(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記記憶部は、更に、前記配信内容の種類と、当該種類の配信内容を前記第一言語で表す場合に含まれ得る専門用語と、当該専門用語と代替可能な代替用語と、を予め対応付けて記憶し、
前記補足部は、更に、前記補足字幕に含まれている、前記受信信号が示す配信内容の種類と対応付けて前記記憶部に記憶されている前記専門用語を、前記記憶部において当該専門用語に対応付けられている前記代替用語に置き換える請求項1に記載の信号処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2に開示されているように、配信信号に含まれる字幕において、例えば、主語や目的語等の構文要素が欠落している場合がある。この場合、上記特許文献1に開示されているように、当該字幕をそのまま他の言語の翻訳字幕に翻訳すると、当該他の言語として意味の通じない翻訳字幕が生成される虞がある。そこで、上記特許文献2に開示の技術のように、過去に受信した配信信号に含まれる字幕から欠落していた構文要素となり得る用語を抽出して、当該抽出した用語を翻訳前に補足することが考えられる。
【0008】
しかし、この場合、過去の字幕から欠落していた構文要素となり得る用語を抽出するために、過去の字幕を解析する時間が必要となり迅速に翻訳を開始できない虞があった。これにより、配信信号が示す配信内容の進行速度に遅れないように翻訳字幕を生成することができなくなり、上記特許文献3に開示の技術のように、配信内容の進行に合わせて翻訳字幕を出力することが困難になる虞があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされた発明であり、迅速に、配信信号に含まれている字幕を意味の通じる翻訳字幕に翻訳して出力することができる信号処理装置及び信号処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による信号処理装置は、配信内容を第一言語で表した字幕を含む配信信号を受信する受信部と、前記配信内容の種類と、当該種類の配信内容を前記第一言語で表す場合に所定の構文要素として補足され得る補足用語と、を予め対応付けて記憶する記憶部と、前記受信部が受信した前記配信信号である受信信号に含まれている受信字幕において、前記所定の構文要素が欠落しているか否かを判定する判定部と、前記判定部により前記所定の構文要素が欠落していると判定された場合、前記記憶部において前記受信信号が示す配信内容の種類と対応付けられている前記補足用語を前記受信字幕に補足した補足字幕を生成する補足部と、前記補足字幕を前記第一言語とは異なる第二言語の翻訳字幕に翻訳する翻訳部と、前記受信信号に前記翻訳字幕を含めて出力する出力部と、を備える。
【0011】
受信字幕において例えば主語や目的語等の構文要素が欠落している場合に、当該受信字幕をそのまま第二言語の翻訳字幕に翻訳すると、第二言語として意味の通じない翻訳字幕が生成される虞がある。そこで、上記特許文献2に開示の技術のように、過去に受信した配信信号に含まれる字幕を記憶するようにしておき、当該記憶されている過去の字幕から欠落していた構文要素となり得る用語を抽出して、当該抽出した用語を翻訳前に補足することが考えられる。
【0012】
これに対して、本発明の構成では、配信内容の種類と、当該種類の配信内容を第一言語で表す場合に所定の構文要素として補足され得る補足用語と、が予め対応付けて記憶部に記憶されている。
【0013】
このため、受信字幕において所定の構文要素が欠落していた場合に、上記技術のように、過去の字幕から上記所定の構文要素となり得る用語を抽出するために過去の字幕を解析する時間をかけなくても、記憶部において受信信号が示す配信内容の種類と対応付けて記憶されている、当該配信内容の種類に適した上記所定の構文要素となり得る補足用語を受信字幕に迅速に補足することができる。
【0014】
これにより、迅速に、受信信号が示す配信内容に適した所定の構文要素が補足された補足字幕を、第二言語として意味の通じる翻訳字幕に翻訳することができる。その結果、迅速に、当該翻訳字幕を含む受信信号を出力することができる。
【0015】
また、前記記憶部は、更に、前記配信内容の種類と、当該種類の配信内容を前記第一言語で表す場合に含まれ得る専門用語と、当該専門用語と代替可能な代替用語と、を予め対応付けて記憶し、前記補足部は、更に、前記補足字幕に含まれている、前記受信信号が示す配信内容の種類と対応付けて前記記憶部に記憶されている前記専門用語を、前記記憶部において当該専門用語に対応付けられている前記代替用語に置き換えてもよい。
【0016】
例えばスポーツや料理等の専門色が強い種類の配信内容を第一言語で表した字幕には、通常使用される場合とは別の意味をもつ専門用語が含まれていることがある。このような字幕をそのまま第二言語の字幕に翻訳すると、上記専門用語が通常使用される場合と同じ意味をもつ第二言語の用語に翻訳され、第二言語として意味の通じない字幕が生成される虞がある。
【0017】
しかし、本構成によれば、上記のような専門色が強い種類の配信内容を第一言語で表す場合に含まれ得る専門用語と同じ意味を持つ用語を、当該専門用語と代替可能な代替用語として、当該配信内容の種類及び当該専門用語と予め対応付けて記憶部に記憶することができる。
【0018】
これにより、補足字幕に専門用語が含まれている場合であっても、当該専門用語を、受信信号が示す配信内容の種類に適した当該専門用語と同じ意味を持つ代替用語に置き換えた後、翻訳字幕に翻訳することができる。その結果、受信信号が示す配信内容の種類に適さない用語が含まれた、第二言語として意味の通じない翻訳字幕が生成される虞を低減することができる。
【0019】
また、前記記憶部において、固有名詞を表す前記専門用語と、当該専門用語を前記第二言語で表した前記代替用語と、が対応付けられていることが好ましい。
【0020】
例えばスポーツや音楽等の種類の配信内容を第一言語で表した字幕には、人名や芸名等の固有名詞を表す用語が含まれることがあり、当該固有名詞を表す用語が、普通名詞等の他の品詞としても用いられる用語である場合がある。このような字幕をそのまま第二言語の字幕に翻訳すると、当該固有名詞を表す用語が、上記他の品詞と同じ意味を持つ第二言語の用語に翻訳される虞がある。
【0021】
しかし、本構成によれば、補足字幕に含まれている固有名詞を表す用語に、他の品詞としても用いられる用語が用いられていたとしても、当該用語を専門用語とし、当該専門用語と当該専門用語を第二言語で表した代替用語とを予め対応付けて記憶部に記憶しておくことにより、当該補足字幕の翻訳前に、当該用語を記憶部に予め記憶しておいた上記代替用語に置き換えることができる。
【0022】
これにより、補足字幕に含まれている既に第二言語で表されている上記代替用語が、翻訳部によって翻訳されることを回避することができる。その結果、上記固有名詞を表す用語が他の品詞と同じ意味を持つ第二言語の用語に翻訳される虞を低減することができる。
【0023】
また、前記受信信号には、配信中の番組に関連する番組情報が更に含まれ、前記番組情報には、前記配信内容の種類を表すジャンル情報が含まれていてもよい。
【0024】
本構成によれば、補足部は、受信信号に含まれている番組情報を取得し、当該取得した信号が示す番号情報から、配信内容の種類を表すジャンル情報を取得することができる。これにより、補足部は、当該取得したジャンル情報が表す、受信信号が示す配信内容の種類を迅速に把握することができる。その結果、補足部は、当該把握した配信内容の種類と対応付けて記憶部に記憶されている補足用語等を迅速に取得することができる。
【0025】
また、本発明による信号処理システムは、前記信号処理装置を一以上備え、前記配信内容の種類と、当該種類の配信内容を前記第一言語で表す場合に所定の構文要素として補足され得る補足用語と、を予め対応付けて記憶する外部記憶装置を更に備え、各前記信号処理装置は、前記外部記憶装置に記憶されている前記配信内容の種類及び当該種類に対応付けられている前記補足用語を取得して前記記憶部に記憶する取得部を更に備える。
【0026】
本構成によれば、各信号処理装置の取得部によって、外部記憶装置に記憶されている配信内容の種類及び当該種類に対応付けられている補足用語が、各信号処理装置の記憶部に記憶される。このため、配信内容の種類及び当該種類に対応付けられた補足用語を各信号処理装置の記憶部に個別に記憶する操作を行う手間を省略することができる。
【0027】
また、本発明による信号処理システムは、前記信号処理装置を一以上備え、前記配信内容の種類と、当該種類の配信内容を前記第一言語で表す場合に所定の構文要素として補足され得る補足用語と、を予め対応付けて記憶し、更に、前記配信内容の種類と、当該種類の配信内容を前記第一言語で表す場合に含まれ得る専門用語と、当該専門用語と代替可能な代替用語と、を予め対応付けて記憶する外部記憶装置を更に備え、各前記信号処理装置は、前記外部記憶装置に記憶されている前記配信内容の種類及び当該種類に対応付けられている前記補足用語を取得して前記記憶部に記憶し、前記外部記憶装置に記憶されている前記配信内容の種類及び当該種類に対応付けられている前記専門用語及び前記代替用語を取得して前記記憶部に記憶する取得部を更に備える。
【0028】
本構成によれば、各信号処理装置の取得部によって、外部記憶装置に記憶されている配信内容の種類及び当該種類に対応付けられている補足用語が、各信号処理装置の記憶部に記憶される。また、各信号処理装置の取得部によって、外部記憶装置に記憶されている配信内容の種類及び当該種類に対応付けられている専門用語及び代替用語が、各信号処理装置の記憶部に記憶される。
【0029】
このため、配信内容の種類及び当該種類に対応付けられた補足用語を各信号処理装置の記憶部に個別に記憶する操作を行う手間を省略することができる。また、配信内容の種類及び当該種類に対応付けられた専門用語及び代替用語を各信号処理装置の記憶部に個別に記憶する操作を行う手間を省略することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、迅速に、配信信号に含まれている字幕を意味の通じる翻訳字幕に翻訳して出力することができる信号処理装置及び信号処理システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る信号処理システムの一実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、信号処理システム100の概略構成図である。
【0033】
図1に示すように、信号処理システム100は、信号処理装置1と、外部記憶装置9と、を備えている。
【0034】
信号処理装置1は、例えば、ノートパソコン、テレビ、スマートフォン又はタブレット端末等で構成され、通信部20(受信部)と、記憶部30と、操作表示部40と、制御部10と、を備えている。通信部20、記憶部30及び操作表示部40は、不図示の制御バスを介して制御部10との間で通信可能に接続されている。
【0035】
通信部20は、テレビ局等の放送局が放送(配信)している放送信号(配信信号)BSを受信するインターフェイス回路を備えている。当該インターフェイス回路は、放送局から受信した放送信号BSを制御部10へ出力する。
【0036】
ここで、放送信号BSとは、放送局が放送している番組の映像や音声等の内容(以下、放送内容と記載する)を示す信号であり、映像信号や音声信号等により構成されている。また、放送信号BSには、当該放送信号BSが示す放送内容(配信内容)を日本語(第一言語)で表した字幕や、放送中(配信中)の番組に関連する番組情報が含まれている。番組情報には、番組の出演者を示す出演者情報や、放送信号BSが示す放送内容の種類を表すジャンル情報等が含まれている。
【0037】
ジャンル情報には、放送内容の種類を大まかに分類して表すための大分類情報(例えば「スポーツ」、「音楽」等)と、大分類情報が表す放送内容の種類を更に細かく分類して表すための小分類情報(例えば、「相撲」、「ロック」等)と、が含まれている。ただし、番組情報及びジャンル情報に含まれる情報を上記の情報に限定する趣旨ではない。
【0038】
また、通信部20は、LAN(Local Area Network)やインターネット等のネットワークに接続された外部装置との間で通信信号を送受信する通信インターフェイス回路を備えている。当該通信インターフェイス回路は、外部装置から受信した通信信号を制御部10へ出力する。また、当該通信インターフェイス回路は、制御部10から入力された通信信号を外部装置へ送信する。
【0039】
記憶部30は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。記憶部30には、放送信号BSが示す放送内容の種類と、当該種類の放送内容を日本語で表す場合に主語及び目的語(所定の構文要素)として補足され得る補足用語と、が予め対応付けて記憶されている。
【0040】
図2は、放送内容の種類と補足用語とを対応付けた表の一例を示す図である。具体的には、記憶部30には、
図2に示す、放送内容の種類と補足用語とを対応付けた表が記憶されている。
【0041】
図2に示す表では、例えば、大分類情報「スポーツ」及び小分類情報「相撲」によって表される放送内容の種類と、当該種類の放送内容を日本語で表す場合に主語として補足され得る補足用語「彼」及び目的語として補足され得る補足用語「彼」と、が対応付けられている。
【0042】
また、記憶部30には、放送信号BSが示す放送内容の種類と、当該種類の放送内容を日本語で表す場合に含まれ得る専門用語と、当該専門用語と代替可能な代替用語と、が予め対応付けて記憶されている。
【0043】
図3は、放送内容の種類と専門用語と代替用語とを対応付けた表の一例を示す図である。具体的には、記憶部30には、
図3に示す、放送内容の種類と専門用語と代替用語とを対応付けた表が記憶されている。
【0044】
図3に示す表では、例えば、大分類情報「スポーツ」及び小分類情報「相撲」によって表される放送内容の種類と、当該種類の放送内容を日本語で表す場合に含まれ得る専門用語「場所」と、当該専門用語「場所」と代替可能な代替用語「トーナメント」と、が対応付けられている。
【0045】
また、大分類情報「スポーツ」及び小分類情報「相撲」によって表される放送内容の種類と、当該種類の放送内容を日本語で表す場合に含まれ得る専門用語として固有名詞を表す「黒鵬」と、が対応付けられている。当該固有名詞を表す専門用語「黒鵬」には、当該専門用語「黒鵬」を英語(第二言語)で表した「KOKUHOU」が、代替用語として対応付けられている。
【0046】
尚、
図2及び
図3に示す表は、後述の制御プログラムを後述の不揮発性メモリーにインストール(記憶)するときに記憶部30に記憶される。また、
図2及び
図3に示す表の内容は後述の取得部15によって更新される。
【0047】
操作表示部40は、表示部41と、スピーカー42と、操作部43と、を備えている。表示部41は、液晶ディスプレイ等で構成され、制御部10から入力された映像や情報を表示する。スピーカー42は、制御部10から入力された音声を出力する。操作部43は、表示部41に表示されたソフトキーの操作、表示部41に表示する映像や情報を選択する操作、及びスピーカー42に出力させる音声を選択する操作等の各種操作をユーザーに行わせるための、不図示のタッチパネル装置やリモートコントローラーを備えている。
【0048】
制御部10は、信号処理装置1の各部の動作を制御する。具体的には、制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、EEPROM等の不図示の不揮発性メモリー、データを一時的に記憶するための不図示のRAM(Random Access Memory)、及びこれらの周辺回路等を備えている。
【0049】
制御部10は、不揮発性メモリーに記憶された制御プログラムをCPUに実行させることにより、判定部11、補足部12、出力部14、及び取得部15として動作する。また、制御部10は、不揮発性メモリーに記憶された公知の翻訳プログラムをCPUに実行させることにより、翻訳部13として動作する。判定部11、補足部12、翻訳部13、出力部14、及び取得部15の詳細については後述する。
【0050】
外部記憶装置9は、信号処理装置1との間で通信可能な所謂データベースサーバーであり、HDDやSSD等の不図示の記憶装置を備えている。外部記憶装置9は、当該記憶装置に記憶されている情報の送信要求を示す通信信号を信号処理装置1から受信すると、当該情報を上記記憶装置から読み出して信号処理装置1へ返信する。
【0051】
外部記憶装置9の記憶装置には、放送内容の種類と、当該種類の放送内容を日本語で表す場合に主語及び目的語として補足され得る補足用語と、が予め対応付けて記憶されている。具体的には、外部記憶装置9の記憶装置には、上述した
図2に示す表と同構成の表(以下、補足テーブルと示す)が予め記憶されている。
【0052】
また、外部記憶装置9の記憶装置には、放送内容の種類と、当該種類の放送内容を日本語で表す場合に含まれ得る専門用語と、当該専門用語と代替可能な代替用語と、が予め対応付けて記憶されている。具体的には、外部記憶装置9の記憶装置には、上述した
図3に示す表と同構成の表(以下、専門用語テーブルと示す)が予め記憶されている。
【0053】
以下では、字幕翻訳処理の動作について説明する。当該説明の中で、判定部11、補足部12、翻訳部13、出力部14、及び取得部15の詳細について説明する。
図4は、信号処理システム100の動作を示すフローチャートである。
【0054】
図4に示すように、通信部20が放送信号BSを受信すると(S1)、判定部11は、通信部20が受信した放送信号BSに含まれている日本語の字幕において、主語及び目的語のうちの少なくとも一つが欠落しているか否かを判定する(S2)。以下、通信部20が受信した放送信号BSを受信信号と示し、受信信号に含まれている日本語の字幕を受信字幕と示す。
【0055】
判定部11により受信字幕において主語及び目的語のうちの少なくとも一つが欠落していると判定された場合(S2;YES)、補足部12は、記憶部30に記憶されている
図2に示す表において、受信信号が示す放送内容の種類と対応付けられている補足用語を受信字幕に補足した補足字幕を生成する(S3)。一方、判定部11により受信字幕において主語及び目的語が何れも欠落していないと判定された場合(S2;NO)、補足部12は、受信字幕をそのまま補足字幕として生成する(S4)。
【0056】
以下、ステップS2〜S4について具体例を用いて詳述する。以下では、上記具体例として、受信信号に含まれている番組情報に、大分類情報「スポーツ」及び小分類情報「相撲」を含むジャンル情報が含まれているとする。また、受信字幕が「寄り切りました。場所前の稽古が十分でした。」であるとする。
【0057】
判定部11は、ステップS2において、先ず、公知の形態素解析方法及び構文解析方法によって、受信字幕を解析する。当該解析の結果から、判定部11は、受信字幕に第一文「寄り切りました。」と第二文「場所前の稽古が十分でした。」との二つの文が含まれていることを把握する。
【0058】
このように、受信字幕には一つの文に限らず、複数の文が含まれている場合がある。このため、判定部11は、ステップS2において、受信字幕に含まれる各文において主語及び目的語のうちの少なくとも一つが欠落しているか否かを判定する。これに合わせて、補足部12は、判定部11による上記各文に対する判定結果に基づいて、ステップS3又はS4において上記各文に対応する補足文を生成した後、これらを結合して補足字幕を生成する。
【0059】
具体的には、判定部11は、上記解析の結果、第一文「寄り切りました。」には、主語及び目的語が何れも含まれていず、述語として他動詞「寄り切りました。」が含まれていることを把握する。この場合、判定部11は、第一文には主語が含まれていないので、第一文において主語が欠落していると判定する。また、判定部11は、第一文には目的語を必要とする他動詞が述語として含まれているにもかからわず、第一文には目的語が含まれていないので、第一文において目的語が欠落していると判定する。つまり、判定部11は、第一文において主語及び目的語が欠落していると判定する(S2;YES)。
【0060】
この場合(S2;YES)、補足部12は、ステップS3において、受信信号に含まれる番組情報を取得し、当該取得した番組情報に含まれるジャンル情報を取得する。これにより、補足部12は、受信信号が示す放送内容の種類が、当該取得したジャンル情報に含まれる大分類情報「スポーツ」及び小分類情報「相撲」によって表される放送内容の種類であることを把握する。
【0061】
そして、補足部12は、
図2に示す表において、大分類情報「スポーツ」及び小分類情報「相撲」によって表される放送内容の種類と対応付けられている、主語として補足され得る補足用語「彼」及び目的語として補足され得る補足用語「彼」を取得する。そして、補足部12は、当該取得した主語として補足され得る補足用語「彼」及び目的語として補足され得る補足用語「彼」を、それぞれ第一文の主語及び目的語として補足した第一補足文「彼が彼を寄り切りました。」を生成する。
【0062】
一方、判定部11は、上記解析の結果、第二文「場所前の稽古が十分でした。」には、主語として名詞「稽古」が含まれ、述語として形容動詞「十分でした。」が含まれていることを把握する。この場合、判定部11は、第二文には、主語が含まれているので、第二文において主語が欠落していないと判定する。また、判定部11は、第二文には目的語が含まれていないが、目的語を必要としない形容動詞が述語として含まれているので、第二文において目的語が欠落していないと判定する。つまり、判定部11は、第二文において主語及び目的語が何れも欠落していないと判定する(S2;NO)。
【0063】
この場合(S2;NO)、補足部12は、ステップS4において、第二文「場所前の稽古が十分でした。」をそのまま第二補足文として生成する。
【0064】
そして、補足部12は、ステップS3で生成した第一補足文及びステップS4で生成した第二補足文を結合して、補正字幕「彼が彼を寄り切りました。場所前の稽古が十分でした。」を生成する。
【0065】
図4に参照を戻す。次に、補足部12は、受信信号が示す放送内容の種類と対応付けて記憶部30に記憶されている専門用語が補足字幕に含まれているか否かを判定する(S5)。
【0066】
補足部12は、ステップS5において、専門用語が補足字幕に含まれていると判定した場合(S5;YES)、記憶部30において当該専門用語に対応付けられている代替用語に置き換える(S6)。一方、補足部12は、ステップS5において、専門用語が補足字幕に含まれていないと判定した場合は(S5;NO)、ステップS6を実行しない。
【0067】
以下、ステップS5、S6について上述の具体例を用いて詳述する。つまり、補足字幕が「彼が彼を寄り切りました。場所前の稽古が十分でした。」であるとする。また、受信信号に含まれている番組情報に、大分類情報「スポーツ」及び小分類情報「相撲」を含むジャンル情報が含まれているとする。
【0068】
ステップS5において、補足部12は、先ず、受信信号に含まれる番組情報を取得し、当該取得した番組情報に含まれるジャンル情報を取得する。これにより、補足部12は、受信信号が示す放送内容の種類が、上記取得したジャンル情報に含まれる大分類情報「スポーツ」及び小分類情報「相撲」によって表される放送内容の種類であることを把握する。尚、補足部12は、ステップS3においてジャンル情報を既に取得していた場合は、ステップS5においてジャンル情報を取得しなくてもよい。
【0069】
そして、補足部12は、公知の形態素解析方法によって、補足字幕に含まれている自立語「彼」、「寄り切り」、「場所前」、「稽古」、「十分」を抽出する。そして、補足部12は、当該抽出した自立語のうち、記憶部30に記憶されている
図3に示す表において大分類情報「スポーツ」及び小分類情報「相撲」によって表される放送内容の種類と対応付けられている専門用語と一致する自立語が存在するか否かを判定する。
【0070】
当該判定結果、補足部12は、専門用語と一致する自立語が存在すると判定した場合は、専門用語が補足字幕に含まれていると判定し(S5;YES)、専門用語と一致する自立語が存在しないと判定した場合は、専門用語が補足字幕に含まれていないと判定する(S5;NO)。
【0071】
本具体例では、補足部12は、補足字幕から抽出した自立語「場所前」が、
図3に示す表において大分類情報「スポーツ」及び小分類情報「相撲」によって表される放送内容の種類と対応付けられている専門用語「場所前」と一致するので、専門用語が補足字幕に含まれていると判定する(S5;YES)。
【0072】
この場合(S5;YES)、ステップS6において、補足部12は、補足字幕に含まれている当該専門用語「場所前」を、
図3に示す表において当該専門用語「場所前」に対応付けられている代替用語「トーナメント前」に置き換える。これにより、補正字幕は、「彼が彼を寄り切りました。トーナメント前の稽古が十分でした。」となる。
【0073】
図4に参照を戻す。次に、翻訳部13は、公知の翻訳プログラムによる所定の翻訳ロジックに基づいて補足字幕を英語の翻訳字幕に翻訳する(S7)。
【0074】
例えば、上述の具体例に示したように、補足字幕が「彼が彼を寄り切りました。トーナメント前の稽古が十分でした。」であったとする。この場合、翻訳部13は、ステップS7において、補足字幕「彼が彼を寄り切りました。トーナメント前の稽古が十分でした。」を、翻訳字幕「He forced him out.Lessons before the tournament were enough.」に翻訳する。
【0075】
また、別の具体例として、例えばステップS5を実行する直前の補正字幕が「親方が黒鵬を祝福しています。」であったとする。この場合、補足部12は、ステップS5において、専門用語「親方」、「黒鵬」が補足字幕に含まれていると判定する(S5;YES)。この場合、ステップS6において、補足部12は、補足字幕に含まれている専門用語「親方」、「黒鵬」を、
図3に示す表において当該専門用語「親方」、「黒鵬」に対応付けられている代替用語「OYAKATA」、「KOKUHOU」に置き換える。これにより、補正字幕は、「OYAKATAがKOKUHOUを祝福しています。」となる。
【0076】
この場合、翻訳部13は、ステップS7において、補正字幕「OYAKATAがKOKUHOUを祝福しています。」を、翻訳字幕「OYAKATA blesses KOKUHOU.」に翻訳する。
【0077】
図4に参照を戻す。次に、出力部14は、ステップS7で生成された翻訳字幕を受信信号に含めて出力する(S8)。
【0078】
具体的には、ステップS8において、出力部14は、受信信号に翻訳字幕を含めて操作表示部40へ出力する。これにより、表示部41は、当該受信信号に映像信号が含まれていた場合には当該映像信号が示す映像、当該受信信号に含まれている受信字幕、及び当該受信信号に含まれている翻訳字幕のうち、ユーザーによる操作部43の操作によって選択された映像及び/又は字幕を表示する。同様にして、スピーカー42は、当該受信信号に一以上の音声を示す音声信号が含まれていた場合には、当該一以上の音声のうち、ユーザーによる操作部43の操作によって選択された音声を出力する。
【0079】
尚、
図4に示す動作とは別に、取得部15は、外部記憶装置9に記憶されている、放送内容の種類及び当該種類に対応付けられている補足用語を取得して記憶部30に記憶する。また、取得部15は、外部記憶装置9に記憶されている、放送内容の種類及び当該種類に対応付けられている専門用語及び代替用語を取得して記憶部30に記憶する。
【0080】
具体的には、取得部15は、信号処理装置1の初期起動時や、当該初期起動後、最初にステップS1が実行された時等の所定のタイミングで、外部記憶装置9に記憶されている補足テーブル及び専門用語テーブルの送信要求を示す通信信号を、通信部20によって外部記憶装置9へ送信させる。
【0081】
外部記憶装置9は、当該通信信号を受信すると、補足テーブル及び専門用語テーブルを記憶装置から読み出して信号処理装置1へ返信する。通信部20は、外部記憶装置9が返信した補足テーブル及び専門用語テーブルを受信すると、当該受信した補足テーブル及び専門用語テーブルを制御部10へ出力する。
【0082】
取得部15は、通信部20から補足テーブルが入力されると、補足テーブルの内容によって記憶部30に記憶されている
図2に示す表の内容を更新する。また、取得部15は、通信部20から専門用語テーブルが入力されると、専門用語テーブルの内容によって記憶部30に記憶されている
図3に示す表の内容を更新する。
【0083】
以下、上記実施形態の構成により奏する効果について説明する。
(1)受信字幕において主語及び目的語のうちの少なくとも一つの構文要素が欠落している場合に、当該受信字幕をそのまま英語の翻訳字幕に翻訳すると、英語として意味の通じない翻訳字幕が生成される虞がある。そこで、従来技術のように、過去に受信した放送信号に含まれる字幕を記憶するようにしておき、当該記憶されている過去の字幕から、欠落していた上記少なくとも一つの構文要素となり得る用語を抽出して、当該抽出した用語を翻訳前に補足することが考えられる。
【0084】
これに対して、上記実施形態の構成では、放送内容の種類と、当該種類の放送内容を日本語で表す場合に、主語として補足され得る補足用語及び目的語として補足され得る補足用語と、が予め対応付けて記憶部30に記憶されている。
【0085】
このため、受信字幕において主語及び目的語のうちの少なくとも一つの構文要素が欠落していた場合に、上記従来技術のように、過去の字幕から上記少なくとも一つの構文要素となり得る用語を抽出するために過去の字幕を解析する時間をかけなくても、記憶部30において受信信号が示す放送内容の種類と対応付けて記憶されている、当該放送内容の種類に適した上記少なくとも一つの構文要素となり得る補足用語を受信字幕に迅速に補足することができる。
【0086】
これにより、迅速に、受信信号が示す放送内容に適した上記少なくとも一つの構文要素が補足された補足字幕を、英語として意味の通じる翻訳字幕に翻訳することができる。その結果、迅速に、当該翻訳字幕を含む受信信号を出力することができる。
【0087】
(2)例えばスポーツや料理等の専門色が強い種類の放送内容を日本語で表した字幕には、通常使用される場合とは別の意味をもつ専門用語が含まれていることがある。このような字幕をそのまま英語の字幕に翻訳すると、上記専門用語が通常使用される場合と同じ意味をもつ英語の用語に翻訳され、英語として意味の通じない字幕が生成される虞がある。
【0088】
しかし、上記実施形態の構成によれば、上記のような専門色が強い種類の放送内容を日本語で表す場合に含まれ得る専門用語と同じ意味を持つ用語を、当該専門用語と代替可能な代替用語として、当該放送内容の種類及び当該専門用語と予め対応付けて記憶部30に記憶することができる。
【0089】
これにより、補足字幕に専門用語が含まれている場合であっても、当該専門用語を、受信信号が示す放送内容の種類に適した当該専門用語と同じ意味を持つ代替用語に置き換えた後、翻訳字幕に翻訳することができる。その結果、受信信号が示す放送内容の種類に適さない用語が含まれた、英語として意味の通じない翻訳字幕が生成される虞を低減することができる。
【0090】
(3)例えばスポーツや音楽等の種類の放送内容を日本語で表した字幕には、人名や芸名等の固有名詞を表す用語が含まれることがあり、当該固有名詞を表す用語が、普通名詞等の他の品詞としても用いられる用語である場合がある。このような字幕をそのまま英語の字幕に翻訳すると、当該固有名詞を表す用語が、上記他の品詞と同じ意味を持つ英語の用語に翻訳される虞がある。
【0091】
しかし、上記実施形態の構成によれば、補足字幕に含まれている固有名詞を表す用語に、他の品詞としても用いられる用語が用いられていたとしても、当該用語を専門用語とし、当該専門用語と当該専門用語を英語で表した代替用語とを予め対応付けて記憶部30に記憶しておくことにより、当該補足字幕の翻訳前に、当該用語を記憶部30に予め記憶しておいた上記代替用語に置き換えることができる。
【0092】
これにより、補足字幕に含まれている既に英語で表されている上記代替用語が、翻訳部13によって翻訳されることを回避することができる。その結果、上記固有名詞を表す用語が他の品詞と同じ意味を持つ英語の用語に翻訳される虞を低減することができる。
【0093】
(4)上記実施形態の構成では、受信信号には、放送中の番組に関連する番組情報が更に含まれ、番組情報には、放送内容の種類を表すジャンル情報が含まれている。
【0094】
このため、補足部12は、受信信号に含まれている番組情報を取得し、当該取得した信号が示す番号情報から、放送内容の種類を表すジャンル情報を取得することができる。これにより、補足部12は、当該取得したジャンル情報が表す、受信信号が示す放送内容の種類を迅速に把握することができる。その結果、補足部12は、当該把握した放送内容の種類と対応付けて記憶部30に記憶されている補足用語等を迅速に取得することができる。
【0095】
尚、上記実施形態は、本発明に係る実施形態の例示に過ぎず、本発明を上記実施形態に限定する趣旨ではない。例えば、以下に示す変形実施形態であってもよい。
【0096】
(1)信号処理システム100に、信号処理装置1と同構成の信号処理装置を一台以上備えるようにしてもよい。
【0097】
本変形実施形態の構成によれば、各信号処理装置1の取得部15によって、外部記憶装置9に記憶されている放送内容の種類及び当該種類に対応付けられている補足用語が、各信号処理装置1の記憶部30に記憶される。また、各信号処理装置1の取得部15によって、外部記憶装置9に記憶されている放送内容の種類及び当該種類に対応付けられている専門用語及び代替用語が、各信号処理装置1の記憶部30に記憶される。
【0098】
このため、放送内容の種類及び当該種類に対応付けられた補足用語を各信号処理装置1の記憶部30に個別に記憶する操作を行う手間を省略することができる。また、放送内容の種類及び当該種類に対応付けられた専門用語及び代替用語を各信号処理装置1の記憶部30に個別に記憶する操作を行う手間を省略することができる。
【0099】
(2)ステップS2において、判定部11は、受信字幕に主語が欠落しているか否かを判定するようにしてもよい。これに合わせて、
図2に示す表及び補足テーブルを、目的語として補足され得る補足用語を含まないないように構成し、補足部12は、当該ステップS2において、受信字幕に主語が欠落していると判定された場合に、ステップS3を実行するようにしてもよい。
【0100】
又は、ステップS2において、判定部11は、受信字幕に目的語が欠落しているか否かを判定するようにしてもよい。これに合わせて、
図2に示す表及び補足テーブルを、主語として補足され得る補足用語を含まないないように構成し、補足部12は、当該ステップS2において、受信字幕に目的語が欠落していると判定された場合に、ステップS3を実行するようにしてもよい。
【0101】
(3)操作表示部40を信号処理装置1とは別の装置として構成し、信号処理装置1を表示部41やスピーカー42を備えていない例えばTVチューナー等で構成してもよい。これに合わせて、当該操作表示部を当該信号処理装置と通信可能に構成し、ステップS8において、出力部14が、通信部20を介して、翻訳字幕を含む受信信号を当該操作表示部へ出力するようにしてもよい。
【0102】
(4)ステップS5〜S6を省略するようにし、これに合わせて、記憶部30に
図3に示す表を記憶しないようにし、また、外部記憶装置9に専門用語テーブルを記憶しないようにしてもよい。
【0103】
(5)信号処理システム100に外部記憶装置9を備えないようにし、これに合わせて、制御部10が取得部15として動作しないようにしてもよい。これにより、信号処理装置1が単独で
図4に示す動作を行うようにしてもよい。この場合、制御プログラムのインストール時に記憶部30に記憶された
図2及び
図3に示す表の内容を、ユーザーによる操作部43の操作によって更新できるようにしてもよい。
【0104】
(6)受信信号に含まれる字幕の言語は、日本語に限らず、日本語とは異なる言語(以下、第一言語と記載する)であってもよい。これに合わせて、
図2及び
図3に示す表の内容を第一言語で表すようにし、翻訳部13が、第一言語の補足字幕を、第一言語とは異なる言語(以下、第二言語と記載する)の翻訳字幕に翻訳するようにしてもよい。この場合、
図3に示す表において、固有名詞を表す専門用語と対応付ける代替用語を第二言語によって表すようにしてもよい。
【0105】
(7)本発明に係る配信信号は、上記実施形態で説明した放送信号BSに限らない。例えば、IP−VODサービス提供会社が配信している映像信号や音声信号や、DVDプレーヤー等の再生装置が外部へ出力する映像信号や音声信号等のように、外部装置によって配信(出力)されている信号であって、当該信号が示す映像や音声等の内容(配信内容)を所定の言語で表した字幕を含む信号であってもよい。これに合わせて、通信部20が、当該信号を受信するインターフェイス回路を備えるようにし、当該インターフェイス回路が、受信した当該信号を制御部10へ出力するようにしてもよい。