(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555783
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】テーリング堆積物ツール
(51)【国際特許分類】
E21C 50/00 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
E21C50/00
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-525318(P2016-525318)
(86)(22)【出願日】2014年7月10日
(65)【公表番号】特表2016-526629(P2016-526629A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】NL2014050468
(87)【国際公開番号】WO2015005785
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2017年5月23日
(31)【優先権主張番号】2011157
(32)【優先日】2013年7月12日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】507009331
【氏名又は名称】アイエイチシー・ホランド・アイイー・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】ファン ドゥースブルク, ヨハネス バルトロメウス
(72)【発明者】
【氏名】ルシエール, ピーテル アブラハム
【審査官】
西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−518102(JP,A)
【文献】
米国特許第04391468(US,A)
【文献】
米国特許第07765725(US,B2)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0234552(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0284068(US,A1)
【文献】
実開平05−071237(JP,U)
【文献】
特開昭56−081738(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0193194(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 43/00
E21C 50/00
E02D 15/10
E02F 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
深海採掘方法であって、水域(4)の底(3)から物質を採掘する為に深海採掘システム(1)を準備するステップを含み、前記採掘システムは、
−水域の底からスラリを運搬する為にポンプシステム(6)と結合されたスラリライン(5)と、
−非有価スラリ部分を前記水域の前記底まで運搬する為に、前記スラリラインと連通し、前記スラリラインとは区別できる戻りライン(7)であって、前記底のすぐ近くに戻りライン出口(16)を有する、前記戻りライン(7)と、
前記戻りライン出口と結合された拡散装置(14)であって、前記水域の前記底にわたって移動する為の車両を備える、前記拡散装置(14)とを含み、
前記深海採掘方法は、前記水域の前記底にわたって、所望パターンで前記戻りライン出口を移動させる為に、前記車両と戻りライン出口とを結合するステップと、
制御された方式で前記水域の前記底にわたって前記非有価スラリ部分を拡散するステップを更に含む、深海採掘方法。
【請求項2】
前記採掘システムは、採掘された物質を処理する為のユニット(6)を含み、前記戻りラインは、前記処理ユニットを通じて前記スラリラインと連通する、請求項1に記載の深海採掘方法。
【請求項3】
前記物質は、ガスハイドレートを含む、請求項1〜2のいずれか一項に記載の深海採掘方法。
【請求項4】
水域(4)の底(3)から物質(2)を採掘する深海採掘システム(1)であって、前記システムは、
−前記水域の前記底からスラリを運搬する為にポンプシステム(6)と結合されたスラリライン(5)と、
−前記水域の前記底まで非有価スラリ部分を運搬する為に、更に、海底のすぐ近くに戻りライン出口(16)を有する為に、前記スラリラインと連通し、前記スラリラインと区別可能な戻りライン(7)と、
−制御された方式で前記水域の前記底にわたって前記非有価スラリ部分を拡散する為に前記戻りライン出口と結合された拡散装置(14)であって、所望のパターンで前記水域の前記底にわたって前記戻りライン出口を移動させる為に前記戻りライン出口に結合された、前記水域の前記底にわたって移動させる為の車両を含む、前記拡散装置(14)と、
を含む、深海採掘システム。
【請求項5】
採掘された物質を処理する為のユニットを含み、前記処理ユニットを通じて前記戻りラインが前記スラリラインと連通される、請求項4に記載の深海採掘システム。
【請求項6】
前記拡散装置は、ブーム部材(15)を含み、前記戻りライン出口は、前記ブーム部材を通じて前記拡散装置に結合され、前記水域の前記底に関して前記出口を移動させる、請求項4または5に記載の深海採掘システム。
【請求項7】
前記車両は遠隔で制御可能である、請求項6に記載の深海採掘システム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、深海採掘方法に関し、この深海採掘方法は、水域の底から物質を採掘する為に深海採掘システムを準備するステップを含む。
【0002】
GB2495287は、海底に隣接した位置から海上に隣接した位置まで、スラリを運搬する為のライザシステムに関する。産出において融通がきくように、GB2495287は、第1ライザおよび第2ライザと、ライザの一つへとスラリを上に運搬する為のスラリポンプシステムと、ライザの一つへと廃水を下に戻す為の廃水ポンプシステムと、を設けることを教示する。スラリポンプシステム及び廃水ポンプシステムは、各ライザがスラリ用ライザまたは廃水用ライザの一方になるように、ライザの各々に選択的に接続可能である。
【0003】
WO 2010/092145 Alは、ライザ導管およびテーリング(尾鉱)流を有する他の例である。テーリングは、ちょうど、廃棄パイプを経て配置されている(
図3を参照)。作動中、テーリングは、蓄積し、注目現場が覆われるという問題を引き起こす場合がある。
【0004】
US2012/234552 Alは、クラスレート(包接化合物)堆積物から天然ガスを収穫する為のシステムに関する。パイプ又は管は、収穫位置から遠くに海に水を分散して戻す為に示唆されている。さらに、クラスレート堆積物から除去される場所で廃石を海底へと戻す為に、微粒子処分システムを通じて廃石を圧送することも示唆されている。依然として、経年的に廃石は蓄積し、容易に問題を引き起こす可能性がある。
【0005】
WO 2011/072963 Alは、水底でハイドレート堆積物を含むメタンを売買できる産出物に変換する方法に関する。
図2は、その現場までのテーリング堆積物用パイプを示す。再び、経年的に廃石が蓄積し、容易に問題を引き起こす可能性がある。
【0006】
US2009/284068 A1は、深海採掘システムのライザシステムにおけるスラリの流速をモニタし、調整する方法に関する。海底レベルで廃水を放出することが示唆されている。
【0007】
結論として、従来技術は、水だけというより廃石を処分する場合、それは、固定された場所で処分されるので、経年的に、廃石は蓄積し、容易に問題を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、効率の良い深海採掘方法を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、関係する問題が少なくとも部分的に解決されることで、既知の深海採掘方法を改善することである。
【0009】
また本発明の他の目的は、代用の深海採掘方法を提供することである。
【0010】
本発明の第1態様によると、水域の底から物質を採掘する為に深海採掘システムを準備するステップを含む深海採掘方法で実現されるが、この採掘システムは、
【0011】
−水域の底から前記スラリを運搬する為にポンプシステムと結合されたスラリラインと、
【0012】
−非有価スラリ部分を水域の底に運搬する為に、スラリラインと流体連通され、スラリラインとは区別できる戻りラインであって、戻りラインは前記底のすぐ近くに戻りライン出口を有する、戻りラインと、
【0013】
を含み、深海採掘方法は、制御された方式で、水域の底にわたって非有価スラリ部分を拡散するステップを更に含む。
【0014】
制御された方式で非有価スラリ部分を水域の底にわたって拡散するステップは、非有価スラリ部分が制御された方式で分散される点で、より効率良く採掘方法を実施できるが、制御された方式は、非有価スラリ部分が、水域の底から掘り出されるべきスラリを覆わないことを含む。制御された方式は、予測可能な方式で水域の底にわたって非有価スラリ部分が分散されることを確実にする。
【0015】
採掘方法の実施形態において、採掘システムは、採掘された物質を処理するユニットを含み、戻りラインは処理ユニットを通じてスラリラインと流体連通される。そのような処理ユニットは、船、海底プラットフォーム、支持されたプラットフォームのような浮動体の形をとってもよい。
【0016】
採掘方法の実施形態において、水域の底にわたって拡散するステップは、水域の底または海底にわたって、好ましくは所望のパターンで、戻り出口を移動させる工程を含む。海底にわたって戻り出口を移動させる工程は、水域の底にわたって非有価スラリ部分を分散させることを意図する。海底にわたって戻り出口を移動させる工程は、例えば、所望のパターンに沿って、好ましくは予測可能であるが、予測できない要素を有する海流によって引き起こされる意図された運動を伴ってもよい。明らかなことは、海流によって引き起こされる運動の場合、戻り出口の予測できない運動であるにも拘わらず、時間を超えて、非有価スラリ部分は一様な方式で分散されることである。
【0017】
物質はガスハイドレートを含んでもよい。
【0018】
本発明の更なる態様によると、これは、水域の底から物質を採掘する深海採掘システムで実現されるが、このシステムは、
【0019】
−水域の底から前記スラリを運搬するようにポンプと結合されたスラリラインと、
【0020】
−非有価スラリ部分を水域の底に運搬し、海底のすぐ近くの戻りライン出口を有するように、そのスラリラインと流体連通し、スラリラインと区別できる戻りラインと、
【0021】
−制御された方式で水域の底にわたって非有価スラリ部分を拡散する為に、その戻りライン出口に結合された拡散装置と、
【0023】
拡散装置は、制御された方式で水域の底にわたって非有価スラリ部分を拡散するので、非有価スラリが制御された方式で分散される点で効率良く採掘することを可能にするが、この制御された方式には、水域の底から掘り出されるべきスラリを非有価スラリ部分が覆わないことを含む。
【0024】
実施形態において、採掘システムは、採掘された物質を処理する為のユニットを含み、戻りラインは、この処理ユニットを通じてスラリラインと流体連通される。処理ユニットは、スラリを所望の部分と非有価スラリ部分とに分けるような任意の所望の処理をスラリに受けさせてもよい。
【0025】
深海採掘システムの実施形態において、拡散装置は、ブーム部材を含み、戻りライン出口は前記ブーム部材を通じて拡散装置と結合され、水域の底に関して出口を移動させる。
【0026】
深海採掘システムの実施形態において、拡散装置は、水域の底にわたって移動する為の車両であって、所望パターンで水域の底にわたって戻り出口を移動させる為に戻りライン出口と結合されたものを含む。戻り出口の海底にわたる移動は、非有価スラリ部分を水域の底にわたって分散させることを意図する。戻り出口の海底にわたる移動は、予測可能である。
【0027】
深海採掘システムの実施形態において、車両は遠隔で制御可能である。そのため、車両には制御手段が設けられ、それ自体知られた方式で車両を制御する。
【0028】
この特許出願において検討された様々な実施形態は、追加の有利な効果を与える為に組み合わせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下、添付図面に示された好ましい実施形態を参照して、本発明を説明する。
【0031】
【
図1】
図1は、本発明に従う採掘システムを側面図で示す。
【0032】
【
図2】
図2は、本発明に従う更なる採掘システムを側面図で示す。
【0033】
【
図3】
図3は、本発明に従う、もっと更なる採掘システムを側面図で示す。
【0034】
【
図4】
図4は、本発明に従う他の採掘システムを側面図で示す。
【0035】
図1には、深海採掘システム1が示されている。このシステム1は、水域4の底3、通常200〜3000m、より具体的には400〜2000mの深さの海底から物質を採掘するのに適している。
【0036】
深海採掘システム1は、スラリを運搬する為に、スラリライン5を含む。スラリは、海水と、掘り出された物質を含み、それ自体知られた掘り出し装置13によって底3から分離される。示された掘り出し装置13は、切断アーム11を有し、このアームには切断ヘッド12が設けられている。本願において、切断アーム11は、回転するように(hingeably)掘り出し装置本体10に結合されている。スラリラインは、ポンプシステム6に結合され、前記スラリを水域の底から運搬する。
【0037】
深海採掘システム1は、戻りライン7を含む。戻りライン7は、スラリを運搬するのに適しており、特に、水域4の底3まで非有価スラリ部分を運搬するのに適している。戻りライン7は、スラリライン5と流体連通している。戻りライン7は、スラリラインとは区別できる。戻りライン7は、海底3のすぐ近くに示されるような戻りライン出口16を有する。
【0038】
深海採掘システム1は、拡散装置14を含み、拡散装置14は、制御された方式で水域4の底3にわたって、非有価スラリ部分を拡散する為に、戻りライン出口16に結合されている。本願において、拡散装置14は、ブーム部材15を含む。戻りライン出口16は、水域4の底3に関して出口16を移動させる為に、前記ブーム部材15を通じて拡散装置14に結合されている。拡散装置14は、例えば、ブーム、遠隔操作車両(ROV)を有するクローラ(crawler)の形式をとってもよく、これが、所定経路またはドットパターンで、非有価スラリ部分を拡散させる。
【0039】
ポンプシステム6は、ポンプシステム6に必要なエネルギおよび制御を供給する為に、結合ライン9を経て船20に結合されている。本願において、ポンプシステム6は、一対の支持部材23によって支持され、これらの部材は、水域4の底3に置かれている。
【0040】
以下、
図1に示された実施形態とは異なる
図2−
図4の他の実施形態を説明する。
【0041】
図2において、深海採掘システム1は、スラリを運搬する為にスラリライン5を含む。スラリライン5は、船20に結合されている。深海採掘システム1は、戻りライン7を含む。戻りライン7も同様に船20に結合され、スラリが水上8のすぐ近くまで上方に運搬される。戻りライン7は、船20を経てスラリライン5と流体連通されている。採掘システム1は、採掘された物質を処理する為にユニット(図示せず)を含み、戻りラインは、この処理ユニットを通じてスラリラインと流体連通されている。本願において、このユニットは、船20に置かれている。
【0042】
本願において、拡散装置は、海底にわたり移動する為の車両であるが、戻りライン出口16に結合され、所望のパターンで、水域4の底3にわたって戻り出口を移動させる。そのため、拡散装置14には、海底に適したローリング部材21が設けられている。
【0043】
図3において、ポンプシステム6は、浮動システムであり、この浮動システムは、それ自体知られた方式で浮動でき、その上端部で車両20に結合された結合ライン9を経て所定位置に保持される。任意で、拡散装置の本体17は、ケーブルのように適した懸架手段22によって、補助船21から懸架されてもよい。
【0044】
図4において、スラリライン5は、船20に結合されている。戻りライン19は、船20とも結合されている。戻りライン7は、船20を経て、スラリライン18と流体連通されている。採掘システム1は、採掘された物質を処理する為のユニット(図示せず)を含み、戻りラインは、この処理ユニットを通じてスラリラインと流体連通されている。本願において、このユニットは、船20に置かれている。
【0045】
ポンプシステム6は、浮動システムであり、この浮動システムは、それ自体知られた方式で浮動でき、その上端部で船20と結合された結合ライン9を経て所定位置に保持される。
【0046】
本願において、拡散装置は、海底にわたって移動する為に浮動するが、戻りライン出口16に結合され、所望のパターンで水域4の底3にわたって戻り出口を移動させる。そのため、拡散装置14には、海底に適したローリング部材21が備えられている。
【0047】
図1〜
図4に示された採掘システム1の使用において、非有価スラリ部分は、制御された方式で、水域の底3にわたって拡散される。これは、有用な沈殿物を見つけ、或いは、得ることができる一方、これらを覆うことが避けられるので、有益である。
【0048】
好ましくは、採掘される物質が処理される。この処理は、船の船上で行われてもよく、或いは、水域4の他の場所(例えば、水域4の底3)で行われてもよい。
【0049】
また、上記説明および図面は、本発明の幾つかの実施形態を例示する為に含まれたこと、保護範囲を限定するものではないことは明白であろう。この開示内容から始まり、多くの実施形態が、この発明の本質および保護範囲内にあること、これらが、従来技術および本特許の開示内容の明白な組合せであることは、当業者にとって明らかであろう。