特許第6555787号(P6555787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555787
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】人員輸送コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 21/10 20060101AFI20190729BHJP
   B66B 23/10 20060101ALI20190729BHJP
   B66B 23/22 20060101ALI20190729BHJP
   B66B 23/14 20060101ALI20190729BHJP
   B66B 23/00 20060101ALI20190729BHJP
   B65G 21/14 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   B66B21/10 Z
   B66B23/10
   B66B23/22 G
   B66B23/14 A
   B66B23/22
   B66B23/00 A
   B66B23/00 C
   B65G21/14 C
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-200689(P2017-200689)
(22)【出願日】2017年10月17日
(65)【公開番号】特開2019-73371(P2019-73371A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2018年12月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599176089
【氏名又は名称】株式会社ヤクテツ
(74)【代理人】
【識別番号】100116296
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幹生
(72)【発明者】
【氏名】新名 茂喜
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−275091(JP,A)
【文献】 特開2015−000794(JP,A)
【文献】 特表2008−504194(JP,A)
【文献】 特開平11−286384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/10
B65G 21/14
B66B 23/00
B66B 23/10
B66B 23/14
B66B 23/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の本体部と、本体部に設けられた金属製のフレームの上面に沿って上昇しフレームの下側を下降して循環する樹脂製のベルトと、ベルトを循環させるプーリーとを備え、ベルト上に人員を乗せて高所に人員輸送を行う人員輸送コンベアであって、ベルトの上面にベルトの長手方向に対して交差する方向に設けられた突起を備えており、前記フレームと前記ベルトとの間に設置される取り換え用の樹脂板を備え、取り換え用の樹脂板は、ベルトよりも柔らかい材質のものによって形成されていることを特徴とする人員輸送コンベア。
【請求項2】
前記ベルトは表面に交互に形成された凹凸を有し、最上部と最下部のそれぞれにおいてベルトがスプロケットと噛み合って循環することを特徴とする請求項1記載の人員輸送コンベア。
【請求項3】
前記フレームの上面に沿って上昇するベルトの側方に設けられた蛇行防止板を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の人員輸送コンベア。
【請求項4】
前記本体部の上側水平部と傾斜部との境界部に設けられた蛇腹とピンとを備え、蛇腹とピンとによって前記本体部の傾斜角度が調整されることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の人員輸送コンベア。
【請求項5】
前記本体部の下部には、乗込み床とヒンジとが取り付けられており、前記本体部の傾斜角度が変更されると、乗込み床の一端側がヒンジに摺動して、乗込み床が水平位置に保たれる構造となっていることを特徴とする請求項記載の人員輸送コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造船作業現場等において、作業者を高所の作業場に輸送するために使用される人員輸送コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
造船作業現場のように、大型構築物の製造現場においては、作業者を高所の作業場に輸送するための人員輸送コンベアが使用されている。この人員輸送コンベアは、傾斜面に人が乗るものであるため、安全上の観点から、その傾斜角度には制限がある。
【0003】
しかし、人員輸送コンベアの傾斜を緩やかにすると、人員輸送コンベアの水平方向の長さが長くなり、設置のためのスペースが広く必要となるという問題点がある。また、人が乗るものであるため、コンベアを安定的に運行することによって揺れ等を防止して、安全を確保することが重要である。
ゴム製の搬送面を有する人員輸送コンベアに関する技術の一例が、特許文献1に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−255269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
設置のためのスペースを考慮すると、コンベアの傾斜を大きくすることが必要であるが、そのためには、傾斜の大きなコンベアに作業者が乗っても、安全に作業者を高所の作業場に輸送できることが必要となる。また、安全を確保するためには、コンベアの揺れを防止することが必要となる。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、傾斜を大きく設定して設置のためのスペースを確保しやすくするとともに、安定的に運行することによって揺れ等を防止して、安全を確保することが可能な人員輸送コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明の人員輸送コンベアは、金属製の本体部と、本体部に設けられた金属製のフレームの上面に沿って上昇しフレームの下側を下降して循環する樹脂製のベルトと、ベルトを循環させるプーリーとを備え、ベルト上に人員を乗せて高所に人員輸送を行う人員輸送コンベアであって、ベルトの上面にベルトの長手方向に対して交差する方向に設けられた突起を備えていることを特徴とする。
【0008】
ベルトの上面にベルトの長手方向に対して交差する方向に設けられた突起によって、作業者がベルト上に乗ったときに踵を支えることができるため、傾斜角度を大きくしても、ベルトの上面に乗っている作業者が下方に滑ることがなく、作業者を高所の作業場に安全に輸送することができる。この構成によると、傾斜角度を30°までに設定することができ、人員輸送コンベアの水平方向の長さを短くすることができ、設置のためのスペースを確保しやすい。
【0009】
本発明の人員輸送コンベアにおいては、前記ベルトは表面に交互に形成された凹凸を有し、最上部と最下部のそれぞれにおいてベルトがスプロケットと噛み合って循環する構成とすることができる。
【0010】
ベルトの表面に交互に形成された凹凸がスプロケットと噛み合ってベルトが循環するため、ベルトが循環時にブレを生じることを抑制でき、作業者を高所の作業場に安全に輸送することができる。
【0011】
本発明の人員輸送コンベアにおいては、前記フレームの上面に沿って上昇するベルトの側方に設けられた蛇行防止板を備えている構成とすることができる。
【0012】
フレームの上面に沿って上昇するベルトの側方に設けられた蛇行防止板を備えていることにより、蛇行防止板がベルトのガイドとして機能し、ベルトが循環する際に蛇行することを防止できる。
【0013】
本発明の人員輸送コンベアにおいては、前記フレームと前記ベルトとの間に設置される取り換え用の樹脂板を備え、取り換え用の樹脂板は、ベルトよりも柔らかい材質のものによって形成されている構成とすることができる。
【0014】
ベルトは樹脂製であるため、ベルトが金属製のフレームと直接接触すると、ベルトが摩耗しやすいが、フレームとベルトとの間に設置される取り換え用の樹脂板を備えていることにより、ベルトは直接フレームと接触せずに、取り換え用の樹脂板と接触する。取り換え用の樹脂板は、ベルトよりも柔らかい材質のものによって形成されており、ベルトと取り換え用の樹脂板との接触によって、取り換え用の樹脂板が優先的に摩耗する。そのため、取り換え用の樹脂板は、緩衝層として機能し、取り換え用の樹脂板が摩耗した段階で新しいものに取り換えることによって、作業者を乗せるベルトの摩耗を抑制して耐久性を持たせることができる。
【0015】
本発明の人員輸送コンベアにおいては、前記本体部の上側水平部と傾斜部との境界部に設けられた蛇腹とピンとを備え、蛇腹とピンとによって前記本体部の傾斜角度が調整される構成とすることができる。
【0016】
傾斜角度の調整が可能であるため、作業現場の状況に適合させた状態で人員輸送コンベアを使用することができる。
【0017】
本発明の人員輸送コンベアにおいては、前記本体部の下部には、乗込み床とヒンジとが取り付けられており、前記本体部の傾斜角度が変更されると、乗込み床の一端側がヒンジに摺動して、乗込み床が水平位置に保たれる構造とすることができる。
【0018】
傾斜角度が変更されても乗込み床が水平位置に保たれるため、作業者が利用しやすい人員輸送コンベアを実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、傾斜を大きく設定して設置のためのスペースを確保しやすくするとともに、安定的に運行することによって揺れ等を防止して、安全を確保することが可能な人員輸送コンベアを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る人員輸送コンベアの全体図である。
図2】人員輸送コンベアのヘッド部の詳細図である。
図3】人員輸送コンベアのテール部の詳細図である。
図4図2におけるA線矢視図である。
図5】ベルトの循環部分の断面図である。
図6図5における丸印部分の拡大図である。
図7】人員輸送コンベアの傾斜角度を調整する際のヘッド部の動作を示す図である。
図8】人員輸送コンベアの傾斜角度を調整する際のテール部の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の人員輸送コンベアを、その実施形態に基づいて説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る人員輸送コンベアの全体図を示す。図1(a)は、人員輸送コンベアの平面図であり、図1(b)はその側面図であり、図1(c)はその正面図である。
【0022】
人員輸送コンベア1の上端部と下端部はそれぞれコンベア架台2に接続されており、船3の側面に取付けられている。作業者は、岸壁4から下側のコンベア架台2を経て人員輸送コンベア1に乗り、人員輸送コンベア1によって上方に輸送されて、船3の高所で作業を行う。
【0023】
図2図3に、本発明の実施形態に係る人員輸送コンベアの詳細図を示す。図2は、図1(c)における上側の丸印で示す、人員輸送コンベアのヘッド部の詳細図であり、図3は、図1(c)における下側の丸印で示す、人員輸送コンベアのテール部の詳細図である。図2(a)は、人員輸送コンベアのヘッド部の平面図であり、図2(b)は、人員輸送コンベアのヘッド部の正面図であり、図2(c)は、その部分拡大図である。また、図3(a)は、人員輸送コンベアのテール部の平面図であり、図3(b)は、人員輸送コンベアのテール部の正面図である。
【0024】
人員輸送コンベア1は、金属製の本体部11と、本体部11に設けられた金属製のフレーム12の上面に沿って上昇しフレーム12の下側を下降して循環する樹脂製のベルト13と、ベルト13を循環させるヘッドプーリー14とテールプリー15とを備えている。ベルト13の上面に、ベルト13の長手方向に対して交差する方向に設けられた突起16を備えている。図2図3においては、突起16は、ベルト13の長手方向に対して垂直な方向に列をなして配列されている。
【0025】
ベルト13の上面にベルト13の長手方向に対して交差する方向に設けられた突起16によって踵を支えることができるため、突起16がストッパーとして機能し、傾斜角度を大きくしても、ベルト13の上面に乗っている作業者が下方に滑ることがなく、作業者を高所の作業場に輸送することができる。この構成によると、傾斜角度を30°までに設定することができ、人員輸送コンベア1の水平方向の長さを短くすることができ、設置のためのスペースを確保しやすい。また、列をなして形成された突起16同士の間隔が、一人当たりの搭乗スペースであることを示す目印としても機能する。
【0026】
本体部11の上側水平部と傾斜部との境界部には、蛇腹17が設けられている。また、このベンド部には、コンベアの傾斜角度を変更するためのピン18が取り付けられている。蛇腹17とピン18の動作および機能については、後に詳述する。また、本体部11のテール部分には乗込み床19とヒンジ20が取り付けられている。乗込み床19とヒンジ20の動作および機能についても、後に詳述する。
【0027】
図4(a)は、図2におけるA線矢視図であり、図3におけるA´線矢視図である。また、図4(b)は、図4(a)におけるB線矢視図である。
ベルト13は表面に交互に形成された凹凸を有しており、最上部と最下部のそれぞれにおいて、ベルト13はスプロケット21と噛み合って循環する。ベルト13の表面に交互に形成された凹凸がスプロケット21と噛み合ってベルト13が循環するため、ベルト13が循環時にブレを生じることを抑制でき、作業者を高所の作業場に安全に輸送することができる。
【0028】
図5は、ベルト13の循環部分の断面図である。
フレーム12の上面に沿って上昇するベルト13の側方には、蛇行防止板22が設けられている。蛇行防止板22の上方はサイドカバー23によって覆われており、サイドカバー23の下方は空隙となっている。サイドカバー23は、側方に位置する手摺24に連結されており、蛇行防止板22はサイドカバー23を介して手摺24により支持されている。蛇行防止板22を備えていることにより、蛇行防止板22がベルト13のガイドとして機能し、ベルト13が循環する際に蛇行することを防止できる。
【0029】
図6は、図5における丸印部分の拡大図である。
フレーム12とベルト13との間には、取り換え用の樹脂板25が密着して設置されており、ベルト13は直接フレーム12と接触せずに、取り換え用の樹脂板25と接触する。取り換え用の樹脂板25は、ベルト13よりも柔らかい材質のものによって形成されており、ベルト13と取り換え用の樹脂板25との接触によって、取り換え用の樹脂板25が優先的に摩耗する。そのため、取り換え用の樹脂板25は、緩衝層として機能し、取り換え用の樹脂板25が摩耗した段階で新しいものに取り換えることによって、作業者を乗せるベルト13の摩耗を抑制して耐久性を持たせることができる。
【0030】
図7図8に基づいて、人員輸送コンベア1の傾斜角度調整について説明する。
図7(a)は、人員輸送コンベア1の傾斜角度が15°のものを示し、図7(b)は、人員輸送コンベア1の傾斜角度が30°のものを示している。図7(c)は、人員輸送コンベア1の傾斜角度を、15°から30°までの間で調整する際のヘッド部の動作を示している。
【0031】
本体部11の上側水平部と傾斜部との境界部には、蛇腹17が設けられている。また、このベンド部には、コンベアの傾斜角度を変更するためのピン18が取り付けられている。ピン18を中心としてコンベアの傾斜角度が変更されて、傾斜角度を大きくすることができる。この動作に対応して、蛇腹17によって手摺24の角度が変更される。設定された傾斜角度でボルト26により固定される。このように、蛇腹17とピン18は、傾斜角度調整手段として機能する。傾斜角度の調整が可能であるため、作業現場の状況に適合させた状態で人員輸送コンベア1を使用することができる。
【0032】
図8は、人員輸送コンベア1の傾斜角度を、15°から30°までの間で調整する際のテール部の動作を示している。
本体部11のテール部分には、乗込み床19とヒンジ20が取り付けられている。乗込み床19は、作業者が人員輸送コンベア1に乗込む際に踏む板であるため、水平に設定されていることが求められる。そのため、人員輸送コンベア1の傾斜角度が変更される際には、乗込み床19の一端側がヒンジ20に摺動して、水平位置が保たれる構造となっている。このような構造であることにより、傾斜角度が変更されても乗込み床19が水平位置に保たれるため、作業者が利用しやすい人員輸送コンベアを実現することができる。
【0033】
以上説明したように、本発明の人員輸送コンベア1は、傾斜角度を大きくしても、ベルト13の上面に乗っている作業者が下方に滑ることがなく、作業者を高所の作業場に輸送することができる。また、ベルト13が循環する際の蛇行を防止する手段を有しており、これにより作業者の安全を確保することができる。
【0034】
さらに、ベルト13の摩耗を抑制して耐久性を持たせる構造となっている他、コンベアの傾斜角度を調整する手段も有しているため、耐久性と利便性が高く、実用上大きな利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、傾斜を大きく設定して設置のためのスペースを確保しやすくするとともに、安定的に運行することによって揺れ等を防止して、安全を確保することが可能な人員輸送コンベアとして、造船作業現場等において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 人員輸送コンベア
2 コンベア架台
3 船
4 岸壁
11 本体部
12 フレーム
13 ベルト
14 ヘッドプーリー
15 テールプリー
16 突起
17 蛇腹
18 ピン
19 乗込み床
20 ヒンジ
21 スプロケット
22 蛇行防止板
23 サイドカバー
24 手摺
25 取り換え用の樹脂板
26 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8