【文献】
森孝之,外,超音波反射法によるロックボルトの充填性診断法に関する基本的検討,第36回岩盤力学に関するシンポジウム講演会論文集,日本,2007年 3月 7日,P.97−100
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2工程において、前記超音波検査装置が前記照合により前記設定波形データと前記生成した波形データの類似度を取得し、前記超音波検査装置が、格納している閾値と取得した前記類似度とを対比し、前記類似度が前記閾値の条件を充足している場合に前記照合結果として前記閾値の条件充足を確認できる出力を行うことを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物の取付物のメンテナンス方法。
前記第2工程において、前記超音波検査装置が前記照合により前記設定波形データと前記生成した波形データの類似度を取得し、前記照合結果として類似度を出力することを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物の取付物のメンテナンス方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アンカーを新たな場所に移設したり、追加で新たなアンカーを打設することを基本とする方法では、コンクリート構造物に埋設されている鉄筋が新たなアンカー施工の支障となる場合が多い。この鉄筋は所要強度を確保するために構造上必要なものであるから、切断するようなことは望ましくなく、アンカー施工に当たっては埋設された鉄筋を回避することが求められる。しかしながら、鉄筋障害を回避するために鉄筋探査機を用いても、必ずしも正確な探査結果が得られるものではなく、鉄筋障害に遭遇する頻度を軽減できるに過ぎない。
【0006】
アンカー施工中に鉄筋が障害となった場合、一つ目の対策として、一つの取付物の固定に用いる複数のアンカー全てを施工し直すことが考えられるが、鉄筋障害の可能性は常に存在している。二つ目の対策として、一つの取付物の固定に用いる複数のアンカーの内、実際に鉄筋が障害となったもののみを鉄筋障害の無い場所へ施工し直し、取付物側においてもアンカーボルトを挿通するために設ける穴加工の位置を施工完了したアンカーの位置に合わせて調整する、あるいは、アンカー位置の変更に伴う調整用部材を追加することが考えられる。しかし、いずれの対策でも、メンテナンス作業が大掛かりになって、コンクリート構造物およびその周囲の使用制限が長引き、コストも増加する。特に自然災害時や人災等の事故により取付物の修繕の必要が生じた場合には、あらかじめ定められた修繕計画などは存在せず、極めて迅速な対応が求められ、その工期、コストが問題となる。
【0007】
そもそも上述のように一律にアンカーを新たな場所に移設したり、追加で新たなアンカーを打設しているのは、既に打設されているアンカーに経年劣化等の危険性があり、その健全性を適切なコストと時間で正確に判定することが難しいためである。即ち、コンクリートに打設されたアンカーの健全性を加力測定装置を用いるような大がかりな強度確認試験で評価する場合には、多大なコストと時間が必要となり、又、打音検査だけに依拠する場合には、検査員の聴感に依存するため客観性が乏しく安全性に疑問が生ずることになる。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、コンクリート構造物に打設され取付物を支持しているアンカーの健全性、安全性を適切なコストと時間で正確に判定し、メンテナンス作業に要するコストの低減、工期の短縮を図ることができるコンクリート構造物の取付物のメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコンクリート構造物の取付物のメンテナンス方法は、コンクリート構造物に打設されている機械定着式のアンカーに取り付けられている取付物を取り外す第1工程と、超音波検査装置のプローブを前記アンカーに接触させ、超音波を送信して多重反射する反射波を受信し、前記超音波検査装置が、受信する反射波から超音波の減衰状態を示す波形データを生成し、格納している健全な定着状態のモデルアンカーの設定波形データと前記アンカーに対して生成した前記波形データとを照合して照合結果を出力する第2工程と、前記照合結果が所定基準を充足している場合に、前記アンカーに前記取付物若しくは前記取付物とは別の新たな取付物を取り付ける第3工程
を備え、前記超音波検査装置が、複数種別のモデルアンカーと複数種別のモデルコンクリートのそれぞれの組み合わせに対応するモデルアンカーの前記設定波形データを格納しており、前記第2工程、若しくは前記第2工程より前の工程において、前記超音波検査装置に、検査対象とする前記アンカーの種別と前記アンカーが打設されているコンクリート構造物のコンクリートの種別を入力し、前記超音波検査装置が、入力された種別の組み合わせに対応するモデルアンカーの前記設定波形データを抽出し、前記第2工程において、前記抽出したモデルアンカーの設定波形データと前記打設されているアンカーに対して生成した波形データとを照合することを特徴とする。
これによれば、取付物を取り外した状態で取付物に干渉されることなく、アンカーの定着状態の健全性を直接検査することができる。また、超音波式の非破壊検査により、コンクリート構造物に打設されている状態のアンカーの健全性、安全性を客観的に評価することができ、高精度、高信頼性の検査結果を得ることができると共に、検査結果をリアルタイムで即時に得ることができる。また、超音波検査装置を用いることで、大がかりな強度試験装置を用いた場合に生ずる多大なコストと時間が不要となる。従って、コンクリート構造物に打設され取付物を支持しているアンカーの健全性、安全性を適切なコストと時間で正確に判定することができ、メンテナンス作業に要するコストの低減、工期の短縮を図ることができる。また、高精度、高信頼性の検査結果に基づいて健全なアンカーをそのまま利用することが可能となり、健全性の低いアンカーの取り替えのみを行う等でメンテナンス時に一律のアンカー施工や取付物の移設を行う必要がなくなり、又、時間とコストがかかる検査用のアンカーを施工する必要もなく、これらの点からも、メンテナンス作業に要するコストの低減、工期の短縮を図ることができる。
また、多種多様なアンカーとコンクリートの組み合わせの中で、検査対象となる特定のアンカーと特定のコンクリートの組み合わせに適合するモデルアンカーの設定波形データをベースに健全性を評価することが可能となり、特定のコンクリートに打設されている特定のアンカーの定着状態の健全性をより高精度に評価することができる。また、多種多様なアンカーとコンクリートの組み合わせに対して適応することが可能となるから、汎用性を高めることができる。
【0010】
本発明のコンクリート構造物の取付物のメンテナンス方法は、前記第2工程において、前記超音波検査装置が前記照合により前記設定波形データと前記生成した波形データの類似度を取得し、前記超音波検査装置が、格納している閾値と取得した前記類似度とを対比し、前記類似度が前記閾値の条件を充足している場合に前記照合結果として前記閾値の条件充足を確認できる出力を行うことを特徴とする。
これによれば、超音波検査装置が設定波形データと生成した波形データの類似度を取得することから、客観性、均質性の高い類似度を得ることができる。更に、超音波検査装置が類似度の閾値条件の充足を出力し、健全性の高いアンカーと健全性の低いアンカーを自動的に判別することから、現場でアンカーの健全性に対する人為的な判断が不要となると共に、アンカーの健全性評価をより客観的に且つ確実に行うことができる。また、アンカーの健全性に対する現場判断を不要とすることにより、メンテナンス作業を一層効率化することができる。
【0011】
本発明のコンクリート構造物の取付物のメンテナンス方法は、前記第2工程において、前記超音波検査装置が前記照合により前記設定波形データと前記生成した波形データの類似度を取得し、前記照合結果として類似度を出力することを特徴とする。
これによれば、超音波検査装置が設定波形データと生成した波形データの類似度を取得することから、客観性、均質性の高い類似度を得ることができる。また、出力された類似度に基づき現場でアンカーの健全性に対する人為的な判断を行う余地があることから、個別のケースに対して柔軟な基準でアンカーの健全性を評価することができる。また、超音波検査装置により類似度が得られるので、アンカーの健全性に対する現場判断の労力を低減し、メンテナンス作業の効率化を図ることができる。
【0012】
本発明のコンクリート構造物の取付物のメンテナンス方法は、
前記第2工程において、前記超音波検査装置の前記プローブを前記アンカーのスリーブの後端面に接触させて前記アンカーに接触させることを特徴とする
。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコンクリート構造物の取付物のメンテナンス方法によれば、コンクリート構造物に打設され取付物を支持しているアンカーの健全性、安全性を適切なコストと時間で正確に判定し、メンテナンス作業に要するコストの低減、工期の短縮を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態のコンクリート構造物の取付物のメンテナンス方法〕
本発明による実施形態のコンクリート構造物の取付物のメンテナンス方法は、
図1の超音波検査装置10を用いて行われる。超音波検査装置10は、CPU等で構成される制御部11、ROM、RAM、ハードディスク等で構成される記憶部12、ボタン、タッチパネル等の入力部13、液晶ディスプレイ等の出力表示部14、超音波発生部15、超音波送受信部16と、超音波送受信部16に電気的に接続されているプローブ17を備え、例えば専用機器、パーソナルコンピュータ或いは携帯端末等で構成される。尚、入力部13と出力表示部14は、入出力可能なタッチパネルで一体化することも可能である。
【0016】
記憶部12は、超音波検査プログラム等の所定の制御プログラムが格納されているプログラム格納部121を有し、制御部11は、所定の制御プログラムに従って所定の処理を実行する。また、記憶部12は、健全な定着状態のモデルアンカーの設定波形データを記憶している設定波形データ格納部122と、後述する類似度が所定基準を充足しているかの基準となる閾値を格納する閾値格納部123を有する。
【0017】
設定波形データ格納部122においては、
図2に示すように、各モデルアンカーの設定波形データの設定波形データコードが、モデルアンカーの種別とコンクリートの種別に対応するように格納され、更に、格納されている設定波形データが設定波形データコードに対応して格納されている。即ち、モデルアンカーの設定波形データが、複数種別のモデルアンカーと複数種別のモデルコンクリートのそれぞれの組み合わせに対応するように設定されており、特定の種別のモデルアンカーと特定の種別のモデルコンクリートのそれぞれの組み合わせに対応して設定波形データが特定されるようになっている。尚、モデルアンカーとモデルコンクリートの異なる種別に対応する設定波形データが同一である構成を含んでもよい。
図3にモデルアンカーの設定波形データの例を示す。
図3において横軸は時間、縦軸は超音波の強度(エコー高さ)を表している。
【0018】
設定波形データと対応するモデルアンカーの種別、モデルコンクリートの種別は適宜の方法で設定することが可能であり、モデルアンカーの種別として、例えばアンカーの外径・材質・形状等を規定する型番のみ、或いはアンカーの型番と埋設長とし、又、モデルコンクリートの種別として、例えばコンクリートの種類、或いは圧縮強度の値などコンクリート強度の値、或いはこれらの組み合わせ等とすることが可能である。これらに対応する種別は、出力表示部14に表示する入力画面で入力或いは選択入力され、制御部11はこれらの入力に対応する設定波形データを抽出する。
【0019】
更に、記憶部12は、超音波発生部15で発生させる超音波データを記憶している超音波データ格納部124を有し、制御部11は、入力部13からの入力に応じて、超音波データ格納部124の超音波データを認識し、超音波発生部15でこれに対応する超音波を発生させるようになっている。また、記憶部12は、照合結果格納部125を有し、照合結果格納部125には、例えばモデルアンカーの設定波形データと打設されているアンカーに対して生成した波形データ、これらの照合日時、これらの類似度、健全性の判定結果の履歴等が格納される。
【0020】
出力表示部14には、例えば超音波検査処理の操作画面、モデルアンカーの設定波形データと打設されているアンカーに対して生成した波形データの照合結果等が出力される。超音波送受信部16は、超音波発生部15で発生させた超音波をプローブ17に送出し、プローブ17から超音波が送信されるようになっており、又、プローブ17は、送信した超音波の反射波を受信し、この反射波が超音波送受信部16に受信されるようになっている。
【0021】
超音波検査装置10を用いてメンテナンスが行われるコンクリート構造物の取付物は、コンクリート構造物に打設されている機械定着式のアンカーに取り付けられている取付物であれば適宜であり、例えば内装パネル、ケーブル等の支持部材、ビルの設備、トンネル内装パネル・遮音パネル・案内表示盤等の支柱など道路付帯設備等が挙げられる。
【0022】
図4及び
図5(a)にメンテナンスが行われる取付物の例として、コンクリート構造物50に、アンカー20と取付補助部材であるナット31及びワッシャー32で取り付けられている内装パネル40を示す。本例のアンカー20は、コンクリート構造物50に設けられた穿孔51内で拡張することによりコンクリート構造物50に対して固着する機械定着式であり、先端にテーパ状の拡張部21が設けられているボルト部22と、ボルト部22の外周に設けられている拡張可能なスリーブ23を有する。
【0023】
アンカー20は、拡張部21よりスリーブ23が後方に配置された状態でコンクリート構造物50の穿孔51内に配置され、スリーブ23を拡張部21の方向に打ち込んでスリーブ23を拡張させ、更に、内装パネル40をボルト部22の後部に配置した後にワッシャー32を介してナット31を締め付けることで、スリーブ23が追随して拡張させることにより、コンクリート構造物50に強固に固定され、且つ内装パネル40を安定して支持するようになっている。
【0024】
そして、本実施形態のメンテナンス方法を行う際には、
図5(a)、(b)に示すように、アンカー20に螺合されているナット31を緩め、アンカー20に取り付けられているナット31、ワッシャー32、内装パネル40を取り外す。尚、従来の取付物の交換を行うメンテナンスでは、ここでアンカー20のコンクリート構造物50から外側に突出した部分を切断し、別の場所にアンカー20を新たに打設していた。
【0025】
また、超音波検査装置10に、検査対象とするアンカー20の種別とアンカー20が打設されているコンクリート構造物50のコンクリートの種別を入力し、これに応じて、超音波検査装置10の制御部11が、設定波形データ格納部122から入力された種別の組み合わせに対応するモデルアンカーの設定波形データを抽出し、照合で用いる設定波形データを読み出す。
【0026】
その後、
図5(c)に示すように、超音波検査装置10のプローブ17をアンカー20に接触させる。本例ではプローブ17をアンカー20の外周面近傍の後端面に接触させており、スリーブ23の後端面に接触させている。この接触状態には、直接接触させる場合と、超音波の伝達性を確保するために設けられるゼリーやその他媒介物が介在する場合も含まれる。
【0027】
この状態で、超音波検査装置10が、超音波データ格納部124の超音波データに基づいて超音波発生部15で発生させた超音波を、超音波送受信部16を介してプローブ17に出力し、アンカー20の打ち込まれている方向に略沿うようにしてプローブ17から超音波を送信する。送信する超音波は、垂直P波(バースト波)又は表面SH波(パルス波)又は表面SV波(横波)等とし、周波数としては2〜10MHz程度が好ましい。プローブ17から送信された超音波は、プローブ17の接触箇所と、接触箇所からアンカー20の打込方向に延びる線がアンカー20の先端部分とぶつかる箇所、本例ではスリーブ23の先端面或いは拡張部21との間で多重反射を繰り返す。プローブ17は、この多重反射する反射波を受信し、受信した反射波は超音波送受信部16を介して超音波検査装置10に取り込まれる。
【0028】
超音波検査装置10の制御部11は、取り込んだ反射波から超音波の減衰状態を示す波形データを生成し、設定波形データ格納部122にから読み出された健全な定着状態のモデルアンカーの設定波形データと、コンクリート構造物50に打設されているアンカー20に対して生成した波形データとを照合し、出力表示部14で照合結果を出力する。
【0029】
本実施形態においては、制御部11は、設定波形データとコンクリート構造物50に打設されているアンカー20に対して生成した波形データとを照合することにより、設定波形データと生成した波形データの類似度を取得し、閾値格納部123に格納している閾値と取得した類似度とを対比し、閾値以上など類似度が閾値の条件を充足している場合に、照合結果として閾値の条件充足を確認できる出力、例えばアンカー20の定着状態が健全である旨のメッセージ等の出力を行うと共に、照合結果を照合結果格納部125に格納する。尚、健全性のメッセージに併せて、設定波形データと生成した波形データを合わせて出力表示部14で出力し、目視確認できるようにしてもよい。
【0030】
上記類似度の取得としては、例えば
図6に示す反射波の最高値Pxの差、収束までの時間Qxの差、周波数差による波型位相の偏差(最高時点)Rx、設定波形データと生成した波形データとの間の周波数差による波型位相の偏差(収束時点)Sxを類似度として取得する。尚、
図6は、周波数の異なる3つの設定波形データを示している。
【0031】
即ち、設定波形データと生成した波形データとの間の反射波の最高値Pxの差、設定波形データと生成した波形データとの間の収束までの時間Qxの差、設定波形データと生成した波形データとの間の周波数差による波型位相の偏差(最高時点)Rx、設定波形データと生成した波形データとの間の周波数差による波型位相の偏差(収束時点)Sxを類似度として取得し、これらに対応して各々設定されている閾値に対し、いずれも閾値以内である場合に所定基準を充足するアンカー20、即ち定着状態が健全なアンカー20と判定する。
【0032】
ここで、
図7(a)に示すようなコンクリートにしっかり食い込むように密着している健全なアンカー20と、
図7(b)に示すようなコンクリートへの食い込み、定着状態が不十分の不健全なアンカー20との、多重反射した反射波の波形データの相違について説明する。超音波検査装置10のプローブ17から送信された超音波は、
図7の太線矢印で示す間で多重反射を繰り返す。
【0033】
健全なアンカー20の場合、
図8(a)に示すように受信した超音波は急速に減衰するのに対し、不健全なアンカー20の場合には、
図8(b)に示すように受信した超音波の減衰は緩やかなものとなり、アンカー20とコンクリートの密着状態を反映した受信信号、換言すればアンカー20がしっかりとコンクリートにくいこんでいるかどうかを反映した受信信号を得ることができる。従って、これを利用して、健全なアンカー20と不健全なアンカー20を判定することが可能となる。
【0034】
図8の例は、周波数の異なる3種類のP波を同時に送受信し、多重反射した反射波を受信した場合を示している。健全なアンカー20における受信信号は、いずれの周波数においても、超音波が1往復した時点において最大となり、その後に多重反射を繰り返して超音波が急速に減衰している。また、不健全なアンカー20における受信信号は、健全なアンカー10の場合と同様に、超音波が1往復した時点で最大となるが、その後の多重反射を繰り返す超音波の減衰は緩やかになっている。
【0035】
そして、照合結果が出力され、照合結果が所定基準を充足している場合、即ちアンカー20の定着状態が健全である場合には、取付物の交換を行う定期メンテナンス時等には、アンカー20に内装パネル40とは別の新たな内装パネル40aを取り付け、又、取付物の交換が不要の際には、アンカー20に取り外した内装パネル40を取り付ける。
【0036】
また、照合結果が所定基準を充足せずに、アンカー20の定着状態が不健全な場合、本例では類似度が閾値の条件を充足せずに、照合結果として閾値の条件未充足を確認できる出力が行われた場合には、制御部11は、出力に併せて照合結果を照合結果格納部125に格納する。そして、該当する不健全なアンカー20について、アンカー20のコンクリート構造物50から外側に突出している部分の切断、或いはアンカー20の抜去等の施工を行い、新たに少し離れた箇所に穿孔して新たなアンカー20を打ち込み、それに支持させる形で内装パネル40a或いは内装パネル40を取り付ける。
【0037】
本実施形態によれば、取付物を取り外した状態で取付物に干渉されることなく、アンカー20の定着状態の健全性を直接検査することができる。また、超音波式の非破壊検査により、コンクリート構造物50に打設されている状態のアンカー20の健全性、安全性を客観的に評価することができ、高精度、高信頼性の検査結果を得ることができると共に、検査結果をリアルタイムで即時に得ることができる。また、超音波検査装置10を用いることで、大がかりな強度試験装置を用いた場合に生ずる多大なコストと時間が不要となる。従って、コンクリート構造物50に打設され取付物を支持しているアンカー20の健全性、安全性を適切なコストと時間で正確に判定することができ、メンテナンス作業に要するコストの低減、工期の短縮を図ることができる。
【0038】
また、高精度、高信頼性の検査結果に基づいて健全なアンカー20をそのまま利用することが可能となり、健全性の低いアンカー20の取り替えのみを行う等でメンテナンス時に一律のアンカー施工や取付物の移設を行う必要がなくなり、又、時間とコストがかかる検査用のアンカーを施工する必要もなく、これらの点からも、メンテナンス作業に要するコストの低減、工期の短縮を図ることができる。
【0039】
また、超音波検査装置10が設定波形データと生成した波形データの類似度を取得することから、客観性、均質性の高い類似度を得ることができる。更に、超音波検査装置10が類似度の閾値条件の充足を出力し、健全性の高いアンカー20と健全性の低いアンカー20を自動的に判別することから、現場でアンカーの健全性に対する人為的な判断が不要となると共に、アンカー20の健全性評価をより客観的に且つ確実に行うことができる。また、アンカー20の健全性に対する現場判断を不要とすることにより、メンテナンス作業を一層効率化することができる。
【0040】
また、多種多様なアンカーとコンクリートの組み合わせの中で、検査対象となる特定のアンカー20と特定のコンクリートの組み合わせに適合するモデルアンカーの設定波形データをベースに健全性を評価することが可能となり、特定のコンクリートに打設されている特定のアンカー20の定着状態の健全性をより高精度に評価することができる。また、多種多様なアンカーとコンクリートの組み合わせに対して適応することが可能となるから、汎用性を高めることができる。
【0041】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明、実施形態、各例の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含むものであり、下記変形例も包含する。
【0042】
例えば上記実施形態では、超音波検査装置10が、格納している閾値と取得した類似度とを対比し、類似度が閾値の条件を充足している場合に照合結果として閾値の条件充足を確認できる出力を行う構成としたが、超音波検査装置10が照合により設定波形データと生成した波形データの類似度を取得し、照合結果として類似度を出力する構成とし、例えば出力された類似度に対して、所定基準と照らし合わせて人為的にアンカーの定着状態の健全性を判定、評価するようにすることも可能である。
【0043】
この変形例の構成によれば、超音波検査装置10が設定波形データと生成した波形データの類似度を取得することから、客観性、均質性の高い類似度を得ることができると共に、出力された類似度に基づき現場でアンカー20の健全性に対する人為的な判断を行う余地があることから、個別のケースに対して柔軟な基準でアンカー20の健全性を評価することができる。また、超音波検査装置10により類似度が得られるので、アンカー20の健全性に対する現場判断の労力を低減し、メンテナンス作業の効率化を図ることができる。
【0044】
また、超音波検査装置10が、格納している健全な定着状態のモデルアンカーの設定波形データとコンクリート構造物50に打設されているアンカー20に対して生成した波形データとを対比する形で照合結果として出力し、これを現場作業者が目視確認し、健全性を判定するようにすることも可能である。
【0045】
また、本発明における設定波形データ格納部122等に格納する設定波形データは、モデルアンカーの種別とコンクリートの種別に対応するように格納されるものに限定されず、例えば設定波形データがモデルアンカーの種別だけに対応して格納される構成、或いは単独の設定波形データのみが格納される構成等とすることも可能である。