【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の現状に鑑み、本発明者等は、本発明地盤改良装置を完成したものであり、その特徴とするところは、地盤を撹拌しセメントミルクを混合し硬化させて基礎杭を構成するためのものであって、先端部に該セメントミルクを噴射するノズル、進行方向に掘削するための先端掘削翼、及び該先端掘削翼の回転軸と直角の回転軸を持つ横掘削翼を、該先端掘削翼より根本側(上方側)に中心軸を挟んで向かい合って少なくとも2つ設けた点にある。
【0010】
本発明でいう地盤改良とは、軟弱地盤の強度改良、基礎構築、基礎のさらに下方の補強、その他地盤を何かしら改善する処置全般をいい、その上に建造物を構築するか否かを問わない。
【0011】
ここでセメントミルクは通常のものでよく、特別なものである必要はない。要するに土壌と混合されて硬化するものであればよい。通常は液状であるが、水分の多い土壌では、紛体でも可能である。
【0012】
本発明でいう掘削という語は、軟弱地盤では単なる撹拌や侵入という概念も含めて使用する。使用する場所も深層(深さ3m以上)が好適であるが、それに限定するものでなく、どのような深さでもかまわない。
【0013】
先端部にセメントミルクを噴射するノズルを有している。通常は液体が噴射されるが、粉体の場合には粉体が噴射される。ここでいう先端部は、セメントミルクを噴射して効果のある場所という意味であり、最先端部のみを言うのではない。より根本側(上方側)でもよい。しかし、少なくとも後述する横掘削翼より一定以上(1m程度)上方では先端部の混合ができないので問題である。勿論、最先端部が好ましい。
【0014】
先端掘削翼は、地盤中に侵入していく先端部に設けられており、回転軸は侵入方向と平行である。形状としては、回転する板状体(棒体やねじれた形状のものでもよい)に掘削爪(通常は複数)を設けたものである。掘削爪は土壌を撹拌するだけでなく、土塊を潰し、石等も砕く(砕けなくとも地盤によってはかまわない)ためのものである。板状体は、4本が好適であるが、2本以上ならば基本的に可能である。しかし、力のバランスからして偶数が好ましい。掘削爪は、それ自体が交換可能でも、掘削爪の先端に交換可能部材を設けたものでもよい。交換可能にしているのは、掘削によって、部材が削られるためである。
【0015】
板状体は回転軸に固定されているため、1本の長い板状体の中心に回転軸を固定するタイプでもよく、この場合には上記した本数としては2本と勘定する。この掘削爪やさらにその先端交換部材は、硬度の高い合金が好ましい。
掘削爪の数や形状、固定方法等は自由である。
さらに、より上方にこの先端掘削翼と同じ回転軸、及び該先端掘削翼の回転方向と直角の回転軸を持つ横掘削翼である他の掘削翼(撹拌翼)を設けてもよい。これは、混合をより効果的にするためである。
【0016】
横掘削翼は、上記した先端掘削翼とは回転軸が直角方向になっており、該先端掘削翼より根本側に設けられている。根本側でも、混合の問題から先端掘削翼の近傍が好ましい。ここでいう近傍とは、先端掘削翼の回転部分と、横掘削翼の回転部分が接触することはないが、非常に近いことをいう。例えば、横掘削翼の回転円の最下部と先端掘削翼の回転最上部とが、0〜40cm、好ましくは5〜20cm程度離れた位置である。
形状的には、板状体と掘削爪(数や形状は自由である)からなり、先端掘削翼と同様のものである。板状体の本数も2以上であり、偶数がこのましいことも先端掘削翼と同様である。横掘削翼と先端掘削翼との掘削径は同じ程度が好ましい。例えば、違いがあっても10%以内等である。
【0017】
この横掘削翼は、少なくとも2つ向かい合わせに設ける。回転方向は自由であるが、互いに逆回転が好ましい。横方向(水平方向)へ移動する力が働くと好ましくないためである。
【0018】
横掘削翼は、その掘削(混合)容積を大きくするため、板状体への掘削爪の固定に角度を持たせるのがよい。例えば、掘削翼として、回転方向に平行な板状体にそれと同じ方向に同じような薄い掘削爪を設けると、掘削翼が移動しないとすれば、その撹拌容積は非常に小さく、板状体が回転するその薄い円状のみである。これと反対に掘削爪を板状体と角度を付けて固定し、その掘削爪を長くすれば、撹拌容積は増加する。
【0019】
本発明の1態様として、2つの横掘削翼の回転面と直角の撹拌面積が、該先端掘削翼が掘削する面積の1/6(横掘削翼の全合計として)以上が好適である。「横掘削翼の回転面」は通常の使用(垂直に杭を形成する)では、当然垂直方向である。撹拌面積は、この回転面と直角方向の面積、即ち水平方向の面積である。換言すると縦方向に回転している撹拌翼を上から見たときの投影面積である。
横撹拌翼は通常は左右2つであるが、それより多く重ねるように配置してもよい。この場合には、その全ての合計撹拌面積が1/6であればよい。
さらに、この横撹拌翼とは別に、より根本側に類似の撹拌翼を設けてもよい。
【0020】
この横掘削翼の回転面と直角の撹拌面積を大きく(1/6以上)しているのは、先端掘削翼によって円形に掘削された後に両サイドから矩形に掘削することによって全体として矩形に近い形状で掘削できるようにするためである。横掘削翼が四方でなく二方で可能なのは、上記した水平面積が大きいため、その中間部(厳密な意味で撹拌されていない部分)も近傍の撹拌によって崩されるためである。勿論、二方だけでなく、少し小さいものを他の一方、又は二方にも設けて、合計三方又は四方にこの横掘削翼を設けるようにしてもよい。
横掘削翼と同種のもの(掘削翼、撹拌翼)をさらにより上方にも設けてもよい。これは混合をより効果的にするためである。
【0021】
また、上記した「横掘削翼の回転面と直角の撹拌面積が、該先端掘削翼が掘削する面積の1/6以上(合計で)」が好適なのは、前記した掘削形状がより矩形になるようにするためである。さらに1/4以上、また1/3以上がより好適である。1/3以上ではほとんどの土壌で非常に好適であった。
【0022】
このような掘削形状にするため、板状体と掘削爪の取り付け角度と掘削爪の長さが問題である。また、水平方向の掘削面積を大きくするためには掘削爪を同じ方向に傾斜して固定するのではなく、方向を変えることが好適である。また、掘削爪の枚数を多くするか、掘削爪を長くするか又は両方行い掘削面積を広げることでもよい。勿論、前記したように横掘削翼を3つ以上にすることでもよい。
【0023】
本発明では、先端掘削翼の回転軸と、回転軸の方向が直角である掘削翼を用いるのがポイントである。勿論駆動源は通常油圧であるが、横掘削翼の部分に横方向に回転を変えるギアを設けるだけでよい。例えば、ウォームギアや傘歯車等である。
【0024】
本発明装置のセメントミルクの噴射は、油圧オイルと別のパイプ(二重管でも並列管その他でも)を通して、先端部から行われる。本発明の作動は、本発明装置を通常垂直に地盤に掘削侵入させていく。勿論、岩盤等を掘削していくものではなく、あくまでも軟弱地盤の改良、基礎等の杭の構築であるため、土壌撹拌混合がメインである。よって、掘削土壌を上方へ搬送する機構等は不要である。即ち、掘削撹拌しながら、セメントミルクを噴射し混合するのである。
【0025】
最深部まで到達すると、その時点から一般的には掘削翼を回転させながら本装置を引き抜いていく。これで硬化を待つだけである。