(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般的に知られる野菜又は果実の剥皮処理は、様々であり、例示すると、酵素処理、蒸
気減圧処理、アルカリ処理、乾熱空気処理、湯剥き等である。このうち湯剥きを開示する
のは、、非特許文献1及び2である。これらの何れの文献においても、野菜又は果実は、
加熱される。次いで、野菜又は果実は、冷却されて、剥皮されている。冷却が行われるの
は、水中である。
【0003】
他方、特許文献1が開示するのは、食材の異物除去装置である。当該装置を構成するの
は、水槽、及びバスケットである。バスケットが設けられているのは、水槽の内部である
。バスケットに形成されているのは、複数の透孔である。透孔の機能は、浮遊又は沈降し
た異物を食材から分離することである。当該異物は、比較的小さいものであり、例示する
と、毛や虫類等である。付言すると、当該装置が想定している用途は、食材の洗浄及び異
物除去であって、剥皮ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
課題は、剥れた皮が滞留することである。剥れた皮は、軟質であるため、水中で広がり
易い。仮に、特許文献1に係る装置を改造し水流を強めて剥皮しようとしても、広がった
皮が排出されない。その理由は、透孔の径が小さいことである。つまり、皮の排出は、手
作業によらざるを得なかった。そこで、本発明が可能にするのは、剥れた皮を効率的に排
出することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る剥皮装置が剥離するのは、野菜又は果実(以下、「野菜等」という)の皮
である。当該野菜等を例示すると、トマト、桃、じゃがいも等である。当該装置を構成す
るのは、水槽、バスケットである。当該水槽が貯めるのは、水である。バスケットが設置
されるのは、当該水槽の内側である。当該バスケットの上端側に形成されているのは、ス
リットである。すなわち、当該スリットが形成されているのは、満水時の水面近傍である
。当該水槽において、貯められた水は、回流しており、それによって、野菜等の皮が剥が
れる。水流の回転軸と平行をなすのは、水平面である。剥がれた皮の排出口は、当該スリ
ットである。ここで、水平とは、鉛直方向(重力方向)に対して直交する方向である。当
該説明において、「平行」が当然に許容するのは、多少の誤差である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スリットが形成されているのは、水面近傍である。他方、剥された皮
が浮き上がって至るのは、水面近傍である。したがって、野菜等の皮は、剥された後、効
率的に排出される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本実施の形態に係る剥皮装置の構成>
図1が示すのは、本実施の形態に係る剥皮装置10の側面破断図である。剥皮装置10
が剥皮するのは、野菜又は果物(以下、野菜等という。)である。剥皮装置10を構成す
るのは、水槽20、バスケット30、噴射ノズル40である。剥皮装置10を詳説するた
めに、本明細書が取り込むのは、特許2872102号の内容である。
【0011】
水槽20が貯めるのは、液体である。液体を例示すると、水、水溶液、消毒液等である
。以下の説明では、便宜上、液体を水とする。水槽20に形成されているのは、放出口2
1である。水槽20の材質を例示すると、ステンレス鋼であるが、これに限られない。水
槽20が有するのは、底面及び側面である。つまり、水槽20の上面は、開放されている
。
【0012】
バスケット30が配置されているのは、水槽20の内側である。バスケット30の取付
け先は、水槽20である。また、バスケット30を回転可能に支持するのは、軸31であ
る。バスケット30の材質を例示すると、アルミニウムであるが、これに限られない。バ
スケット30に形成されているのは、導入孔32及びスリット33である。
【0013】
図2が示すのは、本実施の形態に係る剥皮装置10の上面図である。複数の導入孔32
a乃至32dの整列方向と平行をなすのは、軸31の設置方向である。導入孔32の形状
を決めるのは、噴射ノズルの形状である。導入孔32の形状を例示すると、正円形、楕円
形、正方形、長方形や網状等である。導入孔32の数を決めるのは、後述する噴射ノズル
40の数である。スリット33の詳細は、後述する。
【0014】
噴射ノズル40が発生するのは、水流である。噴射ノズル40が設けられているのは、
水槽20の内側であり、かつ、バスケット30の外側である。噴射ノズル40が有するの
は、噴射口41である。噴射口41a乃至41dの向きと平行をなすのは、側面視及び上
面視で水平方向である。
【0015】
樋50が導くのは、水である。樋50が設けられているのは、水槽20の側方である。
樋50は、傾斜しており、それによって排水する。樋50が設けられている方向と平行を
なすのは、側面視及び上面視で水平方向である。
【0016】
<水の流れ>
以上の構成によれば、水の流れは、次のとおりである。バスケット30の内部において
、水は、回流している(以下、「水流A」という。)。水流Aの回転方向は、図示のとお
りである。つまり、水流Aの回転軸と平行をなすのは、水平面である。言い換えると、水
流Aの回転軸と平行をなすのは、静止した水面である。水流Aによって回転するのは、野
菜等である。野菜等は、回転することで、剥皮される。剥皮のメカニズムは、次のとおり
である。野菜等に作用するのは、水流の力及び野菜等の力である。まず、水流の力が作用
する先は、野菜等の裂け目である。この裂け目は、自然に又は人為的に形成されている。
つまり、水流の浸入先が野菜等の表皮及び果実の間となり、それによって、表皮が剥がれ
る。次に、複数の野菜等は、それぞれ回転して、互いに衝突する。そのような摩擦力が働
いて、表皮が剥がれる。
【0017】
他方、バスケット30の外部において、水が流出する先は、樋50であり、それによっ
て、排水される。このとき、水流Bが通過するのは、スリット33及び放出口21である
。スリット33が通すのは、水流Bのみならず、野菜等の表皮も同様である。
【0018】
<浴比、吐出圧、及び剥皮効果の関係>
図5が示すのは、剥皮装置10における浴比及び吐出圧の相関図である。浴比の算出式
は、次のとおりである。
浴比=野菜等の投入量(kg)/水槽容積(L) ・・・(式1)
吐出圧とは、圧力であって水を配管に圧送する際のものである。本実施の形態において
、配管の内径は、35.7mm(1.5S)であるが、これに限定されない。当該相関図
によれば、吐出圧が一定で、浴比が増加すると、投入された野菜等の一部が剥皮されない
。つまり、吐出圧及び浴比のバランスが崩れると、水流が回転しにくくなる。
【0019】
図6が示すのは、本実施の形態から一般化された浴比及び吐出圧の相関図である。当該
相関図において、領域Sで期待されるのは、投入された野菜等の全量が剥皮されることで
ある。吐出圧及び浴比のバランスから、浴比が増加すれば、吐出圧も増加する。しかし、
吐出圧が強すぎると、野菜等が傷む。そこで、吐出圧の上限値が定まることで、浴比の上
限値も定まる。
【0020】
<本実施の形態に係るスリット33の構成>
スリット33が形成されているのは、バスケット30の両側面である。当該両側面は、
対向している。当該側面と垂直をなすのは、軸31の設置方向である。スリット33が形
成されているのは、バスケット30の上端34の側である。言い換えると、スリット33
が形成されているのは、水槽20の上面の近傍である。さらに言い換えると、スリット3
3が形成されているのは、満水時の水面の近傍である。当該水面が形成されるのは、バス
ケット30の上面又はそれよりもやや下側だからである。スリット33において、水は、
勢いよく放出される。つまり、スリット33が効率的に吸い込むのは、浮き上がった表皮
である。スリット33の短手方向の寸法は、野菜等が通過しないものであれば足りる。ス
リット33の長手方向は、次の2通りである。
【0021】
図3が示すのは、本実施の形態に係る横スリット付バスケット30aの側面図である。
スリット33aの長手方向と平行をなすのは、水平面である。水平とは、鉛直方向(重力
方向)に対して直交する方向である。言い換えると、スリット33aの長手方向と平行を
なすのは、静止した水面である。以上の説明において、多少の誤差は、当然に許容される
。
【0022】
図4が示すのは、本実施の形態に係る縦スリット付バスケット30bの側面図である。
スリット33bの長手方向と平行をなすのは、鉛直方向である。鉛直方向とは、水平面に
対して垂直な方向である。言い換えると、スリット33bの長手方向と垂直をなすのは、
静止した水面である。以上の説明において、多少の誤差は、当然に許容される。
【0023】
表1が示すのは、スリット33の長手方向と表皮の排出効率との関係である。本試験で
は、まず、表皮を投入し、次いで、水流を発生させた。水流を発生させた時間は、45秒
間である。各値の算出式は、次のとおりである。
【0024】
表皮の残存割合(%)=バスケット内に残存した表皮の重量/投入した表皮の重量 ・
・・(式2)
表皮の排出割合(%)=(投入した表皮の重量−バスケット内に残存した表皮の重量)
/投入した表皮の重量 ・・・(式3)
この比較結果によれば、望ましい排出条件は、スリット33の長手方向及び水平面(水
面)が平行なことである。この結果から推測される原理は、次のとおりである。水流によ
って剥れた表皮が広がる方向は、水平方向である。スリット33aの長手方向と平行なの
は、水平方向である。以上のとおり、表皮が広がる方向及びスリット33aの長手方向が
一致するので、表皮がより効率的に排出される。
【0026】
本実施の形態によれば、スリット33が形成されているのは、水面近傍である。他方、
剥れた表皮が浮き上がって至るのは、水面近傍である。つまり、剥れた表皮は、効率的に
排出される。
【0027】
本実施の形態によれば、スリット33aの長手方向と平行をなすのは、静止した水面(
水平面)である。他方、剥がれた表皮が浮き上がって広がる方向は、水平方向である。つ
まり、剥れた表皮は、より効率的に排出される。