特許第6555725号(P6555725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555725
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】生分解性微粒子からの溶媒抽出
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/50 20060101AFI20190729BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20190729BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20190729BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20190729BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20190729BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20190729BHJP
   B01D 11/02 20060101ALI20190729BHJP
   A61K 47/02 20060101ALN20190729BHJP
   A61K 38/26 20060101ALN20190729BHJP
【FI】
   A61K9/50
   A61K47/34
   A61K47/04
   A61K47/60
   A61P3/10
   A61K38/28
   B01D11/02 103
   !A61K47/02
   !A61K38/26
【請求項の数】39
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-568447(P2016-568447)
(86)(22)【出願日】2015年7月7日
(65)【公表番号】特表2017-523128(P2017-523128A)
(43)【公表日】2017年8月17日
(86)【国際出願番号】US2015039316
(87)【国際公開番号】WO2016007468
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2018年7月6日
(31)【優先権主張番号】14/324,734
(32)【優先日】2014年7月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516343619
【氏名又は名称】レゾルート インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REZOLUTE,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】セブリング、グレッグ ブライデン
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0037086(US,A1)
【文献】 特表2007−515392(JP,A)
【文献】 特表2006−522816(JP,A)
【文献】 特表平09−505308(JP,A)
【文献】 特表2002−534372(JP,A)
【文献】 特表平09−504027(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/024056(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0317865(US,A1)
【文献】 International Journal of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences,2010年,Vol.2, No.3,pp.95-100
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K47/00−47/69
A61K9/00−9/72
A61K31/00−33/44
A61P1/00−43/00
A61K38/28
A61K38/26
B01D11/02
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の微粒子中の溶媒濃度を低減させるための方法において、
前記複数の微粒子及び溶媒を含んでなる第1の混合物を第1の水と接触させて水性懸濁液を形成する工程であって、前記溶媒の第1の部分が前記水性懸濁液の前記第1の水に溶解して、前記複数の微粒子中の前記溶媒濃度を前記第1の混合物中の第1の溶媒濃度から前記水性懸濁液中の第2の溶媒濃度まで低減させる、水性懸濁液を形成する工程と、
前記水性懸濁液を濃縮ユニットに移送する工程であって、前記濃縮ユニットは
(i)追加の水を、濃縮ユニット内の前記水性懸濁液に導入する工程、及び
(ii)前記第1の水の少なくとも一部と、前記溶媒の少なくとも一部とからなる液体を前記濃縮ユニット内の前記水性懸濁液から除去する工程であって、前記液体を前記濃縮ユニットから除去するよりも遅い速度で追加の水を導入して、第3の溶媒濃度を持つ微粒子濃縮物を形成する、前記前記水の少なくとも一部及び前記溶媒の少なくとも一部を前記濃縮ユニット内の前記水性懸濁液から除去する工程
によって前記複数の微粒子中の前記溶媒濃度を前記第2の溶媒濃度から前記第3の溶媒濃度までさらに低減させる、前記水性懸濁液を前記濃縮ユニットに移送する工程と、
前記微粒子濃縮物を洗浄ユニットに移送する工程であって、前記微粒子濃縮物は洗浄溶液と接触させられて、第4の溶媒濃度を持つ洗浄済み微粒子の第2の混合物を形成する、前記微粒子濃縮物を洗浄ユニットに移送する工程と、
前記洗浄済み微粒子の第2の混合物を乾燥することによって、低減された溶媒濃度を有した前記複数の微粒子を形成する工程と
を備える、複数の微粒子中の溶媒濃度を低減させるための方法。
【請求項2】
前記微粒子が、医学的に活性な薬剤を含有する生分解性微小球を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生分解性微小球が、乳酸グリコール酸共重合体を含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記医学的に活性な薬剤が、PEG化インスリンを含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記微粒子中の前記溶媒が、ハロゲン化有機溶媒を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ハロゲン化有機溶媒が、塩化メチレンを含んでなる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の混合物中の前記第1の溶媒濃度が10〜20重量%であり、前記懸濁液中の前記第2の溶媒濃度が1〜5重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の混合物中の前記第1の溶媒濃度が約15重量%であり、前記懸濁液中の前記第2の溶媒濃度が約2重量%である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水性懸濁液を形成する前記工程が、前記微粒子を硬化して、前記水性懸濁液中の前記第1の水に溶解する医学的に活性な薬剤の量を低減させる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記濃縮ユニットが、前記微粒子を除去することなく前記液体を前記濃縮ユニットから除去するクロスフロー濾過ユニットを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記微粒子濃縮物中の前記第3の溶媒濃度が、約0.5重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記微粒子濃縮物が、前記微小球を約1体積%以上含む、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記洗浄ユニットが、目標とする直径を有する微粒子の第1の群を、前記目標とする直径の範囲外のサイズを有する微粒子の第2の群から分離する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記洗浄ユニットが、多孔質スクリーンの積層体を使用して前記微粒子の第1の群を前記微粒子の第2の群から分離する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記微粒子の第1の群が、25μm〜63μmに及ぶ目標とする直径を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記洗浄溶液が、無機塩基を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記無機塩基が、炭酸水素ナトリウムを含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記炭酸水素ナトリウムが、0.1〜1w/w%の濃度を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記洗浄済み微粒子の第2の混合物中の前記第4の溶媒濃度が、0.03重量%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
複数の微粒子中の溶媒濃度を低減させるためのシステムにおいて、
油相混合タンクからの油相と、水相混合タンクからの水相とを混合するために適した乳化機と、
前記乳化機と流体連通している第1の溶媒抽出タンクと
前記第1の溶媒抽出タンクに流体連通し、及び、第2の溶媒抽出タンクと流体連通しているクロスフロー濾過カラムを備える、濃縮ユニットと、
前記濃縮ユニットから微粒子濃縮物を受容するように適合された洗浄ユニットと、
前記水相混合タンクとは分離している水タンクとを備え、
前記クロスフロー濾過カラムが、前記微粒子を除去することなく前記水及び前記溶媒を前記第2の溶媒抽出タンクから除去する、システム。
【請求項21】
前記第1の溶媒抽出タンクが、水性懸濁液中の前記微粒子が前記第1の溶媒抽出タンクの底部に沈降しない状態に保つために適した混合機を備える、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記洗浄ユニットが、目標とする直径を有する微粒子の第1の群を、前記目標とする直径の範囲外のサイズを有する微粒子の第2の群から分離するために適した多孔質スクリーンの積層体を備える、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記洗浄ユニットが、前記洗浄済み微粒子の第2の混合物から前記水及び前記溶媒を蒸発させて、低減された溶媒濃度を持つ乾燥済み微粒子を形成することに適した真空ユニットをさらに備える、請求項20に記載のシステム。
【請求項24】
前記洗浄ユニットが、前記水及び前記溶媒の蒸気を前記真空ユニットに運ぶことに適した乾燥ガス供給材をさらに備える、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記乾燥ガス供給材が、乾燥窒素ガスを含んでなる、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記低減された溶媒濃度を持つ前記乾燥済み微粒子を受容することに適した生成物ビンをさらに備える、請求項23に記載のシステム。
【請求項27】
前記洗浄ユニットから前記洗浄済み微粒子の第2の混合物を受容し、前記第2の混合物を乾燥して、低減された溶媒濃度を持つ乾燥済み微粒子を形成するように適合された乾燥ユニットをさらに備える、請求項20に記載のシステム。
【請求項28】
前記微粒子が、医学的に活性な薬剤を含有する生分解性微小球を備え、前記溶媒が、ハロゲン化有機溶媒を含んでなる、請求項20に記載のシステム。
【請求項29】
前記クロスフロー濾過カラムがセラミック膜を含んでなる、請求項20に記載のシステム。
【請求項30】
前記水タンクは前記乳化機、前記濃縮ユニット、又は前記洗浄ユニットを通過することなく前記第1の溶媒抽出タンクと流体連通している、請求項20に記載のシステム。
【請求項31】
前記水タンク及び前記第1の溶媒抽出タンクは、前記第1の溶媒抽出タンクが前記水タンクから水を受け取り、前記第1の溶媒抽出タンクの前記未粒子と混合するために適切であるように設けられる、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記水タンクは前記乳化機、前記第1の溶媒抽出タンク、又は前記洗浄ユニットを通過することなく前記濃縮ユニットと流体連通している、請求項20に記載のシステム。
【請求項33】
前記油相混合タンク、及び前記水相混合タンクをさらに備える、請求項20に記載のシステム。
【請求項34】
前記目標とする直径は10μm〜90μmの範囲にある、請求項22に記載のシステム。
【請求項35】
医学的に活性な薬剤を含む複数の生分解性微小球を調製する方法において、前記生分解性微小球は、低減された濃度の調製溶媒を有し、
前記複数の生分解性微小球及び前記調製溶媒を含んでなる第1の混合物を第1の水と接触させて水性懸濁液を形成する工程であって、前記調製溶媒の第1の部分が前記水性懸濁液の前記第1の水に溶解して、前記複数の生分解性微小球中の溶媒濃度を前記第1の混合物中の第1の溶媒濃度から前記水性懸濁液中の第2の溶媒濃度まで低減させる、水性懸濁液を形成する工程と、
前記水性懸濁液を濃縮ユニットに移送する工程であって、前記濃縮ユニットは、
(i)追加の水を、濃縮ユニット内の前記水性懸濁液に導入する工程、及び
(ii)前記第1の水の少なくとも一部及び前記調製溶媒の少なくとも一部からなる液体を前記濃縮ユニット内の前記水性懸濁液から除去する工程であって、前記追加の水は前記液体を前記濃縮ユニットから除去するよりも遅い速度で導入され第3の溶媒濃度を持つ生分解性微小球濃縮物を形成する、前記水の少なくとも一部及び前記調製溶媒の少なくとも一部を前記濃縮ユニット内の前記水性懸濁液から除去する工程
によって前記複数の生分解性微小球中の前記溶媒濃度を前記第2の溶媒濃度から前記第3の溶媒濃度までさらに低減させる、前記濃縮ユニットに移送する工程と、
前記生分解性微小球濃縮物を洗浄ユニットに移送する工程であって、前記生分解性微小球濃縮物は洗浄溶液と接触させられて、第4の溶媒濃度を持つ洗浄済み生分解性微小球の第2の混合物を形成する、前記生分解性微小球濃縮物を洗浄ユニットに移送する工程と、
前記洗浄済み生分解性微小球の第2の混合物を乾燥して、低減された溶媒濃度を持つ前記複数の生分解性微小球を形成する工程と
を備える方法。
【請求項36】
前記生分解性微小球が、乳酸グリコール酸共重合体を含んでなる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記医学的に活性な薬剤が、PEG化インスリンを含んでなる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記調製溶媒が、塩化メチレンを含んでなる、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記第1の溶媒濃度が、10〜20重量%であり、
前記第2の溶媒濃度が、1〜5重量%であり、
前記第3の溶媒濃度が、約0.5重量%であり、
前記第4の溶媒濃度が、0.03重量%以下である、
請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生分解性微粒子からの溶媒抽出に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性微粒子は、薬物、ホルモン、タンパク質、及びその他の医学的に活性な薬剤を患者に対して送達するのに使用され得る。微粒子は、分解するにつれ、静脈内又は皮下を経て身体に対して薬剤を徐々に放出することができ、針で身体に対して投与され得る。生分解性微粒子は、薬剤が体内に徐々に放出されるので、注射の頻度を低減させることができる。微粒子のサイズ分布及び流動性の特性は、針のゲージ及びその他の特性に影響を及ぼす。より流動性ある微粒子は、バイアル内に充填することがより容易になる可能性があり、大ゲージ(より小さい直径)針でより容易に注射され得る。体内に入ると、医学的に活性な薬剤の放出速度及び濃度は、微粒子サイズ、微粒子のサイズ分布、医学的に活性な薬剤の初期濃度、及び微粒子のその他の特性に関係付けられる可能性がある。そのような生分解性微粒子は、微粒子を調製するのに使用される溶媒を含めた汚染物質濃度に関する安全衛生規則も満たす必要がある。したがって、優れた注射針通過性、注射可能性、流動性、均一性、及び純度特性を持つ微粒子に対する必要性が存在する。本明細書に記載される方法及びシステムは、これら及びその他の必要性に対する解決策を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
溶媒は、生分解性微粒子の調製中にしばしば使用される。当初、これらの溶媒は、患者に注射するのに安全なレベルよりも高い濃度にある。微粒子中の溶媒濃度は、溶媒を水などの液体で抽出することによって低減させることができる。溶媒抽出は、多数の工程又はユニットに分割されてもよく、それが溶媒低減に必要な水の量を低減させることができる。例えば、抽出方法又はシステムは、2つの工程又はタンクを含んでいてもよい。加えて、抽出方法又はシステムは、溶媒濃度を低減させることができ懸濁液中の微粒子の量を濃縮することができる、クロスフロー濾過カラムを含んでいてもよい。次いで微粒子は、無機塩基で濯がれかつ乾燥されてもよい。この方法又はシステムは、低溶媒濃度と、患者に対する投与に関する優れた特性とを持つ微粒子を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の技術の実施形態は、複数の微粒子中の溶媒濃度を低減させるための方法を含むことができる。方法は、複数の微粒子及び溶媒を含む混合物を水と接触させる工程を伴ってもよく、この接触は、水性懸濁液を形成することができる。溶媒の第1の部分は、水性懸濁液の水に溶解することができ、その結果、複数の微粒子中の溶媒濃度は、混合物中の第1の溶媒濃度から水性懸濁液中の第2の溶媒濃度まで低減する。また方法は、複数の微粒子中の溶媒濃度を第2の溶媒濃度から第3の溶媒濃度までさらに低減させ得る濃縮ユニットに、水性懸濁液を移送する工程を含んでいてもよい。第3の溶媒濃度への低減は、追加の水を濃縮ユニット内の水性懸濁液に導入する工程を含んでいてもよい。低減は、水の少なくとも一部と溶媒の少なくとも一部とを、濃縮ユニット内の水性懸濁液から除去する工程も含んでいてもよい。濃縮ユニットでは、水よりも遅い速度で追加の水が導入されてもよく、溶媒は、濃縮ユニットから除去されて、第3の溶媒濃度を持つ微粒子濃縮物を形成する。方法は、微粒子濃縮物を洗浄ユニットに移送する工程をさらに含んでいてもよく、このユニットでは、微粒子濃縮物が洗浄溶液と接触させられて、第4の溶媒濃度を持つ洗浄済み微粒子のアマルガムを形成することができる。方法は、洗浄済み微粒子のアマルガムを乾燥させて、低減された溶媒濃度を持つ複数の微粒子を形成する工程も含んでいてもよい。これらの操作は、微粒子中の溶媒濃度を第1の溶媒濃度から低減された溶媒濃度
にまで低減させるよう、一緒に作用させることができる。
【0005】
実施形態は、複数の微粒子中の溶媒濃度を低減させるためのシステムも含んでいてもよい。システムは、溶媒抽出タンクを含んでいてもよい。溶媒抽出タンクでは、複数の微粒子及び溶媒を含む混合物が水と接触させられて、水性懸濁液を形成してもよい。溶媒の第1の部分は、水性懸濁液の水に溶解することにより、複数の微粒子中の溶媒濃度を混合物中の第1の溶媒濃度から水性懸濁液中の第2の溶媒濃度まで低減させることができる。システムは、溶媒抽出タンクに流体連通している濃縮ユニットも含んでいてもよい。濃縮ユニットは、複数の微粒子中の溶媒濃度を第2の溶媒濃度から第3の溶媒濃度までさらに低減させることができる。この低減は、追加の水を濃縮ユニット内の水性懸濁液に導入する工程を含んでいてもよい。低減は、水の少なくとも一部及び溶媒の少なくとも一部を、濃縮ユニット内の水性懸濁液から除去する工程も含んでいてもよい。追加の水は、水よりも遅い速度で導入されることができ、溶媒は、濃縮ユニットから除去される。第3の溶媒濃度を持つ微粒子濃縮物が形成され得る。システムは、濃縮ユニットから微粒子濃縮物を受容するように適合された洗浄ユニットをさらに含んでいてもよい。洗浄ユニットでは、微粒子濃縮物が洗浄溶液と接触させられることができ、第4の溶媒濃度を持つ洗浄済み粒子のアマルガムを形成することができる。
【0006】
実施形態はさらに、医学的に活性な薬剤を持つ複数の生分解性微小球を調製する方法であって、生分解性微小球が低減されたレベルの調製溶媒を有している方法を含んでいてもよい。方法は、複数の生分解性微小球及び調製溶媒を含む混合物を水と接触させる工程であって、それにより水性懸濁液を形成し得る工程を含んでいてもよい。調製溶媒の第1の部分は、水性懸濁液の水に溶解することができ、複数の生分解性微小球中の溶媒濃度を、混合物中の第1の溶媒濃度から水性懸濁液中の第2の溶媒濃度まで低減させることができる。方法は、水性懸濁液を、複数の生分解性微小球中の溶媒濃度を第2の溶媒濃度から第3の溶媒濃度までさらに低減させる濃縮ユニットに移送する工程も含んでいてもよい。この低減は、追加の水を、濃縮ユニット中の水性懸濁液に導入する工程を含んでいてもよい。低減は、水の少なくとも一部及び調製溶媒の少なくとも一部を、濃縮ユニット内の水性懸濁液から除去する工程も含んでいてもよい。追加の水は、水よりも遅い速度で導入されてもよく、溶媒は濃縮ユニットから除去されて、第3の溶媒濃度を持つ生分解性微小球濃縮物を形成する。方法は、生分解性微小球濃縮物を洗浄ユニットに移送する工程であって、生分解性微小球濃縮物は洗浄溶液と接触させられて、第4の溶媒濃度を持つ洗浄済み生分解性微小球のアマルガムを形成する工程をさらに含んでいてもよい。方法は、洗浄済み生分解性微小球のアマルガムを乾燥して、低減された溶媒濃度を持つ複数の生分解性微小球を形成する工程も含んでいてもよい。これらの操作は、溶媒濃度を、混合物中の第1の溶媒濃度から、複数の生分解性微小球中の低減された溶媒濃度に低減させるよう、一緒に作用することができる。
【0007】
実施形態は、真空ユニットで乾燥させて、注射器に充填するための粉末にすることができる組成物も含んでいてもよい。組成物は、医学的に活性化された薬剤を含み得る、複数の生分解性微小球を含んでいてもよい。これらの又はその他の実施形態では、組成物は、0.03重量%以下の濃度で溶媒も含んでいてもよい。組成物は、無機塩基を含む洗浄溶液をさらに含んでいてもよい。無機塩基は、0.1〜1w/w%の濃度を有していてもよい。
【0008】
生分解性微小球は、希釈剤と混合されかつ患者に対して投与される前に、バイアルにローディングされてもよい。医学的処理のための反復可能な制御されたローディングは、乾燥し、粉末形態にあり、良好な流動性を有し、かつ低い不純物含量を有する生分解性微小球から得ることができる。本発明の技術の方法及びシステムは、良好な流動性の特性を持つ微小球粉末を生成することができる。溶媒抽出工程は、規制されたレベルよりも低いレ
ベルに不純物を除去することができ、方法は、水を微小球から除去する乾燥プロセスを含むことができる。優れた流動性は、微小球を無機塩基で濯ぐことによって微小球のクランプ形成及び凝集を低減させる工程を通して実現されてもよい。
【0009】
加えて、流動性、注射可能性、及び注射針通過性の生分解性微小球を生成する任意のプロセスは、効率的でありかつ医学的に活性な薬剤の分解を最小限に抑えるべきである。溶媒抽出及び乾燥工程の組合せは、溶媒を抽出するために微小球に添加させる必要がある水の量を低減させる。水利用の低減は、投入及び光熱コストを低減させ、廃棄物も低減させる。同時に、本発明の技術の方法及びシステムは、プロセシング時間及び温度も低減させることができ、それが医学的に活性な薬剤又は微粒子の分解を低減させ得る。本発明の技術の実施形態は、これら及び追加の利益を提供する。
【0010】
本発明の技術の実施形態を、添付される図と併せて記載する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態による、複数の微粒子における溶媒濃度を低減させるための方法を示す図。
図2】実施形態による、複数の微粒子における溶媒濃度を低減させるための、システムのプロセスフロー図。
図3】実施形態による、複数の生分解性微小球を調製する方法を示す図。
図4A】炭酸水素ナトリウム溶液で処理していない、乾燥済み微小球の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図。
図4B】炭酸水素ナトリウム溶液で処理した、乾燥済み微小球の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
医薬用微小球から溶媒を抽出するための従来の方法は、典型的には、溶媒を蒸発除去するために高温を使用する工程を含む。しかし、加熱工程は、微小球又は医学的に活性な薬剤を分解する可能性がある。加熱工程は、溶媒フューム(蒸気)を発生させる可能性もあり、これらのフュームは人の健康に対して有害であり排出規制の対象になる可能性がある。
【0013】
溶媒は、微小球から水で抽出することによっても除去され得る。僅かな極性を有する溶媒が、水に僅かに可溶である。例えば塩化メチレンは、僅かに極性であり、水に僅かに可溶である。さらに、分配係数(即ち、微小球中の溶媒の濃度と水中の溶媒の濃度との比)は、通常、定温で一定である。例えば塩化メチレンは、室温(即ち、20℃)で約18の分配係数を有する。その結果、溶媒は十分な体積の水で、一工程で必須の濃度よりも低濃度に微小球から除去され得る。しかし、塩化メチレンの初期濃度が15%でありかつ人への注射に安全と見なされる300ppmの濃度にまで一工程で低減された場合、微小球懸濁液のリットル当たりほぼ9,000Lの水が必要になったと考えられる。抽出プロセスを多数の工程に分割することにより、必要な水の量が減少するが、槽及びポンプなどのユニット操作の数が増加すると考えられる。クロスフロー濾過(CFF)カラムなどのプラグ流反応器での抽出は、ユニット操作の数を低減させるが、抽出を完了するのに必要な滞留時間を増大させると考えられる。滞留時間の増大は、微小球又は医学的に活性な薬剤を分解する可能性がある。要するに、溶媒の抽出は、水の量、ユニット操作の数、及び/又は抽出のための滞留時間の間でトレードオフをもたらし得る。本発明の技術は、優れた特性を持つ微粒子を生成しながら、これらのトレードオフの間のバランスをとる。
【0014】
図1に示されるように、実施形態は、複数の微粒子における溶媒濃度を低減させるための方法100を含み得る。微粒子は、医学的に活性な薬剤を含有する生分解性微小球を含
んでいてもよい。例えば医学的に活性な薬剤は、患者の体内で医学的に活性なインスリン又はグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)タンパク質などのタンパク質を含んでいてもよい。その他の医学的に活性な薬剤は、インスリン類似体(即ち、1種又は数種のアミノ酸がその他のアミノ酸によって置き換えられたインスリン)、ペプチドホルモン、インスリン誘導体(即ち、抗体、抗体断片、バイオポリマーなどの担体タンパク質に結合されたインスリン)、ポリヌクレオチド及びその誘導体、ポリヌクレオシド及びその誘導体、疎水性又は両親媒性である小分子治療薬、生物製剤、タンパク質、ペプチド、及びこれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。
【0015】
微小球が患者に皮下注射される場合、医学的に活性な薬剤は、溶解する微小球によって徐々に放出される。医学的に活性な薬剤が徐々に放出されると、注射と注射の間の時間を延ばすことができ、その結果、より低い注射頻度になる。医学的に活性な薬剤がインスリンを含む場合、インスリンは、ポリエチレングリコール単位を、インスリン上のある特定の反応性アミノ基に共有結合することによって、PEG化されていてもよい。PEG化されたインスリンは、本願明細書に援用する米国出願第10/553,570号に記載されている。さらに、生分解性微小球は、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)を含んでいてもよい。PLGAは、人体に投与するための、FDA認証ポリマーである。PLGAは、人体によって共に安全に代謝されることができる乳酸及びグリコール酸に分解し得る。いくつかの実施形態では、微粒子中の溶媒は、ハロゲン化有機溶媒を含んでいてもよい。例えばハロゲン化有機溶媒は、塩化メチレンを含んでいてもよい。
【0016】
微小球は、複数の医学的に活性な薬剤を含んでいてもよい。複数の医学的に活性な薬剤は、実施形態における薬物、タンパク質、及びその他の化合物を含んでいてもよい。単一の微小球は、複数の医学的に活性な薬剤を含んでいてもよい。あるいは、第1の複数の微小球は、第1の医学的に活性な薬剤を含んでいてもよく、第2の複数の微小球は、第2の医学的に活性な薬剤を含んでいてもよい。第3の複数の微小球は、第3の医学的に活性な薬剤を含んでいてもよく、以下同様である。医学的に活性な薬剤のそれぞれが同じ微小球中に存在しても存在していなくても、第1の医学的に活性な薬剤の総量は、第2の医学的に活性な薬剤の総量と同じにすることができる。医学的に活性な薬剤のそれぞれが同じ微小球中に存在しても存在していなくても、第1の医学的に活性な薬剤の総量は、第2の医学的に活性な薬剤の総量と異ならせることができる。医学的に活性な薬剤のそれぞれは、同じ又は異なる放出時間を有することができる。微小球は、異なる生分解性材料から作製された微小球を含んでいてもよい。
【0017】
方法100は、複数の微粒子及び溶媒を含む混合物を水と接触させる工程を伴ってもよく、水性懸濁液102を形成することができる。水性懸濁液を形成する工程は、通常なら水性懸濁液の水に溶解し得る医学的に活性な薬剤の量を低減させるように、微粒子を硬化させることができる。溶媒の第1の部分は、水性懸濁液の水に溶解し又は水に抽出され、複数の微粒子中の溶媒濃度を混合物中の第1の溶媒濃度から水性懸濁液中の第2の溶媒濃度まで低減させることができる。混合物中の第1の溶媒濃度は、1〜50重量%の間、5〜25重量%の間、又は10〜20重量%の間(例えば、15重量%)であってもよい。懸濁液中の第2の溶媒濃度は、1〜10重量%の間、1〜5重量%の間、又は約2重量%であってもよい。
【0018】
微粒子混合物と水との接触と共に、方法100は、水性懸濁液を濃縮ユニット104に移送する工程を含んでいてもよく、そこでさらに複数の微粒子中の溶媒濃度を第2の溶媒濃度から第3の溶媒濃度まで低減させることができる。いくつかの実施形態では、濃縮ユニットは、微粒子を除去することなく水及び溶媒を濃縮ユニットから除去し得る、クロスフロー濾過ユニットを含んでいてもよい。第3の溶媒濃度への低減は、追加の水を、濃縮ユニット内の水性懸濁液に導入する工程を含んでいてもよい。この低減は、水の少なくと
も一部と溶媒の少なくとも一部とを、濃縮ユニット内の水性懸濁液から除去する工程も含んでいてもよい。濃縮ユニットにおいて、追加の水は、水よりも遅い速度で導入されてもよく、溶媒は濃縮ユニットから除去されて、第3の溶媒濃度を持つ微粒子濃縮物を形成する。微粒子濃縮物中の第3の溶媒濃度は、約0.5重量%であってもよい。微粒子濃縮物は、微小球を約1体積%以上含んでいてもよい。
【0019】
実施形態で、方法100は、微粒子濃縮物を洗浄ユニット106に移送する工程であって、そこで微粒子濃縮物は洗浄溶液と接触させられて、第4の溶媒濃度を持つ洗浄済み微粒子のアマルガムを形成することができる工程をさらに含んでいてもよい。洗浄済み微粒子のアマルガムの第4の溶媒濃度は、1重量%以下、0.1重量%以下、又は0.03重量%以下(即ち、300ppm)になり得る。洗浄溶液は、無機塩基を含んでいてもよい。この無機塩基は、水酸化物又は炭酸塩を含んでいてもよい。例えば無機塩基は、水酸化ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムであってもよい。無機塩基の濃度は、0.1〜10w/w%、又は0.1〜1.0w/w%であってもよい。特定の理論に拘泥するものではないが、微小球への無機塩基の添加は、微小球上の分子を脱プロトン化し、微小球に負電荷を残すと考えられる。負に帯電した微小球は、微小球の凝集を助長させる引力を、相殺する反発力をもたらし得る。
【0020】
洗浄ユニットは、目標とする直径を有する微粒子の第1の群を、目標とする直径の範囲外のサイズを有する微粒子の第2の群から分離することもできる。目標とする直径は、実施形態に応じて10μm〜90μm、20μm〜70μm、又は25μm〜63μmに及んでもよい。微粒子の平均直径は、30μm〜50μmの間、30μm〜40μmの間、又は約38μmであってもよい。第2の群からの第1の群の分離は、洗浄ユニットでの多孔質スクリーンの積層体を含んでいてもよい。微粒子は、分離の効率に応じて、25μmの、低いほうの目標とする直径よりも小さい直径を持つ、いくらかの粒子を含んでいてもよい。低いほうの目標とする直径よりも小さい直径を持つ微粒子は、合計で、微粒子の総数の5体積%未満、2体積%未満、又は1体積%未満であってもよい。
【0021】
加えて、方法100は、洗浄済み微粒子のアマルガムを乾燥する工程108を含んでいてもよく、低減された溶媒濃度を持つ複数の微粒子を形成することができる。低減された溶媒濃度は、第4の溶媒濃度以下であってもよい。乾燥操作の開始時の、微粒子中の溶媒のより高い量は、乾燥機内で、凝集した微粒子を、よりもたらし易くなる可能性がある。したがって、ほとんどの溶媒濃度の低減は、乾燥前に生ずるべきである。方法100のこれらの操作は、溶媒濃度を第1の溶媒濃度から、低減された溶媒濃度まで低減するように、一緒に作用することができる。
【0022】
実施形態は、複数の微粒子中の溶媒濃度を低減させるためのシステムも含んでいてもよい。図2は、例示的なシステム200を示す。水相混合タンク202、油相混合タンク204、及び乳化機206が、微粒子又は微小球を生成する。また、微粒子又は微小球は、その他の手段によって生成されてもよく、本明細書で論じられる微粒子又は微小球のいずれかであってもよい。同様に溶媒は、本明細書に記載される任意の溶媒であってもよい。
【0023】
微粒子は、溶媒抽出タンク208に添加されてもよい。溶媒抽出タンク208では、複数の微粒子及び溶媒を含む混合物が水と接触させられて、水性懸濁液を形成することができる。溶媒抽出タンク208は、水溶液中の微粒子が溶媒抽出タンク208の底部に沈降しないようにするための混合機を含んでいてもよい。混合速度は、泡の形成を最小限に抑えるように低下させることができる。水は、抽出水タンク210から入ってもよい。溶媒の第1の部分が、水性懸濁液の水に溶解し又は抽出されて、複数の微粒子中の溶媒濃度を混合物中の第1の溶媒濃度から水性懸濁液中の第2の溶媒濃度まで低減させてもよい。
【0024】
システム200は、溶媒抽出タンク208に流体連通している濃縮ユニットも含んでいてもよい。濃縮ユニットは、複数の微粒子中の溶媒濃度をさらに、第2の溶媒濃度から第3の溶媒濃度まで低減させてもよい。この低減は、追加の水を、濃縮ユニット内の水性懸濁液に導入する工程を含んでいてもよい。この低減は、水の少なくとも一部及び溶媒の少なくとも一部を、濃縮ユニット内の水性懸濁液から除去する工程も含んでいてもよい。追加の水は、水よりも遅い速度で導入されてもよく、溶媒は、濃縮ユニットから除去される。第3の溶媒濃度を持つ微粒子濃縮物が形成され得る。
【0025】
濃縮ユニットは、第2の溶媒抽出タンク212に流体連通しているクロスフロー濾過カラム210を含んでいてもよい。クロスフロー濾過カラム210は、微粒子を除去することなく、水の一部及び溶媒の一部を第2の溶媒抽出タンク212から除去することができる。廃棄物流は、従来の廃水処理設備に行くには十分に低いと考えられる水中濃度で溶媒を含む可能性がある。例えば廃棄物流は、塩化メチレンを約1.7%、又は塩化メチレンを0.03%〜1.4%の間で含む可能性がある。しばしば、廃水処理設備の限度は、絶対量に基づき、濃度に基づくものではない。大規模にプロセシングすることにより、溶媒は活性炭床上に収集され得、次いでリサイクルの現場に輸送され得る。
【0026】
システム200は、微粒子濃度を濃縮ユニットから受容するように適合された洗浄ユニットをさらに含んでいてもよい。洗浄ユニットでは、微粒子濃縮物が洗浄溶液と接触させられることができ、第4の溶媒濃度を持つ洗浄済み粒子のアマルガムを形成することができる。洗浄溶液は、本明細書に記載される任意の洗浄溶液であってもよい。洗浄ユニットは、目標とする直径を有する微粒子の第1の群を、目標とする直径の範囲外のサイズを有する微粒子の第2の群から分離することができる、多孔質スクリーンの積層体を含んでいてもよい。目標とする直径は、本明細書で論じられる任意の目標とする直径であってもよい。
【0027】
洗浄ユニットは、低減された溶媒濃度を持つ乾燥済み微粒子を形成するように、アマルガム洗浄済み微粒子から水及び溶媒を蒸発させる、真空ユニット214も含んでいてもよい。洗浄ユニットは、水及び溶媒の蒸気を真空ユニット214に運ぶ、乾燥ガス供給材をさらに含んでいてもよい。乾燥ガス供給材は、例えば、乾燥窒素ガス、不活性ガス、又は実質的に酸素を有さないガスもしくはガスの混合物を含んでいてもよい。システム200は、低減された溶媒濃度を持つ乾燥済み微粒子を受容するための、生成物ビン216も含んでいてもよい。これらの又はその他の実施形態では、システム200は、洗浄ユニットから洗浄済み微粒子のアマルガムを受容し、アマルガムを乾燥して、低減された溶媒濃度を持つ乾燥済み微粒子を形成するように適合された、乾燥ユニットをさらに含んでいてもよい。システム200内の溶媒濃度は、本明細書で論じられる溶媒濃度と同じでも異なる濃度であってもよい。
【0028】
図3は、医学的に活性な薬剤を持つ複数の生分解性微小球を調製する方法300であって、生分解性微小球が、低減されたレベルの調製溶媒を有している方法の実施例を示す。微小球、医学的に活性な薬剤、及び調製溶媒は、本明細書で論じられるいずれかであってもよい。方法300は、複数の生分解性微小球及び調製溶媒を含む混合物を水と接触させる工程であって、水性懸濁液を形成することができる工程302を含んでいてもよい。調製溶媒の第1の部分は、水性懸濁液の水に溶解することができ、複数の生分解性微小球中の溶媒濃度を、混合物中の第1の溶媒濃度から水性懸濁液中の第2の溶媒濃度まで低減させることができる。
【0029】
加えて方法300は、水性懸濁液を濃縮ユニットに移送する工程304であって、複数の生分解性微小球中の溶媒濃度を第2の溶媒濃度から第3の溶媒濃度までさらに低減させる工程を含んでいてもよい。この低減は、追加の水を、濃縮ユニット内の水性懸濁液に導
入する工程を含んでいてもよい。この低減は、水の少なくとも一部及び調製溶媒の少なくとも一部を、濃縮ユニット内の水性懸濁液からを除去する工程も含んでいてもよい。追加の水は、水よりも遅い速度で導入されてもよく、溶媒は、濃縮ユニットから除去されて、第3の溶媒濃度を持つ生分解性微小球濃縮物を形成する。
【0030】
さらに、方法300は、生分解性微小球濃縮物を洗浄ユニットに移送する工程306であって、生分解性微小球濃縮物が洗浄溶液と接触させられて、第4の溶媒濃度を持つ洗浄済み生分解性微小球のアマルガムを形成する工程を含んでいてもよい。第1、第2、第3、及び第4の溶媒濃度は、本明細書に記載される濃度と同じでも異なっていてもよい。同様に洗浄溶液は、本明細書に論じられる任意の洗浄溶液であってもよい。
【0031】
方法300は、低減された溶媒濃度を持つ複数の生分解性微小球を形成するための、アマルガム洗浄済み生分解性微小球を乾燥する工程308も含んでいてもよい。これらの操作は、溶媒濃度を混合物中の第1の溶媒濃度から低減させて、複数の生分解性微小球中で低減された溶媒濃度になるように、一緒に作用することができる。
【0032】
実施形態は、真空ユニットで乾燥されて、注射器に充填するための粉末にされることができる組成物も含んでいてもよい。組成物は複数の生分解性微小球を含んでいてもよく、これら複数の生分解性微小球は、医学的に活性化された薬剤を含んでいてもよい。これら又はその他の実施形態では、組成物はまた、溶媒(例えば、塩化メチレン)を、0.03重量%以下の濃度又は本明細書で論じられる任意の濃度で含んでいてもよい。組成物は、無機塩基を含む洗浄溶液をさらに含んでいてもよい。無機塩基は、0.1〜1w/w%の濃度又は本明細書で論じられる任意の濃度を有していてもよい。微小球、医学的に活性化された薬剤、溶媒、洗浄溶液、及び無機塩基は、本明細書で既に記載されたものと同じであってもよい。組成物は、窒素ガス、不活性ガス、又は実質的に酸素を含まない任意のガスもしくはガスの混合物を、さらに含んでいてもよい。組成物は、洗浄ユニット又は乾燥機内に存在していてもよい。
【0033】
乾燥済み微小球の粉末は、バイアル、注射器、又はその他の容器内に充填されてもよい。次いで粉末は、キャリア液体と混合されて、注射器によって患者に注射され得る注射可能な懸濁液を形成してもよい。粉末及びキャリア液体は、注射の直前に混合されてもよい。粉末及びキャリア液体は、それぞれ、デュアルバレルシリンジの1つのバレル内にあってもよく、又はシングルバレルシリンジの単一バレル内にあってもよい。キャリア液体は、水を含んでいてもよい、生体適合性の液体であってもよい。このキャリア液体は、等張性であってもよく、注射部位付近の組織への損傷を低減させることができる。キャリア液体は、水を含んでいてもよく、保存料を含んでいてもよい。これらの保存料は、微生物の増殖を防止し又は低減させることができ、その潜在的使用に関連した期間にわたって微小球懸濁液を維持することもできる。キャリア液体は、微小球の放出動態に影響を及ぼさないと考えられる。さらにキャリア液体は、微小球をより容易に分散させることが可能な界面活性剤を含んでいてもよい。キャリア液体は、微小球の表面に浸潤細孔を含む微小球を、濡らすことができる。次いで濡れた微小球は患者に注射され得、微小球は分解し、医学的に活性な薬剤を徐々に放出する。医学的に活性な薬剤が放出された後、別の用量の、濡れた微小球が、ある持続時間で患者に再び注射されてもよい。この持続時間は、1週間又は1週間より長くてもよい。
【実施例1】
【0034】
図2に戻って参照すると、PEG化インスリンを含有する微小球のエマルジョンが、水相混合タンク202、油相混合タンク204、及び乳化機206で生成された。水相と油相との比は、1:1〜2.5:1まで変化させた。水相と油相との比が1:1であるエマルジョンの場合、塩化メチレン濃度は50%であった。2.5:1の比であるエマルジョ
ンの場合、塩化メチレン濃度は28%であった。エマルジョンは1次抽出タンク208に送られ、そこではタンクに進入するときに、抽出水タンク210からの滅菌濾過済み抽出水と、エマルジョンのリットルあたり抽出水5.6Lの比で連続的に混合された。1次抽出タンク208は混合され、1次及び2次抽出工程中に均質な懸濁液を維持した。
【0035】
1次抽出懸濁液は、0.25L/分の流量で、1次抽出タンク208から2次抽出タンク212にポンプ送出された。1次抽出懸濁液は、2次抽出タンク212に進入する前に1次抽出懸濁液のリットル当たり4.8Lの抽出水の比で、追加の抽出水とインラインで組み合わされた。2次抽出タンク212では、微小球は連続的に濃縮されていた。2次抽出タンク212は混合されて、均質な懸濁液を維持した。
【0036】
微小球が2次抽出タンク212に添加されるにつれ、懸濁液は、クロスフロー濾過(CFF)フィルター210を通してタンクの外にポンプ送出され、CFF管を通して線速度43cm/秒に等しい流量で元のタンクに戻された。2次抽出タンク212に戻る流れを制限することにより、CFF210に圧力を加えた。循環流の少量が、セラミックCFF膜を経て廃棄物に濾別され、一方、微小球は、循環流中に保持された。廃棄物流の流量は、1L/分〜6.3L/分まで変化した。廃棄物流中の塩化メチレンの濃度は、0.03%〜1.4%に及んだ。廃棄物流は、都市下水システムに送られた。この実施例の規模及び10倍大きい規模で、廃棄物流は、典型的な都市下水システムで処分され得る。水は、水と同じ速度でCFF 210を介して濾別され、微小球は2次抽出タンクに添加され、2次抽出タンク212内部で一定の作業体積を維持した。微小球濃縮プロセスは、全ての微小球が2次抽出タンク212に添加されるまで継続された。
【0037】
濃縮は、追加の供給材なしで継続され、抽出浴の体積を低減させ、微小球濃度1.0%(供給質量/体積)を実現した。適切な体積が到達されたら、廃水は一定体積を維持するように同じ速度でCFF 210を介して除去されるので、新鮮な水が2次抽出タンク212に供給された。水は、ダイアボリューム当たり15分の速度で交換され、又は作業体積分を完全に交換した(例えば、15Lの作業体積に関して1L/分)。抽出水タンク210及び2次抽出タンク212は、60分かけて22℃〜35℃に加熱され、35℃で保持されて、溶媒抽出を支援した。
【0038】
8.5ダイアボリュームの水が交換された後、供給材及び濾液の流れが止められた。微小球をCFFループから回収するために、水が、抽出水タンク210からループ入口に直接供給された。CFFシステムの滞留体積の2倍に等しい水の体積が、ループを通して2次抽出タンク212内にポンプ送出され、したがって全ての微小球が2次抽出タンク212に収集された。微小球を35℃で1時間保持して溶媒抽出を終了した後、浴全体は5℃に冷却された。
【0039】
微小球の浴が最終温度5℃に到達した後、2次抽出懸濁液は、2次抽出タンク212を加圧しかつ微小球を上部ポートに通して乾燥機内へとローディングすることによって、SWECO(商標)振動分離機/乾燥機214に移送された。乾燥機が振動している間、懸濁液は、スカルピング又は上部スクリーンであって63μm間隔を持つものを通して重力排水される。生成物又は底部のスクリーンは、25μmよりも大きい残りの微小球を捕捉し、液体とサイズが小さい微小球とを廃棄物ドレーンに通して落下させる。
【0040】
水性炭酸水素ナトリウムは、SWECO(商標)濯ぎ溶液タンク218に、0.5%w/wの濃度で、100gの供給材当たり2.2Lの最小体積で添加された。溶液は混合されて炭酸水素ナトリウムを溶解し、同時に5℃に冷却された。2次抽出浴の全体が乾燥機に供給された後、乾燥機のドレーンが閉鎖された。濯ぎ溶液タンク218からの濯ぎ溶液が乾燥機に供給され、最少30秒間保持された。濯ぎ溶液が排出され、プロセスが2回繰
り返された。
【0041】
次いで湿潤ケーキのみがスクリーン上に残されるまで(即ち、液体は残っていない)、乾燥機から排水させた。次いで乾燥機は任意の換気口及び供給ラインから切り離され、ドレーンポートを介して真空が引かれ、水を湿潤ケーキから蒸発させた。乾燥窒素パージが乾燥機の上部に供給され、水蒸気と置き換えられた。振動は、ローディング、濯ぎ、及び乾燥の最中も含めたプロセス全体にわたって連続的に存在させた。乾燥後、乾燥機の生成物プラグが開放され、微小球を生成物ビン216に流入させた。
【実施例2】
【0042】
PEG化インスリンの代わりに非PEG化インスリンを含有する微小球のエマルジョンを用いた状態で、実施例1が繰り返された。
【実施例3】
【0043】
PEG化インスリンの代わりにGLP−1タンパク質を含有する微小球のエマルジョンを用いた状態で、実施例1が繰り返された。
【実施例4】
【0044】
2種の異なる医学的に活性な薬剤を含有するエマルジョンを用いた状態で、実施例1が繰り返された。
【実施例5】
【0045】
微小球は、水性炭酸水素ナトリウム溶液で処理され、未処理の微小球と比較された。処理された微小球は、冷やした0.5%の炭酸水素ナトリウム溶液で3回濯がれた。処理された、及び未処理の微小球は共に、2.5時間乾燥させ、次いでSWECO(商標)乾燥機内で13時間、大気圧で振動させた。サイズが最大3mmの硬質クランプが、図4AのSEM画像に示されるように、未処理の微小球バッチで形成された。はるかに少なく小さいクランプは、図4BのSEM画像に示されるように、処理された部分で形成された。この実施例は、炭酸水素ナトリウム溶液で濯いだ後の、微小球の低減された凝集を示す。
【産業上の利用可能性】
【0046】
いくつかの実施形態について記載してきたが、本発明の精神から逸脱することなく、様々な修正例、代替構成、及び均等物が使用されてもよいことが、当業者に理解されよう。加えて、いくつかの周知のプロセス及び要素については、本発明を不必要に曖昧にするのを回避するために、記載していない。加えて、任意の特定の実施形態の詳細は、その実施形態の変形例で必ずしも提示されなくてもよく、又はその他の実施形態に付加されてもよい。
【0047】
ある範囲の値が提供される場合、その範囲の上限と下限との間に介在する各値は、文脈が他の内容を明示しない限り下限の単位の10分の1まで、同様に特に開示されることが理解される。記述された範囲内の、任意の記述された値又は介在する値と、その記述された範囲内の、任意のその他の記述された又は介在する値との間の、より小さい範囲のそれぞれが、包含される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立して、その範囲に含まれ又は除外されてもよく、各範囲は、より小さい範囲にいずれかの限度が含まれ、いずれの限度も含まれず、又は両方の限度が含まれている場合、やはり本発明の範囲内に包含されるが、これは記述された範囲における任意の特に除外された限度に支配される。記述された範囲が限度の1つ又は両方を含む場合、それらの含まれる限度のいずれか又は両方を除外する範囲も含まれる。
【0048】
本明細書及び添付される特許請求の範囲で使用される、単数形「a」、「an」、及び
「the」は、文脈がその他の内容を明示しない限り、複数形を含む。したがって、例えば「方法(a method)」と言った場合、複数のそのような方法を含み、「微小球(the microsphere)」と言った場合、1つ又は複数の微小球、及び当業者に公知のそれらの均等物などへの言及を含む。ここで本発明について、明瞭化及び理解を目的として詳述してきた。しかし、添付される特許請求の範囲内で、ある変更及び修正を実施してもよいことが理解されよう。
図1
図2
図3
図4(A)】
図4(B)】