特許第6555598号(P6555598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555598
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】位置調整装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20190729BHJP
   B60R 21/0134 20060101ALI20190729BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20190729BHJP
   G01S 7/40 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   B60R16/02 610J
   B60R21/0134 312
   G01S7/03 240
   G01S7/40 126
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-109992(P2017-109992)
(22)【出願日】2017年6月2日
(65)【公開番号】特開2018-203001(P2018-203001A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390038069
【氏名又は名称】株式会社青山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】明石 敏晴
(72)【発明者】
【氏名】真取 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】大森 康臣
(72)【発明者】
【氏名】松並 重樹
(72)【発明者】
【氏名】藤本 孝典
【審査官】 中屋 裕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−069735(JP,A)
【文献】 実開平05−048107(JP,U)
【文献】 特開2001−174540(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0035703(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60R 21/0134
G01S 7/03
G01S 7/40
H01Q 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と前記車両に取り付けられる外界センサとの間に介在して、操作治具の操作に伴い前記車両に対する前記外界センサの取付位置を調整する調整部材と、
前記調整部材が挿入された挿入部を有し、前記調整部材を回転可能に支持するベース部材と、を有し、
前記調整部材及び前記挿入部のうち第1部材には、前記調整部材及び前記挿入部のうち第2部材に向けて突出するとともに、前記第2部材に接触する凸部が形成され
前記調整部材は、
前記調整部材の軸線に沿って延びるボルト部と、
前記ボルト部を覆うとともに、前記操作治具が係合するギア部を有する操作部と、を備え、
前記凸部は、前記操作部に接触することを特徴とする位置調整装置。
【請求項2】
車両と前記車両に取り付けられる外界センサとの間に介在して、操作治具の操作に伴い前記車両に対する前記外界センサの取付位置を調整する調整部材と、
前記調整部材が後方から挿入された挿入部を有し、前記調整部材を前後方向に沿う軸線回りに回転可能に支持するベース部材と、を有し、
前記調整部材及び前記挿入部のうち第1部材には、前記軸線に直交する径方向において前記調整部材及び前記挿入部のうち第2部材に向けて突出するとともに、前記第2部材に接触する凸部が形成され、
前記第2部材には、前記径方向において前記第1部材から離間する側に窪み、前記凸部が係止される溝部が形成され、
前記凸部は、前記溝部の前端開口縁に係止されるとともに、後方に向かうに従い前記径方向で前記第2部材に向けて傾斜して延びる前側係止面を備えている位置調整装置。
【請求項3】
前記凸部は、前記前側係止面の後端縁から前後方向に延びるとともに、前記溝部の底面に対して前記径方向で間隔をあけて対向する接続面を備えている請求項2に記載の位置調整装置。
【請求項4】
前記凸部は、前記調整部材の軸線を間に挟んで対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の位置調整装置。
【請求項5】
前記第1部材は、前記第2部材に接近離間する方向に弾性変形可能な弾性片を有し、
前記凸部は、前記弾性片に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の位置調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動ブレーキシステム等の運転支援システムが実用化されている。運転支援システムには、車両周囲の状態を監視する外界センサ(例えば、ミリ波レーダ等)が用いられる。このような構成において、外界センサの検出精度を確保するためには、外界センサの検出面を所定の方位に正しく向けた状態で車体に取り付ける必要がある。
【0003】
例えば下記特許文献1には、操作治具(例えば、プラスドライバ)によってレーダ装置のレーダ軸の方位を調整する軸調整装置が開示されている。軸調整装置は、車両の取付面とレーダ装置との間に介在する調整部材と、調整部材を回転可能に支持するとともに、操作治具を調整部材に導くガイド部と、を有する構成が開示されている。
調整部材は、操作治具に係合するギア部と、ギア部と一体に構成されるとともに、レーダ装置に螺着されたボルト部と、を有している。調整部材は、ガイド部の軸受部に形成された貫通孔内にボルト部が挿入されることで、軸受部に回転可能に支持されている。
【0004】
特許文献1の構成において、操作治具がギア部に係合した状態で操作治具を回転操作することで、ボルト部の軸線回りに調整部材が回転する。これにより、ボルト部に螺着されたレーダ装置が、車両の取付面に接近離間する方向に移動する。その結果、車両の取付面に対するレーダ軸の方位が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−68768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1の構成にあっては、ボルト部の外周面が貫通孔の内周面に密着している。そのため、調整部材の回転操作時において、ボルト部の外周面と貫通孔の内周面との間の摩擦抵抗が大きく、調整部材を回転させるために必要なトルクが大きくなる。したがって、操作性の向上を図る点で未だ改善の余地があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、操作性の向上を図ることができる位置調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、車両(例えば、実施形態における車両100)と前記車両に取り付けられる外界センサ(例えば、実施形態における外界センサ111)との間に介在して、操作治具の操作に伴い前記車両に対する前記外界センサの取付位置を調整する調整部材(例えば、実施形態における調整部材3)と、前記調整部材が挿入された挿入部(例えば、実施形態における筒状部12)を有し、前記調整部材を回転可能に支持するベース部材(例えば、実施形態におけるベース部材2)と、を有し、前記調整部材及び前記挿入部のうち第1部材には、前記調整部材及び前記挿入部のうち第2部材に向けて突出するとともに、前記第2部材に接触する凸部(例えば、実施形態における凸部24)が形成され、前記調整部材は、前記調整部材の軸線に沿って延びるボルト部(例えば、実施形態におけるボルト部61)と、前記ボルト部を覆うとともに、前記操作治具が係合するギア部を有する操作部(例えば、実施形態における操作部62)と、を備え、前記凸部は、前記操作部に接触する
請求項2に記載した発明では、車両と前記車両に取り付けられる外界センサとの間に介在して、操作治具の操作に伴い前記車両に対する前記外界センサの取付位置を調整する調整部材と、前記調整部材が後方から挿入された挿入部を有し、前記調整部材を前後方向に沿う軸線回りに回転可能に支持するベース部材と、を有し、前記調整部材及び前記挿入部のうち第1部材には、前記軸線に直交する径方向において前記調整部材及び前記挿入部のうち第2部材に向けて突出するとともに、前記第2部材に接触する凸部が形成され、前記第2部材には、前記径方向において前記第1部材から離間する側に窪み、前記凸部が係止される溝部(例えば、実施形態における溝部81)が形成され、前記凸部は、前記溝部の前端開口縁に係止されるとともに、後方に向かうに従い前記径方向で前記第2部材に向けて傾斜して延びる前側係止面(例えば、実施形態における前側係止面31)を備えている。
請求項3に記載した発明では、前記凸部は、前記前側係止面の後端縁から前後方向に延びるとともに、前記溝部の底面に対して前記径方向で間隔をあけて対向する接続面を備えている。
【0009】
請求項に記載した発明では、前記凸部は、前記調整部材の軸線を間に挟んで対向する位置に配置されている。
【0011】
請求項に記載した発明では、前記第1部材は、前記第2部材に接近離間する方向に弾性変形可能な弾性片(例えば、実施形態における弾性片23)を有し、前記凸部は、前記弾性片に形成されている。
【0012】
請求項5に記載した発明では、前記調整部材は、前記調整部材の軸線に沿って延びるボルト部(例えば、実施形態におけるボルト部61)と、前記ボルト部を覆うとともに、前記操作治具が係合するギア部を有する操作部(例えば、実施形態における操作部62)と、を備え、前記凸部は、前記操作部に接触する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載した発明によれば、第2部材が凸部を介して第1部材に接触するので、第1部材と第2部材とが全体に亘って密接する場合に比べて第1部材と第2部材との接触面積を低減できる。これにより、第1部材と第2部材との間の摩擦抵抗を軽減できるので、調整部材を回転させるために必要なトルクを低減できる。
その結果、操作性を向上させることができる。
また、ボルト部に凸部が直接接触する場合に比べてボルト部に余計な負荷が掛かるのを抑制できる。これにより、ボルト部の回転に影響が及ぶのを抑制できる。
また、例えば操作部を樹脂製にした場合において、凸部が接触する部分(溝部等)を操作部に形成することで、金属製のボルト部に溝部等を形成する場合に比べて調整部材の加工性を向上させることができる。
【0014】
請求項に記載した発明によれば、第1部材と第2部材との接触面積を最小限に抑えつつ、調整部材を安定して支持できる。
【0015】
請求項3に記載した発明によれば、凸部が溝部内で係止されることで、第2部材に対する第1部材の軸線に沿う方向への移動を規制できる。そのため、ベース部材から調整部材が抜けるのを抑制できる。
【0016】
請求項に記載した発明によれば、ベース部材に対して調整部材を組み付ける際、挿入部に調整部材を挿入すると、挿入方向における調整部材の前端縁が凸部に突き当たる。その後、さらに調整部材を押し込むことで、弾性片が軸線に直交する径方向の外側に弾性変形する。これにより、凸部が調整部材の外周面に摺接しながら、調整部材が押し込まれていく。そして、調整部材の溝部が凸部に到達することで、弾性片が径方向の内側に復元する。これにより、凸部が溝部内に収容される。
このように、調整部材を挿入部に挿入するだけで、凸部と溝部とを係止させることができる。その結果、組付性を向上させた上で、ベース部材から調整部材が抜けるのを抑制できる。
【0017】
請求項5に記載した発明によれば、ボルト部に凸部24が直接接触する場合に比べてボルト部に余計な負荷が掛かるのを抑制できる。これにより、ボルト部の回転に影響が及ぶのを抑制できる。
また、例えば操作部を樹脂製にした場合において、凸部が接触する部分(溝部等)を操作部に形成することで、金属製のボルト部に溝部等を形成する場合に比べて調整部材の加工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】車両の概略正面図である。
図2】実施形態に係るセンサユニットの斜視図である。
図3】実施形態に係るセンサユニットの分解斜視図である。
図4】実施形態に係る位置調整装置の斜視図である。
図5図4のV−V線に沿う断面図である。
図6図4のVI−VI線に沿う断面図である。
図7】ギア部の展開図である。
図8】センサユニットの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[車両]
図1は、車両100の概略正面図である。なお、以下の説明において、前後上下左右等の向きは、特に記載が無ければ車両100における向きと同一とする。また、図中矢印UPは上方を示し、矢印FRは前方を示している。
図1に示す車両100のエンジンルーム101内において、例えばフロントグリル102の後方に位置する部分には、センサユニット110が取り付けられている。なお、本実施形態では、センサユニット110が車両100の前部に1つ取り付けられている構成について説明するが、センサユニット110の取付個数や取付位置等については、必要に応じて適宜変更可能である。
【0020】
<センサユニット>
図2は、センサユニット110の斜視図である。図3は、センサユニット110の分解斜視図である。
図2に示すように、センサユニット110は、外界センサ111と、センサブラケット112と、位置調整装置1と、を主に備えている。
外界センサ111は、車両100の前方を監視するためのものである。外界センサ111は、箱型に形成されている。外界センサ111の下部には、車幅方向の外側(外界センサ111の中心から離間する方向)に突出する支持軸120が形成されている。外界センサ111の上部には、車幅方向の第1側に突出する連結部121が形成されている。連結部121には、連結部121を厚さ方向(前後方向)に貫通するクリップ取付孔122が形成されている。なお、外界センサ111には、例えばミリ波レーダやレーザレーダ、超音波センサ、ソナー、光学カメラ等が好適に用いられる。
【0021】
センサブラケット112は、センサユニット110を回動可能に支持している。センサブラケット112は、ベース板130と、ベース板130に連設された一対のアーム部131と、を有している。
ベース板130は、例えば厚さ方向を前後方向に向けた状態で、ステー(不図示)を介して車両100に取り付けられている。ベース板130の上部において、車幅方向の第1側に位置する部分には、複数のビス挿通孔133が形成されている。なお、ベース板130は、車両100に直接取り付けられる構成であっても構わない。
【0022】
各アーム部131は、ベース板130の車幅方向の両端部から前方に向けて延設されている。各アーム部131の前端部には、上方に開口する軸受部135が形成されている。上述した外界センサ111の支持軸120は、軸受部135内にカラー137を介して収容されている。これにより、外界センサ111が車幅方向に延びる軸線O1回りに回動可能にセンサブラケット112に支持される。本実施形態において、アーム部131とカラー137とは、車幅方向で当接又は近接することが好ましい。これにより、センサブラケット112に対する外界センサ111の車幅方向の移動が規制され、センサユニット110を高精度に位置決めできる。
【0023】
<位置調整装置>
位置調整装置1は、外界センサ111とセンサブラケット112との間に介在している。位置調整装置1は、外界センサ111における軸線O1回りの回動角度を調整する。これにより、外界センサ111は、検出面113が所定の方位を向いた状態で、車両100に固定される。なお、「検出面113」とは、ミリ波レーダ、レーザレーダ、超音波センサ及びソナーの場合、例えば外界検出波の送受信面をいう。また、光学カメラの場合には、対物レンズのレンズ面が「検出面113」に相当する。
【0024】
図4は、位置調整装置1の斜視図である。
図4に示すように、位置調整装置1は、ベース部材2と、調整部材3と、クリップ4(図3参照)と、を備えている。
【0025】
<ベース部材>
ベース部材2は、固定部11と、筒状部12と、ガイド部13と、を主に有している。固定部11、筒状部12及びガイド部13は、樹脂材料により一体に形成されている。
【0026】
固定部11には、複数のナット21がインサート成形されている。図3に示すように、ベース部材2は、固定部11の後面をベース板130の前面に突き当てた状態で、ビス挿通孔133を通してナット21にビス134が螺着されることで、センサブラケット112に固定される。なお、ベース部材2とセンサブラケット112との締結箇所は、2つに限定されるものではない。但し、センサブラケット112に対する位置調整装置1の回転を規制するためには、複数箇所で締結することが好ましい。
【0027】
筒状部12は、固定部11に対して車幅方向の第1側に連なっている。筒状部12は、軸線O2を前後方向に一致させた状態で、固定部11に対して後方に延設されている。なお、以下の説明では、筒状部12の軸線O2が延びる方向を単にベース軸方向という場合がある。また、軸線O2に直交する方向をベース径方向といい、軸線O2回りに周回する方向をベース周方向という場合がある。
【0028】
図4に示すように、筒状部12におけるベース径方向(車幅方向)で対向する位置には、筒状部12をベース径方向に貫通するスリット22が形成されている。スリット22は、ベース径方向から見た側面視でベース軸方向を長手方向とする長方形状に形成されている。各スリット22の内面のうち、後方に位置する面(以下、「後端面」という。)には、弾性片23が連設されている。弾性片23は、スリット22の後端面から前方に向けて片持ちで延在している。弾性片23は、基端部(後端部)を起点にしてベース径方向に弾性変形可能に形成されている。なお、スリット22(弾性片23)の数は、単数であっても、複数であっても構わない。
【0029】
図5は、図4のV−V線に沿う断面図である。
図5に示すように、弾性片23の先端部(前端部)には、ベース径方向の内側に膨出する凸部24が形成されている。凸部24は、上下方向から見た平面視でベース径方向の内側に向けて幅が縮小する台形状に形成されている。すなわち、凸部24は、前側係止面31と、後側係止面32と、各係止面31,32同士を接続する接続面33と、を有している。
【0030】
前側係止面31は、後方に向かうに従いベース径方向の内側に向けて延びる傾斜面とされている。
後側係止面32は、前方に向かうに従いベース径方向の内側に向けて延びる傾斜面とされている。本実施形態において、前側係止面31とベース軸方向とのなす角度は、後側係止面32とベース軸方向とのなす角度に比べて大きくなっている。なお、各係止面31,32の角度は、適宜変更が可能である。例えば、前側係止面31は、ベース軸方向に直交する平坦面であっても構わない。
【0031】
接続面33は、ベース径方向に直交する平坦面とされている。なお、凸部24は、接続面33を有さない構成(各係止面31,32同士が直接接続される構成)であっても構わない。
【0032】
図6は、図4のVI−VI線に沿う断面図である。
図4図6に示すように、ガイド部13は、筒状部12から上方に連なっている。ガイド部13には、第1治具収容部41及び第2治具収容部42が形成されている。
第1治具収容部41は、ガイド部13のうち筒状部12の直上に位置する部分が、前方に向けて窪んで構成されている。第1治具収容部41は、平面視で半円状に形成されている。第1治具収容部41は、操作治具45を収容可能に形成されている。本実施形態において、第1治具収容部41の表面形状は、操作治具45の表面形状に倣って形成されている。
【0033】
図6に示すように、操作治具45は、例えばプラスドライバである。すなわち、操作治具45は、外径が一様な軸本体部46と、軸本体部46の先端部に連なる係合部47と、を有している。係合部47には、操作治具45における軸線O3回りのドライバ周方向に山部48及び谷部49が交互に形成されている。
【0034】
山部48の頂部は、ドライバ軸方向に沿って延びる山側ストレート部48aと、山側ストレート部48aの先端部に連なりドライバ径方向の内側に向けて延びる山側テーパ部48bと、を有している。
谷部49の底部には、先端部に向かうに従いドライバ径方向の内側に向けて延びる谷側テーパ部49aが形成されている。なお、操作治具45における係合部47の形状は、適宜変更が可能である。
【0035】
上述した第1治具収容部41は、上部に位置する受側ストレート部51と、受側ストレート部51の下端に連なる受側テーパ部52と、を有している。
受側ストレート部51は、操作治具45における係合部47の基端部(山側ストレート部48a)の表面形状に倣って形成され、係合部47の基端部が収容可能に構成されている。具体的に、受側ストレート部51は、車幅方向から見た断面視において、上下方向に沿って直線状に延在している。また、受側ストレート部51は、上下方向から見た平面視において、山側ストレート部48aの曲率半径と同等に形成されている。
【0036】
受側テーパ部52は、操作治具45の係合部47(山側テーパ部48b)の先端部の表面形状に倣って形成されている。受側テーパ部52は、係合部47の先端部を収容可能に構成されている。具体的に、受側テーパ部52は、車幅方向から見た断面視において、下方に向かうに従い後方に向けて傾斜している。また、上下方向から見た平面視において、受側テーパ部52の曲率中心は、受側ストレート部51と同軸に配置されている。受側テーパ部52は、下方に向かうに従い曲率半径が漸次縮小している。
【0037】
このように、本実施形態の第1治具収容部41は、係合部47における軸線O3に沿うドライバ軸方向の全体であって、係合部47の前半分程度の領域を保持可能に構成されている。
【0038】
筒状部12の外周面において、第1治具収容部41を通じて露出する部分には、操作治具45の先端面を支持する先端受部53が形成されている。先端受部53は、筒状部12の外周面上で開口する第1凹部54の底部である。先端受部53は、操作治具45の先端面に倣った平坦面に形成されている。なお、先端受部53は、筒状部12の外周面上に設定しても構わない。
【0039】
第1凹部54の内側面55は、操作治具45(山側テーパ部48b)の先端部の表面形状に倣って形成されている。具体的に、第1凹部54は、ベース径方向の内側に向かうに従い漸次先細っている。第1凹部54の内側面の一部は、第1治具収容部41の内面に滑らかに連なっている。
【0040】
図4に示すように、第2治具収容部42は、ガイド部13において、第1治具収容部41に対してベース周方向でずれた位置に形成されている。具体的に、第2治具収容部42は、上下方向に対して交差する方向に開口している。なお、第2治具収容部42の開口方向は、適宜変更が可能である。
【0041】
第2治具収容部42は、第1治具収容部41に対して斜め方向から操作治具45を収容可能に構成されている。第2治具収容部42は、第1治具収容部41と同様に受側ストレート部51及び受側テーパ部52を有している。すなわち、第2治具収容部42は、係合部47における軸線O3に沿うドライバ軸方向の全体であって、係合部47の前半分程度の領域を保持可能に構成されている。なお、図示しないが、筒状部12の外周面において、第2治具収容部42を通じて露出する部分には、上述した第1凹部54と同様の構成を有する第2凹部(不図示)が形成されている。
【0042】
図3図6に示すように、ガイド部13の上部において、ベース周方向で第1治具収容部41に対応する位置には、規制部56が形成されている。規制部56は、平面視でU字状に形成されている。規制部56は、平面視において、第1治具収容部41を後方から取り囲んでいる。規制部56の表面形状は、操作治具45の軸本体部46の表面形状に倣って形成されている。規制部56は、軸本体部46を保持して、操作治具45の後方への移動(倒れ)を規制する。なお、ベース周方向で第2治具収容部42に対応する位置にも規制部を設けても構わない。
【0043】
<調整部材>
図6に示すように、調整部材3は、樹脂製の操作部62に、金属製のボルト部61がインサート成形されて構成されている。
ボルト部61は、軸線O2と同軸に配置されている。ボルト部61は、雄ねじ部63を有する軸部64と、軸部64の基端部(後端部)に連なる頭部65と、を有している。但し、ボルト部61は、少なくとも軸部64を有していれば構わない。
【0044】
操作部62は、頭部65の外周面を被覆する被覆部71と、被覆部71に連なる囲繞部72、フランジ部73、ギア部74及び突出部75と、を有している。
囲繞部72は、軸線O2と同軸に配置されている。囲繞部72は、軸部64の後端部を囲繞している。囲繞部72は、上述した筒状部12内に挿入されている。囲繞部72の外径は、筒状部12の内周面よりも小さくなっている。すなわち、囲繞部72が筒状部12内に挿入された状態において、囲繞部72の外周面と筒状部12の内周面との間には、ベース径方向に隙間が設けられている。
【0045】
図5に示すように、囲繞部72の前端部には、ベース径方向の内側に向けて窪む溝部81が形成されている。溝部81は、囲繞部72における全周に亘って形成されている。溝部81は、断面視において矩形状に形成されている。溝部81内には、上述した凸部24が収容されている。
【0046】
フランジ部73は、被覆部71からベース径方向の外側に張り出している。本実施形態の調整部材3は、フランジ部73が筒状部12に後方から当接し、溝部81の前端開口縁に前側係止面31が係止した状態で、ベース部材2に保持されている。これにより、ベース部材2に対する調整部材3のベース軸方向の移動が規制されている。本実施形態では、前側係止面31が傾斜面に形成されているため、ベース部材2や調整部材3の公差によって溝部81と凸部24との軸方向位置がばらついた場合には、前側係止面31上での溝部81の前端開口縁の係止位置が変化する。これにより、ベース部材2や調整部材3の公差を吸収できる。なお、凸部24と溝部81の内面との接触箇所は、適宜変更が可能である。例えば、凸部24における後側係止面32や接続面33と溝部81の内面とが接触していても構わない。
【0047】
図4に示すように、ギア部74は、クラウンギア形状をなしている。ギア部74は、フランジ部73の外周部分から前方に向けて突出している。ギア部74は、歯部85と歯溝部86とが周方向に交互に形成されている。ギア部74と各治具収容部41,42とは、上述した操作治具45が進入可能に対向している。
【0048】
図6に示すように、ギア部74の表面形状は、操作治具45の係合部47の表面形状に倣って形成されている。具体的に、ギア部74は、ベース径方向の内側に向かうに従い歯部85の歯厚が増加(歯溝部86のベース周方向の幅が減少)している。図6に示す断面視において、歯部85の頂部は、ベース径方向の内側に向かうに従い前方に向けて延在する歯部側テーパ部85aを構成している。歯部側テーパ部85aは、操作治具45の谷側テーパ部49aの底部に倣って形成されている。
【0049】
歯溝部86の底部は、ベース径方向の内側に向かうに従い前方に向けて延在する歯溝側テーパ部86aを構成している。歯溝側テーパ部86aは、操作治具45の山側テーパ部48bに倣って形成されている。
【0050】
図7は、ギア部74の展開図である。
図7に示すように、本実施形態において、ギア部74の配列ピッチは、歯部85の第1頂部が一方の治具収容部(例えば、第1治具収容部41)の周方向の中心に位置している場合に、第1頂部と異なる第2頂部が他方の治具収容部(例えば、第2治具収容部42)の周方向の中心からずれた位置に配置されるように設定されている。図示の例において、歯部85の頂部が第1治具収容部41の周方向の中心に位置している場合に、歯溝部86の底部が第2治具収容部42の周方向の中心に配置されるように設定されている。但し、ギア部74の配列ピッチは、適宜変更が可能である。
【0051】
図4に示すように、突出部75は、被覆部71から後方に突出している。突出部75を前後方向から見た正面視外形は、例えば六角形状に形成されている。突出部75は、例えばスパナ等の工具により保持可能に構成されている。すなわち、調整部材3は、突出部75を介して回転操作が可能になっている。
突出部75には、レンチ等の工具が係合する係合溝77が形成されている。すなわち、調整部材3は、係合溝77を介して回転操作が可能になっている。
【0052】
図6に示すように、クリップ4は、筒状に形成されている。クリップ4は、外界センサ111の上述したクリップ取付孔122内に嵌合されている。クリップ4の内周面には、雌ねじ部90が形成されている。雌ねじ部90にはボルト部61の雄ねじ部63が螺着されている。なお、クリップ取付孔122の内周面に雌ねじ部が直接形成されている場合には、クリップ4を用いない構成であっても構わない。
【0053】
[位置調整方法]
次に、外界センサ111の位置調整方法について説明する。図8は、センサユニット110の部分斜視図である。以下の説明では、位置調整装置1の直上から調整する場合について説明する。
図6図8に示すように、まず第1治具収容部41とギア部74との間に操作治具45を進入させる。この際、操作治具45の山部48がギア部74の歯溝部86内に進入し、操作治具45の谷部49内にギア部74の歯部85が進入することで、操作治具45の係合部47とギア部74とが係合する。特に、本実施形態では、第1治具収容部41及びギア部74の表面形状が操作治具45の係合部47の表面形状に倣って形成されている。そのため、係合部47の表面が第1治具収容部41及びギア部74の表面に近接又は当接した状態で保持される。
【0054】
この状態において、操作治具45を軸線O3回りのA1方向に回転操作すると、調整部材3が軸線O2回りのA2方向に回転する。すると、クリップ4がボルト部61との螺着が解除される方向(前方)に移動する。これにより、外界センサ111が軸線O1回りのA3方向に回動する。その結果、外界センサ111の検出面113が下方を向くように調整される。
一方、操作治具45を軸線O3回りのB1方向に回転操作すると、調整部材3が軸線O2回りのB2方向に回転する。すると、クリップ4がボルト部61に締結される方向(後方)に移動する。これにより、外界センサ111が軸線O1回りのB3方向に回動する。その結果、外界センサ111の検出面113が上方を向くように調整される。なお、第2治具収容部42とギア部74との間に操作治具45を進入させた場合であっても、上述した方法と同様の方法により外界センサ111を回動させることができる。
【0055】
このように、本実施形態では、軸線O2に交差する方向からの操作治具45の回転操作により調整部材3を回転させることで、調整部材3の回転角度に応じて外界センサ111の位置(検出面113の方位)が調整される。したがって、センサユニット110の後方空間に作業スペースを確保する必要なく、センサユニット110の収容空間(エンジンルーム101)のスペース効率を向上させることができる。
【0056】
ここで、本実施形態では、ベース径方向の内側に膨出して調整部材3(囲繞部72)に接触する凸部24が筒状部12に形成されている構成とした。
この構成によれば、筒状部12が凸部24を介して囲繞部72に接触するので、筒状部12と囲繞部72とが全体に亘って密接する場合に比べて筒状部12と囲繞部72との接触面積を低減できる。これにより、筒状部12と囲繞部72との間の摩擦抵抗を軽減できるので、調整部材3を回転させるために必要なトルクを低減できる。
その結果、操作性を向上させることができる。
【0057】
本実施形態では、凸部24(弾性片23)が筒状部12におけるベース径方向で対向する位置に一対で形成されている構成とした。
この構成によれば、筒状部12と囲繞部72との接触面積を最小限に抑えつつ、調整部材3を安定して支持できる。
【0058】
本実施形態では、囲繞部72の外周面に凸部24が係止される溝部81が形成されている構成とした。
この構成によれば、凸部24が溝部81内で係止されることで、筒状部12に対する囲繞部72のベース軸方向への移動を規制できる。そのため、ベース部材2から調整部材3が抜けるのを抑制できる。
【0059】
本実施形態では、ベース径方向に弾性変形可能な弾性片23に凸部24が形成されている構成とした。
この構成によれば、ベース部材2に対して調整部材3を組み付ける際、筒状部12内に調整部材3を後方から挿入すると、囲繞部72の前端縁が凸部24に突き当たる。その後、さらに調整部材3を押し込むことで、弾性片23がベース径方向の外側に弾性変形する。これにより、凸部24が囲繞部72の外周面に摺接しながら、調整部材3が押し込まれていく。そして、調整部材3の溝部81が凸部24に到達することで、弾性片23がベース径方向の内側に復元する。これにより、凸部24が溝部81内に収容される。
このように、調整部材3を筒状部12内に挿入するだけで、凸部24と溝部81とを係止させることができる。その結果、組付性を向上させた上で、ベース部材2から調整部材3が抜けるのを抑制できる。
【0060】
本実施形態では、樹脂製の囲繞部72に凸部24が接触する構成とした。
この構成によれば、ボルト部61に凸部24が直接接触する場合に比べてボルト部61に余計な負荷が掛かるのを抑制できる。これにより、ボルト部61の回転に影響が及ぶのを抑制できる。
また、例えば囲繞部72に溝部81を形成することができるので、金属製のボルト部61に溝部等を形成する場合に比べて調整部材3の加工性を向上させることができる。
【0061】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述した実施形態では、車幅方向に延びる軸線O1回りにセンサユニット110を回動させる場合について説明したが、軸線O1の延在方向は適宜変更が可能である。また、位置調整装置1を複数用いて外界センサ111をスライド等させても構わない。
【0062】
上述した実施形態では、凸部24が溝部81の内面に接触する構成について説明したが、この構成のみに限られない。例えば、凸部24と囲繞部72の外周面とが直接接触する構成であっても構わない。
上述した実施形態では、弾性片23に凸部24が形成された構成について説明したが、この構成のみに限られない。例えば、凸部24は、筒状部12に直接形成する構成(弾性片23を有さない構成)でも構わない。
さらに、凸部24は、囲繞部72に直接形成し、囲繞部72に形成された凸部24を弾性片23に接触する構成としても構わない。またその場合、溝部81を弾性片23に形成する構成としてもかまわない。
【0063】
上述した実施形態では、操作治具45の先端面から先端部の一部を治具収容部41,42やギア部74により保持する構成について説明したが、操作治具45の保持範囲は適宜変更が可能である。
上述した実施形態では、フランジ部73の全周に亘ってギア部74が形成された構成について説明したが、この構成のみに限られない。
上述した実施形態では、ボルト部61が金属製、操作部62が樹脂製の場合について説明したが、この構成のみに限られない。
【0064】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…位置調整装置
2…ベース部材
3…調整部材
12…筒状部(挿入部)
23…弾性片
24…凸部
61…ボルト部
62…操作部
111…外界センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8