(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
船舶の主機関からの排ガスにより駆動され、前記主機関に加圧空気を供給する過給機と、前記過給機と前記主機関との間から前記加圧空気の一部をバイパスして取り出す取出手段と、取り出した前記加圧空気を、船体の喫水下に設けた空気供給口に供給する空気供給経路と、前記過給機の回転を加勢するモータ手段と、前記取出手段による前記加圧空気の取出量を設定する取出量設定手段と、前記主機関の負荷と前記船舶の喫水を考慮し、前記取出量設定手段による前記取出量の設定に応じて前記モータ手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする空気潤滑式船舶の空気供給制御システム。
前記制御手段では、前記主機関の前記負荷により定まる前記過給機の掃気圧と、前記船舶の前記喫水により定まる喫水圧を考慮して前記モータ手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の空気潤滑式船舶の空気供給制御システム。
前記制御手段では、前記取出量が前記過給機の過給機能力と、前記掃気圧又は前記喫水圧から定まる所定量を越えた場合に前記モータ手段を運転することを特徴とする請求項2に記載の空気潤滑式船舶の空気供給制御システム。
前記制御手段では、前記過給機から前記主機関までの間の経路に設けた空気冷却機の下流側の前記掃気圧を所定圧に保つように前記モータ手段を制御することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の空気潤滑式船舶の空気供給制御システム。
前記空気供給経路に、取り出した前記加圧空気を更に加圧するアシストブロワを備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の空気潤滑式船舶の空気供給制御システム。
前記制御手段では、前記モータ手段を駆動して前記過給機の回転を加勢した時に、取り出した前記加圧空気の圧力が十分でない場合に、前記アシストブロワを駆動することで、取り出した前記加圧空気を更に加圧することを特徴とする請求項6に記載の空気潤滑式船舶の空気供給制御システム。
前記制御手段では、前記船舶の喫水に基づいて前記アシストブロワを駆動し、前記主機関の前記負荷に対応して必要な前記加圧空気の前記圧力が十分でない場合に、前記モータ手段を運転することを特徴とする請求項6に記載の空気潤滑式船舶の空気供給制御システム。
前記過給機が可変ノズルを有し、前記制御手段では、前記モータ手段を駆動する前に、前記可変ノズルを制御することで、前記加圧空気を更に加圧することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の空気潤滑式船舶の空気供給制御システム。
複数個設けた前記空気供給口への取り出した前記加圧空気の供給量を制御する複数の供給量制御弁と、前記船舶の前記船体のローリングを検出するローリング検出手段を備え、前記制御手段では、前記ローリング検出手段の検出結果に基づいて複数の前記供給量制御弁を制御して、喫水圧が低い方の前記空気供給口への取り出した前記加圧空気の供給量を減少させることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の空気潤滑式船舶の空気供給制御システム。
複数個設けた前記空気供給口への取り出した前記加圧空気の供給量を制御する複数の供給量制御弁と、前記船舶の前記船体のヒールを検出するヒール検出手段を備え、前記制御手段では、前記ヒール検出手段の検出結果に基づいて複数の前記供給量制御弁を制御して、喫水圧が低い方の前記空気供給口への取り出した前記加圧空気の供給量を減少させることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の空気潤滑式船舶の空気供給制御システム。
複数個設けた前記空気供給口への取り出した前記加圧空気の供給量を制御する複数の供給量制御弁と、前記船舶の前記船体のピッチングを検出するピッチング検出手段を備え、前記制御手段では、前記ピッチング検出手段の検出結果に基づいて複数の前記供給量制御弁を制御して、喫水圧の変動に応じて前記空気供給口への取り出した前記加圧空気の供給量を増減させることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の空気潤滑式船舶の空気供給制御システム。
前記空気供給経路に空気溜を設け、取り出した前記加圧空気の前記空気供給口への供給を安定化したことを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の空気潤滑式船舶の空気供給制御システム。
前記制御手段では、前記加圧空気の取り出しの開始時に前記空気溜より下流側に設けた経路開閉弁を閉成して、前記取出手段で前記加圧空気を取り出して前記空気溜に溜め、その後に前記経路開閉弁を開成したことを特徴とする請求項16に記載の空気潤滑式船舶の空気供給制御システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動ブロワで空気を送る方法では、高性能の電動ブロワ(ターボ式)が必要であることに加え、エアクーラも必要である。
また、掃気バイパスによる方法では、船舶の減速運転時には主機関の負荷が低く、排ガスエネルギーが低くいために過給機から十分に空気を取り出せない場合がある。近年では、減速運転を採用することが多いため、過給機から十分に空気を取り出せない場合が多くなる。
特許文献1では、主機関の負荷が低い場合には過給機から十分に空気を取り出せない。
特許文献2のように電動機付ターボチャージャは多く提案され、また特許文献3のように可変ノズルを備えた過給機も既に提案されているが、掃気等の加圧空気の取出量の設定に応じて過給機を加勢するものはない。
また、特許文献4は、エンジンの負荷と船舶の喫水を考慮し、掃気等の加圧空気の取出量の設定に応じて過給機を加勢するものではない。
【0006】
そこで、本発明は、主機関の低負荷運転時においても、空気潤滑に必要な加圧空気を過給機から効率よく取り出すことができ、また、船舶の喫水圧や主機関の負荷に変動が生じても、主機関の運転効率を低下させずに効率よく空気潤滑を行うことができる空気潤滑式船舶の空気供給制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載に対応した空気潤滑式船舶の空気供給制御システムにおいては、船舶の主機関からの排ガスにより駆動され、主機関に加圧空気を供給する過給機と、過給機と主機関との間から加圧空気の一部をバイパスして取り出す取出手段と、取り出した加圧空気を、
船体の喫水下に設けた空気供給口に供給する空気供給経路と、過給機の回転を加勢するモータ手段と、取出手段による加圧空気の取出量を設定する取出量設定手段と、主機関の負荷と船舶の喫水を考慮し、取出量設定手段による取出量の設定に応じてモータ手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。請求項1に記載の本発明によれば、加圧空気の取出量の設定に応じてモータ手段によって過給機の回転を加勢することで、主機関の低負荷運転時においても、空気潤滑に必要な加圧空気を過給機から効率よく取り出すことができる。また、主機関の負荷と船舶の喫水を考慮することによって、船舶の喫水や主機関の負荷に変動が生じても、主機関の運転効率を低下させずに効率よく空気潤滑を行うことができる。
【0008】
請求項2記載の本発明は、制御手段では、主機関の負荷により定まる過給機の掃気圧と、船舶の喫水により定まる喫水圧を考慮してモータ手段を制御することを特徴とする。請求項2に記載の本発明によれば、掃気圧により主機関の負荷を考慮し、また喫水圧により船舶の喫水を考慮して、加圧空気の取出量の設定に応じてモータ手段によって過給機の回転を加勢することができる。
【0009】
請求項3記載の本発明は、制御手段では、取出量が過給機の過給機能力と、掃気圧又は喫水圧から定まる所定量を越えた場合にモータ手段を運転することを特徴とする。請求項3に記載の本発明によれば、加圧空気の取出量が、過給機の過給機能力と掃気圧又は喫水圧から定まる所定量を越えて、例えば掃気圧が低下した場合に、モータ手段によって過給機を加勢することで主機関の運転に支障をきたすことがない。また、船舶の積荷量の変動、船速の変化や船体の動揺等のダイナミック変動に対しても空気潤滑を効率よく行うことができる。
【0010】
請求項4記載の本発明は、所定量を掃気圧と喫水圧のいずれか高い方と、過給機能力より定めたことを特徴とする。請求項3に記載の本発明によれば、掃気圧と喫水圧のいずれか高い方を基準としてモータ手段を運転することで、より確実に、主機関の運転効率を低下させずに空気潤滑を行うことができる。
【0011】
請求項5記載の本発明は、制御手段では、過給機から主機関までの間の経路に設けた空気冷却機の下流側の掃気圧を所定圧に保つようにモータ手段を制御することを特徴とする。請求項5に記載の本発明によれば、掃気圧を所定圧に保つことで主機関の運転効率を低下させずに、空気潤滑を行うことができる。
【0012】
請求項6記載の本発明は、空気供給経路に、取り出した加圧空気を更に加圧するアシストブロワを備えたことを特徴とする。請求項6に記載の本発明によれば、アシストブロワによって空気潤滑に適した圧力まで加圧空気を更に加圧することができる。
【0013】
請求項7記載の本発明は、制御手段では、モータ手段を駆動して過給機の回転を加勢した時に、取り出した加圧空気の圧力が十分でない場合に、アシストブロワを駆動することで、取り出した加圧空気を更に加圧することを特徴とする。請求項7に記載の本発明によれば、モータ手段によって過給機の回転を加勢しても加圧空気の圧力が十分でない場合に、アシストブロワによって空気潤滑に適した圧力まで加圧空気を更に加圧することができる。
【0014】
請求項8記載の本発明は、制御手段では、船舶の喫水に基づいてアシストブロワを駆動し、主機関の負荷に対応して必要な加圧空気の圧力が十分でない場合に、モータ手段を運転することを特徴とする。請求項8に記載の本発明によれば、主機関の負荷に対応して必要な加圧空気の圧力が十分な場合には、先ず喫水に基づいてアシストブロワが駆動されるので、モータ手段の運転頻度を抑え加圧空気の供給に必要なエネルギー量を低減することができる。
【0015】
請求項9記載の本発明は、過給機が可変ノズルを有し、制御手段では、モータ手段を駆動する前に、可変ノズルを制御することで、加圧空気を更に加圧することを特徴とする。請求項9に記載の本発明によれば、まず可変ノズルによって主機関に適した掃気圧にでき、可変ノズルでは十分な掃気圧にできない場合にモータ手段を駆動することで、エネルギー効率を高めることができる。
【0016】
請求項10記載の本発明は、掃気圧を検出する掃気圧検出器を設けたことを特徴とする。請求項10に記載の本発明によれば、掃気圧検出器を設けることで、掃気圧検出器の検出値を用いて掃気圧を所定圧に精度良く保つことができる。
【0017】
請求項11記載の本発明は、過給機の回転数を検出する過給機回転数検出器を設け、回転数と過給機特性とに基づいて掃気圧を求めることを特徴とする。請求項11に記載の本発明によれば、掃気圧検出器を設けなくても、過給機の回転数と過給機特性から掃気圧を算出し、その算出値を用いて掃気圧を所定圧に保つことができる。
【0018】
請求項12記載の本発明は、加圧空気の取出量を、船体への取り出した加圧空気の供給により達成される省エネルギー量と、船体への取り出した加圧空気の供給に必要なエネルギー量との関係に基づいて設定したことを特徴とする。請求項12に記載の本発明によれば、エネルギー効率の良い加圧空気の取出量とすることができる。
【0019】
請求項13記載の本発明は、複数個設けた空気供給口への取り出した加圧空気の供給量を制御する複数の供給量制御弁と、船舶の船体のローリングを検出するローリング検出手段を備え、制御手段では、ローリング検出手段の検出結果に基づいて複数の供給量制御弁を制御して、喫水圧が低い方の空気供給口への取り出した加圧空気の供給量を減少させることを特徴とする。請求項13に記載の本発明によれば、船体がローリングにより揺れて傾いても、喫水圧が低い方の空気供給口への加圧空気の供給量を減少させることで空気潤滑を効率よく行える。
【0020】
請求項14記載の本発明は、複数個設けた空気供給口への取り出した加圧空気の供給量を制御する複数の供給量制御弁と、船舶の船体のヒールを検出するヒール検出手段を備え、制御手段では、ヒール検出手段の検出結果に基づいて複数の供給量制御弁を制御して、喫水圧が低い方の空気供給口への取り出した加圧空気の供給量を減少させることを特徴とする。請求項14に記載の本発明によれば、船体がヒールにより傾き続けても、喫水圧が低い方の空気供給口への加圧空気の供給量を減少させることで空気潤滑を効率よく行える。
【0021】
請求項15記載の本発明は、複数個設けた空気供給口への取り出した加圧空気の供給量を制御する複数の供給量制御弁と、船舶の船体のピッチングを検出するピッチング検出手段を備え、制御手段では、ピッチング検出手段の検出結果に基づいて複数の供給量制御弁を制御して、喫水圧の変動に応じて空気供給口への取り出した加圧空気の供給量を増減させることを特徴とする。請求項15に記載の本発明によれば、船体がピッチングにより揺れて喫水圧が変動しても、喫水圧が低い時には空気供給口への加圧空気の供給量を減少させることで空気潤滑を効率よく行える。
【0022】
請求項16記載の本発明は、空気供給経路に空気溜を設け、取り出した加圧空気の空気供給口への供給を安定化したことを特徴とする。請求項16に記載の本発明によれば、実海域において、例えば主機関の負荷変動や船体運動による喫水圧の変動が生じても、空気供給経路の流量変動や圧力変動を緩和することで、主機関に導入される空気量の変動や空気潤滑への圧力や流量の変動を緩和して、効率の高いシステムを提供できる。
【0023】
請求項17記載の本発明は、制御手段では、加圧空気の取り出しの開始時に空気溜より下流側に設けた経路開閉弁を閉成して、取出手段で加圧空気を取り出して空気溜に溜め、その後に経路開閉弁を開成したことを特徴とする。請求項17に記載の本発明によれば、加圧空気の取り出し開始時に、主機関における掃気圧低下を緩和できる。
【0024】
請求項18記載に対応した空気潤滑式船舶においては、空気潤滑式船舶の空気供給制御システムを船舶に搭載したことを特徴とする。請求項18に記載の本発明によれば、高性能な電動ブロワ(ターボ式)を装備することなく、主機関の低負荷運転時においても、空気潤滑に必要な加圧空気を過給機から効率よく取り出すことができる。また、主機関の負荷と船舶の喫水を考慮することによって、船舶の喫水や主機関の負荷に変動が生じても、主機関の運転効率を低下させずに効率よく空気潤滑を行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、加圧空気の取出量の設定に応じてモータ手段によって過給機の回転を加勢することで、主機関の低負荷運転時においても、空気潤滑に必要な加圧空気を過給機から効率よく取り出すことができる。また、主機関の負荷と船舶の喫水を考慮することによって、船舶の喫水や主機関の負荷に変動が生じても、主機関の運転効率を低下させずに効率よく空気潤滑を行うことができる。
【0026】
また、制御手段では、主機関の負荷により定まる過給機の掃気圧と、船舶の喫水により定まる喫水圧を考慮してモータ手段を制御する場合には、掃気圧により主機関の負荷を考慮し、また喫水圧により船舶の喫水を考慮して、加圧空気の取出量の設定に応じてモータ手段によって過給機の回転を加勢することができる。
【0027】
また、制御手段では、取出量が過給機の過給機能力と、掃気圧又は喫水圧から定まる所定量を越えた場合にモータ手段を運転する場合には、例えば掃気圧が低下した場合に、モータ手段によって過給機を加勢することで主機関の運転に支障をきたすことがない。また、船舶の積荷量の変動、船速の変化や船体の動揺等のダイナミック変動に対しても空気潤滑を効率よく行うことができる。
【0028】
また、所定量を掃気圧と喫水圧のいずれか高い方と、過給機能力より定めた場合には、掃気圧と喫水圧のいずれか高い方を基準としてモータ手段を運転することで、より確実に、主機関の運転効率を低下させずに空気潤滑を行うことができる。
【0029】
また、制御手段では、過給機から主機関までの間の経路に設けた空気冷却機の下流側の掃気圧を所定圧に保つようにモータ手段を制御する場合には、掃気圧を所定圧に保つことで主機関の運転効率を低下させずに、空気潤滑を行うことができる。
【0030】
また、空気供給経路に、取り出した加圧空気を更に加圧するアシストブロワを備えた場合には、アシストブロワによって空気潤滑に適した圧力まで加圧空気を更に加圧することができる。
【0031】
また、制御手段では、モータ手段を駆動して過給機の回転を加勢した時に、取り出した加圧空気の圧力が十分でない場合に、アシストブロワを駆動することで、取り出した加圧空気を更に加圧する場合には、モータ手段によって過給機の回転を加勢しても加圧空気の圧力が十分でない場合に、アシストブロワによって空気潤滑に適した圧力まで加圧空気を更に加圧することができる。
【0032】
また、制御手段では、船舶の喫水に基づいてアシストブロワを駆動し、主機関の負荷に対応して必要な加圧空気の圧力が十分でない場合に、モータ手段を運転する場合には、先ず喫水に基づいてアシストブロワが駆動されるので、モータ手段の運転頻度を抑え加圧空気の供給に必要なエネルギー量を低減することができる。
【0033】
また、過給機が可変ノズルを有し、制御手段では、モータ手段を駆動する前に、可変ノズルを制御することで、加圧空気を更に加圧する場合には、まず可変ノズルによって主機関に適した掃気圧にでき、可変ノズルでは十分な掃気圧にできない場合にモータ手段を駆動することで、エネルギー効率を高めることができる。
【0034】
また、掃気圧を検出する掃気圧検出器を設けた場合には、掃気圧検出器を設けることで、掃気圧検出器の検出値を用いて掃気圧を所定圧に精度良く保つことができる。
【0035】
また、過給機の回転数を検出する過給機回転数検出器を設け、回転数と過給機特性とに基づいて掃気圧を求める場合には、掃気圧検出器を設けなくても、過給機の回転数と過給機特性から掃気圧を算出し、その算出値を用いて掃気圧を所定圧に保つことができる。
【0036】
また、加圧空気の取出量を、船体への取り出した加圧空気の供給により達成される省エネルギー量と、船体への取り出した加圧空気の供給に必要なエネルギー量との関係に基づいて設定した場合には、エネルギー効率の良い加圧空気の取出量とすることができる。
【0037】
また、複数個設けた空気供給口への取り出した加圧空気の供給量を制御する複数の供給量制御弁と、船舶の船体のローリングを検出するローリング検出手段を備え、制御手段では、ローリング検出手段の検出結果に基づいて複数の供給量制御弁を制御して、喫水圧が低い方の空気供給口への加圧空気の供給量を減少させる場合には、船体がローリングにより揺れて傾いても、喫水圧が低い方の空気供給口への取り出した加圧空気の供給量を減少させることで空気潤滑を効率よく行える。
【0038】
また、複数個設けた空気供給口への取り出した加圧空気の供給量を制御する複数の供給量制御弁と、船舶の船体のヒールを検出するヒール検出手段を備え、制御手段では、ヒール検出手段の検出結果に基づいて複数の供給量制御弁を制御して、喫水圧が低い方の空気供給口への取り出した加圧空気の供給量を減少させる場合には、船体がヒールにより傾き続けても、喫水圧が低い方の空気供給口への加圧空気の供給量を減少させることで空気潤滑を効率よく行える。
【0039】
また、複数個設けた空気供給口への取り出した加圧空気の供給量を制御する複数の供給量制御弁と、船舶の船体のピッチングを検出するピッチング検出手段を備え、制御手段では、ピッチング検出手段の検出結果に基づいて複数の供給量制御弁を制御して、喫水圧の変動に応じて空気供給口への取り出した加圧空気の供給量を増減させる場合には、船体がピッチングにより揺れて喫水圧が変動しても、喫水圧が低い方の空気供給口への加圧空気の供給量を減少させることで空気潤滑を効率よく行える。
【0040】
また、空気供給経路に空気溜を設け、取り出した加圧空気の空気供給口への供給を安定化した場合には、実海域において、例えば主機関の負荷変動や船体運動による喫水圧の変動が生じても、空気供給経路の流量変動や圧力変動を緩和することで、主機関に導入される空気量の変動や空気潤滑への圧力や流量の変動を緩和して、効率の高いシステムを提供できる。
【0041】
また、制御手段では、加圧空気の取り出しの開始時に空気溜より下流側に設けた経路開閉弁を閉成して、取出手段で加圧空気を取り出して空気溜に溜め、その後に経路開閉弁を開成した場合には、加圧空気の取り出し開始時に、主機関における掃気圧低下を緩和できる。
【0042】
また、本発明によれば、高性能な電動ブロワ(ターボ式)を装備することなく、主機関の低負荷運転時においても、空気潤滑に必要な加圧空気を過給機から効率よく取り出すことができ、また、主機関の負荷と船舶の喫水を考慮することによって、船舶の喫水や主機関の負荷に変動が生じても、主機関の運転効率を低下させずに効率よく空気潤滑を行うことができる空気潤滑式船舶を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に、本発明の実施形態による空気潤滑式船舶の空気供給制御システムについて説明する。
図1は本発明の実施形態による空気供給制御システムを搭載した空気潤滑式船舶の概略構成図、
図2は同空気潤滑式船舶の空気供給制御システムの概略構成図である。
【0045】
図1に示すように、本実施形態の空気潤滑式船舶は、船体1の船首部2の船底3には、空気供給口4が設けられている。空気供給口4は、船体1の喫水下の船底3に設けている。空気供給口4から船体1の船底3に空気を気泡として放出し、海面S.L.よりも下の船底3の広い領域に気泡を供給して空気潤滑することにより、高い摩擦抵抗低減効果を得ることができる。なお、空気供給口4は、船底3のみならず、船側や船首部2など、複数の部位に組み合わせて設けてもよい。
【0046】
船体1の船尾5側には、プロペラ6を駆動する駆動源7を備えている。
駆動源7は、内燃機関である主機関10と過給機20を有する。過給機20は、主機関10からの排ガスにより駆動され、主機関10に加圧空気を供給する。
主機関10に供給される前の加圧空気の一部は、空気供給経路31を通って空気供給口4に送ることが可能である。
【0047】
次に、
図2を用いて同空気潤滑式船舶の空気供給制御システムの構成について説明する。
過給機20は、主機関10の排気経路に設けられ排ガスから動力を取り出すタービン21と、このタービン21によって動作するコンプレッサー22と、タービン21の排ガス導入側に配置される可変ノズル23とを有する。
可変ノズル23は、ノズル翼の向きや角度あるいは排ガス通路を変化させて主機関10から供給される排ガスの流速を調整して掃気圧を制御することができる。
なお、可変ノズル23を用いずに空気供給制御システムを構成することもできる。
過給機20から主機関10までの間の経路には空気冷却機24を有している。
コンプレッサー22で加圧され高温となった空気は、空気冷却機24で冷却されて主機関10に導入される。
【0048】
空気供給経路31の一端は、過給機20と主機関10との間に接続されており、過給機20と主機関10との間から加圧空気の一部が取り出される。空気冷却機24よりも下流側の掃気を加圧空気として取り出すことが好ましいが、上流側の給気を加圧空気として取り出してもよい。空気冷却機24より下流側の掃気を空気潤滑に用いることで、エネルギー効率を高められる。また、高温の空気が継続的に供給されることによる船体1の塗膜劣化も防止することができる。
【0049】
取り出した加圧空気は、空気供給経路31を通って空気供給口4に供給される。
空気供給経路31には、過給機20と主機関10との間から加圧空気の一部を取り出す絞り量可変の取出バルブ32と、空気供給経路31の加圧空気を更に加圧するアシストブロワ33とを設けている。モータ手段51を駆動して過給機20の回転を加勢しても取り出した加圧空気の圧力が十分でない場合に、過給機20により加圧された加圧空気を更にアシストブロワ33で加圧することにより、載荷量が多く喫水圧が高くなった場合や、多くの空気を空気供給口4に供給することにより圧力が不足した場合に対応ができる。
【0050】
このアシストブロワ33は、喫水圧の変動があっても空気量の変動が少ないルーツ型等の容積型ブロワであることが好ましい。
また、取出バルブ32より上流側の過給機20に近い空気供給経路31には、掃気圧を検出する掃気圧検出器41を設けている。なお、掃気圧検出器41は空気冷却機24と主機関10との間の掃気経路に設けてもよい。過給機20に近い空気供給経路31は、取出バルブ32の上流側であるため、掃気経路とほぼ等しい掃気圧の計測が可能である。また、空気供給経路31と掃気経路の双方の経路に掃気圧検出器41を設けることも可能である。双方の経路に掃気圧検出器41を設けた場合は、平均化処理等によりより精度良く掃気圧の検出が可能となる。また、既存の主機関10や過給機20に本空気供給制御システムを適用する場合は、掃気圧検出器41は空気供給経路31に設けた方が、作業が容易である。
【0051】
また、本実施形態による空気供給制御システムは、空気供給経路31から分岐しアシストブロワ33をバイパスして再び空気供給経路31に合流するバイパス経路35と、空気供給経路31とバイパス経路35のいずれかを選択するバイパス経路選択手段36を設けている。このようにバイパス経路選択手段36を設けることで、取り出した加圧空気を更に加圧する必要がない時などは、バイパス経路選択手段36でバイパス経路35側を選択し、アシストブロワ33をバイパスすることができる。アシストブロワ33を使用しないときには、バイパス経路35に設けたバイパス経路選択手段36を開成し、アシストブロワ33の前後に設けたバイパス経路選択手段36を閉成する。また、アシストブロワ33を使用するときには、バイパス経路35に設けたバイパス経路選択手段36を閉成し、アシストブロワ33の前後に設けたバイパス経路選択手段36を開成する。これらの制御は、アシストブロワ33の運転と連動して行われる。
【0052】
また、大気から吸い込んだ空気をアシストブロワ33へ送る大気吸込経路37と、空気供給経路31と大気吸込経路37を選択する大気吸込経路選択手段38を設けている。アシストブロワ33で大気から空気を吸い込み空気供給口4へ空気を供給する場合は、大気吸込経路選択手段38を開成するとともに、バイパス経路35に設けたバイパス経路選択手段36とアシストブロワ33の前に設けたバイパス経路選択手段36を閉成し、アシストブロワ33の後に設けたバイパス経路選択手段36を開成する。この場合、取出バルブ32も閉成し加圧空気の取り出しは行わない。大気からの空気をアシストブロワ33で加圧して供給した場合には、大気からの空気を加圧して用いることで、大気からの空気を船底3から放出することができ、例えば主機関10の負荷が低く空気量が不足する場合や喫水圧が低い場合等には、大気からの空気を直接、船底3に設けた空気供給口4に供給し、エネルギー効率や省エネ効果を更に高めることができる。
【0053】
本実施形態による空気供給制御システムは、過給機20の回転を加勢するモータ手段51と、取出バルブ32を動作させて加圧空気の一部を取り出す取出手段52と、取出手段52による加圧空気の取出量を設定する取出量設定手段53と、主機関10の負荷と船舶の喫水を考慮して取出量設定手段53による取出量の設定に応じてモータ手段51を制御する制御手段54を備えている。取出量設定手段53は、取出量ゼロの設定が可能であり、空気潤滑の運転/停止の設定機能を併せて有している。
モータ手段51は、外付け型として過給機20のタービン21とコンプレッサー22の駆動軸を直接駆動してもよいが、駆動軸上に直接ロータを形成し周囲に設けたステータとによって駆動することもできる。また、加勢が不要な場合はモータ手段51を発電機として利用し、回生電力を得ることもできる。更に、コンプレッサー22側だけを加勢しタービン21より回転速度を高める目的であるため、駆動軸にワンウェイクラッチ的な機構を装備することもできる。
なお、モータ手段51としては、空気モータや水圧モータ等もあり得るが、電動モータ又は油圧モータを用いる方が、利用の容易性の面から好適である。
【0054】
本実施形態によれば、空気潤滑が必要になった場合に取出バルブ32を開成して加圧空気の一部を取り出し、空気供給経路31を経て空気供給口4に供給する。この取出バルブ32による加圧空気の供給時に、モータ手段51によって過給機20の回転を加勢することで、主機関10の低負荷運転時においても、空気潤滑に必要な加圧空気を過給機20から効率よく取り出すことができる。
このモータ手段51による過給機20の回転の加勢は、主機関10に排気再循環を行う場合に循環経路が開いて加圧空気量が減少したり、加圧空気圧が低下しても対応できる。
【0055】
取出バルブ32を開成して加圧空気の一部を取り出す場合、モータ手段51以外に可変ノズル23を利用することもできる。すなわち取出バルブ32の開度や加圧空気の取出量等の加圧空気の取り出し状況に応じて可変ノズル23のノズル翼の向きや角度等を変化させて加圧空気の加圧特性を改善することができる。
また、モータ手段51や可変ノズル23を利用しても、喫水圧が高くなり取り出した加圧空気の圧力が不足する場合には、空気供給経路31の取り出した加圧空気を更に加圧するアシストブロワ33により補うことができる。
【0056】
制御手段54は、取出量設定手段53での加圧空気の取出量の設定に従ってモータ手段51を制御する。取出量設定手段53によって空気潤滑の運転設定が行われ、取出量が所定量を越えた場合に、モータ手段51は制御される。このように、加圧空気の取出量の設定に応じてモータ手段51によって過給機20の回転を加勢することで、主機関10の低負荷運転時においても、空気潤滑に必要な加圧空気を過給機20から効率よく取り出すことができる。
【0057】
取出量設定手段53によって空気潤滑の運転設定が行われていない場合には、モータ手段51は運転、制御されない。また、取出量設定手段53によって空気潤滑の運転設定が行われていても、取出量が設定された所定量を越えない場合には、モータ手段51は運転、制御されない。しかし、取出量設定手段53によって空気潤滑の運転設定が行われていない場合に、空気潤滑以外の目的でモータ手段51を制御することを妨げるものではない。
取出量設定手段53は、例えば空気潤滑を行うか、行わないかを選択するスイッチや取出バルブ32の開閉スイッチを一体的に設けて構成することができる。また、取出量設定手段53は、主機関10の運転状態や空気潤滑式船舶の航行状態が決められた条件となった場合、自動的に空気潤滑を開始/停止する形式であってもよい。例えば、主機関10の回転数や船速に各々閾値を設けて、入港時や停泊時には主機関10の回転数や船速が閾値以下であることを検出して空気潤滑を自動的に停止し、外洋に出て回転数や船速度が閾値以上となったことを検出して空気潤滑を自動的に開始することができる。
【0058】
制御手段54では、加圧空気の取出量が取出量設定手段53によって設定された所定量を越えた時に、モータ手段51で過給機20の回転を加勢する。このように、加圧空気の取出量が所定量を越えて掃気圧が低下しかけた場合に、モータ手段51によって過給機20を加勢することで主機関10の運転に支障をきたすことがない。
【0059】
また、制御手段54では、掃気圧を所定圧に保つようにモータ手段51を制御する。このように、掃気圧を所定圧に保つことで主機関10の運転効率を低下させずに、空気潤滑を行うことができる。
ここで、所定圧は、過給機20の過給機能力と、掃気圧又は喫水圧に基づいて定める。掃気圧は主機関10の負荷により定まり、喫水圧は船舶の喫水により定まる。
従って、船舶の喫水や主機関10の負荷の変動が生じても、主機関10の運転効率を低下させずに、空気潤滑を行うことができる。
【0060】
また、制御手段54では、モータ手段51を駆動して掃気圧を所定圧とした時に、取り出した加圧空気の圧力が十分でない場合に、アシストブロワ33を駆動することで、取り出した加圧空気を更に加圧する。
従って、掃気圧を所定圧に保ちつつ、アシストブロワ33によって空気潤滑に適した圧力まで加圧空気を更に加圧することができる。
【0061】
また、制御手段54では、モータ手段51を駆動する前に、可変ノズル23を制御することで、加圧空気を更に加圧する。
従って、まず可変ノズル23によって主機関10に適した掃気圧にでき、可変ノズル23では十分な掃気圧にできない場合にモータ手段51を駆動することで、エネルギー効率を高めることができる。
【0062】
制御手段54には、掃気圧検出器41からの検出値が入力され、制御手段54では、検出される掃気圧が所定圧となるようにモータ手段51を駆動する。
掃気圧検出器41を設ける代わりに、過給機20の回転数を検出する過給機回転数検出器42を設けてもよい。
過給機20の回転数と過給機特性と経路抵抗とに基づいて掃気圧を求めることができ、過給機回転数検出器42で検出される回転数から掃気圧を算出することができる。ここで、経路抵抗には、可変ノズル23による抵抗の他に、過給機20と主機関10との間の経路による抵抗、及び空気供給経路31全体の抵抗が含まれる。
【0063】
加圧空気の取出量は、船体1への取り出した加圧空気の供給により達成される省エネルギー量と、船体1への取り出した加圧空気の供給に必要なエネルギー量との関係に基づいて設定することで、エネルギー効率の良い最適掃気取出量とすることができる。なお、前述したように主機関10の負荷や船舶の喫水圧によって必要なエネルギー量が変動するところ、省エネルギー量も変動し、この最適掃気取出量も主機関10の負荷や船舶の喫水圧により変動する。
【0064】
なお、主機関10の負荷は、負荷検出手段43で検出する。負荷検出手段43は、主機関10の回転数を検出する回転数検出手段を含む。負荷検出手段43の回転数検出手段で検出される主機関10の回転数から、主機関10の負荷を推定する。更に、主機関10のトルクを検出し回転数と組み合わせると、より確実に主機関10の負荷を判定できる。
負荷検出手段43で検出された主機関10の負荷が高い場合は、過給機20も高速で回転し加圧空気の量や圧力も十分な場合が多いが、負荷が低い場合は、加圧空気の量や圧力が不足しがちである。このような場合に、モータ手段51で過給機20の回転を加勢することにより補うことができる。
【0065】
また、主機関10の始動時に負荷検出手段43で負荷の立ち上がりを検出し、モータ手段51で主機関10の始動にも対応できる。
このように、立ち上がり時や定常時において主機関10で要求される空気量を確実に供給するようにモータ手段51で過給機20の回転を加勢することができる。
【0066】
船舶の喫水圧は、船体1に設けた喫水圧検出手段44で検出する。負荷検出手段43からの検出値及び喫水圧検出手段44からの検出値は制御手段54に入力され、掃気圧の所定圧が決定される。なお、負荷検出手段43は、主機関10の回転数とトルクから負荷を算出する手段、主機関10のガバナー13の設定値から負荷を求める手段等を含むものとする。また、喫水圧検出手段44には、載荷量から喫水を求める手段を含むものとする。
【0067】
取出量設定手段53で設定する加圧空気の取出量は、船舶の喫水に応じて変化させる。すなわち、取出量設定手段53で設定する所定量は、喫水圧検出手段44で検出される船舶の喫水圧に応じて変化させる。所定量を船舶の喫水に応じて変化させることで、載荷量の大小により喫水が変化する場合のみならず、船体1の動揺等のダイナミック変動に対しても空気潤滑を効率よく行うことができる。なお、「喫水に応じて」とは喫水圧検出手段44を用いずに、喫水の大小に関連する載荷量に応じた所定量を予め定めておいて、載荷量を設定することに連動して適正量を自動設定すること等も含むものとする。
【0068】
また、本実施形態による空気供給制御システムは、空気供給経路31が複数に分岐した分岐路39を有し、複数に分岐した分岐路39のそれぞれに空気供給口4を接続している。このように、複数の空気供給口4を設けることで、船体1の周囲に放出する空気を多くでき、また必要に応じて取り出した加圧空気を任意の空気供給口4から放出することにより、更に摩擦抵抗を効率よく低減できる。
【0069】
また、分岐路39の途中に分岐路39を開閉する経路開閉弁34を設けている。経路開閉弁34の操作によって、空気を放出する空気供給口4を選択することができる。例えば、貨物を載荷していないバラスト状態の場合に、経路開閉弁34を操作して、取り出した加圧空気を中央部の2つの空気供給口4から放出し、左右両側の空気供給口4からの取り出した加圧空気の放出を止めることができる。また、波浪中において船体1が傾き、右側が持ち上がった場合、空気潤滑にあまり寄与しない右側の端にある経路開閉弁34の開度を絞るか、又は閉成することによって、右側の端にある空気供給口4からの取り出した加圧空気の放出量を減らすか、又は放出を止めて、取り出した加圧空気が無駄に消費されることを防止できる。
【0070】
また、空気潤滑を行わない時に経路開閉弁34によって分岐路39を閉成することにより、空気供給口4からアシストブロワ33や主機関10への水の逆流を防ぐことができる。
経路開閉弁34を操作した空気供給口4の増減に伴う、加圧空気圧の変動に対しては、状況に応じ可変ノズル23、アシストブロワ33、モータ手段51を適宜、調節あるいは運転して対応できる。
【0071】
空気供給経路31には、空気溜55を設けている。空気溜55を設けることで、取り出した加圧空気の空気供給口4への供給を安定させることができる。すなわち、実海域において、主機関10の負荷変動や船体運動による喫水圧の変動が生じても、空気供給経路31の流量変動や圧力変動を緩和することで、主機関10に導入される空気量の変動や空気潤滑への圧力や流量の変動を緩和して、安定した効率の高いシステムを提供できる。
制御手段54では、加圧空気の取り出しの開始時、すなわち取出バルブ32の開成時に、空気溜55より下流側に設けた経路開閉弁34を閉成して、取出手段52で取出バルブ32を徐々に開成して加圧空気の一部を取り出して空気溜55に溜める。空気溜55の圧力が上昇しきった後に経路開閉弁34を開成することで、加圧空気の取り出し開始時に、主機関10における掃気圧の過度な低下を緩和できる。
【0072】
空気供給経路31には流量センサ45aを設け、分岐路39にはそれぞれ流量センサ45bを設けている。流量センサ45aは空気供給経路31を流れる加圧空気の量を検出し、流量センサ45bはそれぞれの分岐路39を流れる加圧空気の量を検出する。
流量センサ45a、流量センサ45bで検出された流量値は制御手段54に伝えられ、空気潤滑の空気量制御に使用される。なお、流量センサ45aは、より上流側の空気供給経路31に設けてもよいが、
図2に示す位置に設けることにより、アシストブロワ33を使用する/しない、大気からの空気吸い込みを行う/行わない等の場合に対応して、共通的に1つの流量センサ45aで対応することができる。流量センサ45a、流量センサ45bは質量流量センサであることが好ましいが体積流量センサでもよい。質量流量センサとしては熱線式流量センサ等が、また体積流量センサとしては渦流型流量センサ等が利用可能である。
【0073】
図3に、過給機の掃気量と掃気圧の関係を示す。
掃気の一部を加圧空気として取り出すと、過給機20の回転数は低下し、掃気圧が低下するとともに主機関10への空気量が減少する。
過給機20を通過する空気は、主機関10にとって性能、信頼性を保証する上で重要であり、その空気量は適正に確保されねばならない。主機関10で必要な空気量の確保に当たっては、掃気を利用する場合のみならず給気を利用する場合も含めて、空気冷却機24以降の掃気圧を適正に保つように制御することが好ましい。従って、高効率な特性点で過給機20を作動させるために、モータ手段51で過給機20の回転数を上げることで、
図3に示すように、主機関10に必要な掃気圧を維持するように制御する。
【0074】
図4から
図9は圧力と掃気の取出量との関係を示す図であり、縦軸は圧力、横軸は掃気の取出量ΔQである。
図4から
図9を用いて、制御手段54によるモータ手段51及びアシストブロワ33に対する制御の例を説明する。主機関10の負荷と船舶の喫水は変動するので、制御手段54は、主機関10の負荷と船舶の喫水を考慮し、掃気の取出量に応じてモータ手段51及びアシストブロワ33を制御する。
【0075】
図4は、船舶の喫水が小さく、かつ主機関10が低負荷運転時の場合である(条件1)。
条件1において、主機関10の性能及び信頼性を維持するために必要な掃気圧(以下、「必要掃気圧」という)はPso1であり、喫水圧はPd
Lである。なお、喫水圧Pd
Lは、喫水に応じて空気供給口4から船底3に空気を気泡として放出するために必要な圧力、すなわち喫水からの必要圧でもある。このように、必要掃気圧Pso1及び喫水圧Pd
Lは、条件1により定まる。条件1においては、必要掃気圧Pso1よりも、喫水圧Pd
Lのほうが高い。
図4中の実線で示す斜線αは、過給機20の特性による掃気圧(可変ノズル23込み)を示す。また、ΔQ0
1は最適な掃気の取出量を示している。なお、最適な掃気の取出量の算出方法については後述する。
【0076】
掃気の取出量ΔQが取出量ΔQ1
1までは、過給機20の余剰能力による掃気圧が必要掃気圧Pso1及び喫水圧Pd
Lを上回り、掃気を取り出すことができる(区間X
1)。
掃気の取出量ΔQが増加して取出量ΔQ1
1を越えた場合には、過給機20の余剰能力による掃気圧が喫水圧Pd
Lを下回ってしまうので、制御手段54はモータ手段51を駆動させる。モータ手段51で過給機20の回転を加勢することで、掃気圧が喫水圧Pd
Lを上回り、掃気を取り出すことができる(区間Y
1)。このように制御手段54では、掃気の取出量ΔQが、過給機20の過給機能力と、喫水圧Pd
Lから定まる所定量(取出量ΔQ1
1)を越えた場合にモータ手段51を運転する。なお、条件1では必要掃気圧Pso1よりも喫水圧Pd
Lのほうが高いため、所定量(取出量ΔQ1
1)は、喫水圧Pd
Lと過給機20の過給機能力とから定められる。必要掃気圧Pso1と喫水圧Pd
Lのいずれか高い方を基準としてモータ手段51を運転することで、より確実に、主機関10の運転効率を低下させずに空気潤滑を行うことができる。
掃気の取出量ΔQが更に増加して取出量ΔQ2
1を越えた場合には、モータ手段51で過給機20の回転を加勢したときの最大掃気圧(モータアシストの限界圧)が喫水圧Pd
Lを下回ってしまうので、制御手段54はアシストブロワ33を駆動させる。取り出した加圧空気をアシストブロワ33で更に加圧することで、取り出した加圧空気の圧力が喫水圧Pd
Lを上回り、空気潤滑として適正な空気量を空気供給口4から供給することができる(区間Z
1)。
掃気の取出量ΔQが更に増加して取出量ΔQ3
1を越えた場合には、モータ手段51で過給機20の回転を加勢したときの最大掃気圧が必要掃気圧Pso1を下回ってしまうので、掃気の取り出しができなくなる(区間N
1)。したがって、空気潤滑を行うことができるのは、取出量ΔQ3
1を越えない範囲までである。なお、仮にアシストブロワ33を備えない場合には、空気潤滑を行うことができるのは、取出量ΔQ2
1を越えない範囲までである。
このように制御手段54では、主機関10の負荷により定まる過給機20の掃気圧と、船舶の喫水により定まる喫水圧を考慮してモータ手段51及びアシストブロワ33を制御する。したがって、船舶の喫水や主機関10の負荷に変動が生じても、主機関10の運転効率を低下させずに空気潤滑を行うことができる。
【0077】
図5は、船舶の喫水が小さく、かつ主機関10が中負荷運転時の場合である(条件2)。 条件2において、必要掃気圧はPso2であり、喫水圧はPd
Lである。必要掃気圧Pso2及び喫水圧Pd
Lは条件2により定まる。条件2においては、必要掃気圧Pso2のほうが、喫水圧Pd
Lよりも高い。
図5中の実線で示す斜線αは過給機20の特性による掃気圧(可変ノズル23込み)を示す。また、ΔQ0
2は最適な掃気の取出量を示している。
【0078】
掃気の取出量ΔQが取出量ΔQ1
2までは、過給機20の余剰能力による掃気圧が必要掃気圧Pso2及び喫水圧Pd
Lを上回り、掃気を取り出すことができる(区間X
2)。
掃気の取出量ΔQが増加して取出量ΔQ1
2を越えた場合には、過給機20の余剰能力による掃気圧が必要掃気圧Pso2を下回ってしまうので、制御手段54はモータ手段51を駆動させる。モータ手段51で過給機20の回転を加勢することで、必要掃気圧Pso2が維持され、掃気を取り出すことができる(区間Y
2)。このように制御手段54では、掃気の取出量ΔQが、過給機20の過給機能力と、必要掃気圧Pso2から定まる所定量(取出量ΔQ1
2)を越えた場合にモータ手段51を運転する。なお、条件2では必要掃気圧Pso2のほうが喫水圧Pd
Lよりも高いため、所定量(取出量ΔQ1
2)は、必要掃気圧Pso2と過給機20の過給機能力とから定められる。必要掃気圧Pso2と喫水圧Pd
Lのいずれか高い方を基準としてモータ手段51を運転することで、より確実に、主機関10の運転効率を低下させずに空気潤滑を行うことができる。
掃気の取出量ΔQが更に増加して取出量ΔQ2
2を越えた場合には、モータ手段51で過給機20の回転を加勢したときの最大掃気圧が必要掃気圧Pso2を下回ってしまうので、掃気の取り出しができなくなる(区間N
2)。なお、アシストブロワ33は、取り出した加圧空気を更に加圧するものであり、取り出す前の加圧空気(掃気)を加圧することはできない。したがって、空気潤滑を行うことができるのは、取出量ΔQ2
2を越えない範囲までである。
このように制御手段54では、主機関10の負荷により定まる過給機20の掃気圧と、船舶の喫水により定まる喫水圧を考慮してモータ手段51及びアシストブロワ33を制御する。したがって、船舶の喫水や主機関10の負荷に変動が生じても、主機関10の運転効率を低下させずに空気潤滑を行うことができる。
【0079】
図6は、船舶の喫水が大きく、かつ主機関10が低負荷運転時の場合である(条件3)。条件3において、必要掃気圧はPso3であり、喫水圧はPd
Hである。必要掃気圧Pso3及び喫水圧Pd
Hは条件3により定まる。条件3においては、必要掃気圧Pso3よりも、喫水圧Pd
Hのほうが高い。
図6中の実線で示す斜線αは過給機20の特性による掃気圧(可変ノズル23込み)を示す。また、ΔQ0
3は最適な掃気の取出量を示している。
【0080】
掃気の取出量ΔQが取出量ΔQ1
3より多く取出量ΔQ2
3より少ない場合であっても、過給機20の余剰能力による掃気圧が喫水圧Pd
Hを下回ってしまうので、制御手段54はモータ手段51を駆動させる。モータ手段51で過給機20の回転を加勢することで、掃気圧が喫水圧Pd
Hを上回り、空気潤滑として適正な空気量を空気供給口4から供給することができる(区間Y
3)。このように制御手段54では、掃気の取出量ΔQが、過給機20の過給機能力と、喫水圧Pd
Hから定まる所定量(取出量ΔQ1
3)を越えた場合にモータ手段51を運転する。なお、条件3では必要掃気圧Pso3よりも喫水圧Pd
Hのほうが高いため、所定量(取出量ΔQ1
3)は、喫水圧Pd
Hと過給機20の過給機能力とから定められる。必要掃気圧Pso3と喫水圧Pd
Hのいずれか高い方を基準としてモータ手段51を運転することで、より確実に、主機関10の運転効率を低下させずに空気潤滑を行うことができる。
掃気の取出量ΔQが増加して取出量ΔQ2
3を越えた場合には、モータ手段51で過給機20の回転を加勢したときの最大掃気圧が喫水圧Pd
Hを下回ってしまうので、制御手段54はアシストブロワ33を駆動させる。取り出した加圧空気をアシストブロワ33で更に加圧することで、取り出した加圧空気の圧力が喫水圧Pd
Hを上回り、空気潤滑として適正な空気量を空気供給口4から供給することができる(区間Z
3)。
掃気の取出量ΔQが更に増加して取出量ΔQ3
3を越えた場合には、取り出した加圧空気をアシストブロワ33で更に加圧したときの最大圧力(ブロワアシストの限界圧)が喫水圧Pd
Hを下回ってしまうので、空気潤滑として適正な空気量を空気供給口4から供給することができなくなる(区間N
3)。したがって、空気潤滑を行うことができるのは、取出量ΔQ3
3を越えない範囲までである。なお、仮にアシストブロワ33を備えない場合には、空気潤滑を行うことできるのは、取出量ΔQ2
3を越えない範囲までである。
このように制御手段54では、主機関10の負荷により定まる過給機20の掃気圧と、船舶の喫水により定まる喫水圧を考慮してモータ手段51及びアシストブロワ33を制御する。したがって、船舶の喫水や主機関10の負荷に変動が生じても、主機関10の運転効率を低下させずに空気潤滑を行うことができる。
【0081】
図7は、船舶の喫水が大きく、かつ主機関10が高負荷運転時の場合である(条件4)。 条件4において、必要掃気圧はPso4であり、喫水圧はPd
Hである。必要掃気圧Pso4及び喫水圧Pd
Hは条件4により定まる。条件4においては、必要掃気圧Pso4のほうが、喫水圧Pd
Hよりも高い。
図7中の実線で示す斜線αは過給機20の特性による掃気圧(可変ノズル23込み)を示す。また、ΔQ0
4は最適な掃気の取出量を示している。
【0082】
掃気の取出量ΔQが取出量ΔQ1
4までは、過給機20の余剰能力による掃気圧が必要掃気圧Pso4及び喫水圧Pd
Hを上回り、掃気を取り出すことができる(区間X
4)。
掃気の取出量ΔQが増加して取出量ΔQ1
4を越えた場合には、過給機20の余剰能力による掃気圧が必要掃気圧Pso4を下回ってしまうので、制御手段54はモータ手段51を駆動させる。モータ手段51で過給機20の回転を加勢することで、必要掃気圧Pso4が維持され、掃気を取り出すことができる(区間Y
4)。このように制御手段54では、掃気の取出量ΔQが、過給機20の過給機能力と、必要掃気圧Pso4から定まる所定量(取出量ΔQ1
4)を越えた場合にモータ手段51を運転する。なお、条件4では必要掃気圧Pso4のほうが喫水圧Pd
Hよりも高いため、所定量(取出量ΔQ1
4)は、必要掃気圧Pso4と過給機20の過給機能力とから定められる。必要掃気圧Pso4と喫水圧Pd
Hのいずれか高い方を基準としてモータ手段51を運転することで、より確実に、主機関10の運転効率を低下させずに空気潤滑を行うことができる。
掃気の取出量ΔQが更に増加して取出量ΔQ2
4を越えた場合には、モータ手段51で過給機20の回転を加勢したときの最大掃気圧が必要掃気圧Pso4を下回ってしまうので、掃気の取り出しができなくなる(区間N
4)。なお、アシストブロワ33は、取り出した加圧空気を更に加圧するものであり、取り出す前の加圧空気(掃気)を加圧することはできない。したがって、空気潤滑を行うことができるのは、取出量ΔQ2
4を越えない範囲までである。
このように制御手段54では、主機関10の負荷により定まる過給機20の掃気圧と、船舶の喫水により定まる喫水圧を考慮してモータ手段51及びアシストブロワ33を制御する。したがって、船舶の喫水や主機関10の負荷に変動が生じても、主機関10の運転効率を低下させずに空気潤滑を行うことができる。
【0083】
図8は、船舶の喫水が大きく、かつ主機関10が中負荷運転時の場合である(条件5)。 条件5において、必要掃気圧はPso5であり、喫水圧はPd
Hである。必要掃気圧Pso5及び喫水圧Pd
Hは条件5により定まる。条件5においては、必要掃気圧Pso5よりも、喫水圧Pd
Hのほうが高い。
図8中の実線で示す斜線αは過給機20の特性による掃気圧(可変ノズル23込み)を示す。また、ΔQ0
5は最適な掃気の取出量を示している。
【0084】
掃気の取出量ΔQが取出量ΔQ1
5より多く取出量ΔQ2
5より少ない場合であっても、過給機20の余剰能力による掃気圧が喫水圧Pd
Hを下回ってしまうので、制御手段54はモータ手段51を駆動させる。モータ手段51で過給機20の回転を加勢することで、掃気圧が喫水圧Pd
Hを上回り、空気潤滑として適正な空気量を空気供給口4から供給することができる(区間Y
5)。このように制御手段54では、掃気の取出量ΔQが、過給機20の過給機能力と、喫水圧Pd
Hから定まる所定量(取出量ΔQ1
5)を越えた場合にモータ手段51を運転する。なお、条件5では必要掃気圧Pso5よりも喫水圧Pd
Hのほうが高いため、所定量(取出量ΔQ1
5)は、喫水圧Pd
Hと過給機20の過給機能力とから定められる。必要掃気圧Pso5と喫水圧Pd
Hのいずれか高い方を基準としてモータ手段51を運転することで、より確実に、主機関10の運転効率を低下させずに空気潤滑を行うことができる。
掃気の取出量ΔQが増加して取出量ΔQ2
5を越えた場合には、モータ手段51で過給機20の回転を加勢したときの最大掃気圧が喫水圧Pd
Hを下回ってしまうので、制御手段54はアシストブロワ33を駆動させる。取り出した加圧空気をアシストブロワ33で更に加圧することにで、取り出した加圧空気の圧力が喫水圧Pd
Hを上回り、空気潤滑として適正な空気量を空気供給口4から供給することができる(区間Z
5)。
掃気の取出量ΔQが更に増加して取出量ΔQ3
5を越えた場合には、取り出した加圧空気をアシストブロワ33で更に加圧したときの最大圧力が喫水圧Pd
Hを下回ってしまうので、空気潤滑として適正な空気量を空気供給口4から供給することができなくなる(区間N
5)。したがって、空気潤滑を行うことができるのは、取出量ΔQ3
5を越えない範囲までである。なお、仮にアシストブロワ33を備えない場合には、空気潤滑を行うことができるのは、取出量ΔQ2
5を越えない範囲までである。
このように制御手段54では、主機関10の負荷により定まる過給機20の掃気圧と、船舶の喫水により定まる喫水圧を考慮してモータ手段51及びアシストブロワ33を制御する。したがって、船舶の喫水や主機関10の負荷に変動が生じても、主機関10の運転効率を低下させずに空気潤滑を行うことができる。
【0085】
図9を用いて、掃気を取り出すにあたって、必要掃気圧からの圧力低下許容範囲を考慮した場合を説明する。なお、条件2(
図5)を例にして説明する。
取出量設定手段53には、必要掃気圧Pso2から所定の圧力低下許容幅βを持たせている。なお、圧力低下許容幅βは、主機関10の特性や最適取出量ΔQ0
1から定める。
したがって、掃気の取出量ΔQが増加して取出量ΔQ2
2を越え、モータ手段51で過給機20の回転を加勢したときの最大掃気圧が必要掃気圧Pso2を下回った場合であっても、圧力低下許容幅βの下限を下回らない範囲までは掃気を取り出すことができる(区間E
2)。すなわち、掃気の取り出し量の限度が右にシフトし、必要掃気圧Pso2の圧力低下許容幅βの範囲で掃気の取出量を増大させることができる。
【0086】
図10に主機関の任意の負荷における掃気圧(圧力)と掃気の取出量との関係を示す。
図4から
図9を用いて、モータ手段51及びアシストブロワ33に対する制御手段54の制御の例を説明したが、あらためて
図10を用いて、掃気の取り出しによる掃気圧の低下を防ぎ、主機関10に必要な掃気圧を維持する方法を説明する。
図10において、Ps0は任意の負荷における主機関10の必要掃気圧(圧力)、Pd1はノーマルバラスト喫水圧、Pd2はHeavyバラスト喫水圧、Pd3は満載喫水圧を示している。
【0087】
必要掃気圧Ps0が喫水圧Pd1,Pd2より高い場合、つまり主に船舶がバラストコンディションの場合には、掃気の取出量をΔQ1とすると、この掃気の取出量ΔQ1による掃気圧の低下は、まず可変ノズル23で補う。
可変ノズル23を一定にして掃気の取り出しを始めると掃気圧は下がろうとするが、掃気圧が下がらないように制御するのが基本である。 掃気圧は主機関10の負荷出力によっても上がり下がりするので、負荷出力に応じた掃気圧となるよう制御する。例えば、任意の負荷出力、可変ノズル23の位置におけるバイパス時の掃気圧を予め求めておき制御する。
更に掃気の取出量を増加させ、取出量ΔQ2とすると、掃気圧は低下するが、モータ手段51で過給機20の回転を加勢することで、必要掃気圧Ps0を維持することができる。
【0088】
必要掃気圧Ps0が喫水圧Pd3より低い場合、つまり主に船舶が満載条件の場合には、まず可変ノズル23にて掃気圧を上昇させ、次にモータ手段51で過給機20の回転を加勢する。しかし、主機関10に必要な必要掃気圧Ps0が満たされても、空気潤滑として適正な空気量を供給する上で、掃気圧が喫水圧より低いため、取り出した加圧空気をアシストブロワ33で更に加圧する。
【0089】
このように、制御手段54では、掃気の取出量が所定量を越えた場合にモータ手段51が過給機20を加勢するように制御することで、主機関10の運転に支障をきたすことがない。
この所定量とは、例えば
図10においては掃気の取出量ΔQ1が相当する。このΔQ1を越えて掃気の取出量が設定されると、可変ノズル23で改善できる掃気圧が右肩下がりとなっているところ、必要掃気圧Ps0を維持するためにモータ手段51が運転され掃気圧を補う。
また、その所定量を喫水に応じて変化させることで、船舶の積荷量の変動、船速の変化や船体の動揺等のダイナミック変動に対しても空気潤滑を効率よく行うことができる。ここで所定量を喫水に応じて変化させるとは、例えば
図10において、バラスト状態では喫水圧Pd2での空気潤滑を行う際に必要掃気圧Ps0でよかったものが、満載喫水圧Pd3の場合は空気潤滑に必要な空気圧も上がるため、モータ手段51が運転される運転開始の掃気の取出量(所定量)を小さく設定し、低くなり過ぎない掃気圧を利用することをいう。
なお、上記の説明では取出量ΔQ1を越えたらモータ手段51を運転し過給機20を加勢する制御の説明を行ったが、これは必要掃気圧Ps0を下回ったらモータ手段51を運転し過給機20を加勢するということと技術的に等価である。この点に関しては、
図10に示されるように、過給機20の特性による掃気圧(可変ノズル23込み)を表す斜線αに対し、取出量ΔQ1と必要掃気圧Ps0とは1対1で対応している点から明らかである。また、取出量ΔQ1と必要掃気圧Ps0以外の取出量と必要掃気圧についても同様である。
なお、可変ノズル23とモータ手段51のみを利用して満載条件の喫水圧Pd3を満たすことができるシステムや運転条件の場合においては、アシストブロワ33を使用しないシステムや運転状態があり得る。また、可変ノズル23を用いない過給機20や可変ノズル23の付いていない既存船への適用の場合に、モータ手段51とアシストブロワ33のみでの空気潤滑を行う場合や、モータ手段51のみで空気潤滑を行う場合があり得る。
【0090】
図11及び
図12を用いて、上述した条件3及び条件5における制御手段54によるモータ手段51及びアシストブロワ33に対する制御の他の例を説明する。
図11は条件3における他の例による圧力と掃気の取出量との関係を示す図であり、
図12は条件5における他の例による圧力と掃気の取出量との関係を示す図である。
図11及び
図12において、縦軸は圧力、横軸は掃気の取出量ΔQである。
主機関10の負荷と船舶の喫水は変動するので、制御手段54は、主機関10の負荷と船舶の喫水を考慮し、掃気の取出量に応じてモータ手段51及びアシストブロワ33を制御する。
【0091】
図11は、船舶の喫水が大きく、かつ主機関10が低負荷運転時の場合である(条件3)。条件3において、必要掃気圧はPso3であり、喫水圧はPd
Hである。必要掃気圧Pso3及び喫水圧Pd
Hは条件3により定まる。条件3においては、必要掃気圧Pso3よりも、喫水圧Pd
Hのほうが高い。
図11中の実線で示す斜線αは過給機20の特性による掃気圧(可変ノズル23込み)を示す。また、ΔQ0
3は最適な掃気の取出量を示している。
【0092】
掃気の取出量ΔQが取出量ΔQ1
3’より多く取出量ΔQ2
3’より少ない場合は、過給機20の余剰能力による掃気圧が、必要掃気圧Pso3は上回るものの喫水圧Pd
Hを下回ってしまうので、制御手段54はアシストブロワ33を駆動させる。取り出した加圧空気をアシストブロワ33で更に加圧することで、取り出した加圧空気の圧力が喫水圧Pd
Hを上回り、空気潤滑として適正な空気量を空気供給口4から供給することができる(区間Y
3’)。このように制御手段54では、過給機20の余剰能力による掃気圧が必要掃気圧Pso3を上回り喫水圧Pd
Hを下回るときは、モータ手段51よりも先にアシストブロワ33を駆動する。
掃気の取出量ΔQが増加して取出量ΔQ2
3’を越えた場合には、過給機20の余剰能力による掃気圧が必要掃気圧Pso3を下回ってしまうので、制御手段54はモータ手段51を駆動させる。モータ手段51で過給機20の回転を加勢することで、必要掃気圧Pso3が維持され、掃気を取り出すことができる。また、取り出した加圧空気の圧力は喫水圧Pd
Hを下回るが、取り出した加圧空気をアシストブロワ33で更に加圧することで、 取り出した加圧空気の圧力が喫水圧Pd
Hを上回り、空気潤滑として適正な空気量を空気供給口4から供給することができる(区間Z
3’)。
掃気の取出量ΔQが更に増加して取出量ΔQ3
3’を越えた場合には、取り出した加圧空気をアシストブロワ33で更に加圧したときの最大圧力(ブロワアシストの限界圧)が喫水圧Pd
Hを下回ってしまうので、空気潤滑として適正な空気量を空気供給口4から供給することができなくなる(区間N
3’)。したがって、空気潤滑を行うことができるのは、取出量ΔQ3
3’を越えない範囲までである。
このように制御手段54では、主機関10の負荷により定まる過給機20の掃気圧と、船舶の喫水により定まる喫水圧を考慮してモータ手段51及びアシストブロワ33を制御する。したがって、船舶の喫水や主機関10の負荷に変動が生じても、主機関10の運転効率を低下させずに空気潤滑を行うことができる。
また、制御手段54では、船舶の喫水に基づいてアシストブロ33を駆動し、主機関10の負荷に対応して必要な加圧空気の圧力が十分でない場合に、モータ手段51を運転するので、主機関10の負荷に対応して必要な加圧空気の圧力が十分な場合には、先ず喫水に基づいてアシストブロワ33が駆動される。したがってモータ手段51の運転頻度を抑え加圧空気の供給に必要なエネルギー量を低減することができる。喫水が深い条件では、先にモータ手段51を運転するよりも、アシストブロワ33を運転した方が効率面から加圧空気の供給に必要な電力を低減することができる場合が多い。
【0093】
図12は、船舶の喫水が大きく、かつ主機関10が中負荷運転時の場合である(条件5)。 条件5において、必要掃気圧はPso5であり、喫水圧はPd
Hである。必要掃気圧Pso5及び喫水圧Pd
Hは条件5により定まる。条件5においては、必要掃気圧Pso5よりも、喫水圧Pd
Hのほうが高い。
図12中の実線で示す斜線αは過給機20の特性による掃気圧(可変ノズル23込み)を示す。また、ΔQ0
5は最適な掃気の取出量を示している。
【0094】
掃気の取出量ΔQが取出量ΔQ1
5’より多く取出量ΔQ2
5’より少ない場合は、過給機20の余剰能力による掃気圧が、必要掃気圧Pso5は上回るものの喫水圧Pd
Hを下回ってしまうので、制御手段54はアシストブロワ33を駆動させる。取り出した加圧空気をアシストブロワ33で更に加圧することで、取り出した加圧空気の圧力が喫水圧Pd
Hを上回り、空気潤滑として適正な空気量を空気供給口4から供給することができる(区間Y
5’)。このように制御手段54では、過給機20の余剰能力による掃気圧が必要掃気圧Pso5を上回り喫水圧Pd
Hを下回るときは、モータ手段51よりも先にアシストブロワ33を駆動する。
掃気の取出量ΔQが増加して取出量ΔQ2
5’を越えた場合には、過給機20の余剰能力による掃気圧が必要掃気圧Pso5を下回ってしまうので、制御手段54はモータ手段51を駆動させる。モータ手段51で過給機20の回転を加勢することで、必要掃気圧Pso5が維持され、掃気を取り出すことができる。また、取り出した加圧空気の圧力は喫水圧Pd
Hを下回るが、取り出した加圧空気をアシストブロワ33で更に加圧することで、取り出した加圧空気の圧力が喫水圧Pd
Hを上回り、空気潤滑として適正な空気量を空気供給口4から供給することができる(区間Z
5’)。
掃気の取出量ΔQが更に増加して取出量ΔQ3
5’を越えた場合には、取り出した加圧空気をアシストブロワ33で更に加圧したときの最大圧力が喫水圧Pd
Hを下回ってしまうので、空気潤滑として適正な空気量を空気供給口4から供給することができなくなる(区間N
5’)。したがって、空気潤滑を行うことができるのは、取出量ΔQ3
5’を越えない範囲までである。
このように制御手段54では、主機関10の負荷により定まる過給機20の掃気圧と、船舶の喫水により定まる喫水圧を考慮してモータ手段及びアシストブロワ33を制御する。したがって、船舶の喫水や主機関10の負荷に変動が生じても、主機関10の運転効率を低下させずに空気潤滑を行うことができる。
また、制御手段54では、船舶の喫水に基づいてアシストブロ33を駆動し、主機関10の負荷に対応して必要な加圧空気の圧力が十分でない場合に、モータ手段51を運転するので、主機関10の負荷に対応して必要な加圧空気の圧力が十分な場合には、先ず喫水に基づいてアシストブロワ33が駆動される。したがってモータ手段51の運転頻度を抑え加圧空気の供給に必要なエネルギー量を低減することができる。
【0095】
図13を用いて掃気の取出量の算出方法について説明する。
図13に示すように、空気潤滑において空気供給量を増加すると、船体1の摩擦抵抗が減ることで省エネルギー量が増えるが、空気を供給するためのエネルギー量が多くなる。
船体1への取り出した加圧空気の供給により達成される省エネルギー量と、船体1への取り出した加圧空気の供給に必要なエネルギー量との関係から、最適な掃気の取出量ΔQ0を決定することができる。最適掃気取出量ΔQ0は、船舶の実運転により又は計算により各負荷条件で予め決定し、決定した最適掃気取出量ΔQ0で制御する。なお、前述したように主機関10の負荷や船舶の喫水圧によって必要なエネルギー量が変動するところ、省エネルギー量も変動し、この最適掃気取出量ΔQ0も主機関10の負荷出力や船舶の喫水圧により変動する。
【0096】
図14は、他の実施形態による空気潤滑式船舶の空気供給制御システムのブロック図である。
主機関10は、主機関操作盤11で操作される。主機関操作盤11では、停止はレバー11aを中立位置に操作し、前進はレバー11aを一方に倒す操作を行い、後退はレバー11aを他方に倒す操作を行う。レバー11aの一方又は他方に倒す度合いによって主機関10の回転数を設定できる。
主機関制御器12は、主機関操作盤11での設定に従って停止、前進・後退(逆回転又はギヤ切り換え)、回転数の変更の制御を実行する。
この主機関操作盤11の設定に従って、機関負荷に対応した主機関10の回転数が定まり、主機関10の燃焼に必要な掃気圧(掃気量)が定まる。
【0097】
ガバナー13は、設定回転数を燃料量に変換し、回転数に応じた燃料量を調整する。ガバナー13では、主機関10に設けた回転数検出器43aで検出される回転数をフィードバックすることで、設定回転数になるように燃料量が調整される。
燃料噴射弁14では、ガバナー13で制御された燃料量を主機関10で噴射する。
回転数検出器43aでは、主機関10の出力軸(プロペラ6の駆動軸)の回転数を検出し、トルク検出器43bでは、主機関10の出力軸(プロペラ6の駆動軸)のトルクを検出する。
【0098】
機関負荷算出部12aでは、回転数検出器43aで検出した回転数と、トルク検出器43bで検出したトルクとから機関負荷を算出する。
図14では、回転数検出器43aとトルク検出器43bとで負荷検出手段43を構成している。なお、機関負荷は、回転数と燃料ポンプマークからも算出することができる。
過給機20は、主機関10の運転に従って制御することができる。また、空気潤滑は、主機関10の運転に従って利用することができる。すなわち、制御シーケンス的に主機関操作盤11で、前進又は後退が設定されているときのみ過給機20の制御が可能となる。
【0099】
過給機制御器54aは可変ノズル23及び過給機モータ51を制御する。過給機制御器54aは特性記憶部54cを有している。特性記憶部54cでは、過給機20、可変ノズル23、及びモータ手段(過給機モータ)51のモータ特性を記憶している。
過給機制御器54aは、ある負荷における主機関10での必要掃気量を確保するために、可変ノズル23及び過給機モータ51を制御する。過給機制御器54aは、排気温検出器48で検出される排気温度や掃気圧検出器41で検出される掃気圧に基づいて制御される。
掃気圧と排気温度は、主機関10の熱負荷に関連した物理量として重要であり、物理量として取り出して一定の変数として用いることで、過給機20を支障なく好適に制御できる。
なお、可変ノズル23は、空気潤滑を行わない時でも機関負荷が大きい時に制御される。
【0100】
過給機モータ51は、主機関10の運転開始時に、加圧空気(掃気)量を確保するためにも駆動される。運転開始時には過給機20の回転数が低いため、十分に加圧空気量が得られないが、過給機モータ51で過給機20を加勢することにより、始動に必要な加圧空気量を確保することができる。
主機関10の必要掃気量を確保するために、掃気圧を検出してまず、可変ノズル23を制御して掃気圧が所定圧になるように制御し、可変ノズル23の制御が限界に達すると過給機モータ51を制御し掃気圧が所定圧になるように制御する。
取出量設定手段53を含む空気潤滑設定器53aは、主機関10の運転設定時に空気潤滑スイッチをオンとすることができる。
【0101】
空気潤滑設定器53aでは、空気供給口4の数や加圧空気(掃気)の取出量を設定することができる。加圧空気(掃気)の取出量の設定は、流量として設定することも、また船舶の載荷状態(満載、バラスト)を設定し予め定めた適正流量と対応付けることも、喫水に応じた適正量を自動設定することも可能である。
加圧空気(掃気)の取出量の最適値(最適掃気取出量)は、
図13の関係に従い予め求められ、最適値記憶部54dに記憶されている。
空気潤滑制御器54bでは、空気潤滑設定器53aで空気潤滑スイッチがオンされ、空気潤滑の開始が設定されると、取出手段52によって取出バルブ32を開成する。取出バルブ32は、設定した加圧空気(掃気)の取出量が得られる開度に調節される。
取出バルブ32を全開しても設定した取出量が得られない場合は、過給機制御器54aによって可変ノズル23を制御し、その後に過給機モータ51を制御する。
【0102】
加圧空気の取出量は流量センサ45aで検出され、空気潤滑制御器54bで設定値と比較され、加圧空気の取出量が設定値となるように、取出バルブ32の開度が調整され、過給機制御器54aによって可変ノズル23と過給機モータ51とが制御される。
載荷量(なお、積載量は喫水圧検出器44でも検出できる。)が多く、可変ノズル23及び過給機モータ51を制御しても取出量が不足する場合には、空気潤滑制御器54bはアシストブロワ33を運転させる。
【0103】
ここで、
図14では、過給機制御器54a及び空気潤滑制御器54bは制御手段54を構成している。
空気潤滑開始時は、経路開閉弁34を閉成した状態で取出バルブ32及びバイパス経路35のバイパス経路選択手段36を開成し、空気溜55に取り出した加圧空気を貯えてから経路開閉弁34を開成する。
船速検出器46は船速を、喫水圧検出器(喫水圧検出手段)44は船体1の喫水を、傾斜検出器47は船体1のローリング、ヒール、ピッチング等を検出する。
なお、ヒールとは、船体1が幅方向に継続的に一方に傾いた状態を指す。
傾斜検出器47は、例えば加速度センサで構成され、船舶の船体1の揺れとしてのローリングを検出するローリング検出手段、船舶の揺れとしての船体1のピッチングを検出するピッチング検出手段として機能する。
また、船体1のヒールを検出するヒール検出手段としては、加速度センサは使用できないため傾斜計等が用いられる。
船速検出器46で検出される船速、喫水圧検出器44で検出される船体1の喫水、及び傾斜検出器47で検出される船体1の傾きによって、加圧空気の取出量の変更や経路開閉弁34の開閉が制御され、適正に空気潤滑を行うことができる。
【0104】
複数に分岐した分岐路39にそれぞれ設けた経路開閉弁34を、それぞれの空気供給口4への取り出した加圧空気の供給量を制御する供給量制御弁34として、また傾斜検出器(加速度センサ)47を船舶の船体1のローリングを検出するローリング検出手段として機能させ、空気潤滑制御器54bでは、ローリング検出手段の検出結果に基づいて複数の供給量制御弁34を制御して、喫水圧が低い方の空気供給口4への取り出した加圧空気の供給量を減少させる。従って、船体1がローリングにより傾いても、喫水圧が低い方の空気供給口4への取り出した加圧空気の供給量を減少させることで空気潤滑を効率よく行える。なお、取り出した加圧空気の供給量の減少には、供給量の停止を含み、例えば喫水よりも上方に空気供給口4が開口した場合は、開口した空気供給口4については、取り出した加圧空気の供給を停止することが好ましい。また、喫水圧が高い方の空気供給口4への取り出した加圧空気の供給量を増加させることも有効であるが、それ以前と同レベルに維持してもよい。
【0105】
また、複数に分岐した分岐路39にそれぞれ設けた経路開閉弁34を、それぞれの空気供給口4への取り出した加圧空気の供給量を制御する供給量制御弁34として、また傾斜検出器(傾斜計)47を船舶の船体1のヒールを検出するヒール検出手段として機能させ、空気潤滑制御器54bでは、ヒール検出手段の検出結果に基づいて複数の供給量制御弁34を制御して、喫水圧が低い方の空気供給口4への取り出した加圧空気の供給量を減少させる。従って、船体1がヒールにより傾いても、喫水圧が低い方の空気供給口4への取り出した加圧空気の供給量を減少させることで空気潤滑を効率よく行える。なお、取り出した加圧空気の供給量の減少には、供給量の停止を含み、例えば喫水よりも上方に開口した場合は、開口した空気供給口4については、取り出した加圧空気の供給を停止することが好ましい。また、喫水圧が高い方の空気供給口4への取り出した加圧空気の供給量を増加させることも有効であるが、それ以前と同レベルに維持してもよい。
【0106】
また、複数に分岐した分岐路39にそれぞれ設けた経路開閉弁34を、それぞれの空気供給口4への取り出した加圧空気の供給量を制御する供給量制御弁34として、また傾斜検出器(加速度センサ)47を船舶の船体1のピッチングを検出するピッチング検出手段として機能させ、空気潤滑制御器54bでは、ピッチング検出手段の検出結果に基づいて複数の供給量制御弁34を制御して、喫水圧の変動に応じて空気供給口4への取り出した加圧空気の供給量を増減させる。従って、船体1がピッチングにより喫水圧が変動しても、喫水圧が低い時には空気供給口4への取り出した加圧空気の供給量を減少させることで空気潤滑を効率よく行える。なお、取り出した加圧空気の供給量の減少には供給量の停止を含み、また喫水圧が高い時には空気供給口4への取り出した加圧空気の供給量を増加させることも有効であるが、それ以前と同レベルに維持してもよい。
【0107】
空気潤滑を停止する場合は、空気潤滑設定器53aで空気潤滑スイッチをオフとすると、
空気潤滑制御器54bは、先に経路開閉弁34を閉成し、後から取出手段52によって取出バルブ32を閉成する。なお、アシストブロワ33が運転されている場合は、先に経路開閉弁34を閉成し、次にアシストブロワ33の運転を停止し、最後に取出バルブ32を閉成する。
これらの制御は、空気供給口4から空気供給経路31内に水が逆流することを防止するためである。これらの停止制御中に、空気溜55には取り出した加圧空気が溜められ、経路開閉弁34よりも後に取出バルブ32を閉成することによって、空気溜55に取り出した加圧空気が保持されるため、空気潤滑を行わないときに経路開閉弁34に微少漏れが発生しても、空気供給経路31内に水が逆流することを防止できる。
また、主機関10が継続して運転される場合には、これらの停止制御中に、主機関10に供給される加圧空気量が過剰とならないように、過給機モータ51及び可変ノズル23は過給機制御器54aにより適宜制御される。
【0108】
以上のように本実施形態によれば、喫水圧変動の影響を対策するため余力を持たせたことにより、高価である高性能な電動ブロワ(ターボ式)を装備することなく、主機関10の低負荷運転時においても、空気潤滑に必要な加圧空気を過給機20から効率よく取り出すことができる。