(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記燃料タンク室は、前記第二機関室に対し、前記船体の船首尾方向における船首側に配置されている、請求項1から3の何れか一項に記載の複数の燃料ラインを有する船舶。
前記第一燃料ラインは、前記第一燃料ラインが前記隔壁を貫通する位置を挟んだ両側に、開閉弁をそれぞれ備える、請求項1から4の何れか一項に記載の複数の燃料ラインを有する船舶。
前記第二燃料ラインは、前記船体の船幅方向又は上下方向で前記第二機関室に隣接する区画を通過するように配置されている、請求項1から5の何れか一項に記載の複数の燃料ラインを有する船舶。
前記第二燃料ラインは、前記燃料タンク室、前記第一機関室、及び前記第二機関室の下方に形成された船底区画を通過するように配置されている、請求項6に記載の複数の燃料ラインを有する船舶。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記船舶にあっては、自力航行性を確保するため、機関室を複数備える構成が検討されている。各機関室は、船舶の推進力を得るのに必要な主機や、推進器を駆動する電力を発生する発電機等の動力源を収容する。複数の機関室は、防火性能及び水密性を有した隔壁で区画され、いずれか一つの機関室で火災や浸水が発生した場合に、火災や浸水が発生していない機関室の動力源を作動させることで、自力航行の継続を可能としている。
【0006】
このように複数の機関室を備える構成においては、火災や浸水が発生した状態であっても、複数の機関室のうちの少なくとも一つの機関室の動力源に燃料を供給する必要がある。そのため、例えば、船首尾方向に前後並んで配置された複数の機関室に対し、船首側と船尾側とにそれぞれ燃料タンクを設けている場合がある。
【0007】
しかしながら、船首尾方向に前後並んで配置された複数の機関室に対し、船首側と船尾側とにそれぞれ燃料タンクを設ける構成では、例えば火災や浸水の発生によって船首側の燃料タンクが使用できない場合に、燃料タンクに蓄えた燃料のみで自力で寄港するためには、船尾側の燃料タンク室は、十分な量の燃料を蓄える必要がある。そのため、船尾側の燃料タンク室に収容される燃料タンクが大型化してしまう。
しかし、船体の船尾部分には、推進器の設置スペースを確保する必要や、船体が船首側から船尾側に向かって窄まる形状であることから、大型の燃料タンクを装備するのが困難な場合がある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、火災や浸水の発生時においても、自力航行を行えるとともに、船体内のスペースを有効利用することができる複数の燃料ラインを有する船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
この発明の第一態様によれば、複数の燃料ラインを有する船舶は、船体と、前記船体内に設けられ、隔壁によって区画形成され、燃料タンクが収容された燃料タンク室と、前記船体内に設けられ、前記隔壁によって区画形成され、前記燃料タンクから供給された燃料を燃焼させる第一燃焼機関が収容された第一機関室と、前記船体内で前記燃料タンク室と前記第一機関室との間に設けられ、前記隔壁によって区画形成され、前記燃料タンクから供給された燃料を燃焼させる第二燃焼機関が収容された第二機関室と、前記第二機関室を通して、前記燃料タンクと前記第一燃焼機関及び前記第二燃焼機関とを接続する第一燃料ラインと、前記燃料タンクと前記第一燃焼機関とを少なくとも接続し、前記第一燃料ラインが通る前記第二機関室とは異なる区画を通して配置された第二燃料ラインと、前記第一燃料ライン又は前記第二燃料ラインに選択的に前記燃料タンクから前記燃料を送り込むポンプ機構と、を備える。
【0009】
このように、燃料タンク室と第一機関室との間で、第一燃料ラインと第二燃料ラインとを異なる区画に通すことで、第一燃料ラインが通過する第二機関室で火災や浸水が発生しても、第二燃料ラインを通して第一機関室に設けられた第一燃焼機関に燃料を供給できる。これによって、船舶の自力航行を継続することができる。
また、第一機関室に対して第二機関室の反対側に燃料タンクを必ずしも備える必要がなくなる。
【0010】
この発明の第二態様によれば、複数の燃料ラインを有する船舶は、第一態様において、前記ポンプ機構は、前記第一燃料ラインに設けられた第一ポンプと、前記第二燃料ラインに設けられた第二ポンプと、を備え、前記第一ポンプと前記第二ポンプとは、異なる区画に配置されていてもよい。
このように構成することで、第一ポンプが設けられた区画で火災や浸水が発生した場合、第二ポンプは影響を受けない。したがって、第二燃料ラインを通して第一燃焼機関に燃料を供給できる。
【0011】
この発明の第三態様によれば、複数の燃料ラインを有する船舶は、第一又は第二態様において、前記燃料タンク室は、前記隔壁によって区画形成されて、それぞれに燃料タンクが収容された、第一燃料タンク室と第二燃料タンク室とを備え、前記第一燃料ラインは、前記第一燃料タンク室と前記第二燃料タンク室とのうち、前記第一燃料タンク室に設けられた前記燃料タンクに接続され、前記第二燃料ラインは、前記第二燃料タンク室に設けられた前記燃料タンクに接続されていてもよい。
このように、第一燃料タンク室と第二燃料タンク室とを別々に設けることで、第一燃料タンク室又は第二燃料タンク室で火災や浸水が発生しても、燃料供給が途絶えることがなく、自力航行を継続することができる。
【0012】
この発明の第四態様によれば、複数の燃料ラインを有する船舶は、第一から第三態様の何れか一つの態様において、前記燃料タンク室は、前記第二機関室に対し、前記船体の船首尾方向における船首側に配置されていてもよい。
このように、燃料タンク室を第一機関室及び第二機関室の船首尾方向における船首側に配置することで、第一機関室及び第二機関室の船首尾方向における船尾側に燃料タンク室を設ける必要がなくなる。燃料タンク室を、スペースの制限を受けやすい船尾側に設ける場合と比較して、より大きな燃料タンクを設置することができる。
また、船尾側に燃料タンク室を設けないので、船体の船首尾方向の重心が船尾側に偏ることを抑制できる。これによって、船体の船首尾方向のバランスをとるために、船首側にバラスト等を設ける必要が無く、船体の重量増加を抑えることができる。これによって、船舶の燃費性能の向上に寄与できる。
さらに、船尾側に燃料タンク室を設けないので、燃料タンク室と、第一機関室及び第二機関室とを、船尾側に寄せてレイアウトすることができる。これにより、船体内の空間の有効利用を図ることが可能となる。
【0013】
この発明の第五態様によれば、複数の燃料ラインを有する船舶は、第一から第四態様の何れか一つの態様において、前記第一燃料ラインは、前記第一燃料ラインが前記隔壁を貫通する位置を挟んだ両側に、開閉弁をそれぞれ備えてもよい。
このように構成することで、火災が発生した区画に隣接する区画で開閉弁を閉じることで、火災が発生した区画に第一燃料ラインを通して燃料が通過することを防ぐことができる。
【0014】
この発明の第六態様によれば、複数の燃料ラインを有する船舶は、第一から第五態様の何れか一つの態様において、前記第二燃料ラインは、前記船体の船幅方向又は上下方向で前記第二機関室に隣接する区画を通過するように配置されていてもよい。
このように構成することで、第二燃料ラインが遠回りすることを抑え、第二燃料ラインの長さを最小限とすることができる。
【0015】
この発明の第七態様によれば、複数の燃料ラインを有する船舶は、第六態様において、前記第二燃料ラインは、前記燃料タンク室、前記第一機関室、及び前記第二機関室の下方に形成された船底区画を通過するように配置されていてもよい。
このように、第二燃料ラインを船底区画に通すことで、第二燃料ラインによって船体内のカーゴスペースや各種機器等を設置するスペースを損なうことを抑える。これによって、船体内のスペースの有効利用を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
上記複数の燃料ラインを有する船舶によれば、火災や浸水の発生時においても、自力航行を行えるとともに、船体内のスペースを有効利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態における複数の燃料ラインを有する船舶を図面に基づき説明する。
(第一実施形態)
図1は、この実施形態の船舶の側面図である。
図2は、この発明の第一実施形態を示す図であり、上記船舶の最小構成を示すブロック図である。
図1、
図2に示すように、船舶1は、船体2と、船尾側機関室(第一機関室)101と、船首側機関室(第二機関室)102と、燃料タンク室103と、メイン燃料ライン(第一燃料ライン)51と、サブ燃料ライン(第二燃料ライン)52と、ポンプ機構60と、を備えている。ここで、船舶1は、客船を例示しているが、この発明を適用可能な船舶の船種は特定のものに限られず、例えばフェリー、RORO船(Roll−on/Roll−off船)、PCTC(Pure Car & Truck Carrier)等、種々の船種を採用できる。
【0019】
図1に示すように、船体2は、船幅方向両側に設けられた一対の舷側2sと、船底2bと、を有する。船体2は、船底2bの上方に間隔をあけて設けられた乾舷甲板3を備える。船体2は、船底2bと乾舷甲板3との間に設けられて二重底を形成する甲板4をさらに備えている。
【0020】
船体2は、船尾2Aの船底2bの下方にスクリュー5を備えている。このスクリュー5は、船体2内に設けられた推進器6によって回転駆動される。この実施形態における船舶1は、推進器6として、電動機Mを用いている。
【0021】
船尾側機関室101、船首側機関室102は、船体2内の甲板4上に設けられている。船尾側機関室101、船首側機関室102、および燃料タンク室103は、船首尾方向FAの船尾2A側から船首2F側に向かって順に配置されている。
図2に示すように、これら船首側機関室102、船尾側機関室101、燃料タンク室103は、それぞれ、船首尾方向FAに間隔をあけて設けられた横置隔壁(隔壁)7(
図2参照)によって、互いに区画されている。
【0022】
図2に示すように、船尾側機関室101は、その内部に船尾側発電ユニット(第一燃焼機関)11を収容している。船尾側発電ユニット11は、ガスタービンやディーゼルエンジン等の内燃機関部(図示無し)と、発電機部(図示無し)と、を主に備える。船尾側発電ユニット11は、後述する燃料タンク31から供給された燃料を内燃機関部で燃焼させて発電機部を駆動することで、電力を推進器6(電動機M)や船内各部に出力する。
【0023】
船首側機関室102は、船体2内で燃料タンク室103と船尾側機関室101との間に設けられている。船首側機関室102は、その内部に船首側発電ユニット(第二燃焼機関)21を収容している。船首側発電ユニット21は、ガスタービンやディーゼルエンジン等の内燃機関部(図示無し)と、発電機部(図示無し)と、を主に備える。船首側発電ユニット21は、内燃機関部で燃料タンク31から供給された燃料を燃焼させて発電機部を駆動することで、電力を推進器6(電動機M)や船内各部に出力する。
【0024】
燃料タンク室103は、船尾側機関室101及び船首側機関室102に対し、船体2の船首尾方向FAにおける船首2F側に配置されている。燃料タンク室103は、その内部に燃料タンク31を収容している。燃料タンク31は、船尾側発電ユニット11、船首側発電ユニット21で燃焼させる燃料を貯留する。
【0025】
メイン燃料ライン51は、燃料タンク31に貯留された燃料を、船尾側発電ユニット11及び船首側発電ユニット21に供給する。メイン燃料ライン51は、燃料タンク31と、船尾側発電ユニット11及び船首側発電ユニット21とを接続するよう設けられている。このメイン燃料ライン51は、その第一端部51aが燃料タンク室103内の燃料タンク31に接続されている。メイン燃料ライン51は、その第二端部51bが船尾側機関室101内の船尾側発電ユニット11に接続されている。さらに、メイン燃料ライン51は、燃料タンク室103と船首側機関室102との間の横置隔壁7A、および船首側機関室102と船尾側機関室101との間の横置隔壁7Bを貫通している。これにより、メイン燃料ライン51は、第一端部51aと第二端部51bとの間の中間部51cが、船首側機関室102内を通っている。メイン燃料ライン51は、船首側機関室102内で中間部51cから分岐して設けられた分岐管51dを介して、船首側発電ユニット21に接続されている。
【0026】
サブ燃料ライン52は、燃料タンク31に貯留された燃料を、船尾側発電ユニット11に供給する。サブ燃料ライン52は、その第一端部52aが燃料タンク室103内でメイン燃料ライン51に接続されている。サブ燃料ライン52は、その第二端部52bが船尾側機関室101内で船尾側発電ユニット11に接続されている。
このサブ燃料ライン52は、第一端部52aと第二端部52bとの間の中間部52cが、メイン燃料ライン51が通る船尾側機関室101とは異なる区画105を通して配置されている。この区画105は、例えば、船首側機関室102、船尾側機関室101、燃料タンク室103とは、防火性能及び水密性を有した隔壁18で隔てられている。この区画105は、船首側機関室102に対し、船幅方向又は上下方向において隣接している。
【0027】
ポンプ機構60は、ポンプ61と、開閉弁63,64と、を備えている。
ポンプ61は、燃料タンク31内の燃料を圧送する。開閉弁63,64は、ポンプ61の下流側で、メイン燃料ライン51と、サブ燃料ライン52の第一端部52aとに設けられている。これらポンプ61及び開閉弁63,64は、燃料タンク31とともに燃料タンク室103内に配置されている。
このようなポンプ機構60は、ポンプ61を作動させ、開閉弁63又は開閉弁64を開くことで、メイン燃料ライン51又はサブ燃料ライン52に選択的に燃料タンク31から燃料を送り込むことが可能となっている。
【0028】
このような船舶1は、通常航行時、サブ燃料ライン52の開閉弁64を閉じておき、ポンプ61により、燃料タンク31に貯留された燃料を、メイン燃料ライン51を通して、船首側機関室102内の船首側発電ユニット21と、船尾側機関室101内の船尾側発電ユニット11とにそれぞれ供給する。
また、船舶1においては、船首側機関室102で火災や浸水が発生した場合、メイン燃料ライン51の開閉弁63を閉じ、サブ燃料ライン52の開閉弁64を開く。すると、燃料タンク31に貯留された燃料が、ポンプ61により、サブ燃料ライン52を通して船尾側機関室101内の船尾側発電ユニット11に供給される。
【0029】
上述した通り、第一実施形態の船舶1は、燃料タンク室103と船尾側機関室101との間で、サブ燃料ライン52を、メイン燃料ライン51が通過する船首側機関室102とは異なる区画105に通すようにした。これにより、メイン燃料ライン51が通過する船首側機関室102で火災や浸水が発生しても、サブ燃料ライン52を通して船尾側機関室101に設けられた船尾側発電ユニット11に燃料を供給できる。したがって、船舶1の自力航行を継続することができる。
また、船尾側機関室101に対して船首側機関室102の反対側、つまり船尾部に燃料タンク31を必ずしも備える必要がなくなる。したがって、船体2内のスペースを有効利用することが可能となる。
【0030】
さらに、燃料タンク室103を船尾側機関室101及び船首側機関室102に対して船首2F側に配置することで、船尾2A側に燃料タンク室103を設ける必要がなくなる。したがって、船舶1のように機関室が船首尾方向FAの中央よりも船尾2A側に配置されている場合に、燃料タンク室103をスペースの制限を受けやすい、船尾側機関室101よりも船尾2A側に設ける場合と比較して、より大きな燃料タンク31を設置することができる。
また、船尾側機関室101よりも船尾2A側に燃料タンク室103を設けないので、船体2の船首尾方向FAの重心が船尾2A側に偏ることを抑制できる。これによって、船体2の船首尾方向FAのバランスをとるために、船首2F側にバラスト等を設ける必要が無く、船体2の重量増加を抑えることができる。これによって、船舶1の燃費性能の向上に寄与できる。
さらに、船尾側機関室101よりも船尾2A側に燃料タンク室103を設けないので、燃料タンク室103と、船尾側機関室101及び船首側機関室102とを、船尾2A側に寄せてレイアウトすることもできる。これにより、船体2内の燃料タンク室103よりも船首2F側の空間を、より大きなカーゴスペース等として有効利用することが可能となる。
【0031】
サブ燃料ライン52は、船首側機関室102の船幅方向又は上下方向に隣接する区画105を通過する。このように構成することで、サブ燃料ライン52が遠回りすることを抑え、サブ燃料ライン52の長さを最小限とすることができる。
【0032】
(第一実施形態の変形例)
なお、上記第一実施形態において、船首側機関室102の船首2F側に燃料タンク室103を配置する場合について説明したが、燃料タンク室103は、船尾側機関室101の船尾2A側に配置してもよい。
【0033】
(第二実施形態)
次に、この発明に係る船舶第二実施形態について説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態とポンプ機構の構成のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0034】
図3は、この発明の第二実施形態における船舶の構成を示すブロック図である。
この
図3に示すように、上記第一実施形態と同様、船舶1は、船体2と、船尾側機関室101と、船首側機関室102と、燃料タンク室103と、メイン燃料ライン51と、サブ燃料ライン(第二燃料ライン)52Bと、ポンプ機構60Bと、を備える。
【0035】
船尾側機関室101は、船尾側発電ユニット11を収容している。船首側機関室102は、船首側発電ユニット21を収容している。燃料タンク室103は、燃料タンク31を収容している。
【0036】
メイン燃料ライン51は、燃料タンク31と、船尾側発電ユニット11及び船首側発電ユニット21とを接続する。このメイン燃料ライン51は、第一端部51aと第二端部51bとの間の中間部51cが、船首側機関室102内を通っている。
【0037】
サブ燃料ライン52Bは、燃料タンク31に貯留された燃料を、船尾側発電ユニット11に供給する。サブ燃料ライン52Bは、その第一端部52aが燃料タンク31に接続されている。サブ燃料ライン52Bは、その第二端部52bが船尾側発電ユニット11に接続されている。
このサブ燃料ライン52Bは、第一端部52aと第二端部52bとの間の中間部52cが、メイン燃料ライン51が通る船尾側機関室101とは異なる区画104、区画105を通るようにして配置されている。区画104は、燃料タンク室103に、横置隔壁7を介して隣接している。区画105は、例えば、船首側機関室102、船尾側機関室101、燃料タンク室103とは、防火性能及び水密性を有した隔壁18で区画されている。サブ燃料ライン52Bは、燃料タンク31に接続された第一端部52aから、区画104及び区画105を通り、船尾側機関室101へと至り、第二端部52bが船尾側発電ユニット11に接続されている。
【0038】
ポンプ機構60Bは、ポンプ(第一ポンプ)61及びポンプ(第二ポンプ)62と、開閉弁63B,64Bと、を備えている。
ポンプ61,62は、燃料タンク31内の燃料を圧送する。ポンプ61は、メイン燃料ライン51の第一端部51aに設けられている。このポンプ61は、燃料タンク室103とは異なる区画109内に配置されている。区画109は、燃料タンク室103に、横置隔壁7を介して隣接している。ポンプ62は、サブ燃料ライン52Bの第一端部52aに設けられている。さらに、このポンプ62は、区画104内に配置されている。
開閉弁63Bは、ポンプ61の下流側で、メイン燃料ライン51の第一端部51aに設けられている。開閉弁64Bは、ポンプ62の下流側で、サブ燃料ライン52の第一端部52aに設けられている。この開閉弁64Bは、区画104内に配置されている。
このようなポンプ機構60Bは、ポンプ61,62の作動と、開閉弁63B及び開閉弁64Bの開閉を切り換えることで、燃料タンク31からメイン燃料ライン51又はサブ燃料ライン52Bに選択的に燃料を送り込むことが可能となっている。
【0039】
このような船舶1は、通常航行時、サブ燃料ライン52Bのポンプ62を停止させるとともに開閉弁64Bを閉じておき、メイン燃料ライン51のポンプ61を作動させるとともに開閉弁63Bを開く。これにより、燃料タンク31に貯留された燃料は、メイン燃料ライン51を通して、船首側機関室102内の船首側発電ユニット21と、船尾側機関室101内の船尾側発電ユニット11とに供給される。
また、船舶1においては、船首側機関室102で火災や浸水が発生した場合、メイン燃料ライン51のポンプ61を停止させるとともに開閉弁63Bを閉じ、サブ燃料ライン52Bのポンプ62を作動させるとともに開閉弁64Bを開く。すると、燃料タンク31に貯留された燃料が、ポンプ62により、サブ燃料ライン52Bを通して、船尾側機関室101内の船尾側発電ユニット11に供給される。
【0040】
上述した第二実施形態の船舶1によれば、ポンプ機構60Bは、メイン燃料ライン51及びサブ燃料ライン52Bのそれぞれに設けられたポンプ61,62を備え、メイン燃料ライン51のポンプ61とサブ燃料ライン52Bのポンプ62とは、異なる区画104,105に配置されている。
このように構成することで、燃料タンク室103やメイン燃料ライン51のポンプ61が設けられた区画109で火災や浸水が発生した場合、サブ燃料ライン52Bのポンプ62は影響を受けない。したがって、サブ燃料ライン52Bを通して船尾側発電ユニット11に燃料を供給できる。
【0041】
また、上記第一実施形態と同様、サブ燃料ライン52Bを、メイン燃料ライン51が通過する船首側機関室102とは異なる区画104,105に通すようにしたので、メイン燃料ライン51が通過する船首側機関室102で火災や浸水が発生しても、船舶1の自力航行を継続することができる。
【0042】
(第三実施形態)
次に、この発明に係る船舶の第三実施形態について説明する。以下に説明する第三実施形態においては、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
図4は、この発明の第三実施形態における船舶の構成を示すブロック図である。
図5は、上記第三実施形態の船舶において、メイン燃料ラインを通して燃料供給を行っている状態を示す図である。
図6は、上記第三実施形態の船舶において、サブ燃料ラインを通して燃料供給を行っている状態を示す図である。
図4に示すように、船舶1は、船体2と、船尾側機関室(第一機関室)101Cと、船首側機関室(第二機関室)102Cと、船首側第一燃料タンク室(第一燃料タンク室)103Cと、船首側第二燃料タンク室(第二燃料タンク室)106と、船尾側燃料タンク室107と、メイン燃料ライン(第一燃料ライン)51Cと、サブ燃料ライン(第二燃料ライン)52Cと、ポンプ機構60Cと、を備えている。
【0043】
船尾側燃料タンク室107と、船尾側機関室101Cと、船首側機関室102Cと、船首側第一燃料タンク室103Cと、船首側第二燃料タンク室106とは、船体2内の甲板4上に、船首尾方向FAにおける船尾2A側から船首2F側に向かって順に配置されている。
これら船尾側燃料タンク室107と、船尾側機関室101Cと、船首側機関室102Cと、船首側第一燃料タンク室103Cと、船首側第二燃料タンク室106とは、それぞれ、船首尾方向FAに間隔をあけて設けられた横置隔壁7によって、互いに区画されている。
【0044】
船尾側機関室101Cは、その内部が、サブ隔壁7sによって船首尾方向FAに区画された2つの部屋である第一区画101Caと第二区画101Cbとを有している。サブ隔壁7sは、横置隔壁7と同等の防火性能及び水密性を有している。
第一区画101Caは、その内部に船尾側発電ユニット11を収容している。
第二区画101Cbは、燃料タンク31から供給された燃料を一時的に貯留するセットタンク12及びサービスタンク13を収容している。燃料タンク31から供給された燃料は、セットタンク12に送り込まれた後、サービスタンク13を介して船尾側発電ユニット11に供給される。
【0045】
船首側機関室102Cは、船体2内で船首側第一燃料タンク室103Cと船尾側機関室101Cとの間に設けられている。船首側機関室102Cは、その内部が、サブ隔壁7sによって船首尾方向FAに2つに区画された2つの部屋である第一区画102Caと第二区画102Cbとを有している。
第一区画102Caは、その内部に船首側発電ユニット21を収容している。
第二区画102Cbは、燃料タンク31から供給された燃料を一時的に貯留するセットタンク22及びサービスタンク23を収容している。燃料タンク31から供給された燃料は、セットタンク22に送り込まれた後、サービスタンク23を介して船首側発電ユニット21に供給される。なお、サブ隔壁7sが設けられる場合を例示したが、サブ隔壁7sは省略しても良い。
【0046】
船首側第一燃料タンク室103Cは、船尾側機関室101C及び船首側機関室102Cに対し、船体2の船首尾方向FAにおける船首2F側に配置されている。船首側第一燃料タンク室103Cは、その内部に燃料タンク31を収容している。この実施形態では、燃料タンク31は、船首側第一燃料タンク室103Cに、二個一対で設けられている場合を例示しているが、燃料タンク31の個数はこれに限られない。
【0047】
船首側第二燃料タンク室106は、船尾側機関室101C及び船首側機関室102Cと、船首側第一燃料タンク室103Cに対し、船体2の船首尾方向FAにおける船首2F側に配置されている。船首側第二燃料タンク室106は、その内部に燃料タンク31を収容している。この実施形態では、燃料タンク31は、船首側第二燃料タンク室106に、二個一対で設けられている場合を例示しているが、燃料タンク31の個数はこれに限られない。
【0048】
船尾側燃料タンク室107は、船尾側機関室101C及び船首側機関室102Cに対し、船体2の船首尾方向FAにおける船尾2A側に配置されている。船尾側燃料タンク室107は、その内部に燃料タンク31を収容している。この実施形態では、燃料タンク31は、船尾側燃料タンク室107に、二個一対で設けられている場合を例示しているが、燃料タンク31の個数はこれに限られない。
【0049】
メイン燃料ライン51Cは、船首側第一燃料タンク室103C、船首側第二燃料タンク室106、及び船尾側燃料タンク室107内の燃料タンク31に貯留された燃料を、船尾側機関室101C及び船首側機関室102Cに供給する。メイン燃料ライン51Cは、船首側第一燃料タンク室103C、船首側第二燃料タンク室106、及び船尾側燃料タンク室107内の各燃料タンク31と、船尾側発電ユニット11及び船首側発電ユニット21とを接続するよう設けられている。このメイン燃料ライン51Cは、その第一端部51aが分岐して船首側第二燃料タンク室106内の燃料タンク31にそれぞれ接続されている。メイン燃料ライン51Cは、その第二端部51bが分岐して船尾側燃料タンク室107内の燃料タンク31にそれぞれ接続されている。
【0050】
メイン燃料ライン51Cは、船尾側燃料タンク室107と船首側第二燃料タンク室106との間の各横置隔壁7及びサブ隔壁7sを貫通している。これにより、メイン燃料ライン51Cは、第一端部51aと第二端部51bとの間の中間部51cが、船尾側機関室101Cと、船首側機関室102Cと、船首側第一燃料タンク室103Cとを通っている。
【0051】
サブ燃料ライン52Cは、燃料タンク31に貯留された燃料を、主に船尾側機関室101Cに供給する。サブ燃料ライン52Cは、その第一端部52aが船首側第二燃料タンク室106内の燃料タンク31に接続されている。
【0052】
このサブ燃料ライン52Cは、第一端部52aと第二端部52bとの間の中間部52cが、メイン燃料ライン51Cの中間部51cが通る船首側機関室102C、及び船首側第一燃料タンク室103Cとは異なる区画、例えば船底区画108を通して配置されている。この船底区画108は、船体2内で甲板4と船底2bとの間に形成されている。船底区画108は、船首側機関室102C、船尾側機関室101C、船首側第一燃料タンク室103Cとは、防火性能及び水密性を有した隔壁18により隔てられている。
【0053】
ポンプ機構60Cは、ポンプ61C,66C,67Cと、開閉弁65,68と、をそれぞれ備える。
【0054】
ポンプ(第一ポンプ)61Cは、船首側第一燃料タンク室103C内に設けられている。ポンプ61Cは、船首側第一燃料タンク室103C内の燃料タンク31からメイン燃料ライン51Cを介して燃料を送り出す。
ポンプ(第二ポンプ)66Cは、船首側第二燃料タンク室106内に設けられている。ポンプ66Cは、船首側第二燃料タンク室106内の燃料タンク31からサブ燃料ライン52Cを介して燃料を送り出す。
ポンプ67Cは、船尾側燃料タンク室107内に設けられている。ポンプ66Cは、船尾側燃料タンク室107内の燃料タンク31からメイン燃料ライン51Cを介して燃料を送り出す。
【0055】
開閉弁65は、メイン燃料ライン51Cに設けられている。開閉弁65は、メイン燃料ライン51Cが横置隔壁7又はサブ隔壁7sを貫通する位置を挟んで、横置隔壁7又はサブ隔壁7sの両側にそれぞれ配置されている。
開閉弁68は、サブ燃料ライン52Cに設けられている。開閉弁68は、船首側第二燃料タンク室106、船尾側機関室101C内にそれぞれ設けられている。これら開閉弁68は、サブ燃料ライン52Cが隔壁18を貫通する部分の近傍にそれぞれ配置されている。
【0056】
このようなポンプ機構60Cは、ポンプ61C,66C,67Cの作動、開閉弁65,68の開閉を切り換えることで、燃料タンク31からメイン燃料ライン51C又はサブ燃料ライン52Cに選択的に燃料を送り込むことが可能となっている。
【0057】
このような船舶1は、通常航行時、サブ燃料ライン52Cのポンプ66Cを停止状態で且つ各開閉弁68を閉じておくとともに、ポンプ61Cを作動させた状態で各開閉弁65を開く。これによって、
図5中に太線で示すように、船首側第一燃料タンク室103C内の燃料タンク31、及び船首側第二燃料タンク室106の燃料タンク31に貯留された燃料を、メイン燃料ライン51Cを通して、船首側機関室102Cに供給することができる。また、ポンプ67Cを作動させることで、船尾側燃料タンク室107内の燃料タンク31から、メイン燃料ライン51Cを通して、船尾側機関室101Cに燃料を供給することもできる。
【0058】
また、船舶1においては、船首側機関室102C、船首側第一燃料タンク室103Cのいずれか一つで火災や浸水が発生した場合、火災や浸水が発生した区画の外でなるべく近い位置で、メイン燃料ライン51Cの開閉弁65を閉じ、ポンプ61Cを止める。また、開閉弁68を開き、ポンプ66Cを作動させる。すると、
図6中に太線で示すように、船首側第二燃料タンク室106内の燃料タンク31から、サブ燃料ライン52Cを通して、船尾側機関室101Cに燃料を供給することができる。
【0059】
したがって、上述した第三実施形態の船舶1によれば、船首側第二燃料タンク室106と船尾側機関室101Cとの間で、サブ燃料ライン52Cを、メイン燃料ライン51Cが通過する船首側機関室102C及び船首側第一燃料タンク室103Cとは異なる船底区画108に通すようにした。これにより、メイン燃料ライン51Cが通過する船首側第一燃料タンク室103C又は船首側機関室102Cで火災や浸水が発生しても、サブ燃料ライン52Cを通して船尾側機関室101Cに設けられた船尾側発電ユニット11に燃料を供給できる。これによって、船舶1の自力航行を継続することができる。
【0060】
サブ燃料ライン52Cは、船首側機関室102Cの下方に隣接する船底区画108を通過する。このように構成することで、サブ燃料ライン52Cが遠回りすることを抑え、サブ燃料ライン52Cの長さを最小限とすることができる。
【0061】
さらに、サブ燃料ライン52Cを船底区画108に通すことで、サブ燃料ライン52Cによって船体2内の甲板4上でカーゴスペースや各種機器等を設置するスペースへの影響を抑制できる。これによって、船体2内のスペースの有効利用を図ることができる。
【0062】
また、船首側第一燃料タンク室103Cと船首側第二燃料タンク室106とを別々に設けることで、船首側第一燃料タンク室103C又は船首側第二燃料タンク室106で火災や浸水が発生しても燃料供給が途絶えることがない。そのため、船舶1の自力航行を継続することができる。
【0063】
さらに、メイン燃料ライン51Cは、メイン燃料ライン51Cが貫通する横置隔壁7及びサブ隔壁7sの両側に、開閉弁65を備えている。このように構成することで、火災が発生した区画以外の区画で開閉弁65を閉じることで、火災が発生した区画を通るメイン燃料ライン51C内に燃料が供給されることを抑制できる。
【0064】
(第三実施形態の変形例)
図7は、この発明の第三実施形態の変形例における船舶の構成を示すブロック図である。
上述したような第三実施形態の構成において、
図7に示すように、バイパスライン55を設けることもできる。このバイパスライン55は、メイン燃料ライン51Cと、サブ燃料ライン52Cとを接続する。バイパスライン55は、船首側第一燃料タンク室103C内でメイン燃料ライン51Cに接続され、船首側第二燃料タンク室106内でサブ燃料ライン52Cに接続されている。
この場合、バイパスライン55に、開閉弁69を設ける。開閉弁69は、船首側第一燃料タンク室103Cと船首側第二燃料タンク室106との間の横置隔壁7をバイパスライン55が貫通する位置を挟んで、横置隔壁7の両側にそれぞれ配置されている。
【0065】
このような船舶1においては、通常航行時にポンプ61Cが故障した場合には、ポンプ66Cを作動させるとともに開閉弁69を開く。これにより、
図7中に太線で示すように、船首側第二燃料タンク室106内の燃料タンク31から、バイパスライン55、メイン燃料ライン51Cを介して、船首側機関室102Cに燃料を供給することができる。
【0066】
また、上述した第三実施形態においては、船尾側機関室101Cの船尾側に隣接するようにして船尾側燃料タンク室107が配置されていた。しかし、以下に詳述する第三実施形態の変形例のように船尾側燃料タンク室107を省略するようにしても良い。
【0067】
図8は、この発明の第三実施形態の変形例における船舶の構成を示すブロック図である。
図9は、上記第三実施形態の変形例における船舶のメイン燃料ラインを通して燃料供給を行っている状態を示す図である。
図10は、上記第三実施形態の変形例における船舶のメイン燃料ライン及びバイパスラインを用いて燃料供給を行っている状態を示す図である。
図11は、上記第三実施形態の変形例における船舶のサブ燃料ラインを通して燃料供給を行っている状態を示す図である。
【0068】
図8に示すように、この第三実施形態の変形例における船舶1は、上述した第三実施形態と同様に、船体2と、船尾側機関室(第一機関室)101Cと、船首側機関室(第二機関室)102Cと、船首側第一燃料タンク室(第一燃料タンク室)103Cと、船首側第二燃料タンク室(第二燃料タンク室)106と、メイン燃料ライン(第一燃料ライン)51Cと、サブ燃料ライン(第二燃料ライン)52Cと、ポンプ機構60Cと、を備えている。その一方で、上述した第三実施形態の船舶1の船尾側燃料タンク室107は、設けられていない。
ここで、船体2と、船尾側機関室(第一機関室)101Cと、船首側機関室(第二機関室)102Cと、船首側第一燃料タンク室(第一燃料タンク室)103Cと、船首側第二燃料タンク室(第二燃料タンク室)106と、メイン燃料ライン(第一燃料ライン)51Cと、サブ燃料ライン(第二燃料ライン)52Cと、ポンプ機構60Cと、ポンプ61Cと、については、上述した第三実施形態と同様の構成であるため、詳細説明を省略する
【0069】
この第三実施形態の変形例における船舶1は、第三実施形態と同様に、通常航行時、サブ燃料ライン52Cのポンプ66Cを停止するとともに各開閉弁68を閉じておき、ポンプ61Cを作動させる。これによって、
図9中に太線で示すように、船首側第一燃料タンク室103C内の燃料タンク31、及び船首側第二燃料タンク室106の燃料タンク31に貯留された燃料が、メイン燃料ライン51Cを通して、船首側機関室102C、及び船尾側機関室101Cに供給される。
また、ポンプ61Cが故障した場合には、ポンプ66Cを作動させるとともに開閉弁69を開く。これにより、
図10中に太線で示すように、船首側第二燃料タンク室106内の燃料タンク31から、バイパスライン55、メイン燃料ライン51Cを介して、船首側機関室102Cに燃料を供給することができる。
【0070】
さらに、船首側機関室102C、船首側第一燃料タンク室103Cのいずれかで火災や浸水が発生した場合、火災や浸水が発生した区画の外でなるべく近い位置で、メイン燃料ライン51Cの開閉弁65を閉じ、ポンプ61Cを止める。また、開閉弁68を開き、ポンプ66Cを作動させる。すると、
図11中に太線で示すように、船首側第二燃料タンク室106内の燃料タンク31から、サブ燃料ライン52Cを通して、船尾側機関室101Cに燃料を供給することができる。
【0071】
したがって、上述した第三実施形態の変形例における船舶1によれば、船首側第二燃料タンク室106と船尾側機関室101Cとの間で、サブ燃料ライン52Cを、メイン燃料ライン51Cが通過する船首側機関室102C及び船首側第一燃料タンク室103Cとは異なる船底区画108に通すようにした。これにより、メイン燃料ライン51Cが通過する船首側第一燃料タンク室103C又は船首側機関室102Cで火災や浸水が発生しても、サブ燃料ライン52Cを通して船尾側機関室101Cに設けられた船尾側発電ユニット11に燃料を供給できる。これによって、船舶1の自力航行を継続することができる。
【0072】
また、船首側第一燃料タンク室103C及び船首側第二燃料タンク室106を、船尾側機関室101C及び船首側機関室102Cの船首2F側に配置することで、船尾2A側に燃料タンク室を設ける必要がなくなる。これにより、燃料タンク室を、スペースの制限を受けやすい船尾2A側に設ける場合と比較して、船首側第一燃料タンク室103C、船首側第二燃料タンク室106に、より大きな燃料タンク31を設置することができる。
【0073】
さらに、船尾側機関室101Cの船尾2A側に燃料タンク室を設けないので、船体2の船首尾方向FAの重心が船尾2A側に偏ることを抑えることができる。これによって、船体2の船首尾方向FAのバランスをとるために、船首2F側にバラスト等を設ける必要が無く、船体2の重量増加を抑えることができる。これによって、船舶1の航行燃費の向上に寄与できる。
さらに、船尾側機関室101Cの船尾2A側に燃料タンク室を設けないので、船首側第一燃料タンク室103C及び船首側第二燃料タンク室106と、船尾側機関室101C及び船首側機関室102Cとを、船尾2A側に寄せてレイアウトすることもできる。これにより、船体2内の船首側第二燃料タンク室106よりも船首2F側の空間を、カーゴスペース等として有効利用することが可能となる。
【0074】
また、サブ燃料ライン52Cは、船首側機関室102Cの下方に隣接する船底区画108を通過する。このように構成することで、サブ燃料ライン52Cが遠回りすることを抑え、サブ燃料ライン52Cの長さを最小限とすることができる。
【0075】
さらに、サブ燃料ライン52Cを船底区画108に通すことで、サブ燃料ライン52Cによって船体2内の甲板4上でカーゴスペースや各種機器等を設置するスペースを損なうことを抑える。これによって、船体2内のスペースの有効利用を図ることができる。
【0076】
また、船首側第一燃料タンク室103Cと船首側第二燃料タンク室106とを別々に設けることで、船首側第一燃料タンク室103C又は船首側第二燃料タンク室106で火災や浸水が発生しても、燃料供給が途絶えることがなく、船舶1の自力航行を継続することができる。
【0077】
メイン燃料ライン51Cは、メイン燃料ライン51Cが貫通する横置隔壁7を貫通する位置を挟んだ両側に、開閉弁65が設けられているので、火災が発生した区画に隣接する区画で開閉弁65を閉じることで、火災が発生した区画にメイン燃料ライン51Cを通して燃料が通過することを防ぐことができる。
【0078】
また、上記第三実施形態では、船尾側機関室101C、船首側機関室102Cの内部を、サブ隔壁7sによって、第一区画101Ca,102Caと第二区画101Cb,102Cbとに区画するようにしたが、これに限らない。サブ隔壁7s及びその両側の開閉弁65を省略し、船尾側機関室101C、船首側機関室102Cを、それぞれ、一つの区画により形成しても良い。
【0079】
また、上記第三実施形態では、燃料タンク31から供給された燃料を一時的に貯留するセットタンク12,22及びサービスタンク13,23を備えているが、サービスタンク13,23のみを備えるようにしてもよい。
【0080】
(その他の変形例)
この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上記実施形態において、船尾側機関室101,101C、船首側機関室102,102Cに、船尾側発電ユニット11、船首側発電ユニット21を複数収容してもよい。
【0081】
また、上記第一、第三実施形態およびその変形例では、燃料タンク室103、船首側第一燃料タンク室103C、船首側第二燃料タンク室106、船尾側燃料タンク室107に、燃料タンク31と、ポンプ61,61C,66C,67Cとを収容するようにしたが、これに限らない。例えば、燃料タンク室103、船首側第一燃料タンク室103C、船首側第二燃料タンク室106、船尾側燃料タンク室107には、燃料タンク31のみを収容し、ポンプ61,61C,66C,67Cを収容するポンプ室を設けるようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態においては、推進器6として電動機Mを用い、この電動機Mを回転駆動させるための駆動力を発生する船尾側発電ユニット11、船首側発電ユニット21を船尾側機関室101,101C、船首側機関室102,102Cに収容したが、これに限らない。スクリュー5を直接回転駆動させる主機として、ガスタービンやエンジン等の燃焼機関を用いる場合、船尾側機関室101,101C、船首側機関室102,102Cに燃焼機関を収容し、これらガスタービンやエンジン等の燃焼機関にメイン燃料ライン51,51Cとサブ燃料ライン52,52Cとで燃料を供給するようにしてもよい。
さらに、船舶1の推進力源として、推進器6と主機とを組み合わせて備える構成であってもよい。
【0083】
さらに、上記実施形態において、燃焼機関として、ガスタービンやディーゼルエンジン等の内燃機関部を備えるようにしたが、燃焼機関として、蒸気タービン等の外燃機関を備えてもよい。
【0084】
また、サブ燃料ライン52,52Cは、船底区画108に通すようにしたが、これに限らず、例えば、サブ燃料ライン52を、所定の防火性能及び水密性を有した筒状のダクトによって区画形成されたダクト内の区画に挿通させ、メイン燃料ライン51と同じ区画を通すようにしてもよい。
【0085】
さらに、上記実施形態において、二つの機関室(例えば、船尾側機関室101、船首側機関室102)や、二つの船首側燃料タンク室(例えば、船首側第一燃料タンク室103C、船首側第二燃料タンク室106)を設ける場合について説明した。しかし、機関室や船首側燃料タンク室は、それぞれ三つ以上に区画して設けるようにしてもよい。