特許第6555722号(P6555722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555722
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】歯面修復材
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/00 20060101AFI20190729BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20190729BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   A61K6/00 Z
   A61K8/24
   A61Q11/00
【請求項の数】8
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2016-168657(P2016-168657)
(22)【出願日】2016年8月30日
(65)【公開番号】特開2018-35085(P2018-35085A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2018年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】509090601
【氏名又は名称】株式会社ソフセラ
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】小粥 康充
(72)【発明者】
【氏名】青井 信夫
(72)【発明者】
【氏名】能美 大輔
(72)【発明者】
【氏名】河邉 カーロ和重
【審査官】 参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/030782(WO,A1)
【文献】 特開平06−024929(JP,A)
【文献】 特開2002−137910(JP,A)
【文献】 特開2007−070211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/00
A61K 8/24
A61Q 11/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック粒子を含む歯面修復材において、
前記セラミック粒子の粒子径が、10nm〜700nmの範囲内であり、
前記セラミック粒子が、リン酸カルシウム焼結体粒子であり、
前記セラミック粒子が、炭酸カルシウムを含有しないことを特徴とする歯面修復材。
【請求項2】
前記セラミック粒子が球状である、請求項1に記載の歯面修復材。
【請求項3】
セラミック粒子を含む歯面修復材において、
前記セラミック粒子の粒子径が、短軸の最大直径が30nm〜5μm、長軸が75nm〜10μmであり、c軸方向に成長し、結晶のアスペクト比(c軸長/a軸長)が、1〜30であり、
前記セラミック粒子が、リン酸カルシウム焼結体粒子であり、
前記セラミック粒子が、炭酸カルシウムを含有しないことを特徴とする歯面修復材。
【請求項4】
上記セラミック粒子が、ハイドロキシアパタイト焼結体粒子である、請求項1〜3のいずれか一項記載の歯面修復材。
【請求項5】
前記セラミック粒子が、アルカリ金属を含有しない、請求項1〜4のいずれか一項記載の歯面修復材。
【請求項6】
前記セラミック粒子が、少なくともその表面に炭酸アパタイトを含む、請求項1〜5のいずれか一項記載の歯面修復材。
【請求項7】
前記セラミック粒子が、下記性質(A)を満たす、請求項1〜6のいずれか一項記載の歯面修復材。
(A)十分に乾燥させた後に、常圧下、温度25℃、湿度50%の条件にて3日間以上放置した後、熱重量示差熱分析装置(TG−DTA)(セイコーインスツルメント社製、EXSTAR6000)にて、窒素気流下、10℃/min.の条件で測定し、25〜200℃の温度帯において減少した重量が2%以下となる。
【請求項8】
前記セラミック粒子は、X線回折法により測定されたd=2.814での半値幅が、0.2〜0.8の範囲内である、請求項1〜7のいずれか一項記載の歯面修復材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯面のキズを修復したり、歯面をコーティングする歯面修復材に関し、特に、リン酸カルシウムを含む歯面修復材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、口腔用組成物に配合されたアパタイトが、蛋白質吸着能を有し、歯垢形成の抑制作用を奏するのみならず、エナメル質表面の再石灰化の進行にも寄与していることが知られている(非特許文献1)。そして、例えば、特許文献1には、流動性が高く歯間や裂溝部等にも容易に入り込む歯磨剤組成物として、球形状のアパタイトを配合したものが提案されている。また、特許文献2においては、歯の表面にアパタイトの被膜を直接形成し、歯表面の凹凸を修復するための口腔用組成物の提案もなされている。
【0003】
近年、材料の微細化が可能となり、いわゆる「ナノサイズ」の微粒子が多く報告されており、口腔用組成物の分野においても、特許文献3において、粒子径0.05μm以上1.0μm以下のアパタイト及びリン酸三カルシウムを配合することにより、歯牙表面の初期脱灰箇所及び微小なキズを再石灰化可能であると報告されている。
【0004】
また、ハイドロキシアパタイト(HAp)は、高い生体親和性を示すことが知られており、バイオマテリアルをはじめとする様々な分野で活用されている。
【0005】
ところで、当該HApを生体材料に用いる場合、生体内での溶解性や分解性を低減させるため、高温で焼成させて高結晶化度のハイドロキシアパタイト粒子(セラミック粒子)を作製することが提案されている。但し、この焼結の際にハイドロキシアパタイト(HAp)粒子(一次粒子)間の融着により結合が生じ、一次粒子が結合した不定形な二次粒子となり、分散性及び比表面積が低下してしまうという問題点があった。
【0006】
そこで、先行特許文献4には、焼結前のセラミック原料からなる一次粒子の粒子間に融着防止剤が介在するように混合して混合粒子とし、当該混合粒子を焼結し、当該焼成後に融着防止剤を洗い流す製法が提案されている。当該製法によれば、結晶化度が高く且つ粒子径が小さいセラミック粒子群を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−247020号公報
【特許文献2】特開平6−24929号公報
【特許文献3】特開平9−202717号公報
【特許文献4】特許第5043436号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】口腔衛生学会雑誌 Vol 38,510〜511 1988
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
実際の生活環境において歯磨剤由来の研磨剤による摩耗、更には、唾液や飲食物の影響による微粒子の脱落は避けられず、期待すべき再石灰化によるアパタイトの皮膜形成やナノサイズの微粒子による歯面への充填と歯面の摩耗は拮抗していると考えられる。さらには再石灰化によるアパタイト皮膜形成には比較的長い時間を必要としているため急性期での効果発現は期待できない。
【0010】
また、特許文献4に記載されたセラミック粒子群を用いた場合、微粒子の脱落を防止しつつ、短時間で効果を発揮可能な歯面修復材を得ることも可能であった。しかしながら、食習慣や生活習慣の変化に応じて、近年ではより高い歯面修復機能が求められている。
【0011】
そこで本発明は、より高い歯面修復機能を有する歯面修復材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、機能性粒子の歯面修復機能を向上させるために鋭意研究を行った結果、粒子に炭酸カルシウムが含まれる場合、使用段階等において炭酸が発生し、当該炭酸が悪影響を与えることがある、という知見を得て本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は以下の通りである。
本発明(1)は、
セラミック粒子を含む歯面修復材において、
前記セラミック粒子の粒子径が、10nm〜700nmの範囲内であり、
前記セラミック粒子が、リン酸カルシウム焼結体粒子であり、
前記セラミック粒子が、炭酸カルシウムを含有しないことを特徴とする、歯面修復材。
本発明(2)は、
前記セラミック粒子が球状である、前記発明(1)の歯面修復材。
本発明(3)は、
セラミック粒子を含むセラミック粒子群であって、
前記セラミック粒子の粒子径が、短軸の最大直径が30nm〜5μm、長軸が75nm〜10μmであり、c軸方向に成長し、結晶のアスペクト比(c軸長/a軸長)が、1〜30であり、
前記セラミック粒子が、リン酸カルシウム焼結体粒子であり、
前記セラミック粒子が、炭酸カルシウムを含有しないことを特徴とする歯面修復材。
本発明(4)は、
上記セラミック粒子が、ハイドロキシアパタイト焼結体粒子である、前記発明(1)〜(3)のいずれかの歯面修復材。
本発明(5)は、
前記セラミック粒子が、アルカリ金属を含有しない、前記発明(1)〜(4)のいずれかの歯面修復材。
本発明(6)は、
前記セラミック粒子が、少なくともその表面に炭酸アパタイトを含む、前記発明(1)〜(5)のいずれかの歯面修復材。
本発明(7)は、
前記セラミック粒子が、下記性質(A)を満たす、前記発明(1)〜(6)のいずれかの歯面修復材。
(A)十分に乾燥させた後に(例えば、常圧下、温度60℃、湿度45〜85%の条件で18時間以上乾燥させた後に)、常圧下、温度25℃、湿度50%の条件にて3日間以上放置した後、熱重量示差熱分析装置(TG−DTA)(セイコーインスツルメント社製、EXSTAR6000)にて、窒素気流下、10℃/min.の条件で測定し、25〜200℃の温度帯において減少した重量が2%以下となる。
本発明(8)は、
前記セラミック粒子が、X線回折法により測定されたd=2.814での半値幅が、0.2〜0.8の範囲内である、前記発明(1)〜(7)のいずれかの歯面修復材。
【0014】
ここで、後述のように、本発明において「炭酸カルシウムを含有しない」とは、炭酸カルシウムを実質的に含有しないことであり、より具体的には、以下の(1)〜(3)の基準を全て満たすことである。
(1)X線回折の測定結果より炭酸カルシウムが、炭酸カルシウム(式量:100.09)/ハイドロキシアパタイト(式量:1004.62)=0.1/99.9(式量換算比)以下である。
(2)熱重量示差熱分析(TG−DTA)測定において、650℃〜800℃に明確な吸熱を伴う2%以上の重量減を観察されない。
(3)FT−IR測定において得られるスペクトルをクベルカムンク(KM)式で計算した吸光度を示したチャートにおいて、波数が860cm−1〜890cm−1の間に現れるピークを分離し、炭酸カルシウムに帰属される877cm−1付近のピークが観察されない。なお、ピーク分離は、例えば、fityk 0.9.4というソフトを用いて、Function Type:Gaussian、Fitting Method:Levenberg-Marquardtという条件で処理することによって行う。
【0015】
また、本発明において、「炭酸カルシウムを含有しない」とする場合、以下の(4)の基準を更に満たすことが好適である。
(4)医薬部外品原料規格2006(ヒドロキシアパタイト)に準じて試験した際、気泡発生量が0.25mL以下である。
【0016】
また、本発明において「球状」とは、粒子のアスペクト比が、1.35以下(より好適には1.25以下、更に好適には、1.2以下)であることを示す。なお、ここでいう粒子のアスペクト比とは、以下の方法によって得られた数値を示す。粒子を撮影したSEM画像において、粒子上にその両端が粒子の外周上に位置する2本の線分を引く。このとき、一方の線分は、その長さが最大となるものとする。更に、当該線分の中点で、互いに直交するようにもう一方の線分を引く。このようにして引かれた2本の線分のうち、短い方の線分の長さを短径、長い方の線分の長さを長径とし、長径/短径の比を求める。但し、輪郭がぼやけて見える粒子、別の粒子に接近し過ぎていて境界が曖昧な粒子、粒子の一部がその他の粒子の影に隠れている粒子等を測定対象から除外する。
【0017】
なお、本発明において、「ある性質を有するセラミック粒子」を含む「セラミック粒子群」とは、当該「ある性質を有するセラミック粒子」が、「セラミック粒子群」全体に対して、50質量%以上、好適には70質量%以上、より好適には90質量%以上含有することを示す。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粒子に炭酸カルシウムが含まれない結果、使用中等に炭酸の発生が抑制され、より高い歯面修復機能を奏する歯面修復材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1-1】図1−1は、実施例1−1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子のX線回折測定の結果を示すチャートである。
図1-2】図1−2は、実施例1−2で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子のX線回折測定の結果を示すチャートである。
図1-3】図1−3は、比較例1−1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子のX線回折測定の結果を示すチャートである。
図1-4】図1−4は、実施例1−1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群のSEM写真である。
図1-5】図1−5は、実施例1−1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群のSEM写真である。
図1-6】図1−6は、実施例1−2で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群のSEM写真である。
図1-7】図1−7は、実施例1−2で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群のSEM写真である。
図1-8】図1−8は、実施例1−1に係るハイドロキシアパタイト焼結体粒子群を用いて製造された供試材のSEM写真である。
図1-9】図1−9は、実施例1−2に係るハイドロキシアパタイト焼結体粒子群を用いて製造された供試材のSEM写真である。
図1-10】図1−10は、比較例1−1に係るハイドロキシアパタイト焼結体粒子群を用いて製造された供試材のSEM写真である。
図1-11】図1−11は、実施例1−1に係るハイドロキシアパタイト焼結体粒子群を用いて製造された供試材の染色画像である。
図1-12】図1−12は、実施例1−2に係るハイドロキシアパタイト焼結体粒子群を用いて製造された供試材の染色画像である。
図2-1】図2−1は、実施例2−1に係るハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群の熱重量示差熱分析(TG−DTA)測定の結果である。
図2-2】図2−2は、比較例2−1に係るハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群の熱重量示差熱分析(TG−DTA)測定の結果である。
図2-3】図2−3は、FT―IR測定において得られるスペクトルをクベルカムンク(KM)式で計算した吸光度を示したチャートである。実施例2−1のハイドロキシアパタイト(HAp)粒子を製造するに際して、酸洗い工程によって、どのように炭酸カルシウムの量が変化するかを調べたものである。図2−3の左チャートは、酸洗い工程が行われなかったハイドロキシアパタイト(HAp)粒子であり、図2−3の右チャートは、酸洗い工程が行われたハイドロキシアパタイト粒子である。
図2-4】図2−4は、実施例2−1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子のFT−IRスペクトルを示すチャートである。
図2-5】図2−5は、実施例2−2で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子のFT−IRスペクトルを示すチャートである。
図2-6】図2−6は、実施例2−1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群のSEM写真である。
図2-7】図2−7は、実施例2−1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群のSEM写真である。
図2-8】図2−8は、実施例2−2で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群のSEM写真である。
図2-9】図2−9は、実施例2−2で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群のSEM写真である。
図2-10】図2−10は、実施例2−1に係るハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群を用いて製造された供試材のSEM写真である。細胞接着を評価した。
図2-11】図2−11は、実施例2−2に係るハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群を用いて製造された供試材のSEM写真である。細胞接着を評価した。
図2-12】図2−12は、比較例2−1に係るハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群を用いて製造された供試材のSEM写真である。細胞接着を評価した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る歯面修復材は、セラミック粒子として、特定のリン酸カルシウム焼結体粒子を含む。特に、本発明は、セラミック粒子を含む歯面修復材において、当該セラミック粒子が、微小なサイズであり、且つ、「炭酸カルシウムを含有しない」ことを主たる特徴としている。そこで、以下では、歯面修復材の基本的な構成を説明した後に、本発明の特徴的なセラミック粒子を説明する。また、本発明者らは、本発明の特徴的なセラミック粒子を得るための方法として、2種類の製造方法を見出している。このような製造方法について、以下においては、第1の製造方法と、第2の製造方法と、に大別して説明することとする。このうち、第1の製造方法は、「炭酸カルシウムを含有しない」とする基準において、より厳しい基準を達成可能である。尚、「セラミック粒子群」は、「セラミック粒子」と読み替えてもよい。
【0021】
<<<<歯面修復材>>>>
本最良形態に係る歯面修復材は、焼結された高結晶性リン酸カルシウム微粒子(リン酸カルシウム焼結体粒子)を含む。その他、任意の構成要件として、各種研磨剤、各種湿潤剤、各種界面活性剤、各種増粘剤、各種防腐剤、各種甘味料、各種香料、水、その他各種薬効成分が含まれていてもよい。これらの中でも、湿潤剤が含まれることが粒子同士の凝集防止の観点から特に好適である。
【0022】
本最良形態に係るリン酸カルシウム焼結体粒子としては、後述の第1の製造方法及び第2の製造方法によって得られるリン酸カルシウム粒子を使用可能である。リン酸カルシウム焼結体粒子を用いた際の基本的な歯面修復機能については、WO2010/106668等に詳しい。本発明に係る歯面修復材は、リン酸カルシウム焼結体粒子の基本的な歯面修復機能に加え、炭酸カルシウムを含まないことによって歯面修復機能を更に向上可能となる。
【0023】
その他の任意成分として、研磨剤は、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、無水珪酸、珪酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸水素カルシウム等が挙げられる。湿潤剤としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マルチトール、キシリトール、ラクチトール、エリスリトール、トレハロース等が挙げられる。これらの湿潤剤の中でも、特に、ポリエチレングリコールが好適である。界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ショ糖脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。増粘剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、カルボキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロースガム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等が挙げられる。防腐剤としては、特に限定されないが、例えば、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、パラオキシ安息香酸エステル、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等が挙げられる。甘味料としては、特に限定されないが、例えば、サッカリンナトリウム、キシリトール、ステビアエキス等が挙げられる。香料としては、特に限定されないが、メントール、オレンジ油、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、ユーカリ油、サリチル酸メチル等が挙げられる。薬効成分としては、特に限定されないが、硝酸カリウム等の神経鈍麻剤や、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ素コーティング剤等が挙げられる。
【0024】
本最良形態に係る歯面修復材は、例えばゲル状、ペースト状といった剤形に調製される。それらどの剤形においても上記の任意成分を含有させることができる。また、ゲル状組成物のゲル化剤として更にはペースト状組成物とする場合の増粘剤として上記のものを含有させることができる。特に緩衝液系の為に高塩濃度となる場合は、非イオン性のポリマー、即ちヒドロキシエチルセルロース、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、トラガントガム等を含有させることもできる。
【0025】
本最良形態に係る歯面修復材において、リン酸カルシウム微粒子の含有量は、全体に対して、0.1〜70重量%が好適であり、1〜50重量%がより好適であり、5〜30重量%が更に好適である。研磨剤の含有量は、歯面修復材全体に対して、0.1〜50重量%が好適であり、0.2〜30重量%がより好適であり、1〜20重量%が更に好適である。湿潤剤の含有量は、歯面修復材全体に対して、0.1〜70重量%が好適であり、0.5〜50重量%がより好適であり、1〜40重量%が更に好適である。界面活性剤の含有量は、歯面修復材全体に対して、0.01〜10重量%が好適であり、0.02〜5重量%がより好適であり、0.05〜2重量%が更に好適である。増粘剤の含有量は、歯面修復材全体に対して、0.01〜20重量%が好適であり、0.02〜15重量%がより好適であり、0.05%〜10重量%が更に好適である。防腐剤の含有量は、歯面修復材全体に対して、0.01〜10重量%が好適であり、0.02〜5重量%がより好適であり、0.05〜1重量%が更に好適である。甘味料の含有量は、歯面修復材全体に対して、0.01〜5重量%が好適であり、0.02〜3重量%がより好適であり、0.05〜1重量%が更に好適である。香料の含有量は、歯面修復材全体に対して、0.01〜5重量%が好適であり、0.02〜3重量%がより好適であり、0.05〜1重量%が更に好適である。薬効成分の含有量は、その成分により適宜設定可能であるが、例えば、歯面修復材全体に対して、0.01〜20重量%が好適であり、0.02〜10重量%がより好適であり、0.05〜5重量%が更に好適である。
【0026】
<<<<リン酸カルシウム焼結体粒子>>>>
<<<第1の製造方法>>>
以下、本発明に係るリン酸カルシウム粒子群の第1の製造方法を説明し、次いで、当該第1の製造方法により得られたセラミック粒子群について説明する。
【0027】
<<1.セラミック粒子群の第1の製造方法>>
<1−1.原料>
焼成前のセラミック原料であるリン酸カルシウム(CaP)としては、具体例として、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))、リン酸三カルシウム(Ca(PO)、メタリン酸カルシウム(Ca(PO)、Ca10(PO、Ca10(POCl等が挙げられる。ここで、当該リン酸カルシウム(CaP)は、湿式法や、乾式法、加水分解法、水熱法等の公知の製造方法によって、人工的に製造されたものであってもよく、また、骨、歯等から得られる天然由来のものであってもよい。
【0028】
<1−2.プロセス>
(1−1.一次粒子生成工程)
以下、本形態に係るリン酸カルシウム粒子群の製造方法において、一次粒子が球状及びロッド状である場合を例示するが、これには限定されず、製造可能なあらゆる形状の一次粒子を適用可能である。
【0029】
・球状セラミック粒子の一次粒子生成工程
まず、「一次粒子」とは、セラミック粒子群の製造工程の焼結前に、セラミック原料{リン酸カルシウム(CaP)、ハイドロキシアパタイト(HAp)等}によって形成された粒子のことを意味する。即ち、セラミック粒子の製造工程において、初めて形成された粒子のことを意味する。また狭義には単結晶粒子のことを意味する。尚、特許請求の範囲及び明細書において「一次粒子」とは、非晶質(アモルファス)、低結晶性の状態のもの、及びその後に焼結を行なった焼結体の状態のものをも含む意味である。これに対して「二次粒子」とは、複数の「一次粒子」同士が、融着等の物理的結合、Van der Waals力や静電的相互作用又は共有結合等の化学的結合によって、結合して形成された状態の粒子を意味する。特に一次粒子同士の結合の個数、結合後の形状等は限定されるものではなく、2つ以上の一次粒子が結合したもの全てを意味する。また、特に「単結晶一次粒子」とは、セラミック原料の単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊を意味する。尚、前記「イオン的相互作用にて集合化した粒子塊」とは、水もしくは有機溶媒を含む媒体にて分散させた場合にイオン的相互作用で自己集合する粒子塊であって、焼結により粒子間が溶融して多結晶化した二次粒子を含まないものである。
【0030】
当該一次粒子生成工程は、それ自体公知であり、上記一次粒子を生成することができる工程であれば特に限定されるものではなく、製造するセラミックの原料により適宜選択の上、採用すればよい。例えば、常温下において水酸化カルシウムスラリーにリン酸を滴下すれば、リン酸カルシウム(CaP)の粒子が沈殿する。
【0031】
本形態に係るセラミック粒子群の製造方法は、上記の一次粒子生成工程によって生成した一次粒子からなる一次粒子群を、融着等を防止しながら焼結してセラミック粒子群を製造するものである。よって、当該一次粒子生成工程によって生成された一次粒子の状態(粒子径、粒度分布)が、最終生産物であるセラミック粒子の状態(粒子径、粒度分布)にそのまま反映される。したがって、粒子径が微細(ナノメートルサイズ)で且つ粒子径が均一な(粒度分布が狭い)セラミック粒子群を製造しようとする場合においては、当該一次粒子生成工程において粒子径が微細(ナノメートルサイズ)で且つ粒子径が均一な(粒度分布が狭い)一次粒子群を生成しておく必要がある。
【0032】
かかる場合の好ましい一次粒子の粒子径(平均粒子径及び粒度分布)としては、10nm〜700nmが好ましく、15nm〜450nmが更に好ましく、20nm〜400nmが最も好ましい。また、一次粒子からなる一次粒子群の粒子径の変動係数が、20%以下であることが好ましく、18%以下であることがさらに好ましく、15%以下であることが最も好ましい。尚、一次粒子の粒子径及び変動係数は、動的光散乱法又は電子顕微鏡を用い、少なくとも100個以上の一次粒子について粒子径を測定して計算すればよい。
【0033】
尚、「変動係数」は、標準偏差÷平均粒子径×100(%)で計算することができる粒子間の粒子径のバラツキを示す値である。
【0034】
上記のような微細(ナノメートルサイズ)で且つ粒子径が均一な(粒度分布が狭い)一次粒子群を生成する方法については、特に限定されるものではなく、例えば、特開2002−137910号公報、特許第5043436号公報、Journal of Nanoscience and Nanotechnology Vol. 7, 848-851, 2007に記載された方法を挙げることができる。
【0035】
また、本工程には、生成した一次粒子を水等で洗浄する工程、遠心分離、ろ過等で一次粒子を回収する工程が含まれていてもよい。
【0036】
・ロッド状セラミック粒子の一次粒子生成工程
ロッド状セラミック粒子{粒子の粒子径が、短軸の最大直径が30nm〜5μm、長軸が75nm〜10μmであり、c軸方向に成長し、結晶のアスペクト比(c軸長/a軸長)が、1〜30であるセラミック粒子}の一次粒子生成工程は、それ自体公知であり、例えば、特開2002−137910号公報、Journal of Nanoparticle Research (2007) 9:807-815に記載された方法を挙げることができる。
【0037】
また、本工程には、生成した一次粒子を水等で洗浄する工程、遠心分離、ろ過等で一次粒子を回収する工程が含まれていてもよい。
【0038】
(凍結工程)
凍結工程は、焼結前のリン酸カルシウム(CaP)を含有する水系媒体を凍結する工程である。ここで、水系媒体は、水を主成分(好適には液体媒体の全質量を基準として90質量%以上)をした液体媒体である。好適には、水のみであり、他に水と混和性のある液体(アルコール等)を適宜添加してもよい。また、一次粒子であるリン酸カルシウム(CaP)を製造した液、即ち、リン酸源とカルシウム源とを水に溶解させることにより得られた液をそのまま凍結させてもよい。ここで、凍結温度は、特に限定されないが、好適には、−1〜−269℃である。さらに好適には、−5〜−196℃である。また、凍結時間は、特に限定されないが、好適には、1分〜24時間である。
【0039】
(解凍工程)
解凍工程は、前記凍結工程にて得た凍結体を、凍結体の水系媒体の融点を超える温度下に配し、当該水系媒体を融解させる工程である。
【0040】
(分離工程)
分離工程は、前記解凍工程にて融解した、リン酸カルシウムを含有する水系媒体から、リン酸カルシウムを分離する工程である。分離手法としては、解凍後の沈殿を濾取する手法であってもよく、遠心分離捕集する手法であってもよい。
【0041】
(焼成工程)
当該焼結工程は、上記分離工程によって得られた、リン酸カルシウム一次粒子組成物を焼結温度に曝して、当該組成物に含まれる一次粒子をセラミック粒子(焼結体粒子)にする工程である。理由は定かでないが、特許文献1のような融着防止剤を使用せずとも、前記の凍結・解凍工程を得て焼成させた場合、焼結工程における高温条件に曝された場合であっても一次粒子同士の融着を防止することができるというものである。ここで、当該焼結工程における焼結温度は、セラミック粒子の結晶性が所望の硬度となるように適宜設定すればよく、例えば、300〜1000℃が好適である。また、当該焼結工程における昇温速度は、例えば、1〜20℃/minが好適である。更には、当該焼結工程における焼結時間は、セラミック粒子の硬度等を基準に適宜設定すればよく、例えば、0.5〜3時間が好適である。尚、当該焼結工程に用いる装置等は特に限定されるものではなく、製造規模、製造条件等に応じて市販の焼成炉を適宜選択の上、採用すればよい。
【0042】
(粉砕工程)
粉砕工程は、前記焼結工程後の凝集体を粉砕し、所望サイズの焼成リン酸カルシウム粒子群を得る工程である。ここで、通常、二次粒子化した焼成体は、相当程度の粉砕工程を実施しても一次粒子サイズまで微小化することはほぼ不可能である。他方、本形態の手法によると、簡素な粉砕工程でも、容易に一次粒子サイズレベルまで粉砕することが可能となる。ここで、粉砕手法は、特に限定されず、例えば、超音波処理、粉砕球を用いての粉砕処理である。尚、粉砕処理後、未粉砕のものを除去する等して、より径の小さい粒子を収集してもよい。
【0043】
(洗浄工程)
洗浄工程は、焼成リン酸カルシウム粒子以外の成分、例えば、リン酸カルシウムの一次粒子を製造する際に用いた原料由来の不純物(例えば、リン酸カルシウム形成に関与しなかったカルシウムやリン酸由来の不純物、硝酸やアンモニウム由来の不純物)を洗浄する工程である。好適には、水を用いて洗浄することが好適である。尚、ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子の場合は、pH4.0未満の条件においてハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子が溶解し易くなるため、pH4.0〜pH12.0で除去工程を行なうことが好適である。また、粉砕工程や洗浄工程を交互に行う等、この順番は問わない。
【0044】
(乾燥工程)
乾燥工程は、前記粉砕工程や前記洗浄工程後、加熱する等して、溶媒を除去し、リン酸カルシウム粒子群を得る工程である。乾燥手法は、特に限定されない。
【0045】
(エンドトキシン除去工程)
ここで、本工程においては、必要に応じてエンドトキシン除去工程を設けてもよい。
【0046】
エンドトキシン除去工程は、例えば、空気下、常圧にて300℃加熱することにより行う工程である。リン酸カルシウム焼成体は、焼成後、上述した洗浄工程にて好適には水洗浄に付される。この際、リン酸カルシウム焼成体は、水中、保管容器や取り扱い雰囲気など環境中に僅かに存在するエンドトキシンを吸着する。ここで、このエンドトキシンは有害物質であり、リン酸カルシウム焼成体に残存していることは、特に生体材料として当該リン酸カルシウム焼成体を用いる場合には不適である。よって、当該処理を実施し、当該吸着されたエンドトキシンを分解する。尚、当該エンドトキシン除去工程は、上述した乾燥工程を併せて行ってもよい。
【0047】
ここで、本発明者らは、従来の製造方法で得られたリン酸カルシウム焼成体に当該加熱処理を行うと、元々の粒径が倍以上となる場合があるという知見を得た。特に、より微小な粒径が求められる用途にリン酸カルシウム焼成体を用いる際には、このような粒径増大は好ましくない事象である。一方で、理由は定かでないが、第1の製造方法に従って得られたリン酸カルシウム焼成体は、エンドトキシンを除去するために300℃にて加熱しても、殆ど粒径が変化しない。よって、本製造方法によれば、エンドトキシンが除去された、より小さい粒径のリン酸カルシウム焼結体粒子群を得ることも可能となる。
【0048】
ここで、本製造法によれば、従来技術と異なり、高分子化合物や金属塩等の融着防止剤を使用せずとも、微小なリン酸カルシウム焼結体粒子を製造可能である。より詳細には、本製造法によれば、製造工程において高分子化合物や異種金属元素(例えば、アルカリ金属元素、カルシウム以外のアルカリ土類金属元素、遷移金属元素等)を含む融着防止剤を製造原料に用いる従来の製造方法に比して、より結晶性を高めた(その結果、より溶解し難い)リン酸カルシウム焼結体粒子を得ることが可能となる。
【0049】
<<2.第1の製造方法により得られるリン酸カルシウム焼結体粒子群>>
<2−1.球状リン酸カルシウム焼結体粒子群>
本製造方法により得られる球状リン酸カルシウム焼結体粒子群は、球状のセラミック粒子を含むセラミック粒子群であって、前記セラミック粒子の粒子径が、10nm〜700nmの範囲内であり、前記セラミック粒子が、リン酸カルシウム焼結体粒子であり、且つ、前記セラミック粒子群が炭酸カルシウムを実質的に含有しないことを特徴とするセラミック粒子群である。
【0050】
更に、本製造方法により得られる球状リン酸カルシウム焼結体粒子群は、セラミック粒子群の粒子径の変動係数が、30%以下であることが好適であり、25%以下であることが好適であり、20%以下であることが特に好適である。当該セラミック粒子群は、微粒子且つ粒子径の均一な(粒度分布が狭い)ものである。それゆえ、特に高度な分級等の付加的な操作を行なうことなく、医療用高分子材料に対してより均一に吸着させることができるという効果を奏する。しかも、炭酸カルシウムを含有しないので、生体材料として使用した際に、材料の生体親和性、溶解性が変化する事態を防止することが可能となる。
【0051】
また、別の側面からは、本製造方法により得られる球状リン酸カルシウム焼結体粒子群は、球状のセラミック粒子を含むセラミック粒子群であって、単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊を単結晶一次粒子とすると、前記セラミック粒子群に含まれる単結晶一次粒子の割合が過半数を占め、上記セラミック粒子が、リン酸カルシウム焼結体粒子であり、且つ、前記セラミック粒子群が炭酸カルシウムを含有しないことを特徴とするセラミック粒子群である。当該セラミック粒子群は、その過半数が溶媒中で分散性の優れた単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊(単結晶一次粒子)として存在している。それゆえ、既述の医療用高分子基材への吸着がし易くなるという効果を奏する。また、一次粒子同士の結合が無いため、比表面積が高い。更には、生体内で安定性が高く、分散性に優れることから薬剤の担持及び徐放が可能な医療用材料として利用できるという効果を奏する。しかも、炭酸カルシウムを含有しないので、生体材料として使用した際に、材料の生体親和性やリン酸カルシウム本来の溶解性が維持される。なお、このように、単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊を、セラミック粒子としてもよい。
【0052】
また、当該セラミック粒子群は、上記セラミック粒子群に含まれる単結晶一次粒子の割合が、70%以上であってもよい。このような構成を採ることで、医療用高分子基材への吸着がし易くなるという効果を奏する。
【0053】
また、当該セラミック粒子群は、上記セラミック粒子の粒子径が、10nm〜700nmの範囲内であってもよい。当該構成によれば、医療用高分子材料に対してより均一に吸着させることができるという効果を奏する。
【0054】
また、当該セラミック粒子群は、上記セラミック粒子群の粒子径の変動係数が、20%以下であってもよい。当該構成を採ることにより、特に高度な分級等の付加的な操作を行なうことなく、医療用高分子材料に対してより均一に吸着させることができるという効果を奏する。
【0055】
また、当該セラミック粒子が、ハイドロキシアパタイト焼結体粒子であってもよい。当該粒子は、更に生体適合性が高く、広範な用途に利用可能なハイドロキシアパタイト焼結体で構成されている。そのため、医療用材料として特に好ましい。
【0056】
また、当該セラミック粒子群は、水洗浄されたものであり、且つ、前記水洗浄後の前記セラミック粒子群の粒子径を基準としたとき、前記水洗浄後に空気中常圧下にて300℃で加熱した際の粒子径の変化率が±20%であってもよい。
【0057】
<2−2.ロッド状リン酸カルシウム焼結体粒子群>
本製造方法により得られるロッド状リン酸カルシウム焼結体粒子群は、セラミック粒子を含むセラミック粒子群であって、前記セラミック粒子の粒子径が、短軸の最大直径が30nm〜5μm、長軸が75nm〜10μmであり、c軸方向に成長し、結晶のアスペクト比(c軸長/a軸長)が、1〜30であるセラミック粒子であって、前記セラミック粒子が、リン酸カルシウム焼結体粒子であり、且つ、前記セラミック粒子群が炭酸カルシウムを含有しないことを特徴とするセラミック粒子群である。
【0058】
当該ロッド状リン酸カルシウム焼成粒子群は、接着に供する面積が従来の微粒子より格段に広いため、高分子基材との接着性を向上できるので、カテーテル等の生体親和性医用材料など、高分子表面に修飾するのに適している。しかも、炭酸カルシウムを含有しないので、生体材料として使用した際に、材料から炭酸ガスが発生する事態を防止することが可能となる。尚、高分子表面に修飾する方法としては、リン酸カルシウム(例えばハイドロキシアパタイトナノ粒子)の活性基と高分子基体、例えば、表面にカルボキシル基を有するビニル系重合性単量体をグラフト重合させたシリコーンゴム、の活性基と化学反応させて複合体とする方法や、硬化性接着剤を用いる方法、高分子基材を融点近傍まで加熱して基材に埋設させる方法等を用いることができる(これは前記の球状リン酸カルシウム焼結体粒子群も同様)。なお、ロッド形状としては、先端角が斜角面を有する截頭形柱状構造であってもよい。
【0059】
また、当該セラミック粒子が、ハイドロキシアパタイト焼結体粒子であってもよい。当該粒子は、更に生体適合性が高く、広範な用途に利用可能なハイドロキシアパタイト焼結体で構成されている。そのため、医療用材料として特に好ましい。
【0060】
また、当該セラミック粒子群は、水洗浄されたものであり、且つ、前記水洗浄後の前記セラミック粒子群の粒子径を基準としたとき、前記水洗浄後に空気中常圧下にて300℃で加熱した際の粒子径の変化率が±20%であってもよい。
【0061】
<2−3.性質>
次に、本形態に係る製造方法により得られるリン酸カルシウム焼結体粒子群の性質について説明する。
【0062】
本形態によれば、炭酸カルシウムを含有しない、微小なリン酸カルシウム焼結体粒子群とすることが可能となる。
【0063】
炭酸カルシウムを含有しないことにより、生体親和性低下や溶解性変化が抑制されたリン酸カルシウム焼結体粒子とすることが可能となる。
【0064】
更に、本形態によれば、アルカリ金属元素を含有しない、微小なリン酸カルシウム焼結体粒子群とすることも可能となる。
【0065】
また、アルカリ金属元素を含有しないことにより、結晶性がより高められ、溶解し難く、更には細胞接着性に優れるリン酸カルシウム焼結体粒子とすることが可能となる。
【0066】
ここで、「炭酸カルシウムを含有しない」とは、炭酸カルシウムを実質的に含有しないことであり、微量の含有を必ずしも排除するものではないが、以下の(1)〜(3)の基準を満たすことであり、好適には、更に(4)の基準を満たすことである。
(1)X線回折の測定結果より炭酸カルシウムが、炭酸カルシウム(式量:100.09)/ハイドロキシアパタイト(式量:1004.62)=0.1/99.9(式量換算比)以下である。
(2)熱重量示差熱分析(TG−DTA)測定において、650℃〜800℃に明確な吸熱を伴う2%以上の重量減を観察されない。
(3)FT−IR測定において得られるスペクトルをクベルカムンク(KM)式で計算した吸光度を示したチャートにおいて、波数が860cm−1〜890cm−1の間に現れるピークを分離し、炭酸カルシウムに帰属される877cm−1付近のピークが観察されない。なお、ピーク分離は、例えば、fityk 0.9.4というソフトを用いて、Function Type:Gaussian、Fitting Method:Levenberg-Marquardtという条件で処理することによって行う。
(4)医薬部外品原料規格2006(ヒドロキシアパタイト)に準じて試験した際、気泡発生量が0.25mL以下である。
【0067】
また、「アルカリ金属元素を含有しない」とは、アルカリ金属元素を実質的に含有しないことであり、各アルカリ金属元素に関して、リン酸カルシウム焼結体粒子全体の重量に対するアルカリ金属元素の重量が10ppm以下(好適には、1ppm以下)であることを示す。なお、分析方法としては従来公知の方法を適用可能であり、例えば、ICP−MSにより分析を行えばよい。
【0068】
更には、前述のように、本形態によれば、カルシウム以外のアルカリ土類金属元素や、遷移金属元素を含有しないリン酸カルシウム焼結体粒子群とすることも可能である。
【0069】
このように、カルシウム以外のアルカリ土類金属元素や、遷移金属元素を実質的に含有しないことで、結晶性がより高められ、溶解し難く、更には細胞接着性に優れるリン酸カルシウム焼結体粒子とすることが可能となる。また、遷移金属元素を実質的に含まないことで、生体への安全性をより高めることが可能となる。
【0070】
なお、「アルカリ土類金属元素を含有しない」(「遷移金属元素を含有しない」)とは、上記同様に、各アルカリ土類金属元素(各遷移金属元素)に関して、リン酸カルシウム焼結体粒子全体の重量に対するアルカリ土類金属元素(遷移金属元素)の重量が10ppm以下(好適には、1ppm以下)であることを示す。なお、分析方法としては従来公知の方法を適用可能であり、例えば、ICP−MSにより分析を行えばよい。
【0071】
ここで、本製造法によって得られたリン酸カルシウム粒子群は、水分吸着性として、更に以下の(A)の性質を有する。
(A)十分に乾燥させた後に(例えば、常圧下、温度60℃、湿度45〜85%の条件で18時間以上乾燥させた後に)、常圧下、温度25℃、湿度50%の条件にて3日間以上放置した後、熱重量示差熱分析装置(TG−DTA)(セイコーインスツルメント社製、EXSTAR6000)にて、窒素気流下、10℃/min.の条件で測定し、25〜200℃の温度帯において減少した重量が2%以下となる。
【0072】
リン酸カルシウム粒子群がこのような性質を満たすことにより、細胞接着性をより向上可能であることが知見された。
【0073】
また、本形態における焼成リン酸カルシウム粒子群は、X線回折法(XRD)により測定された、d=2.814での半値幅が、0.2〜0.8を満たすことが好適であり、0.3〜0.7を満たすことがより好適である。焼成リン酸カルシウム粒子群の半値幅をこの範囲とすることにより、溶解性をより低減させ、且つ、細胞接着性をより向上させることが可能となる。
【0074】
なお、半値幅の調整においては、焼成温度及び焼成時間を適宜調整すればよく、上記半値幅としたい場合には、例えば、焼成温度(最高到達温度)を600〜800℃とし、当該温度範囲の保持時間を0〜1h等とすればよい。
【0075】
<<<第2の製造方法>>>
以下、本発明に係るリン酸カルシウム粒子群の第2の製造方法を説明し、次いで、当該第2の製造方法により得られたセラミック粒子群について説明する。
【0076】
<<1.セラミック粒子群の第2の製造方法>>
<1−1.原料>
焼成前のセラミック原料であるリン酸カルシウム(CaP)としては、具体例として、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))、リン酸三カルシウム(Ca(PO)、メタリン酸カルシウム(Ca(PO)、Ca10(PO、Ca10(POCl等が挙げられる。ここで、当該リン酸カルシウム(CaP)は、湿式法や、乾式法、加水分解法、水熱法等の公知の製造方法によって、人工的に製造されたものであってもよく、また、骨、歯等から得られる天然由来のものであってもよい。
【0077】
<1−2.プロセス>
本形態に係るセラミック粒子群の製造方法は、少なくとも、「混合工程」、「焼結工程」及び「酸洗い工程」を含んでいればよいが、この他の工程(例えば、「一次粒子生成工程」、「除去工程」、「粉砕工程」、「乾燥工程」など)を含んでいてもよい。
【0078】
例えば、本形態に係るセラミック粒子群の製造方法は、「1.一次粒子生成工程」→「2.混合工程」→「3.焼結工程」→「4.酸洗い工程」の順で行われる。
【0079】
(一次粒子生成工程)
以下、本形態に係るリン酸カルシウム粒子群の製造方法において、一次粒子が球状及びロッド状である場合を例示するが、本形態の製造方法はこれには限定されず、一次粒子としては、製造可能なあらゆる形状であってよい。
【0080】
・球状セラミック粒子の一次粒子生成工程
まず、「一次粒子」とは、セラミック粒子群の製造工程の焼結前に、セラミック原料{リン酸カルシウム(CaP)、ハイドロキシアパタイト(HAp)等}によって形成された粒子のことを意味する。即ち、セラミック粒子の製造工程において、初めて形成された粒子のことを意味する。また狭義には単結晶粒子のことを意味する。尚、特許請求の範囲及び明細書において「一次粒子」とは、非晶質(アモルファス)、低結晶性の状態のもの、及びその後に焼結を行なった焼結体の状態のものをも含む意味である。これに対して「二次粒子」とは、複数の「一次粒子」同士が、融着等の物理的結合、Van der Waals力や静電的相互作用又は共有結合等の化学的結合によって、結合して形成された状態の粒子を意味する。特に一次粒子同士の結合の個数、結合後の形状等は限定されるものではなく、2つ以上の一次粒子が結合したもの全てを意味する。また、特に「単結晶一次粒子」とは、セラミック原料の単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊を意味する。尚、前記「イオン的相互作用にて集合化した粒子塊」とは、水もしくは有機溶媒を含む媒体にて分散させた場合にイオン的相互作用で自己集合する粒子塊であって、焼結により粒子間が溶融して多結晶化した二次粒子を含まないものである。
【0081】
当該一次粒子生成工程は、それ自体公知であり、上記一次粒子を生成することができる工程であれば特に限定されるものではなく、製造するセラミックの原料により適宜選択の上、採用すればよい。例えば、常温下において水酸化カルシウムスラリーにリン酸を滴下すれば、リン酸カルシウム(CaP)の粒子が沈殿する。
【0082】
本形態に係るセラミック粒子群の製造方法は、上記の一次粒子生成工程によって生成した一次粒子からなる一次粒子群を、融着等を防止しながら焼結してセラミック粒子群を製造するものである。よって、当該一次粒子生成工程によって生成された一次粒子の状態(粒子径、粒度分布)が、最終生産物であるセラミック粒子の状態(粒子径、粒度分布)にそのまま反映される。したがって、粒子径が微細(ナノメートルサイズ)で且つ粒子径が均一な(粒度分布が狭い)セラミック粒子群を製造しようとする場合においては、当該一次粒子生成工程において粒子径が微細(ナノメートルサイズ)で且つ粒子径が均一な(粒度分布が狭い)一次粒子群を生成しておく必要がある。
【0083】
かかる場合の好ましい一次粒子の粒子径(平均粒子径及び粒度分布)としては、10nm〜700nmが好ましく、15nm〜450nmが更に好ましく、20nm〜400nmが最も好ましい。また、一次粒子からなる一次粒子群の粒子径の変動係数が、20%以下であることが好ましく、18%以下であることがさらに好ましく、15%以下であることが最も好ましい。尚、一次粒子の粒子径及び変動係数は、動的光散乱又は電子顕微鏡を用い、少なくとも100個以上の一次粒子について粒子径を測定して計算すればよい。
【0084】
尚、「変動係数」は、標準偏差÷平均粒子径×100(%)で計算することができる粒子間の粒子径のバラツキを示す値である。
【0085】
上記のような微細(ナノメートルサイズ)で且つ粒子径が均一な(粒度分布が狭い)一次粒子群を生成する方法については、特に限定されるものではなく、例えば、特開2002−137910号公報、特許第5043436号公報、Journal of Nanoscience and Nanotechnology 7, 848-851, 2007に記載された方法を挙げることができる。
【0086】
また、本工程には、生成した一次粒子を水等で洗浄する工程、遠心分離、ろ過等で一次粒子を回収する工程が含まれていてもよい。
【0087】
・ロッド状セラミック粒子の一次粒子生成工程
ロッド状セラミック粒子{粒子の粒子径が、短軸の最大直径が30nm〜5μm、長軸が75nm〜10μmであり、c軸方向に成長し、結晶のアスペクト比(c軸長/a軸長)が、1〜30であるセラミック粒子}の一次粒子生成工程は、それ自体公知であり、例えば、特開2002−137910号公報、Journal of Nanoparticle Research 9, 807-815, 2007に記載された方法を挙げることができる。
【0088】
また、本工程には、生成した一次粒子を水等で洗浄する工程、遠心分離、ろ過等で一次粒子を回収する工程が含まれていてもよい。
【0089】
(混合工程)
当該混合工程は、一次粒子と融着防止剤とを混合する工程である。上記一次粒子生成工程によって得られた一次粒子群の粒子間に、あらかじめ融着防止剤を介在させておくことで、その後の焼結工程における一次粒子同士の融着を防止することができるというものである。なお当該混合工程によって得られた一次粒子と融着防止剤との混合物を「混合粒子」と呼ぶ。
【0090】
ここで「融着防止剤」としては、一次粒子間の融着を防止できるものであれば特に限定されるものではないが、後の焼結工程の焼結温度において、不揮発性であることが好ましい。焼結温度条件下で不揮発性であるために、焼結工程中に一次粒子間から消失することは無く、一次粒子同士の融着を確実に防止することができるからである。ただし焼結温度において100%の不揮発性を有する必要は無く、焼結工程終了後に一次粒子間に10%以上残存する程度の不揮発性であればよい。また融着防止剤は焼結工程終了後に熱により化学的に分解するものであってもよい。すなわち焼結工程終了後に残存していれば、焼結工程の開始前後で、同一の物質(化合物)である必要は無い。
【0091】
また融着防止剤が、溶媒、特に水系溶媒に溶解する物質であることが好ましい。上記のごとく融着防止剤として、溶媒に溶解する融着防止剤を用いることによれば、融着防止剤が混在するセラミック粒子群を純水等の水系溶媒に懸濁するだけで、融着防止剤(例えば炭酸カルシウム等)を除去することができる。特に水系溶媒に溶解する融着防止剤であれば、融着防止剤を除去する際に有機溶媒を用いる必要が無いため、除去工程に有機溶媒の使用に対応する設備、有機溶媒廃液処理が不要となる。それゆえ、より簡便にセラミック粒子群から融着防止剤を除去することができるといえる。上記溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水系溶媒としては、水、エタノール、メタノール等が挙げられ、有機溶媒としては、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0092】
また上記水系溶媒は、融着防止剤の水への溶解性を上げるために、シュウ酸塩、エチレンジアミン、ビピリジン、エチレンジアミン四酢酸塩などのキレート化合物を含んでいても良い。さらに上記水系溶媒は、融着防止剤の水への溶解性を上げるために、塩化ナトリウム、硝酸アンモニウム、炭酸カリウムなどの電解質イオンを含んでいても良い。
【0093】
ここで、融着防止剤の溶媒に対する溶解度は、高ければ高いほど除去効率が高くなるために好ましいといえる。かかる好ましい溶解度は、溶媒100gに対する溶質の量(g)を溶解度とすると、0.01g以上が好ましく、1g以上がさらに好ましく、10g以上が最も好ましい。
【0094】
上記融着防止剤の具体例としては、塩化カルシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウムなどのカルシウム塩(または錯体)、塩化カリウム、酸化カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、リン酸カリウムなどのカリウム塩、塩化ナトリウム、酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウムなどのナトリウム塩などが挙げられる。
【0095】
なお、当該混合工程において一次粒子と融着防止剤とを混合させる方法については、特に限定されるものではなく、固体の一次粒子に固体の融着防止剤を混合後、ブレンダーを用いて混合する方法であってもよいし、融着防止剤の溶液中に一次粒子を分散させる方法を行なってもよい。ただし、固体と固体を均一に混合することは困難であるため、一次粒子間に均一かつ確実に融着防止剤を介在させるためには、後者が好ましい方法であるといえる。後者の方法を採用した場合は、一次粒子を分散させた融着防止剤溶液を乾燥させておくことが好ましい。一次粒子と融着防止剤が均一に混合された状態を長期にわたって維持することができるからである。後述する実施例においても、炭酸カルシウム飽和水溶液にハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子0.5gを分散させ、80℃にて乾燥させて混合粒子を取得している。
【0096】
また当該混合工程は、側鎖にカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基のいずれかを有する高分子化合物を含む溶液と、上記一次粒子とを混合し、金属塩(アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩および/または遷移金属塩)をさらに添加する工程であってもよい。上記の工程を採用することによって、高分子化合物がヒドロキシアパタイト(HAp)表面に吸着することで融着防止剤混合過程におけるハイドロキシアパタイト(HAp)同士の接触を確実に防ぐことができ、その後にカルシウム塩を添加することでハイドロキシアパタイト(HAp)表面に確実に融着防止剤を析出させることが可能となる。なお、以下の説明において、側鎖にカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基のいずれかを有する高分子化合物のことを、単に「高分子化合物」と称する。
【0097】
上記高分子化合物は、側鎖にカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基のいずれかを有する化合物であれば特に限定されるものではない。例えば、側鎖にカルボキシル基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボキシメチルセルロース、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられ、側鎖に硫酸基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸アルキル硫酸エステル、ポリメタクリル酸アルキル硫酸エステル、ポリスチレン硫酸等が挙げられ、側鎖にスルホン酸基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸アルキルスルホン酸エステル、ポリメタクリル酸アルキルスルホン酸エステル、ポリスチレンスルホン酸等が挙げられ、側鎖にリン酸基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸アルキルリン酸エステル、ポリメタクリル酸アルキルリン酸エステル、ポリスチレンリン酸、ポリアクリロイルアミノメチルホスホン酸等が挙げられ、側鎖にホスホン酸基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸アルキルホスホン酸エステル、ポリメタクリル酸アルキルホスホン酸エステル、ポリスチレンホスホン酸、ポリアクリロイルアミノメチルホスホン酸、ポリビニルアルキルホスホン酸等が挙げられ、側鎖にアミノ基を有する高分子化合物としては、ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、ポリメタクリル酸アミノアルキルエステル、ポリアミノスチレン、ポリペプチド、タンパク質等が挙げられる。なお当該混合工程においては、上記高分子化合物のいずれか1種類を用いればよいが、複数種類の高分子化合物を混合して用いてもよい。
【0098】
なお上記高分子化合物の分子量は特に限定されるものではないが、100g/mol以上1,000,000g/mol以下が好ましく、500g/mol以上500,000g/mol以下がさらに好ましく、1,000g/mol以上300,000g/mol以下が最も好ましい。上記好ましい範囲未満であると一次粒子間に入り込む割合が減少し、一次粒子同士の接触を阻止する割合が低くなる。また上記好ましい範囲を超えると、高分子化合物の溶解度が低くなること、当該高分子化合物を含む溶液の粘度が高くなること等の操作性が悪くなるために好ましくない。
【0099】
なお高分子化合物を含む溶液は、水溶液であることが好ましい。ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子は強い酸性条件下で溶解してしまうからである。なお高分子化合物が含まれる水溶液のpHは、5以上14以下でHAp粒子が不溶な条件あれば特に限定されるものではない。当該高分子化合物を含む水溶液は、高分子化合物を蒸留水、イオン交換水等に溶解し、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液でpHを調節すればよい。
【0100】
また上記水溶液に含まれる高分子化合物の濃度は、0.001%w/v以上50%w/v以下が好ましく、0.005%w/v以上30%w/v以下がさらに好ましく、0.01%w/v以上10%w/v以下が最も好ましい。上記好ましい範囲未満であると一次粒子間に入り込む量が少なく、一次粒子同士の接触を阻止する割合が低くなる。また上記好ましい範囲を超えると、高分子化合物の溶解が困難となること、当該高分子化合物を含む溶液の粘度が高くなる等の操作性が悪くなるために好ましくない。
【0101】
本形態における混合工程では、上記高分子化合物を含む溶液と、一次粒子とを混合する。かかる混合は、例えば、当該溶液中に一次粒子を投入し、撹拌操作等によって、当該一次粒子を分散させればよい。かかる操作によって、上記本形態にかかるセラミック粒子群の製造方法では、一次粒子表面に上記高分子化合物が吸着し、カルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基のいずれかを当該一次粒子の表面に付加することができる。このとき当該カルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基は、溶液中でイオンの状態で存在している。
【0102】
次に高分子化合物を含む溶液と一次粒子とを混合した溶液に、金属塩(アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩および/または遷移金属塩)をさらに添加すれば、上記一次粒子表面に存在するカルボン酸イオン、硫酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン、ホスホン酸イオン、アミノイオンと、金属イオン(アルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンおよび/または遷移金属イオン)とが結合し、一次粒子の表面にカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩が生じる。かかる金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩が、上記融着防止剤として機能する。したがって、金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩がその表面に生じた一次粒子は、いわゆる「混合粒子」である。なお、かかる金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩は沈殿するため、当該沈殿物を回収後、乾燥させて後述する焼結工程に供すればよい。前記乾燥は、例えば減圧条件下(1×10Pa以上1×10−5Pa以下が好ましく、1×10Pa以上1×10−3Pa以下がさらに好ましく、1×10Pa以上1×10−2Pa以下が最も好ましい。)で、加熱(0℃以上200℃以下が好ましく、20℃以上150℃以下がさらに好ましく、40℃以上120℃以下が最も好ましい。)して行なう方法が挙げられる。なお、上記乾燥においては、乾燥温度を下げることができることから減圧条件下が好ましいが、大気圧条件下で行なってもよい。
【0103】
上記アルカリ金属塩としては、特に限定されるものではないが、例えば塩化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ酸ナトリウム、酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、セレン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、リン化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩化カリウム、次亜塩素酸カリウム、亜塩素酸カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ酸カリウム、酸化カリウム、過酸化カリウム、硫酸カリウム、チオ硫酸カリウム、セレン酸カリウム、亜硝酸カリウム、硝酸カリウム、リン化カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム等が利用可能である。
【0104】
また上記アルカリ土類金属塩としては、例えば塩化マグネシウム、次亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、過酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、チオ硫酸マグネシウム、セレン酸マグネシウム、亜硝酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、リン化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ酸カルシウム、酸化カルシウム、過酸化カルシウム、硫酸カルシウム、チオ硫酸カルシウム、セレン酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等が利用可能である。
【0105】
また上記遷移金属塩としては、例えば塩化亜鉛、次亜塩素酸亜鉛、亜塩素酸亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、ヨウ酸亜鉛、酸化亜鉛、過酸化亜鉛、硫酸亜鉛、チオ硫酸亜鉛、セレン酸亜鉛、亜硝酸亜鉛、硝酸亜鉛、リン化亜鉛、炭酸亜鉛、水酸化亜鉛、塩化鉄、次亜塩素酸鉄、亜塩素酸鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、ヨウ酸鉄、酸化鉄、過酸化鉄、硫酸鉄、チオ硫酸鉄、セレン酸鉄、亜硝酸鉄、硝酸鉄、リン化鉄、炭酸鉄、水酸化鉄等が利用可能である。またニッケル化合物であってもよい。
【0106】
なお高分子化合物を含む溶液と一次粒子とを混合した溶液に添加する金属塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩)は、1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。また金属塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属)は、固体の状態でもよいが、均一に添加することができること、および添加する濃度を制御することが可能である等の理由から水溶液として添加することが好ましい。また添加する金属塩(アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩および/または遷移金属塩)の量(濃度)は、一次粒子表面に存在するカルボン酸イオン、硫酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン、ホスホン酸イオン、アミノイオンと結合して、金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩が生じる条件であれば特に限定されるものではなく、適宜検討の上、決定すればよい。
【0107】
なお、ポリアクリル酸ナトリウムは水に可溶なため、本混合工程において融着防止剤としてそのまま利用可能であるが、ポリアクリル酸カルシウムは水に不溶なため、一旦ポリアクリル酸のみを一次粒子表面に吸着させた後に、カルシウム塩等を添加することで、ポリアクリル酸カルシウムを一次粒子表面に析出させるようにすることが好ましい。また、高温(約300℃以上)で一次粒子を仮焼する際に高分子化合物は分解するため、仮焼後も融着防止剤として機能するように、高分子化合物の金属塩を一次粒子の表面に析出させておくことが好ましいといえる。ただし高分子化合物が分解しない(軟化しない)温度において一次粒子を仮焼(熱処理)する場合は、高分子化合物の金属塩を一次粒子の表面に析出させておく必要は特にない。
【0108】
(焼結工程)
当該焼結工程は、上記混合工程によって得られた混合粒子を焼結温度に曝して、当該混合粒子に含まれる一次粒子をセラミック粒子(焼結体粒子)にする工程である。一次粒子の粒子間に融着防止剤が介在しているために、焼結工程における高温条件に曝された場合であっても一次粒子同士の融着を防止することができるというものである。
【0109】
当該焼結工程における焼結温度は、セラミック粒子の硬度が所望の硬度となるように適宜設定すればよく、例えば、100℃〜1800℃の範囲内がより好ましく、150℃〜1500℃がさらに好ましく、200℃〜1200℃が最も好ましい。なお焼結時間については所望するセラミック粒子の硬度等を基準に適宜設定すればよい。後述する実施例においては、800℃で1時間焼結を行なっている。
【0110】
なお、当該焼結工程に用いる装置等は特に限定されるものではなく、製造規模、製造条件等に応じて市販の焼成炉を適宜選択の上、採用すればよい。
【0111】
(除去工程)
当該除去工程は、焼結工程によって得られたセラミック粒子群の粒子間に混在する融着防止剤を取り除く工程である。
【0112】
除去の手段および手法については、上記混合工程において採用した融着防止剤に応じて適宜採用すればよい。例えば、溶媒溶解性を有する融着防止剤を用いた場合は、セラミック粒子を溶解しない溶媒(非溶解性)でかつ融着防止剤を溶解する(溶解性)溶媒を用いることによって、融着防止剤のみを溶解して除去することができる。用いる溶媒としては、上記要件を満たす溶媒であれば特に限定されるものではなく、水系溶媒であっても、有機溶媒であってもよい。例えば、水系溶媒としては、水、エタノール、メタノール等が挙げられ、有機溶媒としては、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0113】
また上記水系溶媒は、融着防止剤の水への溶解性を上げるために、シュウ酸塩、エチレンジアミン、ビピリジン、エチレンジアミン四酢酸塩などのキレート化合物を含んでいても良い。さらに上記水系溶媒は、融着防止剤の水への溶解性を上げるために、塩化ナトリウム、硝酸アンモニウム、炭酸カリウムなどの電解質イオンを含んでいても良い。
【0114】
ただし、当該除去工程において有機溶媒の使用に対応する設備が不要となること、有機溶媒廃液処理が不要となること、製造作業の安全性が高いこと、環境に対するリスクが低いこと等の理由から、使用する溶媒は水系溶媒が好ましい。
【0115】
なお、ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子の場合は、pH4.0以下の条件においてハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子が溶解するため、pH4.0〜pH12.0で除去工程を行なうことが好ましい。
【0116】
ところで、溶媒を用いて融着防止剤を除去する場合は、焼結工程によって得られた融着防止剤を含むセラミック粒子群を溶媒に懸濁させた後、ろ過または遠心分離によってセラミック粒子のみを回収すればよい。本形態にかかるセラミック粒子群の製造方法において上記操作は、1回に限られるものではなく2回以上行なってもよい。上記操作を複数回行なうことで、セラミック粒子間の融着防止剤の除去率がさらに向上するものといえる。ただし、製造工程が複雑になること、製造コストが高くなること、セラミック粒子の回収率が低下すること等の理由により、必要以上に上記操作を行なうことは好ましくない。よって上記操作の回数は、目標とする融着防止剤の除去率を基準に適宜決定すればよい。
【0117】
なお本工程には、さらに粒子径を均一にするために分級する工程が含まれていてもよい。
【0118】
上記溶媒を用いて融着防止剤を除去する方法の他、融着防止剤に磁性体を用いることによって、マグネットを用いて融着防止剤を除去することができる。より具体的には、焼結工程によって得られた融着防止剤を含むセラミック粒子(粗セラミック粒子)群を適当な溶媒(水等)に懸濁して分散させた後、当該懸濁液に磁力をかけ、融着防止剤のみをマグネットに吸着させ、吸着しなかったセラミック粒子のみを回収する。また特に溶媒に懸濁することなく、粗セラミック粒子をすりつぶして粉体にした後、マグネットによって融着防止剤を分離する方法を行なってもよい。ただし、懸濁液にした方がセラミック粒子と融着防止剤が剥離しやすく、融着防止剤の除去率は高いといえる。なお、この手法を適用することができるセラミック粒子は、非磁性体または、弱磁性体であることが好ましい。
【0119】
(酸洗い工程)
酸洗い工程は、焼結工程により得られたセラミック粒子(焼結体粒子)を酸によって洗浄する工程である。洗浄工程の目的は、焼結体粒子に含まれる炭酸カルシウムなどを除くことである。
【0120】
酸は、セラミック粒子に損傷を与えない程度の弱い酸が用いられる。例えば、フッ化水素酸、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、又はこれらのアンモニウム塩が挙げられる。
【0121】
酸洗い工程は、リン酸カルシウム焼結体を酸溶液に懸濁させることなどによって行われる。例えば、リン酸カルシウム焼結体を酸溶液に懸濁させ、遠心分離を行った後、上澄みを捨てるという操作を、上澄みのpHが6.0〜9(好ましくは、6.5〜8.5、さらに好ましくは7.0〜7.5)になるまで繰り返し行うことによって、酸洗い工程が行われる。より詳細には、例えば、0.2wt%の硝酸アンモニウム水溶液にHApを懸濁させ、5分間超音波照射を行い、遠心分離により固液分離し、上澄みを捨てる。この操作を上澄みのpHが8となるまで繰り返した後、脱イオン水に懸濁させ、遠心分離し、上澄みを捨てる操作を三回以上繰り返すことを行うことによって、酸洗い工程を行ってもよい。
【0122】
(粉砕工程)
粉砕工程は、前記焼結工程後の凝集体を粉砕し、所望サイズの焼成リン酸カルシウム粒子群を得る工程である。ここで、通常、二次粒子化した焼成体は、相当程度の粉砕工程を実施しても一次粒子サイズまで微小化することはほぼ不可能である。他方、本形態の手法によると、簡素な粉砕工程でも、容易に一次粒子サイズレベルまで粉砕することが可能となる。ここで、粉砕手法は、特に限定されず、例えば、超音波処理、粉砕球を用いての粉砕処理である。尚、粉砕処理後、未粉砕のものを除去する等して、より径の小さい粒子を収集してもよい。
【0123】
(乾燥工程)
乾燥工程は、前記粉砕工程や前記洗浄工程後、加熱する等して、溶媒を除去し、リン酸カルシウム粒子群を得る工程である。乾燥手法は、特に限定されない。
【0124】
<<2.第2の製造方法により得られるリン酸カルシウム焼結体粒子群>>
<2−1.球状リン酸カルシウム焼結体粒子群>
本製造方法により得られる球状リン酸カルシウム焼結体粒子群は、セラミック粒子を含むセラミック粒子群であって、前記セラミック粒子の粒子径が、10nm〜700nmの範囲内で、前記セラミック粒子が、リン酸カルシウム焼結体粒子であり、前記セラミック粒子が、炭酸カルシウムを実質的に含有しないことを特徴とするセラミック粒子群である。更に、前記セラミック粒子が、少なくともその表面に炭酸アパタイトを含む。
【0125】
更に、本製造方法により得られる球状リン酸カルシウム焼結体粒子群は、セラミック粒子群の粒子径の変動係数が、30%以下であることが好適であり、25%以下であることが好適であり、20%以下であることが特に好適である。当該セラミック粒子群は、微粒子且つ粒子径の均一な(粒度分布が狭い)ものである。それゆえ、特に高度な分級等の付加的な操作を行なうことなく、医療用高分子材料に対してより均一に吸着させることができるという効果を奏する。しかも、炭酸カルシウムを含有しないので、生体材料として使用した際に、材料の生体親和性、溶解性が変化する事態を防止することが可能となる。また、当該セラミック粒子群は、高い分散性を示すものである。
【0126】
また、別の側面からは、本製造方法により得られる球状リン酸カルシウム焼結体粒子群は、球状のセラミック粒子を含むセラミック粒子群であって、単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊を単結晶一次粒子とすると、前記セラミック粒子群に含まれる単結晶一次粒子の割合が過半数を占め、上記セラミック粒子が、リン酸カルシウム焼結体粒子であり、且つ、前記セラミック粒子群が炭酸カルシウムを実質的に含有しないことを特徴とするセラミック粒子群である。当該セラミック粒子群は、その過半数が溶媒中で分散性の優れた単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊(単結晶一次粒子)として存在している。それゆえ、既述の医療用高分子基材への吸着がし易くなるという効果を奏する。また、一次粒子同士の結合が無いため、比表面積が高い。更には、生体内で安定性が高く、分散性に優れることから薬剤の担持及び徐放が可能な医療用材料として利用できるという効果を奏する。しかも、炭酸カルシウムを実質的に含有しないので、生体材料として使用した際に、材料の生体親和性やリン酸カルシウム本来の溶解性が維持される。なお、このように、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊を、セラミック粒子としてもよい。
【0127】
また、当該セラミック粒子群は、上記セラミック粒子群に含まれる単結晶一次粒子の割合が、70%以上であってもよい。このような構成をとることで、医療用高分子基材への吸着がし易くなるという効果を奏する。
【0128】
また、当該セラミック粒子群は、上記セラミック粒子の粒子径が、10nm〜700nmの範囲内であってもよい。当該構成によれば、医療用高分子材料に対してより均一に吸着させることができるという効果を奏する。
【0129】
また、当該セラミック粒子群は、上記セラミック粒子群の粒子径の変動係数が、20%以下であってもよい。当該構成をとることにより、特に高度な分級等の付加的な操作を行なうことなく、医療用高分子材料に対してより均一に吸着させることができるという効果を奏する。
【0130】
また、当該セラミック粒子が、ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子であってもよい。当該粒子は、更に生体適合性が高く、広範な用途に利用可能なハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体で構成されている。そのため、医療用材料として特に好ましい。
【0131】
<2−2.ロッド状リン酸カルシウム焼結体粒子群>
本製造方法により得られるロッド状リン酸カルシウム焼結体粒子群は、セラミック粒子を含むセラミック粒子群であって、前記セラミック粒子の粒子径が、短軸の最大直径が30nm〜5μm、長軸が75nm〜10μmであり、c軸方向に成長し、結晶のアスペクト比(c軸長/a軸長)が、1〜30であるセラミック粒子であって、前記セラミック粒子が、リン酸カルシウム焼結体粒子であり、且つ、前記セラミック粒子群が炭酸カルシウムを実質的に含まないことを特徴とするセラミック粒子群である。更に、前記セラミック粒子が、少なくともその表面に炭酸アパタイトを含む。
【0132】
当該ロッド状リン酸カルシウム焼成粒子群は、接着に供する面積が従来の微粒子より格段に広いため、高分子基材との接着性を向上できるので、カテーテル等の生体親和性医用材料など、高分子表面に修飾するのに適している。しかも、炭酸カルシウムを実質的に含有しないので、生体材料として使用した際に、材料から炭酸ガスが発生する事態を防止することが可能となる。尚、高分子表面に修飾する方法としては、リン酸カルシウム(例えばハイドロキシアパタイト(HAp)ナノ粒子)の活性基と高分子基体、例えば、表面にカルボキシル基を有するビニル系重合性単量体をグラフト重合させたシリコーンゴム、の活性基と化学反応させて複合体とする方法や、硬化性接着剤を用いる方法、高分子基材を融点近傍まで加熱して基材に埋設させる方法等を用いることができる(これは前記の球状リン酸カルシウム焼結体粒子群も同様)。なお、ロッド形状としては、先端角が斜角面を有する截頭形柱状構造であってもよい。
【0133】
また、当該セラミック粒子が、ハイドロキシアパタイト焼結体粒子であってもよい。当該粒子は、更に生体適合性が高く、広範な用途に利用可能なハイドロキシアパタイト焼結体で構成されている。そのため、医療用材料として特に好ましい。
【0134】
<2−3.一般式で表したリン酸カルシウム焼結体粒子群>
本製造方法により得られる、上記の2−1および2−2のリン酸カルシウム焼結体粒子群は、以下の一般式
Ca(PO6−y(CO(OH)
(式中、xは8以上12以下の数(好ましくは、9以上11以下の数、さらに好ましくは、9.5以上10.5以下の数)であり、yは0より大きく、3以下の数(好ましくは、0より大きく、2以下の数、さらに好ましくは、0より大きく、1以下の数)である)
で表されてもよい。
【0135】
Ca、(PO)、COの測定方法は、以下のとおりである。CaならびにPOは、測定サンプルを1N 硝酸に溶解し、式量換算で100ppmとなるように測定溶液を調整し、ICP発光分析(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、iCAP7600Duo)を用いて上記測定溶液を測定する。また、COは、熱重量示差熱分析装置(TG−DTA)(セイコーインスツルメント社製、EXSTAR6000)にて、窒素気流下、10℃/min.の条件で測定し、700℃〜950℃の温度帯において減少した重量から、脱炭酸量を評価する。
【0136】
<2−3.構造>
次に、本形態に係る製造方法により得られるリン酸カルシウム焼結体粒子群の構造について説明する。
【0137】
本形態は、炭酸カルシウムを実質的に含有しないことを主な特徴とする、リン酸カルシウム焼結体粒子群である。また、少なくともその表面に炭酸アパタイトを含む。
【0138】
本発明者らは、特許文献1の発明を実施すると、リン酸カルシウム焼結体粒子の表面に炭酸カルシウムが生じることを見いだした。驚くべきことに、炭酸カルシウムなどの炭酸を含む融着防止剤を使用した場合だけではなく、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウムなどの炭酸を含まない融着防止剤を使用した場合においても、リン酸カルシウム焼結体粒子の表面に炭酸カルシウムが生じた(下記の比較例2−2および2−3を参照)。その理由は、硝酸カルシウムや硝酸ナトリウムは、加熱することにより酸化カルシウム、酸化ナトリウムに変化する。これらの物質は強塩基であり、電気炉内に存在している二酸化炭素と反応し、炭酸カルシウムを生じる。また、ハイドロキシアパタイト(HAp)はイオン交換を容易に起こすため、融着防止剤として使用した塩を構成するイオンとハイドロキシアパタイト(HAp)を構成するイオンとが交換し、結晶構造が変化する。その際、ハイドロキシアパタイト表面がカルシウムイオン過多となり、電気炉中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを生成すると推測される。本発明者らは、酸洗い工程などによって、この炭酸カルシウムを除くことによって、リン酸カルシウム焼結体粒子(粒子群)の表面などに、炭酸アパタイトが生じることを見出した。
【0139】
本形態においては、炭酸カルシウムを含まず、且つ、少なくともリン酸カルシウム焼結体粒子(粒子群)の表面に、炭酸アパタイトを含むことによって、生体親和性低下や溶解性変化が抑制され、高い分散性を示すリン酸カルシウム焼結体粒子とすることが可能となる。
【0140】
さらに、本形態においては、アルカリ金属元素を含有しないことにより、結晶性がより高められ、溶解し難く、更には細胞接着性に優れるリン酸カルシウム焼結体粒子とすることが可能となる。
【0141】
ここで、「炭酸カルシウムを含有しない」とは、炭酸カルシウムを実質的に含有しないことであり、微量の含有を必ずしも排除するものではないが、より具体的には、以下の(1)〜(3)の基準を満たすことである。
(1)X線回折の測定結果より炭酸カルシウムが、炭酸カルシウム(式量:100.09)/ハイドロキシアパタイト(式量:1004.62)=0.1/99.9(式量換算比)以下である。
(2)熱重量示差熱分析(TG−DTA)測定において、650℃〜800℃に明確な吸熱を伴う2%以上の重量減を観察されない。
(3)FT−IR測定において得られるスペクトルをクベルカムンク(KM)式で計算した吸光度を示したチャートにおいて、波数が860cm−1〜890cm−1の間に現れるピークを分離し、炭酸カルシウムに帰属される877cm−1付近のピークが観察されない。なお、ピーク分離は、例えば、fityk 0.9.4というソフトを用いて、Function Type:Gaussian、Fitting Method:Levenberg-Marquardtという条件で処理することによって行う。
【0142】
「炭酸アパタイトを含む」とは、公知の炭酸アパタイトの測定方法に従って測定した結果、炭酸アパタイトが存在することを言う。例えば、FT−IRスペクトルにおいて、1350cm−1〜1500cm−1に吸収が観察されることを言う。
【0143】
なお、FT−IR分析装置及び測定条件は下記の通りである。臭化カリウム〔KBr〕に対して10重量%となるようハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群をとり、メノウ乳鉢にて十分粉砕した測定サンプルを、パーキンエルマー製FT−IR Spectrum100を用いて拡散反射にて450cm−1〜4000cm−1の範囲を積算回数8回で測定する。
【0144】
また、熱重量示差熱分析(TG−DTA)測定条件は下記の通りである。熱重量示差熱分析装置(TG−DTA)(セイコーインスツルメント社製、EXSTAR6000)にて、窒素気流下、10℃/min.の条件で測定し、700℃〜950℃の温度帯において減少した重量から、脱炭酸量を評価する。
【0145】
また、「アルカリ金属元素を含有しない」とは、各アルカリ金属元素に関して、リン酸カルシウム焼結体粒子全体の重量に対するアルカリ金属元素の重量が10ppm以下(好適には、1ppm以下)であることを示す。なお、分析方法としては従来公知の方法を適用可能であり、例えば、ICP−MSにより分析を行えばよい。
【0146】
更には、前述のように、本形態によれば、カルシウム以外のアルカリ土類金属元素や、遷移金属元素を含有しないリン酸カルシウム焼結体粒子群とすることも可能である。
【0147】
このように、カルシウム以外のアルカリ土類金属元素や、遷移金属元素を実質的に含有しないことで、結晶性がより高められ、溶解し難く、更には細胞接着性に優れるリン酸カルシウム焼結体粒子とすることが可能となる。また、遷移金属元素を実質的に含まないことで、生体への安全性をより高めることが可能となる。
【0148】
なお、「カルシウム以外のアルカリ土類金属元素を含有しない」(「遷移金属元素を含有しない」)とは、上記同様に、各アルカリ土類金属元素(各遷移金属元素)に関して、リン酸カルシウム焼結体粒子全体の重量に対するカルシウム以外のアルカリ土類金属元素(遷移金属元素)の重量が10ppm以下(好適には、1ppm以下)であることを示す。なお、分析方法としては従来公知の方法を適用可能であり、例えば、ICP−MSにより分析を行えばよい。
【0149】
ここで、「アルカリ金属元素を含有しない」、「カルシウム以外のアルカリ土類金属元素を含有しない」及び/又は「遷移金属元素を含有しない」リン酸カルシウム焼結体粒子群を製造したい場合、原料(特に融着防止剤)の選択として、当該元素を含まないものを用いることが考えられる。
【0150】
ここで、本製造法によって得られたリン酸カルシウム粒子群は、水分吸着性として、更に以下の(A)の性質を有する。
(A)十分に乾燥させた後に(例えば、常圧下、温度60℃、湿度45〜85%の条件で18時間以上乾燥させた後に)、常圧下、温度25℃、湿度50%の条件にて3日間以上放置した後、熱重量示差熱分析装置(TG−DTA)(セイコーインスツルメント社製、EXSTAR6000)にて、窒素気流下、10℃/min.の条件で測定し、25〜200℃の温度帯において減少した重量が2%以下となる。
【0151】
リン酸カルシウム粒子群がこのような性質を満たすことにより、細胞接着性をより向上可能であることが知見された。
【0152】
また、本形態における焼成リン酸カルシウム粒子群は、X線回折法(XRD)により測定された、d=2.814での半値幅が、0.2〜0.8を満たすことが好適であり、0.3〜0.7を満たすことがより好適である。焼成リン酸カルシウム粒子群の半値幅をこの範囲とすることにより、溶解性をより低減させ、且つ、細胞接着性をより向上させることが可能となる。
【0153】
なお、半値幅の調整においては、焼成温度及び焼成時間を適宜調整すればよく、上記半値幅としたい場合には、例えば、焼成温度(最高到達温度)を600〜800℃とし、当該温度範囲の保持時間を0〜1h等とすればよい。
【0154】
ここで、本製造法によって得られたリン酸カルシウムは、更にB型炭酸アパタイトを含む。リン酸カルシウムがこのような性質を満たすことにより、細胞接着性をより向上可能であることが知見された。
【0155】
なお、上述したFT−IRスペクトルによる分析において、1350cm−1〜1500cm−1に吸収のピークが2つ観察された場合に、「炭酸アパタイトを含む」且つ「B型炭酸アパタイトを含む」と考えられる{例えば、後述する図2−4等において、1350cm−1〜1500cm−1の範囲に見られる二つの吸収のピークの内、右側(1350cm−1側)のピークがB型炭酸アパタイトの吸収のピークに相当すると考えられる}。
【0156】
<<<<用法用量>>>>
本最良形態に係る歯面修復材は、例えば、医薬部外品や化粧品である練歯磨剤、液状歯磨剤、医療機器である歯面研磨剤等として用いられる。本最良形態に係る歯面修復材は、歯表面の凹部の充填のみならず、エナメル質の表面に対して平滑に吸着するため、光沢性を高めるなど歯の審美のための用途として使用される。更に、本最良形態に係る歯面修復材は、象牙質の表面にも平滑に吸着するため、当該吸着層により象牙質がコーティングされた状態となるため、知覚過敏予防治療剤としても使用されうる。ここで、「知覚過敏症」とは、冷たいものや熱いもの等を食べたときに、歯に、一過性の鋭い痛みを感じる症状を意味する。当該知覚過敏症の原因としては、例えば、歯周炎等により歯肉が痩せること、歯根部の象牙質が露出すること、歯の形成後によるエナメル質の欠損が発生すること等が挙げられる。特に、歯周病等で生じた歯肉の退縮及びエナメル質の磨耗、くさび状欠損により象牙質の象牙細管が開口することにより、冷たい水やブラッシング等の刺激で鋭い痛みを感じる症状を象牙質知覚過敏症という。通常、歯は、エナメル質と象牙質とセメント質とで構成されており、表面に露出しているのがエナメル質であり、象牙質は、上記エナメル質に覆われている。尚、本最良形態に係る歯面修復材は、一日1回以上、一回リン酸カルシウム微粒子を1mg以上、例えば、歯磨剤として歯の表面に適用して使用することにより効能を発揮する。
【実施例】
【0157】
<<<第1の実施例>>>
<<製造例>>
(実施例1−1:球状ハイドロキシアパタイト焼成体粒子群)
脱イオン水が入った反応容器内に、撹拌しながら、硝酸カルシウム四水和物、リン酸水素二アンモニウム水溶液及びアンモニア水を添加し{カルシウム:リン酸(モル比)=5:3}、ハイドロキシアパタイトの一次粒子を得た。その後、反応容器内の上澄みを廃水容器に移した後、脱イオン水を加え、攪拌器で撹拌し、上澄みを廃棄容器に移す、という作業を2回繰り返した。その後、当該沈殿物の入った反応容器ごと、−10℃〜−25℃にて一夜冷凍した。その後、室温で解凍し、解凍後の沈殿をろ取した。その後、焼成皿に約400gの沈殿を入れ、焼成炉に入れ、1時間強かけて600℃までにし、600℃1時間保った後、1時間以上かけて冷却することで焼成を実施した。その後、焼成体へ脱イオン水を加え、30分間以上超音波照射した。そして、ポッドミルへ移し、粉砕球を入れて1時間粉砕した。粉砕終了後、手付きビーカーへ移し、目開き150μm篩を用い、未粉砕焼成体を除去した。尚、この後、脱イオン水洗浄を6回繰り返した。その後、60〜80℃で乾燥し、アルカリ金属元素を含有しない、実施例1−1に係るハイドロキシアパタイト焼成体を得た。
【0158】
(実施例1−2:ロッド状ハイドロキシアパタイト焼成体粒子群)
脱イオン水が入った反応容器内に、硝酸カルシウム四水和物水溶液を撹拌しながら、リン酸水素二アンモニウム水溶液及びアンモニア水を硝酸カルシウム四水和物水溶液に滴下し{カルシウム:リン酸(モル比)=5:3}、ハイドロキシアパタイトの一次粒子を得た。その後、反応容器内の上澄みを廃水容器に移した後、脱イオン水を加え、攪拌器で撹拌し、上澄みを廃棄容器に移す、という作業を5回繰り返した。その後、当該沈殿物の入った反応容器ごと、−10℃〜−25℃にて一夜冷凍した。その後、室温で解凍し、解凍後の沈殿をろ取した。その後、焼成皿に約400gの沈殿を入れ、焼成炉に入れ、1時間強かけて600℃までにし、600℃1時間保った後、1時間以上かけて冷却することで焼成を実施した。その後、焼成体へ脱イオン水を加え、30分間以上超音波照射した。そして、ポッドミルへ移し、粉砕球を入れて1時間粉砕した。粉砕終了後、手付きビーカーへ移し、目開き150μm篩を用い、未粉砕焼成体を除去した。尚、この後、脱イオン水洗浄を7回繰り返した。その後、60〜80℃で乾燥し、アルカリ金属元素を含有しない、実施例1−2に係るハイドロキシアパタイト焼成体を得た。尚、当該セラミック粒子の粒子径は、短軸の平均最大直径が47nm、長軸が157nmであり、c軸方向に成長し、結晶のアスペクト比(c軸長/a軸長)が、3.3であり、先端角が斜角面を有する截頭形柱状構造のセラミック粒子であった。
【0159】
(比較例1−1)
特許第5043436号公報の実施例1に従い、比較例1−1に係るハイドロキシアパタイト焼成体を得た。
【0160】
<<X線回折試験>>
図1−1、図1−2及び図1−3は、それぞれ実施例1−1、実施例1−2及び比較例1−1に係るハイドロキシアパタイト焼成体のX線回折測定の結果である。当該図から分かるように、図1−1では炭酸カルシウムのピークが観察されなかったのに対し、図1−3では炭酸カルシウムの明確なピークが観察された。また、実施例1−2に関しても、実施例1−1と同様に、炭酸カルシウムのピークが観察されないことが確認出来る。より具体的には、図1−1では、ハイドロキシアパタイト(PDF 74-0565)に一致するパターンのみ確認出来、一方、図1−3では、ハイドロキシアパタイトには存在しないピークが29.4°に観察され炭酸カルシウム(calcite : PDF 72-1937)と一致した。尚、X線回折装置及び測定条件は下記の通りである。粉末X線回析装置{理学電機(株)製、MiniFlex}を用いて、結晶構造解析を行った。XRDで使用したX線源としてはCuKα線源{λ=1.541841Å(オングストローム)}を用い、出力は30kV/15mA、スキャンスピードは1.0°/min、サンプリング幅は0.01°、測定モードは連続の条件とした。
【0161】
なお、上記X線回折試験と同じ条件にてd=2.814での半値幅を測定したところ、実施例1−1は0.4程度であり、実施例1−2は0.5程度であった。
【0162】
<<外観観察試験>>
図1−4及び図1−5は、実施例1−1に係るハイドロキシアパタイト焼成体粒子群のSEM写真である(スケール違い)。これら写真から、実施例1−1に係るハイドロキシアパタイト焼成体粒子群は、球状のハイドロキシアパタイト焼成体粒子を含むハイドロキシアパタイト焼成体粒子群であって、単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊を単結晶一次粒子とすると、前記ハイドロキシアパタイト焼成体粒子群に含まれる単結晶一次粒子の割合が過半数を占めることが分かる。また、図1−6及び図1−7は、実施例1−2に係るハイドロキシアパタイト焼成体粒子群のSEM写真である(スケール違い)。
【0163】
<<粒径測定試験>>
実施例1−1及び比較例1−1に係るハイドロキシアパタイト焼成体(エンドトキシン未不活性化)に関し、平均粒径及び標準偏差を算出(SEMにて9点の画像を取得し、画像1点中、12個の粒子の粒径を計測、合計108個の粒子の粒径を確認し、平均値及び標準偏差を算出)した。加えて、実施例1−1及び比較例1−1に係るハイドロキシアパタイト焼成体(エンドトキシン未不活性化)を不活性化したものに関し、同じく平均粒径及び標準偏差を算出(SEMにて9点の画像を取得し、画像1点中、12個の粒子の粒径を計測、合計108個の粒子の粒径を確認し、平均値及び標準偏差を算出)した。尚、不活性化手順は、(1)あらかじめ乾熱滅菌(300℃、2時間)アンプルにHAp粉体を計り入れる、(2)、HApを入れたアンプルを開封状態のまま乾熱滅菌器にて、乾熱滅菌(300℃、2時間)、(3)室温まで冷却したアンプルを溶封(封管)、(4)封管済みアンプルを再度乾熱滅菌器にて、乾熱滅菌(300℃、2時間)、である。表1−1は、実施例1−1に係るハイドロキシアパタイト焼成体であり、表1−2は、比較例1−1に係るハイドロキシアパタイト焼成体である。
【0164】
【表1-1】
【0165】
【表1-2】
【0166】
<<熱重量示差熱分析>>
実施例1−1、実施例1−2及び比較例1−1に係るハイドロキシアパタイト焼成体粒子群の熱重量示差熱分析(TG−DTA)測定を行い、実施例では、650℃〜800℃に明確な吸熱を伴う2%以上の重量減を観察されない点を確認した。一方、比較例1−1では、650℃〜800℃に明確な吸熱を伴う2%以上の重量減が観察された。
【0167】
また、熱重量示差熱分析(TG−DTA)測定条件は下記の通りである。熱重量示差熱分析装置(TG−DTA)(セイコーインスツルメント社製、EXSTAR6000)にて、窒素気流下、10℃/min.の条件で測定し、700℃〜950℃の温度帯において減少した重量から、脱炭酸量を評価した。
【0168】
更に、水分吸着性の試験として、実施例1−1に係るハイドロキシアパタイト焼成体粒子群を、温度60℃、湿度45〜85%の条件で18時間以上乾燥させた後に、常圧下、温度25℃、湿度50%の条件にて3日間以上放置し、熱重量示差熱分析装置(TG−DTA)(セイコーインスツルメント社製、EXSTAR6000)にて、窒素気流下、10℃/min.の条件で測定し、25〜200℃の温度帯において減少した重量を測定したところ、1.43%となった。また、実施例2−1に関しても同様の試験を行ったところ、同様の水準の結果が得られた。
【0169】
<<FT−IR分析>>
実施例1−1、実施例1−2及び比較例1−1に係るハイドロキシアパタイト焼成体粒子群において、FT−IR分析を行った。詳細には、FT―IR測定において得られるスペクトルをクベルカムンク(KM)式で計算した吸光度を示したチャートにおいて、波数が860cm−1〜890cm−1の間に現れるピークを分離し、評価した。この結果、実施例1−1及び実施例1−2に係るハイドロキシアパタイト焼成体粒子群では、炭酸カルシウムに帰属される877cm−1付近のピークが観察されないことが確認された。一方、比較例1−1に係るハイドロキシアパタイト焼成体粒子群では、炭酸カルシウムに帰属される877cm−1付近のピークが観察された。
【0170】
尚、FT−IR分析装置及び測定条件は下記の通りである。臭化カリウム〔KBr〕に対して10重量%となるようハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群をとり、メノウ乳鉢にて十分粉砕した測定サンプルを、パーキンエルマー製FT−IR Spectrum100を用いて拡散反射にて450cm−1〜4000cm−1の範囲を積算回数8回で測定した。また、ピーク分離は、fityk 0.9.4というソフトを用いて、Function Type:Gaussian、Fitting Method:Levenberg-Marquardtという条件で処理することによって行った。
【0171】
X線回折試験、熱重量示差熱分析及びFT−IR分析の結果より、実施例1−1及び実施例1−2は、炭酸カルシウムを実質的に含まないものであった。
これに対して、熱重量示差熱分析の結果より、比較例1−1及び比較例1−2は、炭酸カルシウムを含むものであった。
【0172】
<<発泡確認試験>>
更に、実施例1−1及び1−2並びに比較例1−1に係るハイドロキシアパタイト焼成体について、医薬部外品原料規格2006「ヒドロキシアパタイト」に収載の純度試験(4)炭酸塩に示された手順に準じて試験実施した。具体的には、常温(20℃)にてサンプル1.0gを秤量し、水5mLを加え振り混ぜ、アスピレーターを用いて1時間減圧し脱気した。脱気後、濃塩酸(35.0質量%)2mLを加え、発泡の有無を確認した。その結果、実施例により得られたHApでは、発泡は確認できなかった(気体発生量が0.25ml未満)。他方、比較例により得られたHApでは、生じた泡で上澄みが白濁するほど発泡した(気体発生量が0.25ml以上)。
【0173】
<<細胞接着試験>>
<供試材の製造>
(洗浄処理)
円形のポリエチレンテレフタラート(PET)製シート(直径9mm、厚さ0.1mm)に対し、アルコール処理(アルコール(エタノール、2―プロパノールなど)中5分間超音波照射)を実施した。
【0174】
(リンカー導入工程)
洗浄処理を施したPET製シート両面に対してコロナ放電処理(100V、片面15秒)を施した。コロナ放電処理後のPET製シートとアクリル酸(和光純薬工業製)10mlを20ml試験管に入れ、試験管内を真空ポンプにて減圧し、脱気操作を行った。減圧状態のまま試験管を溶封し、温度60℃の水浴中で60分間、グラフト重合を行なった。当該処理後、基材表面上に付着しているアクリル酸ホモポリマーを除去するため、水中、室温で60分間、撹拌した後、基材表面を水洗し、続いてエタノールで洗浄した。
【0175】
(焼結ハイドロキシアパタイト微粒子固定化処理)
上記処理後、基材を1%の焼結ハイドロキシアパタイト微粒子(実施例1−1、実施例1−2又は比較例1−1に係る焼結ハイドロキシアパタイト微粒子)の分散液中(分散媒:エタノール)、20℃で30分間静置した。その後、5分間超音波照射し、基材を取り出し、20℃常圧にて乾燥し、供試材を得た。
【0176】
<細胞接着・細胞形態評価>
作製した供試材を用いて、細胞接着・細胞形態評価試験を実施した。尚、試験に先立ち、供試材をエタノール洗浄し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)ならびに培地(MEM α(無血清))で洗浄した後(3回)、培地に浸して、使用までインキュベート(37℃,5%CO)した。そして、以下の手順で細胞培養を実施した。まず、48穴プレートに培地(200μL/穴)及び供試材(試験用シート)を入れた。その後、骨芽細胞様細胞(MC3T3−E1(subclone14))の懸濁液を入れ(約1×10細胞/200μL/穴)、3時間培養した。
【0177】
(細胞観察)
図1−8〜1−10は、各々、実施例1−1、実施例1−2及び比較例1−1に係るハイドロキシアパタイト焼結体粒子群を用いて製造された供試材のSEM写真である。当該写真に基づき、細胞の集合状態、細胞形態、細胞密度を判断した。その結果を表1−3に示す。なお、細胞密度に関しては、「+」の数が多いほど、細胞密度が高いことを示す。また、供試材それぞれの平均被覆率は、SEM写真から算出している。
【0178】
【表1-3】
【0179】
(染色観察)
続いて、以下の手順で染色観察を実施した。まず、試験用シートをPBSで洗浄して非接着細胞を除去して、固定処理(4%PFA)及び界面活性剤処理(0.5%Triton X−100/PBS)を行い、次いで、AlexaFluor(商標)488標識Acti−stainを添加した後、封入剤(核染色色素DAPI入り)で封入した。蛍光顕微鏡(Nikon、ECLIPSE TiーS)で、488nmのレーザー線を照射し、アクチン線維の染色により細胞形態を確認した。405nmのレーザー線を照射し、細胞核の染色を確認した。その結果を図1−11及び図1−12に示す。図1−11及び図1−12は、実施例1−1及び実施例1−2に係るハイドロキシアパタイト焼結体粒子群を用いて製造された供試材において、アクチン由来の蛍光画像と細胞核由来の蛍光画像とを合成した画像である。当該図から分かるように、実施例1−1及び実施例1−2に係るハイドロキシアパタイト焼結体粒子群を用いた場合、アクチン線維が十分に発達しているため優れた細胞接着性を示すことが確認でき、また、殆どの細胞は大きく伸長した細胞形態を示すことも確認できた。
【0180】
以上の結果から、本実施例に係るリン酸カルシウム微粒子は、細胞の形態が多角形で、かつ、細胞間接着を顕著に促進していることが確認出来た。これより本実施例に係るリン酸カルシウム微粒子は、細胞の形態的分化を促進することが明らかとなった。
【0181】
<<結晶性>>
粉末X線回析装置{理学電機(株)製、MiniFlex600}を用いて、結晶構造解析を行った。XRDで使用したX線源としてはCuKα線源{λ=1.541841Å(オングストローム)}を用い、出力は30kV/15mA、スキャンスピードは10.0°/min、サンプリング幅は0.02°、測定モードは連続の条件とした。なお、結晶子の平均サイズτ(nm)は次に示すシェラーの式で与えられる。
(シェラーの式) τ=Kλ/βcosθ
なお、Kは形状因子で0.9とした。λはX線波長で、βはトップピークの半値幅、θはトップピークのブラッグ角を指す。結晶子の平均サイズτ(nm)は、X線回折の測定値より上式を用いて算出した。
【0182】
実施例1−1に係るリン酸カルシウム微粒子の結晶子の平均サイズτは11.6nmであり、比較例1−1に係るリン酸カルシウム微粒子の結晶子の平均サイズτは12.1nmであった。従って、本実施例に係るリン酸カルシウム微粒子は、より結晶性が高いものと理解される。
【0183】
<<<第2の実施例>>>
<<製造例>>
(実施例2−1:炭酸アパタイトを含む、球状ハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群)
(一次粒子生成工程)
脱イオン水が入った反応容器内に、撹拌しながら、硝酸カルシウム四水和物、リン酸水素二アンモニウム水溶液及びアンモニア水を添加し{カルシウム:リン酸(モル比)=5:3}、24時間、室温で撹拌しながら反応させた。ハイドロキシアパタイト(HAp)の一次粒子を得た。
(混合工程)
1.0gのポリアクリル酸ナトリウム(ALDRICH社製、重量平均分子量15,000g/mol)を含むpH12.0の水溶液100mlに、1.0gのハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群を分散させることで、同粒子表面にポリアクリル酸ナトリウムを吸着させた。この水溶液のpHはEUTECH製 CyberScan pH1100EUTECH製 CyberScan pH1100を用いて測定した。
次に、上記で調製した分散液に、0.12mol/lの硝酸カルシウム〔Ca(NO〕水溶液100mlを添加することで、同一次粒子表面にポリアクリル酸カルシウムを析出させた。かかるポリアクリル酸カルシウムは、融着防止剤である。その結果として生じた沈殿物を回収し、減圧下(約0.1Pa)80℃にて乾燥させることで、混合粒子を取得した。
(焼結工程)
上記混合粒子をルツボに入れ、200℃/時間の昇温速度にて焼結温度600℃まで昇温し1時間保持して焼結を行なった。この際、ポリアクリル酸カルシウムは熱分解し、酸化カルシウム〔CaO〕となり、一部は炭酸カルシウム〔CaCO〕となった。
(酸洗い工程)
融着防止剤ならびに炭酸カルシウムの水への溶解性を上げるために、50mmol/l硝酸アンモニウム〔NHNO〕水溶液を調製した。次に、上記で調製した水溶液500mlに、上記工程にて得られた焼結体を懸濁し、超音波を5分照射、遠心分離により固液分離し、得られた沈殿物を再度硝酸アンモニウム水溶液に懸濁させ、超音波照射、遠心分離、以上の工程を上澄みのpHが7.5以下になるまで繰り返した。さらに蒸留水に懸濁し、同様に遠心分離により分離洗浄を行なうことによって、融着防止剤および硝酸アンモニウムを除去し、高結晶性ハイドロキシアパタイト(HAp)微粒子を回収した。
【0184】
(実施例2−2:炭酸アパタイトを含む、ロッド状ハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群)
(一次粒子生成工程)
脱イオン水が入った反応容器内に、撹拌しながら、硝酸カルシウム四水和物、リン酸水素二アンモニウム水溶液及びアンモニア水を添加し{カルシウム:リン酸(モル比)=5:3}、24時間、80℃で撹拌しながら反応させた。ハイドロキシアパタイト(HAp)の一次粒子を得た。
(混合工程)・(焼結工程)・(酸洗い工程)
実施例2−1と同様に行った。
【0185】
(比較例2−1:特許第5043436号公報に基づいて、融着防止剤をポリアクリル酸カルシウムとして、製造した、ハイドロキシアパタイト焼(HAp)成体粒子群)
(一次粒子生成工程)
脱イオン水が入った反応容器内に、撹拌しながら、硝酸カルシウム四水和物、リン酸水素二アンモニウム水溶液及びアンモニア水を添加し{カルシウム:リン酸(モル比)=5:3}、24時間、室温で撹拌しながら反応させた。ハイドロキシアパタイト(HAp)の一次粒子を得た。
(混合工程)
1.0gのポリアクリル酸ナトリウム(ALDRICH社製、重量平均分子量15,000g/mol)を含むpH12.0の水溶液100mlに、1.0gのハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群を分散させることで、同粒子表面にポリアクリル酸ナトリウムを吸着させた。この水溶液のpHはEUTECH製 CyberScan pH1100EUTECH製 CyberScan pH1100を用いて測定した。
次に、上記で調製した分散液に、0.12mol/lの硝酸カルシウム〔Ca(NO〕水溶液100mlを添加することで、同一次粒子表面にポリアクリル酸カルシウムを析出させた。かかるポリアクリル酸カルシウムは、融着防止剤である。その結果として生じた沈殿物を回収し、減圧下(約0.1Pa)80℃にて乾燥させることで、混合粒子を取得した。
(焼結工程)
上記混合粒子をルツボに入れ、200℃/時間の昇温速度にて焼結温度600℃まで昇温し1時間焼結を行なった。この際、ポリアクリル酸カルシウムは熱分解し、酸化カルシウム〔CaO〕となり、一部は炭酸カルシウム〔CaCO〕となった。
(除去工程)
融着防止剤の水への溶解性を上げるために、50mmol/l硝酸アンモニウム〔NHNO〕水溶液を調製した。次に、上記で調製した水溶液500mlに、上記工程にて得られた焼結体を懸濁し、遠心分離により分離洗浄し、さらに蒸留水に懸濁し、同様に遠心分離により分離洗浄を行なうことによって、融着防止剤および硝酸アンモニウムを除去し、高結晶性ハイドロキシアパタイト(HAp)微粒子を回収した。
【0186】
(比較例2−2:特許第5043436号公報に基づいて、融着防止剤を硝酸カルシウムとして、製造した、ハイドロキシアパタイト焼成体粒子群)
(一次粒子生成工程)
比較例2−1と同様である。
(混合工程)
0.12mol/lの硝酸カルシウム水溶液100mlに、1.0gのハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群を懸濁させた。その結果として生じた沈殿物を回収し、減圧下(約0.1Pa)80℃にて乾燥させることで、混合粒子を取得した。
(焼結工程)・(除去工程)
比較例2−1と同様である。
【0187】
(比較例2−3:特許第5043436号公報に基づいて、融着防止剤を硝酸ナトリウムとして、製造した、ハイドロキシアパタイト焼成体粒子群)
(一次粒子生成工程)
比較例2−1と同様である。
(混合工程)
0.12mol/lの硝酸ナトリウム水溶液100mlに、1.0gのハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群を懸濁させた。その結果として生じた沈殿物を回収し、減圧下(約0.1Pa)80℃にて乾燥させることで、混合粒子を取得した。
(焼結工程)・(除去工程)
比較例2−1と同様である。
【0188】
なお、実施例2−1〜2−2において、アルカリ金属元素などの重量は、10ppm以下であった。
【0189】
<<X線回折試験>>
実施例2−1、実施例2−2及び比較例2−1〜比較例2−3に係るハイドロキシアパタイト焼成体のX線回折測定を行った。その結果、実施例に係るハイドロキシアパタイト焼成体では炭酸カルシウムのピークが観察されなかったのに対し、比較例に係るハイドロキシアパタイト焼成体では炭酸カルシウムのピークが観察された。より具体的には、実施例に係るハイドロキシアパタイト焼成体では、ハイドロキシアパタイト(PDF 74-0565)に一致するパターンのみ確認出来、一方、比較例に係るハイドロキシアパタイト焼成体では、ハイドロキシアパタイトには存在しないピークが29.4°に観察され炭酸カルシウム(calcite : PDF 72-1937)と一致した。尚、X線回折装置及び測定条件は下記の通りである。粉末X線回析装置{理学電機(株)製、MiniFlex}を用いて、結晶構造解析を行った。XRDで使用したX線源としてはCuKα線源{λ=1.541841Å(オングストローム)}を用い、出力は30kV/15mA、スキャンスピードは1.0°/min、サンプリング幅は0.01°、測定モードは連続の条件とした。
【0190】
なお、上記X線回折試験と同じ条件にてd=2.814での半値幅を測定したところ、実施例2−1は0.5程度であり、実施例2−2も0.5程度であった。
【0191】
<<熱重量示差熱分析>>
図2−1〜2−2は、実施例2−1及び比較例2−1に係るハイドロキシアパタイト焼成体粒子群の熱重量示差熱分析(TG−DTA)測定の結果である。当該図から分かるように、実施例2−1(図2−1)では、650℃〜800℃に明確な吸熱を伴う2%以上の重量減を観察されなかった。一方、比較例2−1(図2−2)では、650℃〜800℃に明確な吸熱を伴う2%以上の重量減を観察された。
【0192】
同様にして、実施例2−2は、650℃〜800℃に明確な吸熱を伴う2%以上の重量減を観察されなかったのに対して、比較例2−2〜2−3は、650℃〜800℃に明確な吸熱を伴う2%以上の重量減を観察された。
【0193】
更に、水分吸着性の試験として、実施例2−1に係るハイドロキシアパタイト焼成体粒子群を、温度60℃、湿度45〜85%の条件で18時間以上乾燥させた後に、常圧下、温度25℃、湿度50%の条件にて3日間以上放置し、熱重量示差熱分析装置(TG−DTA)(セイコーインスツルメント社製、EXSTAR6000)にて、窒素気流下、10℃/min.の条件で測定し、25〜200℃の温度帯において減少した重量を測定したところ、1.34%となった。また、実施例2−1に関しても同様の試験を行ったところ、同様の水準の結果が得られた。
【0194】
<<FT−IR分析>>
(炭酸カルシウムについて)
本発明者らは、実施例2−1のハイドロキシアパタイト(HAp)粒子を製造するに際して、酸洗い工程によって、どのように炭酸カルシウムの量が変化するかを調べた。それを示したのが図2−3である。図2−3の左チャートは、酸洗い工程が行われなかったハイドロキシアパタイト粒子であり、図2−3の右チャートは、酸洗い工程が行われたハイドロキシアパタイト(HAp)粒子である。詳細には、FT―IR測定において得られるスペクトルをクベルカムンク(KM)式で計算した吸光度を示したチャートにおいて、波数が860cm−1〜890cm−1の間に現れるピークを分離し、評価した。この結果、酸洗い工程が行われたハイドロキシアパタイト粒子(図2−3の右図)では、炭酸カルシウムに帰属される877cm−1付近のピークが観察されなくなることが確認された。一方、酸洗い工程が行われなかったハイドロキシアパタイト粒子(図2−3の左図)では、炭酸カルシウムに帰属される877cm−1付近のピークが観察された。
【0195】
(炭酸アパタイトについて)
図2−4〜2−5は、実施例2−1及び実施例2−2に係るハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群のFT−IRスペクトルである。当該図から分かるように、実施例2−1及び実施例2−2では、1350cm−1〜1500cm−1に吸収が観察された。したがって、実施例2−1及び実施例2−2は、炭酸アパタイトを含むものであることが確認された。
【0196】
<<X線回折試験、熱重量示差熱分析及びFT−IR分析の結果に基づく考察>>
X線回折試験、熱重量示差熱分析及びFT−IR分析の結果より、実施例2−1及び実施例2−2は、炭酸カルシウムを実質的に含まず、且つ、炭酸アパタイトを含むものであった。
これに対して、熱重量示差熱分析の結果より、比較例2−1〜2−3は、炭酸カルシウムを含むものであった。
ハイドロキシアパタイト粒子を製造するに際して、酸洗い工程などによって、炭酸カルシウムが除かれたと考えられる。
また、実施例2−1及び実施例2−2は、B型炭酸アパタイトを含有することが確認される。
【0197】
尚、FT−IR分析装置及び測定条件は下記の通りである。臭化カリウム〔KBr〕に対して10重量%となるようハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群をとり、メノウ乳鉢にて十分粉砕した測定サンプルを、パーキンエルマー製FT−IR Spectrum100を用いて拡散反射にて450cm−1〜4000cm−1の範囲を積算回数8回で測定した。また、ピーク分離は、fityk 0.9.4というソフトを用いて、Function Type:Gaussian、Fitting Method:Levenberg-Marquardtという条件で処理することによって行った。
【0198】
また、熱重量示差熱分析(TG−DTA)測定条件は下記の通りである。熱重量示差熱分析装置(TG−DTA)(セイコーインスツルメント社製、EXSTAR6000)にて、窒素気流下、10℃/min.の条件で測定し、700℃〜950℃の温度帯において減少した重量から、脱炭酸量を評価した。
【0199】
なお、特許第5043436号の製法に従う場合、融着防止剤として、側鎖にカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基又はアミノ基のいずれかを有する高分子化合物が使用可能であることが記載されており、具体的な化合物として、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリグルタミン酸、エチレンスルホン酸、ポリメタクリル酸アルキルスルホン酸エステル、ポリアクリロイルアミノメチルホスホン酸、ポリペプチドが挙げられている。比較例2−1を参照すると、このような化合物を用いた場合に、炭酸カルシウムが生成されてしまうことが確認出来る。これを踏まえ、本発明者らは、炭酸カルシウム生成の原因が、融着防止剤として用いた高分子化合物の分解物である炭酸であると推定した。
【0200】
また、特許第5043436号の製法に従う場合、融着防止剤として「炭酸源を含有する成分」を用いない場合でも、焼成したハイドロキシアパタイト粒子の表面には、炭酸カルシウム皮膜が形成される。本発明者らは、その理由について、以下のように考察した。
【0201】
特許第5043436号の記載によれば、焼成は、大気雰囲気下で行われるものと考えられる。ここで、融着防止剤として、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム)やアルカリ土類金属(カルシウム)を含有する成分を用いた場合、焼成過程にて、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が形成される。ここで、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物は塩基性であるため、大気中の二酸化炭素と中和反応する。更に、融着防止剤として、アルカリ金属塩を用いた場合、粒子の表面付近にて、ハイドロキシアパタイトの結晶を構成するカルシウムとアルカリ金属とがイオン交換する。その結果、ハイドロキシアパタイトの表面には、大気中の二酸化炭素由来の炭酸根と、融着防止剤由来のカルシウム又はイオン交換により表面に生じたカルシウムと、の反応により炭酸カルシウムが発生する。
【0202】
<<外観観察試験>>
図2−6及び図2−7は、実施例2−1に係るハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群のSEM写真である(スケール違い)。これら写真から、実施例2−1に係るハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群は、球状のハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子を含むハイドロキシアパタイト焼成体粒子群であることが分かる。また、図2−8及び図2−9は、実施例2−2に係るハイドロキシアパタイト焼成体粒子群のSEM写真である(スケール違い)。これら写真から、実施例2−1に係るハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群は、ロッド状のハイドロキシアパタイト焼成体粒子を含むハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群であることが分かる。
【0203】
<<組成分析>>
実施例2−1および2−2に係るセラミック粒子を組成分析した結果、
Ca(PO6−y(CO(OH)
(式中、xは8以上12以下の数であり、yは0より大きく、3以下の数である)で表されるものの範囲内にあることが判明した。
なお、測定方法は上記で述べたとおりである。
【0204】
<<分散性試験>>
焼結ハイドロキシアパタイト(HAp)(実施例2−1及び比較例2−1に係る焼結ハイドロキシアパタイト(HAp))60mgとエタノール3mlとを混合し、30分間超音波照射して焼結ハイドロキシアパタイト分散液を調製した。レーザー散乱粒度分布計(島津製作所製、SALD−7500nano)の水循環フローセル中に水を200ml加え、レーザー散乱光強度が装置の測定領域となるよう焼結ハイドロキシアパタイト分散液を滴下した。循環槽に超音波を5分照射し、粒度分布を測定した。得られた粒度分布より、体積換算で500nm以下の存在率(%)を調べることによって、分散性を評価した。500nm以下の存在率(%)が高いほど、高い分散性を示す。以下の表2−1に結果を示す。
【0205】
【表2-1】
【0206】
上記の表より、実施例2−1が、比較例2−1と比較して、顕著に高い分散性を示すことは、明らかである。
【0207】
なお、実施例2−1の粒子径の変動係数は17%であった。また、実施例2−2の粒子径は、短軸の最大直径が51nm、長軸が170nmであり、c軸方向に成長し、結晶のアスペクト比(c軸長/a軸長)が3.33であった。
【0208】
<<細胞接着試験>>
<供試材の製造>
(洗浄処理)
円形のポリエチレンテレフタラート(PET)製シート(直径9mm、厚さ0.1mm)に対し、アルコール処理(アルコール(エタノール、2―プロパノールなど中5分間超音波照射)を実施した。
【0209】
(リンカー導入工程)
洗浄処理を施したPET製シート両面に対してコロナ放電処理(100V、片面15秒)を施した。コロナ放電処理後のPET製シートとアクリル酸(和光純薬工業製)10mlを20ml試験管に入れ、試験管内を真空ポンプにて減圧し、脱気操作を行った。減圧状態のまま試験管を溶封し、温度60℃の水浴中で60分間、グラフト重合を行なった。当該処理後、基材表面上に付着しているアクリル酸ホモポリマーを除去するため、水中、室温で60分間、撹拌した後、基材表面を水続いてエタノールで洗浄した。
【0210】
(焼結ハイドロキシアパタイト(HAp)微粒子固定化処理)
上記処理後、基材を1%の焼結ハイドロキシアパタイト(HAp)微粒子(実施例2−1、実施例2−2、及び比較例2−1に係る焼結ハイドロキシアパタイト(HAp)微粒子)の分散液中(分散媒:エタノール)、20℃で30分間静置した。その後、5分間超音波照射し、基材を取り出し、20℃常圧にて乾燥し、供試材を得た。
【0211】
<細胞接着・細胞形態評価>
作製した供試材を用いて、細胞接着・細胞形態評価試験を実施した。尚、試験に先立ち、供試材をエタノール洗浄し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)ならびに培地(MEM α(無血清))で洗浄した後(3回)、培地に浸して、使用までインキュベート(37℃,5%CO)した。そして、以下の手順で細胞培養を実施した。まず、48穴プレートに培地(200μL/穴)及び供試材(試験用シート)を入れた。その後、骨芽細胞様細胞(MC3T3−E1(subclone14))の懸濁液を入れ(約1×10細胞/200μL/穴)、3時間培養した。
【0212】
(細胞観察)
図2−10〜2−12は、各々、実施例2−1、実施例2−2、及び比較例2−1に係るハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群を用いて製造された供試材のSEM写真である。当該写真に基づき、細胞の集合状態、細胞形態、細胞密度を判断した。その結果を表2に示す。なお、細胞密度に関しては、「+」の数が多いほど、細胞密度が高いことを示す。また、供試材それぞれの平均被覆率は、SEM写真から算出している。
【0213】
【表2-2】
【0214】
図2−10〜2−12および表2−2から分かるように、実施例2−1及び実施例2−2に係るハイドロキシアパタイト焼結体粒子群を用いた場合、優れた細胞接着性を示すことが確認でき、また、殆どの細胞は大きく伸長した細胞形態を示すことも確認できた。一方、比較例2−1に係るハイドロキシアパタイト焼結体粒子群を用いた場合、細胞接着性が劣ることを確認出来た。

図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図1-7】
図1-8】
図1-9】
図1-10】
図1-11】
図1-12】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図2-7】
図2-8】
図2-9】
図2-10】
図2-11】
図2-12】