(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記濾過槽と前記凝集沈降槽との間に配置されて前記濾液流通路に連結され、前記濾液を所定のpHに再調整するpH再調整槽を備える請求項1に記載の光ファイバ製造廃液の処理装置。
前記濾過工程後、前記凝集沈降工程前に、前記濾液にpH調整剤を添加して前記濾液を所定のpHに再調整するpH再調整工程を備える請求項4に記載の光ファイバ製造廃液の処理方法。
前記濾過工程は、更に、前記ゲルマニウム含有溶液を前記キレート繊維に再度流通させる再流通工程を備える請求項4又は請求項5に記載の光ファイバ製造廃液の処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガラス製の光ファイバの製造時、光ファイバにおけるコアの添加剤であるGeの一部は、コアの生成に利用されず、気相と固相の混合物である副生成物として副生される。この副生成物は、非常に微細なため、一旦、溶媒と混合して廃液とされる。この廃液から、廃液に含まれるGeを効率良く回収することが望まれるが、その廃液処理過程と上記Ge回収技術とをどう組み合わせるかは検討の余地があった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、光ファイバの製造時の廃液に含まれるゲルマニウムを効率よく回収できる光ファイバ製造廃液の処理装置を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、光ファイバの製造時の廃液に含まれるゲルマニウムを効率よく回収できる光ファイバ製造廃液の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る光ファイバ製造廃液の処理装置は、集塵機と、pH調整槽と、濾過槽と、凝集沈降槽と、調整液流通路と、濾液流通路と、酸流通路と、ゲルマニウム回収路と、開閉機構とを備える。
集塵機は、光ファイバの製造時に副生されるゲルマニウム及びケイ素を含む副生成物を溶媒で集塵して副生成物を含む廃液を作製する。
pH調整槽は、廃液を所定のpHに調整したpH調整液を作製する。
濾過槽は、pH調整液に含まれるゲルマニウムを選択的に吸着するキレート繊維が充填され、pH調整液を濾過してpH調整液からゲルマニウムを除去した濾液を作製する。
凝集沈降槽は、濾液に含まれるケイ素を凝集して沈降させる。
調整液流通路は、pH調整槽から濾過槽にpH調整液を流通させる。
濾液流通路は、濾過槽を通過した濾液を凝集沈降槽側へ流通させる。
酸流通路は、キレート繊維に吸着したゲルマニウムを脱離する酸性溶液を濾過槽に流通させる。
ゲルマニウム回収路は、キレート繊維から脱離したゲルマニウムと酸性溶液とを含むゲルマニウム含有溶液を流通させる。
開閉機構は、濾過槽に流通させる液の種類に応じて、調整液流通路及び濾液流通路、又は、酸流通路及びゲルマニウム回収路の一方を開通し他方を閉鎖する。
【0010】
本発明の一態様に係る光ファイバ製造廃液の処理方法は、集塵工程と、pH調整工程と、濾過工程と、凝集沈降工程とを備える。
集塵工程は、光ファイバの製造時に副生されるゲルマニウム及びケイ素を含む副生成物を溶媒で集塵して副生成物を含む廃液を作製する。
pH調整工程は、廃液にpH調整剤を添加して所定のpHに調整したpH調整液を作製する。
濾過工程は、pH調整液を濾過してpH調整液からゲルマニウムを除去した濾液を作製する。
凝集沈降工程は、濾液に含まれるケイ素を凝集する凝集剤を添加してケイ素を凝集沈降させる。
濾過工程は、吸着工程と、脱離工程とを有する。
吸着工程は、pH調整液に含まれるゲルマニウムを選択的に吸着するキレート繊維にpH調整液を流通して、ゲルマニウムをキレート繊維に吸着させる。
脱離工程は、キレート繊維に吸着したゲルマニウムを脱離する酸性溶液をキレート繊維に流通して、ゲルマニウムと酸性溶液とを含むゲルマニウム含有溶液を作製する。
【発明の効果】
【0011】
上記光ファイバ製造廃液の処理装置は、光ファイバの製造時の廃液に含まれるゲルマニウムを効率よく回収できる。
【0012】
上記光ファイバ製造廃液の処理方法は、光ファイバの製造時の廃液に含まれるゲルマニウムを効率よく回収できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《本発明の実施形態の説明》
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0015】
(1)本発明の一態様に係る光ファイバ製造廃液の処理装置は、集塵機と、pH調整槽と、濾過槽と、凝集沈降槽と、調整液流通路と、濾液流通路と、酸流通路と、ゲルマニウム回収路と、開閉機構とを備える。
集塵機は、光ファイバの製造時に副生されるゲルマニウム及びケイ素を含む副生成物を溶媒で集塵して副生成物を含む廃液を作製する。
pH調整槽は、廃液を所定のpHに調整したpH調整液を作製する。
濾過槽は、pH調整液に含まれるゲルマニウムを選択的に吸着するキレート繊維が充填され、pH調整液を濾過してpH調整液からゲルマニウムを除去した濾液を作製する。
凝集沈降槽は、濾液に含まれるケイ素を凝集して沈降させる。
調整液流通路は、pH調整槽から濾過槽にpH調整液を流通させる。
濾液流通路は、濾過槽を通過した濾液を凝集沈降槽側へ流通させる。
酸流通路は、キレート繊維に吸着したゲルマニウムを脱離する酸性溶液を濾過槽に流通させる。
ゲルマニウム回収路は、キレート繊維から脱離したゲルマニウムと酸性溶液とを含むゲルマニウム含有溶液を流通させる。
開閉機構は、濾過槽に流通させる液の種類に応じて、調整液流通路及び濾液流通路、又は、酸流通路及びゲルマニウム回収路の一方を開通し他方を閉鎖する。
【0016】
上記の構成によれば、集塵機と凝集沈降槽との間に濾過槽を設けることで、光ファイバの製造時の廃液に含まれるゲルマニウムを効率よく回収できる。濾過槽を凝集沈降槽よりも下流に設ける場合に凝集沈降槽の貯留物に含まれるゲルマニウム濃度と比べて、pH調整液に含まれるゲルマニウム濃度が高いからである。また、濾過槽を凝集沈降槽よりも下流に設ける場合、凝集沈降槽で凝集して沈降させた固相からゲルマニウムを回収することが難しいからである。更に、pH調整液の液量は、凝集沈降槽で凝集させたことで分離した上澄み液に比べて非常に少ないため、ゲルマニウムの回収作業を容易に行えるからである。
【0017】
(2)上記光ファイバ製造廃液の処理装置の一形態として、濾過槽と凝集沈降槽との間に配置されて濾液流通路に連結され、濾液を所定のpHに再調整するpH再調整槽を備えることが挙げられる。
【0018】
上記の構成によれば、凝集沈降槽でケイ素を効果的に凝集させられる。濾過槽で作製された濾液のpHが凝集沈降槽でケイ素を凝集させるのに適したpHでなかったとしても、pH再調整槽を備えることで、濾過槽で作製された濾液のpHを凝集沈降槽でケイ素を凝集させるのに適したpHに調整できるからである。
【0019】
(3)上記光ファイバ製造廃液の処理装置の一形態として、更に、ゲルマニウム含有溶液を濾過槽に循環させる循環路を備えることが挙げられる。
【0020】
上記の構成によれば、仮に、一度の酸性溶液のキレート繊維への流通で、キレート繊維に吸着した全てのゲルマニウムを脱離させられなくても、循環路を備えることで、ゲルマニウム含有溶液を濾過槽のキレート繊維に再度流通させられる。そのため、キレート繊維に吸着された全てのゲルマニウムを容易に脱離させられる。ゲルマニウム含有溶液は酸性溶液を含むため、ゲルマニウム含有溶液のpHは、キレート繊維がゲルマニウムを選択的に吸着するのに適したpHではない。そのため、ゲルマニウム含有溶液をキレート繊維に再度流通させても、ゲルマニウム含有溶液中のゲルマニウムはキレート繊維に吸着されず、ゲルマニウム含有溶液中の酸性溶液がキレート繊維に吸着して残存するゲルマニウムをキレート繊維から脱離させられるからである。従って、ゲルマニウム含有溶液におけるゲルマニウムの含有量を高められる。
【0021】
(4)本発明の一態様に係る光ファイバ製造廃液の処理方法は、集塵工程と、pH調整工程と、濾過工程と、凝集沈降工程とを備える。
集塵工程は、光ファイバの製造時に副生されるゲルマニウム及びケイ素を含む副生成物を溶媒で集塵して副生成物を含む廃液を作製する。
pH調整工程は、廃液にpH調整剤を添加して所定のpHに調整したpH調整液を作製する。
濾過工程は、pH調整液を濾過してpH調整液からゲルマニウムを除去した濾液を作製する。
凝集沈降工程は、濾液に含まれるケイ素を凝集する凝集剤を添加してケイ素を凝集沈降させる。
濾過工程は、吸着工程と、脱離工程とを有する。
吸着工程は、pH調整液に含まれるゲルマニウムを選択的に吸着するキレート繊維にpH調整液を流通して、ゲルマニウムをキレート繊維に吸着させる。
脱離工程は、キレート繊維に吸着したゲルマニウムを脱離する酸性溶液をキレート繊維に流通して、ゲルマニウムと酸性溶液とを含むゲルマニウム含有溶液を作製する。
【0022】
上記の構成によれば、集塵工程と凝集沈降工程との間で濾過工程を行うことで、光ファイバの製造時の廃液に含まれるゲルマニウムを効率よく回収できる。濾過工程を凝集沈降工程後に行う場合に凝集沈降工程での作製物に含まれるゲルマニウム濃度と比べて、pH調整液に含まれるゲルマニウム濃度が高いからである。また、濾過工程を凝集沈降工程後に行う場合、凝集沈降工程で凝集して沈降させた固相からゲルマニウムを回収することが難しいからである。更に、pH調整液の液量は、凝集沈降工程で固相を凝集させたことで分離した上澄み液に比べて非常に少ないため、ゲルマニウムの回収作業を容易に行えるからである。
【0023】
(5)上記光ファイバ製造廃液の処理方法の一形態として、濾過工程後、凝集沈降工程前に、濾液にpH調整剤を添加して濾液を所定のpHに再調整するpH再調整工程を備えることが挙げられる。
【0024】
上記の構成によれば、凝集沈降工程でケイ素を効果的に凝集させられる。濾過工程後の濾液のpHが凝集沈降工程でケイ素を凝集させるのに適したpHでなかったとしても、pH再調整工程を備えることで、濾過工程後の濾液のpHを凝集沈降工程でケイ素を凝集させるのに適したpHに調整できるからである。
【0025】
(6)上記光ファイバ製造廃液の処理方法の一形態として、濾過工程は、更に、ゲルマニウム含有溶液をキレート繊維に再度流通させる再流通工程を備えることが挙げられる。
【0026】
上記の構成によれば、仮に、一度の酸性溶液のキレート繊維への流通で、キレート繊維に吸着した全てのゲルマニウムを脱離させられなくても、再流通工程を備えることで、ゲルマニウム含有溶液をキレート繊維に再度流通させられる。そのため、キレート繊維に吸着された全てのゲルマニウムを容易に脱離させられる。ゲルマニウム含有溶液は酸性溶液を含むため、ゲルマニウム含有溶液のpHは、キレート繊維がゲルマニウムを選択的に吸着するのに適したpHではない。そのため、ゲルマニウム含有溶液をキレート繊維に再度流通させても、ゲルマニウム含有溶液中のゲルマニウムはキレート繊維に吸着されず、ゲルマニウム含有溶液中の酸性溶液がキレート繊維に吸着して残存するゲルマニウムをキレート繊維から脱離させられるからである。従って、ゲルマニウム含有溶液におけるゲルマニウムの含有量を高められる。
【0027】
(7)上記光ファイバ製造廃液の処理方法の一形態として、廃液におけるケイ素の含有量が、20mg/L以上5g/L以下であることが挙げられる。
【0028】
廃液におけるケイ素の含有量を20mg/L以上とすれば、Siの含有量が多いため、凝集沈降工程でのSiの凝集量を多くできる。廃液におけるケイ素の含有量を5g/L以下とすれば、Siの含有量が過度に多くなく、廃液の粘度が高すぎない。そのため、後工程の濾過工程でpH調整液を流通させ易い。
【0029】
《本発明の実施形態の詳細》
本発明の実施形態1から実施形態3の詳細を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。各実施形態での説明は、光ファイバ製造廃液の処理装置、光ファイバ製造廃液の処理方法の順に行う。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。各図に示す一部の槽内には、説明の便宜上、pH値の一例を表記している。
【0030】
《実施形態1》
〔光ファイバ製造廃液の処理装置〕
図1を参照して、実施形態1に係る光ファイバ製造廃液の処理装置1Aを説明する。光ファイバ製造廃液の処理装置1Aは、光ファイバの製造時に副生される副生成物を含む廃液を処理する。具体的には、廃液に含まれるゲルマニウム(Ge)とケイ素(Si)とを分離して、Geを回収すると共にSiを一纏めに集める。この光ファイバ製造廃液の処理装置1Aの主たる特徴とするところは、このゲルマニウムを回収する機構を、光ファイバ製造廃液の処理装置1Aの特定の箇所に設けた点にある。光ファイバ製造廃液の処理装置1Aは、集塵機2と、pH調整槽3と、濾過槽4と、pH再調整槽5と、凝集沈降槽6と、調整液流通路71と、濾液流通路72と、酸流通路73と、Ge回収路74と、開閉機構8とを備える。以下、各構成の詳細を説明する。
【0031】
[集塵機]
集塵機2は、光ファイバの製造時に副生されるGe及びSiを含む副生成物を溶媒で集塵して副生成物を含む廃液20を作製する。それにより、副生成物のうち排気可能なガス成分を分離できる。集塵機2には、副生成物が流入する流入路110と、上記ガス成分を集塵機の外へ排出する排風機(図示略)が連結されている。集塵機2の集塵方式は、電気式が挙げられる。それにより、副生成物を凝集させ易く、溶媒により集塵し易い。集塵機2は、ここでは、シャワー21と貯留槽22とを備える。
【0032】
(シャワー)
シャワー21は、溶媒を集塵機2内に噴射して集塵機2内に流入した副生成物と接触させる。副生成物は、気相と固相の混合物であり、ゲルマニウム酸化物(例えば、二酸化ゲルマニウム:GeO
2)や、ケイ素酸化物(例えば、二酸化ケイ素:SiO
2)、塩酸(HCl)、水(H
2O)などを含んでいる。溶媒は、気相の一部と固相と接触する。気相の残部は、上記排風機で集塵機2の外部へ排出される。溶媒は、例えば、工業用水が挙げられる。
【0033】
(貯留槽)
貯留槽22は、溶媒と溶媒に接触した副生成物とが混合して、副生成物の一部(主に気相)が溶解した廃液20を貯留する。副生成物の残部(主に固相)は、溶媒に溶解せず廃液20に残存する。即ち、廃液20は、懸濁液である。この懸濁液の液体にはGeが含まれ、固相は主にSiで構成されている。この廃液20の性質は酸性であり、廃液20のpHは凡そ1以下である。廃液20におけるSiの含有量は、20mg/L以上5g/L以下が好ましい。廃液20におけるSiの含有量を20mg/L以上とすれば、Siの含有量が多いため、後述の凝集沈降槽6でSiの凝集量を多くできる。廃液20におけるSiの含有量を5g/L以下とすれば、Siの含有量が過度に多くなく、廃液20の粘度が高すぎない。そのため、後述の濾過槽4でpH調整液30を流通させ易い。
【0034】
[pH調整槽]
pH調整槽3は、廃液20を所定のpHに調整したpH調整液30を作製し貯留する。pH調整槽3は、廃液20のpHを調整するpH調整剤を充填する調整剤充填部(図示略)が連結されている。pH調整剤は、例えば、苛性ソーダが挙げられる。pH調整液30には、廃液20に含まれるGe及びSiと、pH調整剤とが含まれる。pH調整液30のpHは、後述の濾過槽4でキレート繊維41がGeを選択的に吸着できるpHとする。具体的には、pH調整液30のpHは、3以上10以下が挙げられる。pH調整液30のpHは、上記範囲内のうち、後工程の濾過槽4を経た濾液のpHがpH再調整槽5で調整するpHと同じpHとなるように調整してもよいし、異なるpHとなるように調整してもよい。ここでは、異なるpHとなるように調整する。同じpHとなるように調整する場合は、後述の実施形態2で説明する。
【0035】
[濾過槽]
濾過槽4は、pH調整液30に含まれるGeを選択的に吸着するキレート繊維41が充填され、pH調整液30を濾過してpH調整液30からGeを除去した濾液を作製する。即ち、濾液にはSiが含まれている。キレート繊維41は、吸着したGeを後述する酸性溶液90により脱離可能なキレート繊維を用いる。キレート繊維41は、市販の繊維が利用できる。濾過槽4の数は、単数でもよいし複数でもよい。濾過槽4の数を複数とする場合、複数の濾過槽4の配置形態は、並列とすることが挙げられる。
【0036】
[pH再調整槽]
pH再調整槽5は、濾液を所定のpHに再調整し、再調整した濾液(以下、再調整液50)を貯留する。pH再調整槽5は、pH調整剤を充填する調整剤充填部(図示略)が連結されている。pH調整剤は、上述のpH調整剤と同様の苛性ソーダの他、例えば、消石灰や塩酸などが挙げられる。再調整液50には、Geが含まれず、Siと調整剤とが含まれる。再調整液50のpHは、後述の凝集沈降槽6でSiを凝集沈降させられるpHとする。具体的には、再調整液50のpHは、6以上8以下が挙げられ、6.5以上7.5以下が好ましく、特に7程度が好ましい。
【0037】
[凝集沈降槽]
凝集沈降槽6は、濾液に含まれるSiを凝集して沈降させる。それにより、凝集沈降槽6には、Siが凝集沈降した塊60と、濾液からSiが除去された上澄み液61とが分離して貯留される。凝集沈降槽6は、凝集剤を充填する凝集剤充填部(図示略)が連結されている。凝集剤は、例えば、ポリ塩化アルミニウムが挙げられる。
【0038】
[調整液流通路]
調整液流通路71は、pH調整槽3から濾過槽4にpH調整液30を流通させる。調整液流通路71の一端はpH調整槽3に連結され、他端は濾過槽4に連結される。調整液流通路71の途中には、調整液流通路71を開閉する調整液側バルブ81が設けられている。調整液側バルブ81は、後述する開閉機構8を構成する。
【0039】
[濾液流通路]
濾液流通路72は、濾過槽4を通過した濾液を凝集沈降槽6側へ流通させる。ここでは、濾液流通路72の一端は濾過槽4に連結され、その途中にはpH再調整槽5が介在され、他端は凝集沈降槽6に連結される。濾液流通路72の途中(濾過槽4とpH再調整槽5との間)には、濾液流通路72を開閉する濾液側バルブ82が設けられている。濾液側バルブ82は、調整液側バルブ81と同様、開閉機構8を構成する。
【0040】
[酸流通路]
酸流通路73は、キレート繊維41に吸着したGeを脱離する酸性溶液90を濾過槽4に流通させる。酸流通路73の一端は酸性溶液90を貯留する酸溶液貯留槽9に連結され、その他端は濾過槽4に連結される。酸流通路73の途中には、酸流通路73を開閉する酸溶液側バルブ83が設けられている。酸溶液側バルブ83は、調整液側バルブ81と濾液側バルブ82と同様、開閉機構8を構成する。
【0041】
[ゲルマニウム回収路]
Ge回収路74は、キレート繊維41から脱離したGeと酸性溶液90とを含むGe含有溶液100を流通させる。Ge回収路74の一端は、濾過槽4に連結され、他端はGe含有溶液100を貯留するGe回収槽10に連結される。Ge回収路74の途中には、Ge回収路74を開閉するGe溶液側バルブ84が設けられている。Ge溶液側バルブ84は、調整液側バルブ81と濾液側バルブ82と酸溶液側バルブ83と同様、開閉機構8を構成する。
【0042】
[開閉機構]
開閉機構8は、濾過槽4に流通させる液の種類に応じて、調整液流通路71及び濾液流通路72、又は、酸流通路73及びGe回収路74の一方を開通し他方を閉鎖する。それにより、以下の(1)又は(2)の流通の一方を行い、他方を行わない。
(1)pH調整液30をpH調整槽3から濾過槽4に流通させ、濾液を濾過槽4から凝集沈降槽6側(
図1ではpH再調整槽5側)へ流通させる。
(2)キレート繊維41に吸着したGeを脱離する酸性溶液90を酸溶液貯留槽9から濾過槽4に流通させ、濾過槽4を通過した酸性溶液90とキレート繊維41から脱離したGeとを含むGe含有溶液100をGe回収槽10へ流通させる。
【0043】
開閉機構8は、上記した調整液側バルブ81、濾液側バルブ82、酸溶液側バルブ83、及びGe溶液側バルブ84と、開閉制御部800とを備える。各バルブ81、82、83、84は、例えば、電動バルブや電磁バルブが挙げられる。開閉制御部800は、濾過槽4に流通させる液に応じて開くバルブと閉じるバルブとを可変するように制御する。具体的には、開閉制御部800は、pH調整液30を濾過槽4に流通させる場合、調整液側バルブ81と濾液側バルブ82とを開き、酸溶液側バルブ83とGe溶液側バルブ84とを閉じる。開閉制御部800は、酸性溶液90を濾過槽4に流通させる場合、調整液側バルブ81と濾液側バルブ82とを閉じて、酸溶液側バルブ83とGe溶液側バルブ84とを開く。開閉制御部800は、各バルブ81、82、83、84を駆動するモータやソレノイドに動作指令を出す指令出力部を有する回路を備えるコンピュータを利用できる。
【0044】
[その他]
光ファイバ製造廃液の処理装置1Aは、更に、酸性溶液90が流通したキレート繊維41を濾過槽4内で洗浄する洗浄機(図示略)を備えることが好ましい。キレート繊維41を洗浄することで、洗浄後のキレート繊維41は、酸性溶液90の流通前と同程度にpH調整液30のGeを選択的に吸着できる。そのため、酸性溶液90の流通後に、キレート繊維41自体を交換する手間を省ける。洗浄機は、キレート繊維41を洗浄する洗浄剤を濾過槽4に流通させる流通路と、濾過槽4を流通した洗浄剤を排出する排出路とを備えることが挙げられる。洗浄剤は、例えば、水が挙げられる。
【0045】
光ファイバ製造廃液の処理装置1Aは、更に、凝集沈降槽6で作製された塊60をプレスしたプレス体60pを纏めて運搬処分するケーキコンテナ120と、凝集沈降槽6で作製された上澄み液61の成分を監視する監視槽130とを備える。監視槽130では、上澄み液61に放流不可の成分が含まれていないか成分分析をし、放流可能であれば放流し、放流不可の成分があればその成分を除去する。
【0046】
〔光ファイバ製造廃液の処理装置の作用効果〕
上述の光ファイバ製造廃液の処理装置1Aによれば、集塵機2と凝集沈降槽6との間に濾過槽4を設けることで、光ファイバの製造時の廃液20に含まれるGeを効率よく回収できる。
【0047】
〔光ファイバ製造廃液の処理方法〕
光ファイバ製造廃液の処理方法は、光ファイバの製造時に副生される副生成物を含む廃液を処理する。具体的には、副生成物に含まれるGeとSiとを分離して、Geを回収すると共に、Siを一纏めに集める。光ファイバ製造廃液の処理方法の主たる特徴とするところは、Geの回収を廃液の処理過程における特定の箇所で行う点にある。ここでは、光ファイバ製造廃液の処理方法は、集塵工程と、pH調整工程と、濾過工程と、pH再調整工程と、凝集沈降工程とを備える。以下、各工程を順に説明する。ここでは、光ファイバ製造廃液の処理方法は、上述の光ファイバ製造廃液の処理装置1Aを用いる。
【0048】
[集塵工程]
集塵工程は、光ファイバの製造時に副生されるGe及びSiを含む副生成物を溶媒で集塵して副生成物を含む廃液を作製する。溶媒は、工業用水を利用できる。この工程により、Geを含む液体にSiで構成される固相が分散したpHが凡そ1以下の懸濁液(廃液)を作製できる。
【0049】
廃液におけるSiの含有量は、20mg/L以上5g/L以下とすることが好ましい。廃液におけるSiの含有量を20mg/L以上とすれば、Siの含有量が多いため、後工程の凝集沈降工程でのSiの凝集量を多くできる。廃液におけるSiの含有量を5g/L以下とすれば、Siの含有量が過度に多くなく、廃液の粘度が高すぎない。そのため、後工程の濾過工程でpH調整液を流通させ易い。
【0050】
[pH調整工程]
pH調整工程は、廃液を所定のpHに調整したpH調整液を作製する。廃液のpHの調整は、pH調整剤を添加する。pH調整剤の添加量は、pH調整液のpHが後工程の濾過工程でキレート繊維がGeを選択的に吸着できるpHとなる量とすることが挙げられる。具体的には、pH調整剤の添加量は、pH調整液のpHが3以上10以下となる量とすることが挙げられる。pH調整剤の添加量は、濾過工程を経た濾液のpHが、後工程のpH再調整工程で調整するpHと同じpHとなる量としてもよいし、異なるpHとなる量としてもよい。ここでは、pH調整剤の添加量は、pH再調整工程で調整するpHと異なるpHとなる量とする。pH調整剤の添加量は、pH再調整工程で調整するpHと同じpHとなるように調整する場合は、後述の実施形態2で説明する。pH調整剤は、苛性ソーダなどを利用できる。
【0051】
[濾過工程]
濾過工程は、pH調整液を濾過してpH調整液からGeを除去した濾液を作製する。濾過工程は、吸着工程と、脱離工程とを備える。
【0052】
(吸着工程)
吸着工程は、pH調整液に含まれるGeを選択的に吸着するキレート繊維にpH調整液を流通して、Geを前記キレート繊維に吸着させる。この吸着工程により、濾液が作製される。この濾液は、後述のpH調整工程(凝集沈降工程)に利用される。キレート繊維は、市販のものを利用できる。
【0053】
(脱離工程)
脱離工程は、キレート繊維に吸着したGeを脱離する酸性溶液をキレート繊維に流通して、Geと酸性溶液とを含むGe含有溶液を作製する。酸性溶液は、例えば、塩酸が挙げられる。このように、廃液に含まれるGeは、酸性溶液と混合したGe含有溶液として回収する。
【0054】
[pH再調整工程]
pH再調整工程は、濾液を所定のpHに再調整する。pH再調整工程は、濾過工程後、凝集沈降工程前に行う。pHの再調整は、pH調整剤を添加することで行う。pH調整剤の添加量は、pHを再調整した濾液(再調整液)のpHが後工程の凝集沈降工程でSiを凝集沈降させられるpHとなる量とすることが挙げられる。具体的には、pH調整剤の添加量は、再調整液のpHが6以上8以下となる量とすることが挙げられ、特に6.5以上7.5以下となる量とすることが好ましく、特に7程度となる量とすることが好ましい。pH調整剤は、上述のpH調整工程と同様の苛性ソーダの他、例えば、消石灰や塩酸などを利用できる。
【0055】
[凝集沈降工程]
凝集沈降工程は、濾液に含まれるSiを凝集沈降させる。この工程により、Siが凝集沈降した塊と濾液からSiが除去された上澄み液とに分離させられる。Siの凝集沈降には、濾液に含まれるSiを凝集する凝集剤を添加することで行う。凝集剤は、例えば、ポリ塩化アルミニウムが挙げられる。
【0056】
[その他]
光ファイバ製造廃液の処理方法は、更に、脱離工程後に洗浄剤でキレート繊維を洗浄する洗浄工程を備えることが好ましい。キレート繊維を洗浄することで、洗浄後のキレート繊維は、酸性溶液の流通前と同程度にpH調整液のGeを選択的に吸着できる。そのため、酸性溶液流通後に、キレート繊維自体を交換する手間を省ける。洗浄剤は、例えば、水が挙げられる。
【0057】
光ファイバ製造廃液の処理方法は、更に、凝集沈降工程後、塊をプレスしてプレス体を作製するプレス工程と、上澄み液の放流工程とを備えることが挙げられる。プレス工程により、塊の密度の高いプレス体を作製することで、嵩を低くさせられる。放流工程では、上澄み液に放流不可の成分が含まれていないか成分分析をし、放流可能であれば放流し、放流不可の成分があればその成分を除去してから放流する。
【0058】
[廃液の処理手順]
上述の光ファイバ製造廃液の処理装置1Aを用いて、上述の光ファイバ製造廃液の処理方法により廃液を処理する手順の一例を説明する。ここでは、調整液側バルブ81及び濾液側バルブ82は開いており、酸溶液側バルブ83及びGe溶液側バルブ84は閉じている状態とする。
【0059】
集塵工程では、集塵機2でGeとSiを含む副生成物を水で集塵する。それにより、例えばpH=1の廃液20を作製する。この廃液20は、pH調整槽3へ送られる。
【0060】
pH調整工程では、pH調整槽3で廃液20に苛性ソーダを添加する。それにより、例えばpH=3のpH調整液30を作製する。このpH調整液30は、濾過槽4へ送られる。所定量のpH調整液30が濾過槽4へ送られたら、開閉制御部800は、調整液側バルブ81を閉じて調整液流通路71を閉鎖する。そうして、pH調整液30の濾過槽4への流通を止める。
【0061】
濾過工程では、濾過槽4にpH調整液30を流通させる。それにより、pH調整液30に含まれるGeをキレート繊維41に吸着させて、pH調整液30からGeを除去した濾液を作製する。この濾液は、pH再調整槽5に送られる。pH再調整槽5での濾液の処理は後述する。全ての濾液がpH再調整槽5へ送られたら、開閉制御部800は、濾液側バルブ82を閉じて濾液流通路72を閉鎖する。
【0062】
次に、開閉制御部800は、酸溶液側バルブ83及びGe溶液側バルブ84を開いて、酸流通路73及びGe回収路74を開通させる。そうして、酸溶液貯留槽9から濾過槽4(キレート繊維41)に、酸性溶液90としてpH≦1の塩酸水溶液を流通させる。それにより、キレート繊維41に吸着したGeを脱離させて、塩酸水溶液にGeが含有されたGe含有溶液100を作製する。このGe含有溶液100は、Ge回収槽10に貯留されて回収される。所定量の酸性溶液90が濾過槽4へ送られたら、開閉制御部800は、酸溶液側バルブ83を閉じて酸流通路73を閉鎖する。そうして、酸性溶液90の濾過槽4への流通を止める。全てのGe含有溶液100がGe回収槽10へ送られたら、開閉制御部800は、Ge溶液側バルブ84を閉じてGe回収路74を閉鎖する。そして、開閉制御部800は、調整液側バルブ81及び濾液側バルブ82を開いて、調整液流通路71及び濾液流通路72を開通させる。
【0063】
pH再調整工程では、pH再調整槽5で濾液に苛性ソーダや消石灰を添加して、例えばpH=7の再調整液50を作製する。この再調整液50は、凝集沈降槽6へ送られる。
【0064】
凝集沈降工程では、凝集沈降槽6で再調整液50にポリ塩化アルミニウムを添加して、再調整液50に含まれるSiを凝集して沈降させ、塊60と上澄み液61とに分離する。
【0065】
塊60は、プレス成形したプレス体60pにしてケーキコンテナ120に纏められ廃棄される。上澄み液61は、成分分析をした後、必要に応じて成分除去を行い、放流される。
【0066】
〔光ファイバ製造廃液の処理方法の作用効果〕
上述の光ファイバ製造廃液の処理方法によれば、集塵工程と凝集沈降工程との間で濾過工程を行うことで、光ファイバの製造時の廃液に含まれるゲルマニウムを効率よく回収できる。
【0067】
《実施形態2》
〔光ファイバ製造廃液の処理装置〕
図2を参照して、実施形態2の光ファイバ製造廃液の処理装置1Bを説明する。光ファイバ製造廃液の処理装置1Bは、pH調整槽3で調整するpHが異なる点と、pH再調整槽5(
図1)を備えない点が実施形態1の光ファイバ製造廃液の処理装置1Aとの主たる相違点である。以下、相違点を中心に説明し、同様の構成及び同様の効果については説明を省略する。
【0068】
[pH調整槽]
pH調整槽3は、実施形態1と同様、廃液20を所定のpHに調整したpH調整液30を作製し貯留する。ここでは、調整するpHは、濾過槽4を通過した濾液のpHが凝集沈降槽6でSiを凝集沈降させられるpHとなるように調整する。このpHは、濾過工程でキレート繊維がGeを選択的に吸着できるpHと重複する。濾過工程でキレート繊維がGeを選択的に吸着できるpHと、凝集沈降工程でSiを凝集沈降させられるpHとは、同一であることが好ましい。
【0069】
[濾液流通路]
濾液流通路72の一端及び他端のそれぞれは、実施形態1と同様、濾過槽4と凝集沈降槽6に連結されている。一方、濾液流通路72の途中には、実施形態1とは異なり、pH再調整槽が介在されていない。
【0070】
〔光ファイバ製造廃液の処理装置の作用効果〕
実施形態2の光ファイバ製造廃液の処理装置1Bによれば、実施形態1の光ファイバ製造廃液の処理装置に比較して、濾液のpHを再調整するpH再調整槽を省略できるため、光ファイバ製造廃液の処理装置1Bを簡素化できる。
【0071】
〔光ファイバ製造廃液の処理方法〕
実施形態2の光ファイバ製造廃液の処理方法は、pH調整工程で特定のpH調整液を作製する点が、実施形態1の光ファイバ製造廃液の処理方法との主たる相違点である。ここでは、光ファイバ製造廃液の処理方法は、上述の光ファイバ製造廃液の処理装置1Bを用いる。
【0072】
[pH調整工程]
pH調整工程でのpH調整剤の添加量は、濾過工程を経た濾液のpHが、凝集沈降工程でSiを凝集沈降させられるpHとなる量とする。そうすれば、濾過工程後に濾液のpHを再調整するpH再調整工程を不要にできる。そのため、光ファイバ製造廃液の処理方法を簡略化できる。即ち、濾過工程で作製された濾液は、直接凝集沈降工程で利用することができる。
【0073】
[廃液の処理手順]
上述の光ファイバ製造廃液の処理装置1Bを用いて、上述の光ファイバ製造廃液の処理方法により廃液を処理する手順の一例を説明する。ここでは、実施形態1で説明した処理手順と相違する手順を中心に説明する。
【0074】
pH調整工程では、pH調整槽3で集塵機2から送られた廃液20に苛性ソーダを添加する。それにより、例えばpH=7のpH調整液30を作製する。このpH調整液30は、濾過槽4へ送られる。濾過工程では、濾過槽4でpH調整液30から濾液が作製される。この濾液は、pHを再調整することなく濾過槽4から凝集沈降槽6へ送られる。
【0075】
〔光ファイバ製造廃液の処理方法の作用効果〕
実施形態2の光ファイバ製造廃液の処理方法によれば、実施形態1の光ファイバ製造廃液の処理方法に比較して、濾液のpHを再調整するpH再調整工程を省略できるため、光ファイバ製造廃液の処理方法を簡略化できる。
【0076】
《実施形態3》
〔光ファイバ製造廃液の処理装置〕
図3を参照して、実施形態3の光ファイバ製造廃液の処理装置1Cを説明する。光ファイバ製造廃液の処理装置1Cは、回収したGe含有溶液100を濾過槽4に循環させる循環路75を備える点が実施形態1の光ファイバ製造廃液の処理装置1Aとの主たる相違点である。以下、相違点を中心に説明し、同様の構成及び同様の効果については説明を省略する。
【0077】
[循環路]
循環路75は、Ge回収槽10に貯留したGe含有溶液100をGe回収槽10から濾過槽4へ流通させる。循環路75の一端はGe回収槽10に連結され、他端は酸流通路73の途中(酸溶液側バルブ83と濾過槽4との間)に連結されている。循環路75の途中には、循環路75を開閉する循環バルブ85と、Ge含有溶液100を送り出すポンプ(図示略)とが設けられている。循環バルブ85は、調整液側バルブ81などと同様、開閉機構8を構成する。
【0078】
[開閉機構]
開閉機構8は、上述のように調整液流通路71及び濾液流通路72、又は、酸流通路73及びGe回収路74の一方を開通し他方を閉鎖することに加えて、Ge回収槽10に貯留したGe含有溶液100におけるGeの濃度に応じて、Ge含有溶液100を循環路75に流通させる。具体的には、濾過槽4に流通する前の廃液20又はpH調整液30におけるGeのモル濃度と、Ge回収槽10に貯留したGe含有溶液100におけるGeのモル濃度とに差があるときにGe含有溶液100を循環路75に流通させる。そうして、Ge含有溶液100をGe回収槽10から濾過槽4へ流通させて、濾過槽4のキレート繊維41に吸着して残存するGeを脱離させる。それにより、Ge回収槽10に貯留したGe含有溶液100におけるGeの濃度を高められる。Ge含有溶液100は酸性溶液90を含むため、Ge含有溶液100のpHは、キレート繊維41がGeを選択的に吸着するのに適したpHではない。そのため、Ge含有溶液100を濾過槽4に循環させても、Ge含有溶液100中のGeはキレート繊維41に吸着されることなく、Ge含有溶液100中の酸性溶液がキレート繊維41に吸着して残存するGeをキレート繊維41から脱離させられるからである。
【0079】
開閉機構8は、循環バルブ85と、濾過前濃度測定器86と、濾過後濃度測定器87と、開閉制御部800とを備える。循環バルブ85は、他のバルブ81、82、83、84と同様の電動バルブや電磁バルブを用いることができる。濾過前濃度測定器86は、濾過槽4に流通する前のpH調整液30におけるGeのモル濃度を測定する。濾過後濃度測定器87は、Ge回収槽10に貯留したGe含有溶液100におけるGeのモル濃度を測定する。両濃度測定器86,87は、例えば、原子吸光分光光度計(原子吸光分析装置)などを利用できる。濾過槽4(Ge回収槽10)からpH調整液30(Ge含有溶液100)のサンプルを原子吸光分光光度計(原子吸光分析装置)に送り、原子吸光分光光度計(原子吸光分析装置)でpH調整液30(Ge含有溶液100)におけるGeのモル濃度を測定する。両濃度測定器86,87で測定された測定結果は、開閉制御部800に送信される。開閉制御部800は、濾過前濃度測定器86と濾過後濃度測定器87のGe濃度の測定結果に差が生じたとき、循環バルブ85を開いて循環路75を開通させ、上記ポンプを駆動する。開閉制御部800は、両濃度測定器86,87からの測定結果を受信するデータ入力部と、その結果同士を比較判定する判定部と、判定部の結果に基づいて酸溶液側バルブ83と循環バルブ85とを駆動するモータやソレノイドとポンプとに動作指令を出力する指令出力部とを有する回路を備えるコンピュータを利用できる(いずれも図示略)。
【0080】
〔光ファイバ製造廃液の処理方法〕
実施形態3の光ファイバ製造廃液の処理方法は、Ge含有溶液をキレート繊維に再度流通させる再流通工程を備える点が、実施形態1の光ファイバ製造廃液の処理方法との主たる相違点である。ここでは、光ファイバ製造廃液の処理方法は、上述の光ファイバ製造廃液の処理装置1Cを用いる。
【0081】
[再流通工程]
再流通工程は、Ge含有溶液をキレート繊維に再度流通させる。この再流通工程により、キレート繊維に吸着された全てのGeを容易に脱離させられる。そのため、Ge含有溶液のGeの含有量を高められる。この再流通工程は、複数回繰り返してもよい。
【0082】
[廃液の処理手順]
上述の光ファイバ製造廃液の処理装置1Cを用いて、上述の光ファイバ製造廃液の処理方法により廃液を処理する手順の一例を説明する。ここでは、実施形態1で説明した処理手順と相違する手順を中心に説明する。
【0083】
再流通工程では、上述の濾過工程で濾過槽4から全てのGe含有溶液100がGe回収槽10へ送られた後、Ge含有溶液100を濾過槽4へ再流通させる。このとき、酸溶液側バルブ83は閉じられた状態であるが、酸流通路73のうち循環路75との接続箇所から濾過槽4までの間は利用される。開閉制御部800は、Ge溶液側バルブ84を閉じずに、循環バルブ85を開いて循環路75を開通させておく。濾過槽4へ再流通したGe含有溶液100は、Ge回収路74を流通してGe回収槽10へ戻される。Ge含有溶液100の再流通は、必要に応じて複数回行ってもよい。所定量のGeを含む全てのGe含有溶液100がGe回収槽10へ送られたら、開閉制御部800は、Ge溶液側バルブ84及び循環バルブ85を閉じて、調整液流通路71及び濾液流通路72を開通させる。
【0084】
〔作用効果〕
実施形態3によれば、仮に、一度の酸性溶液のキレート繊維への流通で、キレート繊維に吸着した全てのGeを脱離させられなくても、Ge含有溶液をキレート繊維に再度流通させられるため、キレート繊維に吸着された全てのGeを容易に脱離させられる。Ge含有溶液は酸性溶液を含むため、Ge含有溶液のpHは、キレート繊維がGeを選択的に吸着するのに適したpHではない。そのため、Ge含有溶液をキレート繊維に再度流通させても、Ge含有溶液中のGeはキレート繊維に吸着されず、Ge含有溶液中の酸性溶液がキレート繊維に吸着して残存するGeをキレート繊維から脱離させられるからである。従って、Ge含有溶液におけるGeの含有量を高められる。