(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6555733
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】オーディオ機器用アクセサリ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20190729BHJP
G11B 33/08 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
H04R1/00 318A
G11B33/08 D
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-101930(P2019-101930)
(22)【出願日】2019年5月31日
【審査請求日】2019年5月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310016175
【氏名又は名称】ティグロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】特許業務法人エム・アイ・ピー
(72)【発明者】
【氏名】沖野 賢太郎
【審査官】
篠田 享佑
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−53147(JP,A)
【文献】
特開2008−201961(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/002637(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/050817(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00
G11B 33/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ機器用のアクセサリである、帯電防止被膜が形成されたフッ素ゴム製のOリング。
【請求項2】
オーディオ機器用のインシュレーターである、帯電防止被膜が形成されたフッ素ゴム製のOリング。
【請求項3】
オーディオ機器用のアクセサリを製造する方法であって、フッ素ゴム製のOリングを帯電防止剤の溶液に浸漬した後に乾燥させることを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ機器用のアクセサリに関し、より詳細には、インシュレーターの機能を有するアクセサリに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アンプ、スピーカー、CDプレイヤー、レコードプレイヤーといったオーディオ機器は、振動に弱く、振動を多く受けると、音質が劣化することが知られている。オーディオ機器は、いずれもそれ自体が内部に振動源を有していることに加え、その設置面を介して外部からの振動の影響を受け易いことから、原音の再現を追及するオーディオマニアの間では、機器の内部振動を吸収するとともに、外部からの振動を遮断する目的で、オーディオ機器と設置面の間にインシュレーターを配置することが常識となっている(例えば、特許文献1)。
【0003】
現在、オーディオ機器用のインシュレーターとして、金属、木材、ゴム、樹脂、セラミックといった様々な材料を用いた商品が流通しており、その形状にも、円板型、キューブ型、円錐形のスパイクを用いて一点で支持するタイプなど、多くのバリエーションがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−126016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規なオーディオ機器用アクセサリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、オーディオ機器用のインシュレーターとして有望な新規の素材を見出すべく、様々な素材について数多くの聴感試験を行った結果、フッ素ゴム製のOリングをインシュレーターとして使用した場合に癖の無い自然なサウンドが得られることを発見した。その後、本発明者は、さらに、検討を進める過程で、フッ素ゴム製のOリングが持つ聴感上の問題を克服する方法を発見し、本発明に至ったのである。
【0007】
すなわち、本発明によれば、オーディオ機器用のアクセサリである、帯電防止被膜が形成されたフッ素ゴム製のOリングが提供される。
【発明の効果】
【0008】
上述したように、本発明によれば、インシュレーターの機能を有する新規なオーディオ機器用アクセサリが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のオーディオ機器用アクセサリの製造方法を示すフローチャート。
【
図2】本実施形態のオーディオ機器用アクセサリの使用例を示す図。
【
図3】本実施形態のオーディオ機器用アクセサリの使用例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図面に示した実施の形態をもって説明するが、本発明は、図面に示した実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
図1に示すフローチャートに基づいて、本発明の実施形態であるオーディオ機器用アクセサリの製造方法を説明する。
【0012】
(工程1)
フッ素ゴム製のOリングを用意する。フッ素ゴムは、優れた耐熱性、耐油性、耐圧性、耐薬品性を有するゴムであり、通常、フッ化ビニリデン系のフッ素ゴムがOリングに用いられる。
【0013】
(工程2)
帯電防止剤の溶液(以下、帯電防止液という)を用意する。帯電防止剤とは、絶縁体の表面に対してわずかな導電性を付与することにより静電気の蓄積を防止する薬剤である。帯電防止剤の多くは界面活性剤を含有しており、物体表面に形成された界面活性剤の膜は、空気中の水分を吸着することで物体表面の電気抵抗を下げ、表面の帯電を防止する。
【0014】
(工程3)
帯電防止液にフッ素ゴム製Oリングを浸漬する。なお、別の実施形態では、帯電防止液をスプレーや刷毛を使用してOリングに直接塗布してもよい。
【0015】
(工程4)
帯電防止液の中からフッ素ゴム製Oリングを取り出して自然乾燥し、帯電防止液の溶媒を揮発させる。その結果、本実施形態のオーディオ機器用アクセサリとして、表面に帯電防止剤の被膜(以下、帯電防止被膜という)が形成されたフッ素ゴム製Oリングが得られる。
【0016】
続いて、本実施形態のオーディオ機器用アクセサリ(すなわち、帯電防止被膜付きフッ素ゴム製Oリング)の使用方法を説明する。
【0017】
第1に、本実施形態の帯電防止被膜付きフッ素ゴム製Oリングは、オーディオ機器用のインシュレーターとして使用することができる。使用方法は、従来のインシュレーターと同じであり、オーディオ機器と設置面の間にOリングを配置する。
図2(a)は、本実施形態のOリング10をアンプのインシュレーターとして使用した状態を例示的に示し、
図2(b)は、本実施形態のOリング10をスピーカーのインシュレーターとして使用した状態を例示的に示す。
【0018】
第2に、本実施形態の帯電防止被膜付きフッ素ゴム製Oリングは、いわゆる「鳴き止め」に利用することができる。具体的には、鳴きを止めたい部分に適切な内径の本実施形態のOリング10を嵌めてきつく締め付けることで、その部分の共鳴を防ぐという方法である。
図3(a)は、RCAケーブルのコネクターに本実施形態のOリング10を嵌めた状態を例示的に示し、
図3(b)は、ワイアレスイヤフォンの筐体に本実施形態のOリング10を嵌めた状態を例示的に示す。この他にも、各種オーディオ機器のノブ、オーディオラックの支柱、スピーカースタンドの支柱、といった円柱状の部品に本実施形態のOリング10を嵌めることで、鳴きを止めて音質を向上させることができる。
【0019】
最後に、本実施形態の帯電防止被膜付きフッ素ゴム製Oリングが聴感にもたらす効果について説明する。
【0020】
インシュレーターとしてのOリングは、既存のインシュレーターと比較して体積が格段に小さいため、その分、材料(ゴム)に由来する共振成分が音信号に与える影響が小さくなるという利点を持つ。また、インシュレーターとしてのOリングは、その接地面積が非常に小さいため、振動の遮断性に優れているという利点を持つ。
【0021】
その中でも、フッ素ゴム製のOリングは、他のゴム製のOリングに比べて、ゴムに由来する共振成分(付帯音)が非常に少ないという特徴を有し、癖の無い自然な聴感が得られるという利点がある。
【0022】
そのようなフッ素ゴム製Oリングに対して、さらに、帯電防止処理を施すことによって、その理由は不明であるが、帯電防止処理を施さない場合と比較して、倍音成分が減少し、音の歪みが低減されるという効果を奏する。
【0023】
以上、本発明について実施形態をもって説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、様々な変更、修正、改良等が可能である。
【実施例】
【0024】
以下、本発明のオーディオ機器用アクセサリ(すなわち、帯電防止被膜付きフッ素ゴム製Oリング)について、実施例を用いてより具体的に説明を行なうが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。
【0025】
<帯電防止被膜付きフッ素ゴム製Oリングの作製>
帯電防止液(帯電防止剤をイソプロプルアルコールに溶解してなる液)と、フッ素ゴム製のOリングを用意し、Oリングを帯電防止液に軽く浸した後、アルコールが揮発するまで自然乾燥することによって、帯電防止被膜付きフッ素ゴム製Oリング(以下、実施例という)を得た。
【0026】
<聴感試験1>
オーディオ機器(ネットワークプレーヤー N-50、パイオニア株式会社製)の本体を支持する4個の脚部と設置面の間に実施例のOリングを一つずつ配置した状態で、ハイレゾ音源を再生し、その音色を、音響機器開発のエンジニアに試聴してもらった。
【0027】
比較例として、帯電防止被膜が形成されていない4種類のOリング(比較例1〜4)とマグネシウム製の円板型インシュレーター(比較例5)を使用して、上述したのと同様の条件で聴感試験を行った。なお、本実験に使用したOリングとインシュレーターの詳細を下記表1にまとめて示す。
【0028】
【表1】
【0029】
<評価結果>
試聴を担当したエンジニアは、インシュレーターを配置しない状態での再生音を基準として、インシュレーターとして実施例および比較例1〜5を配置した場合の聴感について、以下のように評価した。
【0030】
(比較例1:ニトリルゴム製Oリング)
音抜けが悪く、ダイナミックレンジ(帯域)が狭く、解像度が甘く、音がダブついており、高域部に違和感のある付帯音を感じる。
【0031】
(比較例2:エチレンプロピレン製Oリング)
解像度とレスポンスは良いが、音が高域に寄ってしまってバランスが崩れており、余韻感もかなり薄い。
【0032】
(比較例3:シリコンゴム製Oリング)
音のバランスが高域寄りで低域が乏しく、ダイナミックレンジ(帯域)が狭い。
【0033】
(比較例4:フッ素ゴム製Oリング)
音の解像度や上下左右の広がり感が良く、情報量や前後の厚みが増し、全帯域のバランスが良く、癖の無い自然な音質。ただし、解像度が増した分、余韻感がやや少なく淡泊なサウンド。また、音に若干の歪みがある。
【0034】
(実施例:帯電防止被膜付きフッ素ゴム製Oリング)
音の密度が濃く、音が滑らかで、音の輪郭がハッキリしており、余韻感も十分で、ハイファイなサウンド感。また、比較例4で感じた音の歪みが消えている。
【0035】
(比較例5:マグネシウム製円板型インシュレーター)
音の解像度や広がり感は増すが、実施例と比べると、若干マグネシウム固有の音がのっている感じがする。
【0036】
<聴感試験2>
帯電防止被膜付きフッ素ゴム製のOリングをワイアレスイヤフォン(AirPods、アップル社製)の筐体の棒状部分に嵌めた状態で、ハイレゾ音源を再生し、その音色を、音響機器開発のエンジニアに試聴してもらったところ、音の解像度や低域の量感が良くなり、イヤフォン特有の薄い音が軽減され、生々しいサウンドになった、という評価を得た。
【符号の説明】
【0037】
10…帯電防止被膜付きフッ素ゴム製Oリング
【要約】
【課題】本発明は、新規なオーディオ機器用アクセサリを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明によれば、オーディオ機器用のアクセサリである、帯電防止被膜が形成されたフッ素ゴム製のOリングが提供される。また、本発明によれば、オーディオ機器用のインシュレーターである、帯電防止被膜が形成されたフッ素ゴム製のOリングが提供される。また、本発明によれば、オーディオ機器用のアクセサリを製造する方法であって、フッ素ゴム製のOリングを帯電防止剤の溶液に浸漬した後に乾燥させることを特徴とする製造方法が提供される。
【選択図】
図1