(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電気音響変換器が内蔵された第1のイヤホン本体と、この第1のイヤホン本体と一端が接続される、内部に一方向の押圧により導通するスイッチ部材が長さ方向に沿って所定の範囲設けられスイッチ機能を有する第1のケーブルと、
電気音響変換器が内蔵された第2のイヤホン本体と、この第2のイヤホン本体と一端が接続される、内部に一方向の押圧により導通するスイッチ部材が長さ方向に沿って所定の範囲設けられスイッチ機能を有する第2のケーブルとを備え、
前記第1、第2のケーブルによってスイッチを2つに振り分け、かつ前記第1、第2のケーブルのスイッチ機能を有する部分を重ねて配置し、重ね部分を一方向の押圧により各スイッチを同時に導通させることを特徴とするイヤホン装置。
請求項1記載のイヤホン装置において、前記第1、第2のケーブルの他端側のスイッチ機能を有する部分を重ねて配置可能な挿通孔が形成され、押圧により変形可能なホルダ内に挿通したことを特徴とするイヤホン装置。
請求項2記載のイヤホン装置において、前記ホルダは第1、第2のケーブルのスイッチ機能を有する少なくとも一部の範囲でスライド可能であることを特徴とするイヤホン装置。
【背景技術】
【0002】
音楽再生機能を備えた携帯端末に接続されるイヤホンの最も基本的態様は、主として次の部品から構成されている。
【0003】
音響変換器(磁気回路、振動板等のユニット)がそれぞれ内蔵された第1、第2のイヤホン本体、各イヤホン本体に接続される第1、第2のモノラルケーブル、各モノラルケーブルの端部に設けられた携帯端末接続用プラグ。
【0004】
上記各ケーブルの一端はそれぞれのイヤホン本体に接続され、他端には携帯端末接続用プラグが接続され、2本の各ケーブルの中間部から携帯端末接続用プラグまでの部分は通常1本のケーブル状(以下、第3のケーブルという)にまとめられ、ケーブル全体はY字状に構成されている。
【0005】
また、第1、第2のケーブルと第3のケーブルとの部分にはストッパ部が設けられ、収納時の各ケーブルの絡み防止や使用時の好みに合わせるためのスライドホルダーを備えたものもある。
【0006】
これに加えて、更に携帯端末の再生機能の「Vol.+」、「Vol.−」、「Play,Pause」等を操作するための操作ボタン(スイッチ)を有するコントローラを備えたものがある。
【0007】
このコントローラは、イヤホン本体と携帯端末とを接続するためのコネクタの間のケーブル上に設けられている。特に通話用マイクを備えたコントローラの場合、通話用マイクは通話に適した口元付近、すなわちイヤホン本体に近い第1、第2のケーブル上に設けられているものがある。
【0008】
第1、第2のケーブルとしては、従前からある一般的なケーブル以外に、特開2015−207455(特許文献1)に示されるように、無線機能を搭載したイヤホンに、コントロールスイッチとしてのケーブルスイッチが開示されている。
【0009】
このスイッチは、ケーブルの特定箇所にスイッチが設けられたものでなく、ケーブルの長さ方向の有効範囲内にわたってスイッチ機能を有し、その範囲でケーブルのどこを押圧してもスイッチ動作(スイッチオン)可能な構造となっている。このようなスイッチをケーブルスイッチという。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ケーブルの特定の箇所に設けられたコントローラのスイッチに対し、ケーブルスイッチは押圧によって動作可能な範囲が広く操作がしやすいというメリットがある。
【0012】
しかし、「Vol.+」、「Vol.−」、「Play,Pause」等複数の系統のスイッチ機能を同一ケーブル上に配置する場合、各機能別に押圧すべき範囲(場所)をユーザに示すための表示が必要となりデザイン上の自由度が低くなりやすい。また、表示がされていたとしても、イヤホン本体を耳に装着した状態では、表示を確認しながらの操作は煩わしく、確認をしない場合では誤操作をしてしまう可能性がある、という課題がある。
【0013】
この発明は上記のことに鑑み提案されたもので、その目的とするところは、ケーブルスイッチをイヤホンに適用し、初めて使用するユーザであっても操作しやすく、かつスイッチ部分を3箇所とし、それら3箇所を必要に応じ適宜選択して押圧するようにし、これにより所望の動作を容易に行うことができるようにし、誤操作しにくく、更に動作範囲の表示等を不要としたイヤホン装置を提供することにある。
また、このイヤホン装置に対応して動作する携帯端末を組合せて音響を再生する音響再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に係る発明は、電気音響変換器が内蔵された第1のイヤホン本体と、この第1のイヤホン本体と一端が接続される、内部に一方向の押圧により導通するスイッチ部材が長さ方向に沿って所定の範囲設けられスイッチ機能を有する第1のケーブルと、電気音響変換器が内蔵された第2のイヤホン本体と、この第2のイヤホン本体と一端が接続される、内部に一方向の押圧により導通するスイッチ部材が長さ方向に沿って所定の範囲設けられスイッチ機能を有する第2のケーブルとを備え、前記第1、第2のケーブルによってスイッチを2つに振り分け、かつ前記第1、第2のケーブルのスイッチ機能を有する部分を重ねて配置し、重ね部分を一方向の押圧により各スイッチを同時に導通させることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1記載のイヤホン装置において、前記第1、第2のケーブルの他端側のスイッチ機能を有する部分を重ねて配置可能な挿通孔が形成され、押圧により変形可能なホルダ内に挿通し、ホルダの押圧により同時に導通させスイッチとして機能させたことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項2記載のイヤホン装置において、前記ホルダは第1、第2のケーブルのスイッチ機能を有する少なくとも一部の範囲でスライド可能であることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1、2または3記載のイヤホン装置に対応して動作する携帯端末を組合せた音響再生装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の本発明によれば、第1、第2のケーブルスイッチがそれぞれ使用時においてユーザの左右に完全に振り分けられ、いずれのケーブルのどの部分を押圧しても導通させることができるため、使い易く、誤操作しにくい、といった効果がある。また、第1、第2の2つのケーブルスイッチが重ねられている部分を第3のスイッチとして使用できる、といった効果がある。
請求項2記載の本発明によれば、ホルダ部分が第3のスイッチであるとユーザは容易に認識できる。
請求項3記載の本発明によれば、ホルダは、第1、第2のケーブルスイッチに対しスライド可能であるため、ユーザの好みに応じ第1、第2のケーブルスイッチのスイッチ機能部分及び第3のスイッチ機能の配置を設定することができる。
請求項4記載の本発明によれば、携帯端末の音響のボリューム・アップ、ボリューム・ダウン等の各種操作を容易、かつ誤操作なく確実に行うことができ、音響を再生して楽しむことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1(a)は本発明に係るイヤホン装置の基本構成を示す。Lは例えば左側の耳に挿入する第1のイヤホン本体、Rは右側の耳に挿入する第2のイヤホン本体で、各イヤホン本体L、Rには電気音響変換器が内蔵されている。この電気音響変換器は、マグネット、コイル等からなる駆動部、コイルに接続された振動板を備えた振動部からなり、公知の適宜のものを採用し組み込めば良い。
【0018】
1Aは第1のイヤホン本体Lに一端が接続された第1のケーブルスイッチを内蔵する第1のケーブル、1Bは第2のイヤホン本体Rに接続された第2のケーブルスイッチを内蔵する第2のケーブルで、これら各ケーブル1A、1Bの他端側は、(b)図および
図2に示すように、スライド可能なホルダ2内に挿入されている。3はホルダ2のスライドを規制するストッパである。ストッパ3内部にはスイッチ回路が組み込まれており、第1、第2のケーブルスイッチは前記のスイッチ回路に接続され、ストッパ3の下端からはスイッチ回路から携帯端末に接続されるプラグのGND、SW(MIC)に接続される導線及びLR信号線が一つのシース内に収められ導出されている。これらスイッチ回路、プラグ、シース等については後述する。
【0019】
図3は第1、第2のケーブル1A、1Bの内部構造を示す縦断面図である。
【0020】
このケーブル1A、1Bは、偏平であってチューブ状のシース5に、スイッチとして機能する帯状導体膜4が内蔵された構成となっている。
【0021】
上記帯状導体膜4は、図示の状態において上側に位置する第1の導体膜6と、この第1の導体膜6と離間して対向配置された、下側に位置する第2の導体膜7と、これら第1、第2の導体膜6、7の間に設けられた絶縁スペーサ8とにて構成されている。
【0022】
上記第1の導体膜6は、絶縁部材からなる第1の帯状基材6aと、この第1の帯状基材6aの内面(図示の状態において下面に相当)に帯状に設けられた第1の導体部6bによって構成されている。
【0023】
上記第2の導体膜7は、同じく絶縁部材からなる第2の帯状基材7aと、この第2の帯状基材7aの内面(図示の状態において上面に相当)に帯状に設けられた第2の導体部7bによって構成されている。
【0024】
これらの間に配置される絶縁スペーサ8は第1、第2の導体膜6、7の各帯状基材6b、7bが接触しないよう相互の間隔を保持する働きをなす。
【0025】
偏平であって帯状の屈曲自在なシース5はTPE(熱可塑性エラストマー)からなり、このシース5は第1、第2の導体膜6、7および絶縁スペーサ8からなる帯状導体膜4を挿通可能な略矩形の空洞部を内部に有し、そこに帯状導体膜4が収納されている。なお、空洞部の両外側、すなわちシース5の幅両端部に+、−の信号線挿通孔9、10がそれぞれ形成されている。そこに+、−の信号線9A、10Aを挿通することによりスイッチを内蔵したケーブルが構成される。
【0026】
空洞部は帯状導体膜4を余裕を持って内装できるよう帯状導体膜4の外形より大に形成されている。なお、空洞部の横幅は絶縁スペーサ8が第1、第2の帯状基材6b、7b間を維持できる程度に最小限にする必要がある。
【0027】
上記絶縁スペーサ8は、スリット7Cによって2分割された第2導体部7bの外端部にレジストにより形成されている。形成にあたっては、一般的なFPCに用いられるソルダーレジストやカバーレイなどを施す方法を採用することが望ましい。すなわち、レジストやカバーレイは、基材や導体部に接着剤を介して直接接合固定されるため、曲げが想定されているFPC用のものは導体膜の変形時に導体部や基材に過度な応力が掛からないように、かつ、使用状態において、絶縁部が部分的に剥がれおちることの無いよう、柔軟な材料で基材よりも充分薄く形成される。
【0028】
図4は帯状導体膜4の各構成部材の展開図である。第1の導体膜6を構成する第1の帯状基材6aの内面には第1の導体部6bが設けられている。第2の導体膜7を構成する第2の帯状基材7aの内面にはスリット7Cを介し、+、−の電極となる第2の導体部7bが設けられ、その端部にリード部7d、7e、接続電極10、11が形成されている。第1の導体部6bは、+、−の第2の導体部7b、7bを接続可能なジャンパ部として作用する。
【0029】
絶縁スペーサ8は所定の厚みを有し、長さ方向に沿って所定の間隔で、例えば矩形形状の窓8aが形成され、梯子状に形成されている。この窓8a内において、第1、第2の導体膜6、7は押圧により接触する。
【0030】
組み立てにあたっては、絶縁スペーサ8を有する第2の導体膜7の上に、第1の導体膜6を長さ方向に移動自在に重ね、その組立体からなる帯状導体膜4をシース5内に挿入する。第1の導体膜6を移動自在に重ねるのは曲げやすくし、また、曲げた場合、それに応じて第1の導体膜6が第2の導体膜7側に変形することなく第2の導体膜上に設けられた絶縁スペーサ8に対し、長さ方向にずれるようにしたためである。なお、曲げた際、第1、第2の導体膜6、7間に絶縁スペーサ8があるため、第1、第2の導体膜6、7が接触し導通することはなく、誤動作を起こすことはない。
【0031】
図5はケーブル1A、1Bの曲げ状態の部分斜視図を示す。
【0032】
図6に示すように、矢印A方向に曲げると曲げ方向に対し、
図5にシース5内の内側に位置する第1の導体膜6は撓んで破線で囲んだような波状部Bが生じることがある。この波状部Bの寸法L1の逃げをシース空間部に形成しておかなければ第1の導体膜6は対向する第2の導体膜7と接触し、導通してしまうおそれがある。
【0033】
そこで、
図3において、符号aで示すように、シース空間部に、その厚み方向に波状部Bを吸収する空間部aを形成し、曲げによって第1、第2の導体膜6、7が不本意に接触して誤動作しないようにしている。なお、
図6は、曲げの場合における第1、第2の導体膜6、7の様子を示すもので、説明の便宜上、スペーサ8は省略している。
【0034】
この構成のケーブル1A、1Bによれば、内蔵するケーブルスイッチは曲げに対し誤動作することはない。
【0035】
このケーブル1A、1Bに内蔵するケーブルスイッチは曲げに対し導通しないが、
図7に示すように、例えば人差し指F1と親指F2で挟み一方向に押圧すればスイッチ部材として機能する第1、第2の導体膜6、7が接触して導通するように構成されている。
【0036】
なお、シース5の各挿通孔9、10には、例えば+側の信号線9A、−側の信号線10Aが挿入されケーブル1A、1Bが構成される。
【0037】
上記のように構成された第1、第2のケーブル1A、1Bは、
図8に示すように、ホルダ2内に挿通される。すなわち、ホルダ2には、図示の状態において、上下に第1、第2のケーブル挿通孔2A、2Bが形成されている。これらケーブル挿通孔2A、2Bの内形はケーブル1A、1Bの外形と対応し、そこにケーブル1A、1Bがスライド可能に挿通される。なお、挿通孔2A、2Bは上述の形態に限定されず、一方向の押圧により同時に導通させることが可能なように2つのケーブルスイッチが重なる様にすれば良い。例としては略矩形の一つの挿通孔等としても良い。
【0038】
このホルダ2も好ましくはTPEのような材料にて形成される。このTPEは柔らかく変形しやすい性質を有する。
【0039】
したがって、
図9に示すように、ホルダ2の上下面を人差し指F1と親指F2で挟み、変形可能なホルダ2を一方向、つまり厚み方向に押圧してつぶすことにより内蔵された第1、第2のケーブル1A、1Bは同時に押圧され、第1、第2の導体膜6、7が接触し、同時に導通させることができる。指を離せば材質に起因する復元力で元の状態に戻る。
【0040】
ホルダ2の材料としてはTPE以外に他の弾性部材を用いても良いことは勿論である。
【0041】
なお、上記において、ケーブル1A、1Bに内蔵されるケーブルスイッチの絶縁スペーサ8はレジストにより第2の帯状基材7a上に形成されたものについて示したが、
図10に示すように、別体とした絶縁スペーサ8Aを、第2の導体部7bに重ねるようにしたタイプとしたものを用いても良い。また、第2の導体部7bに、
図3に示すスリット7Cを形成せず、第2の導体部7bを例えば−側電極、第1の導体部6bを+側電極としても良い。
【0042】
図11は本発明に係る上記イヤホン装置を携帯端末に組み合わせた音響再生装置の第1の実施例を示す。図においてSW1、SW2は、
図3に示した第1、第2のケーブル1A、1Bの第1、第2の導体膜6、7に相当する。第1、第2の導体膜6、7は接触すると導通し、スイッチの役割を果たすため、ここではSW1、SW2として表した。
【0043】
また、
図11において左側部分は、第1のスイッチSW1としての機能を有する第1のケーブル1Aで、
図3に示したシース5内に挿通された、例えば+側の信号線9A、−側の信号線10Aの一端が、第1のイヤホン本体Lに接続されていることを示す。また、
図11において右側部分は同様に第2のイヤホン本体Lに、第2のケーブル1Bの第2の導体膜7に相当する第2のスイッチSW2を備えたケーブル内の信号線9A、10Aの一端が接続されていることを示す。
【0044】
第1、第2のケーブル1A、1Bが束ねられ、ホルダ2に重ねて挿通されており、このホルダ2は第3のスイッチとして機能する。そして、ホルダ2から導出された第1、第2のケーブル1A、1BのSW1、SW2は、ストッパ3内に収められたスイッチ回路11に接続され、スイッチ回路11からの各線およびそれぞれの信号線9A、10Aはプラグ12の所定の部分に接続されている。
【0045】
公知の携帯端末13には音楽再生機能が搭載され、マイク機能を備えたイヤホンを接続できるジャックが備えられている。この携帯端末13に接続されるプラグ12は、左側の第1のイヤホン本体部Lへ携帯端末13からの音声信号を供給するための端子部Lと、右側の第2のイヤホン本体部Rへ携帯端末13からの音声信号を供給するための端子部Rと、マイクを使用する場合、マイクからの音声信号を携帯端末13へ供給するための端子SW(MIC)と、グランド端子部分Gとを備えている。なお、接続時には携帯端末側のマイク入力端子にはマイクに電力供給のための直流バイアス電圧がかけられる。この電圧はさらに前記端子SW(MIC)とグランド端子Gに接続された抵抗値の変化を携帯端末側で検知可能とし、それに応じて携帯他端末側に特定の動作をさせることを可能としている。このプラグ12は携帯端末13のジャック13Aに着脱自在となっている。
【0046】
そして、プラグ12を携帯端末13に接続すると、第1のケーブル1Aの信号線9A、10Aは、端子部Lからの音声信号を左側の第1のイヤホン本体部Lに送り、第2のケーブル1Bの信号線9A、10Aは、端子部Rからの音声信号を右側の第2のイヤホン本体Rに送るようになっている。
【0047】
使用にあたっては、第1のケーブル1Aを押圧して導通させたり、第2のケーブル1Bを押圧して導通させたり、ホルダ2を押圧するとスイッチ回路11の抵抗が変化し、それに応じた動作をするようにしている。このように本発明では、スイッチを第1のケーブル1A,第2のケーブル1Bの左右に振り分けている。また、中央部の移動自在なホルダ2も第1、第2のケーブル1A,1Bそれぞれのスイッチ機能を有する部分が重ねられているため、押圧すれば第3のスイッチとして機能し、スイッチ箇所を左右、中央部の3カ所とし、誤操作を防ぎ、使いやすくしている。
【0048】
動作にあたっては、スイッチ回路11は、第1のケーブル1AのSW1が閉鎖されるとスイッチ回路11の抵抗値が既定の値に変化する。そして、ボリューム・アップであれば第1のイヤホン本体Lに送る音声信号の音量をアップさせる。第2のケーブル1BのSW2が閉鎖されるとスイッチ回路11の抵抗値は前記の状態とは異なる既定の値に変化し、それがボリューム・ダウンであれば、第2のイヤホン本体Rに送る音声信号の音量をダウンさせる。また、ホルダ2が押圧されるとSW1,SW2が同時に閉鎖され、更に前記と異なる既定の値に変化しそれに応じ再生(Play)/中断(Pause)を行うことができるようにしている。
【0049】
このようなスイッチ回路11は抵抗のような受動素子を組合せた回路で容易に構成できる。また、携帯端末のマイク用のバイアス電源を利用して動作するFETのような能動素子を用いた回路でも構成できる。ケーブルスイッチ自体の抵抗が従来のコントローラのものと大きく異なる場合は能動素子を利用することが望ましい。
【0050】
いずれの構成でも第1のケーブル1Aの第1のスイッチ、第2のケーブル1Bの第2のスイッチ、または各ケーブルのスイッチ機能を有する部分を重ねた部分である第3のスイッチを閉鎖した場合に、それぞれに対応する規定の抵抗値になるように構成し、接続される携帯端末側でその状態が判別できるようにすれば良い。このスイッチ回路例については後述する。
【0051】
このように、プラグ12をジャック13Aに差し込むことにより携帯端末13からの信号は第1、第2のイヤホン本体L、Rに送出される。マイク(図示せず)があればその信号は携帯端末13に送られる。
【0052】
携帯端末13側は、定められた抵抗値(ある程度幅をもたせてある)が変化した場合に、音楽再生中であればボリュームを上げるまたは下げる、中断(Pause)、中断中であれば再生(Play)等の動作をするように構成されている。更にはその抵抗値に維持されている時間や、特定時間内にその抵抗に複数回変化した場合に再生中の曲を進めるなどの様々な機能が備えられている。
【0053】
また、公知のイヤホンには、ユーザが上記携帯端末に接続し操作可能にすべくリモコン機能を備えたものがある。それらには3系統のスイッチが設けられたコントローラが、イヤホンケーブルの途中に設けられており、コントローラには各スイッチが押された場合に規定の抵抗値になるようにスイッチ回路が内蔵されている。
【0054】
図12は前述の受動素子を用いたスイッチ回路例を示す。この回路は、マイク入力端子(MIC input)とグランド端子(GND)間に、直列にSW3と抵抗2を挿入している。そしてこの直列回路に、抵抗R1、SW1、SW2および抵抗2の直列回路を並列に接続して構成している。
【0055】
このスイッチ回路での回路抵抗値は、スイッチが押されていない状態では抵抗R1の抵抗値である。SW1が押されるとゼロ、SW2が押されるとR1×R2/(R1+R2)、SW3が押されるとR1×R3/(R1+R3)となる。SW3とは第1、第2のケーブル1A、1Bのスイッチ機能を有する部分が重ねられた部分である。これらの回路抵抗値を接続する携帯端末13の予め設定された値に合わせてあればユーザはイヤホン使用時において、手元で音楽再生等の操作を行うことができる。すなわち、SW1が押された場合はボリュームを上げ、SW2が押された場合はボリュームを下げ、SW3が押された場合は再生、更に再生中にSW3が押された場合中止させるような操作が可能になる。
【0056】
本発明では、第1のケーブル1Aはケーブルスイッチが内蔵された範囲で第1のスイッチSW1として動作するようにし、第2のケーブル1Bはケーブルスイッチが内蔵された範囲で第2のスイッチSW2として動作するように構成している。この場合、ホルダ2を移動させれば第1、第2のケーブル1A、1Bのスイッチの動作領域を任意に調節することができる。
【0057】
接続する携帯端末13が既存のものの場合、上記スイッチ操作によって従来のリモコンスイッチ(スイッチ回路)と同様の抵抗値になるようにスイッチ回路を構成すれば良い。
【0058】
なお、ケーブルスイッチとしては様々なものがあり、上記の従来のイヤホンのリモコンのコントローラのスイッチよりもスイッチ自体の抵抗値が大きい場合があるため、
図12に示した受動素子のみの回路ではなく、FET等を用いた回路で構成するのが望ましい。ただし、専用の携帯端末等、動作する回路抵抗の規定値を予め設定でき、端末側でケーブルスイッチを利用したスイッチ回路の特性に合わせられる場合はその限りではない。
【0059】
FETのような能動素子を利用したスイッチ回路例を
図13に示す。この回路は、マイク入力端子とグランド端子間に、抵抗R6とFETを挿入し、これと並列にFETバイアス用の抵抗R5とスイッチSWと抵抗R4の直列回路を接続し、スイッチSWと抵抗R4の中点にFETのゲートを接続して構成している。
【0060】
スイッチSW1(図ではSWで示している)に対してこの回路を用いると、SW1(SW)を押すとFETが動作して回路抵抗はR6となる。
【0061】
本発明において、スイッチ自体は第1、第2のケーブル1A,1BのSW1,SW2の2系統のみであり、それら2つが同時に押された状態を第3のスイッチSW3としている。そのため、スイッチ回路11は、
図12に示したSW1の回路に加え、抵抗R6の値を変えて同様の回路をSW2に適用し、SW1の回路と並列に置き、更にSW1、2を論理回路の入力に接続し、論理積(AND)をSW3とし、更にFETを用いた
図13と同様の回路を構成し並列に置くことで従来のイヤホンのスイッチ回路と同様の抵抗値を示すことができる。
【0062】
図14は本発明のイヤホン装置を用いた音響再生装置の第2の実施例を示す。この実施例は、前述した公知の携帯端末とは異なる携帯端末に接続する場合の例であって、スイッチ回路を第1実施例のようにイヤホン側に設けず、携帯端末13側にもたせたものである。
【0063】
また、ホルダ2からの各線はストッパ3を経て接続用コネクタ14に接続している。信号線9A、10Aおよび第1、第2のケーブル1A、1BのSW1、SW2のグランド線はコネクタ14の共通端子Gに接続し、その他の線はコネクタ14の接続部L、R、SW1、SW2に接続している。この実施例でもユーザはスイッチ操作を容易に行うことができる。また、スイッチ回路がイヤホン側にないため、軽量化が可能であり、付け心地の向上が図れる。
【0064】
図15は本発明のイヤホン装置を用いた音響再生装置の第3の実施例を示す。この実施例ではイヤホン装置のストッパ15の部分に、近距離無線回路、増幅回路、スイッチ回路、電池等を内蔵させたものである。携帯端末(図示せず)には、イヤホン装置と同規格の近距離無線機能をもたせることで接続できる。この場合、イヤホン装置内のスイッチ回路が示すデータを無線規格の範囲内で携帯端末に送出できるように構成すれば良い。