特許第6555609号(P6555609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555609
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】イメージセンサ
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/374 20110101AFI20190729BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20190729BHJP
   H04N 5/369 20110101ALI20190729BHJP
【FI】
   H04N5/374
   H01L27/146 A
   H04N5/369
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-89401(P2015-89401)
(22)【出願日】2015年4月24日
(65)【公開番号】特開2016-208351(P2016-208351A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(72)【発明者】
【氏名】関根 裕之
【審査官】 鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−160024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30−5/378
H01L 27/14−27/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦、横に配置された複数の信号線及び複数の行選択線で区画された画素の各々に、光電変換素子、第1のトランジスタ、第2のトランジスタ、第3のトランジスタが配置されたイメージセンサであって、
前記光電変換素子は、第1の端子が前記第1のトランジスタのゲート端子に接続され、第2の端子が第1の電源線に接続されており、
前記第1のトランジスタは、ドレイン端子が第2の電源線に接続され、ソース端子が前記第2のトランジスタのドレイン端子に接続され、
前記第2のトランジスタは、ゲート端子が前記行選択線に接続され、ソース端子が前記信号線に接続され、
前記第3のトランジスタは、ゲート端子が隣接する画素行の行選択線に接続され、ドレイン端子が第3の電源線に接続され、ソース端子が前記光電変換素子の前記第1の端子に接続され、
前記画素の画素行の各々に配置される行選択線の数は1つであり、
前記行選択線には、1画素行分の信号が前記信号線から読み取られる期間よりも長いアクティブ期間に亘って、信号が印加されるようにしてあり、
前記アクティブ期間は、隣接する行選択線に信号が印加される期間と時間的に一部重なること
を特徴とするイメージセンサ。
【請求項2】
一端が前記光電変換素子の前記第1の端子に接続され、他端が前記第3のトランジスタの前記ゲート端子に接続される容量を備えること
を特徴とする請求項1に記載のイメージセンサ。
【請求項3】
前記イメージセンサの全画素の信号を読み出す期間において、前記行選択線に信号が印加される期間が1回だけであること
を特徴とする請求項1または2に記載のイメージセンサ。
【請求項4】
前記信号線の一端に接続され、前記アクティブ期間中における時間的に重なりのある期間に前記信号線に印加される電圧と、前記アクティブ期間中における時間的に重なりのない期間に前記信号線に印加される電圧との差分を出力する信号処理回路を備えること
を特徴とする請求項1から3までの何れか一つに記載のイメージセンサ。
【請求項5】
前記第1のトランジスタ、第2のトランジスタ、及び第3のトランジスタは各々、n型トランジスタであり、
前記光電変換素子は、前記第1の端子がカソード端子であり、前記第2の端子がアノード端子であるフォトダイオードであること
を特徴とする請求項1から4までの何れか一つに記載のイメージセンサ。
【請求項6】
前記第1の電源線に印加される電圧は、前記第2の電源線に印加される電圧よりも低いこと
を特徴とする請求項5に記載のイメージセンサ。
【請求項7】
縦、横に配置された複数の信号線及び複数の行選択線で区画された画素の各々に、光電変換素子、第1のトランジスタ、第2のトランジスタ、第3のトランジスタが配置されたイメージセンサであって、
前記光電変換素子は、第1の端子が前記第1のトランジスタのゲート端子に接続され、第2の端子が第1の電源線に接続されており、
前記第1のトランジスタは、ドレイン端子が第2の電源線に接続され、ソース端子が前記第2のトランジスタのドレイン端子に接続され、
前記第2のトランジスタは、ゲート端子が前記行選択線に接続され、ソース端子が前記信号線に接続され、
前記第3のトランジスタは、ゲート端子が隣接する画素行の行選択線に接続され、ドレイン端子が第3の電源線に接続され、ソース端子が前記光電変換素子の前記第1の端子に接続され、
前記行選択線には、1画素行分の信号が前記信号線から読み取られる期間よりも長いアクティブ期間に亘って、信号が印加されるようにしてあり、
前記アクティブ期間は、隣接する行選択線に信号が印加される期間と時間的に一部重なり、
一端が前記光電変換素子の前記第1の端子に接続され、他端が前記第3のトランジスタの前記ゲート端子に接続される容量を備えること
を特徴とするイメージセンサ。
【請求項8】
縦、横に配置された複数の信号線及び複数の行選択線で区画された画素の各々に、光電変換素子、第1のトランジスタ、第2のトランジスタ、第3のトランジスタが配置されたイメージセンサであって、
前記光電変換素子は、第1の端子が前記第1のトランジスタのゲート端子に接続され、第2の端子が第1の電源線に接続されており、
前記第1のトランジスタは、ドレイン端子が第2の電源線に接続され、ソース端子が前記第2のトランジスタのドレイン端子に接続され、
前記第2のトランジスタは、ゲート端子が前記行選択線に接続され、ソース端子が前記信号線に接続され、
前記第3のトランジスタは、ゲート端子が隣接する画素行の行選択線に接続され、ドレイン端子が第3の電源線に接続され、ソース端子が前記光電変換素子の前記第1の端子に接続され、
前記行選択線には、1画素行分の信号が前記信号線から読み取られる期間よりも長いアクティブ期間に亘って、信号が印加されるようにしてあり、
前記アクティブ期間は、隣接する行選択線に信号が印加される期間と時間的に一部重なり、
前記信号線の一端に接続され、前記アクティブ期間中における時間的に重なりのある期間に前記信号線に印加される電圧と、前記アクティブ期間中における時間的に重なりのない期間に前記信号線に印加される電圧との差分を出力する信号処理回路を備えること
を特徴とするイメージセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージセンサに関し、特に各画素に増幅回路を設けたイメージセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
X線の透過像により調査対象の内部を非破壊で検査する技術は、医療、工業用非破壊検査の分野などにおいて、欠くことのできない技術となっている。特にX線の透過像を電子データとして直接取り込むX線イメージセンサは、撮影の迅速性、画像処理による読影補助、動画対応可能などの理由から、広く用いられるようになった。このX線イメージセンサとして主に用いられているのは、Flat Panel Detector(FPD)と呼ばれるデバイスであり、Metal−Oxide Semiconductor(MOS)型イメージセンサの一種である。FPDは2次元に配置された各画素に、X線を電荷に変換する光電変換部と、光電変換部に蓄積された信号電荷を外部に取り出すスイッチング素子を配置したものである。FPDは、ガラスなどの大面積基板上に薄膜半導体技術を用いて作製される。それは、X線に対応可能な縮小光学系を容易に作ることができないため、FPDの大きさが調査対象と同等以上必要となるからである。従って、画素に配置されるスイッチング素子として、Thin Film Transistor(TFT)が用いられる。
【0003】
FPDはX線を電荷に変換する方式の違いにより大きく2つに分類される。一つは、X線を可視光に変換し、その可視光を電荷に変換する間接変換方式であり、もう一つは、X線を直接電荷に変換する直接変換方式である。間接変換方式のFPDの従来例として、特許文献1の第5図に開示された構造がある。これは、フォトダイオードとトランジスタの形成部に絶縁膜を介して蛍光体層が積層された構造を有している。X線の照射により蛍光体層が可視光を発光し、その可視光をフォトダイオードで電荷に変換している。またこの例では、フォトダイオードとトランジスタをamorphous silicon(a−Si)で形成する例を開示している。一方、直接変換方式のFPDの従来例として、特許文献2の図1に開示された構造がある。これはトランジスタに光導電層が接続された画素が、基板上に形成された構造を有している。X線は光導電層で吸収され直接電荷に変換される。この例では、光導電体層としてZnO、CdS、CdSeなどを用いる方法を開示している。これら両方式のFPDは、信号は電荷として出力され、外部に設けられた積分器等の信号検出回路で電圧に変換され、デジタル化される。ここで示した例は、各画素で得られた信号電荷そのものを出力するため、信号電荷を画素内で増幅していないという意味で、Passive−Pixel Sensor(PPS)と分類される場合がある。
【0004】
近年、医療の分野において、X線診断装置に対し、低被曝化、高精細化が強く求められるようになってきた。低被曝化のためにX線照射量を減らすと、FPDで検出される信号電荷が減少し、S/N比を劣化させる。また、高精細化のためにFPDの画素サイズを小さくしても、それに応じて信号電荷も減少しS/N比が劣化する。つまり、低被曝化と高精細化を両立させるには、FPDのS/N比を高くすることが必要不可欠となるのである。
【0005】
イメージセンサの高S/N化のための技術として、CMOSイメージセンサに適用されているActive−Pixel Sensor(APS)という方法がある。これは、イメージセンサの各画素に、フォトダイオード等の光電変換素子の他に増幅回路を設け、光電変換素子の信号を増幅し、出力するという技術である。この技術によれば、信号のS/N比を悪化させることなく、イメージセンサの高精細化が可能となる。CMOSイメージセンサは、通常、単結晶Si基板上に集積され、主に光学カメラ等に用いられるものであるが、このAPS技術を薄膜半導体に適用する試みが行われてきた。例えば、特許文献3で開示された方法などである。
【0006】
しかしながら、APSを薄膜半導体へ適用するには、TFTの閾値電圧ばらつきを補正する手段が必須となる。例えば、薄膜半導体として多結晶Si TFTの場合、閾値電圧の面内ばらつきが極めて大きいという問題がある。このばらつきは、多結晶Siの結晶粒径のばらつきなどに起因する本質的な問題である。一方、a−Si TFTを信号の増幅に用いた場合、アモルファスという構造から、多結晶Si TFTのような結晶構造に起因する閾値電圧のばらつきという問題は生じない。しかし、信頼性上の問題が生ずる。それは、a−Si TFTではゲート−ソース間に電圧が印加され続けると、閾値電圧が大きく変動するという現象である。増幅回路に用いるTFTには、ゲート−ソース間に常にTFTを導通状態とする電圧が印加され続ける。そのため、増幅回路用TFTの閾値電圧が変動し、それに伴い出力電圧も変動してしまうのである。この信頼性に関わる課題は、アモルファス酸化物半導体を用いたTFTでも同様に発生する。
【0007】
このようなTFTの閾値ばらつきに伴う、画素の出力ばらつきを補正する手段として、幾つかの方法が提案されている。
【0008】
一つは特許文献4に開示されているように、イメージセンサの動作開始前に、各画素の増幅用TFTにリファレンス電圧を供給し、その際の出力ばらつきをメモリ等に保持し、動作時には検出された信号からばらつき成分を除去するという方法である。しかしこの方法では、イメージセンサの信号を検出する検出回路のダイナミックレンジを極めて大きく設定しなければならないという問題が生ずる。例えば、薄膜半導体として多結晶Siを用いた場合、TFTの閾値電圧ばらつきは1V以上になる場合が有る。これは、イメージセンサの出力電圧振幅が1V程度であることを考えると、検出回路のダイナミックレンジを倍以上に設定しなければならないことを意味する。検出回路の精度と動作速度を維持したままダイナミックレンジを倍以上にすることは、検出回路の設計を困難化させ、製造コストを高くする要因となる。
【0009】
もう一つは、Correlated Double Sampling(CDS)と呼ばれる技術である。この技術は、イメージセンサの信号成分を含んだ出力電圧と、フォトダイオードをリセット後の出力電圧との差分をとることで、増幅回路のオフセット電圧誤差を除去する手法である。これをMOS型イメージセンサに適用した例を図13に示す。この図は、1画素分の回路200とCDSを行う信号処理回路600とを示した回路図である。イメージセンサの1画素200は、フォトダイオード210と、増幅用トランジスタ220、選択用トランジスタ230とリセット用トランジスタ240で構成されている。選択用トランジスタ230のソース端子は信号線Dmに接続されており、各信号線には負荷抵抗310が接続されている。選択用トランジスタ230が導通状態となった場合、増幅用トランジスタ220と負荷抵抗310とで、ソースフォロワ回路が構成されている。信号処理回路600は、初段アンプ610、スイッチ620、スイッチ621、容量630、容量631、差動アンプ611で構成されている。
【0010】
図14のタイミングチャートを用いてCDSの動作を説明する。時刻t0において選択信号Gnがハイレベルとなり、選択用トランジスタ230が導通状態となり、増幅用トランジスタ220のソース電位が信号線Dmに設けられた負荷抵抗310の両端電位として出力される。時刻t1において制御信号φ1がハイレベルとなり、スイッチ620が導通状態となり、時刻t2において制御信号φ1がローレベルに変わりスイッチ620が非導通状態となることで、この時の負荷抵抗310の電圧V1が容量630に保持される。時刻t3において、リセット制御信号Rnがハイレベルとなり、リセットトランジスタ240が導通状態となることで、フォトダイオード210のカソード電位がVBPにリセットされる。時刻t4において制御信号φ2がハイレベルとなり、スイッチ621が導通状態となり、時刻t5において制御信号φ2がローレベルに変わりスイッチ621が非導通状態となることで、このときの負荷抵抗310の電圧V1が容量631に保持される。
【0011】
ここで、初段アンプ610と差動アンプ611の電圧増幅率が共に1であるとする。時刻t2におけるフォトダイオード210のカソード電圧VpcがVsigであったとすると、V1の電圧はα・Vsig−Vofとなり、これが容量630に保持されることになる。時刻t5では、フォトダイオード210のカソード電圧がVBPにリセットされているので、V1の電圧はα・VBP−Vofとなる。この電圧が容量631に保持されることになるため、差動アンプ611の出力V4は、α(Vsig−VBP)となる。αは増幅用トランジスタ220と負荷抵抗310で構成されるソースフォロワ回路の電圧増幅率であり、Vofはオフセット電圧である。オフセット電圧Vofは増幅用トランジスタ220の閾値電圧に依存した値であり、個々の画素の増幅用トランジスタ220の閾値電圧がばらつくと、オフセット電圧Vofもばらつくことになる。しかし、CDS動作を行う事で、差動アンプ611の出力電圧には、オフセット電圧が含まれなくなることから、増幅用トランジスタ220の閾値電圧のばらつきによる影響を受け無くすることができる。
【0012】
しかし、図13で示したイメージセンサでは、光感度が低下するという問題が生ずる。CDSを行う場合、光信号に応じた出力と、フォトダイオードのリセット電圧に応じた出力とが必要になる。そのため、画素を選択する選択信号と、フォトダイオードをリセットするリセット制御信号とが必要となる。これらは画素行毎に設けなければならず、その配線を敷設するための面積が必要となり、画素の面積におけるフォトダイオードの面積の割合であるフィルファクターが小さくなってしまう。結果として、光感度が低下するのである。さらに、1つの画素行毎に選択信号とリセット制御信号とを供給するための駆動回路が必要となり、イメージセンサの製造コストが上昇する。
【0013】
APS画素を有したイメージセンサにおいて、リセット制御用の専用信号を用いることなく、リセット動作を行う方法が、特許文献5の図2に開示されている。ここで開示された方法は、センサのリセットを次の選択信号で代用する方法である。これにより、専用のリセット配線を敷設する必要がなく、フィルファクターを低下させることもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平4−206573号公報
【特許文献2】特開平11−211832号公報
【特許文献3】特開平1−184954号公報
【特許文献4】特開平10−108075号公報
【特許文献5】特開平10−108074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、この方法では、各画素の増幅用トランジスタの閾値電圧のばらつきによる出力信号のばらつきを補正することができない。CDSにより増幅用トランジスタの閾値電圧ばらつきを補正するには、増幅用トランジスタに信号が入力されているときの出力と、増幅用トランジスタにフォトダイオードのリセット電圧あるいはリファレンス電圧が入力されているときの出力との差分をとる必要がある。しかしながら、ここで開示されている方法では、ある画素のリセットが、別の画素の信号を出力する期間に行われるため、増幅用トランジスタにフォトダイオードのリセット電圧が入力されているときの出力を取り出すことができない。従って、画素の増幅用トランジスタのオフセットばらつきを補正するCDSは実施不可能である。付け加えるならば、特許文献5において触れられているCDSは、積分器に対して行われるものであり、画素の増幅用トランジスタに対しては実施されていない。
【0016】
本発明の目的は、上記課題を鑑み、各画素に薄膜半導体による増幅用トランジスタを配置したイメージセンサにおいて、光感度を低下させることなく、増幅用トランジスタの初期特性に起因する閾値電圧のばらつき、経時変化に起因する閾値電圧のばらつきを補償できる、イメージセンサの構成および動作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に関わるイメージセンサは、縦、横に配置された複数の信号線及び複数の行選択線で区画された画素の各々に、光電変換素子、第1のトランジスタ、第2のトランジスタ、第3のトランジスタが配置されたイメージセンサであって、前記光電変換素子は、第1の端子が前記第1のトランジスタのゲート端子に接続され、第2の端子が第1の電源線に接続されており、前記第1のトランジスタは、ドレイン端子が第2の電源線に接続され、ソース端子が前記第2のトランジスタのドレイン端子に接続され、前記第2のトランジスタは、ゲート端子が前記行選択線に接続され、ソース端子が前記信号線に接続され、前記第3のトランジスタは、ゲート端子が隣接する画素行の行選択線に接続され、ドレイン端子が第3の電源線に接続され、ソース端子が前記光電変換素子の前記第1の端子に接続され、前記画素の画素行の各々に配置される行選択線の数は1つであり、前記行選択線には、1画素行分の信号が前記信号線から読み取られる期間よりも長いアクティブ期間に亘って、信号が印加されるようにしてあり、前記アクティブ期間は、隣接する行選択線に信号が印加される期間と時間的に一部重なることを特徴とする。
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に関わるイメージセンサは、一端が前記光電変換素子の前記第1の端子に接続され、他端が前記第3のトランジスタの前記ゲート端子に接続される容量を備えることを特徴とする。
【0019】
上記目的を達成するために、本発明の第3の観点に関わるイメージセンサは、前記イメージセンサの全画素の信号を読み出す期間において、前記行選択線に信号が印加される期間が1回だけであることを特徴とする。
【0020】
上記目的を達成するために、本発明の第4の観点に関わるイメージセンサは、前記信号線の一端に接続され、前記アクティブ期間中における時間的に重なりのある期間に前記信号線に印加される電圧と、前記アクティブ期間中における時間的に重なりのない期間に前記信号線に印加される電圧との差分を出力する信号処理回路を備えることを特徴とする。
【0021】
上記目的を達成するために、本発明の第5の観点に関わるイメージセンサは、前記第1のトランジスタ、第2のトランジスタ、及び第3のトランジスタは各々、n型トランジスタであり、前記光電変換素子は、前記第1の端子がカソード端子であり、前記第2の端子がアノード端子であるフォトダイオードであることを特徴とする。
【0022】
上記目的を達成するために、本発明の第6の観点に関わるイメージセンサは、前記第1の電源線に印加される電圧は、前記第2の電源線に印加される電圧よりも低いことを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明の第7の観点に関わるイメージセンサは、縦、横に配置された複数の信号線及び複数の行選択線で区画された画素の各々に、光電変換素子、第1のトランジスタ、第2のトランジスタ、第3のトランジスタが配置されたイメージセンサであって、前記光電変換素子は、第1の端子が前記第1のトランジスタのゲート端子に接続され、第2の端子が第1の電源線に接続されており、前記第1のトランジスタは、ドレイン端子が第2の電源線に接続され、ソース端子が前記第2のトランジスタのドレイン端子に接続され、前記第2のトランジスタは、ゲート端子が前記行選択線に接続され、ソース端子が前記信号線に接続され、前記第3のトランジスタは、ゲート端子が隣接する画素行の行選択線に接続され、ドレイン端子が第3の電源線に接続され、ソース端子が前記光電変換素子の前記第1の端子に接続され、前記行選択線には、1画素行分の信号が前記信号線から読み取られる期間よりも長いアクティブ期間に亘って、信号が印加されるようにしてあり、前記アクティブ期間は、隣接する行選択線に信号が印加される期間と時間的に一部重なり、一端が前記光電変換素子の前記第1の端子に接続され、他端が前記第3のトランジスタの前記ゲート端子に接続される容量を備えることを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明の第8の観点に関わるイメージセンサは、縦、横に配置された複数の信号線及び複数の行選択線で区画された画素の各々に、光電変換素子、第1のトランジスタ、第2のトランジスタ、第3のトランジスタが配置されたイメージセンサであって、前記光電変換素子は、第1の端子が前記第1のトランジスタのゲート端子に接続され、第2の端子が第1の電源線に接続されており、前記第1のトランジスタは、ドレイン端子が第2の電源線に接続され、ソース端子が前記第2のトランジスタのドレイン端子に接続され、前記第2のトランジスタは、ゲート端子が前記行選択線に接続され、ソース端子が前記信号線に接続され、前記第3のトランジスタは、ゲート端子が隣接する画素行の行選択線に接続され、ドレイン端子が第3の電源線に接続され、ソース端子が前記光電変換素子の前記第1の端子に接続され、前記行選択線には、1画素行分の信号が前記信号線から読み取られる期間よりも長いアクティブ期間に亘って、信号が印加されるようにしてあり、前記アクティブ期間は、隣接する行選択線に信号が印加される期間と時間的に一部重なり、前記信号線の一端に接続され、前記アクティブ期間中における時間的に重なりのある期間に前記信号線に印加される電圧と、前記アクティブ期間中における時間的に重なりのない期間に前記信号線に印加される電圧との差分を出力する信号処理回路を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、イメージセンサの光感度を低下させず、製造コストを高くすることなく、増幅用トランジスタの初期特性に起因する閾値電圧のばらつき、経時変化による閾値電圧のばらつきを補償することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のイメージセンサの構成を示したブロック図である。
図2】本発明のイメージセンサの画素の構成を示した回路図である。
図3】本発明のイメージセンサに適用可能な検出回路の回路図である。
図4】本発明のイメージセンサに適用可能な駆動回路の回路図である。
図5】本発明のイメージセンサの駆動方法を示したタイミングチャートである。
図6】本発明のイメージセンサに適用可能な信号処理回路の回路図である。
図7】本発明のイメージセンサの駆動方法を示したタイミングチャートである。
図8】本発明のイメージセンサに適用可能な検出回路の回路図である。
図9】本発明のイメージセンサに適用可能な検出回路の回路図である。
図10】本発明のイメージセンサに適用可能な駆動回路の動作を示したタイミングチャートである。
図11】本発明のイメージセンサの画素の構成を示した回路図である。
図12】本発明のイメージセンサの画素の構成を示した回路図である。
図13】従来のイメージセンサの構成を示した回路図である。
図14】従来のイメージセンサの動作を示したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係わるイメージセンサについて図面を参照して詳細に説明する。尚、各図面における構成要素の大きさや縮尺は、図の視認性を確保するために適宜変更して記載している。また、各図面におけるハッチングは、各構成要素を区別するためのものであり、必ずしも断面を意味するものではない。
【0026】
図1は本発明に関わるイメージセンサ100の構成を示したものである。イメージセンサ100は、縦横にマトリクス状に配置された画素200、画素列毎に設けられた信号線D1〜D4、及びその信号線D1〜D4それぞれに接続された検出回路300を備える。また、イメージセンサ100は、画素行毎に設けられた行選択線G1〜G5、その行選択線G1〜G5を駆動する駆動回路400、及び各画素200に電圧を供給する電源回路500で構成されている。電源回路500には、電源線VDD(第2の電源線)、VBP(第3の電源線)、及びVBM(第1の電源線)が接続されており、それぞれが各画素200に対して電圧を出力する。尚、以下では、電源線VDD、VBP、VBMの電圧をそれぞれ、VDD、VBP、VBMとも称する。
【0027】
図2は本発明のイメージセンサ100の1つの画素200の等価回路を示したものである。尚、各画素200の構成は同様であるため、特に断りのない限り、以下ではm列目の信号線Dmと、n行目の行選択線Gnとで区画された画素200を代表して説明する。画素200は、フォトダイオード(光電変換素子)210、増幅用トランジスタ(第1のトランジスタ)220、選択用トランジスタ(第2のトランジスタ)230、及びリセット用トランジスタ(第3のトランジスタ)240で構成されている。増幅用トランジスタ220、選択用トランジスタ230、及びリセット用トランジスタ240は例えば、n型のTFTである。フォトダイオード210は、アノードが電源線VBMに接続され、カソードが増幅用トランジスタ220のゲート端子及びリセット用トランジスタ240のソース端子に接続されている。増幅用トランジスタ220は、ドレイン端子が電源線VDDに接続され、ソース端子が選択用トランジスタ230のドレイン端子に接続されている。選択用トランジスタ230は、ゲート端子が行選択線Gnに接続され、ソース端子が信号線Dmに接続されている。リセット用トランジスタ240は、ドレイン端子が電源線VBPに接続され、ゲート端子が行選択線Gn+1に接続されている。ここで電圧VBPは電圧VBMよりも高くなるように設定され、VBP−VBMの値がフォトダイオード210の逆バイアス電圧となるようにする。また電圧VDDは電圧VBPと同じかそれ以上の電圧に設定される。従って、電圧VBMは電圧VDDより低い。
【0028】
本発明のイメージセンサ100の検出回路300は、各信号線D1〜D4に接続された検出部がアレイ状に配置されたものであり、検出部としては、図3の回路図で示したものなどを用いることができる。図3で示した検出部は、信号線Dmに接続されたものであり、負荷抵抗310、放電用トランジスタ320とで構成されている。負荷抵抗310は、一端が信号線Dmに接続され、他端が電源線VSSへ接続されている。放電用トランジスタ320は、ドレイン端子が信号線Dmに接続され、ソース端子が電源線VSSに接続され、ゲート端子が制御線LRSTに接続されている。尚、以下では電源線VSSの電圧をVSSとも称し、制御線LRSTに印加される信号をLRSTとも称する。ここで、負荷抵抗310の抵抗値は、信号線Dmの寄生容量との積で決まる時定数が、画素200の選択用トランジスタ230が導通状態となる期間の少なくとも100倍以上で、可能な限り大きくなるように設定される。また、電圧VSSは電圧VDDよりも小さくなるように設定される。
【0029】
本発明のイメージセンサ100の駆動回路400は、行選択線G1〜G5に順次パルスを出力する機能を有する回路であり、例えば図4で示すように、Dフリップフロップ(D−FF)410を縦列に接続し、その出力にANDゲート420を接続した回路を用いることができる。各D−FF410の出力は、対応するANDゲート420に入力されると共に、接続してある他のD−FF410に入力される。また、各ANDゲート420は、対応する行選択線G1〜5の何れかにパルスを出力するように接続されている。奇数番目の行選択線G1、G3、G5に対応するANDゲート420は、対応するD−FF410の出力と、制御線DEC1からデコーダ信号DEC1とを入力とする。偶数番目の行選択線G2、G4に対応するANDゲート420は、対応するD−FF410の出力と、制御線DEC2からデコーダ信号DEC2とを入力とする。このように構成された駆動回路400は、各行選択線G1〜G5に順次パルスを出力するように動作する。尚、駆動回路400の動作については後述する。
【0030】
次に、本発明のイメージセンサ100の動作について図5のタイミングチャートを用いて説明する。本発明のイメージセンサ100は、各画素200の信号を横方向に配置された画素行単位で信号を読み取る動作を行う。図5における期間Tnは、n行目の画素行の信号を読み取る期間である。n行目の画素行の画素200の選択用トランジスタ230のゲート端子は、行選択線Gnに接続されており、期間Tnでは行選択線Gnがハイレベルであるため、選択用トランジスタ230は導通状態である。時刻T0において、検出部の制御信号LRSTがハイレベルとなり、各信号線D1〜D4の電位はVSSへリセットされる。期間TAnの中で制御信号LRSTがローレベルに変化した後、n行目の各画素200のフォトダイオード210に保持された信号電圧がそれぞれ、増幅用トランジスタ220を介して各信号線D1〜D4に出力される。このときの信号線Dmの電圧をVaとする。期間TBnの始まりである時刻T1に、制御信号LRSTがハイレベルとなり、各信号線D1〜D4の電位はVSSへリセットされる。またn+1行目の行選択線Gn+1もハイレベルとなる。n行目の各画素200のリセット用トランジスタ240のゲートは、行選択線Gn+1に接続されているため、n行目の各画素200のフォトダイオード210のカソード電圧は電圧VBPにリセットされる。そして、制御信号LRSTがローレベルへ変化した後、n行目の各画素200の増幅用トランジスタ220のゲートに電圧VBPを入力したときの電圧が、信号線D1〜D4それぞれへ出力される。このときの信号線Dmの電圧をVbとする。
【0031】
期間TBnでは、行選択線GnとGn+1とが共にハイレベルである。そのため、n行目とn+1行目の画素行の選択用トランジスタ230が導通状態となる。しかし、信号線Dmにはn行目のフォトダイオード210のカソード電圧であるVBPに応じた電圧が出力される。その理由を以下に説明する。
【0032】
フォトダイオード210に光が照射された場合、フォトダイオード210のカソード電圧は照射された光量に応じてVBPよりも小さくなる。また、光が照射されない場合でも、フォトダイオード210のカソード−アノード間にはリーク電流が流れるため、カソード電圧はVBPよりも小さくなる。さらに、リセット用トランジスタ230にn型トランジスタを用いていることから、リセット動作が終了しゲート電圧が低下することに伴い、リセット用トランジスタ240のソース−ゲート間の寄生容量を介したフィードスルーにより、フォトダイオード210のカソード電圧が減少する。したがって、期間TBnにおいてn行目の画素200のフォトダイオード210のカソード電圧の方が、n+1行目の画素200のフォトダイオード210のカソード電圧よりも高くなる。
【0033】
一方、画素200の増幅用トランジスタ220をn型とした場合、増幅用トランジスタ220は接続された信号線Dmの電位を上昇させることはできても下降させることができない。さらに、信号線Dmに接続された負荷抵抗310の抵抗値と、信号線Dmの寄生容量とで決まる時定数の値を、期間Tnの100倍以上に設定しているので、期間Tnにおいて、信号線Dmの電位が低下することはほとんどない。ちなみに、信号線Dmの寄生容量と負荷抵抗310とで決まる時定数がTnの100倍であり、増幅用トランジスタ220のソース電位が、入力に対応した出力電圧に達し、オフ状態とみなせる状態になったと仮定した場合、期間Tnにおいて、負荷抵抗310を流れる電流により変動する信号線Dmの電圧変動率は1%以下である。そのため、期間TBnでは、n行目の画素200のフォトダイオード210のカソード電圧とn+1行目の画素200のフォトダイオード210のカソード電圧との内、電圧の高いn行目の画素200のカソード電圧に依存した出力が、n行目の画素200の増幅用トランジスタ220を介して信号線Dmに出力される。
【0034】
画素200内の増幅用トランジスタ220、及び選択用トランジスタ230と、信号線Dmに接続された負荷抵抗310とは、ソースフォロワ回路を形成する。選択用トランジスタ230のオン抵抗が十分小さく、負荷抵抗310の値が十分大きい場合、増幅用トランジスタ220のゲートに電圧VGを印加すると信号線Dmの電圧は下記式(1)で表される。
【0035】
【数1】
【0036】
ここで、αはソースフォロワ回路の電圧増幅率であり、1以下の値となる。また、Vofはオフセット電圧であり、増幅用トランジスタ220の閾値電圧に依存した値となる。期間TAnにおけるn行目の画素200のフォトダイオード210のカソード電圧をVsとすると、前出の電圧Vaは下記式(2)で表される。
【0037】
【数2】
【0038】
同様に電圧Vbは下記式(3)で表される。
【0039】
【数3】
【0040】
従って、CDS動作により、電圧VaとVbとの差分を取ることで、増幅用トランジスタ220の閾値電圧に依存したオフセット電圧Vofを取り除くことができる。
【0041】
CDS動作を実現する信号処理回路600の一例を図6に示す。この信号処理回路600は、初段アンプ610、差動アンプ611、2つのスイッチ620、621、2つの容量630、631とで構成される。スイッチ620は制御信号φ1で制御され、スイッチ621は、制御信号φ2で制御される。初段アンプ610の入力端子は信号線Dmに接続されている。そして、初段アンプ610の入力インピーダンスは高く設定されていることが望ましい。図7は動作を示したタイミングチャートである。以下では、説明の便宜上、初段アンプ610及び差動アンプ611の電圧増幅ゲインが1の場合について説明するが、1以外の値であってもよい。時刻Tf1にスイッチ620がオフとなるように制御信号φ1が出力されることにより、電圧Vaが容量630に保持される。また、時刻Tf2にスイッチ621がオフとなるように制御信号φ2が出力されることにより、電圧Vbが容量631に保持される。容量630に保持された電圧と容量631に保持された電圧との差分であるVa−Vbが差動アンプ611の出力として出力される。
【0042】
ここまで、本発明のイメージセンサ100の一例として、画素200が縦横に、4列、4行のマトリクス状に配置された例を示してきたが、画素列の数、画素行の数、及び全画素数は目的に応じて自由に変えることができるのは、言うまでもない。また、本発明のイメージセンサ100に適用可能な検出回路の負荷抵抗310には、図8で示すようなアクティブ負荷を用いることもできる。図8の311がアクティブ負荷用のトランジスタを示しており、330がアクティブ負荷用のトランジスタにバイアス電圧を供給するトランジスタであり、340は基準電流源である。さらに、図9に示すように、放電用トランジスタ320だけで構成してもよい。
【0043】
ここで、本発明のイメージセンサ100に適用可能な駆動回路として、図4で示した駆動回路400は、図10に示したタイミングチャートのように動作させることができる。D−FF410は、イメージセンサ100の1行分の信号を検出する期間Tnと等しい周期をもったクロックで駆動する。奇数段目のD−FF410の出力に接続されたANDゲート420に入力されるデコード信号DEC1と、偶数段目のD−FF410の出力に接続されたANDゲート420に入力されるデコード信号DEC2とは、互いにTnの3/2倍の長さのハイレベル期間を有し、位相が異なるパルスである。このような制御信号で駆動回路400を動作させることで、図5に示したような行選択線Gn−1、Gn、及びGn+1の信号が得られる。
【0044】
本発明のイメージセンサ100では、光感度を低下させず、さらに製造コストを高くすることなく、増幅用トランジスタ220の初期特性ばらつき、経時変化による特性ばらつきを補償することが可能となる。その理由について以下に説明する。
【0045】
本発明のイメージセンサ100では、フォトダイオード210のリセット制御に専用の制御信号を用いることなく、隣接する画素行の選択信号で行うため、画素行毎に設ける配線数を減らすことができる。そのため、画素200の区画内に配置できるフォトダイオード210の面積が減少することが無い。従って、光感度が低下しない。
【0046】
本発明のイメージセンサ100では、フォトダイオード210のリセット制御として、隣接する画素行の選択信号を用いているにもかかわらず、フォトダイオード210のリセット後の電圧を、画素200の増幅用トランジスタ220を介して読み出すことが可能である。従って、信号を含んだ電圧と、リセット後の電圧との差分を検出する所謂CDS動作が可能となり、増幅用トランジスタ220の初期特性及び経時変化に起因する閾値電圧のばらつきを補償することが可能となる。
【0047】
本発明のイメージセンサ100では、選択信号として単純なパルス波形を用いることができる。ここで言う単純なパルス波形とは、例えば、期間Tnの数倍程度の期間内に、複数回のハイレベル、ローレベルという変化を行うような複雑なパルス波形では無く、イメージセンサ100の全画素200の信号が読み出される1回のフレーム期間内に、1回だけハイレベルになるような単純なパルス波形であるという意味である。そのため、駆動回路として、簡略な回路を用いることが可能となるため、製造コストが高くなることが無い。さらに、制御信号として選択信号のみが必要となるため、従来のようにリセット信号を別途供給する駆動回路が不要となり、製造コストを下げることができる。
【0048】
(実施形態2)
図11は、本発明の実施形態2に係わるイメージセンサ100の画素200の構成を示した回路図である。実施形態2に係わるイメージセンサ100の全体構成は、図1で示した本発明の実施形態1に係わるイメージセンサ100の全体構成と同じであり、画素200の構成だけが異なっている。
【0049】
本発明の実施形態2に係わるイメージセンサ100の画素200は、フォトダイオード210、増幅用トランジスタ220、選択用トランジスタ230、リセット用トランジスタ240、及び補正用容量250で構成されている。フォトダイオード210のアノードは電源線VBMに接続され、カソードは増幅用トランジスタ220のゲート端子及びリセット用トランジスタ240のソース端子に接続されている。増幅用トランジスタ220のドレイン端子は電源線VDDに接続され、ソース端子は選択用トランジスタ230のドレイン端子に接続されている。選択用トランジスタ230のゲート端子は、行選択線Gnに接続され、ソース端子は信号線Dmに接続されている。リセット用トランジスタ240のドレイン端子は電源線VBPに接続され、ゲート端子は行選択線Gn+1に接続されている。補正用容量250は、一端がフォトダイオード210のカソードへ接続され、もう一端が行選択線Gn+1に接続されている。VBP、VBMの電圧設定は、実施形態1の設定と同じにする。また、本発明のイメージセンサ100の検出回路300、駆動回路400、電源回路500は、実施形態1と同じ構成のものを用いることができる。CDS動作を行うための信号処理回路も、実施形態1と同じ構成のものを用いることができる。
【0050】
本発明の実施形態2に関わるイメージセンサ100の動作は、実施形態1で示した動作方法と同じ方法で行うことができる。
【0051】
本発明のイメージセンサ100では、実施形態1で示したイメージセンサ100と同様に、光感度を低下させず、さらに製造コストを高くすることなく、増幅用トランジスタ220の初期特性に起因する閾値電圧のばらつきと、経時変化に起因する閾値電圧のばらつきとを補償することが可能となる。さらに、実施形態2のイメージセンサ100は、補償可能な増幅用トランジスタ220の閾値電圧のばらつきの大きさを、実施形態1のイメージセンサ100よりも拡大させることが可能となる。その理由について、以下に説明する。
【0052】
本発明の実施形態2のイメージセンサ100において、光感度を低下させず、さらに製造コストを高くすることなく、増幅用トランジスタ220の初期特性及び経時変化に起因する閾値電圧のばらつきを補償することが可能となる理由は、実施形態1のイメージセンサ100で同様の効果が得られる理由と同じである。
【0053】
次に、本発明の実施形態2のイメージセンサ100では、実施形態1のイメージセンサ100よりも補償可能な増幅用トランジスタ220の閾値電圧のばらつきの大きさが拡大される理由について、説明する。実施形態1のイメージセンサ100の説明の中で既に述べたとおり、イメージセンサ100のn行目の画素行のフォトダイオード210がリセットされる期間に、n+1行目の画素行の選択用トランジスタ230が導通状態となっている。つまりこの期間においては、n行目とn+1行目との画素行の選択用トランジスタ230が共に導通状態である。この期間において、n行目の画素行のフォトダイオード210のリセット電圧に応じた信号が信号線Dmに出力されれば、CDS動作が実行でき、増幅用トランジスタ220の特性ばらつきが補償される。この動作が実現する要件は、上記期間において、下記式(4)の条件が満たされる場合である。
【0054】
【数4】
【0055】
ここで、Vthは予め規定された増幅用トランジスタ220の閾値電圧である。VNa(n)はn行目の画素行の画素200のフォトダイオード210のカソード電圧であり、ΔVth(n)は、Vthと当該画素200の増幅用トランジスタ220の閾値電圧との差分である。即ち、ΔVth(n)は、n行目の画素200に設けられた増幅用トランジスタ220の閾値電圧が有するVthとの誤差を表している。同様にVNa(n+1)はn+1行目の画素行の画素200のフォトダイオード210のカソード電圧であり、ΔVth(n+1)はVthと当該画素200の増幅用トランジスタ220の閾値電圧との差分である。即ち、ΔVth(n+1)はn+1行目の画素200に設けられた増幅用トランジスタ220の閾値電圧が有するVthとの誤差を表している。
【0056】
実施形態1の説明の中で既に述べたとおり、VNa(n)とVNa(n+1)とを比較した場合、VNa(n+1)の方が必ず小さくなるが、ΔVth(n)とΔVth(n+1)とのどちらが大きくなるかは定まらない。増幅用トランジスタ220は、全ての画素200において同一の寸法で作られるため、全て同じ閾値電圧Vthとなるはずであるが、製造時の形状のばらつき、膜厚のばらつき等の初期特性に起因する閾値電圧がばらつき、さらに経時変化によってもばらつきが生じる。そのため、実際には、個々の画素200の増幅用トランジスタ220で閾値電圧は異なる値となる。ここで、イメージセンサ100の全ての画素200の増幅用トランジスタ220の中で、Vthとの差分の最大値をΔVth(MAX)、最小値をΔVth(MIN)とし、その差分ΔVth(MAX)−ΔVth(MIN)をΔVth(RNG)とした場合、下記式(5)が成り立てば、式(4)は常に成立する。
【0057】
【数5】
【0058】
現在議論している期間においては、VNa(n)はフォトダイオード210のリセット電圧であり、VNa(n+1)はフォトダイオード210のリセット前の電圧である。VNa(n+1)が最も大きくなるのは光が照射されない状態であり、このときVNa(n+1)はフォトダイオード210のリーク電流の大きさに依存する。また、リセット用トランジスタ240のソース−ゲート間の寄生容量は小さいため、フィードスルーによるカソード電圧の低下も大きくない。そのためΔVth(RNG)が大きいと、式(5)が成り立たない可能性がある。実施形態2のイメージセンサ100では、フォトダイオード210のカソードに補正用容量250が接続され、補正用容量250のもう一方の端子が行選択線Gn+1、つまり、リセット用トランジスタ240のゲートに接続されている。そのため、フォトダイオード210のカソード電圧のリセットが終了した後、行選択線Gn+1の電位がローレベルに変化した際に、補正用容量250を介してフォトダイオード210のカソード電圧が低くなる方向へ変動する。行選択線Gn+1の電位がハイレベルからローレベルに変化したときにおけるノードNaの電位の変動量は下記式(6)で表される。
【0059】
【数6】
【0060】
ここで、Cfは補正用容量250の容量値、Cpdはフォトダイオード210の等価容量の値、Cpはフォトダイオード210のカソードのノードNaのその他の寄生容量の値、ΔVrstは行選択線Gn+1に供給されるパルスの波高値、即ちGn+1の電位がハイレベルであるときとローレベルであるときとの差分の値である。従って、式(5)においては、VNa(n+1)の値を、ΔVの絶対値の分だけ減らすことができる。そのため、式(6)で示されるカソード電圧の変動電圧ΔVの絶対値が、ΔVth(RNG)よりも大きくなるようにCfの値を設定することで、式(5)が常に成り立ち、式(4)が常に成り立つことになる。Cfの値を設定する具体的な方法としては、増幅用トランジスタ220の閾値電圧の製造時のばらつきの統計値、及びイメージセンサ100の使用条件から推定される増幅用トランジスタ220の閾値変動量を基に、ΔVth(RNG)を推定し、式(6)で示されるΔVの絶対値がΔVth(RNG)よりも大きくなるようすることで実現できる。上記のように、増幅用トランジスタ220の閾値電圧のばらつきが大きくとも、それに応じてCfの値を変更することで、必ずCDS動作が実現できることから、補償可能な閾値電圧のばらつきの大きさをより拡大させることが可能となる。
【0061】
ここまで、本発明のイメージセンサ100に適用可能なトランジスタとして、n型トランジスタを挙げてきたが、p型トランジスタであっても適用可能なことは言うまでもない。その際は、図12のようにフォトダイオード210の接続を変更し、各種制御信号の極性を反転させ、増幅用トランジスタ220のドレイン端子に供給する電圧を適宜変更すればよい。
【0062】
また、イメージセンサ100の光電変換素子としてフォトダイオード210を用いる例を示してきたが、光電変換素子としてZnO、CdS、CdSeなどの光導電層を用いることも可能である。
【0063】
さらに、本発明のイメージセンサ100に適用可能なトランジスタとして、多結晶Si TFT、a−Si TFT、酸化物半導体TFT、ペンタセンなどに代表される有機トランジスタがある。特に、酸化物半導体TFTは、製造時の閾値電圧ばらつきが小さく、且つ、移動度が比較的大きいことから好適である。
【符号の説明】
【0064】
100 イメージセンサ
200 画素
210 フォトダイオード(光電変換素子)
220 増幅用トランジスタ(第1のトランジスタ)
230 選択用トランジスタ(第2のトランジスタ)
240 リセット用トランジスタ(第3のトランジスタ)
250 補正用容量
300 検出回路
310 負荷抵抗
311、320、330 トランジスタ
340 基準電流源
320 放電用トランジスタ
400 駆動回路
410 Dフリップフロップ(D−FF)
420 ANDゲート
500 電源回路
600 信号処理回路
610 初段アンプ
611 差動アンプ
620、621 スイッチ
630、631 容量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14