも100MHzに対して十分に広い。
【0019】
少なくとも、アグリゲートされるコンポーネントキャリアの数がアップリンクとダウンリンクとで同じであるとき、すべてのコンポーネントキャリアをLTEリリース8/9互換として設定することができる。ユーザ機器によってアグリゲートされるすべてのコンポーネントキャリアが必ずしもLTEリリース8/9互換でなくてよい。リリース8/9のユーザ機器がコンポーネントキャリアにキャンプオンする(camp on)ことを回避するため、既存のメカニズム(例:バーリング(barring))を使用することができる。
【0020】
ユーザ機器は、自身の能力に応じて1つまたは複数のコンポーネントキャリア(複数のサービングセルに対応する)を同時に受信または送信することができる。キャリアアグリゲーションのための受信能力もしくは送信能力またはその両方を備えた、LTE−Aリリース10のユーザ機器は、複数のサービングセル上で同時に受信する、もしくは送信する、またはその両方を行うことができ、これに対して、LTEリリース8/9のユーザ機器は、コンポーネントキャリアの構造がリリース8/9の仕様に従う場合、1つのみのサービングセル上で受信および送信を行うことができる。
【0021】
キャリアアグリゲーションは、連続するコンポーネントキャリアおよび不連続なコンポーネントキャリアの両方においてサポートされ、各コンポーネントキャリアは、3GPP LTE(リリース8/9)の計算方式(numerology)を使用して、周波数領域における最大110個のリソースブロックに制限される。
【0022】
同じeNodeB(基地局)から送信される、場合によってはアップリンクおよびダウンリンクにおいて異なる帯域幅の異なる数のコンポーネントキャリアをアグリゲートするように、3GPP LTE−A(リリース10)互換のユーザ機器を構成することが可能である。設定することのできるダウンリンクコンポーネントキャリアの数は、ユーザ機器のダウンリンクのアグリゲーション能力に依存する。逆に、設定することのできるアップリンクコンポーネントキャリアの数は、ユーザ機器のアップリンクのアグリゲーション能力に依存する。ダウンリンクコンポーネントキャリアよりもアップリンクコンポーネントキャリアが多くなるように移動端末を構成することはできない。
【0023】
一般的なTDD配備では、コンポーネントキャリアの数および各コンポーネントキャリアの帯域幅は、アップリンクとダウンリンクとで同じである。同じeNodeBから送信されるコンポーネントキャリアは、必ずしも同じカバレッジを提供する必要はない。
【0024】
連続的にアグリゲートされるコンポーネントキャリアの中心周波数の間隔は、300kHzの倍数である。これは、3GPP LTE(リリース8/9)の100kHzの周波数ラスターとの互換性を保つと同時に、15kHz間隔のサブキャリアの直交性を維持するためである。アグリゲーションのシナリオによっては、連続するコンポーネントキャリアの間に少数の使用されないサブキャリアを挿入することによって、n×300kHzの間隔あけを容易にすることができる。
【0025】
複数のキャリアをアグリゲートする影響は、MAC層に及ぶのみである。MAC層には、アップリンクおよびダウンリンクの両方において、アグリゲートされるコンポーネントキャリアごとに1つのHARQエンティティが要求される。コンポーネントキャリアあたりのトランスポートブロックは最大1個である(アップリンクにおけるSU−MIMOを使用しない場合)。トランスポートブロックおよびそのHARQ再送信(発生時)は、同じコンポーネントキャリアにマッピングする必要がある。
【0026】
図5および
図6は、それぞれ、ダウンリンクおよびアップリンクにおける、キャリアアグリゲーションが有効になっている第2層構造を示している。MACと第1層との間にトランスポートチャネルが記載されており、MACとRLCとの間に論理チャネルが記載されている。
【0027】
キャリアアグリゲーションが設定されているとき、移動端末はネットワークとの1つのRRC接続のみを有する。RRC接続の確立/再確立時、1つのセルが、LTEリリース8/9と同様に、セキュリティ入力(1つのECGI、1つのPCI、および1つのARFCN)と、非アクセス層(NAS)モビリティ情報(例:TAI)とを提供する。RRC接続の確立/再確立の後、そのセルに対応するコンポーネントキャリアは、ダウンリンクプライマリセル(PCell)と称される。接続状態では、ユーザ機器あたりつねに1つのダウンリンクPCell(DL PCell)および1つのアップリンクPCell(UL PCell)が設定される。ダウンリンクでは、PCellに対応するキャリアはダウンリンクプライマリコンポーネントキャリア(DL PCC)であり、アップリンクでは、PCellに対応するキャリアはアップリンクプライマリコンポーネントキャリア(UL PCC)である。
【0028】
ユーザ機器の能力に応じて、セカンダリセル(SCell)を、PCellとともにサービングセルのセットを形成するように構成することができる。ダウンリンクでは、SCellに対応するキャリアはダウンリンクセカンダリコンポーネントキャリア(DL SCC)であり、アップリンクでは、SCellに対応するキャリアはアップリンクセカンダリコンポーネントキャリア(UL SCC)である。
【0029】
ダウンリンクPCellおよびアップリンクPCellの特徴は以下のとおりである。
− SCellごとに、ダウンリンクリソースに加えてアップリンクリソースのユーザ機器による使用を設定することができる(したがって、設定されるDL SCCの数はUL SCCの数よりもつねに大きいかまたは等しく、アップリンクリソースのみを使用するようにSCellを設定することはできない)。
− ダウンリンクPCellは、SCellとは異なり非アクティブ化することはできない。
− ダウンリンクPCellにおいてレイリーフェージング(RLF)が発生すると再確立がトリガーされるが、ダウンリンクSCellにRLFが発生しても再確立はトリガーされない。
− 非アクセス層情報はダウンリンクPCellから取得される。
− PCellは、ハンドオーバー手順(すなわちセキュリティキー変更およびRACH手順)によってのみ変更することができる。
− PCellは、PUCCHの送信に使用される。
− アップリンクPCellは、第1層のアップリンク制御情報の送信に使用される。
− ユーザ機器の観点からは、各アップリンクリソースは1つのサービングセルのみに属す。
【0030】
コンポーネントキャリアの設定および再設定は、RRCによって行うことができる。アクティブ化および非アクティブ化は、MAC制御要素を介して行われる。LTE内ハンドオーバー時、RRCによって、ターゲットセルで使用するためのSCellを追加、削除、または再設定することもできる。新しいSCellを追加するときには、SCellのシステム情報(送信/受信に必要である)を送るために専用のRRCシグナリングが使用される(LTEリリース8/9におけるハンドオーバー時と同様)。言い換えれば、接続モードである間、ユーザ機器はブロードキャストシステム情報をSCellから直接取得する必要がない。
【0031】
キャリアアグリゲーションを使用するようにユーザ機器が構成されているとき、アップリンクコンポーネントキャリアとダウンリンクコンポーネントキャリアの一対がつねにアクティブである。この対のうちのダウンリンクコンポーネントキャリアは、「ダウンリンクアンカーキャリア」と称されることもある。同じことはアップリンクについてもあてはまる。
【0032】
キャリアアグリゲーションが設定されているとき、同時に複数のコンポーネントキャリアについてユーザ機器をスケジューリングすることができるが、一度に行うことのできるランダムアクセス手順は最大で1つである。クロスキャリアスケジューリング(cross-carrier scheduling)では、コンポーネントキャリアのPDCCHによって別のコンポーネントキャリアのリソースをスケジューリングすることができる。この目的のため、それぞれのDCIフォーマットにコンポーネントキャリア識別フィールド(「CIF」と称する)が導入されている。
【0033】
クロスキャリアスケジューリングが行われていないときには、アップリンクコンポーネントキャリアとダウンリンクコンポーネントキャリアとをリンクすることによって、グラントが適用されるアップリンクコンポーネントキャリアを識別することができる。アップリンクコンポーネントキャリアへのダウンリンクコンポーネントキャリアのリンクは、必ずしも1対1である必要はない。言い換えれば、同じアップリンクコンポーネントキャリアに複数のダウンリンクコンポーネントキャリアをリンクすることができる。一方で、1つのダウンリンクコンポーネントキャリアは、1つのアップリンクコンポーネントキャリアのみにリンクすることができる。
【0034】
LTE RRC状態
【0035】
LTEは、2つの主状態、すなわち「RRC_IDLE」状態および「RRC_CONNECTED」状態のみに基づいている。
【0036】
RRC_IDLEでは、無線は有効ではないが、ネットワークによってIDが割り当てられて追跡されている。より具体的には、RRC_IDLE状態の移動端末は、セルの選択および再選択を実行し、言い換えれば、キャンプオンするセルを決定する。セルの(再)選択プロセスでは、適用可能な各RAT(無線アクセス技術)の適用可能な各周波数の優先度、無線リンクの品質、およびセルのステータス(すなわちセルが禁止または予約されているか)が考慮される。RRC_IDLE状態の移動端末は、ページングチャネルを監視して着呼を検出し、さらにシステム情報を取得する。システム情報は、主として、ネットワーク(E−UTRAN)がセルの(再)選択プロセスを制御することのできるパラメータからなる。RRCは、RRC_IDLE状態の移動端末に適用される制御シグナリング、すなわちページングおよびシステム情報を指定する。RRC_IDLE状態における移動端末の挙動については、非特許文献2の例えば第8.4.2章に指定されており、この文書は参照によって本明細書に組み込まれている。
【0037】
RRC_CONNECTEDでは、移動端末は、eNodeBにおけるコンテキストを用いての有効な無線動作を有する。E−UTRANでは、共有データチャネルを介して(ユニキャスト)データを伝送することができるように、移動端末に無線リソースが割り当てられる。この動作をサポートするため、移動端末は、時間および周波数における共有送信リソースの動的な割当てを示すために使用される対応する制御チャネルを監視する。移動端末は、E−UTRANが移動端末にとって最適なセルを選択できるように、自身のバッファ状態およびダウンリンクチャネル品質の報告と、隣接セルの測定情報とを、ネットワークに提供する。これらの測定報告には、別の周波数またはRATを使用するセルが含まれる。さらに、ユーザ機器は、送信チャネルを使用するために要求される情報から主としてなるシステム情報を受信する。RRC_CONNECTED状態のユーザ機器は、自身のバッテリの寿命を延ばすため、不連続受信(DRX)サイクルを使用するように構成することができる。RRCとは、RRC_CONNECTED状態のユーザ機器の挙動をE−UTRANが制御するためのプロトコルである。
【0038】
図7は、IDLE状態およびCONNECTED状態の移動端末によって実行される関連する機能の概要を含む状態図を示している。
【0039】
論理チャネルおよびトランスポートチャネル
【0040】
MAC層は、論理チャネルを通じてRLC層にデータ伝送サービスを提供する。論理チャネルは、RRCシグナリングなどの制御データを伝える制御論理チャネルか、ユーザプレーンデータを伝えるトラフィック論理チャネルのいずれかである。ブロードキャスト制御チャネル(BCCH)、ページング制御チャネル(PCCH)、共通制御チャネル(CCCH)、マルチキャスト制御チャネル(MCCH)、および専用制御チャネル(DCCH)は、制御論理チャネルである。専用トラフィックチャネル(DTCH)およびマルチキャストトラフィックチャネル(MTCH)は、トラフィック論理チャネルである。
【0041】
MAC層からのデータは、トランスポートチャネルを通じて物理層と交換される。データは、無線送信方式に応じてトランスポートチャネルに多重化される。トランスポートチャネルは、次のようにダウンリンクまたはアップリンクとして分類される。ブロードキャストチャネル(BCH)、ダウンリンク共有チャネル(DL−SCH)、ページングチャネル(PCH)、およびマルチキャストチャネル(MCH)は、ダウンリンクトランスポートチャネルであるのに対して、アップリンク共有チャネル(UL−SCH)およびランダムアクセスチャネル(RACH)は、アップリンクトランスポートチャネルである。
【0042】
ダウンリンクおよびアップリンクそれぞれにおいて、論理チャネルとトランスポートチャネルの間で多重化が実行される。
【0043】
第1層/第2層(L1/L2)制御シグナリング
【0044】
スケジューリング対象のユーザに、ユーザの割当てステータス、トランスポートフォーマット、およびその他のデータ関連情報(例:HARQ情報、送信電力制御(TPC)コマンド)を知らせる目的で、第1層/第2層制御シグナリングがデータと一緒にダウンリンクで送信される。第1層/第2層制御シグナリングは、サブフレーム内でダウンリンクデータと一緒に多重化される(ユーザ割当てがサブフレーム単位で変化しうるものと想定する)。なお、ユーザ割当てをTTI(送信時間間隔)ベースで実行することもでき、その場合、TTI長はサブフレームの倍数であることに留意されたい。TTI長は、サービスエリアにおいてすべてのユーザに対して一定とする、ユーザ毎に異なる、あるいはユーザ毎に動的とすることもできる。第1層/第2層制御シグナリングは、一般的にはTTIあたり1回送信するのみでよい。
【0045】
第1層/第2層制御シグナリングは、物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)で送信される。PDCCHは、ダウンリンク制御情報(DCI)としてメッセージを伝え、このメッセージには、移動端末またはユーザ機器のグループのリソース割当て情報およびその他の制御情報が含まれる。一般的には、いくつかのPDCCHを1つのサブフレーム内で送信することができる。
【0046】
なお、3GPP LTEでは、アップリンクデータ送信のための割当て(アップリンクスケジューリンググラントまたはアップリンクリソース割当てとも称する)も、PDCCHで送信されることに留意されたい。
【0047】
スケジューリンググラントに関して、第1層/第2層制御シグナリングで送られる情報は、次の2つのカテゴリ、すなわち、カテゴリ1の情報を伝える共有制御情報(SCI:Shared Control Information)と、カテゴリ2/3の情報を伝えるダウンリンク制御情報(DCI:Downlink Control Information)に分けることができる。
【0048】
カテゴリ1の情報を伝える共有制御情報(SCI)
【0049】
第1層/第2層制御シグナリングの共有制御情報部分は、リソース割当て(指示)に関連する情報を含む。共有制御情報は、一般には以下の情報を含んでいる。
− リソースが割り当てられるユーザを示すユーザ識別情報。
− ユーザに割り当てられるリソース(リソースブロック(RB))を示すリソースブロック(RB)割当て情報。割り当てられるリソースブロックの数は動的とすることができる。
− 割当ての持続時間(オプション)。複数のサブフレーム(またはTTI)にわたる割当てが可能である場合。
【0050】
これらに加えて、共有制御情報は、他のチャネルの設定およびダウンリンク制御情報(DCI)の設定(以下を参照)に応じて、アップリンク送信に対するACK/NACK、アップリンクスケジューリング情報、DCIに関する情報(例:リソース、MCS)などの情報を含んでいることができる。
【0051】
カテゴリ2/3の情報を伝えるダウンリンク制御情報(DCI)
【0052】
第1層/第2層制御シグナリングのダウンリンク制御情報部分は、カテゴリ1の情報によって示されるスケジューリング対象のユーザに送信されるデータの送信フォーマットに関連する情報(カテゴリ2の情報)を含んでいる。さらに、再送信プロトコルとして(ハイブリッド)ARQを使用する場合、カテゴリ2の情報は、HARQ(カテゴリ3)の情報を伝える。ダウンリンク制御情報は、カテゴリ1に従ってスケジューリングされるユーザによって復号化されるのみでよい。ダウンリンク制御情報は、一般には以下に関する情報を含んでいる。
− カテゴリ2の情報:変調方式、トランスポートブロック(ペイロード)サイズまたは符号化率、MIMO(多入力多出力)関連情報など。トランスポートブロック(もしくはペイロードサイズ)または符号化率のいずれかをシグナリングできる。いずれの場合も、これらのパラメータは、変調方式情報およびリソース情報(割り当てられたリソースブロックの数)を使用することによって相互に計算することができる。
− カテゴリ3情報:HARQ関連情報(例えば、ハイブリッドARQプロセス番号、冗長バージョン、再送信シーケンス番号)
【0053】
ダウンリンク制御情報は、全体的なサイズと、フィールドに含まれる情報とが異なるいくつかのフォーマットの形をとる。LTEにおいて現在定義されている異なるDCIフォーマットは、以下のとおりであり、非特許文献3の第5.3.3.1節に詳しく記載されている(この文書は、3GPPのウェブサイトにおいて入手可能であり、参照によって本明細書に組み込まれている)。
【0054】
フォーマット0:DCIフォーマット0は、PUSCHのためのリソースグラントを送信するのに使用される。
【0055】
DCIフォーマットと、DCIにおいて送信される具体的な情報に関するさらなる詳細については、技術規格、または非特許文献4(参照によって本明細書に組み込まれている)の第9.3章を参照されたい。
【0056】
ダウンリンクデータおよびアップリンクデータの送信
【0057】
第1層/第2層制御シグナリングは、ダウンリンクデータ送信に関して、ダウンリンクパケットデータ送信と一緒に、個別の物理チャネル(PDCCH)で送信される。この第1層/第2層制御シグナリングは、一般には以下に関する情報を含む。
− データが送信される(1つまたは複数の)物理リソース(例えば、OFDMの場合のサブキャリアまたはサブキャリアブロック、CDMAの場合の符号)。移動端末(受信器)は、データが送信されるリソースをこの情報によって識別することができる。
− ユーザ機器が、第1層/第2層制御シグナリングにおいてキャリア指示フィールド(CIF:Carrier Indication Field)を有するように構成されているとき、この情報は、その特定の制御シグナリング情報が対象とするコンポーネントキャリアを識別する。これにより、1つのコンポーネントキャリアを対象とする割当てを別のコンポーネントキャリアで送ることが可能になる(「クロスキャリアスケジューリング」)。クロススケジューリングされる側のキャリアは、例えば、PDCCHのないコンポーネントキャリアとすることができ、すなわち、クロススケジューリングされる側のコンポーネントキャリアは、第1層/第2層制御シグナリングを伝えない。
− 送信に使用されるトランスポートフォーマット。例えば、データのトランスポートブロックサイズ(ペイロードサイズ、情報ビットサイズ)、MCS(変調・符号化方式)レベル、スペクトル効率、符号化率などが挙げられる。ユーザ機器(受信器)は、復調、デ・レートマッチング(de-rate-matching)、および復号化のプロセスを開始する目的で、情報ビットサイズ、変調方式、および符号化率を、この情報(通常はリソース割当て(例:ユーザ機器に割り当てられるリソースブロックの数)と組み合わせる)によって識別することができる。変調方式は明示的にシグナリングすることができる。
− ハイブリッドARQ(HARQ)情報:
・ HARQプロセス番号:ユーザ機器は、データがマッピングされているハイブリッドARQプロセスを識別することができる。
・ シーケンス番号または新規データインジケータ(NDI):ユーザ機器は、送信が新しいパケットであるか再送信されたパケットであるかを識別することができる。HARQプロトコルにおいて軟合成が実施される場合、シーケンス番号または新規データインジケータとHARQプロセス番号とを組み合わせることで、復号化の前にPDUのための送信の軟合成が可能である。
・ 冗長バージョンもしくはコンステレーションバージョンまたはその両方:それぞれ、使用されているハイブリッドARQ冗長バージョン(デ・レートマッチングに必要である)、および、使用されている変調コンステレーションバージョン(復調に必要である)を、ユーザ機器に知らせる。
− ユーザ機器識別情報(UE ID):第1層/第2層制御シグナリングの対象であるユーザ機器を知らせる。一般的な実装においては、この情報は、制御情報が別のユーザ機器に読み取られることを防止する目的で、第1層/第2層制御シグナリングのCRCをマスクするために使用される。
【0058】
アップリンクパケットデータ送信を可能にする目的で、送信の詳細をユーザ機器に知らせるため、第1層/第2層制御シグナリングがダウンリンク(PDCCH)で送信される。この第1層/第2層制御シグナリングは、一般には以下に関する情報を含んでいる。
− ユーザ機器がデータ送信に使用するべき(1つまたは複数の)物理リソース(例えば、OFDMの場合のサブキャリアまたはサブキャリアブロック、CDMAの場合の符号)。
− ユーザ機器が、第1層/第2層制御シグナリングにおいてキャリア指示フィールド(CIF)を有するように構成されているとき、この情報は、その特定の制御シグナリング情報が対象とするコンポーネントキャリアを識別する。これにより、1つのコンポーネントキャリアを対象とする割当てを別のコンポーネントキャリアで送ることが可能になる。クロススケジューリングされる側のキャリアは、例えば、PDCCHのないコンポーネントキャリアとすることができ、すなわち、クロススケジューリングされる側のコンポーネントキャリアは、第1層/第2層制御シグナリングを伝えない。
− アップリンクグラントの第1層/第2層制御シグナリングは、アップリンクコンポーネントキャリアにリンクされているDLコンポーネントキャリアで送られる、または、いくつかのDLコンポーネントキャリアが同じULコンポーネントキャリアにリンクされている場合、いくつかのDLコンポーネントキャリアのうちの1つで送られる。
− ユーザ機器が送信に使用するべきトランスポートフォーマット。例えば、データのトランスポートブロックサイズ(ペイロードサイズ、情報ビットサイズ)、MCS(変調・符号化方式)レベル、スペクトル効率、符号化率などが挙げられる。ユーザ機器(送信器)は、変調、レートマッチング、および符号化のプロセスを開始する目的で、情報ビットサイズ、変調方式、および符号化率を、この情報(通常はリソース割当て(例:ユーザ機器に割り当てられるリソースブロックの数)と組み合わせる)によって取得することができる。場合によっては、変調方式を明示的にシグナリングすることができる。
− ハイブリッドARQ情報:
・ HARQプロセス番号:データの取得先のハイブリッドARQプロセスをユーザ機器に知らせる。
・ シーケンス番号または新規データインジケータ:新しいパケットを送信するのか、あるいはパケットを再送信するのかをユーザ機器に知らせる。HARQプロトコルにおいて軟合成が実施される場合、シーケンス番号または新規データインジケータとHARQプロセス番号とを組み合わせることで、復号化の前にプロトコルデータユニット(PDU)のための送信の軟合成が可能である。
・ 冗長バージョンもしくはコンステレーションバージョンまたはその両方:それぞれ、使用するハイブリッドARQ冗長バージョン(レートマッチングに必要である)、および、使用する変調コンステレーションバージョン(変調に必要である)を、ユーザ機器に知らせる。
− ユーザ機器識別情報(UE ID):データを送信するべきユーザ機器を知らせる。一般的な実装においては、この情報は、制御情報が別のユーザ機器に読み取られることを防止する目的で、第1層/第2層制御シグナリングのCRCをマスクするために使用される。
【0059】
上述したさまざまな情報をアップリンクデータ送信およびダウンリンクデータ送信において実際に送信するとき、いくつかの異なる可能な方法が存在する。さらには、アップリンクおよびダウンリンクにおいて、第1層/第2層制御情報は、追加の情報を含んでいることもでき、あるいは、いくつかの情報を省くことができる。例えば以下のとおりである。
− 同期HARQプロトコルの場合、HARQプロセス番号が必要ないことがある(すなわちシグナリングされない)。
− チェイス合成(Chase Combining)を使用する(冗長バージョンもしくはコンステレーションバージョンまたはその両方がつねに同じである)場合、または、冗長バージョンのシーケンスもしくはコンステレーションバージョンのシーケンスまたはその両方が事前に定義されている場合、冗長バージョンもしくはコンステレーションバージョンまたはその両方が必要ないことがある。
− 電力制御情報を制御シグナリングにさらに含めることができる。
− MIMOに関連する制御情報(例えばプリコーディング情報)を制御シグナリングにさらに含めることができる。
− 複数の符号語によるMIMO送信の場合には、複数の符号語のためのトランスポートフォーマットもしくはHARQ情報またはその両方を含めることができる。
【0060】
LTEにおいて(物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)を対象として)PDCCHでシグナリングされるアップリンクリソース割当てでは、第1層/第2層制御情報にHARQプロセス番号が含まれず、なぜなら、LTEのアップリンクには同期HARQプロトコルが採用されるためである。アップリンク送信に使用されるHARQプロセスは、タイミングによって認識される。さらには、冗長バージョン(RV)情報は、トランスポートフォーマット情報と一緒に符号化され、すなわち、RV情報はトランスポートフォーマット(TF)フィールドに埋め込まれることに留意されたい。トランスポートフォーマット(TF)/変調・符号化方式(MCS)フィールドは、例えば5ビットのサイズを有し、これは32個のエントリに対応する。TF/MCSテーブルの3個のエントリは、冗長バージョン(RV)1、RV2、またはRV3を示すために予約されている。MCSテーブルの残りのエントリは、RV0を暗黙的に示すMCSレベル(TBS)をシグナリングするために使用される。PDCCHのCRCフィールドのサイズは16ビットである。
【0061】
LTEにおいてPDCCHでシグナリングされるダウンリンク割当て(PDSCH)では、冗長バージョン(RV)は、2ビットのフィールドにおいて個別にシグナリングされる。さらに、変調次数情報が、トランスポートフォーマット情報と一緒に符号化される。アップリンクの場合と同様に、5ビットのMCSフィールドがPDCCHでシグナリングされる。エントリのうち3個は、明示的な変調次数をシグナリングするために予約されており、トランスポートフォーマット(トランスポートブロック)情報は提供されない。残りの29個のエントリにおいては、変調次数およびトランスポートブロックサイズ情報がシグナリングされる。
【0062】
DRX(不連続受信)
【0063】
RRC_IDLEの場合にDRX機能を設定することができ、この場合、ユーザ機器は、自身に固有なDRX値またはデフォルトのDRX値(defaultPagingCycle)のいずれかを使用する。デフォルト値は、システム情報の中でブロードキャストされ、値として、32個、64個、128個、および256個の無線フレームを有することができる。固有な値とデフォルト値の両方が利用可能である場合、ユーザ機器は2つのうち短い方の値を選択する。ユーザ機器は、DRXサイクルあたり1回のページング機会においてウェイクアップする必要があり、ページング機会は1つのサブフレームである。
【0064】
「RRC_CONNECTED」の場合にもDRX機能を設定することができ、したがって、ダウンリンクチャネルをつねに監視する必要はない。ユーザ機器のバッテリが過大に消費されないようにする目的で、3GPP LTE(リリース8/9)および3GPP LTE−A(リリース10)では、不連続受信(DRX)というコンセプトが提供される。技術規格書である非特許文献5の第5.7章にはDRXについて説明されており、この文書は参照によって本明細書に組み込まれている。
【0065】
ユーザ機器のDRX挙動を定義するため以下のパラメータが利用可能であり、すなわち、移動ノードがアクティブであるオン期間と、移動ノードがDRXモードである期間である。
−
オン期間:ユーザ機器がDRXからウェイクアップした後、PDCCHを受信および監視する期間(単位:ダウンリンクサブフレーム)。ユーザ機器は、PDCCHを正常に復号化した場合、アウェイク状態を維持し、インアクティビティタイマー(inactivity timer)を起動する。[1〜200個のサブフレーム、16ステップ:1〜6、10〜60、80、100、200]
−
DRXインアクティビティタイマー:ユーザ機器が、PDCCHを最後に正常に復号化してから、さらなるPDCCHを正常に復号化するのを待機する期間(単位:ダウンリンクサブフレーム)。ユーザ機器は、この期間の間にPDCCHを正常に復号化できないとき、再びDRXに入る。ユーザ機器は、最初の送信(すなわち再送信ではない)のみについてPDCCHを1回正常に復号化した後に、インアクティビティタイマーを再起動する。[1〜2560個のサブフレーム、22ステップ、10予備:1〜6、8、10〜60、80、100〜300、500、750、1280、1920、2560]
−
DRX再送信タイマー:最初の利用可能な再送信時間の後にユーザ機器がダウンリンク再送信を予測する、連続するPDCCHサブフレームの数を指定する。[1〜33個のサブフレーム、8ステップ:1、2、4、6、8、16、24、33]
−
短DRXサイクル:短DRXサイクルにおいてオン期間の後に非アクティブ期間が続く周期的な反復を指定する。このパラメータはオプションである。[2〜640個のサブフレーム、16ステップ:2、5、8、10、16、20、32、40、64、80、128、160、256、320、512、640]
−
短DRXサイクルタイマー:DRXインアクティビティタイマーが切れた後にユーザ機器が短DRXサイクルに従う、連続するサブフレームの数を指定する。このパラメータはオプションである。[1〜16個のサブフレーム]
−
長DRXサイクル開始オフセット:長DRXサイクルにおいてオン期間の後に非アクティブ期間が続く周期的な反復と、オン期間が開始するときのオフセット(単位:サブフレーム)を指定する(非特許文献5の第5.7節に定義されている式によって求められる)。[サイクル長10〜2560個のサブフレーム、16ステップ:10、20、30、32、40、64、80、128、160、256、320、512、640、1024、1280、2048、2560。オフセットは[0〜選択されたサイクルのサブフレーム長]の間の整数]
【0066】
ユーザ機器がアウェイクしている合計期間は、「アクティブ時間」と称される。アクティブ時間には、DRXサイクルのオン期間と、インアクティビティタイマーが切れていない間にユーザ機器が連続受信を行っている時間と、1 HRQ RTTの後にダウンリンク再送信を待機している間にユーザ機器が連続受信を行っている時間とが含まれる。同様に、アップリンクの場合、ユーザ機器は、アップリンク再送信グラントを受信できるサブフレーム(すなわち最初のアップリンク送信の後、再送信の最大回数に達するまでの8ms毎)においてアウェイクしている。上記に基づくと、最小アクティブ時間は、オン期間に等しい固定長さであり、最大アクティブ時間は例えばPDCCHアクティビティに応じて可変である。
【0067】
DRXの動作は、電力を節約する目的で、(その時点で有効なDRXサイクルに従って)反復的に無線回路を非アクティブにする機会を移動端末に提供する。DRX期間中にユーザ機器が実際にDRX(すなわちアクティブではない)状態のままであるかは、ユーザ機器によって決定することができる。例えば、ユーザ機器は通常では周波数間測定を実行するが、この測定はオン期間の間に実施することができず、したがって、DRX機会の間の他の何らかの時間に実行する必要がある。
【0068】
DRXサイクルをパラメータ化するときには、バッテリの節約と遅延(レイテンシ)との間のトレードオフを伴う。例えば、ウェブブラウジングサービスの場合、ダウンロードされたウェブページをユーザが読んでいる間、ユーザ機器がダウンリンクチャネルを連続的に受信することは、通常ではリソースの無駄である。長いDRX期間は、ユーザ機器のバッテリの寿命を延ばすうえで有利である。これに対して、短いDRX期間は、データ伝送が再開されるときに(例えばユーザが別のウェブページを要求するときに)より高速に応答するうえで有利である。
【0069】
これらの矛盾する要件を満たすため、各ユーザ機器に対して2つのDRXサイクル(短いサイクルと長いサイクル)を設定することができる。短DRXサイクルはオプションであり、すなわち長DRXサイクルのみが使用される。短DRXサイクル、長DRXサイクル、連続受信の間の遷移は、タイマーによって、またはeNodeBからの明示的なコマンドによって制御される。短DRXサイクルは、ある意味、パケットが遅れて到着する場合における、ユーザ機器が長DRXサイクルに入る前の確認期間とみなすことができる。ユーザ機器が短DRXサイクルにある間にeNodeBにデータが到着する場合、そのデータを送信するためのスケジューリングが次のオン期間において行われ、次いでユーザ機器は連続受信を再開する。これに対して、短DRXサイクルの間にeNodeBにデータが到着しない場合、ユーザ機器は、当面の間はパケット送信が終了したものと想定して長DRXサイクルに入る。
【0070】
ユーザ機器は、アクティブ時間の間、PDCCHを監視し、SRS(サウンディング基準信号)を報告し(設定されているとき)、CQI(チャネル品質情報)/PMI(プリコーディングマトリクスインジケータ)/RI(ランクインジケータ)/PTI(プリコーダタイプ指示情報)をPUCCHで報告する。ユーザ機器がアクティブ時間にないときには、トリガータイプ0のSRS(type-0-triggered SRS)およびCQI/PMI/RI/PTIをPUCCHで報告することはできない。ユーザ機器に対してCQIマスキングが設定されている場合、PUCCHでのCQI/PMI/RI/PTIの報告は、オン期間に制限される。
【0071】
利用可能なDRX値は、ネットワークによって制御され、非DRXから開始してx秒までである。値xは、RRC_IDLEにおいて使用されるページングDRXと同じ長さとすることができる。測定要件および報告基準は、DRX間隔の長さに従って異なることがあり、すなわち長いDRX間隔では、要件をより緩和することができる(後からさらに詳しく説明する)。DRXが設定されているとき、ユーザ機器は「アクティブ時間」の間にのみ周期的なCQI報告を送ることができる。RRCは、周期的なCQI報告がオン期間の間にのみ送られるように、周期的なCQI報告をさらに制約することができる。
【0072】
図8は、DRXの例を開示している。ユーザ機器は、「オン期間」(この期間は長DRXサイクルおよび短DRXサイクルにおいて同じ)の間、スケジューリングメッセージ(PDCCH上のC−RNTI(セル無線ネットワーク一時識別子)によって示される)がないかチェックする。「オン期間」の間にスケジューリングメッセージが受信されたときには、ユーザ機器は、「インアクティビティタイマー」を起動し、インアクティビティタイマーが作動している間、各サブフレームにおいてPDCCHを監視する。この期間中、ユーザ機器は連続受信モードにあるものとみなすことができる。インアクティビティタイマーが作動している間にスケジューリングメッセージが受信されると、ユーザ機器はインアクティビティタイマーを再起動し、インアクティビティタイマーが切れたとき、ユーザ機器は短DRXサイクルに移行し、「短DRXサイクルタイマー」を起動する。短DRXサイクルは、MAC制御要素によって開始することもできる。短DRXサイクルタイマーが切れると、ユーザ機器は長DRXサイクルに移行する。
【0073】
このDRX挙動に加えて、HARQ RTTの間にユーザ機器がスリープできるようにする目的で、「HARQラウンドトリップタイム(RTT)タイマー」が定義される。1つのHARQプロセスにおけるダウンリンクトランスポートブロックの復号化に失敗すると、ユーザ機器は、そのトランスポートブロックの次の再送信が、少なくとも「HARQ RTT」のサブフレームの後に行われるものと想定することができる。HARQ RTTタイマーが作動している間、ユーザ機器はPDCCHを監視する必要がない。HARQ RTTタイマーが切れると、ユーザ機器は通常どおりにPDCCHの受信を再開する。
【0074】
ユーザ機器あたり1つのみのDRXサイクルが存在する。アグリゲートされたコンポーネントキャリアすべてがこのDRXパターンに従う。
【0075】
マシンツーマシン
【0076】
現在の移動通信ネットワークは、人と人の通信に最適に設計されているが、M2M(マシンツーマシン)アプリケーション(3GPPによるとMTC(マシンタイプコミュニケーション)とも称する)に対しては最適に設計されていない。
【0077】
M2M通信は、必ずしも人間の介入を必要としないエンティティ間のデータ通信の形とみなすことができる。M2M通信は現在の通信モデルとは異なり、なぜなら、M2M通信では、マーケットシナリオが新しいかまたは異なる、コストおよびプロセスが小さい、通信端末が極めて多数になりうる、端末あたりのトラフィックが相当に少ないためである。
【0078】
以下はMTCアプリケーションの例である。
・ セキュリティ(例:警報システム、陸上通信線のバックアップ、アクセス制御、自動車/運転者の安全性)
・ 追跡(例:フリート管理、注文管理、走行距離連動型保険、道路通行料、交通情報)
・ 支払い(POS、自動販売機、ロイヤリティコンセプト、ゲーム機)
・ 健康(血圧・心拍数等の監視、遠隔診断、Webアクセス型遠隔治療)
・ 遠隔保守/制御(センサ、照明、ポンプ、弁、エレベータの制御)
・ 計量(例:電気、ガス、水道、暖房、配管網の制御)
【0079】
M2M通信に関する検討項目(非特許文献6)は、2007年に完成した。リリース10以降では、3GPPは、検討項目からのネットワーク改善に関する結果を考慮して仕様書段階に進み、MTCシナリオおよびMTCアプリケーションをサポートするためのアーキテクチャの影響およびセキュリティ面に対処することを意図している。したがって、3GPPは、マシンタイプコミュニケーションにおけるネットワーク改善(NIMTC)に関する検討項目を定義し、この検討項目の目標および目的は、大規模なマシンタイプコミュニケーショングループを扱う影響および処理量を低減したり、装置のバッテリ電力使用に対する影響を最小にするためにネットワーク動作を最適化する、あるいはマシンタイプコミュニケーションの要件に合わせたサービスを事業者が提供できるようにすることで新しいマシンタイプコミュニケーションアプリケーションを活性化する、マシンタイプコミュニケーションサービスを提供するときには低い運用費をネットワーク事業者に提供するなどである。
【0080】
マシンタイプコミュニケーション(MTC)は、人と人の通常の通信とは異なるいくつかの特徴を有する。3GPPは、ネットワーク動作を最適化する目的で、これらの特徴を識別することを試みている。これらの特徴は、「MTC特徴」と称され、技術規格書である非特許文献7(3GPPのウェブサイトにおいて入手可能であり、参照によって本明細書に組み込まれている)に説明されている。例えば、上記のMTC特徴の1つとして、「小さいデータの伝送」(MTCデバイスは少量のデータを送信または受信することを意味する)が挙げられる。少量のデータとは、データ接続を確立するために交換する必要のあるシグナリングのサイズよりもデータが小さいか同程度であることを意味する。
【0081】
いくつかのタイプのMTCデバイスにおいては、極めて低い電力消費量も重要な要件とみなされる。例えばガスの計量や、動物、貨物、囚人、高齢者、および子供の追跡に使用されるデバイスでは、低い電力消費量が極めて重要であり、なぜならバッテリを再充電したり交換することが容易ではないためである。これにより、MTCデバイスの電力消費量を最小にする機能強化の必要性が生じる。バッテリ消費量を最適化するための機能強化は、アーキテクチャレベルと、PHY/MACなどの下層プロトコルレベルにおいて予測することができる。
【0082】
さらには、さまざまなデータアプリケーションを対象とするLTE RANの機能強化も、3GPPにおいて検討されている。マシンタイプコミュニケーションのトラフィックプロファイルには、比較的少量のデータを交換するための散発的なデータアクセスが含まれる。このようなタイプの通信は、常時オンの接続性が要求されるアプリケーション(例えばスマートフォン)や、電子メールをチェックしたりソーシャルネットワークを更新する目的での散発的なアクセスが要求されるアプリケーションに特に関連する。これらの検討項目の目標は、さまざまなトラフィックプロファイルを扱うLTEの能力を強化することのできる、無線アクセスネットワークレベルにおけるメカニズムを識別して指定することである。特に、目標は、バッテリの寿命を延ばすために端末の電力使用量を減らすことである。マシンタイプコミュニケーションのトラフィックは、一般的には遅延の影響が小さく、端末やeNodeBは、データが配信されるまでいくらかの時間だけ待機することができる。
【0083】
LTEにおけるアップリンクアクセス方式
【0084】
アップリンク送信においては、カバレッジを最大にするため、ユーザ端末による電力効率の高い送信が必要である。E−UTRAのアップリンク送信方式としては、シングルキャリア伝送と、動的な帯域幅割当てのFDMAとを組み合わせた方式が選択されている。シングルキャリア伝送が選択された主たる理由は、マルチキャリア信号(OFDMA)と比較して、ピーク対平均電力比(PARR)が低く、これに対応して電力増幅器の効率が改善され、カバレッジの向上が見込まれるためである(与えられる端末ピーク電力に対してデータレートが高い)。NodeBは、各時間間隔において、ユーザデータを送信するための固有の時間/周波数リソースをユーザに割り当て、これによってセル内の直交性が確保される。アップリンクにおける直交多元接続によって、セル内干渉が排除されることでスペクトル効率が高まる。マルチパス伝搬に起因する干渉については、送信信号にサイクリックプレフィックスを挿入することにより基地局(NodeB)において対処する。
【0085】
データ送信に使用される基本的な物理リソースは、1つの時間間隔(例えば、0.5msのサブフレーム)にわたるサイズBW
grantの周波数リソースから構成される(符号化された情報ビットはこのリソースにマッピングされる)。なお、サブフレーム(送信時間間隔(TTI)とも称する)は、ユーザデータを送信するための最小の時間間隔である。しかしながら、サブフレームを連結することにより、1TTIよりも長い時間にわたる周波数リソースBW
grantをユーザに割り当てることも可能である。
【0086】
LTEにおけるアップリンクのスケジューリング方式
【0087】
アップリンクの方式として、スケジューリング制御式の(すなわちeNBによって制御される)アクセスと、コンテンションベースのアクセスの両方を使用することができる。
【0088】
スケジューリング制御式アクセスの場合、アップリンクデータ送信用として、特定の時間長の特定の周波数リソース(すなわち時間/周波数リソース)が、ユーザ機器に割り当てられる。しかしながら、コンテンションベースのアクセス用に、いくらかの時間/周波数リソースを割り当てることができる。コンテンションベースの時間/周波数リソースの範囲内では、ユーザ機器は、最初にスケジューリングされることなく送信することができる。ユーザ機器がコンテンションベースのアクセスを行う1つのシナリオは、例えばランダムアクセスであり、すなわち、ユーザ機器があるセルへ最初のアクセスを行うとき、またはアップリンクリソースを要求するため最初のアクセスを行うときである。
【0089】
スケジューリング制御式アクセスの場合、NodeBのスケジューラが、アップリンクデータ送信のための固有の周波数/時間リソースをユーザに割り当てる。より具体的には、スケジューラは以下を決定する。
− 送信を許可する(1つまたは複数の)ユーザ機器
− 物理チャネルリソース(周波数)
− 移動端末が送信に使用するべきトランスポートフォーマット(変調・符号化方式(MCS))
【0090】
割当て情報は、第1層/第2層制御チャネルで送られるスケジューリンググラントを介してユーザ機器にシグナリングされる。以下では、説明を簡潔にするため、このチャネルをアップリンクグラントチャネルと称する。スケジューリンググラントメッセージは、情報として、周波数帯域のうちユーザ機器による使用を許可する部分と、グラントの有効期間と、これから行うアップリンク送信にユーザ機器が使用しなければならないトランスポートフォーマットとを、少なくとも含んでいる。最も短い有効期間は、1サブフレームである。グラントメッセージには、選択される方式に応じて追加の情報も含めることができる。アップリンク共有チャネル(UL−SCH)で送信する権利を許可するグラントとしては、「各ユーザ機器に対する」グラントのみが使用される(すなわち、「各ユーザ機器における各無線ベアラに対する」グラントは存在しない)。したがってユーザ機器は、割り当てられたリソースを何らかの規則に従って無線ベアラの間で配分する必要がある。トランスポートフォーマットは、HSUPAの場合とは異なり、ユーザ機器側では選択しない。eNBが、何らかの情報(例えば、報告されたスケジューリング情報およびQoS情報)に基づいてトランスポートフォーマットを決定し、ユーザ機器は、選択されたトランスポートフォーマットに従わなければならない。HSUPAでは、NodeBが最大限のアップリンクリソースを割り当てて、ユーザ機器は、それに応じてデータ送信用の実際のトランスポートフォーマットを選択する。
【0091】
無線リソースのスケジューリングは、サービス品質を決めるうえで、共有チャネルアクセスネットワークにおいて最も重要な機能であるため、効率的なQoS管理を可能にする目的で、LTEにおけるアップリンクスケジューリング方式が満たしているべき要件がいくつかある。
− 優先順位の低いサービスのリソース不足を避けるべきである。
− 個々の無線ベアラ/サービスにおいてQoSが明確に区別されるべきである。
− どの無線ベアラ/サービスのデータが送信されるのかをeNBのスケジューラが識別できるように、アップリンク報告において、きめ細かいバッファ状態報告(例えば、無線ベアラごとの報告、または無線ベアラグループごとの報告)を可能にするべきである。
− 異なるユーザのサービスの間でQoSを明確に区別できるようにするべきである。
− 無線ベアラごとに最小限のビットレートを提供できるようにするべきである。
【0092】
上に挙げた条件から理解できるように、LTEのスケジューリング方式の1つの重要な側面は、事業者が、自身の総セル容量を、異なるQoSクラスの個々の無線ベアラの間で分配することを制御できるメカニズムを提供することである。無線ベアラのQoSクラスは、前述したようにサービングゲートウェイからeNBにシグナリングされる対応するSAEベアラのQoSプロファイルによって識別される。事業者は、自身の総セル容量のうちの特定の量を、特定のQoSクラスの無線ベアラに関連付けられる総トラフィックに割り当てることができる。クラスに基づくこの方法を採用する主たる目的は、パケットの処理を、パケットが属するQoSクラスに応じて区別できるようにすることである。
【0093】
バッファ状態報告/スケジューリング要求報告
【0094】
スケジューリングの通常のモードは動的なスケジューリングであり、ダウンリンク送信リソースを割り当てるためのダウンリンク割当てメッセージと、アップリンク送信リソースを割り当てるためのアップリンクグラントメッセージとによる。これらのメッセージは、通常では特定の1つのサブフレームの間、有効である。これらのメッセージは、すでに前述したように、ユーザ機器のC−RNTIを使用してPDCCHで送信される。動的なスケジューリングは、TCPなど、トラフィックがバースト性であり速度が動的であるサービスタイプにおいて効率的である。
【0095】
動的なスケジューリングに加えて、パーシステントスケジューリング(persistent scheduling)が定義されており、このスケジューリング方式では、無線リソースを半静的に設定して、1サブフレームより長い時間期間にわたりユーザ機器に割り当てることができるため、サブフレームごとにPDCCHを通じた特定のダウンリンク割当てメッセージやアップリンクグラントメッセージの必要性が回避される。パーシステントスケジューリングは、データパケットが小さく周期的であり、サイズがほぼ一定であるVoIPなどのサービスに有用である。したがって、動的なスケジューリングの場合と比較してPDCCHのオーバーヘッドが大幅に減少する。
【0096】
eNodeBによるアップリンクリソースの割当て(すなわちアップリンクスケジューリング)を支援するため、ユーザ機器からeNodeBへのバッファ状態報告(BSR)が使用される。eNBのスケジューラは、ダウンリンクの場合、各ユーザ機器に配信されるデータの量を当然認識している。しかしながら、アップリンク方向の場合、スケジューリングの決定はeNBにおいて行われ、データのバッファはユーザ機器内にあるため、UL−SCHを通じて送信する必要のあるデータ量を示す目的で、ユーザ機器からeNBにバッファ状態報告(BSR)を送らなければならない。
【0097】
LTEにおいては、バッファ状態報告のMAC制御要素は、ロングBSR(LCG ID #0〜#3に対応する4つのバッファサイズフィールドを有する)またはショートBSR(1つのLCG IDフィールドと、1つの対応するバッファサイズフィールドを有する)のいずれかからなる。バッファサイズフィールドは、論理チャネルグループの論理チャネルすべてにわたる利用可能な合計データ量を示し、異なるバッファサイズレベルのインデックスとして符号化されたバイト数で示される(非特許文献5の第6.1.3.1章も参照、この文書は参照によって本明細書に組み込まれている)。
【0098】
ユーザ機器によってショートBSRまたはロングBSRのどちらが送信されるかは、トランスポートブロックにおける利用可能な送信リソースと、空ではないバッファを有する論理チャネルのグループの数と、ユーザ機器において特定のイベントがトリガーされるかに依存する。ロングBSRは、4つの論理チャネルグループのデータ量を報告するのに対して、ショートBSRは、最高位の論理チャネルグループのみについて、バッファに格納されているデータ量を示す。
【0099】
論理チャネルグループのコンセプトを導入する理由は、ユーザ機器に5つ以上の論理チャネルが設定される場合、個々の論理チャネルそれぞれのバッファ状態を報告するとシグナリングオーバーヘッドが大きくなりすぎるためである。したがって、eNBは、各論理チャネルを論理チャネルグループに割り当てる。好ましくは、QoS要件が同じかまたは類似する論理チャネルが同じ論理チャネルグループに割り当てられるべきである。
【0100】
送信の失敗に対してロバストであるようにする目的で、LTEではBSR再送信メカニズムが定義されている。アップリンクグラントが再開されるとき再送信BSRタイマーが起動または再起動される。再送信BSRタイマーが切れる前にアップリンクグラントが受信されない場合、ユーザ機器によって別のBSRがトリガーされる。
【0101】
BSRは、例えば次の場合にトリガーされる。
− バッファが空ではない(すなわちバッファにすでにデータが含まれている)論理チャネルよりも高い優先順位を有する論理チャネルのデータが到着するとき
− それまでは送信するデータが利用可能ではなかった(すなわちすべてのバッファがそれまで空であった)ときに、いずれかの論理チャネルにおいてデータが利用可能になるとき
− 再送信BSRタイマーが切れるとき
− 周期的BSR報告のタイミングになったとき(すなわちperiodicBSRタイマーが切れるとき)
− BSRを格納できる予備のスペースがトランスポートブロック内に存在するとき
【0102】
BSRに関してと、特にBSRのトリガリングに関するさらに詳しい情報は、非特許文献5(この文書は参照によって本明細書に組み込まれている)の第5.4.5章に説明されている。
【0103】
BSRがトリガーされたときにトランスポートブロックにBSRを含めるためのアップリンクリソースがユーザ機器に割り当てられていない場合、ユーザ機器は、BSRを送信するためのアップリンクリソースが割り当てられるように、スケジューリング要求(SR)をeNodeBに送る。1ビットのスケジューリング要求がPUCCHを通じて送られる(専用スケジューリング要求D−SR)、または、BSRを送るためのアップリンク無線リソースの割当てを要求するためにランダムアクセス手順が実行される。
【0104】
しかしながら、完全性のため、周期的BSRが送信される場合、ユーザ機器はスケジューリング要求の送信をトリガーしないことに留意されたい。
【0105】
さらには、特定のスケジューリングモードにおいてSR送信の機能強化が導入されており、送信グラントのための第1層/第2層制御シグナリングのオーバーヘッドを節約する目的で、所定の周期でリソースが永続的に(パーシステントに)割り当てられる(セミパーシステントスケジューリング(SPS)と称される)。セミパーシステントスケジューリングの対象として主として考慮されるサービスの一例はVoIPである。会話時、コーデックにおいて20msごとにVoIPパケットが生成される。したがって、eNodeBは、アップリンクリソースまたはダウンリンクリソースを20msごとに永続的に割り当てることができ、これらのリソースを使用してVoIPパケットを送信することができる。一般的には、セミパーシステントスケジューリング(SPS)は、トラフィック挙動を予想できる(すなわちビートレートが一定であり、パケットの到着タイミングが周期的である)サービスにおいて恩恵がある。アップリンク方向にSPSが設定される場合、eNodeBは、設定されている特定の論理チャネルについてSRトリガリング/送信をオフにすることができ、すなわち、これら特定の設定されている論理チャネルにデータが到着することによってBSRがトリガーされても、スケジューリング要求(SR)がトリガーされない。この種類の機能強化の効果として、セミパーシステントに割り当てられたリソースを使用する論理チャネル(VoIPパケットを伝える論理チャネル)のためのスケジューリング要求を送ることは、eNBのスケジューリングにおいて意味がなく、したがって回避すべきである。
【0106】
従来技術の欠点
【0107】
LTEにおける現在の検討項目は、さまざまなデータアプリケーションのためのRANの機能強化に関する。その発想として、幅広い種類のデータアプリケーションをしばしば並列に実行するスマートフォン、ラップトップ、ネットブック、タブレット、および埋込み型モデムを良好にサポートするため、現在の移動通信ネットワークを強化する。主たる目標は、さまざまなトラフィックプロファイルを扱うLTEの能力を強化する、無線アクセスネットワークレベルにおけるメカニズムを識別して指定することである。アプリケーションのトラフィックプロファイルが多様性であり特性を予測できないため、ネットワークを最適化し、あらゆる使用状況下での効率的な動作を保証するうえでの課題が生まれる。特定のアプリケーションに対してRRC状態制御メカニズムおよびDRX設定を最適化することができるが、これらは最適なままではなく、なぜならデバイス上ではさまざまなアプリケーションがインストール/起動/停止され、その結果としてデバイスのトラフィックプロファイルが時間とともに変化するためである。さらなる目標は、バッテリの寿命を延ばす目的で、端末の電力使用量を低減することである。さらに、特定のマシンタイプコミュニケーション(MTC)デバイスにおいては、低い電力消費量が極めて重要な要件となることがある。
【0108】
バッファ状態報告およびスケジューリング要求を報告する方式として、現在標準化されている方式は電力効率が良好ではなく、以下ではこのことについて
図9を参照しながら説明する。
【0109】
図9は、ユーザ機器の送信バッファ(UE Txバッファ)にデータが到着したときのBSR/SRに関するユーザ機器の挙動を例示的に示している。説明を目的として、以下ではやや単純化したシナリオを想定する。ユーザ機器の1つのみの送信バッファおよび1つのみの論理チャネルを考慮する。送信バッファは最初の時点では空である(すなわち送信バッファにデータが格納されていない)ものと想定する。さらに、ユーザ機器は、バッファ状態報告をeNodeBに送信するための十分なアップリンクリソースを有していないものとする。しかしながら、ユーザ機器には、必要なときにスケジューリング要求(専用スケジューリング要求D−SRとも称する)を送信するための、PUCCHにおける利用可能なリソースが(RRCシグナリングによって)半静的に割り当てられているものとする。
【0110】
当然ながら、以下に示す問題点は、別の論理チャネルの送信バッファと、論理チャネルグループ(論理チャネルグループにグループ化された論理チャネルの送信バッファはまとめて考慮される)にも、同様にあてはまる。さらに、(1つまたは複数の)送信バッファは空である必要はない。しかしながら、この場合、ユーザ機器の送信バッファに入る新しいデータ(すなわち現在到着したデータ)は、送信バッファにすでに格納されているデータよりも高い優先順位を有するものとする。SRを送信するためにPUCCHの割り当てられているリソースが利用可能ではない場合、ユーザ機器は、このようなD−SRアップリンクリソースを使用する代わりに、RACH手順を実行してスケジューリング要求を送信しなければならないことがある。
【0111】
時刻t1に、ユーザ機器の送信バッファに新しいデータが到着すると、ユーザ機器は、このデータを送信するためのアップリンクリソースを最初に要求しなければならず、なぜなら、この時点では適切なアップリンクリソースが利用可能ではないためである。したがって、上述した標準的なトリガー条件によると、ユーザ機器においてBSRがトリガーされ、BSRを送信するためのアップリンクリソースさえも不足していることを考慮して、送信のためのスケジューリング要求がユーザ機器においてトリガーされる。
【0112】
ユーザ機器は、アップリンクリソースをユーザ機器に割り当てるようにeNodeBに要求するため、割り当てられているPUCCHリソース(または
図9には示していないRACH手順)を使用してスケジューリング要求をeNodeBに送信する。それに応じて、eNodeBは、いくらかのUL−SCHリソースをユーザ機器に割り当てる。eNodeBは、例えばアップリンクにおける現在のリソース使用状況に応じて、適切な量のアップリンクリソースを、スケジューリング要求(SR)に応えてユーザ機器に割り当てることができ、対応するアップリンクグラントをPDCCHを介して送信する。
【0113】
ユーザ機器は、アップリンクグラントメッセージを受信すると、割り当てられたPUSCHリソースの量に応じて、BSRに加えてデータを送信する、またはデータは送信しない。ユーザ機器は、BSRを生成するときにこのことを考慮し、したがってBSRは、BSRと、場合によっては送信バッファのデータとを送信した後の送信バッファ内のデータ量を示す。
【0114】
したがって、ユーザ機器は、PUSCHを通じてBSRのみを送信する、またはユーザ機器の送信バッファのいくらかのデータを含めることができる。
図9では、最初のシグナリング交換において、ユーザ機器が、スケジューリング要求(SR)に応えてeNodeBによって割り当てられたアップリンクリソースを使用して、送信バッファのすべてのデータをeNodeBに送信できるものと想定する。したがって、BSRは、基本的に送信バッファが空であり、したがってさらなるアップリンクグラントを割り当てる必要がないことをeNodeBに通知する。
【0115】
しかしながら、通常では、送信バッファを空にするためには2回以上のアップリンク送信が必要であり、
図9では、時刻t2に到着する新しいデータに関連してこのことを示してある。この場合、データの量は、時刻t1において送信バッファ内で利用可能になるデータよりも多い。しかしながら、基本的には上記の手順が図示したようにそのまま繰り返され、ただし異なる点として、BSRとデータを含むPUSCHを送信しても、送信バッファを空にするには十分ではない。したがって、送信時にユーザ機器によって生成されるBSRは、送信バッファに残っているデータについてeNodeBに通知する。したがって、eNodeBは、送信バッファに残っているデータに対応するさらなるアップリンクリソースをユーザ機器に割り当てる。eNodeBによってアップリンクグラントメッセージがユーザ機器に送信され、ユーザ機器は、割り当てられたアップリンクリソースを使用して残りのデータを送信し、自身の送信バッファを空にすることができる。
【0116】
バッファに新しいデータが到着するたびに、上記の手順の一方が繰り返される。したがって、頻繁な間隔で(ただし間隔は周期的である必要はない)少量のみのデータを送信する必要のある、例えば低ボリュームのバックグラウンドサービスやインスタントメッセージサービスの場合、
図9に示した、現在定義されているBSR/SR手順は、送信電力の観点から効率的ではない。SR/BSRを頻繁に送信することにより、ユーザ機器において多くの送信電力が消費される。さらには、eNodeBは、頻繁なPUSCH送信をスケジューリングするために多数のPDCCHを発行する必要があるため、PDCCHのオーバーヘッド(すなわちアップリンクグラント)も無視できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0118】
本発明は、上に挙げたさまざまな欠点を回避するように対策を講じる。
【0119】
本発明の1つの目的は、移動端末における改善されたスケジューリング要求動作のメカニズムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0120】
本目的は、独立請求項の主題によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0121】
本発明の主たる一態様は、ユーザ機器であって、ロジカルチャネルについての第2のトリガー条件の設定に使用される設定情報を無線基地局から受信する受信部と、第1のトリガー条件が満たされたか否かを判定するようにされているプロセッサであって、前記第1のトリガー条件はバッファ状態報告が送信バッファにおいてデータ送信可能状態になったことに起因してトリガーされたことであり、前記プロセッサは、前記第2のトリガー条件が設定されたロジカルチャネルについて前記第1のトリガー条件が満たされた場合に、前記第2のトリガー条件が満たされたか否かを判定し、前記第2のトリガー条件は前記送信バッファのデータに関するタイマーが満了したことであり、前記プロセッサは、前記第2のトリガー条件が設定された前記ロジカルチャネルについて前記第1のトリガー条件が満たされた場合に、前記タイマーを開始し、スケジューリング要求の送信のトリガーを前記タイマーが満了するまで延期し、前記プロセッサは、前記第2のトリガー条件が設定されていないロジカルチャネルについて前記第1のトリガー条件が満たされた場合に、前記タイマーを開始しないことを決定し、前記第2のトリガー条件が設定された前記ロジカルチャネルについて前記第1および第2のトリガー条件が満たされた場合に、前記無線基地局に対してアップリンクリソースを要求する前記スケジューリング要求の送信をトリガーする送信部と、を有するユーザ機器である。
【0122】
第1の態様によると、本発明は、スケジューリング要求の送信と、したがってユーザ機器によってリソースを要求する方法の改善を提案する。この第1の態様に関する要点の1つは、ユーザ機器の電力効率を改善する目的で、特定の状況においてスケジューリング要求の送信を延期することである。以下では、このようにスケジューリング要求の送信を遅らせることを達成する方法について説明する。
【0123】
基本的には、
図9および上記の問題の説明部分に関連して行われるシナリオと同じシナリオとを想定する。特に、通信システムにおいてユーザ機器は、アップリンクにおいて無線基地局に送信されるデータを一時的に格納するための少なくとも1つの送信バッファを有するものとする。さらに、ユーザ機器は、バッファ状態報告または任意の他の種類のユーザデータを送信するために利用可能なアップリンクリソースを有さないものとする。しかしながら、ユーザ機器は、必要なときにスケジューリング要求(通常は1ビット)を送信するのに十分であるがそれ以上のデータを送信するには不十分な、アップリンク制御チャネルにおける割り当てられた周期的なリソースを有することができ、ただしこのことは本発明の目的に必須ではない。
【0124】
スケジューリング要求の送信を遅らせる目的で、スケジューリング要求の送信をしきい値に基づいてトリガーする。より具体的には、ユーザ機器において2つのトリガー条件が定義され、これらの両方が満たされたときに最終的にスケジューリング要求が送信される。両方のトリガー条件は、無線基地局へのバッファ状態報告の送信をトリガーすることに関連し、バッファ状態報告の送信がトリガーされることは、適切なアップリンクリソースが存在しないとき、バッファ状態報告を送信するための(場合によってはデータの送信にも使用される)適切なアップリンクリソースの割当てを要求するためのスケジューリング要求の送信に直接つながる。
【0125】
第1のトリガー条件は、送信バッファ内で新しいデータが利用可能になることに関することが有利である。言い換えれば、第1のトリガー条件が満たされるためには、ユーザ機器が新しいデータを送信しなければならず、したがって新しいデータがユーザ機器の対応する送信バッファに入る。これは、送信バッファが空であるか否かには無関係である。
【0126】
第2のトリガー条件は、ユーザ機器の送信バッファ内のデータが何らかのしきい値を超えることに関する。1つの可能な方式として、送信バッファ内のデータ量が所定のデータ量よりも多い(すなわちデータ量のしきい値を上回る)ときに、第2のトリガー条件が真になる。別の可能な方式として、ある時間長をあらかじめ決めておき、空の送信バッファに新しいデータが到着したときから開始して、その所定の時間長が経過したときに第2のトリガー条件がトリガーされる。なお、このタイマーは、送信バッファに新しいデータが到着するたびに再起動(またはリセット)されるのではなく、空の送信バッファに「最初の」新しいデータが到着したときにのみ再起動(またはリセット)されることが好ましい。データが周期的に生成され、送信バッファ内に入って無線基地局に送信される周期的なアップリンクサービスを考えるとき、このようなタイマーを使用することは、データ量のしきい値を使用して、送信バッファ内のデータ量がこのしきい値を超えたときに第2のトリガー条件が満たされるときと極めて類似する効果を有する。
【0127】
しかしながら、第2のトリガー条件のこれら2つの可能な方式は同じではなく、新しいデータが到着していないときにもタイマーが切れることがあることを考えれば明らかである。したがって、第2のトリガー条件が、データ量のしきい値を超えることを要求するとき、この状況は、基本的には、送信バッファに新しいデータが到着し、したがって第1のトリガー条件が満たされ、第1のトリガー条件と第2のトリガー条件が基本的に同時に満たされるときにのみ起こり得る。当然ながら、この場合にも、新しいデータが到着するたびに第1のトリガー条件をチェックする代わりに、第1のトリガー条件が満たされたことが最初に判定されたときに、そのことを格納しておくことができ、第2のトリガー条件がチェックされる限り格納しておき、したがって、第2のトリガー条件が満たされたと判定されるとき、第1のトリガー条件をもう一度チェックすることなしにスケジューリング要求がトリガーされる。
【0128】
これとは異なり、第2のトリガー条件としてタイマーが使用される場合、第2のトリガー条件が満たされるために第1のトリガー条件が満たされる必要はない。したがって、このタイマー方式では、ユーザ機器は、このタイマーが作動している間、第1のトリガー条件が満たされたことを格納しておくことができ、この場合、タイマーが切れると、ユーザ機器は両方のトリガー条件が真になったものとみなす。
【0129】
この第1の態様の1つのバリエーションによると、バッファ状態報告およびしたがってスケジューリング要求は、両方のトリガー条件が満たされた場合にのみトリガーされる。言い換えれば、送信バッファに新しいデータが到着し、送信バッファ内のデータが所定のデータ量よりも多いとき(または空の送信バッファに新しいデータが到着したときに起動したタイマーが切れたとき)にのみトリガーされる。
【0130】
したがって、両方のトリガー条件が満たされたとき、ユーザ機器はバッファ状態報告の送信をトリガーし、その直接的な結果として(適切なアップリンクリソースが利用可能ではないものと想定する)、スケジューリング要求の送信をトリガーすると言える。スケジューリング要求は、割り当てられたパーシステントリソースを有するアップリンク制御チャネル(PUCCH)を使用して、またはランダムアクセス手順(RACH)を使用して、無線基地局に送信される。
【0131】
第1の態様のバリエーションにおいては、上述した第1のトリガー条件を、3GPP標準規格(背景技術のセクションを参照)に従って定義することができ、すなわち、送信バッファが空であるときに送信バッファに新しいデータが到着したときと、送信バッファが空でない(すなわち送信バッファにすでにデータが格納されておりアップリンクで送信されるのを待機している)ときには、新しいデータが送信バッファにすでに格納されるデータより高い優先順位を有する場合にのみ、第1のトリガー条件が満たされる。しかしながらこの場合、ユーザ機器は、第1のトリガー条件が満たされているという情報を、次の理由で格納することができる。第1のトリガー条件が現在の標準規格のとおりに定義されていると想定すると、送信バッファが空ではないときに新しいデータが到着しても、第1のトリガー条件は満たされず、なぜなら、新しく到着したデータが送信バッファ内にすでに格納されているデータより必ずしも高い優先順位を有するとは限らず、多くの場合、送信バッファ内にすでに格納されているデータと同じ優先順位を有するためである。空のバッファに新しいデータが到着し、第1のトリガー条件が真であるとき、第1のトリガ条件が満たされているというこの情報を、第2のトリガー条件が満たされるかを判定している間、格納しておく。必要な限り第1のトリガー条件を真に維持することによって、第2のトリガー条件が満たされるかを判定するとき、トリガリングの標準的な方法と比較して、バッファ状態報告/スケジューリング要求のトリガリングを遅らせることが可能である。
【0132】
上記の第1の態様と組み合わせて、または第1の態様とは独立して使用できる第2の態様によると、ユーザ機器がスケジューリング要求をアップリンク制御チャネル(PUCCH)の専用リソースを介して送った後にアップリンクグラントがないかダウンリンク制御チャネルを監視している時間を短縮する。第1の態様に関連して説明したように、ユーザ機器は、バッファ状態報告もしくはアップリンクのユーザデータまたはその両方をアップリンクで送信するためのリソースを要求するスケジューリング要求を送る。スケジューリング要求は、PUCCHの静的に割り当てられるリソース(D−SR)を使用することによって送信することができる。専用スケジューリング要求を送信した直後に、基地局からの対応するするアップリンクグラントがないかダウンリンク制御チャネルを監視する代わりに、特定の時間だけ監視を遅らせることが有利であり、したがって、ユーザ機器は、特定の時間長が経過した後に初めてダウンリンク制御チャネルの監視を開始する。専用スケジューリング要求を無線リンクを通じて送信する必要があり、このスケジューリング要求を基地局において処理する必要があり、基地局は対応するアップリンクグラントを無線リンクを通じてユーザ機器に送信する必要があることを考慮すれば、アップリンクグラントを含んだダウンリンク制御チャネル(すなわちPDCCH)を「見逃す」危険を冒すことなく、ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)の監視をいくらかの時間だけ遅らせることができる。可能な遅延として、例えば3サブフレームとすることができるが、より少ない、またはより多くのサブフレームに設定することもできる。
【0133】
この第2の態様によって提供される利点として、ユーザ機器は、専用スケジューリング要求を送った後、ダウンリンク制御チャネルの監視を開始するまではアウェイクしている必要がなく、したがって電力が節約される。
【0134】
さらに、アップリンクグラントを含んだ対応するダウンリンク制御チャネルを受信したとき、ダウンリンク制御チャネルの監視を停止する、または、タイマーを設定することによって受信前に停止することができ、タイマーは、たとえアップリンクグラントが受信されない場合にも、ユーザ機器によるダウンリンク制御チャネルの監視を停止させるために使用される。
【0135】
上記の第1の態様および第2の態様と組み合わせて、または第1の態様および第2の態様とは独立して使用できる第3の態様によると、対応するダウンリンク制御チャネルを受信せずに基地局からダウンリンクフィードバックチャネルを介して肯定応答を受信したときに、ダウンリンク制御チャネルの監視を停止するようにユーザ機器がトリガーされるように定義することによって、ユーザ機器と基地局との間に採用されている再送信プロトコルを改善する。より詳細には、ユーザ機器および基地局は、ユーザ機器によるアップリンク送信に対して否定応答または肯定応答するために再送信プロトコルまたはフィードバックプロトコルを使用する。否定応答/肯定応答をユーザ機器に伝送するのにダウンリンクフィードバックチャネルが使用され、したがってユーザ機器は、アップリンクデータを送信するたびにダウンリンクフィードバックチャネルを監視して応答を受信する。
【0136】
さらに、基地局がユーザ機器に前のアップリンクデータ送信を再送信するように要求する場合、ユーザ機器は、基地局によって送られる再送信要求がないかダウンリンク制御チャネルを監視する。ダウンリンク制御チャネルを通じての指示と、ダウンリンクフィードバックチャネルを介しての応答は一致する必要はない。例えば、ダウンリンクフィードバックチャネルが肯定応答を伝えた場合でも、データを再送信するようにダウンリンク制御チャネルを通じてユーザ機器に指示されることがある。このような場合、ダウンリンク制御チャネルの指示が、ダウンリンクフィードバックチャネルの指示を上書きする。しかしながら、ユーザ機器が基地局から肯定応答を受信し、ダウンリンク制御チャネルを介して対応する指示を受信していないとき、従来の方式では、ユーザ機器は再送信または新しい送信を実行せずに、再送信プロトコルのバッファにデータを維持する一方で、ダウンリンク制御チャネルを通じてのさらなる指示がないかダウンリンク制御チャネルをさらに監視する。
【0137】
この第3の態様によると、ユーザ機器が、前に送信したデータに関して肯定応答を受信し、対応するダウンリンク制御チャネルを受信しないとき、ユーザ機器は、さらなる指示がないかダウンリンク制御チャネルを監視することを停止する。これにより、ユーザ機器のアクティブ時間が減少し、したがって電力使用量をさらに低減することができる。
【0138】
第4の態様(上記の第1、第2、および第3の態様と組み合わせて、または第1、第2、および第3の態様とは独立して使用できる)では、専用スケジューリング要求リソースの使用を、対応するスケジューリング要求をトリガーするデータの優先順位または種類に応じて制約することのできる方式を導入する。前述したように、アップリンク制御チャネルを介してスケジューリング要求を送信するのに、アップリンク制御チャネルの静的なリソースがユーザ機器から利用可能である。これらのリソースを、専用スケジューリング要求リソースと称することができる。専用スケジューリング要求リソースは、時間的に周期的である。前に詳しく説明したように、スケジューリング要求は、送信バッファにデータが到着することによって間接的にトリガーされる。このデータは、特定の優先順位が関連付けられている論理チャネルに属す。したがって、スケジューリング要求も優先順位(すなわちスケジューリング要求をトリガーしたデータの優先順位)を有すると言える。
【0139】
この第4の態様によると、周期的な専用スケジューリング要求リソースに優先順位しきい値が割り当てられ、優先順位しきい値は、その特定のリソースの使用を、十分に高い優先順位を有するスケジューリング要求のみに制約する。具体的には、好ましくは、スケジューリング要求の優先順位が、専用スケジューリング要求リソースに要求される優先順位しきい値を上回る(または少なくとも等しい)場合、ユーザ機器は実際にそのリソースを使用してスケジューリング要求を送信することができる。スケジューリング要求の優先順位が、専用リソースの優先順位しきい値を超えない(または等しい)場合、ユーザ機器は次の専用スケジューリング要求リソースを待機して、スケジューリング要求の優先順位と、専用スケジューリング要求リソースに要求される優先順位しきい値とを再び比較する必要がある。したがって、低い優先順位のスケジューリング要求および高い優先順位のスケジューリング要求の両方に使用できる専用スケジューリング要求リソースと、高い優先順位のスケジューリング要求のみに制約される別の専用スケジューリング要求リソースとが定義される。
【0140】
この第4の態様の1つの実施形態では、これらの専用スケジューリング要求リソースにおいて2つ(または3つ以上)のサイクルが定義される。第1のサイクルは、例えば低い要求される優先順位を参照することができ、第2のサイクルは、例えば高い要求される優先順位を参照することができる。n番目ごとの周期的リソースが第1の低優先順位サイクルに割り当てられ、m番目ごとの周期的リソースが第2の高優先順位サイクルに割り当てられる。
【0141】
好ましくは、すべての専用スケジューリング要求リソースを、高い優先順位のスケジューリング要求に使用可能とするべきであり、したがって、第2のサイクルは、基本的に専用スケジューリング要求リソース自体のサイクルとすることができる。これに対して、低い優先順位のスケジューリング要求には、一部の周期的リソースを使用可能とし、したがって、低い優先順位のデータのためのスケジューリング要求は、第1のサイクルの対応する周期的リソースまで延期される。
【0142】
この第4の態様のバリエーションでは、スケジューリング要求がシステムのプライマリセルを介して送信されるのみならず、システムのセカンダリセルを使用して送信することもできるものと想定する。スケジューリング要求を送信するためにユーザ機器によって使用可能な周期的な専用スケジューリング要求リソースが、プライマリセルおよびセカンダリセルにおいて定義される。このバリエーションにおいては、プライマリセルの周期的リソースは、高い優先順位の(すなわち、プライマリセルの周期的な専用スケジューリング要求リソースに割り当てられている対応する所定の優先順位しきい値を超えている、または少なくとも等しい優先順位の)データによってトリガーされるスケジューリング要求を送信するためにのみ使用することができる。これに対して、セカンダリセルの専用リソースは、低い優先順位のデータによってトリガーされるスケジューリング要求を送信するために使用することができる。当然ながら、必要であれば、セカンダリセルの専用リソースを高い優先順位のスケジューリング要求に使用することもできる。
【0143】
別のバリエーションでは、スケジューリング要求をトリガーするデータの種類の間で差別化され、例えば、制御データとユーザデータとで差別化される。この場合、プライマリセルの専用スケジューリング要求リソースは、制御データによってトリガーされるスケジューリング要求を送信するためにのみ使用することができるのに対して、セカンダリセルの専用リソースは、主として、ユーザデータによってトリガーされるスケジューリング要求を送信するために使用することができる。
【0144】
本発明は、通信システムにおいてユーザ機器によってリソースを要求する方法であって、ユーザ機器が、アップリンクで無線基地局に送信されるデータを一時的に格納するための送信バッファを備えている、方法、を提供する。第1のトリガー条件および第2のトリガー条件が定義され、第1のトリガー条件は、送信バッファに新しいデータが到着することを要求し、第2のトリガー条件は、送信バッファ内のデータに関連付けられる値が所定のしきい値を超えることを要求する。ユーザ機器は、第1のトリガー条件が満たされるかを判定する。第1のトリガー条件が満たされているとき、ユーザ機器は、第2のトリガー条件が満たされるかを判定する。第2のトリガー条件が満たされると判定される場合、ユーザ機器は、アップリンクリソースを要求するためにスケジューリング要求を無線基地局に送信する。
【0145】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、第1のトリガー条件および第2のトリガー条件は、バッファ状態報告の送信をトリガーすることに対して定義される。バッファ状態報告がトリガーされると、ユーザ機器がバッファ状態報告を送信するためのアップリンクリソースが利用可能ではない場合、スケジューリング要求の送信がトリガーされる。
【0146】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、第2のトリガー条件は、送信バッファ内のデータ量が所定のしきい値を超えることを要求する、または、データが送信バッファ内に存在している時間が所定のしきい値を超えることを要求する。
【0147】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、第1のトリガー条件は、送信バッファが空であるときに送信バッファに新しいデータが到着することを要求する、または、送信バッファが空でないときに送信バッファに新しいデータが到着し、この新しいデータが、送信バッファ内にすでに存在しているデータよりも優先順位が高いことを要求する。ユーザ機器は、空の送信バッファに新しいデータが到着したことを判定した時点で、第1のトリガー条件が満たされていることを格納する。
【0148】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、ユーザ機器に対して複数の論理チャネルが設定されており、論理チャネルごとにユーザ機器において1つの送信バッファが提供される。第2のトリガー条件が満たされるかの判定は、複数の論理チャネルのうちの少なくとも1つに対してのみ実行される。有利な実施形態においては、この判定は、低い優先順位のデータに関連付けられている論理チャネルに対して行われる。
【0149】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、ユーザ機器に対して複数の論理チャネルが設定されており、論理チャネルごとにユーザ機器において1つの送信バッファが提供される。第2のトリガー条件が満たされるかの判定は、複数の論理チャネルがグループ化されている複数の異なる論理チャネルグループのうちの少なくとも1つに対してのみ実行される。有利な実施形態においては、この判定は、低い優先順位のデータに関連付けられている論理チャネルグループに対して行われる。第2のトリガー条件は、論理チャネルグループの論理チャネルの送信バッファ内のデータの合計が所定のしきい値を超えることを要求する。
【0150】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、スケジューリング要求は、アップリンク制御チャネルのリソースにおいて、またはランダムアクセス手順を介して、ユーザ機器から無線基地局に送信される。
【0151】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、所定のしきい値は、ユーザ機器によってあらかじめ決定される。有利な実施形態においては、この決定は、格納されているトラフィック履歴データに基づいて行われ、ユーザ機器は、あらかじめ決定されたしきい値を無線基地局に送信する。これに代えて、所定のしきい値は、ユーザ機器以外の通信システムのノードによって、好ましくはユーザ機器から受信されるトラフィック履歴データに基づいて、あらかじめ決定される。
【0152】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、ユーザ機器は、無線基地局によってユーザ機器に割り当てられたアップリンクリソースに関する情報を含むアップリンクグラントメッセージを、無線基地局から受信する。ユーザ機器は、バッファ状態報告と、オプションとして、送信バッファ内のデータの少なくとも一部とを、アップリンクグラントメッセージに含まれている割り当てられたアップリンクリソースを使用して、無線基地局に送信する。
【0153】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、ユーザ機器はダウンリンク制御チャネルを監視し、この場合、スケジューリング要求を無線基地局に送信してから所定の時間の後に、ダウンリンク制御チャネルの監視を開始する。有利な実施形態においては、監視は、ユーザ機器がダウンリンク制御チャネルを介してアップリンクグラントメッセージを受信するまで、または、スケジューリング要求を送信してから第2の所定の時間が経過するまで、実行する。
【0154】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、ユーザ機器は、データを無線基地局に送信し、データを無線基地局に送信した後、無線基地局からの肯定応答メッセージまたは否定応答メッセージがないかダウンリンクフィードバックチャネルを監視する。さらに、ユーザ機器は、データを無線基地局に送信した後、無線基地局からの再送信要求メッセージがないかダウンリンク制御チャネルを監視し、再送信要求メッセージは、データを再送信するようにユーザ機器に要求する。無線基地局からの再送信要求メッセージを対象とするダウンリンク制御チャネルの監視は、ダウンリンク制御チャネルを受信することなくダウンリンクフィードバックチャネルを介して肯定応答メッセージを受信したときに停止する。
【0155】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、アップリンク制御チャネルに関連付けられる周期的リソースが、ユーザ機器に割り当てられ、スケジューリング要求を無線基地局に送信するためにユーザ機器によって使用可能である。アップリンク制御チャネルに関連付けられる周期的リソースそれぞれに、要求される優先順位が割り当てられる。トリガーされるスケジューリング要求には、そのスケジューリング要求の送信をトリガーしたデータの優先順位に一致するスケジューリング要求の優先順位が割り当てられる。有利な実施形態においては、データの優先順位は、そのデータに関連付けられる論理チャネルの優先順位に一致する。周期的リソースそれぞれは、周期的リソースの要求される優先順位に等しいかそれより高いスケジューリング要求の優先順位を有するスケジューリング要求を送信するためにのみ使用可能である。
【0156】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、ユーザ機器は、スケジューリング要求の優先順位が、アップリンク制御チャネルの周期的リソースの要求される優先順位に等しいかまたはそれより高いかを判定する。スケジューリング要求の優先順位が周期的リソースの要求される優先順位に等しいかまたはそれより高いと判定される場合、その周期的リソースを使用してスケジューリング要求が送信される。スケジューリング要求の優先順位が周期的リソースの要求される優先順位より低いと判定される場合、ユーザ機器は、スケジューリング要求の優先順位が、アップリンク制御チャネルの次の周期的リソースの要求される優先順位に等しいかまたはそれより高いかを判定する。
【0157】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、少なくとも第1のスケジューリング要求サイクルおよび第2のスケジューリング要求サイクルが、アップリンク制御チャネルの周期的リソースにおいて定義され、アップリンク制御チャネルのn番目ごとの周期的リソースが第1のスケジューリング要求サイクルに関連付けられ、アップリンク制御チャネルのm番目ごとの周期的リソースが第2のスケジューリング要求サイクルに関連付けられ、ここでm≠nである。第1のスケジューリング要求サイクルに第1の要求される優先順位が割り当てられ、第2のスケジューリング要求サイクルに第2の要求される優先順位が割り当てられる。
【0158】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、ユーザ機器と基地局との間で、プライマリキャリアおよびセカンダリキャリアを有するキャリアアグリゲーションが使用される。プライマリキャリアの周期的リソースおよびセカンダリキャリアの周期的リソースがユーザ機器に割り当てられ、スケジューリング要求を無線基地局に送信するためにユーザ機器によって使用可能である。プライマリキャリアの周期的リソースは、第1の種類のデータによってトリガーされるスケジューリング要求を送信するために使用され、セカンダリキャリアの周期的リソースは、第2の種類のデータによってトリガーされるスケジューリング要求を送信するために使用される。
【0159】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、第1の種類のデータは、プライマリキャリアの周期的リソースの所定の優先順位しきい値を超える優先順位を有するデータであり、第2の種類のデータは、所定の優先順位しきい値に等しいかまたはそれより低い優先順位を有するデータである。これに代えて、第1の種類のデータは制御プレーンデータであり、第2の種類のデータはユーザプレーンデータである。
【0160】
さらに、本発明は、通信システムにおいてリソースを要求するユーザ機器を提供する。ユーザ機器の送信バッファは、アップリンクで無線基地局に送信されるデータを一時的に格納する。ユーザ機器のメモリは、第1のトリガー条件および第2のトリガー条件を格納しており、第1のトリガー条件は、送信バッファに新しいデータが到着することを要求し、第2のトリガー条件は、送信バッファ内のデータに関連付けられる値が所定のしきい値を超えることを要求する。ユーザ機器のプロセッサは、第1のトリガー条件が満たされるかを判定する。さらに、プロセッサは、第1のトリガー条件が満たされているとき、第2のトリガー条件が満たされるかを判定する。プロセッサが、第2のトリガー条件が満たされると判定した場合、ユーザ機器の送信器は、アップリンクリソースを要求するためにスケジューリング要求を無線基地局に送信する。
【0161】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、第1のトリガー条件および第2のトリガー条件は、バッファ状態報告の送信をトリガーすることに対して定義される。バッファ状態報告がトリガーされると、ユーザ機器がバッファ状態報告を送信するためのアップリンクリソースが利用可能ではない場合、スケジューリング要求の送信がトリガーされる。
【0162】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、第2のトリガー条件は、
− 送信バッファ内のデータ量が所定のしきい値を超えること、または、
− データが送信バッファ内に存在している時間が所定のしきい値を超えること、
を要求する。
【0163】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、第1のトリガー条件は、
− 送信バッファが空であるときに送信バッファに新しいデータが到着すること、または、
− 送信バッファが空でないときに送信バッファに新しいデータが到着し、この新しいデータが、送信バッファ内にすでに存在しているデータよりも優先順位が高いこと、
を要求する。
【0164】
メモリは、プロセッサが空の送信バッファに新しいデータが到着したことを判定した時点で、第1のトリガー条件が満たされていることをさらに格納する。
【0165】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、ユーザ機器に対して複数の論理チャネルが設定されており、ユーザ機器は、論理チャネルごとに1つの送信バッファを備えている。プロセッサは、複数の論理チャネルのうちの少なくとも1つのみに対して、第2のトリガー条件が満たされるかの判定を実行する。有利な実施形態においては、この判定は、低い優先順位のデータに関連付けられている論理チャネルに対して行われる。
【0166】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、ユーザ機器に対して複数の論理チャネルが設定されており、論理チャネルごとにユーザ機器において1つの送信バッファが提供される。プロセッサは、複数の論理チャネルがグループ化されている複数の異なる論理チャネルグループのうちの少なくとも1つに対してのみ、第2のトリガー条件が満たされるかの判定を実行する。有利な実施形態においては、この判定は、低い優先順位のデータに関連付けられている論理チャネルグループに対して行われる。プロセッサは、論理チャネルグループの論理チャネルの送信バッファ内のデータの合計を計算し、計算されたデータの合計が所定のしきい値を超えるときを判定する。
【0167】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、送信器は、アップリンク制御チャネルのリソースにおいて、またはランダムアクセス手順を介して、スケジューリング要求を無線基地局に送信するようにされている。
【0168】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、プロセッサは、所定のしきい値をあらかじめ決定する。有利な実施形態においては、この決定は、格納されているトラフィック履歴データに基づいて行われ、送信器は、あらかじめ決定されたしきい値を無線基地局に送信するようにされていることが好ましい。送信器は、格納されているトラフィック履歴データを、所定のしきい値をあらかじめ決定するネットワークエンティティに送信し、ユーザ機器の受信器は、このネットワークエンティティから、あらかじめ決定されたしきい値を受信する。
【0169】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、受信器は、無線基地局によってユーザ機器に割り当てられたアップリンクリソースに関する情報を含むアップリンクグラントメッセージを、無線基地局から受信する。送信器は、バッファ状態報告と、オプションとして、送信バッファ内のデータの少なくとも一部とを、アップリンクグラントメッセージに含まれている割り当てられたアップリンクリソースを使用して、無線基地局に送信する。
【0170】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、監視回路は、ダウンリンク制御チャネルを監視し、この場合、スケジューリング要求を無線基地局に送信してから所定の時間の後に、ダウンリンク制御チャネルの監視を開始する。有利な実施形態においては、監視回路は、ユーザ機器がダウンリンク制御チャネルを介してアップリンクグラントメッセージを受信するまで、または、スケジューリング要求を送信してから第2の所定の時間が経過するまで、ダウンリンク制御チャネルを監視する。
【0171】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、送信器は、データを無線基地局に送信する。データを無線基地局に送信した後、監視回路は、無線基地局からの肯定応答メッセージまたは否定応答メッセージがないかダウンリンクフィードバックチャネルを監視する。データを無線基地局に送信した後、監視回路は、無線基地局からの再送信要求メッセージがないかダウンリンク制御チャネルを監視し、再送信要求メッセージは、データを再送信するようにユーザ機器に要求する。ダウンリンク制御チャネルを受信することなくダウンリンクフィードバックチャネルを介して肯定応答メッセージを受信したときに、監視回路はダウンリンク制御チャネルの監視を停止する。
【0172】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、アップリンク制御チャネルに関連付けられる周期的リソースがユーザ機器に割り当てられており、スケジューリング要求を無線基地局に送信するために使用可能である。アップリンク制御チャネルに関連付けられる周期的リソースそれぞれに、要求される優先順位が割り当てられ、トリガーされるスケジューリング要求には、そのスケジューリング要求の送信をトリガーしたデータの優先順位に一致するスケジューリング要求の優先順位が割り当てられ、データの優先順位は、そのデータに関連付けられる論理チャネルの優先順位に一致することが好ましい。周期的リソースそれぞれは、周期的リソースの要求される優先順位に等しいかまたはそれより高いスケジューリング要求の優先順位を有するスケジューリング要求を送信するためにのみ使用可能である。
【0173】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、プロセッサは、スケジューリング要求の優先順位が、アップリンク制御チャネルの周期的リソースの要求される優先順位に等しいかまたはそれより高いかを判定する。スケジューリング要求の優先順位が周期的リソースの要求される優先順位に等しいかまたはそれより高いと判定される場合、そのリソースを使用してスケジューリング要求が送信される。スケジューリング要求の優先順位が周期的リソースの要求される優先順位より低いと判定される場合、プロセッサは、スケジューリング要求の優先順位が、アップリンク制御チャネルの次の周期的リソースの要求される優先順位に等しいかまたはそれより高いかを判定する。
【0174】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、少なくとも第1のスケジューリング要求サイクルおよび第2のスケジューリング要求サイクルが、アップリンク制御チャネルの周期的リソースにおいて定義され、アップリンク制御チャネルのn番目ごとの周期的リソースが第1のスケジューリング要求サイクルに関連付けられ、アップリンク制御チャネルのm番目ごとの周期的リソースが第2のスケジューリング要求サイクルに関連付けられ、ここでm≠nである。第1のスケジューリング要求サイクルに第1の要求される優先順位が割り当てられ、第2のスケジューリング要求サイクルに第2の要求される優先順位が割り当てられる。
【0175】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、ユーザ機器と基地局との間で、プライマリキャリアおよびセカンダリキャリアを有するキャリアアグリゲーションが使用される。プライマリキャリアの周期的リソースおよびセカンダリキャリアの周期的リソースがユーザ機器に割り当てられ、スケジューリング要求を無線基地局に送信するためにユーザ機器によって使用可能である。プライマリキャリアの周期的リソースは、第1の種類のデータによってトリガーされるスケジューリング要求を送信するために使用され、セカンダリキャリアの周期的リソースは、第2の種類のデータによってトリガーされるスケジューリング要求を送信するために使用される。
【0176】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる本発明の有利な実施形態によると、第1の種類のデータは、プライマリキャリアの周期的リソースの所定の優先順位しきい値を超える優先順位を有するデータであり、第2の種類のデータは、所定の優先順位しきい値に等しいかまたはそれより低い優先順位を有するデータである。これに代えて、第1の種類のデータは制御プレーンデータであり、第2の種類のデータはユーザプレーンデータである。
【0177】
以下、添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。図面において類似または対応する箇所には同じ参照番号を付している。
【発明を実施するための形態】
【0179】
以下の段落では、本発明のさまざまな実施形態について説明する。例示のみを目的として、実施形態のほとんどは、3GPP LTE(リリース8/9)およびLTE−A(リリース10/11)の移動通信システムによる無線アクセス方式に関連して概説してあり、これらの技術の一部については上の背景技術のセクションに説明してある。なお、本発明は、例えば、上の背景技術のセクションに説明されている3GPP LTE−A(リリース10/11)通信システムなどの移動通信システムにおいて有利に使用することができるが、本発明は、この特定の例示的な通信ネットワークにおける使用に限定されないことに留意されたい。
【0180】
請求項および説明において使用されている用語「新しいデータ」は、それまで送信バッファ内に存在していない、送信バッファに到着する(格納される)データとして理解されたい。このデータ(データパケット)は、上位層(例:PDCP層)から受け取られて送信バッファ内に配置される。この用語は「古いデータ」と対比して使用され、「古いデータ」は、受信側においてこのデータが正しく受信されていることを再送信プロトコルが確認する限り送信バッファ内に維持されているデータを意味する。
【0181】
請求項および説明において、しきい値と関連して使用される用語「を超える」または「を上回る」は、しきい値が実際に比較値を超える(すなわち、より高い)必要があることを意味するように限定的に使用されるのではなく、しきい値が比較値に等しい(すなわち同じである)場合も包む。
【0182】
請求項および説明において、データおよび送信バッファに関連して使用される用語「到着(する)」は、ユーザ機器によって送信されるデータが、送信のために対応する論理チャネルの送信バッファに「入る」または「格納される」または「一時的に格納される」こととして理解されたい。
【0183】
以下では、本発明のいくつかの実施形態について詳しく説明する。以下の説明は、本発明を制限するものではなく、本発明を深く理解するための、本発明の実施形態の単なる例として理解されたい。請求項に記載されている本発明の一般的な原理を、本明細書に明示的には説明されていない方法でさまざまなシナリオに適用できることが、当業者には認識されるであろう。したがって、さまざまな実施形態を説明する目的で想定されている以下のシナリオは、本発明を制限するものではない。
【0184】
ユーザ機器には、各論理チャネルのための送信バッファメモリが設けられており、送信バッファメモリは、アップリンクデータが無線リンクを通じてeNodeBに正常に送信されるまで、アップリンクデータを一時的に格納しておくために使用される。さらには、ユーザ機器は、データまたはバッファ状態報告を基地局に送信するための利用可能なリソースを有さず、したがってeNBへのスケジューリング要求を実行する必要があり、このプロセスが本発明の第1の実施形態によって改善される。
【0185】
前述したように、スケジューリング要求は、eNBによって割り当てられるPUCCHのリソースを介して送信する、またはRACH手順を使用することによって送信することができる。特に明記していない限り、以下では、このようなPUCCHのリソース(一般にはeNBによって周期的に割り当てられる)が、スケジューリング要求の送信がトリガーされた時点でただちにユーザ機器から利用可能であるものと想定する。しかしながら、代わりにRACH手順を使用するときにも、本発明を適用することができる。スケジューリング要求は、通常では1ビット長であり、対応する周期的なPUCCHのリソースによってスケジューリング要求を送信することができるが、このリソースは、バッファ状態報告や送信バッファの実際のデータなどのさらなるデータを送信するには十分ではない。
【0186】
本発明の第1の実施形態について、
図10に関連して説明する。
図10は、リソースを要求して、バッファ状態報告、スケジューリング要求、およびデータを送信するために基地局と交換されるメッセージと、ユーザ機器における送信バッファとを示している。
図11は、本発明の第1の実施形態を実行する場合のユーザ機器におけるプロセスを示しており、この場合、第2のトリガー条件はデータ量のしきい値を超えることを要求する。
図12は、
図11の代替形態であり、本発明の第1の実施形態を実行する場合のユーザ機器におけるプロセスを示しており、この場合、第2のトリガー条件はタイマーが切れることを要求する。
図13も、本発明の第1の実施形態を実行する場合のユーザ機器におけるプロセスを示しているが、
図11よりも詳しく示してある。
【0187】
この第1の実施形態における主たる発想は、
図9に関連して背景技術のセクションにおいて説明した標準的なトリガリング手順と比較して、バッファ状態報告/スケジューリング要求のトリガリングを遅らせることである。バッファ状態報告/スケジューリング要求を延期することによって、送信バッファにより多くのデータが到着し、したがってアップリンク送信によって、より短い時間でより多くのデータを伝送することができる。したがって、バッファ状態報告/スケジューリング要求のトリガリングは、送信バッファに十分な(すなわち何らかの所定のしきい値より多くの)データが格納されたときに実行され、空の送信バッファに新しいデータが到着したときにただちに実行されるのではない。より小さいトランスポートブロックサイズを送信するよりも、より大きいトランスポートブロックサイズを送信する方が電力効率が高い。さらには、後述するようにPDCCH負荷も大幅に減少する。
【0188】
トリガーされたバッファ状態報告を送信するためのアップリンクリソースが利用可能ではない場合、従来技術と同様に、バッファ状態報告を最初にトリガーし、その直後にスケジューリング要求をトリガーすることができる。
【0189】
本発明の第1の実施形態は、以下の例示的な方法において実施することができる。ユーザ機器におけるスケジューリング要求のトリガリングは、2つの条件に依存し、これら2つの条件の両方が満たされるものとする。LTE実装においては、両方のトリガー条件はバッファ状態報告の送信に関連するが、バッファ状態報告を送信することは、スケジューリング要求を送信することにつながり、なぜなら、トリガーされたバッファ状態報告をユーザ機器が送信するためのリソースが存在しないものと想定しているためである。したがって、トリガー条件は、スケジューリング要求の送信に対して定義されていると言うこともできる。
【0190】
第1のトリガー条件は、送信バッファ内で新しいデータが利用可能になることを要求し、すなわち、上位層からのデータがアップリンクで基地局に送信され、したがってユーザ機器の送信バッファの中に入る。なお、第1のトリガー条件は、送信バッファ内で新しいデータが利用可能になりさえすれば、送信バッファが空である否かと、新しいデータの優先順位には関係なく、満たされることに留意されたい。この第1のトリガー条件のバリエーションについては後から説明するが、3GPPの標準化において現在使用されており背景技術のセクションで説明した、バッファ状態報告のトリガー条件を有利に再利用する。
【0191】
第1のトリガー条件は
図11および
図13に記載されており、ユーザ機器が、自身の送信バッファに新しいデータが到着したかをチェックする。
【0192】
第2のトリガー条件は、基本的には、スケジューリング要求のトリガリングを延期する役割を果たす。第2のトリガー条件は、送信バッファ内に十分なデータが存在すること、または、データが少なくとも特定の時間長にわたり送信バッファ内に存在していることを要求する。したがって、送信バッファ内のデータが一般的に所定のしきい値(データ量または時間期間)を上回る。したがって、スケジューリング要求のトリガリングは、この第1の実施形態によると、しきい値に基づく。
【0193】
第2のトリガー条件において、ユーザ機器は、例えば、送信バッファ内のデータ量が所定のデータ量のしきい値に少なくとも等しいかまたはそれより多いかをチェックする。
【0194】
図11および
図13においては、データ量がしきい値を超える(すなわちしきい値に等しいかまたはそれより多い)ことを要求する第2のトリガー条件をユーザ機器がチェックするものと想定している。第1のトリガー条件と第2のトリガー条件は、
図11および
図13に示した順序で(すなわち最初に第1のトリガー条件、次に第2のトリガー条件)チェックするのが論理的であるように思われるが、これは必須ではない。ユーザ機器は、最初に第2のトリガー条件、次に第1のトリガー条件をチェックすることもできる。
【0195】
さらに、第2のトリガー条件(データ量がデータ量しきい値を上回ることを要求する)が満たされる場合、第1のトリガー条件が満たされていることが自動的に要求されることに留意されたい。言い換えれば、送信バッファに新しいデータが到着する(このことは第1のトリガー条件の要件に相当する)場合にのみ、送信バッファ内のデータ量が所定のデータ量を突然に超えることができる。したがって、第1の実施形態の1つの代替形態においては、第1の実施形態の場合、第1のトリガー条件を必ずしもチェックする必要がない。第2のトリガー条件のみをチェックすれば十分であり、したがって、送信バッファ内のデータ量が特定のしきい値を超えたときにBSR/SRがトリガーされる。
【0196】
これに代えて、第2のトリガー条件としてのデータ量のしきい値の代わりに、ユーザ機器は、空の送信バッファにデータが到着したときに、所定の時間長のタイマーを起動する。この代替形態は、
図12に示してある。タイマーは、送信バッファにおいて新しいデータが利用可能になるたびに起動するのではなく、空の送信バッファに初めてデータが入るときにのみ起動する。送信バッファのデータに関連する、このようにして起動されたタイマーが切れたとき、ユーザ機器は第2のトリガー条件が真であるものとみなす。
【0197】
第2のトリガー条件のもう一方のバリエーション(
図11/13を参照)とは異なり、第2のトリガー条件としてタイマーが使用される場合、第2のトリガー条件が満たされるとき、第1のトリガー条件が必ずしも満たされる必要はない。したがって、第1のトリガー条件が真であることを、必要である間(すなわちユーザ機器が第2のトリガー条件についてチェックする間)、ユーザ機器に格納しておくことができる。これに対して、第1のトリガー条件が満たされたことをユーザ機器が初めて判定したときに第2のトリガー条件のタイマーが起動される場合、第1のトリガー条件が満たされていることを格納しなくても、タイマーが作動していることによって、そのことが暗黙的に示される。この場合、個別の記憶装置は必要ない。
【0198】
第1の実施形態のさらなるバリエーションによると、第1のトリガー条件として、3GPP標準規格において現在採用されており背景技術のセクションで説明したトリガー条件を使用することができる。具体的には、第1のトリガー条件は、空の送信バッファに新しいデータが到着すること、または、空ではない送信バッファに到着する新しいデータが、空ではない送信バッファ内にすでに格納されているデータよりも高い優先順位を有することを要求する(非特許文献5の第5.4.5章と比較)。なお、標準の定義による第1のトリガー条件は、空ではない送信バッファにデータが到着する場合には満たされず、なぜなら、この新しく到着するデータが、送信バッファ内にすでに存在するデータより高い優先順位を有さないことがあり、多くの場合、送信バッファ内にすでに存在するデータと同じ優先順位を有するためである。したがって、この第1のトリガー条件は、空の送信バッファに新しいデータが到着したときにのみ真となる。この第1のトリガー条件が真となったことは、必要である間(例えば、第2のトリガー条件が満たされるかを判定している間)格納される。これに代えて、第2のトリガー条件がタイマーであり(上記を参照)、第1のトリガー条件が満たされたときにタイマーが起動されるときには、第1のトリガー条件が満たされたことを個別に格納する必要はない。さらに、第2のトリガー条件がデータ量のしきい値を参照するときには、前述した理由と基本的に同じ理由により、第1のトリガー条件のチェックを省くことができる。
【0199】
したがって、第1の実施形態のバリエーションのうちの1つに従って、上述したように、スケジューリング要求を送信するためのトリガー条件が満たされたとき、スケジューリング要求がユーザ機器から基地局に送信される。
図13は、より具体的であり、バッファ状態報告を送信するかを判定する目的で上述したトリガー条件がチェックされることと、バッファ状態報告を送信するためのリソースが利用可能ではないことをユーザ機器がさらに判定したときにスケジューリング要求が送信されることとを示している。
【0200】
図10は、時刻t1において空の送信バッファに新しいデータが到着したとき、または時刻t2において送信バッファに新しいデータが到着したときに、スケジューリング要求(SR)が送信されないことを示している。時刻t1および時刻t2においては、
図11または
図13による第1のトリガー条件は満たされるが、送信バッファ内のデータの合計量がしきい値(
図10における点線)より下のままであるため、第2のトリガー条件はまだ満たされない。時刻t3において初めて、第1のトリガー条件および第2のトリガー条件が満たされ、したがってユーザ機器において、基地局へのスケジューリング要求の送信がトリガーされる。スケジューリング要求は1回トリガーされる、すなわちワンショットトリガーである。
【0201】
スケジューリング要求は、すでに前述したように、周期的なPUCCHのリソースの1つを使用して、またはRACH手順を使用して、送信することができる。スケジューリング要求は、通常は1ビットであり、アップリンク送信のためのリソースが必要であることを基地局に示す。基地局は、スケジューリング要求を受信して処理し、現在の無線条件に応じて、適切な量のアップリンクリソースをユーザ機器に割り当てる。
【0202】
したがって、基地局は、ユーザ機器に割り当てられるアップリンクリソースを示すアップリンクグラントを、PDCCHを使用してユーザ機器に送信する。
【0203】
PDCCHを監視しているユーザ機器は、アップリンクグラントを含むPDCCHを受信し、したがって、eNodeBに送信するためのバッファ状態報告を作成することができる。ユーザ機器に割り当てられたリソース量に応じて、バッファ状態報告のみならず、送信バッファ内のデータの一部も送ることができる。その場合、バッファ状態報告は、送信バッファ内に残っているデータ量(すなわち最初に割り当てられたリソースに収まるデータを除くデータ量)を示すのみである。
【0204】
バッファ状態報告と、場合によってはアップリンクデータの一部とが、ユーザ機器によってPUSCHでeNodeBに送信される。eNodeBは、さらなるリソースをユーザ機器に割り当てることができ、したがってユーザ機器は、時刻t4,t5,t6に示すように、送信バッファを空にすることができる。
図10では、アップリンクリソースがeNodeBによって動的に割り当てられることを想定している(各サブフレームに対して個別のアップリンクグラント)。しかしながら、図には示していないが、アップリンクリソースのセミパーシステント割当ても可能であり、したがって、ユーザ機器は、アップリンクの周期的なリソースを割り当てるアップリンクグラントを受信し、これらのリソースを使用して送信バッファを空にし、データをeNodeBに送信することができる。
【0205】
図10では、送信バッファを空にするためには3回のアップリンク送信で十分であるものと想定している。しかしながら、これは単なる例であり、より多くの、またはより少ない送信が必要であり得る。
【0206】
以下では、第1の実施形態によって提供される利点について説明する。送信電力の観点からは、より小さいトランスポートブロックサイズを頻繁に送信するよりも、より大きいトランスポートブロックサイズを短時間のうちに送信する方が良い。したがって、第2のトリガー条件として使用されるデータ量のしきい値は、送信バッファのデータが大きいトランスポートブロックサイズに収まるように定義することができる。
【0207】
ユーザ機器はスケジューリング要求を少ない頻度で送信し、その結果として、ユーザ機器は、アップリンクグラントがないかPDCCHを少ない頻度だけ監視すればよく、したがって、ユーザ機器のDRX期間をより長くすることができ、必要な電力が減少する。なお、送信電力が減少する理由として、PUCCH送信(D−SR)およびPUSCH送信が少ないことのみならず、「アクティブ時間」が短縮されることも挙げられることに留意されたい。
図9のスケジューリング要求手順(従来技術)と
図10のスケジューリング要求手順(本発明)を比較したとき、PDCCH負荷が大幅に減少しており、この例では1/3である。
【0208】
上述したバッファ状態報告/スケジューリング要求のトリガリングは、背景技術のセクションで説明したようにLTEシステムにおいて実施することができる。第1のトリガー条件および第2のトリガー条件は、従来技術のバッファ状態報告のトリガリングに置き換わる、または拡張する。例えば、3GPP標準規格のトリガー(より具体的には、空の送信バッファに新しいデータが到着することを要求する、または空ではない送信バッファに到着する新しいデータが、その空ではない送信バッファ内にすでに格納されているデータよりも高い優先順位を有することを要求する第1のトリガー条件)を無効にし、この第1の実施形態の新しいトリガーに置き換えることができる。
【0209】
LTEの3GPP標準規格において採用される、バッファ状態報告の送信をトリガーするためのトリガー定義は、第1の実施形態の1つのバリエーションに従うことができる。
− 論理チャネルのバッファに新しいデータが到着し、この論理チャネルのデータ量が所定のしきい値を超えるとき
【0210】
ここまで、ユーザ機器の送信バッファと、バッファ状態報告/スケジューリング要求のトリガリングについて、全般的に説明した。しかしながら、上述した第1の実施形態を、設定されているさまざまな論理チャネルの1つのみ、または2つ以上に適用することができる。この場合、残りの論理チャネルにおいては、3GPP標準規格による古いトリガーを使用する。上述した、第1の実施形態の改善されたスケジューリング要求トリガリングが適用される論理チャネルは、音声のように(例えば遅延に関して)厳しいQoS要件が要求されないサービス、例えば、低ボリュームのバックグラウンドサービスやインスタントメッセージトラフィック、あるいはガス計量、動物、貨物、囚人、高齢者、子供の追跡のための特定のMTCサービスに適用することができる。このようなサービスの場合、さまざまな実施形態において説明した本発明は、無線リソース、ユーザ機器の電力リソース、およびネットワークリソースを効率的に使用することのできるメカニズムを提供する。
【0211】
ユーザ機器における論理チャネルは、例えば各論理チャネルのQoS要件に応じて、eNodeBによって論理チャネルグループにグループ化される。したがって、上述した第1の実施形態を、定義される論理チャネルグループ(現在のところ合計で4つ)のうちの1つまたは複数に適用することができる。この場合、残りの論理チャネルグループには、3GPP標準規格による古いトリガーが使用される。特に、論理チャネルグループ全体を考慮するときには、バッファ状態報告(すなわちスケジューリング要求)をeNodeBに送信するかを判定するために、第1の実施形態の第1のトリガー条件および第2のトリガー条件も、論理チャネルグループ全体に適用される。特に、第1のトリガー条件は、論理チャネルグループの論理チャネルのいずれかの送信バッファに新しいデータが到着したときに満たされる。第2のトリガー条件は、論理チャネルグループの論理チャネルすべての送信バッファ内のデータ(すなわち論理チャネルグループにおけるすべての送信バッファデータの合計)がしきい値(タイマーまたはデータ量のしきい値)を超えたときに満たされる。
【0212】
第2のトリガー条件に使用される特定のしきい値は、ネットワークまたはユーザ機器によって設定することができる。ネットワークによって事前に定義される場合、スケジューリングに関連するシグナリング手順をネットワークが完全に制御する。ユーザ機器(アップリンクに送られるトラフィックの統計情報に関するより多くの情報を有する)は、適切なデータをネットワークに送信することによって、ネットワークが適切なしきい値を定義するのを支援することが有利である。これに代えて、ユーザ機器は、トラフィック統計情報を使用して自身でしきい値を選択し、したがって自身の電力管理要件を考慮することもできる。次いで、ユーザ機器は、選択したしきい値についてネットワークに通知する、または通知しない。
【0214】
以下では、第2の実施形態、第3の実施形態、および第4の実施形態について説明する。これらの実施形態は、他のそれぞれの実施形態に加えて使用することができ、または、他のそれぞれの実施形態とは独立して使用することができる。
【0215】
本発明の第2の実施形態によると、ユーザ機器のバッテリ消費量を低減する目的で、PDCCHを監視する、ユーザ機器のアクティブ時間を短縮する。なお、第2の実施形態は、PUCCHの周期的なリソースを介して送信されるスケジューリング要求に主として関連し、RACH手順を介して送信されるスケジューリング要求には関連しないことに留意されたい。具体的には、専用スケジューリング要求をeNodeBに送信した後、ユーザ機器は、このスケジューリング要求に応えてeNodeBが送るアップリンクグラントがないかPDCCHを監視する必要がある。
【0216】
3GPP標準規格に現在指定されているユーザ機器の挙動によると、ユーザ機器は、専用スケジューリング要求を送った直後にPDCCHの監視を開始する。したがって、ユーザ機器は、スケジューリング要求が送信されるサブフレームから始まり、対応するアップリンクグラントが受信されるまでの間、アクティブ時間にある。eNodeBの応答によっては、前の送信誤りに起因するスケジューリング要求の再送信がアクティブ時間に含まれることがあり、したがってアクティブ時間が極めて長くなることがある。この挙動は、電力効率が良くない。
【0217】
スケジューリング要求およびその後のアップリンクグラントが無線リンクを通じて伝送されるのに必要な時間と、eNodeBがスケジューリング要求を処理してアップリンクグラントメッセージを生成および送信するのに必要な時間とを考慮し、本発明の第2の実施形態においては、
図14に関連して説明するように、PDCCHを監視するための時間窓が短縮される。スケジューリング要求を送った後に時間遅延が導入され、したがって、ユーザ機器は、この時間遅延の後に(すなわち所定の時間長が経過した後に)初めて、アップリンクグラントがないかPDCCHの監視を開始する。スケジューリング要求を送信したときにタイマーを起動することができ、このタイマーが切れた時点でユーザ機器はPDCCHの監視を開始する。一例として、専用スケジューリング要求を送信した後の遅延として3サブフレームを使用することができる。
【0218】
さらには、たとえアップリンクグラントが受信されない場合にも、特定の時間期間の後にPDCCHの監視を停止させることもできる。したがって、PDCCHを監視している間、別のタイマーを作動させることができ、このタイマーが切れたとき、ユーザ機器はPDCCHの監視を停止する。このタイマーは、D−SRを送信するとき、またはPDCCHの監視を開始するときに起動することができる。
【0219】
したがって、ユーザ機器におけるPDCCHの監視の開始を延期し、場合によってはアップリンクグラントを受信する前にPDCCHの監視を中止することによって、ユーザ機器がアクティブ時間である時間が減少し、したがって電力を節約することができる。
【0220】
本発明の第3の実施形態は、アップリンクデータの再送信に関してユーザ機器のアクティブ時間を減少させることを目的とする。従来技術において現在使用されている、3GPPによって標準化されているアップリンク再送信プロトコルHARQは、2種類の再送信、すなわち非適応型再送信(non-adaptive retransmission)および適応型再送信(adaptive retransmission)が存在するように定義されている。一般的に、HARQ方式は、同期式または非同期式のいずれかに分類することができ、送信それぞれは適応型または非適応型のいずれかである。適応型HARQ方式においては、変調・符号化方式などの送信属性と、周波数領域における送信リソース割当てとを、無線チャネル条件の変動に応えて各再送信時に変更することができる。非適応型HARQ方式においては、新しい再送信属性を明示的にシグナリングすることなく(前の送信時と同じ送信属性を使用することによって、または事前定義される規則に従って属性を変更することによって)、再送信が実行される。
【0221】
アップリンクデータ送信に対するACK/NACKメッセージを伝える物理HARQインジケータチャネル(PHICH)を、同じユーザ機器のためのPDCCHと同時に送信することができる。PHICHとPDCCHを同時に送信する場合、ユーザ機器はPDCCHの指示に従う。言い換えれば、PDCCHの指示が、同じサブフレームのPHICHの指示を上書きする。したがって、ユーザ機器は、PHICHの内容には関係なく、新しいデータの送信または再送信(適応型)のいずれかを実行する。ユーザ機器を対象とするPDCCHが検出されない場合、PHICHの内容がユーザ機器のHARQ挙動を決定する。
【0222】
従来技術におけるPHICHのACK/NACKの現在使用されている定義は以下のとおりである。
NACK:端末は、非適応型再送信を実行する。
ACK:端末はアップリンク再送信を実行せず、対応するHARQプロセスのHARQバッファ内にデータを維持する。そのHARQプロセスのさらなる送信は、PDCCHによる以降のグラントによって明示的にスケジューリングされる必要がある。このようなグラントを受信するまで、端末は「一時停止状態」にある。
【0225】
したがって、PHICHおよびPDCCHに関連して現在指定されているユーザ機器の挙動では、それに伴う状況および問題として、ユーザ機器がACKを受信すると、そのことは、ユーザ機器がHARQプロセスの送信バッファ内にデータパケット(トランスポートブロック)を維持し、新しいHARQ再送信機会においてPDCCHを監視するべきであることを意味する。したがって、ユーザ機器は、HARQ送信の最大回数を超えるまで、さらなる再送信がないかPDCCHを監視しなければならない。これにより、ユーザ機器において多くの電力が要求される。
【0226】
この第3の実施形態によると、PHICHを介してのACKに関連するユーザ機器の挙動を再定義することによって、再送信プロトコルが改善される。具体的には、ユーザ機器がPHICHを介してACKを受信し、このとき同時に(すなわち同じサブフレームにおいて)PDCCHを受信しないときには、ユーザ機器は、さらなるHARQ再送信についてのPDCCHの監視を停止する。さらに、ACKを受信した後、HARQバッファを空にする。
【0227】
この第3の実施形態のバリエーションにおいては、特定の設定された論理チャネル(または論理チャネルグループ)においてのみ、すなわち、このような設定された論理チャネル(グループ)のデータをトランスポートブロックが含んでいる場合にのみ、ユーザ機器の挙動が変更される。
【0228】
これにより、アクティブ時間がさらに減少し、したがって、ユーザ機器におけるバッテリ消費量が低減する。
【0229】
本発明の第4の実施形態では、電力効率の高いSR報告を行うことができるように、専用スケジューリング要求リソースの使用を制約する方式を導入する。ここまでに何度か説明したように、スケジューリング要求を送信するため、PUCCHの専用リソースがユーザ機器から利用可能である。専用スケジューリング要求リソースは、eNodeBによって周期的に割り当てられる。例えば、PUCCHのこれらの専用リソースに、要求されるしきい値を割り当てることができ、ユーザ機器がその専用リソースを使用してスケジューリング要求を送信することができるためには、スケジューリング要求がしきい値を「満たして」いなければならない。満たしていない場合、以降の専用リソースの1つを使用する必要がある(要求される優先順位によって許可される場合)。
【0230】
より詳細には、専用スケジューリング要求リソースそれぞれに、要求される優先順位が割り当てられ、ユーザ機器によって送信されるスケジューリング要求それぞれに、スケジューリング要求の優先順位が関連付けられる。特定の専用リソースに割り当てられる要求される優先順位は、ネットワークまたはユーザ機器によって決定することができ、好ましくは優先順位しきい値の形である。スケジューリング要求の優先順位は、スケジューリング要求をトリガーするデータに関連付けられる論理チャネルの優先順位によって定義することができる。論理チャネルの優先順位は、現在、1〜8の範囲内とすることができる。
【0231】
したがって、ユーザ機器においてスケジューリング要求の送信がトリガーされると、ユーザ機器は、スケジューリング要求の優先順位と、PUCCHの現在利用可能な専用リソースの優先順位とを比較し、トリガーされたスケジューリング要求をこのリソースを使用して送信することができるかを判定する。スケジューリング要求の優先順位がリソースの要求される優先順位に等しいかまたはそれより高い場合にのみ、ユーザ機器はそのリソースを使用してスケジューリング要求を送信する。そうでない場合、ユーザ機器は、要求される優先順位が十分に低い専用リソースにおいてスケジューリング要求を送信することができるまで、次の専用スケジューリング要求リソースを待機して、スケジューリング要求の優先順位と専用リソースの優先順位の比較を再び実行する必要がある。
【0232】
第4の実施形態の1つのバリエーションによると、ユーザ機器に対して、2つのD−SRサイクル(例えば低優先順位のD−SRサイクルと高優先順位のD−SRサイクル)が定義される。しかしながら、必要な場合、3つ以上のサイクルを定義することもできることに留意されたい。この場合、異なるリソースへのアクセスを制御するために2つ以上のしきい値が必要となることがある。
【0233】
低優先順位のD−SRサイクルは、高優先順位のD−SRサイクルの倍数とすることができ、または倍数でなくてもよい。n番目ごとの周期的PUCCHリソースに低優先順位のD−SRサイクルを関連付けることができ、m番目ごとの周期的PUCCHリソースに高優先順位のD−SRサイクルを関連付けることができる。mとnは異なるべきである。mがnより小さいことが好ましく、したがって、低優先順位のスケジューリング要求よりも高優先順位のスケジューリング要求を送信するために多くのリソースが利用可能である。具体的には、例えば4番目ごとの(n=4の低優先順位のD−SRサイクル)周期的リソースが低優先順位のスケジューリング要求に使用可能である一方で、例えばすべてのリソース(m=1の高優先順位のD−SRサイクル)が高優先順位のスケジューリング要求に使用可能である。この状況は
図15に示してある。
【0234】
結果として、低優先順位のスケジューリング要求は、高優先順位のスケジューリング要求と比較して、より低い頻度で送信される。低優先順位のスケジューリング要求をトリガーするデータは、より大きな遅延に耐えることができ、したがって、より低い頻度で送信され、これによりバッテリ電力の点でいくらかの恩恵が達成される。高優先順位のスケジューリング要求は、厳しい遅延要件を満たす目的で、すべてのD−SR PUCCHリソースにおいて送信することができる。
【0235】
これに代えて、論理チャネル(または論理チャネルグループ)それぞれに特定のD−SRサイクルを割り当てることができ、ユーザ機器は、これらの論理チャネル(または論理チャネルグループ)のデータによってトリガーされるスケジューリング要求に使用する。この関連付けは、論理チャネルが論理チャネルグループにグループ化されるとき、無線ベアラの確立時に行うことができる。
【0236】
第4の実施形態のさらなるバリエーションによると、ユーザ機器は、一度に1つのD−SRサイクルのみを使用する。
図15の例においては、このことは、ユーザ機器が、一度に低優先順位のD−SRサイクルまたは高優先順位のD−SRサイクルのいずれかを使用することを意味する。低優先順位のスケジューリング要求が送信される場合、低優先順位のD−SRサイクルが使用される。高優先順位のスケジューリング要求がトリガーされた場合、ユーザ機器は、(低優先順位のD−SRサイクルにあるとき)高優先順位のD−SRサイクルに切り替える。D−SRサイクルの間の(両方向における)遷移時、SR_counterを0に設定する必要があり、sr-ProhibitTimerを停止させる。
【0237】
第4の実施形態の別のバリエーションについて
図16を参照しながら説明する。
図16は、PCellおよびSCellの専用スケジューリング要求リソースを示している。このバリエーションにおいては、スケジューリング要求をPCellまたはSCellを介してPUCCHで送信することができる。ユーザ機器は、キャリアアグリゲーションを使用して、いくつかのサービングセル(コンポーネントキャリア)をアグリゲートし、ユーザ機器には、複数のセルにおける専用スケジューリング要求のためのPUCCHリソースが割り当てられる。以下では、説明のみを目的として、ユーザ機器がPCellと1つのSCellとをアグリゲートするものと想定する。ユーザ機器は2つ以上のSCellを有することもできる。
【0238】
第4の実施形態では、PCellおよびSCellのD−SRリソースの使用規則を定義することができる。第1のバリエーションにおいては、PCellおよびSCellのD−SRリソースの使用は、スケジューリング要求の優先順位によって差別化される。したがって、PCellのD−SRリソースには第1の要求される優先順位(例:高優先順位)が割り当てられ、SCellのD−SRリソースには第2の要求される優先順位(例:低優先順位)が割り当てられる。したがって、ユーザ機器は、低優先順位のスケジューリング要求を好ましくはSCellのD−SRリソースを介して送信し、高優先順位のスケジューリング要求を好ましくはPCellのD−SRリソースを介して(または必要な場合にはSCellのD−SRを介して)送信する。
【0239】
第4の実施形態の別のバリエーションによると、優先順位を使用する代わりに、SCell/PCellのD−SRリソースの使用は、スケジューリング要求をトリガーするデータの種類に依存することができる(例:ユーザデータおよび制御データ)。具体的には、RRCシグナリングなどの制御プレーンデータによってトリガーされるスケジューリング要求は、PCellのD−SRリソースを介して送信されるのに対して、ユーザプレーンデータによってトリガーされるスケジューリング要求は、SCellのD−SRリソースを介して送信される。1つの利点として、ユーザ機器によってどちらのD−SRリソースが使用されたかに応じて、eNodeBは、アップリンクリソースを割り当てるべき対象のトラフィックの種類についてある程度の知識をすでに有し、したがってアップリンクグラントを発行するときにこの知識を考慮に入れることができる。例えば、SCellのD−SRを使用する場合、PCellのD−SRを使用するときよりもアップリンクグラントは大きい。
【0240】
第4の実施形態の別のバリエーションによると、PCellにおけるスケジューリング要求のためのPUCCHリソース(D−SR)の使用と、SCellにおける潜在的なPUCCHリソースの使用について、一般的な規則が定義される。例えば、ユーザ機器は、アップリンク送信のためのリソースを要求するとき、つねにSCell(設定されている場合)におけるPUCCHリソースの使用を開始する。SCellでのスケジューリング要求の送信が失敗した場合にのみ、ユーザ機器はPCellにおけるPUCCHリソースの使用を開始する。ユーザ機器が、PUCCHリソースが設定されている複数のSCellをアグリゲートする場合、アップリンク(PUSCH)リソースを要求するのにどのSCellを使用するかを自律的に選択することができ、または、説明したバリエーションの1つにおいて概説したように、SCell PUCCHリソース(D−SR)の優先順位付け(例えばトラフィックのタイプ、セルのタイプによる)を適用することができる。
【0241】
ハードウェアおよびソフトウェアへの本発明の実装
【0242】
本発明の別の実施形態は、上述したさまざまな実施形態をハードウェアおよびソフトウェアを使用して実装することに関する。これに関連して、本発明は、ユーザ機器(移動端末)およびeNodeB(基地局)を提供する。ユーザ機器は、本明細書に記載されている方法を実行するようにされている。さらに、eNodeBが備える手段は、eNodeBがそれぞれのユーザ機器のIPMIセットの品質を、ユーザ機器から受信されるIPMIセットの品質情報から評価し、異なるユーザ機器のスケジューリングにおいて、異なるユーザ機器のIPMIセットの品質をスケジューラが考慮することを可能にする。
【0243】
本発明のさまざまな実施形態は、コンピューティングデバイス(プロセッサ)を使用して実施または実行できることが認識される。コンピューティングデバイスまたはプロセッサは、例えば、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはその他のプログラマブルロジックデバイスとすることができる。本発明のさまざまな実施形態は、これらのデバイスの組合せによって実行あるいは具体化することもできる。
【0244】
さらに、本発明のさまざまな実施形態は、ソフトウェアモジュールによって実施することもでき、これらのソフトウェアモジュールは、プロセッサによって実行される、あるいはハードウェアにおいて直接実行される。さらに、ソフトウェアモジュールとハードウェア実装とを組み合わせることも可能である。ソフトウェアモジュールは、任意の種類のコンピュータ可読記憶媒体、例えば、RAM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、レジスタ、ハードディスク、CD−ROM、DVDなどに格納することができる。
【0245】
さらには、本発明のさまざまな実施形態の個々の特徴は、個別に、または任意の組合せとして、別の発明の主題とすることができることに留意されたい。
【0246】
具体的な実施形態において示した本発明には、広義に記載されている本発明の概念または範囲から逸脱することなく膨大なバリエーションもしくは変更形態を創案できることが、当業者には理解されるであろう。したがって、本発明の実施形態は、あらゆる点において例示を目的としており、本発明を制限するものではない。