【実施例1】
【0029】
本発明の組立て式防災シェルターは、人力で運搬し室内に搬入可能な大きさ及び重量の複数の構成部材を連結して組み立てられる。
実施例の組立て式防災シェルター10は、全体外観を示す
図10、及び
図10における天井部材14を外して示した
図11に示すように、四隅の柱11と、前面側及び後面側の左右の柱11の上部間を連結する2つの長尺の上部梁12A、及び奥行方向の前後の柱11の上部間をそれぞれ連結する2つの短尺の上部梁12Bと、前面側及び後面側の左右の柱11の下部間を連結する2つの長尺の下部梁13A、及び奥行方向の前後の柱11の下部間を連結する2つの短尺の下部梁13Bと、前記4つの上部梁12A、12Bの上に設置された天井部材14とからなっている。そして、前記天井部材14は、4つの天井パネル4からなる。
なお、上部梁12A、12Bを指す際、場合により、単に上部梁12、又は上部梁12(12A、12B)と記す。また、下部梁13A、13Bを指す際も、場合により、単に下部梁13、又は下部梁13(13A、13B)と記す。
前記柱11、梁(上部梁12及び下部梁13)、天井パネル4は、人力で運搬し室内に搬入可能な大きさ及び重量であって前記構成部材に相当し、この構成部材11、12、13、4を連結して組立て式防災シェルター10が組み立てられる。
【0030】
前記構成部材11、12、13、4のうちの柱11及び梁(上部梁12及び下部梁13)は、詳細は後述するように、シェルターとしての剛性を確保する鋼部材とこの鋼部材の外面に貼り付けられた実施例では木製のパネルとからなり、かつ構成部材同士を連結する連結部において鋼材面が露出しており、構成部材同士を、前記連結部の露出した鋼材面同士を直接接触させて連結した際に、一方の構成部材の外面の木製パネルと他方の構成部材の外面の木製パネルとが互いの隣接端部で隙間なく接することで、連結部の鋼材面が隠される構成である。
なお、前記天井パネル4は、木製パネルを貼り付けていない点で、柱11や梁12、13と同じ意味で構成部材であるとは言えないが、人力で運搬し室内に搬入可能な大きさ及び重量であるという点では構成部材に相当するので、以下の説明では便宜上、柱11や梁12、13と共にまとめて構成部材と言う場合がある。
【0031】
図1は本発明の組立て式防災シェルター10の主として鋼部材の部分(木製パネルを剥がした状態のもの)を示した仮想正面図(実際にこのような状態で存在することはない)、
図2は
図1の右側面図、
図3は
図1の平面図である。
以下の説明において、構成部材である前記柱11及び梁(上部梁12及び下部梁13)における、シェルターとしての剛性を確保する鋼部材の部分(木製パネルを貼り付ける前のもの)を、それぞれに「材」を付加して柱材1及び梁材(上部梁材2及び下部梁材3)と呼ぶ。
したがって、上部梁12A、12Bに対応する鋼部材の部分を上部梁材2A、2Bと呼び、下部梁13A、13Bに対応する鋼部材の部分を下部梁材3A、3Bと呼ぶ。
図12は、組立て式防災シェルター10における、天井パネル4以外の鋼部材の部分、すなわち前記柱材1、上部梁材2A、2B、下部梁材3A、3Bの部分を斜視図で示したものである。
【0032】
図4は
図1における柱材(鋼部材の部分)1の詳細構造を示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は底面図、(ハ)は平面図(但しベースプレートは不図示)、(ニ)は右側面図である。
この柱材1は、3本の角形鋼管1aを
図4(ロ)、(ハ)に示すように等辺の直角三角形をなす配置でベースプレート1b上に固定し、辺をなす2つの角形鋼管1a間の上部及び下部を、それぞれ2本の丸鋼管1cで連結固定し、中間部を若干細い複数の丸鋼管1dでトラス構造を形成するように連結固定した構成である。なお、鋼材どうしの固定という場合、基本的に溶接固定である。1eは全周溶接固定のボルト接合部用の補強プレート、1fはボルト挿通孔である。
【0033】
図5は
図1における上部梁材2における長尺上部梁材2Aの詳細構造を示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は右側面図である。
この長尺上部梁材2Aは、上下の長尺の横枠材2aの左右両端をそれぞれ縦枠材2bで連結固定し、中間部を若干細い4本の丸鋼管2dでトラス構造を形成するように連結固定した構成である。横枠材2a、縦枠材2bはいずれも、柱材1の角形鋼管1aと同サイズの角形鋼管である。
さらに、縦枠材2bの内側面に補強プレート2eを全周溶接固定し、ボルトを水平に貫通させるボルト挿通孔2cをあけ、補強プレート2eの内側面の孔位置に、柱材1の角形鋼管1aとボルトで連結するためのナット7を溶接固定している。
また、上側の横枠材2aに、その下面側から貫通して上方に突出するボルト9の頭部9aを溶接固定している。このボルト9は、天井パネル4を横枠材2aの上面に固定するための手段となる。
【0034】
図6は
図2における上部梁材2における短尺上部梁材2Bの詳細構造を示す正面図である。
この短尺上部梁材2Bは、上下の短尺の横枠材2a’の左右両端をそれぞれ縦枠材2b’で連結固定し、中間部を若干細い2本の丸鋼管2d’でトラス構造を形成するように連結固定した構成である。横枠材2a’、縦枠材2b’はいずれも、柱材1の角形鋼管1aと同サイズの角形鋼管である。
さらに、縦枠材2b’の内側面に補強プレート2e’を全周溶接固定し、ボルトを水平に貫通させるボルト挿通孔2c’をあけ、補強プレート2e’の内側面の孔位置に、柱材1の角形鋼管1aとボルトで連結するためのナット7を溶接固定している。
【0035】
図7は
図1における前面側又は後面側の長尺下部梁材3Aの詳細構造を示す正面図である。
この長尺下部梁材3Aは、上下の長尺の横枠材3aの左右両端をそれぞれ縦枠材3bで連結固定した構成である。横枠材3a、縦枠材3bはいずれも、柱材1の角形鋼管1aと同サイズの角形鋼管である。
さらに、縦枠材3bの内側面に補強プレート3eを全周溶接固定し、ボルトを水平に貫通させるボルト挿通孔3cをあけ、補強プレート3eの内側面の孔位置に、柱材1の角形鋼管1aとボルトで連結するためのナット7を溶接固定している。
【0036】
図8は
図2における短尺下部梁材3Bの詳細構造を示す正面図である。
この短尺下部梁材3Bは、上下の短尺の横枠材3a’の左右両端をそれぞれ縦枠材3b’で連結固定した構成である。横枠材3a’、縦枠材3b’はいずれも、柱材1の角形鋼管1aと同サイズの角形鋼管である。
さらに、縦枠材3b’の内側面に補強プレート3e’を全周溶接固定し、ボルトを水平に貫通させるボルト挿通孔3c’をあけ、補強プレート3e’の内側面の孔位置に、柱材1の角形鋼管1aとボルトで連結するためのナット7を溶接固定している。
【0037】
組立て式防災シェルター10を構成する前述の柱11、上部梁12A、12B、下部梁13A、13Bはそれぞれ、その鋼部材部分である前述の柱材1、長尺上部梁材2A、短尺上部梁材2B、長尺下部梁材3A、短尺下部梁材3Bに木製パネル8を貼り付けて製作する。
柱11は、例えば
図13(イ)に示すように、3本の角形鋼管1aを持つ鋼部材である柱材1の外面に木製パネル8を貼り付けている。図示例では接着剤による貼り付けと、タッピンねじによる貼り付け固定との両者を採用している。
上部梁12は、
図13(ロ)に示すように、鋼部材である上部梁材2の両側面と下面に木製パネル8を貼り付けている。天井パネル4が固定される上面は角形鋼管(横枠材2a)が露出している。
下部梁13は、
図13(ハ)に示すように、鋼部材である下部梁材3の両側面と上下面に木製パネル8を貼り付けている。
【0038】
図9(イ)は
図3の天井パネルの1つを横向きにし拡大して示した図、(ロ)は(イ)のA−A拡大断面図、(ハ)は(ロ)の一部分のみを示した図、(ニ)は(ロ)のB矢視図である。
この天井パネル4は、4本の軽量溝形鋼21を矩形に溶接接続してなる矩形枠22の下面側に、化粧シート24を貼り合わせた矩形の合板25を配し、上面側に矩形の化粧板26を配した構成である。なお、軽量溝形鋼21のボルト挿通孔28のある部分における上下のフランジの外側面にボルト挿通孔付きの鋼板片23を溶接固定し、かつ、ボルト挿通孔28の両側に軽量溝形鋼21の断面コ字形内に嵌め込んだリブプレート27を溶接して、ボルト連結部を補強している。
この天井パネル4は、その両端部を前後の上部梁12Aに載せて、前記上部梁材2Aに溶接固定されて上に突出しているボルト9をボルト挿通孔28より貫通させ、ナット29で締め付けて、上部梁12Aに固定される。
【0039】
上記の組立て式防災シェルター10を組み立てる要領を説明する。
上述の通り、組立て式防災シェルター10を組み立てる構成部材である、4本の柱11と4つの上部梁12(12A、12B)と4つの下部梁13(13A、13B)と、4つの天井パネル4を用意する。
これら構成部材11、12、13、4は、人力で運搬し室内に搬入可能な大きさ及び重量とされているから、組立て施工時に、設置すべき住宅の室内に容易に搬入することができる。
【0040】
柱11と上部梁12(12A、12B)と下部梁13(13A、13B)は、前述の通り、既に鋼部材である柱材1と上部梁材2(2A、2B)と下部梁材3(3A、3B)のそれぞれの外面に木製パネル8を貼り付けている(但し、互いの連結面には木製パネルを貼り付けていない)。
まず、4つの下部梁13(13A、13B)を床上の概ね設置位置に矩形状に配置する。次いで柱11を矩形配置の下部梁13(13A、13B)のコーナー位置にて立て、下部梁13の先端部と柱11の下部とをボルト32で連結する。
この場合、下部梁13及び柱11のそれぞれ鋼部材同士の連結としては、
図1、
図2のようにボルト32で連結することになるが、実際には木製パネル8を貼り付けた状態で連結するので、
図14(イ)、(ロ)に示す態様で、下部梁13の先端部と柱11の下部がそれぞれの鋼部材が直接接触して連結される。
すなわち、下部梁13の先端は角形鋼管3b(下部梁材3の縦枠材3b)が木製パネルのない面S1にて露出しており、柱11の下部は角形鋼管1a(柱材1の3本の角形鋼管1aの一つ)が木製パネルのない面S2にて露出しており、両露出面S1、S2同士が直接接触して連結される。
その連結作業としては、柱11の木製パネル8の下端近傍にあけた開口であるボルト連結作業用孔33からボルト32を手でボルト挿通孔1f、3cに挿入し、縦枠材3bに溶接固定したナット7に螺合させ締着して、下部梁13の縦枠材3bと柱11の角形鋼管1aとを接合する。これにより、下部梁13と柱11とが、それぞれの鋼部材部分の直接接触によりボルト連結される。
上記の説明では長尺下部梁材3Aの符号にて説明したが、短尺下部梁材3Bの場合も連結構造は同じである。
【0041】
次いで、柱11の上部で上部梁12(12A、12B)と柱11とを連結するが、上部梁12(12A、12B)と柱11との連結構造も、
図14で説明した下部梁13と柱11との連結構造と同じであり、説明は省略する。
【0042】
次いで、上部梁12(12A、12B)の上に天井部材14を取り付ける。
天井部材14は、前述した通り、
図9で構造を説明した天井パネル4の4枚からなる。
各天井パネル4を、
図9の説明においても述べたように、その両端部を前後の上部梁12Aに載せて、前記上部梁材2Aの上面に溶接固定されて上に突出しているボルト9をボルト挿通孔28より貫通させ、ナット29で締め付けて、上部梁12Aに固定する。
次いで、固定した4枚の天井パネル4の全体の前後面及び左右側面に、
図10に示すようにやや厚い木製パネル35を貼り付ける。
以上で組立て式防災シェルター10の組立てが完了する。
なお、この組立て式防災シェルター10は、特に床側部分に関して、
図10に示した形態そのままで利用するか、あるいは前面側の下部梁13Aを外した形態で利用するか、あるいは4つの下部梁13(13A、13B)で囲まれた矩形空間を高床とするか、その他適宜の利用方法を採用するとよい。