特許第6555575号(P6555575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6555575-水力発電装置及び界磁回路 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555575
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】水力発電装置及び界磁回路
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/04 20060101AFI20190729BHJP
   H02K 7/18 20060101ALI20190729BHJP
   H02P 101/10 20150101ALN20190729BHJP
【FI】
   H02P9/04 A
   H02K7/18 Z
   H02P101:10
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-110388(P2015-110388)
(22)【出願日】2015年5月29日
(65)【公開番号】特開2016-226159(P2016-226159A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】三上 悦也
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
【審査官】 佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−205474(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0136185(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/00−9/48
H02K 7/18
H02P 101/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水車の回転に伴って回転するメインロータ、及びメインロータと対峙するメインステータを含み、送電用の電力を発電するためのメイン発電機と、
メインロータ又はメインステータの何れか一方に電力を供給し、該一方を励磁させる界磁回路とを備え、
界磁回路は、
水車の回転に伴って回転するサブロータ、及びサブロータと対峙するサブステータを含み、サブロータ又はサブステータの何れか一方が外部からの電力供給に伴って励磁されるサブ発電機と、
メイン発電機とサブ発電機とを電気的に接続し、サブ発電機が発電した電力をメイン発電機におけるメインロータ又はメインステータの何れか一方に供給する電力供給系統と、
メイン発電機のメインロータ及びサブ発電機のサブロータの停止中に、電力供給系統に外部から電力を供給する外部電力供給系統と
水車の停止を検出する検出手段と、を備え
検出手段が水車の停止を検出したときに、外部電力供給系統が電力供給系統に電力を供給している状態に切り替わるように構成されていることを特徴とする水力発電装置。
【請求項2】
水車の回転に伴って回転するメインロータ、及びメインロータと対峙するメインステータを含み、送電用の電力を発電するためのメイン発電機のメインロータ又はメインステータの何れか一方に電力を供給し、該一方を励磁させる界磁回路であって、
水車の回転に伴って回転するサブロータ、及びサブロータと対峙するサブステータを含み、サブロータ又はサブステータの何れか一方が外部からの電力供給に伴って励磁されるサブ発電機と、
メイン発電機とサブ発電機とを電気的に接続し、サブ発電機が発電した電力をメイン発電機におけるメインロータ又はメインステータの何れか一方に供給する電力供給系統と、
メイン発電機のメインロータ及びサブ発電機のサブロータの停止中に、電力供給系統に外部から電力を供給する外部電力供給系統と
水車の停止を検出する検出手段と、を備え
検出手段が水車の停止を検出したときに、外部電力供給系統が電力供給系統に電力を供給している状態に切り替わるように構成されていることを特徴とする界磁回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機の絶縁低下を防止する水力発電装置及び界磁回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水力発電装置は、発電機の巻線が周囲の水分を吸湿することによって、前記の巻線の絶縁抵抗が低下することが知られている。このため、発電機の絶縁抵抗の低下を監視する水力発電装置が提供されている。
【0003】
この種の水力発電装置は、発電機が停止中か否かを検知する運転状態検知手段と、運転状態検知手段により発電機が停止中の時に、該発電機の巻線の絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定手段と、該絶縁抵抗測定手段により測定された抵抗値が規定値未満である場合、発電機を起動し、該発電機の巻線に電力を供給して、巻線を発熱させて乾燥させる運転制御手段と、を備える。
【0004】
かかる監視装置は、発電機の絶縁抵抗が規定値未満になると、発電機の巻線に直流電流を供給し、発電機を所定時間運転する。そうすることで、発電機の巻線が乾燥することになり、発電機の絶縁抵抗が回復するようになる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−194052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記水力発電装置では、絶縁抵抗が低下してから発電機の巻線に直流電流を供給しているため、低下した発電機の絶縁抵抗を回復させるのに時間を要する。また、周囲の水分を吸湿することによる発電機の絶縁抵抗の低下そのものを防止できない、という問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、周囲の水分の吸湿による発電機の絶縁低下を防止することができる水力発電装置及び界磁回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る水力発電装置は、水車の回転に伴って回転するメインロータ、及びメインロータと対峙するメインステータを含み、送電用の電力を発電するためのメイン発電機と、メインロータ又はメインステータの何れか一方に電力を供給し、該一方を励磁させる界磁回路とを備え、界磁回路は、水車の回転に伴って回転するサブロータ、及びサブロータと対峙するサブステータを含み、サブロータ又はサブステータの何れか一方が外部からの電力供給に伴って励磁されるサブ発電機と、メイン発電機とサブ発電機とを電気的に接続し、サブ発電機が発電した電力をメイン発電機におけるメインロータ又はメインステータの何れか一方に供給する電力供給系統と、メイン発電機のメインロータ及びサブ発電機のサブロータの停止中に、電力供給系統に外部から電力を供給する外部電力供給系統と、水車の停止を検出する検出手段と、を備え、検出手段が水車の停止を検出したときに、外部電力供給系統が電力供給系統に電力を供給している状態に切り替わるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、乾燥用の外部電力供給系統から、停止中のメイン発電機に該メイン発電機を乾燥させるための電力を供給するようにしたため、メイン発電機のメインロータ及びメインステータが供給された電力によって発熱して乾燥し、周囲の水分を吸湿することによる主発電機の絶縁低下を防止することができる。
【0011】
また、検出手段による水車の停止の検出に合わせ、外部電力供給系統から電力供給系統に電力を供給するようにしたため、メイン発電機の絶縁抵抗の低下を防止することができる。
【0012】
本発明に係る界磁回路は、水車の回転に伴って回転するメインロータ、及びメインロータと対峙するメインステータを含み、送電用の電力を発電するためのメイン発電機のメインロータ又はメインステータの何れか一方に電力を供給し、該一方を励磁させる界磁回路であって、水車の回転に伴って回転するサブロータ、及びサブロータと対峙するサブステータを含み、サブロータ又はサブステータの何れか一方が外部からの電力供給に伴って励磁されるサブ発電機と、メイン発電機とサブ発電機とを電気的に接続し、サブ発電機が発電した電力をメイン発電機におけるメインロータ又はメインステータの何れか一方に供給する電力供給系統と、メイン発電機のメインロータ及びサブ発電機のサブロータの停止中に、電力供給系統に外部から電力を供給する外部電力供給系統と、水車の停止を検出する検出手段と、を備え、検出手段が水車の停止を検出したときに、外部電力供給系統が電力供給系統に電力を供給している状態に切り替わるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、乾燥用の外部電力供給系統から、停止中のメイン発電機に該メイン発電機を乾燥させるための電力を供給するようにしたため、メイン発電機のメインロータ及びメインステータが供給された電力によって発熱して乾燥し、周囲の水分を吸湿することによる主発電機の絶縁低下を防止することができる。
【0015】
また、検出手段による水車の停止の検出に合わせ、外部電力供給系統か
ら電力供給系統に電力を供給するようにしたため、メイン発電機の絶縁抵抗の低下を防止
することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、周囲の水分を吸湿することによる発電機の絶縁低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る水力発電装置を示す図である。
図2図2は、停止状態のメイン発電機にスリップリングを介して直流電流を供給する状態を示す図である。
図3図3は、図1の水力発電装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る水力発電装置について図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る水力発電装置は、図1図3に示す如く、水車10の回転に伴って回転するメインロータ20、及びメインロータ20と対峙するメインステータ21を含み、送電用の電力を発電するためのメイン発電機2と、メインロータ20又はメインステータ21の何れか一方に電力を供給し、該一方を励磁させる界磁回路Aとを備える。
【0019】
界磁回路Aは、水車10の回転に伴って回転するサブロータ30、及びサブロータ30と対峙するサブステータ31を含み、サブロータ30又はサブステータ31の何れか一方が外部からの電力供給に伴って励磁されるサブ発電機3と、メイン発電機2とサブ発電機3とを電気的に接続し、サブ発電機3が発電した電力をメイン発電機2におけるメインロータ20又はメインステータ21の何れか一方に供給する電力供給系統4と、メイン発電機2のメインロータ20及びサブ発電機3のサブロータ30の停止中に、電力供給系統4に外部から電力を供給する外部電力供給系統5とを備える。
【0020】
また、本実施形態において、水力発電装置1は、水車10の停止を検出する検出手段6をさらに備える。そして、外部電力供給系統5は、検出手段6による水車10の停止の検出に合わせ、電力供給系統4に電力を供給する。
【0021】
水車10は、回転可能に設けられた回転軸10aの一端部に固定され、水量発電所からの給水によって回転軸10aとともに回転する。
【0022】
メインロータ20は、回転軸10aに取り付けられたメインステータ21が回転可能に内挿される。また、メインロータ20は、界磁巻線で発生する磁界によって発電するための複数の巻線であって、スター結線された三相交流発電用の巻線を有する。また、複数の巻線のそれぞれは、負荷(R相,S相,T相の送電線)に接続される。
【0023】
メインステータ21は、メインステータ21の中心を回転軸10aが貫通した状態で、回転軸10aに固定される。また、メインステータ21は、発電用の磁界を発生させるための界磁巻線を有する。
【0024】
サブロータ30は、サブロータ30の中心を回転軸10aが貫通した状態で、回転軸10aに固定される。したがって、メインロータ20とサブロータ30とは回転軸10aによって直結されている。また、サブロータ30は、メインステータ21の界磁巻線に電圧を供給するための複数の巻線であって、スター結線された三相交流発電用の巻線を有する。
【0025】
サブステータ31は、円筒形状で、回転軸10aに固定されたサブロータ30が回転可能に内挿される。また、サブステータ31は、サブロータ30を励磁するための磁界を発生する装置であり、発電用の外部電力供給系統5の外部電源50に接続された励磁巻線を有する。
【0026】
電力供給系統4は、サブステータ31に電力を供給する電源40と、サブロータ30とメインステータ21との間に配置された整流器41を有する。該整流器41は、サブロータ30とメインステータ21との間の回転軸10aに固定される。また、整流器41は、サブロータ30で発電された交流電力を直流電力に変換するために、複数のダイオード410を有する。なお、本実施形態において、サブロータ30、電力供給系統4、及びメインステータ21によって界磁回路Aが構成される。
【0027】
外部電力供給系統5は、直流電流の供給により励磁可能な停止中のメイン発電機2に、直流電流を供給し前記メイン発電機2を乾燥させるための外部電源50と、前記メイン発電機2に対して外部電源50からの電流を供給可能に構成された電流供給手段51とを備える。また、外部電力供給系統5は、前記水車10の回転が停止した時点で、水車10の停止を検出する検出手段6の検知信号に基づいて、電力供給系統4から切り替わるように構成される。
【0028】
外部電源50は、メイン発電機2を発電するための電源40(電力供給系統4の電源)とは別の電源であり、メイン発電機2に対して直流電流を供給するための電源である。
【0029】
電流供給手段51は、回転軸10aに取り付けられた複数のスリップリングである。該スリップリング51は、回転軸10aに取り付けられた環状の通電体で、スイッチSWを介して乾燥用の外部電源50に接続される。そして、スリップリング51は、図示しないブラシの接触によってメイン発電機2に対して直流電流を間接的に供給する。
【0030】
検出手段6は、メインロータ20の回転速度を検知する速度リレーである。
【0031】
つぎに本実施形態に係る水力発電装置の使用態様について説明する。なお、本実施形態においては、サブ発電機のサブステータに電力を供給してサブロータが励磁される場合を例にとって説明する。
【0032】
まず、電力供給系統4の電源40からサブステータ31の励磁巻線に直流電圧が供給され、励磁巻線において磁界が発生する。
【0033】
つぎに水力発電所の入水弁(図示せず)を開くと、流入した水によって水車10が回転すると共に、回転軸10aが正方向に回転する。これに伴って、サブロータ30、整流器41、及びメインロータ20が回転する。
【0034】
そして、サブロータ30、整流器41、及びメインロータ20の回転により、サブロータ30において交流電圧が発生し、整流器41において、交流電圧から直流電圧に変換される。この直流電圧がメインステータ21の界磁巻線に供給され、発電するための磁界が発生する。この磁界によって、メインロータ20で発電が行われ、メインロータ20において交流電圧(送電用の電力)が発生する。これにより、水力発電装置1が運転状態となる。
【0035】
つぎに水力発電装置1の停止について説明する。電源40との接続を解除すると、サブステータ31の励磁巻線に対する電源供給が停止され、励磁巻線において磁界が発生しない状態となる。また、水力発電所の入水弁を閉じると、回転軸10aの回転が停止するとともに、水車10の回転も停止する。したがって、サブロータ30からメインステータ21の界磁巻線に対する電圧供給が停止され、界磁巻線において磁界が発生しなくなる。よって、メインロータ20で発電が行われない状態となる。
【0036】
メインロータ20の停止状態は速度リレー6によって検知される。そして、速度リレー6によって、メインロータ20の停止状態が検知されると、複数のスリップリング51,51に外部電力供給系統5の外部電源50が接続される。具体的には、スイッチSWが閉じられて、外部電源50からスリップリング51,51を介してメイン発電機2に直流電流が供給されて、界磁巻線及び巻線が発熱し、メイン発電機2の絶縁低下が防止される。
【0037】
このように、本実施形態に係る水力発電装置によれば、停止中のメイン発電機2に電力を供給することで、メイン発電機2の絶縁低下を防止することができる。
【0038】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論のことである。
【0039】
例えば、前記実施形態の場合、水車発電機に適用したが、車両の回転機の磁界回路にも適用できる。
【0040】
また、前記実施形態の場合、速度リレー6によって回転子の速度を検知するようにしたが、スピードメータ、速度センサによって速度検知するようにしてもよい。
【0041】
また、前記実施形態の場合、界磁回路Aの巻線に直流電流を間接的に供給するために、電流供給手段としてスリップリング51を使用したが、回転トランス(ロータリートランス)を用いるようにしてもよく、メイン発電機2の巻線に電流を直接的に供給するようにしてもよい。
【0042】
また、前記実施形態の場合、回転軸10aによって水車10とメインロータ20とを直結するようにしたが、クラッチによって、水車10とメインロータ20とを適宜接続したり、分離したりするようにしてもよい。
【0043】
また、前記実施形態の場合、メイン発電機2及びサブ発電機3において、ステータを励磁させてロータで発電するようにしたが、ロータを励磁させてステータで発電させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…水力発電装置、10…水車、10a…回転軸、2…メイン発電機、20…メインロータ、21…メインステータ、3…サブ発電機、30…サブロータ、31…サブステータ、4…電力供給系統、40…電力供給系統の電源、41…整流器、5…外部電力供給系統、50…外部電源、51…スリップリング(電流供給手段)、6…速度リレー(検出手段)、A…界磁回路
図1
図2
図3