特許第6555840号(P6555840)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6555840-圧縮機システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555840
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】圧縮機システム
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20190729BHJP
   F04B 39/02 20060101ALI20190729BHJP
   F04B 39/06 20060101ALI20190729BHJP
   F04D 29/58 20060101ALI20190729BHJP
   F04D 29/62 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   F04B39/00 Z
   F04B39/00 104B
   F04B39/02 A
   F04B39/06 B
   F04B39/00 103J
   F04D29/58 L
   F04D29/62 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-502455(P2018-502455)
(86)(22)【出願日】2016年3月3日
(86)【国際出願番号】JP2016056634
(87)【国際公開番号】WO2017149729
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2018年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】中▲崎▼ 敬太
(72)【発明者】
【氏名】島川 司
【審査官】 原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−210099(JP,A)
【文献】 特開昭56−127160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04B 39/02
F04B 39/06
F04D 29/58
F04D 29/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転するロータ及び該ロータを支持する軸受装置を有する圧縮機と、
潤滑油が貯蔵された潤滑油タンクと、
該潤滑油タンクから前記軸受装置に潤滑油を供給する潤滑油供給ラインと、
前記軸受装置から前記潤滑油を前記潤滑油タンクに戻す潤滑油戻しラインと、
前記圧縮機に供給されるシールガスが流通し、前記潤滑油タンク内を経由して前記圧縮機に前記シールガスを導くシールガス供給ラインと、を備える圧縮機システム。
【請求項2】
前記シールガス供給ラインは、前記潤滑油タンク内に貯蔵された液体状態の前記潤滑油内を経由する請求項1に記載の圧縮機システム。
【請求項3】
潤滑油タンクは、貯蔵された液体状態の前記潤滑油内に配置されて前記潤滑油を加熱する潤滑油ヒータを有する請求項1または請求項2に記載の圧縮機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーシングに対して回転可能に設けられた回転軸の回転を入力または出力するために、回転軸の端部がケーシングの外部に突出した遠心圧縮機がある。このような遠心圧縮機では、ケーシングの端部において、回転軸とケーシングとの隙間から外部に作動流体が漏れだすことを抑制するために、ドライガスシールが設けられている。
【0003】
このようなドライガスシールを有する圧縮機が、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に記載のドライガスシールは、回転軸と一体的に回転する駆動系ユニットと、ケーシングのヘッドに固定された静止系ユニットとを有している。ドライガスシールでは、静止系ユニットの静止環が、コイルバネによって駆動系ユニットの回転環に向かって付勢されている。これにより、圧縮機が停止している状態では、静止環と回転環とが互いに突き当たっている。また、回転環の静止環に対向するシール面には、螺旋状の溝が形成されている。圧縮機が作動してシールガスが供給された状態で回転軸が回転すると、螺旋状の溝によって回転環と静止環との間にシールガスが導入される。このシールガスの圧力により、静止環が、コイルバネの付勢力に抗して回転軸の軸方向に沿って押圧される。その結果、回転環と静止環との間に微小な隙間ができ、回転軸の回転を妨げることなく、回転軸とケーシングとの間がシールされている。
【0004】
ところで、ドライガスシールに供給されるシールガスは、回転環と静止環との間の微小な隙間を流れている。そのため、シールガスが一部でも液化してしまうと、この微小な隙間が閉塞されてドライガスシールの性能が大きく低下してしまう。そこで、シールガスを露点以上の温度に保つために、シールガスを加熱するためのガスヒータを設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−36387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ガスヒータを設ける場合、設置スペースを確保する必要があり、設置コストも増加してしまう。そのため、ガスヒータを設けることなくシールガスを温めることが望まれている。
【0007】
本発明は、シールガスを温めることが可能な圧縮機システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様に係る圧縮機システムは、軸線回りに回転するロータ及び該ロータを支持する軸受装置を有する圧縮機と、潤滑油が貯蔵された潤滑油タンクと、該潤滑油タンクから前記軸受装置に潤滑油を供給する潤滑油供給ラインと、前記軸受装置から前記潤滑油を前記潤滑油タンクに戻す潤滑油戻しラインと、前記圧縮機に供給されるシールガスが流通し、前記潤滑油タンク内を経由して前記圧縮機に前記シールガスを導くシールガス供給ラインと、を備える。
【0009】
このような構成によれば、軸受装置から戻された潤滑油が貯蔵された潤滑油タンク内をシールガス供給ラインが経由することで、高温の潤滑油によって温められた領域にシールガスを流通させることができる。その結果、高温の潤滑油を利用して、シールガス供給ラインに流通させるだけでシールガスを昇温させることができる。
【0010】
本発明の第二の態様に係る圧縮機システムは、第一の態様において、前記シールガス供給ラインは、前記潤滑油タンク内に貯蔵された液体状態の前記潤滑油内を経由してもよい。
【0011】
このような構成によれば、液体状態の潤滑油内にシールガスを流通させることができる。その結果、気体状態の潤滑油内にシールガス供給ラインを配置する場合に比べて、効率的にシールガスと潤滑油とを熱交換させることができる。これにより、効率的にシールガスを温めることができる。
【0012】
本発明の第三の態様に係る圧縮機システムは、第一または第二の態様において、潤滑油タンクは、貯蔵された液体状態の前記潤滑油内に配置されて前記潤滑油を加熱する潤滑油ヒータを有していてもよい。
【0013】
このような構成によれば、潤滑タンク内の潤滑油の温度が低い場合であっても、潤滑油を温めることができる。その結果、確実にシールガスを昇温させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シールガスを温めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態における圧縮機システムを示す模式図である。
図2】本発明の実施形態における潤滑油タンク周りの構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の圧縮機システム10を説明する。
図1に示すように、圧縮機システム10は、圧縮機1と、潤滑油タンク2と、潤滑油供給ライン3と、潤滑油戻しライン4と、シールガス供給ライン5とを備えている。
【0017】
本実施形態の圧縮機1は、例えば、多段遠心圧縮機である。圧縮機1は、ケーシング11と、ロータ12と、軸受装置13と、ドライガスシール部14とを備えている。このような圧縮機1は、ロータ12が回転することで気体を作動流体として取り込んで圧縮流体を生成する。なお、ここで、圧縮機1で生成する圧縮流体の用途については何ら限定するものではない。
【0018】
ロータ12は、ケーシング11内で回転自在に支持されている。ロータ12は、その両端部がラジアル軸受13aによって、その中心軸周りに回転自在に支持されている。ロータ12の一端には、径方向の外側に拡径したスラストカラー12aが形成されている。スラストカラー12aの軸方向の両側には、スラスト軸受13bが設けられている。スラスト軸受13bは、ロータ12を中心軸周りに回転自在に支持しつつ、軸方向への変位を規制している。
【0019】
ここで、以下の説明において、圧縮機1に備えられたラジアル軸受13a、スラスト軸受13bは、単に、軸受装置13と称するものとする。
【0020】
ドライガスシール部14は、ケーシング11とロータ12との隙間をシールガスによってシールしている。ドライガスシール部14は、シールガスによって作動流体がケーシング11の内側から外側に漏れることを抑えている。ドライガスシール部14は、軸受装置13よりもロータ12の軸方向の中心位置に近い位置に配置されている。ドライガスシール部14は、回転環14aと、静止環14cと、ラビリンスシール14eと、を備えている。
【0021】
回転環14aは、ロータ12の外周面にロータ12と一体に設けられている。回転環14aは、軸受装置13よりもロータ12の軸方向の中心位置に近い位置に配置されている。ロータ12の外周面には、筒状のシャフトスリーブ14bが固定されている。回転環14aは、シャフトスリーブ14bを介してロータ12に固定されている。回転環14aは、静止環14cに対向するシール面に、螺旋状の溝(図示無し)が形成されている。
【0022】
静止環14cは、ケーシング11に固定されている。静止環14cは、回転環14aよりもロータ12の軸方向の軸受装置13に近い位置に配置されている。ロータ12の外周面と対向するケーシング11の内周面には、円環状のリテーナ14dが設けられている。静止環14cは、リテーナ14dを介してケーシング11に固定されている。静止環14cは、回転環14aに向かって付勢するコイルバネ(図示無し)によってリテーナ14dに取り付けられている。静止環14cは、ロータ12の軸方向において回転環14aと互いに対向するよう設けられている。静止環14cは、コイルバネによって、回転環14aに向けて押圧されている。
【0023】
ラビリンスシール14eは、回転環14aよりもロータ12の軸方向の中心位置に近い位置に配置されている。ラビリンスシール14eは、ケーシング11に固定されている。
【0024】
潤滑油タンク2は、軸受装置13に供給する潤滑油が貯蔵されている。潤滑油タンク2は、図2に示すように、タンク本体21と、ドレンノズル22と、脱ガストレイ23と、潤滑油ヒータ24とを有する。
【0025】
タンク本体21は、中空の箱体として形成されている。タンク本体21の内部では、液体状態の潤滑油が下方に溜まり、気体状態の潤滑油(油煙)が上方に溜まっている。タンク本体21は、ドレンノズル22を介して潤滑油戻しライン4と接続されている。タンク本体21は、貯蔵している液体状態の潤滑油の液面Lよりも上方にドレンノズル22が固定されている。タンク本体21は、貯蔵している潤滑油の液面Lよりも下方で潤滑油供給ライン3と接続されている。
【0026】
ドレンノズル22は、潤滑油戻しライン4に接続されている。ドレンノズル22の先端部は、タンク本体21の内部で下方に向けて開口している。このドレンノズル22は、潤滑油戻しライン4によって回収された液体状態及び気体状態の潤滑油を潤滑油タンク2内に送り込む。
【0027】
脱ガストレイ23は、ドレンノズル22から送り込まれた潤滑油をタンク本体21内で案内する。脱ガストレイ23は、タンク本体21の内壁面からタンク本体21の内側に向かってほぼ水平に延びた後に、タンク本体21の内側に向かうにしたがって斜め下方に延びるように傾斜して形成されている。これにより、ドレンノズル22から吐出された液体状態の潤滑油は、脱ガストレイ23に沿って流れ、タンク本体21内に既に貯留されている潤滑油に流れ込む。このように、潤滑油を脱ガストレイ23に沿って流し込むことで、潤滑油がタンク本体21の内部で泡立ち難くすることができる。
【0028】
潤滑油ヒータ24は、タンク本体21に貯蔵された潤滑油を加熱する。潤滑油ヒータ24は、貯蔵された液体状態の潤滑油内に浸漬されている。本実施形態の潤滑油ヒータ24としては、例えば、他のプラント等から供給される蒸気によって加熱するスチームヒータや電気によって加熱する電気式のヒータが挙げられる。
【0029】
潤滑油供給ライン3は、図1に示すように、潤滑油タンク2から軸受装置13に潤滑油を供給する。潤滑油供給ライン3は、タンク本体21に接続されている。潤滑油供給ライン3は、複数の軸受装置13にそれぞれ接続されるよう分岐している。潤滑油供給ライン3は、送給ポンプ31と、オイルクーラ32と、オイルフィルタ33と、を途中に有している。
【0030】
送給ポンプ31は、タンク本体21内に貯蔵された潤滑油を軸受装置13に向かって圧送している。
オイルクーラ32は、送給ポンプ31から送られた潤滑油を冷却している。
オイルフィルタ33は、オイルクーラ32から送られてきた潤滑油に紛れたゴミ等の異物を除去している。
【0031】
潤滑油戻しライン4は、軸受装置13から潤滑油を潤滑油タンク2に戻している。潤滑油戻しライン4は、軸受装置13で使用されて高温となった潤滑油を回収して、潤滑油タンク2に送っている。潤滑油戻しライン4は、複数の軸受装置13にそれぞれ接続されている。潤滑油戻しライン4は、タンク本体21に接続されている。
【0032】
シールガス供給ライン5は、圧縮機1に供給されるシールガスが流通する。シールガス供給ライン5は、潤滑油タンク2内を経由して圧縮機1にシールガスを導いている。本実施形態のシールガス供給ライン5は、タンク本体21内では、液体状態の潤滑油に浸漬された状態で配置されている。シールガス供給ライン5は、ドライガスシール部14にシールガスを供給する。シールガスの供給源は圧縮機1の吐出側のケーシングから供給される。ドライガスシール部14で使用されたシールガスは、フレアに送られて燃焼される。具体的には、シールガス供給ライン5は、供給ライン51と、回収ライン52と、タンク内ライン53とを有する。
【0033】
供給ライン51は、ドライガスシール部14にシールガスを供給している。供給ライン51は、回転環14aとラビリンスシール14eとの間からシールガスをケーシング11内に供給している。
【0034】
回収ライン52は、圧縮機1で圧縮された作動流体の一部をケーシング11の内部からシールガスとして回収している。
【0035】
タンク内ライン53は、供給ライン51と回収ライン52とを繋いでいる。タンク内ライン53は、図2に示すように、潤滑油タンク2内で貯蔵されている液体状態の潤滑油内を通過するように配置されている。タンク内ライン53は、第一ヘッダー部531と、第二ヘッダー部532と、熱交換部533とを有する。
【0036】
第一ヘッダー部531は、潤滑油タンク2の側面に固定されている。第一ヘッダー部531は、供給ライン51に接続されている。
第二ヘッダー部532は、第一ヘッダー部531よりも上側に配置されている、第二ヘッダー部532は、第一ヘッダー部531が固定されている側と同じで潤滑油タンク2の側面に固定されている。第二ヘッダー部532は、供給ライン51に接続されている。
【0037】
熱交換部533は、内部を流通するシールガスと、周囲の潤滑油とを熱交換させる。熱交換部533は、例えば、シールガスが露点を超える温度になるまで潤滑油と熱交換させることが可能な長さで形成されている。熱交換部533は、第一ヘッダー部531と第二ヘッダー部532とを接続している。熱交換部533は、熱交換部533は、伝熱面積が大きくなるように形成されている。本実施形態の熱交換部533は、複数の配管によって形成されている。
【0038】
なお、熱交換部533は、シールガスが露点を超える温度となるように伝熱面積が大きくなるように形成されていればよく、複数の配管であることに限定されるものではない。例えば、熱交換部533は、一本の配管であってもよい。この際、熱交換部533は、螺旋状をなして形成されたり、表面に凹凸を設けたりすることで伝熱面積が大きくすることが好ましい。
【0039】
上記のような圧縮機システム10では、圧縮機1を起動する際に、潤滑油ヒータ24を稼働させてタンク本体21内に貯蔵された潤滑油を加熱する。これにより、例えば、20℃程度の外気温と同程度とされていた潤滑油が加熱されて40℃〜50℃程度まで昇温される。昇温された潤滑油は、潤滑油供給ライン3で軸受装置13まで供給される。具体的には、潤滑油は送給ポンプ31によって圧送されることでオイルクーラ32及びオイルフィルタ33を通過して軸受装置13まで送られる。軸受装置13に供給された潤滑油は、軸受装置13で使用されることで60℃から70℃程度まで温度が上昇する。高温となった潤滑油は、潤滑油戻しライン4によって潤滑油タンク2まで戻される。潤滑油タンク2まで戻された潤滑油は、潤滑油戻しライン4と接続されたドレンノズル22から脱ガストレイ23を介してタンク本体21内に流れ込む。その後、タンク本体21内に貯蔵された液体状態の潤滑油は、内部の気泡等が抜かれながら温度が徐々に低下する。その後、50℃程度まで温度が下がった潤滑油は、再び潤滑油供給ライン3で軸受装置13まで送られる。
なお、潤滑油ヒータ24は、圧縮機1の起動時に潤滑油を昇温した後に停止される。
【0040】
この際、シールガス供給ライン5では、シールガスがドライガスシール部14に供給される。具体的には、潤滑油ヒータ24によって昇温された潤滑油と熱交換することで、熱交換部533内のシールガスの温度が20℃程度から40℃程度まで上昇する。昇温されたシールガスは、第一ヘッダー部531を介して熱交換部533から供給ライン51に送られる。供給ライン51に送られたシールガスは、ドライガスシール部14に供給される。ドライガスシール部14に供給されたシールガスは回転環14aと静止環14cとの間を流れて、ケーシング11とロータ12との隙間をシールすることに使用される。ドライガスシール部14で使用されたシールガスは、ガスを燃焼させる設備であるフレアに送られる。
【0041】
一方、ケーシング11の内部から新たに回収された作動流体の一部が、シールガスとして、回収ライン52から第二ヘッダー部532を介して熱交換部533に送られる。タンク内ライン53では、再び熱交換部533でシールガスが昇温される。このように、シールガスは、潤滑油タンク2を経由することで昇温され、ドライガスシール部14に送られる。
【0042】
上記のような圧縮機システム10によれば、潤滑油戻しライン4によって潤滑油タンク2に軸受装置13から潤滑油が戻されることで、タンク本体21内に貯蔵されている潤滑油は高温となっている。そのため、熱交換部533が軸受装置13から戻された潤滑油を貯蔵しているタンク本体21内に配置されていることで、高温の潤滑油によって温められた領域にシールガスを流通させることができる。その結果、熱交換部533を流通させるだけでシールガスを潤滑油と同程度の温度まで昇温させることができる。したがって、ガスヒータのようにシールガスを温めるために専用の加熱装置をシールガス供給ライン5に用いることなく、高温の潤滑油を利用してシールガス供給ラインに流通させるだけでシールガスを昇温させることができる。これにより、新たに加熱装置を設けることなく、シールガスを温めることができる。
【0043】
また、潤滑油とシールガスとで熱交換を行うことで、潤滑油の熱がシールガスに奪われて潤滑油の温度が低下する。そのため、オイルクーラ32で冷却するべき潤滑油の温度の幅が小さくなる。その結果、オイルクーラ32の規模を小さくしても所定の温度まで潤滑油を冷却することができる。
【0044】
本実施形態では、熱交換部533がタンク本体21内に貯蔵された液体状態の潤滑油内に浸漬されるように配置されている。そのため、高温の潤滑油内でシールガスを流通させることができる。その結果、気体状態の潤滑油内に熱交換部533を配置する場合に比べて、効率的にシールガスと潤滑油とを熱交換させることができる。これにより、効率的にシールガスを温めることができる。
【0045】
圧縮機1の起動時には、軸受装置13でまだ潤滑油が使用されていないために、高温となった潤滑油が潤滑油戻しライン4から送られてこない。そのため、タンク本体21内に貯蔵された液体状態の潤滑油は外気と同程度の低温となっている。ところが、液体状態の潤滑油内に潤滑油ヒータ24が配置されていることで、潤滑油を直接温めることができる。そのため、起動時のように、軸受装置13から高温の潤滑油が送られてこないことでタンク本体21内の潤滑油の温度が低い場合であっても、潤滑油を温めることができる。その結果、確実にシールガスを昇温させることができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0047】
なお、シールガス供給ライン5は、本実施形態のようにシールガスとして圧縮機1の作動流体を利用することに限定されるものではない。つまり、シールガス供給ライン5は、潤滑油タンク2内を経由して圧縮機1にシールガスを供給することができればよい。例えば、シールガス供給ライン5は、シールガスの供給源から潤滑油タンク2内を経由して圧縮機1にシールガスを供給し、循環させずに排出する構造であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
上記した圧縮機システム10によれば、シールガスを温めることができる。
【符号の説明】
【0049】
10 圧縮機システム
1 圧縮機
11 ケーシング
12 ロータ
12a スラストカラー
13 軸受装置
13a ラジアル軸受
13b スラスト軸受
14 ドライガスシール部
14a 回転環
14b シャフトスリーブ
14c 静止環
14d リテーナ
14e ラビリンスシール
2 潤滑油タンク
21 タンク本体
22 ドレンノズル
23 脱ガストレイ
24 潤滑油ヒータ
L 液面
3 潤滑油供給ライン
31 送給ポンプ
32 オイルクーラ
33 オイルフィルタ
4 潤滑油戻しライン
5 シールガス供給ライン
51 供給ライン
52 回収ライン
53 タンク内ライン
531 第一ヘッダー部
532 第二ヘッダー部
533 熱交換部
図1
図2