(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上面と側面とが交差する第1の稜線及び下面と該側面とが交差する第2の稜線にそれぞれ形成され、該上面及び該下面を貫通する取付け孔から見て72°ずつ変位した位置に配置された十箇所の切れ刃と、
前記側面に形成され、該側面から突出した凸部と、を有し、
前記第1の稜線及び前記第2の稜線にそれぞれ形成され、隣り合う前記切れ刃の間に配置されたワイパー刃と、
前記上面及び前記下面において前記切れ刃に沿って形成されたチップブレーカと、をさらに有し、
前記チップブレーカは、各々が前記上面又は前記下面から半径が1.5mm以上2mm以下の球状に突出しており平面視で円形に形成された複数の突起を含み、該複数の突起は、前記切れ刃の一端及び他端にそれぞれ配置されており少なくとも一部が前記ワイパー刃に対向している第1の突起と、該第1の突起の間に配置された第2の突起と、を含み、
前記ワイパー刃は、隣り合う前記切れ刃の間に一対ずつ配置された第1のワイパー刃及び第2のワイパー刃を含み、
前記第1のワイパー刃と前記第2のワイパー刃とが交差する角度は、150°以上160°以下であり、
前記第1の突起は、互いに隣接する前記ワイパー刃と前記切れ刃とに跨って配置され、前記第1の突起の一部は、前記第1のワイパー刃又は前記第2のワイパー刃の法線上に位置し、前記第1突起の他部は、前記切れ刃の法線上に位置している、切削インサート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、正五角形以上の正多角形になると、コーナ角が鈍角になる。切削インサートの装着形式がレバーロック式の場合、切削インサートのコーナを工具本体のインサート座の隅に押し込んで締め付ける。コーナ角が大きくなるとコーナを締め付ける力が弱くなり、切削インサートが浮き上がりやすくなる。
そこで、本発明は、経済性や刃先強度に優れ、工具本体に安定して固定できる切削インサート及び切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る切削インサートは、上面及び下面を貫通する取付け孔から見て72°ずつ変位した位置に配置された十箇所の切れ刃と、側面に形成され、該側面から突出した凸部と、を有している。切れ刃は、上面と側面とが交差する第1の稜線及び下面と該側面とが交差する第2の稜線にそれぞれ形成されている。
【0007】
本発明の一態様に係る切削工具は、切削インサートと、該切削インサートを固定する工具本体と、を備えた切削工具である。切削インサートは、上面及び下面を貫通する取付け孔から見て72°ずつ変位した位置に配置された十箇所の切れ刃と、側面に形成され、該側面から突出した凸部と、を有している。切れ刃は、上面と側面とが交差する第1の稜線及び下面と該側面とが交差する第2の稜線にそれぞれ形成されている。工具本体は、下面及び上面のいずれか一方が着座する取付け座面と、該取付け座面から起立して側面に対向する壁面と、を有している。壁面は、取付け座面に対して鋭角に傾斜し、該取付け座面とは反対側から凸部に当接する傾斜面を含んでいる。
【0008】
これらの態様によれば、上面及び下面にそれぞれ72°ずつ変位した切れ刃を五箇所ずつ有し、側面に凸部をさらに有している。コーナ角が鈍角であるため、切れ刃が欠損しにくく、切削負荷が高い条件であっても好適に用いることができる。正五角形であるため、上面及び下面の合計十箇所の切れ刃を使用できて経済的である。一方で、コーナ角が鈍角であると、切削インサートが工具本体のインサート座から浮き上がりやすくなる。しかるに、本発明は、側面に凸部を有しているため、正方形よりもコーナ角が大きい正五角形の切削インサートであっても、工具本体に凸部を安定して固定できる。
【0009】
上記態様において、切削インサートは、隣り合う切れ刃の間に配置されたワイパー刃と、上面及び下面において切れ刃に沿って形成されたチップブレーカと、をさらに有していてもよい。ワイパー刃は、第1の稜線及び第2の稜線にそれぞれ形成されている。チップブレーカは、各々が円形に形成された複数の突起を含んでいる。複数の突起は、切れ刃の一端及び他端にそれぞれ配置された第1の突起と、該第1の突起の間に配置された第2の突起と、を含んでいる。第1の突起の少なくとも一部は、ワイパー刃に対向している。
【0010】
この態様によれば、コーナがワイパー刃によって面取りされているため、刃先がさらに欠損しにくくなる。ワイパー刃が被削材の表面をさらうため、切削条件の送り速度を高めても、仕上げ面が粗くなりにくい。さらに、チップブレーカに含まれる突起が円形であるため、切れ刃とワイパー刃とで異なる方向から流出する切りくずを細分化できる。
【0011】
上記態様において、ワイパー刃は、隣り合う切れ刃の間に配置された一対の第1のワイパー刃及び第2のワイパー刃を含んでいてもよい。第1のワイパー刃と第2のワイパー刃とが交差する角度は、150°以上160°以下が好ましい。
【0012】
この態様によれば、異なる角度に形成された第1のワイパー刃と第2のワイパー刃と双方をワイパー刃として使用することができる。使用するワイパー刃を切り替えることにより、ワイパー刃付きの高切込み用と、ワイパー刃付きの高送り用と、同一の切削インサートを切込み角が異なる用途に使用できるようになる。
【0013】
上記態様において、工具本体は、クランプ部材をさらに備えていてもよい。クランプ部材は、取付け孔の内周面を押圧して凸部を傾斜面に押し付ける。
【0014】
この態様では、切削インサートの装着形式として、操作性に優れたレバーロック式を採用している。切削インサートのコーナを工具本体のインサート座の隅に押し込んで締め付けるレバーロック式の場合、切削インサートの上面をねじ頭で押さえ付けるスクリューオン式よりも切削インサートを交換する際の操作性に優れている。また、レバーロック式の場合、切削インサートの上面を押さえ駒で押さえ付けるクランプオン式やダブルクランプ式よりも切りくず処理を阻害しにくい。反面、レバーロック式の工具本体は、固定ねじが省略されている分、切削インサートが浮き上がる方向の拘束力が弱い傾向がある。しかしながら、この態様によれば、切削インサートの側面に凸部が設けられているため、コーナ角が大きくなってもインサート座から浮き上がりにくい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、経済性や刃先強度に優れ、工具本体に安定して固定できる切削インサート及び切削工具を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。本発明の各実施形態に係る切削インサート2は、略正五角形に形成されており、コーナ角108°に形成された十箇所のコーナ20と、側面23に形成された凸部10と、を有していることが特徴の一つである。
【0018】
切削インサート2は、コーナ20の角度が鈍角であるため欠損しにくい。ワイパー刃27,28を設けてさらにコーナ20の角度を大きくしてもよいし(
図2参照)、ワイパー刃27,28を設けないで重切削に特化させてもよい(
図9参照)。ワイパー刃27,28を設ける場合、切れ刃25,26とワイパー刃27,28とで異なる方向から流出する切りくずを細分化できるように円形の突起29を含んだチップブレーカを設けてもよい(
図2参照)。
【0019】
切削インサート2は、切削加工に使用できるコーナ20が十箇所あるため、経済性に優れている(
図4及び
図5参照)。切削インサート2の側面23に凸部10が設けられているため、コーナ20の角度が鈍角でもインサート座30から浮き上がりにくい(
図6及び
図7参照)。以下、
図1から
図9を参照して各構成について詳しく説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の切削工具1の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、切削工具1は、正五角形の切削インサート2と、切削インサート2を固定する工具本体3と、を備えている。工具本体3のシャンクは、例えば、旋盤の刃物台に固定される。工具本体3の先端には、切削インサート2が固定されるインサート座30が形成されている。
【0021】
インサート座30は、切削インサート2の着座面(例えば、下面22)に対向する取付け座面31と、取付け座面31から起立した壁面32と、を有している。下面22と取付け座面31との間には、交換可能な敷き金(shim)33が介在していてもよい。インサート座30を含む工具本体3の大部分は、例えば鋼材から形成されている。敷き金33は、例えば超硬合金から形成され、鋼材から形成された他の部分よりも変形しにくい。
図1に示す例によれば、損傷しやすい部分が交換可能に構成され、しかも変形しにくいため、工具本体3の寿命を延ばすことができる。
【0022】
図1に示す例では、切削インサート2の装着形式が、切削インサート2のコーナ20をインサート座30の隅に押し込んで締め付けるレバーロック式に構成されている。なお、工具本体3は、レバーロック式に限られず、切削インサート2のすくい面(例えば、上面21)をねじ頭で押さえ付けるスクリューオン式等であってもよい。レバーロック式の場合、工具本体3は、インサート座30に設けられて切削インサート2を着脱自在に固定するクランプ部材34と、クランプ部材34を操作する締付けねじ35と、を備えている。クランプ部材34は、例えばL字形に形成された金属部品である。
【0023】
締付けねじ35を締めると、クランプ部材34の基端が押し下げられ、クランプ部材34の先端が切削インサート2の取付け孔24の内周面を押圧する。押圧された切削インサート2が締付けねじ35に向かう方向へ移動し、側面23がインサート座30の壁面32へ当接する。逆に、締付けねじ35を緩めると、クランプ部材34の先端が切削インサート2の取付け孔24の内周面を押圧する力が弱まり、切削インサート2をインサート座30から取り外すことができる。
【0024】
図2は、切削インサート2の一例を示す斜視図である。各実施形態において、切削インサート2の材料は、特に限定されない。超硬合金をはじめとした種々の切削インサート用材料を適用できる。
図2に示すように、切削インサート2は、上面21と、上面21とは反対側の下面22と、上面21及び下面22を繋ぐ側面23と、上面21及び下面22を貫通する取付け孔24と、を有している。上面21及び下面22は、略正五角形にそれぞれ形成されている。上面21及び下面22に五箇所ずつ形成されたコーナ20の角度は、すべて108°である。
【0025】
なお、上面21及び下面22は、略同一の形状及び機能を有している。切削工具1において、上面21がすくい面になり、下面22が着座面になってもよい(
図1参照)。上面21が着座面になり、下面22がすくい面になってもよい。そのため、代表して上面21について詳しく説明し、下面22については重複する説明を省略する。
【0026】
図2に示す例では、上面21及び下面22の内接円の直径は、例えば19.05mmである。切削インサート2の厚み(側面23の幅)は、例えば6.35mmである。取付け孔24の直径は、例えば7.9mmである。なお、切削インサート2の寸法は、
図2に示す例に限られない。例えば、切削インサート2の内接円を大きくして、より大きな切込み量に対応できるようにしてもよい。
【0027】
上面21と側面23とが交差する第1の稜線R1には、隣り合うコーナ20の間に五箇所の切れ刃(主切れ刃)25が形成されている。同様に、下面22と側面23とが交差する第2の稜線R2には、五箇所の切れ刃(主切れ刃)26が形成されている。切れ刃25は、取付け孔24から見て72°ずつ変位した位置に配置されている。同様に、切れ刃26は、取付け孔24から見て72°ずつ変位した位置に配置されている。
【0028】
各々の切れ刃25,26において、第1及び第2の稜線R1,R2は略直線である。隣り合う切れ刃25又はその延長線がなす角度(コーナ角)は108°であり、隣り合う切れ刃26又はその延長線がなす角度(コーナ角)は108°である。つまり、切削インサート2は正五角形に形成されている。なお、各実施形態に係る切削インサート2は、概ね正五角形であればよく、コーナ20の一部にワイパー刃(さらい刃)27,28が形成されていてもよい。ワイパー刃27,28は、直線状であってもよいし、円弧形状であってもよいし、楕円形状であってもよい。
【0029】
図3は、切削インサート2のコーナ20を拡大して示す平面図である。
図3に示す例では、直線状のワイパー刃27,28が形成されている。第1の稜線R1のコーナ20において、一対のワイパー刃(第1及び第2のワイパー刃)271,272が形成され、隣り合う切れ刃25の間に配置されている。同様に、第2の稜線R2のコーナ20において、一対のワイパー刃(第1及び第2のワイパー刃)281,282が形成され、隣り合う切れ刃26の間に配置されている。切削インサート2の内接円が19.05mmの場合、第1のワイパー刃271,281の長さは、例えば2mm程度であり、第2のワイパー刃272,282の長さは、例えば2mm程度である。
【0030】
隣接する切れ刃25に対するワイパー刃27のチャンファ角θ1は、5〜35°が好ましく、20〜30°がより好ましい。
図2に示す例では、ワイパー刃27,28のチャンファ角θ1が、23°である。つまり、一方のワイパー刃27(例えば、第1のワイパー刃271)と該一方のワイパー刃27に隣接する切れ刃25とがなす角度は、108°よりも大きく、例えば157°である。
【0031】
同様に、他方のワイパー刃27(例えば、第2のワイパー刃272)と該他方のワイパー刃27に隣接する切れ刃25とがなす角度とは、108°よりも大きく、例えば157°である。第1及び第2のワイパー刃271,272が互いに交差する角度θ2は、108°よりも大きく、例えば154°である。高切込み用と高送り用とで第1のワイパー刃271,281と、第2のワイパー刃272,282と、双方を使用できるようにするため、第1及び第2のワイパー刃271,272が交差する角度θ2は、150°以上160°以下が好ましい。
【0032】
第1及び第2のワイパー刃271,272の切り替えについては、
図4及び
図5を参照して後で説明する。
図3に示す例では、第1のワイパー刃271,281と第2のワイパー刃272,282とは、コーナ20(切れ刃25,26の延長線がなす正五角形の頂点)と取付け孔24の中心軸とを結んだ鏡面Mに対して、鏡映対称に形成されている。また、隣り合う切れ刃25や隣り合う切れ刃26も鏡映対称に形成されている。
【0033】
再び、
図2を参照して切削インサート2を説明する。上面21及び下面22には、切れ刃25,26に沿ってチップブレーカが設けられている。
図2に示す例では、チップブレーカが、複数の円形の突起29を含んでいる。各々の突起29は、上面21及び下面22から球状に突出している。以下、上面21の説明において、下面22から上面21へ向かう方向(切削インサート2の厚み方向の一例)の突出量を高さと呼ぶことがある。同様に、下面22の説明において、上面21から下面21へ向かう方向(切削インサート2の厚み方向の他の一例)の突出量を高さと呼ぶことがある。球の頂点の突出高さは、切れ刃25,26と同程度である。
【0034】
切れ刃25,26と同程度の高さに収まり、十分な幅のすくい面を確保できる範囲内で、突起29は、摩滅しにくいようにできるだけ大きく形成されている。球の半径は、例えばR1.5〜2mm程度が好ましく、図示した例ではR1.8mm程度である。なお、チップブレーカの形状は、
図2に示す例に限られない。チップブレーカの他の例については、
図9を参照して後で説明する。
【0035】
図2に示す例では、複数の突起29は、切れ刃25,26の一端及び他端にそれぞれ配置された第1の突起291と、第1の突起291の間に配置された複数の第2の突起292と、を含んでいる。両端の第1の突起291は、少なくとも一部がワイパー刃27,28に対向している。任意のコーナ20において、第1の突起291は、互いに隣接するワイパー刃27と切れ刃25とに跨って配置されている。
【0036】
第1の突起291の少なくとも一部は、ワイパー刃27の法線上に位置している。第1の突起291の残余(他部)は、切れ刃25の法線上に位置している。切れ刃25の法線の延在方向は、切れ刃25の切りくずの流出方向の一例であり、ワイパー刃27の法線の延在方向は、ワイパー刃27の切りくずの流出方向の一例である。なお、切れ刃25から流出した切りくずとワイパー刃27から流出した切りくずとが連続しているため、実際の切りくずの流出方向は、それぞれの刃の使用比率に応じて合成された種々の方向になる。
【0037】
各実施形態に係る切削インサート2は、側面23に凸部10が形成されている。凸部10は、側面23から突出し、切れ刃25,26に沿って延在している。凸部10は、切れ刃25,26に直交する平面で切断したとき、例えば台形の断面を有している。凸部10は、上面21へ向かうに従って突出高さが低くなる第1面11と、下面22へ向かうに従って突出高さが低くなるように傾斜した第2面12と、第1面11及び第2面12を繋いでおり側面23に平行な第3面13と、を有している。なお、凸部10の断面は、
図2に示す例に限られず、第3面13を省略した山形であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0038】
図4は、切削工具1が被削材を切削している状態を示す正面図である。
図4に示す例では、切削工具1が中〜重切削用(Medium to Heavy Cutting)として構成されている。中〜重切削用として好適な切込み角βは、例えば40°から67°である。
図4に示す例では、被削材と切れ刃25,26とがなす切込み角βが48.5°となるように切削インサート2が固定されている。
【0039】
図4に示された状態において、切削中の切れ刃25に隣接した(当該切れ刃25から一番目に位置した)第1のワイパー刃271ではなく、その隣に(当該切れ刃25から二番目に)位置した第2のワイパー刃272が、被削材に対向している。被削材と第2のワイパー刃272とは、略平行に固定されている。より詳しくは、被削材に対する第2のワイパー刃272,282のさらい刃角γ2が0.5°となるように切削インサート2が固定されている。切削インサート2において、被削材に最も深く切り込んだ部位は、第1及び第2のワイパー刃271,272が交差する部位202である。
【0040】
切削工具1の切込み角は、用途に応じて適宜変更できる。
図5は、切削工具1を高送り加工用(High Feed type)として構成した変形例である。高送り加工用として好適な切込み角αは、例えば20°から35°である。
図5に示す例では、被削材と切れ刃25,26とがなす切込み角αが22.5°となるように切削インサート2が固定されている。
【0041】
第1実施形態に係る切削インサート2は、単一の切削インサート2に形成された二種類のワイパー刃271,272が機能している。
図4に示された状態とは異なり、
図5に示された状態では、切削中の切れ刃25に隣接した(当該切れ刃25から一番目に位置した)第1のワイパー刃271が、被削材に対向している。
【0042】
被削材と第1のワイパー刃271とは、略平行に固定されている。より詳しくは、被削材に対する第1のワイパー刃271,281のさらい刃角γ1が0.5°となるように切削インサート2が固定されている。
図5に示された切削インサート2において、被削材に最も深く切り込んだ部位は、前述の部位202ではなく、切削中の切れ刃25と第1のワイパー刃271とが交差する部位201である。
【0043】
図6は、
図4中のVI−VI線に沿う断面図である。
図7は、
図6に示された傾斜面14を拡大して示す断面図である。
図6及び
図7に示すように、工具本体3のインサート座30において、壁面32は、取付け座面31及び敷き金33の上面に略垂直に形成されている。壁面32は、切削インサート2の側面23に対向している。壁面32は、取付け座面31及び敷き金33の上面に対して鋭角に傾斜した傾斜面14を含んでいる。
【0044】
傾斜面14は、凸部10の第1面11又は第2面12に対して取付け座面31とは反対側の上方から当接する。
図6及び
図7に示す例では、傾斜面14が凸部10の第1面11と平行に形成され、該第1面11に対して上方から当接している。
【0045】
以上のように構成された第1実施形態の切削工具1及びその切削インサート2によれば、コーナ20の角度が鈍角となる108°であるため、切れ刃25,26が欠損しにくい。例えば、
図4に示された中〜重切削や
図5に示された高送り加工等の切削負荷が高い条件であっても好適に用いることができる。
図2に示すように、切削インサート2が略正五角形であるため、上面21及び下面22の合計十箇所の切れ刃25,26すなわち十箇所のコーナ20を使用できて経済的である。
【0046】
一方で、コーナ20の角度が鈍角であると、切削インサート2が工具本体3のインサート座30から浮き上がりやすくなる。しかるに、本実施形態に係る切削インサート2は、側面23に凸部10を有している。そのため、正方形よりもコーナ20の角度が大きい正五角形の切削インサート2であっても、
図6及び
図7に示すように、工具本体3に凸部10を当接させて確実に固定できる。
【0047】
本実施形態では、コーナ20がワイパー刃27,28によって面取りされているため、刃先がさらに欠損しにくくなる。ワイパー刃27,28が被削材の表面をさらうため、切削条件の送り速度を高めても、仕上げ面が粗くなりにくい。そのため、重切削(荒加工)と同時に中切削(中仕上げ)が可能になる。
【0048】
ワイパー刃27,28を有していると、切れ刃25,26とワイパー刃27,28とで異なる方向から切りくずが流出する。本実施形態によれば、切れ刃25,26の両端に円形の第1の突起291が配置されているため、種々の方向から衝突する切りくずを好適に細分化できる。
【0049】
本実施形態は、第1及び第2のワイパー刃271,272が交差する角度が150°以上160°以下であって、その補角が切削工具1の切込み角α,βの差分に相当する20°超30°未満である。工具本体3を交換し、該工具本体3に固定された切削インサート2の切れ刃25,26の切込み角α,βを変更することがある。本実施形態によれば、二種類の切込み角α,βのそれぞれにおいて、第1及び第2のワイパー刃271,272をワイパー刃として機能させることができる。
【0050】
本実施形態に係る切削インサート2は、
図2及び
図3に示すように、鏡面Mに対して切れ刃25,26やワイパー刃27,28が鏡映対称であって、右勝手及び左勝手のどちらにも使用できる勝手なしに形成されている。そのため、
図4及び
図5に示された右勝手用の工具本体3に切削インサート2を装着することによって、右勝手の切削工具1を構成することができる。図示しないが、左勝手用の工具本体3に切削インサート2を装着し、左勝手の切削工具1を構成することもできる。
【0051】
本実施形態では、切削インサート2の装着形式として、操作性に優れ、切りくず処理を阻害しにくいレバーロック式を採用している。切削インサート2のコーナ20を工具本体3のインサート座30の隅に押し込んで締め付けるレバーロック式の場合、切削インサート2の上面21をねじ頭で押さえ付けるスクリューオン式と比べて、切削インサート2が浮き上がる方向の拘束力が弱い傾向がある。しかしながら、本実施形態では、側面23に凸部10が設けられているため、コーナ20の角度が大きくなっても切削インサート2がインサート座30から浮き上がりにくい。
【0052】
本実施形態によれば、切削インサート2の側面23において、すべてのコーナ20を108°に形成し且つ隣り合うコーナ20の間に凸部10を形成したことによって、経済性や刃先強度に優れ、工具本体3に安定して固定できる切削インサート2及び切削工具1を提供することができる。
続いて、本発明の第2実施形態の切削工具1について説明する。なお、第2実施形態では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0053】
[第2実施形態]
第2実施形態は、
図8及び
図9を参照して説明する。
図8は、本発明の第2実施形態の切削工具1の一例を示す斜視図である。
図8に示すように、切削インサート2に対してクーラントやエア等の冷却媒体を噴射する噴射口36,37を工具本体3に付設してもよい。噴射口36は、すくい面側(
図8に示す例では、上面21側)から切れ刃25に対して冷却媒体を噴射する。すくい面側から高圧の冷却媒体を供給すると、切りくずを細分化して安定して加工できる。また、すくい面を冷却してクレータ摩耗を抑制できる。
【0054】
噴射口37は、逃げ面側(
図8に示す例では、紙面手前側の側面23側)から切れ刃25に対して冷却媒体を噴射する。冷却媒体が切削油や水等のクーラントの場合、切れ刃25の冷却に加えて、被削材と切れ刃25,26との間を潤滑することができる。そのため、逃げ面側からクーラントを供給すると、逃げ面の摩耗を抑制できる。とりわけ、コーナ20の近傍において切れ刃25の境界摩耗を抑制できる。
【0055】
図9は、
図8に示された切削インサート2を示す斜視図である。第1実施形態では、切れ刃25の刃先の角度が、例えば84°であった。第2実施形態に係る切削インサート2は、第1実施形態に係る切削インサート2よりも切れ刃25,26の刃先がシャープに(刃先の角度が84°よりも小さく)形成され、切削インサート2単体でのすくい角を大きくしている。
【0056】
同一の角度(例えば、
図4及び
図5に示された角度)で切削工具1を刃物台に取り付けたとき、第1実施形態と比べてすくい角が大きくなり、切削抵抗を小さくできる。さらに、ワイパー刃27,28が形成されていない分、切削抵抗を小さくできる。切れ刃25,26の刃先がシャープで、ワイパー刃27,28がないため、切削抵抗を小さくして熱の発生を抑制できる。
【0057】
第2実施形態によれば、噴射口36,37から冷却媒体を噴射して切れ刃25,26を冷却できる。冷却媒体がクーラントの場合、被削材と切れ刃25,26との間を潤滑することもできる。第2実施形態によれば、耐熱合金鋼等の難削材に対応することができる。重切削に特化して切削条件を高能率化できる。
【0058】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【解決手段】切削インサート2は、上面21と側面23とが交差する第1の稜線R1、下面22と側面23とが交差する第2の稜線R2にそれぞれ五箇所ずつ形成された切れ刃25,26を有している。各々の切れ刃25,26は、取付け孔24から見て72°ずつ変位した位置に配置されている。切削インサート2は、側面23から突出した凸部10をさらに有している。凸部10は、切削インサート2に対応する工具本体3において、取付け座面31とは反対側から傾斜面14に当接される。