特許第6555589号(P6555589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555589
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】変位測定用治具
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/30 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
   G01B5/30
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-123555(P2016-123555)
(22)【出願日】2016年6月22日
(65)【公開番号】特開2017-227528(P2017-227528A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2018年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】594166568
【氏名又は名称】株式会社アイペック
(73)【特許権者】
【識別番号】515157758
【氏名又は名称】公立大学法人 富山県立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】391007460
【氏名又は名称】中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】中野 幸長
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 始
(72)【発明者】
【氏名】小森 徹
(72)【発明者】
【氏名】松田 幸一
【審査官】 川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−043464(JP,A)
【文献】 特開2010−249711(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/064299(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00 − 5/30
G01B 11/00 − 11/30
G01B 21/00 − 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の構造物の近傍に設置された第二の構造物の、前記第一の構造物に対する変位を測定するための第一及び第二治具が設けられ、
前記第一治具は、前記第一の構造物の表面の第一基準面に対して交差する方向に配置された第一縦起立板と、前記第一縦起立板に対して直角方向に配置された第一横起立板とが設けられ、
前記第二治具は、前記第二の構造物の表面の、前記第一基準面とほぼ面一な第二基準面に対して交差する方向に配置された第二縦起立板と、前記第二縦起立板に対して直角方向に配置された第二横起立板とが設けられ、
前記第一及び第二治具は、前記第一及び第二の構造物に取り付けられた状態で、前記第一縦起立板と前記第二縦起立板とが互いに対向し、前記第一横起立板と前記第二横起立板とが互いに対向することを特徴とする変位測定用治具。
【請求項2】
前記第一治具は、前記第一基準面に当接させて固定される第一基板と、前記第一基板に対して交差する方向に配置された前記第一縦起立板と、前記第一基板に対して交差する方向であって、前記第一縦起立板に対して直角方向に配置された前記第一横起立板とが一体に設けられ、
前記第二治具は、前記第一基準面とほぼ面一な前記第二基準面に当接させて固定される第二基板と、前記第二基板に対して交差する方向に配置された前記第二縦起立板と、前記第二基板に交差する方向であって、前記第二縦起立板に対して直角方向に配置された前記第二横起立板とが一体に設けられている請求項1記載の変位測定用治具。
【請求項3】
前記第一治具が前記第一基準面に取り付けられた状態で、前記第一基板の一部が前記第二基準面に対向し、前記第一基板の前記第二基準面に対向する部分に、前記第一基板と前記第二基準面との距離を測定するための第一透孔が設けられている請求項2記載の変位測定用治具。
【請求項4】
前記第一透孔は、互いに離れた位置に複数設けられている請求項3記載の変位測定用治具。
【請求項5】
少なくとも前記第一構造物と第二構造物のうちの一方の近傍に位置した第三の構造物に対する、前記第一構造物又は第二構造物の変位を測定するための第三治具が設けられ、
前記第三治具は、前記第三の構造物の表面の第三基準面に対して交差する方向に配置された第三起立板が設けられ、前記第三基準面に取り付けられた状態で、前記第三起立板の、前記第一又は第二の構造物に対向する部分に、前記第三起立板と前記第一又は第二の構造物との距離を測定するための第三透孔が設けられている請求項1乃至4のいずれか記載の変位測定用治具。
【請求項6】
前記第三透孔は、互いに離れた位置に複数設けられている請求項5記載の変位測定用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁や通路等を構成するコンクリートや鋼床版等の構造物の変位を測定する際に使用される変位測定用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
インフラ構造物は、定期点検等でひび割れやズレ等の異常が発見されると、その後の症状の変化を継続的に監視し、適切な時期に補修を行う必要がある。
【0003】
構造物のひび割れやズレの状態変化を監視するためには、構造物の変位を的確に測定することが重要になる。また、橋梁等のコンクリート構造物は、非常に狭い箇所にひび割れが発生する場合があり、大掛かりな変位測定装置は使用しにくい状況が想定されるので、小型でシンプルな測定装置又は測定治具が求められている。
【0004】
例えば、図9(a)に示すように、道路や水路等の通路12には、RCコンクリートやPCコンクリート等で形成された角筒状のボックスカルバート14を複数用意し、コンクリート基礎16上に設置し、連結することによって形成されているものがある。ここで、図9(b)に示すように、特定のボックスカルバート14(2)が経年変化によりズレたり傾いたりすると、隣り合うボックスカルバート14(1)と14(2)が連結された目地に隙間等が発生し、そこから将来水漏れが発生するおそれがある。そこで、通路12の管理者は、通路12の定期点検等で目地異常部18を発見すると、目地異常部18の変位を監視する必要がある。
【0005】
従来、構造物の変位を測定するための装置又は治具として、特許文献1に開示されているように、一端に標点を有する一対の測定尺と、各測定尺の他端をコンクリート構造物の表面に支持固定する一対の支持装置とで構成された長さ変化測定装置があった。各測定尺は、コンクリート構造物の長さ測定方向に配され、一対の標点を互いに近接させた状態で支持固定される。そして、一対の標点(P1点、P2点)の離間距離を、マイクロメータ等を用いて計測することによって、コンクリート構造物の変位を測定する。
【0006】
また、特許文献2に開示されているように、右方尺部と左方尺部とで構成されたコンクリート構造物のひび割れ挙動安定度測定器があった。右方尺部は、コンクリート構造物の表面に軸支される右方基部と、右方基部から左方に向けて突設され、表面に目盛りが付され裏面に蟻溝が形成された副尺体とを有し、左方尺部は、コンクリート構造物の表面に軸支される左方基部と、左方基部から右方に向けて突設された蟻溝用突条と、左方基部から右方に向けて突設され表面に目盛りが付され主尺体とを有している。右方尺部と左方尺部は、蟻溝と蟻溝用突条とを摺動自在に嵌合させた状態で、右方基部が右方脚部を介してコンクリート構造物の表面(P1点)に軸着され、左方基部が左方脚部を介してコンクリート構造物の表面(P2点)に軸着される。また、右方脚部及び左方脚部には、右方尺部と左方尺部の回転角度を表示する目盛りが付されている。このひび割れ挙動安定度測定器によれば、P1点とP2点の離間距離及び離間している角度を各部の目盛りから読み取ることによって、コンクリート構造物の変位を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−246108号公報
【特許文献2】実開平6−22903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の長さ変化測定装置の場合、P1点とP2点の間の直線距離の変化は測定できるが、角度の変化を測定することは考慮されていない。
【0009】
特許文献2のひび割れ挙動安定度測定器の場合、P1点とP2点の間の直線距離及び角度の2次元的な変化は測定できるが、3次元的な変化は測定することができない。また、このひび割れ挙動安定度測定器は、コンクリート構造物が3次元的に変位することが想定されておらず、3次元的に変位すると軸着された部分が破損する可能性がある構造なので、用途がかなり限定される。
【0010】
このように、特許文献1,2の測定装置又は測定器は、使用上の制約が多く、構造物の挙動を簡単且つ的確に把握することが難しいものであった。
【0011】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、ノギス等を使用して構造物の変位を容易かつ的確に測定することができ、シンプルな構造の変位測定用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第一の構造物の近傍に設置された第二の構造物の、前記第一の構造物に対する変位を測定するための第一及び第二治具が設けられ、前記第一治具は、前記第一の構造物の表面の第一基準面に対して交差する方向に配置された第一縦起立板と、前記第一縦起立板に対して直角方向に配置された第一横起立板とが設けられ、前記第二治具は、前記第二の構造物の表面の、前記第一基準面とほぼ面一な第二基準面に対して交差する方向に配置された第二縦起立板と、前記第二縦起立板に対して直角方向に配置された第二横起立板とが設けられ、前記第一及び第二治具は、前記第一及び第二の構造物に取り付けられた状態で、前記第一縦起立板と前記第二縦起立板とが互いに対向し、前記第一横起立板と前記第二横起立板とが互いに対向する変位測定用治具である。
【0013】
前記第一治具は、前記第一基準面に当接させて固定される第一基板と、前記第一基板に対して交差する方向に配置された前記第一縦起立板と、前記第一基板に対して交差する方向であって、前記第一縦起立板に対して直角方向に配置された前記第一横起立板とが一体に設けられ、前記第二治具は、前記第一基準面とほぼ面一な前記第二基準面に当接させて固定される第二基板と、前記第二基板に対して交差する方向に配置された前記第二縦起立板と、前記第二基板に交差する方向であって、前記第二縦起立板に対して直角方向に配置された前記第二横起立板とが一体に設けられているものである。
【0014】
前記第一治具が前記第一基準面に取り付けられた状態で、前記第一基板の一部が前記第二基準面に対向し、前記第一基板の前記第二基準面に対向する部分に、前記第一基板と前記第二基準面との距離を、ノギスのデプスバー等を用いて測定するための第一透孔が設けられている。この場合、前記第一透孔は、互いに離れた位置に複数設けられていることが好ましい。また、前記第一及び第二治具は、それぞれ、断面L字状の複数のアングル材を組み合わせて一体に形成されていることが好ましい。
【0015】
さらに、少なくとも前記第一構造物と第二構造物のうちの一方の近傍に位置した第三の構造物に対する、前記第一構造物又は第二構造物の変位を測定するための第三治具が設けられ、前記第三治具は、前記第三の構造物の表面の第三基準面に対して交差する方向に配置された第三起立板が設けられ、前記第三基準面に取り付けられた状態で、前記第三起立板の、前記第一又は第二の構造物に対向する部分に、前記第三起立板と前記第一又は第二の構造物との距離を、ノギスのデプスバー等を用いて測定するための第三透孔が設けられている構成にしてもよい。この場合、前記第三透孔は、互いに離れた位置に複数設けられていることが好ましい。また、前記第三基板及び前記第三起立板は、断面L字状のアングル材により設けられていることが好ましい。
【0016】
変位測定用治具は、互いに近接する構造物の変位を測定するための治具であって、一方の構造物の基準面に対して交差する方向に起立板が設けられ、前記一方の構造物に設けられた前記起立板の一部が、他方の構造物の基準面に対向し、前記他方の構造物の基準面に対向する前記起立板に、前記起立板と前記他方の構造物の基準面との距離を測定するための透孔が設けられているものでも良い
【0017】
前記透孔は、互いに離れた位置に複数設けられていることが好ましい。また、前記起立板は、断面L字状のアングル材により設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の変位測定用治具によれば、複数の構造物の相対的な変位量や傾き量を、一般的なノギス等を使用して、簡単かつ的確に測定することができる。また、第一、第二及び第三治具は、基板及び起立板から成るシンプルな構造であり、例えば、アングル材等を組み合わせることによって、安価に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の変位測定用治具の第一の実施形態が第一及び第二の構造物に設置された状態を示す正面図(a)、拡大正面図(b)である。
図2図1の変位測定用治具を構成する第一治具を示す斜視図(a)、第二治具を示す斜視図(b)である。
図3】第二構造物の、第一の構造物に対するX方向の変位を測定する際の測定点を示す拡大正面図(a)、Z方向の変位を測定する際の測定点を示す拡大正面図(b)
図4】第二構造物の、第一の構造物に対するY方向の変位を測定する際の測定点を示す平面図(a)、拡大平面図(b)である。
図5】本発明の変位測定用治具の第二の実施形態が第一、第二及び第三の構造物に設置された状態を示す正面図(a)、第三治具を示す斜視図(b)である。
図6】第二の構造物の、第三の構造物に対するY方向の変位を測定する際の測定点を示す平面図(a)、拡大平面図(b)である。
図7】本発明の変位測定用治具の第三の実施形態が第三の構造物に設置された状態を示す正面図(a)、この実施形態の変位測定用治具を示す斜視図(b)である。
図8】本発明の変位測定用治具をひび割れが発生したボックスカルバートに取り付けた状態を示す正面図である。
図9】ボックスカルバートにより形成された一般的な通路を示す斜視図(a)、特定のボックスカルバートがずれた様子を示す正面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の変位測定用治具の第一の実施形態について、図1図4に基づいて説明する。この実施形態の変位測定用治具10は、例えば、地中等に設けられたコンクリート製の道路や水路の通路12に設置される。
【0021】
通路12は、図9(a)に示したように、RCコンクリートやPCコンクリート等で形成された角筒状の複数のボックスカルバート14を、コンクリート基礎16上に設置し、連結することによって形成されている。この実施形態では、特定のボックスカルバート14が経年変化によりズレたり傾いたりして、隣り合うボックスカルバート14が連結された目地に目地異常部18を発見した場合を想定し、図1(a)、(b)に示すように、目地異常部18が発生したボックスカルバート14である第一及び第二の構造物14(1),14(2)の各側面(第一及び第二基準面20(1),20(2))に、変位測定用治具10を取り付け、目地異常部18の状態を監視するものとする。
【0022】
以下、変位測定用装置10の構成について説明する。なお、説明する中では、図1(a)、(b)における左右方向をX方向、前後方向(紙面と直角な方向)をY方向、上下方向をZ方向と称する。
【0023】
変位測定用治具10は、第一基準面20(1)に取り付けられた第一治具22(1)と、第二基準面20(2)に取り付けられた第二治具22(2)とで構成されている。
【0024】
第一治具22(1)は、図2(a)に示すように、略長方形の板であるベース板24と、断面L字状の長尺のアングル材26と、同様の断面を有した短尺のアングル材28とを一体に組み合わせることによって形成されている。
【0025】
ベース板24は、長手方向の両端部に、第一基準面20(1)に取り付けるための取り付け穴30a,30bが一対に設けられている。
【0026】
アングル材26は、互いに直角な2つの面26a,26bを有し、長さ方向がベース板24の長手方向とほぼ直角になるように配置され、一方の面26aの端部がベース板24の取り付け穴30aに近い位置に重ねられ、固定具32で固定されている。その結果、他方の面26bは、ベース板24に対してほぼ直角に起立する。また、面26aの、ベース板24から側方に突出している側の端部には、後述する第一透孔34が形成されている。
【0027】
アングル材28は、互いに直角な2つ面28a,28bを有し、長さ方向がベース板24の長手方向とほぼ平行になるように配置され、一方の面28aがベース板22の取り付け穴22bに近い位置に重ねられ、固定具32で固定されている。その結果、他方の面28bは、ベース板24に対してほぼ直角に起立する。
【0028】
ベース板24、アングル材26の面26a、及びアングル材28の面28aが一体になった部分は、第一治具22(1)の第一基板38となる。そして、図1(b)に示すように、第一基板38は、第一の構造物14(1)の目地異常部18に近い位置に配置され、ベース24の長手方向がZ方向と平行になるように第一基準面20(1)に当接させ、取り付け穴30a,30bに固定具36を通して固定される。このとき、アングル材26の第一透孔34を設けた部分は、目地異常部18を超えて側方に突出する。
【0029】
アングル材26の面26bは、第一治具22(1)の第一横起立板26bとなり、第一基板38に対して直角方向(Y方向)に起立する。さらに、アングル材28の面28bは、第一治具22(1)の第一縦起立板28bとなり、第一基板38に対して直角方向(Y方向)に起立するとともに、第一横起立板26bに対してほぼ直角方向に配置される。
【0030】
第二治具22(2)は、図2(b)に示すように、上記ベース板24とほぼ同じ外形のベース板40と、上記アングル材28とほぼ同外形のアングル材42,44とを一体に組み合わせることによって形成されている。
【0031】
ベース板40は、長手方向の両端部に、第二基準面20(2)に取り付けるための取り付け穴46a,46bが一対に設けられている。
【0032】
アングル材42は、互いに直角な2つの面42a,42bを有し、長さ方向がベース板40の長手方向とほぼ直角になるように配置され、一方の面42aがベース板40の取り付け穴46bに近い位置に重なっている。その結果、他方の面42bは、ベース板40に対してほぼ直角に起立する。
【0033】
アングル材44は、互いに直角な2つの面44a,44bを有し、長さ方向がベース板40の長手方向とほぼ平行になるように配置され、一方の面44aがアングル材42の面42aを介してベース板40に重ねられ、この状態で、固定具32により一体に固定されている。その結果、他方の面44bは、ベース板40に対してほぼ直角に起立する。
【0034】
ベース40、アングル材42の面42a、及びアングル材44の面44aが一体になった部分は、第二治具22(2)の第二基板48となる。そして、第二基板48は、図1(b)に示すように、第二の構造物14(2)の目地異常部18に近い位置に配置され、ベース板40の長手方向がZ方向と平行になるように第二基準面20(2)に当接させ、取り付け穴46a,46bに固定具36を通して固定される。
【0035】
アングル材42の面42bは、第二治具22(2)の第二横起立板42bとなり、第二基板48に対して直角方向(Y方向)に起立し、第一横起立板26bと所定の距離を空けて対向する。アングル材44の面44bは、第二治具22(2)の第二縦起立板44bとなり、第二基板48に対して直角方向(Y方向)に起立するとともに、第二横起立板42bに対してほぼ直角方向に配置され、第一縦起立板28bと所定の距離を空けて対向する。
【0036】
図1(b)に示す状態で、第一基板38の第一透孔34の部分は、ベース板40の取り付け穴46a寄りの部分に、所定の距離を空けて対向する。この離間距離を適切な値に調節したいときは、例えば、ベース板24又はベース板40の厚みを変更したりスペーサを挟んだりするとよい。
【0037】
また、第一基板38の第一透孔34の部分は、第二基板48を介して第二基準面20(2)に対向する。第一透孔34は、第一基板38と第二基準面20(2)との離間距離の変化を、ノギスNのデプスバーNdを用いて測定するための透孔である。したがって、第一透孔34の大きさは、内側にデプスバーNdを内側に挿通することができ、かつ本尺Nhの端面を孔の周縁部で係止できるよう設定されている。
【0038】
次に、変位測定用治具10を使用して、第二の構造物14(2)の、第一の構造物14(1)に対する変位を測定する方法について説明する。
【0039】
第二の構造物14(2)のX方向の変位量Δxは、図3(a)に示すように、第一縦起立板28b及び第二縦起立板44bの離間距離xを、ノギスNのジョウNzで測定し、前回の測定値との差を算出することによって検出することができる。第二の構造物14(2)のZ方向の変位量Δzは、図3(b)に示すように、第一横起立板26b及び第二横起立板42bの離間距離zを、ノギスNのジョウNzで測定し、前回の測定値との差を算出することによって検出する。
【0040】
また、図3(a)、(b)には示していないが、例えば、第一縦起立板28b及び第二縦起立板44bの異なる2箇所で変位量Δxを検出すれば、これに基づいて第二の構造物14(2)の傾き量を算出することができる。あるいは、第一横起立板26b及び第二横起立板42bの異なる2箇所の変位量Δzを検出すれば、これに基づいて第二の構造物14(2)の傾き量を算出することができる。
【0041】
さらに、第二の構造物14(2)のY方向の変位量Δyは、図4(a)、(b)に示すように、第一基板38(アングル材26の面26a)及び第二基板48(ベース板40)の離間距離yを、ノギスNのデプスバーNdを第一透孔34に挿入することによって測定し、前回の測定値との差を算出することによって検出する。
【0042】
また、図4(a)、(b)には示していないが、あらかじめアングル材26の面26aの複数箇所に第一透孔34を設けておき、複数箇所について変位量Δyを検出すれば、第二の構造物14(2)の傾き量を算出することができる。
【0043】
以上説明したように、変位測定用治具10によれば、第二の構造物14(2)の、第一の構造物14(1)に対する変位を、ノギスNを使用して簡単に測定できる。しかも、複数箇所の測定結果に基づいて適宜の演算処理を行うことにより、構造物の三次元的な変位量や傾き量(又は変位角度)を的確に検出することができる。また、特許文献2のひび割れ挙動安定度測定器の場合、構造物が想定外の方向に変位すると測定器が破損する可能性があるが、変位測定用治具10の場合、どの方向に変位しても、ほとんど問題にはならない。さらに、第一及び第二治具22(1),22(2)は、それぞれアングル材等を組み合わせたシンプルな構造なので、非常に安価に製作することができる。
【0044】
次に、本発明の変位測定用治具の第二の実施形態について、図5図6に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の変位測定用治具50は、上記と同様に、通路12を構成する2つのボックスカルバート14である第一及び第二の構造物14(1),14(2)のズレや傾きの進行を監視する際に使用される。
【0045】
変位測定用治具50は、図5(a)に示すように、第一の構造物14(1)の第一基準面20(1)に取り付けられた第一治具22(1)と、第二の構造物14(2)の第二基準面20(2)に取り付けられた第二治具22(2)とを備え、さらに、第三の構造物16(コンクリート基礎16)の表面である第三基準面20(3)に取り付けられた第三治具22(3)を備えている。第一及び第二治具22(1),22(2)は上記と同様のものなので、以下、第三治具22(3)について詳しく説明する。
【0046】
第三治具22(3)は、図5(b)に示すように、断面L字状のアングル材52により形成され、互いに直角な2つの面52a,52bを有している。一方の面52aは、第三治具22(3)の第三基板52aとなる部分で、長さ方向の両端部に、第三基準面20(3)に取り付けるための取り付け穴54a,54bが一対に設けられている。また、他方の面52bは、第三治具22(3)の第三起立板52bとなる部分で、長さ方向に所定の間隔を空けて、4つの第三透孔56(1)〜56(4)が設けられている。
【0047】
第三基板52aは、図6(a)に示すように、第一及び第二の構造物14(1),14(2)の目地異常部18に近い位置に配置され、長さ方向がX方向と平行になるように第三基準面20(3)に当接させ、取り付け穴54a,54bに固定具36を通して固定される。第三起立板52bは、第三基板52aに対して直角方向(Z方向)に起立し、第三透孔56(1),56(2)を設けた部分が第一基準面20(1)に所定の距離を空けて対向し、第三透孔56(3),56(4)を設けた部分が第二基準面20(2)に所定の距離を空けて対向する。
【0048】
第三透孔56(1),56(2)は、第三基板52aと第一基準面20(1)との離間距離の変化を、ノギスNのデプスバーNdを用いて測定するための透孔である。また、第三透孔56(3),56(4)は、第三基板52aと第二基準面20(2)との離間距離の変化を、ノギスNのデプスバーNdを用いて測定するための透孔である。したがって、第三透孔56(1)〜56(4)の各大きさは、内側にデプスバーNdを内側に挿通することができ、かつ本尺Nhの端面を各孔の周縁部で係止できるよう設定されている。
【0049】
次に、変位測定用治具50の使用方法について説明する。第一及び第二治具22(1),22(2)は、第二の構造物14(2)の、第一の構造物14(1)に対する変位を測定するために使用され、その測定方法は上記と同様である。新たに設けられた第三治具22(3)は、第一及び第二の構造物14(1),14(2)の、第三の構造物16に対するY方向の変位を測定するために使用される。
【0050】
第二の構造物14(2)の、第三の構造物16に対するY方向の変位量Δy2は、図6(b)に示すように、第三起立板52b及び第二基準面20(2)の離間距離y2を、ノギスNのデプスバーNdを第三透孔56(3),56(4)に挿入することによって測定し、前回の測定値との差を算出することによって検出する。また、異なる2箇所の変位量Δy2を検出することによって、第二の構造物14(2)の傾き量を算出することができる。
【0051】
同様に、第一の構造物14(1)の、第三の構造物16に対するY方向の変位量Δy1は、第三起立板52b及び第一基準面20(1)の離間距離y1を、ノギスNのデプスバーNdを第三透孔56(1),56(2)に挿入することによって測定し、前回の測定値との差を算出することによって検出する。また、異なる2箇所の変位量Δy1を検出することによって、第一の構造物14(2)の傾き量を算出することができる。
【0052】
以上説明したように、変位測定用治具50は、変位測定用治具10の構成に第三治具22(3)を追加したものである。したがって、変位測定用治具10と同様の優れた効果を得ることができ、さらに、第三治具22(3)を使用して、第一及び第二の構造物14(1),14(2)の、第三の構造物16に対するY方向の変位についても簡単かつ的確に測定することができる。
【0053】
次に、本発明の変位測定用治具の第三の実施形態について、図7に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明する。この実施形態の変位測定用治具58は、図7(a)に示すように、複数のボックスカルバート14の中の1つである第四の構造物14(4)の、第三の構造物16(コンクリート基礎16)に対する変位を検出するために使用され、第三の構造物16の表面である第三基準面20(3)に取り付けられる。
【0054】
変位測定用治具58は、図7(b)に示すように、長さ方向と直角な断面がL字状に形成されたアングル材52により形成され、互いに直角な2つの面52a,52bを有している。一方の面52aは、変位測定用治具58の第三基板52aとなる部分で、長さ方向の両端部に、第三基準面20(3)に取り付けるための取り付け穴54a,54bが一対に設けられている。また、他方の面52bは、第三治具22(3)の第三起立板52bとなる部分で、長さ方向に所定の間隔を空けて、2つの第三透孔56(1)、56(2)が設けられている。
【0055】
第三基板52aは、第四の構造物14(4)の側面の第四基準面20(4)に近い位置に配置され、長さ方向がX方向と平行になるように第三基準面20(3)に当接させ、取り付け穴54a,54bに固定具36を通して固定される。第三起立板52bは、第三基板52aに対して直角方向(Z方向)に起立し、第四基準面20(4)に所定の距離を空けて対向する。
【0056】
第三透孔56(1),56(2)は、第三基板52aと第四基準面20(4)との離間距離の変化を、ノギスNのデプスバーNdを用いて測定するための透孔である。したがって、第三透孔56(1),56(2)の各大きさは、内側にデプスバーNdを内側に挿通することができ、本尺Nhの端面を各孔の周縁部で係止できるよう設定されている。
【0057】
変位測定用治具58の使用方法は、上記の第三治具22(3)と同様である。この変位測定用治具58は、例えば、第四の構造物14(4)がY方向にしか変位しないと想定される場合に好適な治具であり、第四の構造物14(4)の、第三の構造物16に対するY方向の変位を簡単かつ的確に測定することができる。
【0058】
なお、本発明の変位測定用治具は、上記実施形態に限定されるものではない。上記の第一及び第二治具22(1),22(2)の構成及び使用方法の説明は、各治具が第一及び第二の構造物14(1),14(2)の側面に取り付けるケースを想定しているが、第一及び第二の構造物14(1),14(2)の天井面や床面に取り付けて使用してもよい。その他、地面に対して傾斜した面に取り付けて使用することも可能である。
【0059】
さらに、測定対象の構造物表面の状態が良好な場合には、第一基板、第二基板、第三基板を設けることなく、測定対象の表面に、第一縦起立板、第一横起立板、第二縦起立板、第二横起立板、第三起立板を直接取り付けるものでも良い。第一乃至第三基板を設ける場合は、アングル材を使用するのが好ましいが、アングル材以外の部材を使用してもよい。また、各板の素材は特に限定されないが、一定の強度と耐候性を備えた金属板や硬質樹脂板等が好適である。
【0060】
変位量測定用治具10は、図8に示すように、1つのボックスカルバート14の側面等に発生したひび割れの進行を監視する際にも使用することができる。この場合、例えば、ひび割れ部60の下側の部分を第一の構造物62(1)、上側の部分を第二の構造物62(2)とし、第一の構造物62(1)に第一治具22(1)を取り付け、第二の構造物62(2)に第二治具22(2)を取り付けることによって、上記と同様の測定を行うことができる。
【0061】
さらに、変位量測定用治具が使用される第一乃至第四の構造物は、通路を構成するボックスカルバートやコンクリート基礎以外の構造物でもよく、トンネル覆工等のコンクリートを現場打ちして施工した構造物でも良く、その種類は特に限定されない。例えば、橋梁のコンクリート脚と鋼床版の相対的なズレの監視や、トンネル内のコンクリート壁に発生したひび割れ部の監視等、様々なインフラ構造物の変位測定用に使用することができる。
【符号の説明】
【0062】
10,50,58 変位測定用治具
14 ボックスカルバート
14(1),62(1) 第一の構造物(ボックスカルバート)
14(2),62(2) 第二の構造物(ボックスカルバート)
14(4) 第四の構造物(ボックスカルバート)
16 第三の構造物(コンクリート基礎)
20(1) 第一基準面
20(2) 第二基準面
20(3) 第三基準面
20(4) 第四基準面
22(1) 第一治具
22(2) 第二治具
22(3) 第三治具
26,28,42,44,52 アングル材
26b 第一横起立板
28b 第一縦起立板
34 第一透孔
38 第一基板
42b 第二横起立板
44b 第二縦起立板
48 第二基板
52a 第三基板
52b 第三起立板
56(1),56(2),56(3),56(4) 第三透孔
N ノギス
Nd デプスバー
図1
図2
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